特許第6624911号(P6624911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6624911計測装置、計測方法および物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624911
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】計測装置、計測方法および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20191216BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20191216BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   G01B11/00 H
   G01B11/02 H
   G01B11/24 K
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-236832(P2015-236832)
(22)【出願日】2015年12月3日
(65)【公開番号】特開2017-102061(P2017-102061A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】西川 裕也
【審査官】 齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−050390(JP,A)
【文献】 特開2008−235504(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0076355(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G01B 11/02
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を撮像して画像データを得る撮像部と、前記画像データを処理して前記物体の領域を認識する処理部とを有する計測装置であって、
前記処理部は、
前記画像データに対して特徴抽出を行って第1特徴データを得、
前記画像データに基づいて前記領域を認識された前記物体の三次元モデルを所定の面に射影し、該射影により得られた画像データに対して前記特徴抽出を行って第2特徴データを得、
前記第1特徴データと前記第2特徴データとの一致度と、閾値と、の大小関係に基づいて未認識の物体があるか否かの判断を行うことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記特徴抽出は、前記画像データの画素値に対する二値化を含むことを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記二値化により得られた前記第1特徴データとしての前記物体の面積と、前記二値化により得られた前記第2特徴データとしての前記物体の面積とに基づいて前記判断を行うことを特徴とする請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記特徴抽出は、前記画像データに対するエッジ抽出を含むことを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項5】
前記エッジ抽出により得られた前記第1特徴データとしての前記物体のエッジと、前記エッジ抽出により得られた前記第2特徴データとしての前記物体のエッジとに基づいて前記判断を行うことを特徴とする請求項4に記載の計測装置。
【請求項6】
前記エッジのうちの少なくとも一部の位置、長さ、および数のうちの少なくとも一つに基づいて前記判断を行うことを特徴とする請求項5に記載の計測装置。
【請求項7】
前記エッジのうちの少なくとも一部は、前記物体の輪郭、前記エッジが構成する線分、および前記エッジの交点のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項5または6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記物体を照明する照明部を含むことを特徴とする請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項9】
物体を撮像して得た画像データを処理して前記物体の領域を認識する方法であって、
前記画像データに対して特徴抽出を行って第1特徴データを得、
前記画像データに基づいて前記領域を認識された前記物体の三次元モデルを所定の面に射影し、該射影により得られた画像データに対して前記特徴抽出を行って第2特徴データを得、
前記第1特徴データと前記第2特徴データとの一致度と、閾値と、の大小関係に基づいて未認識の物体があるか否かの判断を行うことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のうちいずれか1項に記載の計測装置または請求項9に記載の方法を用いて物体の領域の認識を行う工程と、
前記工程で前記認識を行われた前記物体の処理を行う工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置、計測方法および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアームによる物品(ワーク)の把持や組立において、マシンビジョンの技術が用いられている。マシンビジョンによりワークが個別に認識(計測)され、ロボットアームが制御される。把持等の対象となるワークの近傍に対象外のワークがある場合において、対象外のワークが未計測であると、ロボットアームが所定の把持または組立を行うことが困難になりうる。ワークを計測できない要因としては、ワークの上面と下面とが重なり合っている場合、ワークの側面同士が接している場合等が考えられる。特許文献1は、重なり合ったワークの上下を判定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−53915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献は、重なった対象物体の上下を判断するに過ぎない。よって、物体が重なり合っているがゆえに認識できない物体があった場合、物体の把持等の処理を行うのに、認識できた物体だけの情報に基づくのでは、当該処理が適切に行えない可能性がある。
【0005】
本発明は、例えば、重なり合った物体の認識の評価に有利な計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、物体を撮像して画像データを得る撮像部と、画像データを処理して物体の領域を認識する処理部とを有する計測装置であって、処理部は、
画像データに対して特徴抽出を行って第1特徴データを得、画像データに基づいて領域を認識された物体の三次元モデルを所定の面に射影し、該射影により得られた画像データに対して特徴抽出を行って第2特徴データを得、第1特徴データと第2特徴データとの一致度と、閾値と、の大小関係に基づいて未認識の物体があるか否かの判断を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、重なり合った物体の認識の評価に有利な計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る計測装置の構成例を示す図である。
図2】平面上における物体の載置状態を示す図である。
図3】未計測物体の有無の判定の流れを示すフローチャートである。
図4】画像と第1シルエット画像を示す図である。
図5】第2シルエット画像を得る方法を説明した図である。
図6】第2シルエット画像を得る方法を説明した図である。
図7】シルエット画像の面積の比較により一致度を得る方法を示す図である。
図8】未計測物体の有無の判断方法を示す図である。
図9】複数の物体が重なった場合の画像の一例を示す図である。
図10】未計測物体があるかの判断の流れを示すフローチャートである。
図11】エッジ画像と第1特徴画像を示す図である。
図12】各特徴画像のエッジの長さ(総延長)を比較することにより一致度を得る方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は本実施形態における計測装置の構成例を示す図である。本実施形態に係る計測装置は、部品、または部品を製造するための金型などを対象物体(被計測物体)とし、この物体の位置・姿勢(領域)を非接触で計測(認識)する産業装置である。本実施形態では、計測に用いる光として、パターン光を用いず均一光のみを用いる。計測装置は、照明部1と、撮像部2と、処理部3とを含む。
【0011】
照明部1は、物体4を均一に照明し、例えば、多数のLED光源7を撮像部2の光軸を中心にリング状に配置してなる。物体4は、図2に示すように、互いに上下に重なったり、側面が接したりした状態で平面P上に複数個配置されている。なお、照明部1は、バー照明や同軸落斜照明など物体4を略均一に照明できるものであればよい。撮像部2は、撮像光学系5とイメージセンサ6とを含み、均一照明された物体4の撮像画像を取得する。撮像光学系5は、照明部1により均一照明された物体4をイメージセンサ6に結像する。イメージセンサ6は、物体4を撮像するための素子であり、例えば、CMOSセンサ、CCDセンサなどを用いることができる。処理部3は、撮像部2が取得した画像(画像データ)を処理して、図2のように配置された物体4の位置および姿勢を得る。
【0012】
処理部3は、撮像部2の出力(画像)に対して、キャニー法などのエッジ検出アルゴリズムを用いて、物体4のエッジ抽出を行い、エッジ画像(輪郭画像)を得る。そして、公知の方法により、エッジ画像に基づいて物体4の位置および姿勢を得る。
【0013】
物体4の配置状態によっては、位置および姿勢を計測(認識)できない物体(未認識の物体)が残存する。図3は、未認識物体(未計測物体)の有無の判定の流れを示すフローチャートである。ステップS101では、処理部3は、撮像部2が撮像により得た画像を取得する。ステップS102では、処理部3は、上述のとおり、エッジ画像を得て、当該エッジ画像に基づいて、物体4の位置および姿勢(領域)を得る。ステップS103では、処理部3は、ステップS101で取得した画像(図4A)から第1シルエット画像(第1特徴データ)を得る。シルエット画像は、たとえば、図4(A)に示す画像(画像データ)の画素値に対し2値化処理(特徴抽出)して、物体4が占める領域(占有領域)を表す画像(図4(B))である。図4(B)では、2つの物体4(物体αおよび物体β)は1つのシルエットとして認識される。この2値化処理では、物体4が占める領域を1、その他領域を0としている。
【0014】
ステップS104では、処理部3は、ステップS102で得た物体4の位置および姿勢に基づいて第2シルエット画像(第2特徴データ)を得る。図5および図6は、第2シルエット画像を得る方法を段階的に説明した図である。図5に示すように、処理部3は、まず、ステップS102で求めた物体4の位置および姿勢に基づいて、予め形状が既知の、たとえば、物体αおよび物体βの三次元モデルを三次元空間上に配置する。これは、ステップS102で得たすべての物体4に対して行われる。続いて、処理部3は、図6に示すように、図5の三次元モデルを所定の二次元平面(撮像部の撮像面)に射影して得た画像に対して第1シルエット画像と同様の処理(二値化処理)を施して第2シルエット画像を得る。射影方法は、ピンホールカメラモデルに基づいたものとしうる。すなわち、事前に実施されたキャリブレーションにより得られている撮像部2の内部パラメータ(焦点距離、主点)と外部パラメータ(位置、姿勢)とを用いた射影方法である。なお、第2シルエット画像は、第1シルエット画像と同様に、物体4が占める領域を表す画像である。図5および図6では、計測装置が物体αおよび物体βをともに正確に計測できた場合を示したため、図5の画像における物体が占める領域と、図6のシルエット画像における物体が占める領域とは、近似している。
【0015】
ステップS105では、処理部3は、第1シルエット画像と第2シルエット画像との一致度を得る。図7は、シルエット画像の面積を比較することにより一致度を得る方法を示す図である。処理部3は、第1のシルエット画像において物体4が占める領域の面積Aを得る。また、第1シルエット画像において物体4が占める領域と第2シルエット画像において物体4が占める領域とが互いに重なる部分の面積B(比較結果)を得る。そして、面積Aと面積Bとの比率(B/A)に基づいて一致度を得る。なお、処理部3は、第1シルエット画像における物体4の輪郭の長さ(a)と、第2シルエット画像における物体4の輪郭の長さ(b)との比率(b/a)に基づいて一致度を得てもよい。それに限らず、比較(一致度)のための基準は、種々のものとし得る。
【0016】
ステップS106では、処理部3は、ステップS105で得た一致度に基づいて未計測物体があるかを判断する。図8(A)および(B)は、その判断方法を説明する図である。図8(A)に示すように、処理部3は、ステップS105で求めた一致度が予め設定された閾値よりも小さい場合には、未計測物体があると判断する。一方、図8(B)に示すように、処理部3は、ステップS105で求めた一致度が予め設定された閾値を超える場合には、未計測物体がないと判断する。なお、ステップS101〜S106は、撮像により得られた画像において一体に認識される物体4のグループごとに行われる。たとえば、図9に示す画像の場合では、3つの物体群(グループ)のそれぞれに関して行われる。
【0017】
以上のように、本実施形態の計測装置は、パターン光を用いず均一光だけを用いることで未計測物体があるか判断を行うことができる。本実施形態によれば、重なり合った物体の認識の評価に有利な計測装置を提供することができる。
【0018】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る計測装置について説明する。上記の第1実施形態では、未計測物体があるかを判断するのに画像の2値化処理を行った。これに対して、本実施形態では、撮像して得られた画像から得たエッジ画像を利用する点を特徴とする。
【0019】
図10は、本実施形態に係る未計測物体があるかの判断の流れを示すフローチャートである。ステップS201およびS202は、第1実施形態におけるステップS101およびS102と同じであり、説明を省略する。ステップS203では、処理部3は、ステップS202で取得したエッジ画像から第1特徴画像(第1特徴データ)を得る。第1特徴画像は、例えば、図11(A)に示すエッジ画像を2値化処理(エッジが占める領域を1、その他領域を0とする)して第1特徴画像を得る(図11(B))。
【0020】
ステップS204では、処理部3は、ステップS202で得た物体4の位置および姿勢の計測結果から第2特徴画像(第2特徴データ)を得る。その方法は、まず、ステップS202で得た物体4の位置および姿勢に基づいて、予め形状が既知の、たとえば、物体αおよび物体βの三次元形状モデルを三次元空間上に配置する。続いて、処理部3は、上記の三次元形状モデルにおけるエッジ相当部分を二次元平面(画像平面)に射影して、第2特徴画像を得る。
【0021】
ステップS205では、処理部3は、第1特徴画像と第2特徴画像との一致度を得る。図12は、各特徴画像のエッジの長さ(総延長)を比較することにより一致度を得る方法を示す図である。処理部3は、第1特徴画像のエッジの長さCと、第1特徴画像のエッジと第2特徴画像のエッジとの共通部分の長さDとを得る。そして、長さCと長さDとの比率(D/C)に基づいて一致度を得る。なお、処理部3は、エッジのうちの少なくとも一部(例えば、輪郭部分)の位置、長さおよび数の比較により一致度を得てもよい。また、エッジのうちの少なくとも一部は、物体の輪郭、エッジが構成する線分、エッジの交点を含み、これらに基づいて一致度を得てもよい。
【0022】
ステップS206では、処理部3は、ステップS205で得た一致度に基づいて未計測物体があるか判断を行う。当該判断方法は、ステップS106と同様としうる。本実施形態の計測装置も第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0023】
なお、上記実施形態では、計測光として均一光を用いたが、その光量分布が既知の非均一光を用いてもよい。また、物体の形状はすべて同一であっても、互いに異なっていてもよい。
【0024】
(物品製造方法に係る実施形態)
以上に説明した実施形態に係る計測装置は、物品製造方法に使用しうる。当該物品製造方法は、当該計測装置を用いて物体の計測(物体の領域の認識)を行う工程と、当該工程で計測(認識)を行われた物体の処理を行う工程と、を含みうる。当該処理は、例えば、加工、切断、搬送、組立(組付)、検査、および選別のうちの少なくともいずれか一つを含みうる。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストのうちの少なくとも1つにおいて有利である。
【0025】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 照明部
2 撮像部
3 処理部
4 物体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12