特許第6625047号(P6625047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6625047二軸延伸ポリアミドフィルムおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625047
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリアミドフィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/16 20060101AFI20191216BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20191216BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20191216BHJP
   B29K 77/00 20060101ALN20191216BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20191216BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20191216BHJP
   B29L 31/56 20060101ALN20191216BHJP
【FI】
   B29C55/16
   C08J5/18CFG
   B65D65/40 D
   B29K77:00
   B29L7:00
   B29L9:00
   B29L31:56
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-510461(P2016-510461)
(86)(22)【出願日】2015年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2015059285
(87)【国際公開番号】WO2015147121
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2018年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-64385(P2014-64385)
(32)【優先日】2014年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 知治
【審査官】 一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−128027(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/060618(WO,A1)
【文献】 特開平10−235730(JP,A)
【文献】 特開平02−103122(JP,A)
【文献】 特開平11−034258(JP,A)
【文献】 特開2011−073280(JP,A)
【文献】 特開2002−370278(JP,A)
【文献】 特開平11−348115(JP,A)
【文献】 特開2000−190387(JP,A)
【文献】 特開2007−030168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00−55/30
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃の沸騰水中で5分間ボイル処理した後に測定される収縮率が、製膜時の縦方向(MD)および横方向(TD)のいずれも3.0〜4.0%であり、MDの収縮率とTDの収縮率の差が0.5%以下であり、TDに対して45°方向の収縮率と135°方向の収縮率の差が0.5%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリアミドフィルム。
【請求項2】
請求項1記載の二軸延伸ポリアミドフィルムを製造するための方法であって、
二軸延伸を同時二軸延伸法により、MDおよびTDにそれぞれ3.0〜3.5倍の延伸倍率でおこない、
二軸延伸後に、MDおよびTDのいずれにも5〜8%のリラックス率で、かつリラックス率の比率(MD/TD)を0.66〜1.50としてリラックス処理し、その際に、
二軸延伸後のリラックス処理前またはリラックス処理と同時に、180〜200℃で熱処理することを特徴とする二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
同時二軸延伸法がテンター式同時二軸延伸法であることを特徴とする請求項2記載の二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
テンターをリニアモーター方式で駆動することを特徴とする請求項記載の二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の二軸延伸ポリアミドフィルムを用いた積層体。
【請求項6】
請求項記載の積層体よりなる容器用蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収縮率のバランスに優れた二軸延伸ポリアミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂容器または複合容器に包装された飲料、デザート、調理済食品などの容器包装品は、容器に内容物を充填後、積層フィルムからなる蓋材を用いて密封シールされて販売されている。このような容器包装品は、チルド状態で流通するものもあるが、通常、常温で流通するものも含めて、密封後にボイル処理やレトルト処理などの加熱殺菌処理が行われる。
【0003】
容器包装品の加熱殺菌処理においては、容器内の内容物や空気等が膨張し、容器本体よりも薄くて強度が低い蓋材に内圧がかかり、蓋材が引き伸ばされるため、常温に戻したときに蓋材にたるみやしわが残ってしまうことが避けられない。
【0004】
一方、空気の膨張による蓋材の変形を抑制するため、容器包装品は、容器内に内容物を満たした状態で密封シールされることがある。この場合でも美麗性の観点から、蓋材は張りがあるものが好まれる。さらに蓋材タブはカールしないことが好まれ、例えカールしたとしても、下向きにカールすることが美観上好ましいとされている。
【0005】
特許文献1、2には、特定の熱収縮率を有するフィルムを用いて貼り合せた積層体から形成された蓋材は、蓋材としての張りが向上し、蓋材タブの外観を改善できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−203532号公報
【特許文献2】特開平11−34258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載された特定の熱収縮率を有するフィルムは、熱収縮率があらゆる方向に均等ではないので、たとえば縦方向と横方向にアンバランスのまま収縮することがあった。このようなフィルムに印刷を施して蓋材として使用すると、加熱殺菌処理後に、蓋材の印刷図柄が歪んでしまい、特に開口部が円形である容器においては、この問題は顕著であり、円形の蓋材の印刷図柄が、加熱殺菌処理後には楕円形になることがあった。
本発明は、収縮率のバランスに優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
【0009】
(1)100℃の沸騰水中で5分間ボイル処理した後に測定される収縮率が、製膜時の縦方向(MD)および横方向(TD)のいずれも3.0〜4.0%であり、MDの収縮率とTDの収縮率の差が0.5%以下であり、TDに対して45°方向の収縮率と135°方向の収縮率の差が0.5%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリアミドフィルム。
(2)上記(1)記載の二軸延伸ポリアミドフィルムを製造するための方法であって、
二軸延伸を同時二軸延伸法により、MDおよびTDにそれぞれ3.0〜3.5倍の延伸倍率でおこない、
二軸延伸後に、MDおよびTDのいずれにも5〜8%のリラックス率で、かつリラックス率の比率(MD/TD)を0.66〜1.50としてリラックス処理し、その際に、
二軸延伸後のリラックス処理前またはリラックス処理と同時に、180〜200℃で熱処理することを特徴とする二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法
(3)同時二軸延伸法がテンター式同時二軸延伸法であることを特徴とする(2)記載の二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法。
)テンターをリニアモーター方式で駆動することを特徴とする()記載の二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法。
)上記(1)記載の二軸延伸ポリアミドフィルムを用いた積層体。
)上記()記載の積層体よりなる容器用蓋材。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、収縮率のバランスに優れ、各方向に均等に収縮することができる二軸延伸ポリアミドフィルムが得られる。本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、印刷時の見当ズレを低減することでき、また、容器蓋材として用いた場合、加熱殺菌処理後の張りが良好で、蓋材タブの変形を抑制できるばかりでなく、印刷図柄の歪みを低減できるため、意匠性を十分に高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムを構成するポリアミド樹脂としては、たとえば、ε−カプロラクタムを主原料としたナイロン6を挙げることができる。また、その他のポリアミド樹脂としては、3員環以上のラクタム、ω−アミノ酸、二塩基酸とジアミン等の重縮合によって得られるポリアミド樹脂を挙げることができる。
【0012】
具体的には、ラクタム類としては、先に示したε−カプロラクタムの他に、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタムなどを挙げることができる。
ω−アミノ酸類としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸などを挙げることができる。
二塩基酸類としては、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカジオン酸、ヘキサデカジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエンジオン酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸などを挙げることができる。
ジアミン類としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4′−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン等を挙げることができる。
【0013】
そして、これらを重縮合して得られる重合体またはこれらの共重合体として、たとえばナイロン6、7、11、12、6.6、6.9、6.11、6.12、6T、9T、10T、6I、MXD6(メタキシレンジパンアミド6)、6/6.6、6/12、6/6T、6/6I、6/MXD6等を用いることができる。中でも、耐熱性と機械特性のバランスに優れるナイロン6が好ましい。
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、上記したポリアミド樹脂単独からなるものでも、あるいは、2種以上を混合または複層にしたものでもよい。
【0014】
本発明に用いるポリアミド樹脂の相対粘度は、特に制限されるものではないが、1.5〜5.0であることが好ましく、2.0〜4.0であることがより好ましい。ポリアミド樹脂の相対粘度が1.5未満であると、得られるフィルムは力学的特性が著しく低下しやすくなる。また、ポリアミド樹脂の相対粘度が5.0を超えると、フィルムの製膜性に支障をきたしやすくなる。なお、上記相対粘度は、ポリアミド樹脂を96%硫酸に濃度1.0g/dlとなるよう溶解させた試料溶液(液温25℃)を、ウベローデ型粘度計を用いて測定されたものでる。
【0015】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、上記ポリアミド樹脂からなるフィルムであり、二軸延伸されたものである。
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、100℃の沸騰水中で5分間のボイル処理した後に測定される収縮率が、製膜時の縦方向(MD)および横方向(TD)のいずれも2.0〜5.0%であることが必要であり、3.0〜4.0%であることが好ましい。二軸延伸ポリアミドフィルムにおけるボイル処理後のMDおよび/またはTDの収縮率が2.0%未満であると、得られる蓋材は、加熱殺菌処理後に張りがなくなる。一方、ボイル処理後のMDおよび/またはTDの収縮率が5.0%を超えると、得られる蓋材の収縮により、容器が変形したり、蓋材タブが上向きにカールしたりしてしまう。
【0016】
また、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、100℃の沸騰水中で5分間のボイル処理した後に測定されるMDの収縮率とTDの収縮率の差、およびTDに対して45°方向の収縮率と135°方向の収縮率の差が、いずれも0.5%以下であることが必要であり、0.4%以下であることが好ましく、0.3%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることがさらに好ましい。二軸延伸ポリアミドフィルムにおけるボイル処理後のこれらの収縮率の差が0.5%を超えると、得られる蓋材は、加熱殺菌処理後に一方向のみに収縮することで、しわが発生したり、蓋材の印刷図柄が歪んでしまい、美麗性を損ねる。
上記収縮率を満足するとともに、上記収縮率の差を満足して収縮率のバランスが向上した二軸延伸ポリアミドフィルムを容器蓋材等の用途で用いると、加熱殺菌処理後に、蓋材は、十分に張りを持ちたるみやしわ等がなく、かつ印刷図柄の歪みがなく、また容器は変形することがなく、また蓋材タブは上向きにカールすることがなく、外観に優れた容器包装を得ることができる。
【0017】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みは、特に限定されないが、包装用途に使用する場合には、6〜50μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。二軸延伸ポリアミドフィルムは、厚みが6μm未満であると、十分な物理的強度が得られなくなることがある。また、二軸延伸ポリアミドフィルムは、厚みが50μmを超えると、延伸後の応力が高く、緩和するのが困難となり、収縮率を十分に低減することが難しくなることがある。
【0018】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、本発明の特性を損なわない範囲において、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離形剤、強化剤等を含有してもよい。例えば、熱安定剤や酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類、燐化合物、ヒンダードアミン類、硫黄化合物、銅化合物、アルカリ金属ハロゲン化物等が挙げられる。
また、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、フィルムのスリップ性などの向上のために、各種無機系滑剤や有機系滑剤を含有してもよい。滑剤の具体例としては、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイド、層状ケイ酸塩、エチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0019】
また、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲でコロナ放電処理や易接着処理などの表面処理が施されてもよい。
【0020】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは次のようにして製造することができる。
まず、ポリアミド樹脂を押出機にて溶融した後、溶融シートとしてTダイより押し出し、表面温度0〜25℃に温調した冷却ドラム上に密着させて急冷し、連続した未延伸フィルムを得る。
【0021】
得られた未延伸フィルムは、二軸延伸するに先立って、20〜80℃に温調された温水槽に送り、10分間以下の吸水処理を施す。この吸水処理により、未延伸フィルムを適度に可塑化し、ポリアミド樹脂の結晶化を抑制することで、延伸工程におけるフィルムの切断を防止することができる。
上記処理により吸水した未延伸フィルムは、水分率が3.0〜7.0質量%であることが好ましく、4.0〜6.0質量%であることがより好ましい。未延伸フィルムは、水分率が3.0質量%未満であると、延伸工程において延伸応力が増大して切断などのトラブルが起こり、操業性が低下する。一方、未延伸フィルムは、水分率が7.0質量%を超えると、吸水処理中に折れしわが生じ、フィルムの蛇行などのトラブルが生じやすくなり、また得られる二軸延伸ポリアミドフィルムは、強度が低下したり、TDにおけるフィルムの厚みムラが増大する。
【0022】
上記吸水処理が施された未延伸フィルムを、200〜230℃、より好ましくは220〜230℃で予熱した後、190〜210℃、より好ましくは195〜200℃で二軸延伸を行う。延伸倍率は、縦方向(MD)および横方向(TD)にそれぞれ2.5〜4.0倍であることが好ましく、3.0〜3.5倍であることがより好ましい。また、MDの延伸倍率とTDの延伸倍率の比率(MD/TD)は、0.80〜1.25であることが好ましく、0.9〜1.1であることがより好ましい。MDの延伸倍率、TDの延伸倍率が2.5倍未満であると、得られる蓋材は、包装材としての機械的強度が十分に発現できないことがある。一方、MDの延伸倍率、TDの延伸倍率が4.0倍を超えると、延伸後のフィルムは、収縮応力が高くなり、応力緩和の処理が困難となる。
【0023】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルム製造する際の二軸延伸方法は、同時二軸延伸法であることが必要である。同時二軸延伸法で延伸することにより、逐次二軸延伸法に比較して、面方向のバランスが均質である二軸延伸ポリアミドフィルムを得ることができる。
そして、同時二軸延伸法は、テンター式同時二軸延伸法であることが好ましい。テンター式同時二軸延伸法で延伸することにより、チューブラー式同時二軸延伸法に比較して、多色印刷した際に見当ズレが発生しにくい二軸延伸ポリアミドフィルムを得ることができる。
テンター式同時二軸延伸法は、パンタグラフ方式テンター、スクリュー方式テンター、リニアモーター方式テンターなどを用いて行うことができる。本発明においては、上記収縮率を満足させる上で、また収縮率の差を満足させて収縮率をバランスさせる上で、リニアモーター方式テンターを用いることが好ましい。
リニアモーター方式テンターを有する延伸装置は、個々のクリップがリニアモーター方式で単独に駆動されており、可変周波数ドライバを制御することでMD延伸倍率変化を任意に制御できる柔軟性を有している。なお、延伸倍率軌跡とは、延伸開始点から最大延伸倍率到達点に至る延伸倍率変化であり、その変化をたとえばグラフなどで表したものであると定義付けることができる。さらには、リニアモーター方式テンターを有する延伸装置は、MD延伸倍率軌跡およびTD延伸倍率軌跡を細かく設定でき、しかも正確に滑らかに制御できることから、延伸後の二軸延伸ポリアミドフィルムを後述するリラックス率でリラックス処理することができ、二軸延伸ポリアミドフィルムの収縮率やその差を規定の範囲とし、収縮率をバランスさせることが容易となる。
一方、パンタグラフ方式テンターやスクリュー方式テンターでは、構造上、MDに延伸した後の二軸延伸ポリアミドフィルムにリラックス処理を施すことが困難なことがある。たとえば、同時二軸延伸で一般的に用いられるパンタグラフ方式テンターでは、未延伸フィルムを把持する際の折畳まれた状態と、延伸時の引伸ばされた状態の2パターンを保持することはできるが、二軸延伸ポリアミドフィルムをリラックスするための若干折り曲げた状態を加えた3パターンを保持することが困難なことがある。
【0024】
同時二軸延伸後のポリアミドフィルムは、リラックス処理前またはリラックス処理と同時に、温度180〜210℃で熱処理されることが好ましく、熱処理温度は180〜200℃であることがより好ましく、180〜190℃であることがさらに好ましい。フィルムの延伸応力の緩和に、高温熱処理が有効であることは広く知られているが、熱処理温度が210℃を超えると、得られる二軸延伸ポリアミドフィルムは、機械的強度が低下し、蓋材などの包装材としての機能が低下してしまうことがあり、また、ボイル処理した時の収縮率を2.0%以上にすることが困難になることがある。一方、熱処理温度が180℃より低いと、後述するリラックス処理を行っても、フィルムを十分にリラックスさせるまでに時間がかかり、生産上好ましくなく、またボイル処理した時の収縮率を5.0%以下にすることが困難になることがある。
【0025】
本発明においては、同時二軸延伸後に、二軸延伸ポリアミドフィルムのリラックス処理をおこなうことが必要である。リラックス処理を行うことで、二軸延伸ポリアミドフィルムの機械的強度を損なわずに、ボイル処理した時の収縮率をコントロールすることができる。
リラックス率は、MDおよびTDのいずれにも1〜10%であることが必要であり、5〜8%であることが好ましい。
リラックス率が10%を超えると、二軸延伸ポリアミドフィルムは十分にリラックス処理が施されず、生産機台に接触し、スリキズや切断が発生してしまう。これを解消するにはリラックス処理時間を長くする必要があるため、生産効率が著しく低下してしまう問題がある。
一方、リラックス率が1%未満であると、二軸延伸ポリアミドフィルムの収縮率を十分に低減するため、高温でリラックス処理することが必要となり、フィルムの機械的物性を低下させる原因となる。
また、MDのリラックス率およびTDのリラックス率の比率(MD/TD)は0.66〜1.50であることが必要であり、0.80〜1.25であることが好ましい。リラックス率の比率(MD/TD)が0.66未満や1.50を超えると、二軸延伸ポリアミドフィルムは、MDとTDの収縮率のバランスが悪くなり、印刷後に熱処理すると、印刷が歪み、美麗性が損なわれる。
リラックス処理の温度は、180〜210℃であることが好ましく、185〜200℃であることがさらに好ましい。処理時間は、1〜10秒間であることが好ましい。リラックス処理は、MDとTDに同時におこなってもよく、前後しておこなってもよい。
【0026】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、例えばドライラミネート法や押出しラミネート法など公知の方法を用いて、ポリオレフィンなどのシーラントフィルム、PETフィルムやEVOHフィルムのような他のプラスチックフィルム、およびアルミニウム箔や透明蒸着フィルムのようなバリアフィルムと積層して、積層体とすることができる。
シーラントフィルムが積層された積層体は、例えば、容器用蓋材として、容器のフランジにヒートシールして、密封包装容器に使用することができる。
【実施例】
【0027】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0028】
1.測定方法
(1)収縮率
実施例、比較例で得られた二軸延伸ポリアミドフィルムのロールについて、ロールの表層部を除去して、ロールの内部よりサンプリングし、試料を23℃×50%RHの雰囲気下で、2時間調湿した。
次に、前記試料より、MD、TD、TDに対して45°方向、およびTDに対して135°方向の短冊状試験片(各方向に150mm×幅10mm)をそれぞれ切り出した。短冊状試験片の長さ方向に沿って約100mmの間隔をおいて一対の標点をつけ、標点間距離(L(mm))を測定した。
短冊状試験片をボイル処理(100℃の沸騰水で5分間)し、処理後再度23℃×50%RHの雰囲気下で2時間以上調湿した後、標点間距離(L(mm))を測定し、下記式により収縮率を算出した。なお、測定は各方向それぞれについて3試験片で行ない、平均値を収縮率とした。
収縮率(%)={(L−L)/L}×100
【0029】
(2)印刷歪みのモデル試験
実際に印刷が施された蓋材を加熱殺菌処理した場合の蓋材の歪みを想定して、以下のモデル的な評価試験を行った。
厚み600μmの押出成形シートから作られたフランジ付き丸型ポリプロピレン製容器(110mmφ)に水を充填し、各実施例もしくは比較例で得た積層フィルムを蓋材として用いカップシーラーにて密封シールをして、密封包装容器を作製した。
密封包装容器を20℃×65%RHの雰囲気下にて24時間放置、調湿した後、この蓋材に、任意の1方向を0°方向として、15°毎に12方向に沿って、それぞれ100mmの間隔をおいて一対の標点をつけた。
密封包装容器を、加熱殺菌処理(100℃×30分間)し、20℃×65%RHの雰囲気下にて24時間放置、調湿した後、各標点間の距離X(mm)を測定し、下記式により収縮率(%)の算出を行った。
収縮率(%)=(処理前標点間距離−処理後標点間距離)/(処理前標点間距離)×100={(100−X)/100}×100
12方向の収縮率から、収縮率の最大値と最小値の差を求め、この差が1.0%以下であれば、蓋材は、実際の印刷を行った場合においても実用上問題のない程度に印刷歪みが小さいと判断して、「○」と評価し、1.0%を超えた場合、蓋材は、印刷歪みが大きく実用上問題があると判断して、「×」と評価した。
【0030】
(3)蓋材の張り
上記(2)で得られた加熱殺菌後の密封包装容器を冷却乾燥した後、蓋材の張りを、しわの状態や弾力性、容器の変形から目視により評価した。たるみ・容器変形がないものを「○」、たるみ・容器変形が著しいものを「×」と評価した。
【0031】
(4)タブのカール
加熱殺菌後の密封包装容器において、蓋材タブがカールしなかったものや下方向にカールしたものを「○」、蓋材タブが上方向にカールしたものを「×」と評価した。
【0032】
実施例1
(二軸延伸ポリアミドフィルムの製造)
ポリアミド樹脂として、相対粘度が3.0であるポリアミド6樹脂(ユニチカ社製A1030BRF)を用いて、温度260℃でTダイより溶融押出しし、15℃のドラム上で冷却して、厚さ150μmの実質的に無配向の未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムを40℃の温水槽に10秒間浸漬、その後60℃の温水槽に100秒間浸漬して吸水処理を行ない、未延伸フィルムの水分率を4.0%とした。
吸水処理された未延伸フィルムを、リニアモーター駆動のテンター式同時二軸延伸機に導き、212℃で予熱した後、延伸温度196℃、MD延伸倍率3.3倍、TD延伸倍率3.3倍の条件で同時二軸延伸した。
次に、同時二軸延伸後のフィルムを、前半部の温度が190℃、後半部の温度が185℃に設定された熱処理ゾーンで4秒間熱処理し、フィルムのMD、TDにそれぞれ6.0%のリラックス処理を施し、厚さ15μmの同時二軸延伸ポリアミドフィルム得て、ロール状に採取した。
製膜、延伸における各製造条件および収縮率を表1にまとめて示す。
【0033】
(積層体の製造)
得られた二軸延伸ポリアミドフィルムの片面にコロナ処理を施したのち、コロナ面に、主剤(ポリウレタン樹脂)/硬化剤(ポリイソシアネート樹脂)の組合せからなるコート剤(DICグラフィックス社製ディックドライLX401A/SP60)を、乾燥膜厚3μmになるようにドライラミネーターにより塗布し、ラミネート接着剤層を形成した。さらに、この接着剤層の表面上に、シーラントフィルム(三井化学東セロ社製TUX−MCS、無延伸ポリエチレンフィルム、厚み50μm)を、接着剤層とシーラントフィルムのコロナ面が接するようにニップ温度50℃で貼り合わせ、40℃で3日間養生して接着剤層を硬化させることで、積層体を得た。
【0034】
(密封包装容器の作製)
厚み600μmの押出成形シートからフランジ付き丸型ポリプロピレン製容器(110mmφ)を作製し、これに水を充填した。前記積層体を蓋材として用い、カップシーラーにて、シール温度160℃、シール圧力2.5kg/mm、シール時間2秒の条件で、前記水を充填した丸型ポリプロピレン製容器を密封シールした。得られた密封包装容器に加熱殺菌処理し、密封包装容器の蓋材について、印刷歪みのモデル試験、張りやタブのカールの評価を行った。その結果を表1に示す。
【0035】
実施例5、9、比較例1〜10、参考例1〜6
延伸倍率、熱処理温度、リラックス率を表1、2のように変更した以外は実施例1と同様にして二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。フィルムの製造条件、収縮率、および蓋材としての評価結果を表1、2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
実施例1、5、9の二軸延伸ポリアミドフィルムは、収縮率や収縮率の差が本発明で規定する範囲であるため、得られた蓋材は、加熱殺菌処理後において、印刷歪みもなく美麗性に優れていた。
【0039】
比較例1の二軸延伸ポリアミドフィルムは、収縮率が低すぎるため、得られた蓋材は、張りがなくしわやたるみが発生し、美麗性が損なわれたものであった。一方、比較例2の二軸延伸ポリアミドフィルムは、収縮率が高すぎるため、このフィルムを蓋材として使用した容器は、加熱殺菌処理後において変形し、また、蓋材タブは、上向きにカールし、美麗性が損なわれたものであった。
比較例3の二軸延伸ポリアミドフィルムはTD収縮率が低すぎるため、得られた蓋材にはたるみが発生し、比較例4の二軸延伸ポリアミドフィルムはMD収縮率が高すぎるため、このフィルムを蓋材として使用した容器には、変形が発生した。また、比較例3、4の二軸延伸ポリアミドフィルムは各方向の収縮率のバランスが劣るため、得られた蓋材は印刷歪みが大きく、美麗性が損なわれたものであった。
比較例5の二軸延伸ポリアミドフィルムは、収縮率が低すぎるため、得られた蓋材は、張りがなくしわやたるみが発生し、美麗性が損なわれたものであった。
比較例6の二軸延伸ポリアミドフィルムは、リラックス率の比率(MD/TD)が範囲外であることによりMD収縮率とTD収縮率の差が0.5%を超え収縮率のバランスが劣るため、得られた蓋材は印刷歪みが大きく、美麗性が損なわれたものであった。
比較例7、8の二軸延伸ポリアミドフィルムは、TDリラックス率が範囲外であることにより、また比較例9、10の二軸延伸ポリアミドフィルムは、MDリラックス率が範囲外であることにより、いずれも、MD収縮率とTD収縮率の差が0.5%を超え収縮率のバランスが劣るため、得られた蓋材は印刷歪みが大きく、美麗性が損なわれたものであった。