特許第6624998号(P6624998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6624998ボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法および形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624998
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】ボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法および形成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20191216BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20191216BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/42
   C23C16/02
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-69597(P2016-69597)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-183551(P2017-183551A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】岡田 充弘
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−082986(JP,A)
【文献】 特開2013−089889(JP,A)
【文献】 特開2011−254063(JP,A)
【文献】 特開2012−186275(JP,A)
【文献】 特開2008−053605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/02
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体表面の下地の上にボロンドープシリコンゲルマニウム膜を形成するボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法であって、
前記下地表面に、300℃以下の温度で、ボロンと水素を含み塩素を含まないボロン含有ガスを吸着させてシード層を形成する工程と、
その後、前記シード層が吸着された前記下地表面に、シリコン原料ガス、ゲルマニウム原料ガス、およびボロンドープガスを用いてCVD法によりボロンドープシリコンゲルマニウム膜を成膜する工程と
を有することを特徴とするボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法。
【請求項2】
前記被処理体は、その表面に前記下地を構成するTiN膜を有することを特徴とする請求項1に記載のボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法。
【請求項3】
前記シード層を形成する際に、前記ボロン含有ガスとしてジボランガスを用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法。
【請求項4】
前記シード層を形成する際の温度が250〜300℃であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法。
【請求項5】
前記ボロンドープシリコンゲルマニウムを成膜する際に、前記シリコン原料ガスとしてシラン系化合物を用い、ゲルマニウム原料ガスとしてゲルマン系化合物を用いることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法。
【請求項6】
前記シラン系化合物は、モノシランまたはジシランであり、前記ゲルマン系化合物は、モノゲルマンまたはジゲルマンであることを特徴とする請求項に記載のボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法。
【請求項7】
前記ボロンドープガスは、三塩化ボロンガスまたはジボランガスであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法。
【請求項8】
前記ボロンドープシリコンゲルマニウム膜を成膜する際の温度が、450℃以下であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法。
【請求項9】
前記ボロンドープシリコンゲルマニウム膜を成膜する際の温度が、380〜430℃であることを特徴とする請求項に記載のボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法。
【請求項10】
前記ボロンドープシリコンゲルマニウム膜を成膜する際の温度が、380〜400℃であることを特徴とする請求項に記載のボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法。
【請求項11】
前記ボロンドープシリコンゲルマニウム膜は、ゲルマニウムの濃度が
20〜90at%の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法。
【請求項12】
被処理体表面の下地の上にボロンドープシリコンゲルマニウム膜を形成するボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成装置であって、
前記被処理体を収容する処理容器と、
前記処理容器内に所定のガスを供給するガス供給部と、
前記処理容器内を加熱する加熱機構と、
前記処理容器内を排気して減圧状態とする排気機構と、
前記ガス供給部、前記加熱機構、および前記排気機構を制御する制御部と
を具備し、
前記制御部は、
前記加熱機構により、前記処理容器内を300℃以下の温度に制御し、前記ガス供給部に、ボロンと水素を含み塩素を含まないボロン含有ガスを前記処理容器内に供給させて、前記下地表面に、前記ボロン含有ガスを吸着させてシード層を形成させ、
前記加熱機構により、前記処理容器内を成膜温度に制御し、前記ガス供給部に、シリコン原料ガス、ゲルマニウム原料ガス、およびボロンドープガスを前記処理容器内に供給させて、前記シード層が吸着された前記下地表面に、CVD法によりボロンドープシリコンゲルマニウム膜を成膜させることを特徴とするボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成装置。
【請求項13】
前記処理容器は、前記被処理体が複数保持された基板保持具が収容され、複数の基板に対して処理が行われることを特徴とする請求項12に記載のボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成装置。
【請求項14】
コンピュータ上で動作し、成膜装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項11のいずれかのボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法が行われるように、コンピュータに前記成膜装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法および形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、DRAM(Dynamic Random Access Memory)は微細化が進み、DRAMに用いられるキャパシタは、より大きな容量を得るために、立体的なシリンダ構造となっている。具体的には、立体形成された下部電極の表面を容量絶縁膜で覆い、さらに容量絶縁膜の表面を上部電極で覆うことにより形成される。上部電極を形成した段階では、隣接するキャパシタの間に空隙が生じるため、その空隙を埋める導電体層として、導電性が高く低温成膜が可能なボロンドープシリコンゲルマニウム(B−SiGe)膜が用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
一方、B−SiGe膜はCVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜されるが、上部電極上にB−SiGe膜を形成すると膜厚分布が著しく悪化するため、特許文献1では上部電極上にモノシランを熱分解した成分を吸着させて表面改質層(シード層)を形成し、その上にB−SiGe膜を形成することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、下地にボロンドープシリコン膜を十分に被覆してからゲルマニウム膜を成膜することで、ゲルマニウムが均一に成長することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−89889号公報
【特許文献2】特開2010−118643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、DRAMはさらなる微細化が要求されており、それにともなってB−SiGe膜の表面積が増大しており、下地の状態による膜厚のばらつきをさらに抑制することが要求されているが、特許文献1に記載されたモノシランの分解物からなるシード層ではシード効果が十分なものとはいえなくなっている。また、B−SiGe膜の成膜温度をさらに低温化することも要求されている。
【0007】
一方、DRAMに用いられるB−SiGe膜は、低温成膜であっても、膜形成した段階で多結晶状態となっている必要があるが、特許文献2に記載されたように、ボロンドープシリコン膜で被覆した後にB−SiGe膜を形成する場合には、B−SiGe膜がアモルファスの膜となってしまう。
【0008】
したがって、本発明は、下地の状態による膜厚のばらつきが小さく、低温成膜可能であり、多結晶膜として形成することができるボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法および形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、被処理体表面の下地の上にボロンドープシリコンゲルマニウム膜を形成するボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法であって、前記下地表面に、300℃以下の温度で、ボロンと水素を含み塩素を含まないボロン含有ガスを吸着させてシード層を形成する工程と、その後、前記シード層が吸着された前記下地表面に、シリコン原料ガス、ゲルマニウム原料ガス、およびボロンドープガスを用いてCVD法によりボロンドープシリコンゲルマニウム膜を成膜する工程とを有することを特徴とするボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法を提供する。
【0010】
上記第1の観点において、前記被処理体は、その表面に前記下地を構成するTiN膜を有するものであってよい。
【0011】
前記シード層を形成する際に、前記ボロン含有ガスとしてジボランガスを用いることができる。前記シード層を形成する際の温度は250〜300℃が好ましい。
【0012】
前記ボロンドープシリコンゲルマニウムを成膜する際に、前記シリコン原料ガスとしてシラン系化合物を用い、ゲルマニウム原料ガスとしてゲルマン系化合物を用いることができる。前記シラン系化合物は、モノシランまたはジシランが好適であり、前記ゲルマン系化合物は、モノゲルマンまたはジゲルマンが好適である。前記ボロンドープガスとしては、三塩化ボロンガスまたはジボランガスを用いることができる。
【0013】
前記ボロンドープシリコンゲルマニウム膜を成膜する際の温度が、450℃以下とすることができ、380〜430℃であることが好ましい。前記ボロンドープシリコンゲルマニウム膜を成膜する際の温度は、380〜400℃の範囲の低温とすることもできる。
【0014】
前記ボロンドープシリコンゲルマニウム膜は、ゲルマニウムの濃度を20〜90at%の範囲とすることができる。
【0015】
本発明の第2の観点は、被処理体表面の下地の上にボロンドープシリコンゲルマニウム膜を形成するボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成装置であって、前記被処理体を収容する処理容器と、前記処理容器内に所定のガスを供給するガス供給部と、前記処理容器内を加熱する加熱機構と、前記処理容器内を排気して減圧状態とする排気機構と、前記ガス供給部、前記加熱機構、および前記排気機構を制御する制御部とを具備し、前記制御部は、前記加熱機構により、前記処理容器内を300℃以下の温度に制御し、前記ガス供給部に、ボロンと水素を含み塩素を含まないボロン含有ガスを前記処理容器内に供給させて、前記下地表面に、前記ボロン含有ガスを吸着させてシード層を形成させ、前記加熱機構により、前記処理容器内を成膜温度に制御し、前記ガス供給部に、シリコン原料ガス、ゲルマニウム原料ガス、およびボロンドープガスを前記処理容器内に供給させて、前記シード層が吸着された前記下地表面に、CVD法によりボロンドープシリコンゲルマニウム膜を成膜させることを特徴とするボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成装置を提供する。
【0016】
上記第2の観点において、前記処理容器は、前記被処理体が複数保持された基板保持具が収容され、複数の基板に対して処理が行われるようにすることができる。
【0017】
本発明の第3の観点は、コンピュータ上で動作し、成膜装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記第1の観点のボロンドープシリコンゲルマニウム膜の形成方法が行われるように、コンピュータに前記成膜装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、下地にジボランガスのようなボロン含有ガスを吸着させることによりシード層を形成するので、シード効果が高く、下地の状態による膜厚のばらつきを小さくすることができる。また、ボロン含有ガスを吸着させてシード層を形成することにより、インキュベーションタイムを短縮できるので低温成膜可能である。さらに、シード層を吸着により形成するので、ボロンドープシリコンゲルマニウム膜が下地と遮断されることなく多結晶膜として形成することができる。さらに、ボロン含有ガスとしてBガスを用いれば、ボロンドープシリコンゲルマニウム膜に不純物を導入することがなく、純度の高い膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るB−SiGe膜の形成方法を示すフロー図である。
図2】本発明の一実施形態に係るB−SiGe膜の形成方法を説明するための工程断面図である。
図3】本発明のB−SiGe膜の形成方法の実施に用いることができる成膜装置の一例を示す縦断面図である。
図4図3の成膜装置によりB−SiGe膜を成膜する際のプロセスシーケンスを示す図である。
図5】実験例において、下地膜としてTiN膜およびSiO膜を用い、その上に条件1〜4によりB−SiGe膜を形成した際のB−SiGe膜の膜厚を示す図である。
図6】実験例において、条件1〜4によりB−SiGe膜を形成した際のウエハ間の膜厚の均一性を示す図である。
図7】実験例において、条件1〜4によりB−SiGe膜を形成した際のウエハ間の比抵抗の均一性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0021】
<B−SiGe膜の形成方法>
本発明に係るB−SiGe膜の形成方法は、下地上にシード層を介してB−SiGe膜を形成するものであるが、一実施形態として、半導体基板、典型的にはシリコン基板上に形成された下地膜上にB−SiGe膜を形成する場合について説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係るB−SiGe膜の形成方法を示すフロー図、図2はその工程断面図である。
まず、半導体基板200上に下地膜201が形成された被処理体を準備する(ステップ1、図2(a))。例えば、下地膜201としてはDRAMのキャパシタにおける上部電極が例示される。この場合は、半導体基板200上に、シリンダ状の下部電極と、その表面に形成された容量絶縁膜とを介して下地膜201となる上部電極が形成されるが、図2(a)では下地膜201の下の構造体は省略している。下地膜201としてDRAMのキャパシタの上部電極を用いる場合には、CVD法で形成されたTiN膜が例示される。下地膜201は、SiO膜等の他の膜であってもよい。また、被処理体は半導体基板に限定されない。
【0023】
次に、被処理体に塩素を含まないボロン(B)含有ガスであるBシードガス、例えばジボラン(B)ガスを供給して下地膜201の表面に吸着させ、シード層202を形成する(ステップ2、図2(b))。
【0024】
この工程は、ボロン(B)の吸着が目的であるから、例えばBが自己分解し、CVD反応しない領域を使用する必要がある。このため、この工程は、300℃以下の低温で行うことが好ましい。このような温度においては、供給されたBガス等は膜として成長しない。この工程の圧力は、0.1〜5Torr(13.3〜667Pa)が好ましい。
【0025】
Bシードガスを構成する塩素を含まないB含有ガスとしては、BにのみならずB10,B、B11、B10、B1014等の他のボラン系ガスを好適に用いることができる。ボラン系ガスはBとHとの化合物であり、その上に成膜されるB−SiGe膜に対して不純物を導入しないので好ましい。これらの中ではBガスが特に好ましい。
【0026】
次に、シード層202が吸着された下地膜201上にB−SiGe膜203をCVD法により成膜する(ステップ3、図2(c))。このB−SiGe膜203は、シード層202の形成後、in−situで実施される。
【0027】
B−SiGe膜203の成膜は、被処理体にSi原料ガス、Ge原料ガス、Bドープガスを供給し、CVD法により成膜する。
【0028】
Si原料ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH)、ジシラン(Si)等のシラン系化合物を好適に用いることができる。もちろん、他のシラン系化合物であってもよく、シラン系化合物以外であってもよい。
【0029】
Ge原料ガスとしては、例えば、モノゲルマン(GeH)、ジゲルマン(Ge)等のゲルマン系化合物を好適に用いることができる。もちろん、他のゲルマン系化合物であってもよく、ゲルマン系化合物以外であってもよい。
【0030】
Bドープガスとしては、例えば、三塩化ホウ素(BCl)、B等を好適に用いることができる。Bのみならず、B10,B、B11、B10、B1014等の他のB含有ガスであってもよい。
【0031】
B−SiGe膜は450℃以下で成膜することが好ましい。B−SiGe膜は、450℃以下の低温で成膜しても、成膜段階で多結晶状態であり、導電性を有する導体である。本実施形態におけるより好ましい温度は380〜430℃である。特に、430℃より低い、例えば380〜400℃といった従来よりも低い温度で成膜できることが特徴である。この工程の圧力は、0.1〜5Torr(13.3〜667Pa)が好ましい。
【0032】
B−SiGe膜の組成は、Geの濃度が20〜90at%であることが好ましい。また、Bの濃度が0.1〜20at%であることが好ましい。
あt
【0033】
以上のように、下地膜201の表面にBガスのようなボロンシードガスを吸着させてからB−SiGe膜を形成することにより、ボロンによる高いシード効果を得ることができ、下地膜201の表面状態によらず、インキュベーションタイムを一定に保持することができ、B−SiGe膜のばらつきを著しく小さくすることができる。
【0034】
B−SiGe膜をTiN膜上に形成する場合、TiN膜は酸化等により表面状態の経時変化が大きく、TiN膜を形成してからの時間によりB−SiGe膜の膜厚が変化する。また、下地膜201の材料が異なる場合にもB−SiGe膜の膜厚が変化する。このようなB−SiGe膜の膜厚変化は、特許文献1のようなモノシランを熱分解した成分によるシード層によりある程度解消することができるが、さらなる微細化の要求に対しては十分とはいえない。
【0035】
一方、特許文献2に示されたようなボロンドープシリコン膜をシード層として用いた場合には、B−SiGe膜がアモルファスの膜となってしまう。
【0036】
これに対して、本実施形態のように、下地膜201の表面にBガスのようなBシードガスを吸着させてシード層202を形成することにより、高いシード効果を得ることができ、下地膜201表面の状態が変化しても、B−SiGe膜の膜厚のばらつきを小さくすることができる。また、シード層202は吸着により形成されているため、B−SiGe膜は下地の結晶性を引き継いで多結晶体として形成することができる。
【0037】
さらに、従来は、B−SiGe膜の成膜温度をさらに低温化しようとすると、インキュベーションタイムが非常に長くなり、さらなる低温化が困難であったが、本実施形態のようにBガス等を吸着させてシード層202を形成することにより、インキュベーションタイムを短縮することができ、従来では困難であった430℃より低い温度での成膜も可能となり、380〜430℃の範囲で好適に成膜することができる。そして、インキュベーションタイムが短縮されることにより、生産性も向上する。
【0038】
さらにまた、上述したように、BシードガスとしてBガスを用いた場合には、B−SiGe膜に対して不純物を導入することはなく、純度の高い膜を形成することができる。
【0039】
<B−SiGe膜の形成装置の一例>
次に、本発明のB−SiGe膜の形成方法の実施に用いることができるB−SiGe膜の形成装置の一例について説明する。図3は、そのようなB−SiGe膜の形成装置の一例である成膜装置を示す縦断面図である。
【0040】
成膜装置1は、天井部を備えた筒状の断熱体3と、断熱体3の内周面に設けられたヒータ4とを有する加熱炉2を備えている。加熱炉2は、ベースプレート5上に設置されている。
【0041】
加熱炉2内には、例えば石英からなる、上端が閉じている外管11と、この外管11内に同心状に設置された例えば石英からなる内管12とを有する2重管構造をなす処理容器10が挿入されている。そして、上記ヒータ4は処理容器10の外側を囲繞するように設けられている。
【0042】
上記外管11および内管12は、各々その下端にてステンレス等からなる筒状のマニホールド13に保持されており、このマニホールド13の下端開口部には、当該開口を気密に封止するためのキャップ部14が開閉自在に設けられている。
【0043】
キャップ部14の中心部には、例えば磁気シールにより気密な状態で回転可能な回転軸15が挿通されており、回転軸15の下端は昇降台16の回転機構17に接続され、上端はターンテーブル18に固定されている。ターンテーブル18には、保温筒19を介して被処理体である半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)Wを保持する石英製のウエハボート20が載せられる。このウエハボート20は、例えば50〜150枚のウエハWを所定間隔のピッチで積み重ねて収容できるように構成されている。
【0044】
そして、昇降機構(図示せず)により昇降台16を昇降させることにより、ウエハボート20を処理容器10内へ搬入および搬出(ロードおよびアンロード)可能となっている。ウエハボート20を処理容器10内に搬入した際に、上記キャップ部14がマニホールド13に密接し、その間が気密にシールされる。
【0045】
また、成膜装置1は、処理容器10内へSi原料ガスを導入するSi原料ガス供給機構21と、処理容器10内へGe原料ガスを導入するGe原料ガス供給機構22と、処理容器10内へBドープガスを導入するBドープガス供給機構23と、処理容器10内へBシードガスを導入するBシードガス供給機構24とを有している。また、成膜装置1は、処理容器10内へ不活性ガスおよびHガスを導入する不活性ガス/Hガス供給機構44を有している。これらSi原料ガス供給機構21と、Ge原料ガス供給機構22と、Bドープガス供給機構23と、Bシードガス供給機構24と、不活性ガス/Hガス供給機構44とはガス供給部を構成する。
【0046】
Si原料ガス供給機構21は、Si原料ガス供給源25と、Siガス供給源25から成膜ガスを導くSi原料ガス配管26とを有している。Si原料ガス配管26には、開閉バルブ27およびマスフローコントローラのような流量制御器28が設けられており、Si原料ガスを流量制御しつつ供給することができるようになっている。
【0047】
Ge原料ガス供給機構22は、Ge原料ガス供給源29と、Geガス供給源29からGe原料ガスを導くGe原料ガス配管30とを有している。Ge原料ガス配管30には、開閉バルブ31およびマスフローコントローラのような流量制御器32が設けられており、Ge原料ガスを流量制御しつつ供給することができるようになっている。
【0048】
Bドープガス供給機構23は、Bドープガス供給源33と、Bドープガス供給源33からBドープガスを導くBドープガス配管34とを有している。Bドープ配管34には、開閉バルブ35およびマスフローコントローラのような流量制御器36が設けられており、Bドープガスを流量制御しつつ供給することができるようになっている。
【0049】
Si原料ガス配管26、Ge原料ガス配管30、およびBドープガス配管34は、集積配管37に集積されている。また、集積配管37からは、3本の石英製の分散ノズル38a,38b,38cが分岐している。分散ノズル38a,38b,38cは、マニホールド13の側壁下部を貫通して処理容器10に至り、処理容器10内で上方向へ屈曲されてウエハボート20に沿って垂直に延びている。分散ノズル38aの垂直部分には、ウエハボート20の上部に対応する位置に複数のガス吐出孔が設けられている。分散ノズル38bの垂直部分には、ウエハボート20の中央部に対応する位置に複数のガス吐出孔が設けられている。分散ノズル38cの垂直部分には、ウエハボート20の下部に対応する位置に複数のガス吐出孔が設けられている。これにより、Si原料ガス、Ge原料ガス、Bドープガスは、集積配管37でプリミックスされた後、分散ノズル38a,38b,38cを介して、ウエハボート20の上部、中央部、下部のウエハWに対して均一に供給されるようになっている。なお、実際には、分散ノズル38a,38b,38cからのSi原料ガス、Ge原料ガス、Bドープガスの吐出流量がそれぞれ独立に制御できるように、配管接続されている。
【0050】
Bシードガス供給機構24は、Bシードガス供給源39と、Bシードガス供給源39からBシードガスを導くBシードガス配管40とを有している。Bシード配管40には、開閉バルブ41およびマスフローコントローラのような流量制御器42が設けられており、Bシードガスを流量制御しつつ供給することができるようになっている。Bシード配管40には、分散ノズル43が接続されている。分散ノズル43は、マニホールド13の側壁下部を貫通して処理容器10に至り、処理容器10内で上方向へ屈曲されてウエハボート20に沿って垂直に延びている。分散ノズル43の垂直部分には、ウエハボート20のウエハWにBシードガスを吐出するガス吐出孔を有している。
【0051】
不活性ガス/Hガス供給機構44は、不活性ガス供給源45と、Hガス供給源50と、不活性ガス供給源45から不活性ガスを導く不活性ガス配管46と、不活性ガス配管46に接続され、マニホールド13の側壁下部を貫通して設けられたガスノズル54と、Hガス供給源50からHガスを導き、不活性ガス配管54に合流するHガス配管51とを有している。不活性ガス配管46およびHガス配管51には、それぞれ、開閉バルブ48および52、ならびにマスフローコントローラのような流量制御器49および53が設けられている。
【0052】
Si原料ガス供給機構21から供給されるSi原料ガスは、上述したように、種々のものを用いることができるが、ここではSiHガスを例示する。Ge原料ガス供給機構22から供給されるGe原料ガスも、上述したように、種々のものを用いることができるが、ここではGeHガスを例示する。Bドープガス供給機構23から供給されるBドープガスも、上述したように、種々のものを用いることができるが、ここではBClガスを例示する。さらに、Bシードガス供給機構24から供給されるBシードガスも、上述したように、種々のものを用いることができるが、ここではBガスを例示する。
【0053】
パ不活性ガス/アニールガス供給機構44から供給される不活性ガスとしては、Nガスや、Arガスのような希ガスを用いることができる。ここでは、不活性ガスとしてNガスを例示する。パージの際には不活性ガスが用いられ、昇温する際のガスとしてHガスが用いられる。
【0054】
マニホールド13の側壁上部には、外管11と内管12との間隙から処理ガスを排出するための排気管55が接続されている。この排気管55には処理容器10内を排気するための真空ポンプ56が接続されており、また排気管55には圧力調整バルブ等を含む圧力調整機構57が設けられている。そして、真空ポンプ56で処理容器10内を排気しつつ圧力調整機構57で処理容器10内を所定の圧力に調整するようになっている。
【0055】
また、成膜装置1は制御部60を有している。制御部60は、成膜装置1の各構成部、例えばバルブ類、流量制御器であるマスフローコントローラ、ヒータ電源、昇降機構等の駆動機構等を制御するCPU(コンピュータ)を有する主制御部と、入力装置(キーボード、マウス等)、出力装置(プリンタ等)、表示装置(ディスプレイ等)、記憶装置を有している。制御部60の主制御部は、記憶装置に処理レシピが記憶された記憶媒体をセットすることにより、記憶媒体から呼び出された処理レシピに基づいて成膜装置100に所定の動作を実行させる。これにより、CPU(コンピュータ)の制御下で、成膜装置1により上述したようなB−SiGe膜の形成方法が実施される。
【0056】
次に、以上のように構成される成膜装置により上述したようなB−SiGe膜の形成方法を実施する際の処理動作について、図4のプロセスシーケンス図を参照して説明する。以下の処理動作は制御部60における記憶部の記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて実行される。
【0057】
最初に、被処理体として、上述したような半導体基板上に下地膜、例えばTiN膜が形成された構造のウエハWをウエハボート20に例えば50〜150枚搭載し、ターンテーブル18に保温筒19を介してウエハWを搭載したウエハボート20を載置し、昇降台16を上昇させることにより、下方開口部から処理容器10内へウエハボート20を搬入する(ロード)。このとき、ヒータ4の出力を、ウエハボート20のセンター部(上下方向の中央部)の温度がシード層形成のための温度である300℃以下の温度、例えば250℃になるようにセットし、開閉バルブ48を開いてNガスを所定流量で処理容器10内に導入し、その状態で所定時間待機する(待機)。その後、開閉バルブ48を閉じてNガスを停止し、処理容器10内を排気する(排気)。その後、再び開閉バルブ48を開いてNガスを所定流量で処理容器10内に供給して処理容器10内の圧力を例えば0.5Torrにし、処理容器10内の温度を例えば250℃に安定化させる(温度安定化)。
【0058】
処理容器10内の温度が250℃に安定化したら、開閉バルブ48を閉じてNガスを停止し、開閉バルブ41を開いて、Bガスを例えば20(10%B)sccmの流量で分散ノズル43から処理容器10内のウエハボート20上のウエハW向けて吐出し、ウエハWの下地膜の表面にボロンを吸着させてシード層を形成する(Bシード形成)。
【0059】
所定時間経過後、開閉バルブ41を閉じてBガスを停止し、処理容器10内を排気する(排気)。その後、開閉バルブ52を開いてHガスを所定流量で処理容器10内に供給し、処理容器10内の圧力を75Torrに上昇させつつ、ヒータ4の出力を上昇させ、ウエハボート20のセンター部(上下方向の中央部)の温度を、B−SiGe膜成膜のための450℃以下の温度、例えば430℃にランプアップする(温度上昇)。その後、処理容器10内の圧力を例えば0.5Torrにし、温度を安定化させる(温度安定化)。
【0060】
処理容器10内の温度が430℃に安定化したら、開閉バルブ52を閉じてHガスを停止し、開閉バルブ27、31,35を開いて、SiHガス、GeHガス、BClガスを分散ノズル38a,38b,38cから処理容器10内のウエハボート20上のウエハに向けて吐出し、B−SiGe膜を成膜する(B−SiGe膜成膜)。このときのB−SiGe膜の組成は、例えば、Ge:10at%、B:1at%、Si:89at%である。このときの各ガスの流量および成膜時間は、成膜温度、ならびに得ようとする膜の組成および膜厚に応じて適宜設定される。成膜温度が430℃のときは、例えば、分散ノズル38a,38b,38cからの合計流量がSiHガス:1140sccm、GeHガス3000sccm、BClガス:3705sccmであり、成膜時間が90min程度である。
【0061】
所定時間経過後、開閉バルブ27,31,35を閉じてSiHガス、GeHガス、BClガスを停止し、処理容器10内を排気する(排気)。その後、開閉バルブ48を開いてNガスを所定流量で処理容器10内に供給し、処理容器10内の圧力を大気圧に戻す(大気圧)。その後、昇降台16を下降させることにより、ウエハボート20を処理容器10の下方へ搬出する(アンロード)。
【0062】
<実験例>
次に実験例について説明する。
ここでは、BClガスを用いてCVDによりB−Siシード層を形成した後、430℃でB−SiGe膜を形成する従来の条件(条件1)、および250℃でBガス(10%B)を吸着させてBシード層を形成した後、430℃、400℃、380℃の各温度で、B−SiGe膜を形成する本発明の条件(条件2、3、4)を用いて図3の装置により実験を行った。なお、ウエハボート内のウエハ枚数は125枚とし、B−SiGe膜の目標組成はGe:10at%、B:1at%、Si:89at%とした。
【0063】
下地膜としてTiN膜およびSiO膜を用い、その上に上記条件1〜4によりB−SiGe膜を形成した際のB−SiGe膜の膜厚を図5に示す。
【0064】
図5に示すように、従来条件である条件1は、下地膜の違いにより大きな膜厚の差が生じているのに対し、本発明条件のうち条件1と同じ温度でB−SiGe膜を成膜した条件2では下地膜による膜厚差は極めて小さかった。このことから、本発明に従ってBを吸着させたシード層を用いることにより、下地の違いによるB−SiGe膜の膜厚差が生じ難いことが確認された。
【0065】
また、図5に示すように、本発明条件のうちB−SiGe膜の成膜温度を400℃、380℃と従来よりも低下させた条件である条件3、4についても、下地の違いによる膜厚差を大きくすることなく、成膜が可能であることが確認された。
【0066】
次に、上記条件1〜4でB−SiGe膜の形成を行った場合の、ウエハボート内のウエハ間の膜厚の均一性を把握した。ここでは、ウエハボート内のトップからボトムにかけて所定の位置(A,B,C,D,E)の5枚を抽出し、膜厚を求めた。その結果を図6に示す。
【0067】
図6に示すように、同じ成膜温度の条件1および条件2を比較すると、ウエハ間の膜厚均一性は条件2のほうが良好であった。また、成膜温度を低下させた条件3,4については、ボトムのウエハの膜厚が薄くなる傾向はあるものの、大きな違いは見られなかった。
【0068】
次に、上記条件1〜4でB−SiGe膜の形成を行った場合の、ウエハボート内のウエハ間の比抵抗の均一性を把握した。ここでは、上記実験と同様にウエハボート内のトップからボトムにかけて所定の位置(A,B,C,D,E)の5枚を抽出し、比抵抗を求めた。その結果を図7に示す。
【0069】
図7に示すように、同じ成膜温度の条件1および条件2を比較すると、比抵抗の値は同等であり、均一性も同等であった。また、成膜温度を低下させた条件3,4についてはわずかに比抵抗が上昇する傾向はあるものの、その値およびばらつきは許容範囲内であった。
【0070】
<他の適用>
以上、本発明の実施形態について説明したが、この発明は、上記の実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0071】
例えば、上記実施形態では、下地膜としてTiN膜を用いた場合を例示したが、これに限らず、種々の下地にB−SiGe膜を形成する場合に適用可能である。また、本発明の方法を縦型のバッチ式装置により実施した例を示したが、これに限らず、横型のバッチ式装置や枚葉式装置等の他の種々の成膜装置により実施することができる。
【符号の説明】
【0072】
1;成膜装置
2;加熱炉
4;ヒータ
10;処理容器
20;ウエハボート
21;Si原料ガス供給機構
22;Ge原料ガス供給機構
23;Bドープガス供給機構
24;Bシードガス供給機構
55;排気管
56;真空ポンプ
60;制御部
200;半導体基板
201;下地膜
202;シード層
203;B−SiGe膜
W;半導体ウエハ(被処理体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7