特許第6624913号(P6624913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624913
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】格納システム、格納装置及び移動体
(51)【国際特許分類】
   B64F 1/22 20060101AFI20191216BHJP
   A63H 29/22 20060101ALI20191216BHJP
   A63H 27/133 20060101ALI20191216BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20191216BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20191216BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20191216BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20191216BHJP
   A63H 17/44 20060101ALN20191216BHJP
【FI】
   B64F1/22
   A63H29/22 L
   A63H27/133 Z
   B64C27/08
   B64D47/08
   B64C39/02
   B64D27/24
   !A63H17/44
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-240500(P2015-240500)
(22)【出願日】2015年12月9日
(65)【公開番号】特開2017-105314(P2017-105314A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】中山 守朗
(72)【発明者】
【氏名】木塚 慶次
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 浩
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−167667(JP,A)
【文献】 特開2012−229869(JP,A)
【文献】 特開昭58−093698(JP,A)
【文献】 特開2015−042539(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0266575(US,A1)
【文献】 米国特許第08511606(US,B1)
【文献】 特開2013−234779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 17/44
A63H 27/00−29/24
B64C 27/08−27/10
B64C 27/20−27/30
B64C 29/00−29/04
B64C 39/02
B64D 27/24
B64D 47/08
B64F 1/22− 1/24
B64F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と当該移動体を格納する格納装置とを備えた格納システムであって、
前記格納装置は、
前記移動体を所定位置に案内して格納状態とするとともに当該格納状態において前記移動体に給電する機能を有する充電台と、
前記充電台に形成された第1の通風部と、
前記第1の通風部と前記格納装置の外部とを接続する第1の送風管と、
前記第1の送風管の内部に空気流を発生させる第1の送風部と、を備え、
前記移動体は、
前記充電台に接続され、前記格納装置から前記移動体の充電式電池に給電する接続部と、
前記接続部に形成され、前記格納状態において前記第1の通風部に対応する位置に設けられて前記移動体の内部に連通する第2の通風部と、
前記接続部以外の位置に形成され、前記移動体の外部と内部を連通する第3の通風部と、を備えたことを特徴とする格納システム。
【請求項2】
前記格納装置は、
前記格納状態にある前記移動体の格納空間を区画する閉鎖状態と、前記移動体が前記格納装置の外部に移動することが可能な開放状態とに変形可能な開閉機構と、
前記格納装置の外部と前記格納空間とを接続する第2の送風管と、
前記第2の送風管に設けられて前記格納空間の方向に空気流を発生させる第2の送風部と、
前記第2の送風管に設けられたフィルタと、
を備え、
かつ前記第1の送風部は、前記格納装置の外部の方向に空気流を発生させることを特徴とする請求項1に記載の格納システム。
【請求項3】
前記第2の送風部によって生じる空気流の流量を前記第1の送風部によって生じる空気流の流量よりも大きくしたことを特徴とする請求項2に記載の格納システム。
【請求項4】
前記格納装置は、前記第1の送風管と前記第2の送風管を収納する複数の壁部で構成された筐体を備えており、
前記第1の送風管が前記格納装置の外部に開放される空気出口と、前記第2の送風管が前記格納装置の外部に開放される空気入口が、前記筐体の異なる前記壁部に開口していることを特徴とする請求項2又は3に記載の格納システム。
【請求項5】
前記格納装置の前記充電台及び前記移動体の前記接続部は、前記移動体を前記格納状態とした場合に互いに接触する位置に、前記格納装置から前記移動体に給電を行うための電極をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の格納システム。
【請求項6】
内部と外部を連通する第2の通風部を備えた移動体を、その内部に格納するための格納装置であって、
前記移動体を所定位置に案内して格納状態とするとともに当該格納状態において前記移動体に給電する機能を有する充電台と、
前記格納状態とされた前記移動体の前記第2の通風部に連通するように前記充電台に形成された第1の通風部と、
前記第1の通風部と前記格納装置の外部とを接続する第1の送風管と、
前記第1の送風管に設けられて空気流を発生させる第1の送風部と、
を備えたことを特徴とする格納装置。
【請求項7】
第1の通風部が形成された格納装置の充電台により所定位置に案内されて格納状態とされる移動体であって、
前記格納装置の前記充電台に接続され、前記格納装置から前記移動体の充電式電池に給電する接続部と、
前記接続部に形成され、前記格納状態において前記第1の通風部に対応する位置に設けられて前記移動体の内部に連通する第2の通風部と、
前記接続部以外の位置に形成され、前記移動体の外部と内部を連通する第3の通風部と、
を備えたことを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を格納装置に格納する格納システムに係り、特に移動時等に発生した熱で温度が上昇した移動体を格納装置に格納した後、これを効果的に冷却できるようにした格納システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な用途に移動体を用いたシステムが使用されている。下記特許文献1には、撮影機能を備えた無人の移動体を用いる警備用の撮影システムに関する発明が開示されている。
【0003】
この撮影システムでは、監視領域において進入物体をレーザセンサで検知して異常状態となると、移動体としての飛行ロボットを所定の着陸待機場所から進入物体の位置まで飛行させて進入物体を撮影させる任務を実行させる。そして、異常状態がクリアされると飛行ロボットを着陸待機場所まで飛行させて着陸させる。
【0004】
このような移動体を利用したシステムにおいては、上述の着陸待機場所に相当する場所に格納装置を設置し、移動体の発着用の基地として使用する場合がある。一般に、かかる格納装置を設置する場合には、移動体を風雨や持去り等から守るため、開閉自在の天蓋等の開閉部材を備えるようにし、移動体が発着する際には開閉部材を開放した状態とし、待機時には開閉部材を閉止して格納状態とすることで移動体を外部環境から隔離する。その間、格納装置は、移動体の次の任務のために、格納した移動体の充電式電池を充電したり、必要なデータ等を移動体との間で送受信したりする等の作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−150483公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移動体は、移動するための移動機構を備え、移動中はこれを駆動させることから発熱する。上述した撮影システムで使用される無人の飛行ロボットでも、飛行時にローターを回転させるモータ等を駆動するため発熱する。この場合に、移動体が移動後に格納装置の内部に格納されて格納状態となると、移動中と比べて移動体を含む周囲の空気の流動が少なくなるため、移動時に発生したモータ等の余熱で移動体内部の温度が上昇し高温となってしまうことがあった。移動体内部が高温状況となると、例えば、移動体が内蔵する電子部品の破損やその寿命の短縮化を招いたり、移動体の充電式電池を充電可能な上限温度を超えて、充電の開始が遅れたりする場合等があった。
【0007】
本発明は、以上説明した従来の技術における課題を解決するためになされたものであり、移動体を格納装置に格納する格納システムにおいて、移動時に発生した熱で温度が上昇した移動体を格納装置に格納した後、これを効果的に冷却することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された格納システムは、
移動体と当該移動体を格納する格納装置とを備えた格納システムであって、
前記格納装置は、
前記移動体を所定位置に案内して格納状態とするとともに当該格納状態において前記移動体に給電する機能を有する充電台と、
前記充電台に形成された第1の通風部と、
前記第1の通風部と前記格納装置の外部とを接続する第1の送風管と、
前記第1の送風管の内部に空気流を発生させる第1の送風部と、を備え、
前記移動体は、
前記充電台に接続され、前記格納装置から前記移動体の充電式電池に給電する接続部と、
前記接続部に形成され、前記格納状態において前記第1の通風部に対応する位置に設けられて前記移動体の内部に連通する第2の通風部と、
前記接続部以外の位置に形成され、前記移動体の外部と内部を連通する第3の通風部と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載された格納システムは、請求項1に記載の格納システムにおいて、
前記格納装置は、
前記格納状態にある前記移動体の格納空間を区画する閉鎖状態と、前記移動体が前記格納装置の外部に移動することが可能な開放状態とに変形可能な開閉機構と、
前記格納装置の外部と前記格納空間とを接続する第2の送風管と、
前記第2の送風管に設けられて前記格納空間の方向に空気流を発生させる第2の送風部と、
前記第2の送風管に設けられたフィルタと、
を備え、
かつ前記第1の送風部は、前記格納装置の外部の方向に空気流を発生させることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載された格納システムは、請求項2に記載の格納システムにおいて、
前記第2の送風部によって生じる空気流の流量を前記第1の送風部によって生じる空気流の流量よりも大きくしたことを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載された格納システムは、請求項2又は3に記載の格納システムにおいて、
前記格納装置は、前記第1の送風管と前記第2の送風管を収納する複数の壁部で構成された筐体を備えており、
前記第1の送風管が前記格納装置の外部に開放される空気出口と、前記第2の送風管が前記格納装置の外部に開放される空気入口が、前記筐体の異なる前記壁部に開口していることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載された格納システムは、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の格納システムにおいて、
前記格納装置の前記充電台及び前記移動体の前記接続部は、前記移動体を前記格納状態とした場合に互いに接触する位置に、前記格納装置から前記移動体に給電を行うための電極をそれぞれ備えていることを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載された格納装置は、
内部と外部を連通する第2の通風部を備えた移動体を、その内部に格納するための格納装置であって、
前記移動体を所定位置に案内して格納状態とするとともに当該格納状態において前記移動体に給電する機能を有する充電台と、
前記格納状態とされた前記移動体の前記第2の通風部に連通するように前記充電台に形成された第1の通風部と、
前記第1の通風部と前記格納装置の外部とを接続する第1の送風管と、
前記第1の送風管に設けられて空気流を発生させる第1の送風部と、
を備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項7に記載された移動体は、
第1の通風部が形成された格納装置の充電台により所定位置に案内されて格納状態とされる移動体であって、
前記格納装置の前記充電台に接続され、前記格納装置から前記移動体の充電式電池に給電する接続部と、
前記接続部に形成され、前記格納状態において前記第1の通風部に対応する位置に設けられて前記移動体の内部に連通する第2の通風部と、
前記接続部以外の位置に形成され、前記移動体の外部と内部を連通する第3の通風部と、
を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の格納システムによれば、移動体は、格納装置の案内部によって格納装置の所定位置に案内され、その接続部が格納装置の案内部に接続されて格納状態となる。移動体の格納状態では、移動体の外部と、移動体の第3の通風部と、移動体の内部と、移動体の接続部に形成された第2の通風部と、格納装置の案内部に形成された第1の通風部と、格納装置の第1の送風管と、格納装置の外部との間で空気の流通経路が形成される。従って、格納装置の第1の送風部を駆動させることにより、この流通経路の内部で任意の方向に空気を流通させることができ、移動体の内部に外部の空気を直接的に流通させて冷却することができる。なお、第1の送風部が流通経路に空気流を発生させる向きは限定せず、いずれの方向でも移動体の冷却効果が得られる。
【0016】
請求項2に記載の格納システムによれば、格納装置の外部の空気は、格納装置の第2の送風管からフィルタを通過して格納装置の格納空間に入り、次に格納状態にある移動体の第3の通風部から移動体の内部に入り、次に移動体の接続部の第2の通風部及び格納装置の案内部の第1の通風部を経て第1の送風管に入り、そして格納装置の外部へと流通していく。このような経路及び方向で流れる空気流を形成できるため、フィルタによって埃等を除去した清浄な空気を移動体の内部に送り込んで冷却を行うことができる。
【0017】
請求項3に記載の格納システムによれば、格納装置の格納空間にある移動体の内部から格納装置の外部に向けて第1の送風部が吸い出す空気流の流量よりも、第2の送風部が格納空間に送り込む空気流の流量の方が大きくなる。このため、格納空間内の空気は格納装置の開閉機構の隙間から外部に流出するので、第1の送風部により形成される空気流によって、格納装置の開閉機構の隙間から外部の空気が格納空間内に入り込むことはない。従って、格納装置の外部から格納空間に供給される空気を、フィルタを通過した空気のみに確実に限定することができ、清浄な空気のみを移動体の内部に送り込むことができる。
【0018】
請求項4に記載の格納システムによれば、格納装置の第1の送風管の空気出口と、第2の送風管の空気入口は、格納装置の筐体の異なる壁部に開口しているため、空気出口と空気入口が筐体の同一の壁部において隣接することはなく、移動体の内部から吸い出されて空気出口から外部に排出された比較的温度の高い空気が、空気入口から格納装置の格納空間に吸い込まれて移動体の冷却に再度供され、移動体の冷却が不十分になる等の不具合が生じるおそれが低減する。
【0019】
請求項5に記載の格納システムによれば、移動体を格納装置の所定位置に案内して格納状態とした場合、格納装置の案内部に設けられた電極と、移動体の接続部に設けられた電極は、互いに接触した状態となり、格納装置から移動体の電池に給電することが可能となる。すなわち、移動体を格納状態とすれば、移動体の冷却と、移動体の電池の充電の両作業の準備を共に完了することができる。また、移動体の格納装置に対する案内及び格納機構と、移動体の冷却機構と、移動体の電池の給電機構の少なくとも各一部を一体に構成することができるので、複数の機能を備えた格納システムの構成をコンパクト化することができる。
【0020】
請求項6に記載の格納装置によれば、内部と外部を連通する第2の通風部を備えた移動体を、格納状態とすることにより、移動体の内部と、移動体の接続部に形成された第2の通風部と、格納装置の案内部に形成された第1の通風部と、格納装置の第1の送風管と、格納装置の外部との間で空気の流通経路が形成される。従って、格納装置の第1の送風部を駆動させることにより、この流通経路の内部で任意の方向に空気を流通させることができ、移動体の内部にある空気を直接的に流通させて移動体の内部を効果的に冷却することができる。すなわち、請求項6に記載の格納装置は、請求項1に記載の格納システムの格納装置として使用することができる。
【0021】
請求項7に記載の移動体によれば、第1の通風部が形成された案内部を有する格納装置において格納状態とされることにより、移動体の外部と、移動体の第3の通風部と、移動体の内部と、移動体の接続部に形成された第2の通風部と、格納装置の案内部に形成された第1の通風部との間で空気の流通経路が形成される。従って、この流通経路の内部で任意の方向に空気流を生じさせれば、移動体の内部にある空気を直接的に流通させて移動体を効果的に冷却することができる。すなわち、請求項7に記載の移動体は、請求項1に記載の格納システムの移動体として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態の格納システムにおいて格納装置の開閉機構が閉鎖状態とされた斜視図である。
図2】実施形態の格納システムにおいて格納装置の開閉機構が開放状態とされた斜視図である。
図3】実施形態の格納システムにおいて格納装置の開閉機構が開放状態とされ、移動体としての飛行ロボットが格納状態とされた斜視図である。
図4】実施形態の格納システムにおいて移動体としての飛行ロボットが格納状態とされ、格納装置の開閉機構が閉鎖状態とされた鉛直面に平行な断面模式図である。
図5】実施形態の格納システムにおける格納装置の案内部としての充電台等の斜視図である。
図6】実施形態の格納システムにおける移動体としての飛行ロボットの下面側から見た斜視図である。
図7】実施形態の格納システムにおける開閉機構が閉鎖状態とされた格納装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を図1図7を参照して説明する。
本実施形態の格納システム1は、無人で飛行する移動体としての飛行ロボット2と、この飛行ロボット2が所定位置にセットされることにより必要時には離陸を行う離陸台となり、所定位置にセットされた状態では必要なメンテナンス等の作業を行なうことができる基地となる格納装置3とによって構成される。本実施形態の飛行ロボット2は撮影機能を備えている。この撮影の目的は特に限定しないが、例えば空中からの監視・警備等に用いることもできるし、監視・警備等以外の目的で行なう写真撮影等にも使用できる。格納装置3の設置場所や機能も特に限定しないが、例えば屋外に設置しておけば、飛行ロボット2を屋外へ直接離陸させることができる。また、着陸した飛行ロボット2を格納装置3の所定位置に案内して正規の格納状態に保持することにより、システムの目的に応じた格納装置3との接続動作を自動的に行い、例えば飛行ロボット2の充電式電池への充電、格納装置3に備えられた制御装置に対する飛行ロボットからの情報の書き込み、又は制御装置から飛行ロボット2への情報の読み出し等の各種作業を自動的に行えるようにすることもできる。
【0024】
1.格納装置3の構成
格納装置3の構成を図1図5を参照して説明する。
図1図4に示すように、格納装置3は、6枚の略正方形の板状の壁部4で囲まれた略立方体状の筐体5を本体として備えている。筐体5は、2基の脚部6により任意の場所に設置することができる。
【0025】
図1図3の各図中、手前左側に見える正面側の壁部4aと、これと平行な背面側の壁部4bには、格納装置3の開閉機構を構成する開閉自在の屋根として、一対の天蓋7,7が各々2カ所の支軸7a,7aをもって回動可能に取り付けられている。一対の天蓋7,7の各々は、筐体5の上面8側と、他方の天蓋7に対向する側とに開口部を有する略箱型の部材である。従って、図1及び図4に示すように、一対の天蓋7,7を互いに接近させて対向する開口部が互いに重なるように閉じれば、後述する移動体としての飛行ロボット2を収納する内部の格納空間Sを外部空間から隔絶する閉鎖状態となる。また図2及び図3に示すように、一対の天蓋7,7を互いに離間させて対向する開口部を真上に向けて開放すれば、筐体5の上面8が露出するとともに、同上面8よりも上方に突出する部分がなくなり、前記飛行ロボット2がセット可能で、かつ前記飛行ロボット2が安全に離陸可能な開放状態となる。なお、図4中の破線矢印Aの付近の構造をみるとわかるように、天蓋7が閉鎖状態とされた場合でも、天蓋7と天蓋7が重なる開閉機構の最上部と、各天蓋7と筐体5の上面8の縁部との間には空気が流通できる程度の隙間が生じるようになっている。
【0026】
なお、上述した開閉機構のうち、各天蓋7を回動させて格納空間Sを開閉する駆動機構については特に図示しないが、公知のモータやアクチュエータを駆動源とし、各種のリンク機構その他の動力変向機構及び伝達機構等によって当該駆動源と各天蓋7とを連動連結することにより、各天蓋7を自動で回動操作できるように構成することができる。但し、天蓋7は手動で開閉することとしてもよい。
【0027】
図2図4に示すように、格納装置3の筐体5の上面8は、後述する飛行ロボット2を格納するためのスペースであり、飛行ロボット2を所定位置に保持して各種メンテナンス作業を実行するために、以下に説明するような機構を備えている。
【0028】
図2図4及び図5に示すように、筐体5の上面8には案内部としての充電台10が設けられている。充電台10は、案内部としての機能、すなわち飛行ロボット2を所定位置に案内して所定の格納状態とする機能と、飛行ロボット2の充電式電池に給電する機能だけでなく、後述するように所定の格納状態とされた飛行ロボット2を冷却する機能も備えている。以下、充電台10の各機能について順に説明する。
【0029】
図5に示すように、この充電台10は、筐体5の上面8から上方に突出している。充電台10の中央には筐体5の上面8に平行な平坦部11がある。また、充電台10の平坦部11の両側(筐体5の右側面側及び左側面側)には、平坦部11よりも一段低い段部12がそれぞれ形成されている。平坦部11に接しない段部12の外方側は、平面視で略三角形状に突出しており、また段部12の内方側に隣接する一段高い平坦部11は円弧状に凹陥している。これら一対の段部12,12は、後述する飛行ロボット2の対応位置に設けられた充電用の電極39,39を有する一対の係合部35,35に対応した寸法・形状となっており、飛行ロボット2を格納装置3にセットする際に互いに嵌合し、飛行ロボット2を所定位置に導くようになっている。また、平坦部11の背面側の両端近傍には、上方に突出した位置決めピン13が設けられている。これらの位置決めピン13も、後述する飛行ロボット2を格納装置3にセットする際に、飛行ロボット2の対応位置に設けられた位置決め孔36に挿入され、飛行ロボット2を所定位置に導くようになっている。
【0030】
なお、飛行ロボット2を格納装置3にセットする際に、飛行ロボット2が充電台10に案内されて格納装置3上の所定位置に案内され、保持された状態を飛行ロボット2の格納状態と称する。本実施形態では、飛行ロボット2は、天蓋7が開放された格納装置3において、作業者によって格納状態に設定されるが、図示しない位置決め機構を追加することにより、着陸する飛行ロボット2を受け止め、その所定部分を充電台10に高精度で導いて人手を要しない自動着陸ができるようにしてもよい。
【0031】
図5に示すように、充電台10の平坦部11には、筐体5内に貫通した一対の長孔である第1の通風部14が、筐体5の正面側の壁部4a及び背面側の壁部4bに平行となるように所定間隔をおいて形成されている。また、図4に示すように、筐体5の内部には、格納装置3の外部と、格納空間S内にある充電台10の第1の通風部14とを接続するダクトである第1の送風管15が設けられている。第1の送風管15は、図3又は図4に示すように、充電台10の第1の通風部14が開口した筐体5の上面8と、筐体5の右側面側の壁部4cに開口した空気出口16との間を接続している。また図4に示すように、第1の送風管15の内部には、空気流を発生させるファンである第1の送風部17が、空気出口16に近接して設けられている。第1の送風部17は、実線の矢印Bで示すように第1の通風部14から空気出口16に向かう空気流を第1の送風管15の内部に発生させる。
【0032】
図4に示すように、筐体5の内部には、格納装置3の外部と格納空間Sとを接続するもう一つのダクトである第2の送風管18が設けられている。第2の送風管18は、図2図4又は図7に示すように、筐体5の上面8のうち、充電台10と筐体5の左側面側の壁部4dとの間の位置に設けられた空気放出口19と、筐体5の左側面側の壁部4dに開口した空気入口20との間を接続している。図4に示すように、第2の送風管18の内部には、空気流を発生させるもう一つのファンである第2の送風部21が空気放出口19に近接して設けられ、また、空気中から塵埃等を除去するフィルタ22が空気入口20に設けられている。第2の送風部21は、破線矢印Cに示すように、空気入口20から空気放出口19に向かう空気流を第2の送風管18の内部に発生させる。
【0033】
このように、第1の送風管15が格納装置3の外部に開口する空気出口16と、第2の送風管18が格納装置3の外部に開口する空気入口20は、筐体5の異なる壁部4、すなわち筐体5の右側面側の壁部4cと左側面側の壁部4dにそれぞれ開口している。また、本実施形態では、第2の送風部21によって生じる取り入れ側の空気流の流量を、第1の送風部17によって生じる排出側の空気流の流量よりも大きくしており、格納装置3から吸い出される空気の量よりも、格納装置3に送り込まれる空気の量の方が多くなっている。
【0034】
図5に示すように、充電台10の前記段部12,12には、格納状態にある飛行ロボット2の充電式電池に給電するための電極25,25が設けられている。これらの電極25は、筐体5内に設けられた図示しない給電機構に接続されている。充電台10の前記段部12,12に設けられた電極25,25の寸法及び配置は、後述する飛行ロボット2に設けられた電極39,39の寸法及び配置に対応している。従って、図3又は図4に示すように、飛行ロボット2を格納装置3に格納状態とすれば、充電台10の電極25と飛行ロボット2の電極39は互いに接触するので充電を行うことができる。
【0035】
2.飛行ロボット2について
図3図4及び図6に示す飛行ロボット2について説明する。
飛行ロボット2は、変形丸形又は変形多面体形の本体30と、本体30の底面に設けられた正六角形の環状の着陸脚31と、本体30の頂部付近に平面視十字型の配置で設けられた4本の保持部32と、各保持部32の先端に設けられた回転翼33を有している。回転翼33は、その回転面が略水平となっており、回転翼33が下方に向けて気流を発生させることにより回転面の上側の気圧が下側よりも低下し、揚力が発生して飛行ロボット2が浮上し、飛行することができる。なお、回転翼33は図4に模式的に示し、図3図6では省略している。
【0036】
図6に示すように、飛行ロボット2の本体30の底面には、接続部としての接続面34及び係合部35,35が設けられている。接続面34は、着陸脚31の内側に位置するように、平坦な面として設けられている。この接続面34は、飛行ロボット2を格納状態に設定した場合、格納装置3の充電台10の平坦部11と接触し、これに接続される部分である。この接続面34を挟む両位置には、外形の一部が丸形であり、接続面34よりも下方に突出した一対の係合部35,35が所定間隔をおいて設けられている。この係合部35,35の形状及び配置は、格納装置3の充電台10に設けられた一対の段部12,12の形状及び配置に適合している。また、飛行ロボット2の本体30の底面には、所定間隔をおいて一対の位置決め孔36,36が形成されている。一対の位置決め孔36,36の寸法及び配置は、格納装置3の充電台10に設けられた一対の位置決めピン13,13の寸法及び配置と適合している。従って、飛行ロボット2を格納装置3の上面8に載置し、飛行ロボット2の係合部35と格納装置3の段部12を互いに係合させ、格納装置3の位置決めピン13を飛行ロボット2の位置決め孔36に挿入し、飛行ロボット2を所定位置に案内すれば、飛行ロボット2を格納状態に設定することができる。このとき、飛行ロボット2の接続面34と、格納装置3の充電台10の平坦部11は、互いに接触している。
【0037】
図4及び図6に示すように、飛行ロボット2の接続面34には、格納装置3の充電台10に設けられた第1の通風部14と対応する位置に、第2の通風部37が形成されている。第2の通風部37は4個の長孔からなり、1個の第1の通風部14について2個が対応している。第2の通風部37は、飛行ロボット2の本体30の内部に連通している。また、飛行ロボット2の本体30には、第1の通風部14とは異なる位置(接続部とは異なる位置)に、本体30の外部と内部を連通する第3の通風部38が形成されている。この実施形態では、図4及び図6に示すように、第3の通風部38は本体30の側面に形成されている。
【0038】
模式図である図4中には示していないが、この飛行ロボット2は、本体30の内部に充電可能な充電式電池を備えており、前記回転翼33を駆動する図示しないモータに電流を供給することができる。この充電式電池の各端子は、図示しない充電回路を介して、図6に示した前記各係合部35に設けられた電極39にそれぞれ接続されている。
【0039】
詳細は図示しないが、この飛行ロボット2は、その目的に応じた種々の機器等を搭載している。例えば、警備用の飛行ロボット2であれば、監視カメラや視界を照らすための照明装置、通信装置、スピーカー等を搭載していてもよい。例えば、図6において、本体30の前面下方部分に設けられた透光性パネル40の背後に、監視カメラと照明装置を設けることができる。また、飛行ロボット2は、これらの機器等及び前記モータを制御する図示しない制御部を備えている。なお、飛行ロボット2の係合部35に、前記電極39に替え、又は前記電極39と共に、他の送受信端子部を設け、格納装置3にも、前記電極25に替え、又は前記電極25と共に、これに対応する送受信端子部を設け、格納状態において両者を結合させ、格納装置3の図示しない制御部と飛行ロボット2の図示しない制御部との間で、情報の読み出し、書き込み等、何らかの通信又は情報の交換等を行うようにしてもよい。すなわち、格納装置3と飛行ロボット2の使用目的及び当該使用目的に基づく接続の目的は問わない。
【0040】
3.格納システム1の作用等について
図1図4を主に参照しつつ、本格納システム1において、飛行によってモータや充電式電池等が加熱した飛行ロボット2を格納装置3を用いて冷却する場合の手順と、その際の作用及び効果等について説明する。
図2に示すように、格納装置3の天蓋7を開放状態とし、飛行後の飛行ロボット2を人手等で筐体5の上面8に載せ、図3に示すように飛行ロボット2を格納状態に設定する。すなわち、図4図6から理解されるように、飛行ロボット2の係合部35を、格納装置3の充電台10の段部12に係合させ、飛行ロボット2の位置決め孔36に格納装置3の位置決めピン13を挿入し、飛行ロボット2を格納装置3の所定位置に位置決めして図3に示した格納状態とする。これによって、図4に示すように、飛行ロボット2が設置された格納空間Sと、飛行ロボット2の本体30の第3の通風部38と、飛行ロボット2の内部と、飛行ロボット2の接続面34に形成された第2の通風部37と、格納装置3の充電台10に形成された第1の通風部14と、格納装置3の第1の送風管15と、格納装置3の空気出口16との間で空気の流通経路が形成される。
【0041】
図1及び4に示すように、天蓋7を閉鎖状態とする。ここで、格納装置3の第1の送風部17及び第2の送風部21を駆動する。
【0042】
図4に示すように、第2の送風部21の働きにより、格納装置3の外部の空気は、空気入口20からフィルタ22を通過し、第2の送風管18を経て空気放出口19から格納空間Sに入る。また、第1の送風部17の働きにより、格納空間S内の空気は、第3の通風部38から実線矢印Dで示すように飛行ロボット2の本体30の内部に吸い込まれ、本体30内のモータや充電式電池を冷却した後、第2の通風部37を経て、格納装置3の第1の通風部14から第1の送風管15に吸い込まれ、空気出口16から実線矢印Bに示すように筐体5の外部に排出される。
【0043】
このように本実施形態によれば、格納装置3の外部から飛行ロボット2の内部を経て格納装置3の外部に至る流路に沿って強制的に空気の流れを生成し、これにより飛行ロボット2の冷却を行うので、単に、飛行ロボット2を収納した格納装置3の格納空間Sの空気を格納装置3の外部に排出する構造とする場合や、移動体の筐体に向けて風を吹きつけるなど間接的に冷却する場合に比べ、より高い冷却効果が得られる。
【0044】
また、この格納システム1によれば、格納装置3の外部の空気は、格納装置3の第2の送風管18からフィルタ22を通過して格納装置3の格納空間Sに入るので、フィルタ22によって埃等が除去された清浄な空気だけを飛行ロボット2の内部に送り込んで冷却を行うことができる。このため、塵埃の多い屋外に格納装置3を設置しても、飛行ロボット2の内部に塵埃が入り込んで故障を誘発する等の不都合は発生しにくい。
【0045】
また、この記載の格納システム1によれば、第1の送風部17が格納装置3の外部に向けて送り出す空気流の流量よりも、第2の送風部21が格納空間Sに送り込む空気流の流量の方が大きいため、格納空間S内の空気は格納装置3の天蓋7,7の隙間及び天蓋7,7と筐体5の隙間から破線矢印Aに示すように外部に流出することになる。従って、第1の送風部17により形成される空気流によって、格納装置3の天蓋7の隙間及び天蓋7と筐体5の隙間から、外部の空気が格納空間S内に入り込むことはなく、格納装置3の外部から格納空間Sに供給される空気を、フィルタ22を通過した空気のみに限定することができ、清浄な空気のみを飛行ロボット2の内部に送り込んで冷却に供する効果を確実にすることができる。
【0046】
また、この格納システム1によれば、格納装置3の第1の送風管15の空気出口16と、第2の送風管18の空気入口20は、格納装置3の筐体5の異なる壁部4、すなわち右側面側の壁部4cと左側面側の壁部4dにそれぞれ開口しており、空気出口16と空気入口20が筐体5の同一の壁部4において隣接することはない。従って、飛行ロボット2の内部から吸い出されて空気出口16から外部に排出された比較的温度の高い空気が、空気入口20から格納装置3の格納空間Sに吸い込まれて飛行ロボット2の冷却に再度供され、飛行ロボット2の冷却が不十分になる等の不具合が生じるおそれが低減する。
【0047】
また、この格納システム1によれば、飛行ロボット2を格納装置3の所定位置に案内して格納状態とした場合、格納装置3の充電台10に設けられた電極25と、飛行ロボット2の接続面34に設けられた電極39は、互いに接触した状態となり、格納装置3から飛行ロボット2の充電式電池に給電することが可能となる。すなわち、飛行ロボット2を格納状態とすれば、飛行ロボット2の冷却と、飛行ロボット2の電池の充電の両作業の準備を共に完了することができる。また、飛行ロボット2を格納装置3に対して案内し、これを格納状態とする格納機構と、飛行ロボット2の冷却機構と、飛行ロボット2の充電式電池の給電機構の少なくとも各一部の構成を一体化することができるので、複数の機能を備えた格納システム1の構成をコンパクト化することができる。
【0048】
なお、この実施形態では、第2の送風部21が格納装置3の外部から内部に空気を取り入れる空気流(図4の破線矢印C)を形成するとともに、第1の送風部17が第1の送風管15を介して冷却後の空気を格納装置3の外に排出する空気流(図4の実線矢印B及びB)を形成することとしたが、前者の空気流(図4の破線矢印C)を形成する構造(第2の送風管18、空気放出口19、空気入口20、第2の送風部21、フィルタ22)は省略してもよい。この場合、格納装置3の外部から内部に入る空気は開閉機構の隙間から流入することになるが、構造を簡略化しつつ本実施形態と同等な冷却効果を得ることができる。この実施形態は、格納装置3を屋内に設置するため砂埃等の影響が少ない、又は砂埃の混じった空気が流入したとしても移動体に対する悪影響がないと考えられる場合に採用するとよい。また、前者の空気流(図4の破線矢印C)を形成する構造を省略し、第1の送風部17の送風方向を逆向きにして格納装置3の外部から空気を飛行ロボット2の内部に直接送り込むようにすることもできる。但し、第2の送風部21及び第2の送風管18を設けない場合において、第1の送風部17による送風方向を2つの方向のそれぞれに設定して行なった2つの実験の比較結果によれば、本実施例通り、第1の送風部17によって格納装置3から空気を排出する方向に空気を流動させる方が、本実施形態の飛行ロボット2についてはより高い冷却効果が得られた。これは、この方が、第1〜第3の通風部14,37,38及び第1の送風管15等における空気流の乱れが少ないからであると考えられる。
【0049】
なお、以上説明した実施形態では、格納システム1の移動体として飛行ロボット2を例示したが、本発明は、任意の移動手段・移動方法により任意の移動領域を移動する移動体を対象とすることができ、例えば地上を走行する車両等の走行体や、水上・水中を航行する推進体を移動体とすることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1…格納システム
2…移動体としての飛行ロボット
3…格納装置
4…格納装置の筐体の壁部
5…格納装置の筐体
7…格納装置の開閉機構を構成する飛行ロボット
10…案内部としての充電台
14…第1の通風部
15…第1の送風管
16…空気出口
17…第1の送風部
18…第2の送風管
20…空気入口
21…第2の送風部
22…フィルタ
25…格納装置の電極
34…接続面
37…第2の通風部
38…第3の通風部
39…飛行ロボットの電極
S…格納空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7