(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1Aは、この発明の実施の形態1に係る導通構造を備える電子機器1を示す正面図である。
図1Bは、
図1Aの電子機器1をA−A線で切った断面を示す断面拡大図である。
電子機器1は、例えば、カーナビゲーション装置などの車載用の電子機器であり、液晶パネル2と筐体3を備える。液晶パネル2は、
図1Aに示すように筐体3の一面から外部に露出した構成要素であり、外部で発生した静電気が内部の回路基板まで伝わりやすい。
【0011】
例えば、液晶パネル2は、
図1Bに示すように、液晶部2Aがシャーシ4Bに保持され、図示しない回路基板がシャーシ4Bに取り付けられる場合がある。また、液晶部2Aの表示面側には保護板2Bが組み付けられており、保護板2Bは、筐体3の前面側に組み付けられている。このように構成されているので、保護板2Bもしくは筐体3で発生した静電気が、保護板2Bと筐体3との隙間を通って板金製のシャーシ4Bから上記回路基板まで伝わる場合がある。
【0012】
これに対して、従来から、シャーシ4Aを接地電位にしておき、シャーシ4Aとシャーシ4Bとの間を、導電性部材を介して電気的に接続することにより、静電気が回路基板に伝わることを防止する構造が採用されている。
しかしながら、前述したように、板金製のシャーシは、防錆対策としてメッキなどで電気絶縁性のある被膜が表層に形成されている場合が多い。
この場合、シャーシ同士で導電性部材を挟み込んだだけでは、シャーシと導電性部材との導通が不十分であり、シャーシ同士を十分に電気的に接続できない可能性がある。
【0013】
これに対して、この発明に係る導通構造は、半抜き加工などによってシャーシから突出された平面部と下地の板金部材が露出した外周面とを有する突面部を備えている。導電性部材は、外周面から露出した下地の板金部材に接触するように配置される。
このように、突面部の外周面から下地の板金部材を露出させることにより、特許文献1に記載された結合構造のように、突起部の頂点部分の被膜のひび割れから下地の板金部材を露出させる構成に比べて、各段に多くの露出量を得ることができる。また平面部の突出量を変えることにより、下地の板金部材の露出量を調整することも可能となる。
【0014】
図2Aは、実施の形態1に係る導通構造を示す断面図であり、シャーシ4Aのみに突面部4A−4を設けた構造を示している。この構造では、例えば、シャーシ4Bとしては、電気絶縁性の被膜がないものが用いられている。また
図2Bは実施の形態1に係る導通構造の別の例を示す断面図であり、シャーシ4Aに突面部4A−4を設け、シャーシ4Cにも突面部4C−4を設けた構造を示している。
【0015】
図2Aにおいて、シャーシ4Aは、この発明における第1の部材を具体化した構成要素であり、板金部材4A−1が電気絶縁性のある被膜4A−2,4A−3によって覆われた部材である。すなわち、板金部材4A−1の一方側の表層に電気絶縁性の被膜4A−2が形成され、他方側の表層に被膜4A−3が形成されている。
突面部4A−4は、シャーシ4Aの一部から平面部4A−5が突出した状態で形成されており、平面部4A−5の外周面4A−6から下地の板金部材4A−1が露出している。
【0016】
導電性部材5は、平面部4A−5の外周面4A−6から露出した下地に接触して配置される部材であり、例えば、導電性を有し、かつスポンジ状の軟らかい部材で構成される。
具体的には、ステンレスなどの金属製のメッシュの薄いシートでスポンジ部材を覆ったものが挙げられる。このように構成された導電性部材5は、シャーシ4Aとシャーシ4Bとで挟み込まれたときに、
図2Aに示すように突面部4A−4が沈み込んだ状態となって外周面4A−6から露出した下地に接触する。
例えば、シャーシ4Aとシャーシ4Bとで挟み込む前の導電性部材5の高さ方向の寸法が5mmである場合、シャーシ4Aとシャーシ4Bは、導電性部材5を挟み込んで、導電性部材5の高さ方向の寸法が2.5mm程度になるまで圧縮する。これにより、突面部4A−4が導電性部材5に沈み込み、外周面4A−6から露出した下地と導電性部材5とが確実に接触する。
【0017】
図2Bにおいて、シャーシ4Cは、この発明における第2の部材を具体化した構成要素であり、板金部材4C−1が電気絶縁性のある被膜4C−2,4C−3で覆われた部材である。すなわち、被膜4C−2は板金部材4C−1の一方側の表層に形成され、被膜4C−3は他方側の表層に形成されている。
なお、シャーシ4Cは、
図1Bに示したシャーシ4Bのように、液晶部2Aを保持する板金製のシャーシであってもよい。
【0018】
突面部4C−4は、シャーシ4Aと同様に、シャーシ4Cの一部から平面部4C−5が突出した状態で形成され、外周面4C−6から下地の板金部材4C−1が露出している。
図2Bに示すように、導電性部材5は、外周面4C−6から露出した下地にも接触して配置されるので、シャーシ4Cは、導電性部材5を介してシャーシ4Aと導通する。
【0019】
図3Aは、実施の形態1に係る導通構造を構成する板金部材と導電性部材を示す斜視図であり、シャーシ4Aとこれに配置された導電性部材5を示している。また、
図3Bは、
図3Aのシャーシ4Aと導電性部材5をB−B線で切った断面を示す断面矢示図である。
図4Aは、実施の形態1に係る導通構造を構成する板金部材を示す斜視図であり、突面部4A−4を設けたシャーシ4Aを示している。
図4Bは
図4Aのシャーシ4AをC−C線で切った断面を示す断面矢示図である。
【0020】
従来から、導電性部材を介してシャーシ同士を電気的に接続する構造は存在しており、導電性部材は、接着剤または両面粘着テープを用いてシャーシに取り付けられていた。
この構造において、接着剤または両面粘着テープが電気絶縁性のものであると、これらがシャーシと導電性部材との電気的な接続を妨げる要因となり得る。
【0021】
一方、この発明における突面部4A−4は、
図4Aおよび
図4Bに示すように、シャーシ4Aから平面部4A−5を突出させただけの構造を有しており、平面部4A−5は、シャーシ4Aの表層に形成された被膜4A−2に覆われている。
ただし、
図3Aおよび
図3Bに示すように、シャーシ4Aと導電性部材5との導通は、導電性部材5が外周面4A−6から露出した下地に接触することにより確保されている。
そこで、導電性部材5は、平面部4A−5の被膜4A−2上に配置された電気絶縁性の接着剤または両面粘着テープによってシャーシ4Aに取り付けられる。
このようにすることで、シャーシ4Aと導電性部材5との導通を妨げることがなく、導電性部材5をシャーシ4Aに取り付けることが可能となる。
なお、
図4Aにおいては、突面部4A−4を2つ設けた場合を示しているが、1つでも3つ以上であっても構わない。
【0022】
図5は、実施の形態1に係る導通構造の製造方法の概要を示す図であり、突面部4A−4を形成するシャーシ4Aおよびこのシャーシ4Aが配置されたダイ6を、パンチ7の押し込み方向に切った断面を示している。
まず、シャーシ4Aは平面部4A−5と同様な径の穴部を有したダイ6に配置される。
次に、平面部4A−5よりも少し大きな径を有するパンチ7が、シャーシ4Aのダイ6とは反対側の面から矢印D方向に沿ってダイ6側に押し込まれる。
突面部4A−4は、パンチ7の押し込みを、平面部4A−5がシャーシ4Aから完全に抜ける前に止める、いわゆる半抜きを行うことによって形成される。
【0023】
板金部材4A−1は、パンチ7の押し込みでダイ6によって外周面4A−6の被膜4A−2がせん断されることで、外周面4A−6から露出する。
また、パンチ7の押し込み量がE1である場合は、外周面4A−6の高さE2もE1と同様の寸法となる。従って、パンチ7の押し込み量を調整することにより、外周面4A−6から板金部材4A−1が露出する量を調整することができる。
例えば、パンチ7を
図5で破線で示す位置までさらに押し込むことで、平面部4A−5はさらに突出し、板金部材4A−1の露出量も増加する。
なお、半抜き加工で突面部4A−4を形成する場合を示したが、
図2Bに示した突面部4C−4を半抜き加工で形成してもよい。この場合においても、突面部4A−4を半抜き加工で形成した場合と同様の効果が得られる。
【0024】
以上のように、実施の形態1に係る導通構造において、シャーシ4Aは、板金部材4A−1が絶縁性のある被膜4A−2で覆われている。突面部4A−4は、シャーシ4Aから突出し被膜4A−2で覆われた平面部4A−5と下地の板金部材4A−1が露出する外周面4A−6とを有する。導電性部材5は、外周面4A−6から露出した下地の板金部材4A−1に接触して配置される。
このようにシャーシ4Aに設けた突面部4A−4の外周面4A−6から下地の板金部材4A−1を露出させるので、従来のように突起部の頂点部分の被膜のひび割れから下地の金属を露出させる構造よりも露出量が多くかつ平面部の突出量に応じて露出量を調整することもできる。これにより、絶縁性のある被膜4A−2を有したシャーシ4Aと導電性部材5との導通を十分に確保することができ、この導通構造を備えた電子機器1における静電気あるいはEMIの対策の効果を向上させることができる。
【0025】
また、実施の形態1に係る導通構造は、板金部材4C−1が絶縁性のある被膜4C−2で覆われているシャーシ4Cと、シャーシ4Cから突出し被膜4C−2で覆われた平面部4C−5と下地の板金部材4C−1が露出する外周面4C−6とを有する突面部4C−4とを備える。シャーシ4Cは、外周面4C−6から露出した下地の板金部材4C−1に接触して配置される導電性部材5を介してシャーシ4Aと導通する。
なお、実施の形態1において、平面部4A−5および平面部4C−5は、円形であり、突面部4A−4および突面部4C−4は、円柱形状である。
このように構成しても、導電性部材5を介してシャーシ4Aとシャーシ4Cとの導通を十分に確保することができる。
【0026】
さらに、実施の形態1に係る導通構造の製造方法において、平面部4A−5または平面部4C−5を半抜き加工して突面部4A−4または突面部4C−4を形成している。
このようにすることで、突面部4A−4を容易に形成することができる。また、パンチ7の押し込み量を調整することにより、外周面4A−6からの板金部材4A−1の露出量を調整することが可能である。これにより、シャーシ4Aと導電性部材5との導通を調整することができ、この導通構造を備えた電子機器1における静電気あるいはEMIの対策の効果を向上させることができる。
【0027】
実施の形態2.
実施の形態1では、平面部4A−5または平面部4C−5の突出量で板金部材4A−1または板金部材4C−1が露出する量を調整したが、実施の形態2では、平面部の形状で下地の板金部材が露出する量を変える構造について述べる。
図6Aは、この発明の実施の形態2に係る導通構造を構成する板金部材の例を示す正面図であり、シャーシ4Aに突面部4A−7を設けた構造を示している。また、
図6Bは、
図6Aのシャーシ4Aを示す斜視図である。
【0028】
図6Aに示すように、平面部4A−8は星形であり、突面部4A−7は、
図6Bに示すように、端面が星形の多角柱形状である。このように構成することでも、平面部4A−8の外周面4A−9から下地の板金部材が露出する。
実施の形態1で示した導電性部材5は、この外周面4A−9から露出した下地の板金部材に接触して配置されるので、シャーシ4Aと導電性部材5との導通を十分に確保することができる。これにより、この導通構造を備えた電子機器1における静電気あるいはEMIの対策の効果を向上させることができる。
【0029】
図7Aは、実施の形態2に係る導通構造を構成する板金部材の別の例を示す正面図であり、シャーシ4Aに突面部4A−10を設けた構造を示している。また、
図7Bは
図7Aのシャーシ4Aを示す斜視図である。
図7Aに示すように、平面部4A−11は四角形であり、突面部4A−10は、
図7Bに示すように、端面が四角形の多角柱形状である。このように構成することでも、平面部4A−11の外周面4A−12から下地の板金部材が露出する。
実施の形態1で示した導電性部材5は、この外周面4A−12から露出した下地の板金部材に接触して配置されるので、シャーシ4Aと導電性部材5との導通を十分に確保することができる。これにより、この導通構造を備えた電子機器1における静電気あるいはEMIの対策の効果を向上させることができる。
【0030】
図8Aは、実施の形態2に係る導通構造を構成する板金部材のさらに別の例を示す正面図であり、シャーシ4Aに突面部4A−13を設けた構造を示している。また、
図8Bは
図8Aのシャーシ4Aを示す斜視図である。
図8Aに示すように、平面部4A−14は三角形であり、突面部4A−13は、
図8Bに示すように、端面が三角形の多角柱形状である。このように構成することでも、平面部4A−14の外周面4A−15から下地の板金部材が露出する。
実施の形態1で示した導電性部材5は、この外周面4A−15から露出した下地の板金部材に接触して配置されるので、シャーシ4Aと導電性部材5との導通を十分に確保することができる。これにより、この導通構造を備えた電子機器1における静電気あるいはEMIの対策の効果を向上させることができる。
【0031】
以上のように、実施の形態2に係る導通構造において、平面部4A−8,4A−11,4A−14は多角形であり、突面部4A−7,4A−10,4A−13は多角柱形状である。このように構成することで、従来のように突起部の頂点部分から下地の金属を露出させる構造よりも露出量が多く、平面部4A−8,4A−11,4A−14の形状に応じて露出量を調整することもできる。
従って、絶縁性の被膜4A−2を有したシャーシ4Aと導電性部材5との導通を十分に確保することができ、この導通構造を備えた電子機器における静電気あるいはEMIの対策の効果を向上させることができる。
【0032】
また、突面部4A−4と突面部4C−4の両方を形成する場合において、これらの突面部の平面部の形状を同一にしてもよいし、異なるものとしてもよい。
さらに、
図4Aに示したように1つの導電性部材に対して複数の突面部を設ける場合、突面部の平面部の形状または大きさをそれぞれ変えてもよい。
さらに、実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせて、平面部の形状と突出量を変えて外周面から下地の板金部材が露出する量を調整してもよい。
さらに、導電性部材5を、導電性を有しかつスポンジ状の軟らかい部材で構成した場合を示したが、突面部が嵌合される穴部を有した硬い部材で構成してもよい。
すなわち、導電性部材は、シャーシに配置したときに平面部の外周面に接触することができる構成であればよい。
【0033】
なお、本発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。