(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ガスコンロに設けられるコンロバーナーは、燃料ガスと一次空気とを混合して混合ガスを生成するバーナーボディーと、バーナーボディーの上に載置されるバーナーヘッドとを備えている。バーナーヘッドの外縁部分には円環形状の筒状壁が下方に向けて突設されており、この筒状壁の下端の面には、筒状壁の内側から外側に貫通する溝(炎口溝)が複数本形成されている。バーナーボディーの上にバーナーヘッドを載せると筒状壁の底面が載置面に当接した状態となって、筒状壁の外周側面には複数の炎口溝が開口した状態となる。これら炎孔溝が外周側面に開口した箇所が炎口となり、炎口から流出する混合ガスが燃焼して、バーナーヘッドの周囲に炎が形成される。
【0003】
混合ガスへの点火は、バーナーヘッドの側方に設けた点火プラグを用いて行われる。すなわち、バーナーヘッドには点火プラグに向けて開口する点火炎口が設けられており、点火炎口の上方にはバーナーヘッドから点火プラグに向けて点火用ターゲットが突設されている。そして、点火の際には、点火プラグから点火用ターゲットに向かって火花放電しながら複数の炎口から混合ガスを流出させる。すると、先ず始めに、点火炎口から流出した混合ガスが点火プラグからの火花放電によって点火され、その炎が隣の炎口に火移りして、その炎口から流出する混合ガスが着火する。すると、その炎が更に隣の炎口に火移りする。こうして、次々に火移りさせることによって、全ての炎口から流出する混合ガスに点火することができる。
【0004】
また、近年では、小径の調理容器を用いた場合でも、点火時の炎が調理容器の底から溢れることが無いように、点火時の混合ガスの流量を小さな流量に設定する傾向にある。点火時の混合ガスの流量を小さな流量に設定すると、点火炎口から流出した混合ガスが点火プラグで点火されるまでの間に希釈され易くなるので着火し難くなる。そこで、バーナーヘッドの外周側面の点火プラグに面する側に、点火プラグに向けて突設させた凸部を設けて、その凸部に点火炎口を形成することによって、点火炎口を点火プラグに近付けたコンロバーナーも提案されている(特許文献1)。このようなコンロバーナーでは、点火炎口から流出した混合ガスが点火されるまでの間に希釈されることを抑制することができるので、着火し難くなる事態を回避することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、点火時の混合ガスの流量を小さな流量に設定すると、点火時に僅かな横風が存在するだけでも安定して点火することが困難になるという問題があった。これは、点火時に横風を受けると、点火炎口から流出した混合ガスが流されてしまい、点火用ターゲットまで到達することが困難になるためである。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、点火時に横風を受けるような状況下でも、安定して点火することが可能なコンロバーナーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために本発明のコンロバーナーは次の構成を採用した。すなわち、
外周側面に設けられた複数の炎口から燃料ガスと一次空気との混合ガスを流出させるバーナーヘッドと、該バーナーヘッド
が載置されるバーナーボディーと、前記バーナーヘッドの点火用ターゲットに向けて火花放電を行うことによって前記混合ガスに点火する点火プラグとを備えるコンロバーナーにおいて、
前記バーナーヘッドの前記外周側面の前記点火プラグに面する側には、前記点火プラグに向けて前記混合ガスを流出させる複数の点火炎口
と、前記点火炎口の上方から前記点火プラグに向けて、前記バーナーボディーの外周壁よりも外側の位置まで突設された庇部とが設けられており、
前記庇部の下面側には、下方に向けて突出した前記点火用ターゲットが、前記バーナーボディーの前記外周壁よりも外側の位置に形成されており、
前記複数の点火炎口は、前記外周側面の周方向に並べて形成されており、
互いに隣接する前記点火炎口の間には、
前記バーナーヘッドの前記外周側面から、前記点火プラグに向けて突出した突壁が形成されて
おり、
前記突壁が突出する長さは、前記バーナーボディーの前記外周壁よりも外側の位置には達するが、前記点火用ターゲットには達しない長さに設定されている
ことを特徴とする。
【0009】
かかる本発明のコンロバーナーにおいては、バーナーヘッドの外周側面に複数の炎口が設けられており、炎口から流出する混合ガスが燃焼することによってバーナーヘッドの周囲に炎が形成される。また、バーナーヘッドの外周側面の点火プラグに面する側には、点火プラグに向けて混合ガスを流出させる複数の点火炎口が、外周側面の周方向に並んだ状態で形成されて
いる。更に、複数の点火炎口の上方の外周側面からは、点火プラグに向かって、バーナーボディの外周壁よりも外側の位置まで達する庇部が突設されると共に、庇部の下面側には、下方に向けて突出した点火用ターゲットが、バーナーボディーの外周壁よりも外側の位置に形成されている。そして、点火プラグから点火用ターゲットに向けて火花放電することによって、点火炎口から流出する混合ガスに点火する。ここで、点火炎口と点火炎口との間には、
バーナーヘッドの外周側面から連続させて点火プラグに向けて突出した突壁が形成されて
おり、その突壁の長さは、バーナーボディーの外周壁よりも外側の位置までは達するが、点火用ターゲットに達しない長さに設定されている。
【0010】
こうすれば、バーナーヘッドの点火時にバーナーヘッドが横風を受ける場合でも、点火炎口から流出した混合ガスは、隣の点火炎口との間
の位置で、バーナーヘッドの外周側面から連続させて突出
させた突壁によって遮られてそれ以上に流されることが無く、点火
用ターゲットの方向に流れることになる。このため、横風を受ける状況下でも、点火
用ターゲットの周囲に混合ガスが供給されることになるので、点火プラグ
から点火用ターゲットに火花放電することで安定して点火することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明のコンロバーナーにおいては、外周側面の点火プラグに面する側の中央に中央点火炎口を設け、点火プラグの方向に向かって中央点火炎口の左隣に左点火炎口を設け、更に、点火プラグの方向に向かって中央点火炎口の右隣には右点火炎口を設けても良い。そして、中央点火炎口と左点火炎口との間、および中央点火炎口と右左点火炎口との間に、それぞれ突壁を形成してもよい。
【0012】
こうすれば、例えば左側からの横風を受けた場合には、左点火炎口から流出した混合ガスを、左点火炎口と中央点火炎口との間に設けた突壁によって点火プラグの方向に導くことができる。また、右側からの横風を受けた場合には、右点火炎口から流出した混合ガスを、右点火炎口と中央点火炎口との間の突壁によって点火プラグの方向に導くことができる。更に、横風を受けない場合には、中央点火炎口から流出した混合ガスを点火プラグの方向に導くことができる。このため、風の影響を受けることなく、点火プラグの周囲に混合ガスを供給することができるので、点火プラグを用いて安定して点火することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明のコンロバーナーにおいては、突壁の下端に、突壁が切り欠かれた切欠部を設けることとしても良い。
【0014】
こうすれば、複数の点火炎口の中で何れかの点火炎口から流出した混合ガスに点火することができれば、その点火炎口で生じた炎を、切欠部を介して隣の点火炎口に火移りさせることによって全ての点火炎口に点火することができる。このため、横風が存在するような状況下でも、点火プラグを用いて安定して且つ容易に点火することが可能となる。
【0015】
また、上述した本発明のコンロバーナーにおいては、バーナーヘッドの外周側面の点火プラグに面する側を、点火プラグに向けて突出させた突形状に形成し、その突形状の部分に、複数の点火炎口を形成することとしてもよい。
【0016】
こうすれば、バーナーヘッドの外周側面から突形状の部分を突設させた分だけ、点火炎口を点火プラグに近付けることができる。このため、点火炎口から流出した混合ガスが点火プラグに達するまでの間に、周囲の空気で薄まることを抑制することができるので、横風を受ける場合でも、点火プラグを用いて安定して且つ容易に点火することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本実施例のコンロバーナー10を搭載したガスコンロ1の外観形状を示す斜視図である。図示されるように、ガスコンロ1は、ガラス製あるいは金属製の天板2と、天板2に開口する後述のバーナー用開口を通して天板2の上方に突設されたコンロバーナー10と、天板2上に置かれて鍋などの調理容器をコンロバーナー10の上方で支持する五徳3と、バーナー用開口とコンロバーナー10との間を塞ぐバーナーリング4などを備えている。
【0019】
コンロバーナー10は、点火プラグ11と、バーナーボディー12と、バーナーボディー12の上に載置されたバーナーヘッド14と、バーナーヘッド14の上に取り付けられた幅広の円環形状のバーナーカバー16と、バーナーカバー16の中央の貫通穴から突出して設けられた温度センサー18などを備えている。尚、コンロバーナー10には失火検知用の熱電対も設けられているが、これについては本発明との関連性が薄いので図示を省略している。
【0020】
後述するようにバーナーボディー12の内部には混合室が設けられており、燃料ガスと一次空気とを混合させて混合ガスを形成する。バーナーヘッド14の外周側面は概ねには円筒形状に形成されており、この外周側面には、上下方向に縦長に開口して混合ガスが流出する主炎口15aと、主炎口15aよりも上下方向に短く開口して混合ガスが流出する保炎口15bとが形成されている。尚、以下では、主炎口15aと保炎口15bとをまとめて単に「炎口15」と称することがある。
【0021】
また、バーナーヘッド14には、点火プラグ11に面する側の上部から外側(点火プラグ11が設けられた方向)に向けて庇部20が突設されている。詳細には後述するが、庇部20の下方のバーナーヘッド14の側面は、点火プラグ11に向けて突形状に形成されており、この突形状に形成された部分にも、点火プラグ11に向けて開口する炎口(点火炎口)が形成されている。更に、庇部20の下面側には後述する点火用ターゲット20tが設けられている。このため、点火プラグ11から点火用ターゲット20tに向けて火花放電を行いながら、炎口15および後述する点火炎口から混合ガスを流出させると、火花放電によって混合ガスに点火して燃焼を開始することができる。
【0022】
バーナーカバー16は、調理中の調理容器から噴きこぼれた煮こぼれ汁が、バーナーヘッド14やバーナーボディー12内に侵入することを防止する。また、温度センサー18は、図示しないコイルバネで上方に付勢されて上下方向に伸縮自在に構成されており、五徳3の上に調理容器が置かれると調理容器の底面で下方に押し下げられる。このため温度センサー18は、上端面が調理容器の底面と密着した状態となって、調理容器の温度を正確に計測することができる。
【0023】
図2は、ガスコンロ1の断面を取ることによってコンロバーナー10の構造を示した説明図である。コンロバーナー10のバーナーボディー12は、プレス成形された2枚の板金を向かい合わせて、気密な状態に組み付けることによって構成されている。そして、一方の板金が外周壁12aを構成し、他方の板金が内周壁12bを構成して、外周壁12aと内周壁12bとの間に混合室12cが形成されている。外周壁12aの上端部分は内側に向けて折り曲げられて、斜め下方に傾斜する円環形状の載置面12dが形成されている。バーナーヘッド14は、この載置面12dの上に載せられる。
【0024】
バーナーヘッド14は、鋳造や、鍛造、ダイカストなどの方法によって製造された略円環形状の部品であり、外縁部分には下方に向けて円環状の筒状壁14rが突設され、更に内縁部分には筒状の支持筒14tが下方に向けて立設されている。バーナーヘッド14は、バーナーボディー12の内周壁12bに支持筒14tを嵌合させた状態で、載置面12dに筒状壁14rの下端の面(以下、下端面)を当接させてバーナーボディー12に載置される。また、筒状壁14rの下端面には、筒状壁14rの半径方向に横断する複数本の溝(炎口溝)が形成されている。炎口溝には、深い溝(主炎口溝14a)と、浅い溝(保炎口溝14b)とが設けられており、主炎口溝14aが筒状壁14rの外周側面に開口する部分が主炎口15aとなり、保炎口溝14bが開口する部分が保炎口15bとなる。
【0025】
バーナーヘッド14の上部には、図示しない取付金具によって略円板状のバーナーカバー16が取り付けられている。更に、バーナーカバー16の中心位置に形成された貫通穴からは、円筒形状の温度センサー18が突設されている。温度センサー18は、バーナーヘッド14の支持筒14tの中央を貫通する支持ポール19の上端に取り付けられており、五徳3に調理容器が置かれていない時の温度センサー18の上端は五徳3の上面よりも突出している。また、バーナーボディー12の上部(載置面12dが形成されている部分)は、天板2に開口するバーナー用開口2aから突設されており、バーナーボディー12とバーナー用開口2aとの隙間は円環状のバーナーリング4で塞がれている。
【0026】
図3は、点火プラグ11に面する側のバーナーヘッド14の詳細な形状を示した拡大図である。
図3(a)には、バーナーヘッド14が点火プラグ11に面する側を、斜め上方から見た拡大図が示されており、
図3(b)には、斜め下方から見た拡大図が示されている。前述したように、本実施例のバーナーヘッド14は外周側面14sが円筒形状に形成されており、外周側面14sには複数の主炎口15aおよび保炎口15bが開口している。また、
図3(a)に示されるように、バーナーヘッド14の点火プラグ11に面する側は、バーナーヘッド14の外周側面14sを点火プラグ11に向かって円弧状に突出させることによって凸部22が形成されており、凸部22の上部からは庇部20が点火プラグ11に向かって延設されている。また、凸部22の下端面には、バーナーヘッド14の中心から凸部22を半径方向に横断する炎口溝(点火炎口溝)が形成されており、点火炎口溝が凸部22の外周面に開口する部分に点火炎口が形成される。尚、この凸部22が、本発明の「外周側面が突形状に形成された部分」に対応する。また、バーナーボディー12の外周壁12aには、凸部22の下方の部分が、点火プラグ11から遠ざかる方向に窪んだ形状となっており、この部分に凹部12eが形成されている。
【0027】
図3(b)には、バーナーヘッド14の凸部22の部分を、
図3(a)中に矢視Pで示した斜め下方の方向から見た拡大図が示されている。
図3(b)に示すように、本実施例のバーナーヘッド14では、円弧状に突設された凸部22の頂部(点火プラグ11に最も近い部分)に、中央点火炎口24aが形成されており、中央点火炎口24aの上方には、庇部20の下面側から下方に向けて突出させて、点火用ターゲット20tが形成されている。また、バーナーヘッド14の側から見て中央点火炎口24aの左側(
図3(b)の紙面上では右側)には、左点火炎口24bが形成されており、バーナーヘッド14の側から見て中央点火炎口24aの右側(
図3(b)の紙面上では左側)には、右点火炎口24cが形成されている。尚、以下では、中央点火炎口24a、左点火炎口24b、および右点火炎口24cをまとめて、単に「点火炎口24」と称することがある。更に、中央点火炎口24aと左点火炎口24bとの間には、外側(点火プラグ11の方向)に向かって突出した突壁21が形成されており、中央点火炎口24aと右点火炎口24cとの間にも、外側に向かって突出した突壁21が形成されている。そして、これらの突壁21の上端側は、庇部20の下面の点火用ターゲット20tが突設された箇所まで延設されている。
【0028】
このような本実施例のコンロバーナー10では、中央点火炎口24aと左点火炎口24bとの間に、あるいは中央点火炎口24aと右点火炎口24cとの間に突壁21が形成されているので、横風が存在するような状況下でも、点火プラグ11を用いて安定して点火することができる。この理由について、
図4を参照しながら詳しく説明する。
【0029】
図4には、点火時に点火炎口24から流出する混合ガスの流れが、バーナーヘッド14を下面側から見た状態で示されている。図中に示した破線の矢印が、点火炎口24から流出する混合ガスの流れを表している。風の無い状況下では、
図4(a)に示したように、中央点火炎口24aから流出する混合ガスが点火用ターゲット20tおよび点火プラグ11の方向に向かって直進する。更に、中央点火炎口24aの左右にある左点火炎口24bおよび右点火炎口24cからも、点火用ターゲット20tおよび点火プラグ11の周囲に混合ガスが供給される。このため、風の無い状況下では、点火プラグ11から点火用ターゲット20tに向けて火花放電することで、混合ガスに安定して点火することができる。
【0030】
これに対して、
図4(b)には、バーナーヘッド14の右側から横風を受ける場合が示されている。尚、
図4はバーナーヘッド14を下方から見た状態で示しているので、バーナーヘッド14の右側から受ける横風は、図面上では左からの矢印によって表されている。図中に破線の矢印で示したように、右側からの横風を受けると、それぞれの点火炎口24から流出する混合ガスは、進行方向が左向きに(図上では右向きに)曲げられる。しかし、右点火炎口24cから流出した混合ガスについては、右点火炎口24cと中央点火炎口24aとの間に突壁21が設けられているので、横風による進行方向の曲がりが抑制される。その結果、点火用ターゲット20tおよび点火プラグ11の周囲に混合ガスを供給することができるので、点火プラグ11(
図3参照)から点火用ターゲット20tに向けて火花放電することで、混合ガスに安定して確実に点火することができる。
【0031】
バーナーヘッド14が左側から横風を受ける場合も、同様な説明が当て嵌まる。
図4(c)には、バーナーヘッド14が左側から(図面上では右側から)横風を受ける場合が示されている。左側からの横風を受けた場合は、図中に破線の矢印で示したように、点火炎口24から流出する混合ガスの進行方向が右向きに(図上では左向きに)曲げられる。しかし、左点火炎口24bから流出した混合ガスについては、左点火炎口24bと中央点火炎口24aとの間に設けられた突壁21によって進行方向の曲がりが抑制されるので、点火用ターゲット20tおよび点火プラグ11の周囲に混合ガスを供給することができる。このため、左側から横風を受けた場合でも、点火プラグ11(
図3参照)から点火用ターゲット20tに向けて火花放電することで、安定して点火することが可能となる。
【0032】
加えて、本実施例のコンロバーナー10では、複数の点火炎口24(ここでは、中央点火炎口24a、左点火炎口24b、右点火炎口24c)が、外側に向けて円弧状に突設した凸部22に形成されている。このため、これらの点火炎口24を外周側面14sに設けた場合よりも、点火炎口24から点火用ターゲット20tおよび点火プラグ11までの距離が短くなっているので、点火炎口24から流出した混合ガスが点火用ターゲット20tや点火プラグ11の周囲に達するまでの間に、混合ガスが空気で薄まることを抑制することができる。その結果、横風を受ける状況下でも、点火用ターゲット20tや点火プラグ11の周辺の混合ガスの濃度を、容易に点火可能な濃度に保っておくことができるので、点火プラグ11からの火花放電によって安定して点火することが可能となる。
【0033】
上述した本実施例のコンロバーナー10には、複数の変形例が存在する。以下では、これらの変形例について、本実施例との相違点に焦点を当てて簡単に説明する。
【0034】
上述した実施例では、
図3(b)に示したように、突壁21の上端側は庇部20の下面に達するまで延設されており、更に、突壁21の下端側は円弧状に突設された凸部22の下面まで延設されているものとして説明した。従って、中央点火炎口24aの外側の空間と左点火炎口24bの外側の空間とは、間に突設された突壁21によって仕切られた状態となっている。更に、中央点火炎口24aの外側の空間と右点火炎口24cの外側の空間とも、突壁21によって仕切られた状態となっている。しかし、突壁21の一部に切欠部21cを設けて、中央点火炎口24aの外側の空間と左点火炎口24bの外側の空間とを一部連通させ、同様に、中央点火炎口24aの外側の空間と右点火炎口24cの外側の空間とも一部連通させることとしてもよい。
【0035】
図5は、突壁21の一部に切欠部21cを設けた第1変形例についての説明図である。
図5(a)に示した例では、突壁21の下端に切欠部21cが設けられている。こうすれば、中央点火炎口24aと左点火炎口24bとの間で、あるいは中央点火炎口24aと右点火炎口24cとの間で、切欠部21cを介して炎を火移りさせることができる。このため、中央点火炎口24a、左点火炎口24b、右点火炎口24cの何れかの混合ガスに点火して着火させることができれば、全ての点火炎口24の混合ガスに着火させることができるので、横風を受ける状況下でも安定して点火させることが可能となる。尚、切欠部21cを設ける位置は突壁21の下端に限られるものではない。例えば、
図5(b)に示したように、突壁21の上端に設けることとしてもよい。このようにしても、中央点火炎口24a、左点火炎口24b、右点火炎口24cの何れかの混合ガスに点火すれば、全ての点火炎口24の混合ガスに着火させることができるので、横風を受ける状況下でも安定して点火させることが可能となる。
【0036】
また、上述した実施例あるいは変形例では、点火炎口24が、点火用ターゲット20tおよび点火プラグ11に正対する中央点火炎口24aと、その左側に設けられた左点火炎口24bと、右側に設けられた右点火炎口24cの少なくとも3つの炎口を有するものとして説明した。しかし、点火炎口24は複数の炎口が並んだ状態で設けられていれば良く、従って、点火用ターゲット20tおよび点火プラグ11に正対する中央点火炎口24aについては、必ずしも設けなくても良い。
【0037】
図6は、点火用ターゲット20tおよび点火プラグ11に正対する中央点火炎口24aを備えておらず、従って、左点火炎口24bおよび右点火炎口24cの2つで点火炎口24が形成されている第2変形例についての説明図である。尚、
図6についても、前述した
図4と同様に、バーナーヘッド14を下面側から見た状態で示されている。従って、図面上では左右が逆に表示されている。また、
図6に示した例では、左点火炎口24bおよび右点火炎口24cが、凸部22ではなく、外周側面14sに形成されているものとしているが、前述した本実施例のバーナーヘッド14と同様に、凸部22に左点火炎口24bおよび右点火炎口24cを形成しても良い。そして、第2変形例のバーナーヘッド14では、左点火炎口24bと右点火炎口24cとの間に、点火用ターゲット20tに向かって突壁21が突設されている。このような第2変形例でも、以下のような理由から、横風の影響を受けることなく、点火プラグ11を用いて安定して点火することができる。
【0038】
先ず始めに、風の無い状況下では、
図6(a)中に破線の矢印で示したように、左点火炎口24bおよび右点火炎口24cから流出する混合ガスが、点火用ターゲット20tおよび点火プラグ11の周囲に向かって直進する。このため、点火プラグ11から点火用ターゲット20tに向けて火花放電することで、混合ガスに安定して点火することができる。
【0039】
また、バーナーヘッド14が右側から横風を受ける場合には、
図6(b)中に破線の矢印で示したように、左点火炎口24bおよび右点火炎口24cから流出する混合ガスは、進行方向が左向きに曲げられる。尚、
図6はバーナーヘッド14を下面側から見ているので、図面上では左右が逆に表示されている。しかし、右点火炎口24cと左点火炎口24bとの間には突壁21が突設されているので、右点火炎口24cから流出した混合ガスについては、突壁21に遮られて、横風による進行方向の曲がりが抑制される。その結果、右点火炎口24cからの混合ガスを点火用ターゲット20tおよび点火プラグ11の周囲に供給することができるので、点火プラグ11から点火用ターゲット20tに向けて火花放電することで、横風を受ける状況下でも混合気に安定して点火することができる。
【0040】
バーナーヘッド14が左側から横風を受ける場合も、同様な説明が当て嵌まる。すなわち、
図6(c)に示したように、バーナーヘッド14が左側から(図面上では右側から)横風を受けると、左点火炎口24bおよび右点火炎口24cから流出する混合ガスの進行方向が右向きに(図上では左向きに)曲げられる。しかし、左点火炎口24bから流出した混合ガスについては、突壁21によって進行方向の曲がりが抑制されるので、点火用ターゲット20tおよび点火プラグ11の周囲に混合ガスを供給することができる。このため、左側から横風を受けた場合でも、点火プラグ11を用いて安定して混合ガスに点火することが可能となる。
【0041】
以上、本実施例および各種の変形例について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0042】
例えば、上述した実施例および変形例では、点火炎口24の数が2つ、または3つの場合について説明した。しかし、点火炎口24の数は複数であれば十分であり、4つ以上とすることもできる。また、4つ以上の点火炎口24を有する場合には、隣接する点火炎口24の間に必ず突壁21を設ける必要は無く、一部の点火炎口24については隣接する点火炎口24との間に突壁21が設けられていなくても構わない。この場合でも、突壁21が設けられている点火炎口24から流出した混合ガスについては、横風を受ける状況下でも、点火用ターゲット20tおよび点火プラグ11に向けて供給されることになる。このため、上述したメカニズムによって安定して混合ガスに点火することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1…ガスコンロ、 2…天板、 2a…バーナー用開口、
3…五徳、 4…バーナーリング、 10…コンロバーナー、
11…点火プラグ、 12…バーナーボディー、 12a…外周壁、
12b…内周壁、 12c…混合室、 12d…載置面、
12e…凹部、 14…バーナーヘッド、 14a…主炎口溝、
14b…保炎口溝、 14r…筒状壁、 14s…外周側面、
14t…支持筒、 15…炎口、 15a…主炎口、
15b…保炎口、 16…バーナーカバー、 18…温度センサー、
19…支持ポール、 20…庇部、 20t…点火用ターゲット、
21…突壁、 21c…切欠部、 22…凸部、
24…点火炎口、 24a…中央点火炎口、 24b…左点火炎口、
24c…右点火炎口。