【実施例1】
【0016】
[画像形成装置]
図1は、本発明の実施例1に係る走査光学装置101を備える画像形成装置110の断面図である。画像形成装置110は、走査光学装置101を具備し、走査光学装置101により『像担持体』としての感光ドラム103を走査し、この走査された画像に基づいて記録紙等の記録材Pに画像形成を行う画像形成手段を備える画像形成装置である。ここでは、画像形成装置110としてプリンタを例示して説明する。
【0017】
画像形成装置110(プリンタ)は、得られた画像情報に基づいたレーザ光束を、露光手段としての走査光学装置101によって出射し、プロセスカートリッジ102に内蔵された感光ドラム103上に照射する。すると感光ドラム103上に潜像が形成され、プロセスカートリッジ102によってこの潜像が現像剤としてのトナーによりトナー像として顕像化される。なお、プロセスカートリッジ102とは、感光ドラム103と、感光ドラム103に作用するプロセス手段として、帯電手段や現像手段等を一体的に有するものである。
【0018】
一方、記録材Pを積載する積載板104上に積載された記録材Pは、給送ローラ105によって1枚ずつ分離されながら給送され、次に中間ローラ106によって、さらに下流側に搬送される。搬送された記録材P上には、感光ドラム103上に形成されたトナー像が転写ローラ107によって転写される。この未定着のトナー像が形成された記録材Pは、さらに下流側に搬送され、内部に加熱体を有する定着器108により、トナー像が記録材Pに定着される。その後、記録材Pは、排出ローラ109によって装置本体110Aの外部に排出される。
【0019】
なお、本実施例では感光ドラム103に作用するプロセス手段としての前記帯電手段及び前記現像手段をプロセスカートリッジ102中に感光ドラム103と一体的に有することとしたが、各プロセス手段を感光ドラム103と別体に構成することとしてもよい。
【0020】
[走査光学装置]
図2は、走査光学装置101の斜視図である。走査光学装置101は、レーザユニット1、偏向装置5、及び、fθレンズ7を収容する『筐体』としての光学箱8を備える。光学箱8の内部には、レーザユニット1、複合アナモフィックコリメータレンズ2、開口絞り3、回転多面鏡4を有する偏向装置5、信号検知センサ6、fθレンズ7(走査レンズ)が配置される。
【0021】
『光源』としてのレーザユニット1(半導体レーザユニット)は、レーザ光束を出射するユニットである。複合アナモフィックコリメータレンズ2は、コリメータレンズとシリンドリカルレンズとを一体にしたアナモコリメータレンズと信号検知レンズ(またはBDレンズ)とを一体に成形したレンズである。偏向装置5は、レーザユニット1が出射したレーザ光束Lを偏向走査する回転多面鏡4を有し、回転多面鏡4を回転駆動させる装置である。
【0022】
レーザユニット1から出射したレーザ光束Lは、複合アナモフィックコリメータレンズ2によって主走査方向では略平行光または収束光とされ、副走査方向では収束光とされる。次にレーザ光束Lは、開口絞り3を通って光束幅が制限されて、回転多面鏡4の反射面上において主走査方向に長く伸びる焦線状に結像する。そして、このレーザ光束Lは回転多面鏡4を回転させることによって偏向走査され、複合アナモフィックコリメータレンズ2のBDレンズ2kに入射する。BDレンズ2kを通過したレーザ光束Lは、信号検知センサ6に入射する。
【0023】
このとき、信号検知センサ6で信号を検知し、このタイミングを主走査方向の書き出し位置の同期検知タイミングとする。次にレーザ光束Lは、fθレンズ7に入射する。『走査レンズ』としてのfθレンズ7は、偏向装置5で走査される光束(レーザ光束L)を『被走査面上』としての感光ドラム103の表面上に結像させるレンズである。fθレンズ7は、レーザ光束を感光ドラム103上にスポットを形成するように集光し、かつスポットの走査速度が等速に保たれるように設計されている。このようなfθレンズ7の特性を得るために、fθレンズ7は非球面レンズで形成されている。fθレンズ7を通過したレーザ光束Lは、光学箱8の出射口から出射し、感光ドラム103上に結像走査される。
【0024】
回転多面鏡4の回転によってレーザ光束を偏向走査し、感光ドラム103上でレーザ光束による主走査が行われ、また感光ドラム103がその円筒の軸線まわりに回転駆動することによって副走査が行われる。このようにして感光ドラム103の表面には静電潜像が形成される。fθレンズ7は、スナップフィット8a、8bにより光学箱8に対して固定されている。
【0025】
図3は、スナップフィット8aとfθレンズ7とを示す
図2のX−Z断面図である。fθレンズ7は、矢印X方向に突出する凸部7X1と凸部7X2とを有する。凸部7X1と凸部7X2とは、矢印Z方向で所定の間隔を有する。
【0026】
光学箱8は、矢印Z方向に沿う平面で形成されるX基準被押圧面8cを有する。X基準被押圧面8cは段差を有しない。
【0027】
『弾性部材』としてのスナップフィット8aは、光学箱8に一体に形成されている。スナップフィット8aは、矢印X方向に突出する凸部8a1を有する。
【0028】
fθレンズ7は、fθレンズ7の光軸方向の側に形成されて光学箱8に突き当たる『突き当て面』としてのX基準押圧面7b、7cを有する。光学箱8は、X基準押圧面7b、7cを受ける『受け面』としてのX基準被押圧面8cを有する。そして、凸部8a1は、fθレンズ7を、光学箱8に対して光軸方向K(矢印X方向)へ押圧する。fθレンズ7は、光学箱8のX基準被押圧面8cへ押圧されている。
【0029】
また、光学箱8は、fθレンズ7の組み付け方向J2に、fθレンズ7を位置決めする『位置決め部』としてのZ基準面8dを有する。fθレンズ7のZ方向位置は、fθレンズ7を光学箱8のZ基準面8dの面に突き当てて位置決めされている。
【0030】
fθレンズ7のZ方向の抜け止めは、fθレンズ7の凸部7aとスナップフィット8aの凸部8fとで行われる。スナップフィット8aの凸部8fとfθレンズ7の凸部7aとが、fθレンズ7の組み付け方向J2と逆方向J1へのfθレンズ7の移動量を規制する。fθレンズ7は、X基準押圧面7b、7cと反対側にfθレンズ7の組み付け方向J2とは逆方向J1にfθレンズ7が移動する移動量を規制する『規制手段』としての凸部7aを有する。
【0031】
fθレンズ7が光学箱8のZ基準面8dに接触した状態では、fθレンズ7の凸部7aとスナップフィット8aの凸部8fとの間には、組み付け方向J2にて(矢印Z方向において)0.1〜0.2mm程度の隙間R(クリアランス)を有している。
【0032】
つまり、スナップフィット8aの凸部8fの押圧力は、fθレンズ7に対して矢印X方向のみに働いている。そのために、fθレンズ7のX基準押圧面7b、7cをX基準被押圧面8cへ確実に突き当てることができ、fθレンズ7の位置決めを所望の位置へ精度良く行うことができる。なお、fθレンズ7は矢印Z方向へ上記のクリアランス分で移動する可能性はあるものの、仮に移動した場合でも画像品質の変化は許容範囲内となる光学系になっている。
【0033】
また、fθレンズ7の凸部7aの斜面7dは、傾斜して形成され、fθレンズ7が光学箱8に組み付けられる直前には、スナップフィット8aの凸部8fと対向する。これにより、fθレンズ7を光学箱8に上から下へと組み付ける際に、斜面7dがスナップフィット8aの斜面8gと滑らかに接触するため、fθレンズ7がスナップフィット8aに引っ掛かることなくスムーズに組付けを行うことができる。
【0034】
なお、fθレンズ7には他の凸部7eが形成されている。
図2では、レーザユニット1が偏向装置5へレーザ光束Lを入射する方向が左上方向からであるが、例えば、レーザユニット1が偏向装置5へレーザ光束Lを入射する方向が右下方向からとなる構成にした場合を想定する。この場合には、fθレンズ7を上下反転させて光学箱8に組付ける必要があり(fθレンズ7を平面視した場合、fθレンズ7は仮想線分Jに対して対称に構成されていないため)、その際に、他の凸部7eにfθレンズ7のZ方向の抜け止めの役割を果たさせる。
【0035】
図4は、変形例に係るバネ部材10とfθレンズ7とを示す
図2のX−Z断面図である。fθレンズ7を光学箱9のX基準被押圧面9cとZ基準面9bに位置決めするために、ステンレス製のバネ部材10を設けている。バネ部材10は、バネ部材10に形成される穴10aが光学箱9の凸部9kに対して矢印Z方向へ当接した状態で光学箱9に位置決めされている。この状態でバネ部材10の押圧部10bがfθレンズ7を矢印X方向へ押圧することにより、fθレンズ7の矢印X方向の位置が決められている。
【0036】
また、押圧部10bとfθレンズ7の凸部7aとで、fθレンズ7の矢印Z方向への抜け止めを構成している。押圧部10bとfθレンズ7の凸部7aとは、矢印Z方向にて0.1〜0.2mm程度の隙間R(クリアランス)を有している。この実施例では、バネ部材10に光学箱9とは別体の金属バネを用いているため、仮に走査光学装置の組立工程でfθレンズ7を外す必要が発生した場合、各部品を破壊することなく容易に外すことができる。
【0037】
このように、押圧部10bはfθレンズ7に対して矢印Z方向の押圧力がないため、fθレンズ7を光学箱9のX基準被押圧面9cに確実に突き当てることができ、fθレンズ7の姿勢を精度良く位置決めすることができる。
【実施例2】
【0038】
図5は、実施例2に係るfθレンズ11の固定方法を示した部分拡大断面図である。本実施例の走査光学装置は、fθレンズ11と、光学箱12と、光学箱12と一体で形成されたスナップフィット12aと、を有する。
【0039】
fθレンズ11は、fθレンズ11の光軸方向Kの側に形成されて光学箱8に突き当たる『突き当て面』としてのX基準押圧面11b、11cを有する。X基準押圧面11b、11cは、fθレンズ11の光軸方向Kに突出する凸部11X1、11X2の各々に形成される。光学箱12は、X基準押圧面11b、11cを受ける『受け面』としてのX基準被押圧面12cを有する。そして、fθレンズ11は、光学箱12に対してスナップフィット12aの押圧部12bにて矢印X方向に押圧されて固定されている。
【0040】
fθレンズ11の矢印Z方向の抜け止めは、fθレンズ11の天面11aの対向側に設けられた抜け止め部12kにて形成されている。スナップフィット12aの先端部に形成された『先端部』としての抜け止め部12kとfθレンズ11の天面11aとがfθレンズ7の組付け方向J1と逆方向J2へのfθレンズ11の移動量を規制する。
【0041】
光学箱12は、fθレンズ11の組み付け方向J1に、fθレンズ11を位置決めする『位置決め部』としてのZ基準面12dを有する。スナップフィット12aの抜け止め部12kとfθレンズ11の天面11aとの間は、fθレンズ11が光学箱12のZ基準面12dに接触した状態では、組付け方向J1(矢印Z方向)にて0.1〜0.2mm程度の隙間R(クリアランス)を有している。これにより実施例1と同様に、fθレンズ11には矢印Z方向に押圧力は働かないのでfθレンズ11に不慮のモーメントが働くことはなく、fθレンズ11を精度良く光学箱12に固定することができる。
【0042】
また、スナップフィット12aにおいて、押圧部12bと抜け止め部12kとを分けて構成し、抜け止め部12kはfθレンズ11の天面11aと係合するようにしている。そのため、fθレンズ11には抜け止め用の追加形状(実施例1の凸部7aに相当)が不要である。
【0043】
なお、fθレンズ11を光学箱12に組付ける際は、組付ける前にスナップフィット12aを工具等で矢印X方向と逆方向へ弾性変形させ、fθレンズ11の挿入スペースを確保してから組付けを行うと良い。
【0044】
図6は、変形例に係るfθレンズ15の固定方法を示した部分拡大断面図である。バネ部材13は、光学箱14とは別体である。fθレンズ15の固定方法は、これまでの実施例と同様であり説明は省略する。なお、バネ部材13の穴13aと押圧部13bは、バネ部材10の穴10aと押圧部10bと同じ機能を有する。また、光学箱14の凸部14kとX基準被押圧面14cは、光学箱9の凸部9kとX基準被押圧面9cと同じ機能を有する。
【0045】
このように、fθレンズ15の矢印Z方向の抜け止めをfθレンズ15の天面で行うことにより、fθレンズ15に矢印Z方向の抜け止めのための形状を追加する必要はなくなる。その他の効果については実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0046】
実施例の構成によれば、物流時等の物理的衝撃が加わってもfθレンズ7の光学箱8に対する光軸方向Kへの高精度な位置決めが実現される。