(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記規制部材の前記溝部の中の位置であって前記フレームの前記第2の面と対向する位置には、前記フレームの前記第2の面に向って突出する突出部であって前記第3の突出部よりも前記加圧バネの付勢方向における上流側に位置する第4の突出部が設けられており、
前記フレームの前記第2の面に向う方向に関する前記第3の突出部の高さは、前記第4の突出部より高く、
記録材上の画像を前記ニップ部で加熱処理する際の圧力が前記加圧バネによって前記規制部材に掛っているとき、前記第4の突出部は前記フレームから離間していることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《実施例1》
[画像形成装置]
図4は本発明に係る像加熱装置を定着装置(定着器)70として搭載している画像形成装置100の一例の概略構成を示す模式図である。この画像形成装置100は電子写真プロセスを用いたモノクロプリンタであり、ホストコンピュータ等の外部装置Bから制御部Aに画像情報が入力、制御部Aは所定の画像形成制御シーケンスを実行する。
【0016】
記録材(シート:以下、用紙または紙と記す)Sにトナー像を形成する画像形成部101は、矢印の時計方向に回転駆動されるドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと記す)102を有する。ドラム102の周囲にはドラム回転方向に沿って順に、帯電ローラ103、レーザースキャナユニット104、現像装置105、転写ローラ106が配設されている。以上の画像形成部101の画像形成動作(電子写真プロセス)は周知であるので詳細な説明は割愛する。
【0017】
給紙カセット107または給送トレイ(手差しトレイ)108に積載されている用紙Sは給送ローラ109または同110の回転によって1枚ずつ繰り出される。そして、用紙Sはレジストローラ対112を有する搬送路111によりドラム102と転写ローラ106とで形成される転写ニップ部113へ所定の制御タイミングにて導入されてドラム102側のトナー像の転写を受ける。
【0018】
転写ニップ部113を通った用紙Sは搬送路114に沿って定着装置70へ送られ、トナー像の熱圧定着処理を受ける。定着装置70を出た用紙Sは搬送路115を通り、排出ローラ対116により画像形成物として排出トレイ117に排出される。
【0019】
[定着装置]
実施例の定着装置70に関して、正面とは用紙Sの入口側、背面とは同出口側である。左右とは装置70を正面から見て左(一端側)または右(他端側)である。上下とは重力方向において上または下である。上流側と下流側は用紙搬送方向(記録材搬送方向)において上流側と下流側である。また、定着フィルムの母線方向もしくは加圧ローラの軸線方向或いはこれに平行な方向を長手方向とし、これに直交する方向を短手方向とする。
【0020】
この定着装置70は、立ち上げ時間の短縮や低消費電力化を可能としたフィルム(ベルト)加熱方式の像加熱装置(OMF:オンデマンド定着器)である。
図5は定着装置70の外観斜視図、
図6は
図5の(6)−(6)線矢視の横断右側面模式図である。
【0021】
定着装置70は、大別して、フィルムユニット(ベルトユニット)73と、対向体(加圧部材)としての弾性加圧ローラ71と、これらを収容している定着フレーム(筐体:装置本体)20を有する。
図7は定着装置70の分解斜視図であり、(a)は装置の一端側(左側)、(b)は他端側(右側)を示している。
【0022】
(1)フィルムユニット(ベルトユニット)73
フィルムユニット73は、可撓性を有する中空(無端状、エンドレスベルト状、筒状)の第1の回転体である定着フィルム(可撓性スリーブ、無端ベルト、定着ベルト:以下、フィルムと記す)72を有する。フィルム72の内側には、ヒータ(加熱体)30、これを保持すると共にフィルムの回転をガイドするヒータホルダ(加熱体支持部材:以下、ホルダと記す)40、ホルダ40を保持するステイ45が内部アセンブリとして配設されている。
図8はフィルムユニット73の分解斜視模式図である。
【0023】
ヒータ30、ホルダ40、ステイ45は何れも長さがフィルム72の幅(長さ)よりも長い部材であり、一端側(左側)と他端側(右側)がそれぞれフィルム72の両端部から外方に突出している。40aはホルダ40の外方突出部、45aはステイ45の外方突出部である。そして、ステイ45の一端側と他端側の外方突出部45aに対してそれぞれ一端側と他端側の定着フランジ(回転体規制部材:以下、フランジと記す)10L・10Rが嵌着されている。即ち、フィルム72の長手方向両端部にフランジ10L・10Rが配置されている。
【0024】
可撓性を有するフィルム72は自由状態においては自身の弾発性により円筒形状を呈する耐熱性を有する伝熱部材である。例えば、内側から外側に順に、耐熱性樹脂材料あるいは薄肉金属の基層、シリコーンゴム等の弾性層、フッ素樹脂等の表層の3層の複合層からなる。
【0025】
ヒータ30には、一般的にセラミックヒータが使用される。このヒータ30は、窒化アルミニウム、アルミナ等からなる耐熱性のヒータ基板(セラミック基板)を有している。そして、ヒータ基板の表面側には、通電により発熱する発熱抵抗体(抵抗発熱体)としての抵抗体パターンが、例えば印刷によってヒータ基板の長手方向に沿って形成されている。更にその抵抗体パターンの表面が保護層としてのガラス層で被覆されている。フィルム72は内面がヒータ表面に密着して摺動する。ヒータ基板の裏面側には、ヒータ30の温度を検知する温度検知部材としてのサーミスタTHが配設されている。
【0026】
ホルダ40は耐熱樹脂によって形成された部材であり、ヒータ30を支持するとともに、フィルム72の回転ガイドを兼ねている。ホルダ40の下面には長手に沿って溝部が形成されており、ヒータ30はその溝部に表面側を外側にして嵌め込まれて支持されている。ホルダ40の材料として、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等の耐熱性樹脂が用いられている。ステイ45は鉄等の金属製の剛性部材であり、ホルダ40を全長に渡って加圧する型材である。
【0027】
フィルム72の長手方向両端部に配置されるフランジ10(L・R)はそれぞれ左右対称形状の耐熱樹脂製のモールド成形品である。フランジ10は耐熱性に優れ、比較的熱伝導率が良くなく、滑り性にも優れる材料として、例えば、PPS、液晶ポリマー、PET、PA、等のガラス繊維含有の樹脂が用いられる。以下の記載において、「フランジ10L」は左側(一端側)のフランジ、「フランジ10R」は右側(他端側)のフランジ、「フランジ10」或いは「フランジ10(L・R)」は左右両方のフランジとする。
【0028】
図9の(a)、(b)、(c)は、フランジ10を、それぞれ、内面側、側面側、天面側から見た図である。(d)は(c)の縦断面図である。フランジ10は、回転体規制面10rを有する鍔座部10A、回転体ガイド部10B、受圧部10C、嵌着部10D、嵌着縦溝部10E、を有する。
【0029】
回転体ガイド部10Bは鍔座部10Aの回転体規制面10rの側に設けられている。受圧部10C
(力受部)は鍔座部10Aの回転体規制面10rの側とは反対側に設けられている。嵌着部10Dは回転体ガイド部10B、鍔座部10A、受圧部10Cの3者にわたって延在している。嵌着縦溝部10Eは鍔座部10Aと受圧部10Cとの会合部においてフランジを天面から見て会合部の両側部に設けられている。
【0030】
回転体規制面10rはフィルム72の長手端部の端面72aに対向する面であり、フィルム72が長手方向に動いた場合に移動を規制する役割を果たし、フィルム72が長手方向の所定の位置にとどまるようにする。即ち、回転体規制面10rはフィルム72の長手端部の端面72aと接触することでフィルム72の長手方向の移動を規制する。
【0031】
回転体ガイド部10Bはフィルム72の長手端部の内周面を内側から支持してフィルム72の回転をガイドする。即ち、回転体ガイド部10Bはフィルム72の長手端部を内側から規制することにより、フィルム72に所望の回転軌跡を描かせる役割を果す。
【0032】
嵌着部10Dはステイ45の外方突出部45aに対して嵌着される部分である。受圧部10Cは、ステイ45の外方突出部45aに嵌着された状態において外方突出部45aと直接触れており、後述する加圧機構によってステイ45を押し下げる役割を果たしている。
【0033】
嵌着縦溝部10Eは定着フレーム20の側板20L・20Rに対する係合部である。フランジL・10Rはそれぞれこの嵌着縦溝部10Eにおいて側板20L・20Rすなわちフレームを挟持するように且つ加圧ローラ71の軸線方向に交差する方向おいて加圧ローラ71に近づく方向とその逆方向(遠のく方向)とに可動に配設される。これについては後述する。
【0034】
(2)加圧ローラ71
第2の回転体(対向体)としての加圧ローラ71は、フィルム72を挟んでヒータ30との間にニップ部Nを形成し、かつ、フィルム72を回転駆動するための駆動回転体である。加圧ローラ71は、SUS、SUM、Al等の金属製芯金の外周側にシリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムあるいはシリコーンゴムを発泡して形成された弾性層からなる弾性ローラである。弾性層の上にPFA、PTFE、FEP等の離型性層を形成されるものであってもよい。
【0035】
加圧ローラ71は一端側と他端側の軸部をそれぞれフレーム20の一端側と他端側の側板20L・20R間に軸受部材23を介して軸受させて回転可能に支持されている。加圧ローラ71は制御部Aで制御される駆動源M1の駆動力が駆動伝達機構(不図示)を介して伝達されることで、
図6において矢印R71の方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0036】
フィルムユニット73はヒータ30の側を下向きにして加圧ローラ71の上側において加圧ローラ71に実質平行に配列して側板20L・20R間に配設されている。フィルムユニット73のフランジ10L・10Rはそれぞれ嵌着縦溝部10Eが側板20L・20Rに設けられた縦ガイドスリット24・24の縦縁部24aを挟持して係合している。この係合状態において、フランジ10Lの鍔座部10Aは側板20Lの内側に位置し、受圧部10Cは側板20Lの外側に位置する。フランジ10Rの鍔座部10Aは側板20Rの内側に位置し、受圧部10Cは側板20Rの外側に位置する。
【0037】
これによりフランジ10L・10Rは、それぞれ、側板20L・20Rに対して上下方向にスライド移動可能に保持されている。即ち、フィルムユニット73は全体に側板20L・20R間においてスリット24・24の縦縁部24aに沿って加圧ローラ71に対して近づく方向と遠のく方向とに移動可能な自由度を有する。
【0038】
(3)加圧機構
フランジ10L・10Rの受圧部10Cはそれぞれ加圧バネ(弾性部材)50L・50Rと加圧レバー(加圧板金)51L・51Rを有する加圧機構により押圧されて所定の加圧力を受ける。加圧レバー51L・51Rは、それぞれ、側板20L・20Rの外側において受圧部10Cの上側に配置されており、先端部51aがフレーム20の天板21側の穴部21aに挿入されて係合している。51cはその係合部である。加圧レバー51L・51Rはそれぞれ係合部51cを中心にして上下方向に揺動可能である。
【0039】
加圧バネ50L・50Rはそれぞれ加圧レバー51L・51Rと天板21の一端側と他端側の各バネ受け部21bとの間に縮設(圧縮)されている。加圧バネ50L・50Rは本例においてはコイル状の圧縮バネである。装置構成によっては引っ張りバネや他の加圧機構でもよい。
【0040】
加圧レバー51L・51Rの自由状態時においてはフランジ10L・10Rの受圧部10Cはそれぞれ加圧バネ50L・50Rの縮設反力により加圧レバー51L・51Rを介して下方への押圧されて所定の同等の加圧力を受ける。
図10の(a)はこの加圧状態時における定着装置70の右側面図である。定着装置70の左側面はこの右側面と対称である。Zは加圧方向を示している。加圧バネ50R(50L)の中心線50cは側板20R(20L)の外側に配置されている。
【0041】
フランジ10L・10Rは、それぞれ、ステイ45の一端側と他端側の外方突出部45a・45aに嵌着されているから、
図10の(a)の加圧状態においてはステイ45もフランジ10L・10Rを介してそれぞれ下方への所定の同等の加圧力が作用している。
【0042】
これにより、ヒータ30を有するホルダ40と加圧ローラ71とが加圧ローラ71の弾性層の弾性に抗してフィルム72を挟んで所定の加圧力をもって圧接する。本例の定着装置70においては、ヒータ30とホルダ40の一部がフィルム72の内面に接触する当接する摺動部材(バックアップ部材)として機能している。そのため、
図6のように、フィルム72と加圧ローラ71との間に用紙搬送方向(記録材搬送方向)aに関して所定幅のニップ部Nが形成される。
【0043】
レバー51L・51Rはそれぞれフランジ10L・10Rの受圧部10Cを中にして係合部51cの側とは反対側に延長されている。51bはその延長レバー部である。そして、側板20L・20Rの各外側には加圧レバー51L・51Rの各延長レバー部51bの下側にそれぞれ加圧バネ50L・50Rによるフランジ10L・10Rの押圧を解除する圧解除機構としての圧解除カム60L・60Rが配設されている。なお、圧解除カム60Lは不図示である。カム60L・60Rは側板20L・20R間に回転可能に支持された回転中心軸60cの一端部と他端部に同じ位相で固着された同形状の偏心カムである。
【0044】
カム60L・60Rは制御部Aで制御される駆動源M2の駆動力が駆動伝達機構(不図示)を介して伝達されることで、半回転間欠制御される。カム60L・60Rが
図10の(a)のように小径部が上向きとなった回転角に姿勢に制御されることで、カム60L・60Rは加圧レバー51L・51Rの各延長レバー部51bに非接触になる。そのため、加圧レバー51L・51Rは自由状態であり、定着装置70はフィルム72と加圧ローラ71との間に所定幅のニップ部Nが形成された加圧状態となる。
【0045】
また、カム60L・60Rが
図10の(b)のように大径部が上向きとなった回転角に姿勢に制御されることで、カム60L・60Rは加圧レバー51L・51Rの各延長レバー部51bに接触する。そして、更に、カム60L・60Rは加圧レバー51L・51Rをそれぞれ加圧バネ50L・50Rの圧縮反力に抗して先端部51aと挿入穴部21aとの係合部51cを中心に上方に持ち上げる。これにより、加圧レバー51L・51Rによる各フランジ10L・10Rの受圧部10Cに対する押圧が解除される。即ち、ニップ部Nの形成が解除もしくはニップ部Nの加圧力が低減される。
【0046】
このように定着装置70は加圧状態(
図10の(a))と圧解除状態(
図10の(b))を切替可能に構成している。非画像形成時には圧解除状態にすることで、加圧ローラ71の弾性層の塑性変形を防ぐことができる。また通紙中に紙詰まり(ジャム)が発生した最には加圧状態から圧解除状態への切り替えによりニップ部Nから用紙を容易に取り除くことができる。
【0047】
(4)定着動作
制御部Aは画像形成開始信号に基づいて画像形成装置100の作像動作シーケンス制御を開始する。定着装置70については、圧解除状態(
図10の(b))から加圧状態(
図10の(a))に切り替え、加圧ローラ71を回転駆動させる。加圧ローラ71の回転によりニップ部Nにおける加圧ローラ71との摩擦力でフィルム72に回転力が作用する。これにより、フィルム72はその内面がニップ部Nにおいてヒータ30の表面およびホルダ40の外面の一部に密着して摺動しながら矢印R72(
図6)の方向に加圧ローラ71の回転周速度にほぼ対応し周速度で従動回転する。
【0048】
一方、ヒータ30は制御部Aで制御される給電部(不図示)から給電経路(不図示)を介して電力供給を受けて急峻に発熱する。このヒータ30の温度がヒータ裏面に当接させて配置されているサーミスタTHで検知され、検知温度情報が制御部Aに入力する。制御部Aは入力する検知温度情報に応じて給電部からヒータ30に流す電流を適切に制御することで、ヒータ30の温度を所定の温度に立ち上げてその温度が維持されるように温調する。
【0049】
このように、加圧ローラ71が回転駆動され、これに伴いフィルム72が従動して回転し、ヒータ30が所定の温度に立ち上げられて温調された状態において、画像形成部101側から未定着のトナー像Tを担持した用紙Sがニップ部Nに導入される。用紙Sはトナー像Tの担持面がフィルム72に対面するようにニップ部Nに導入されて挟持搬送されていく。これにより、用紙上の未定着のトナー像Tは加熱加圧されて固着画像として定着される。ニップ部Nを通過した用紙Sはフィルム72の表面から曲率分離して定着装置70から排出搬送されていく。
【0050】
(5)フランジの側板に対する取り付け構成
上述のように、フィルムユニット73のフランジ10L・10Rは、側板20L・20Rに対して加圧方向へ移動可能に取り付けられており、加圧機構50・51による加圧時(押圧時)には加圧ローラ71の方向へ移動しつつ加圧ステイ45を加圧する。即ち、ニップ部Nを所定の加圧状態にする。また、圧解除機構60により圧解除される際には加圧ローラ71とは反対の方向へ移動することでニップ部Nでの圧力を軽減する構成となっている。
【0051】
そのため、フランジ10L・10Rが側板20L・20Rに対して円滑に移動できるように、フランジ10L・10Rと側板20L・20Rの係合部には適度な隙間が設けられている。即ち、フランジ10L・10Rの嵌着縦溝部10Eと側板スリット24の縦縁部24aとの係合部には適度な隙間が設けられている。以下では他端側のフランジ10Rを代表して説明するが、一端側のフランジ10Lについても同様である。
【0052】
図11の(b)は(a)の1点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。フランジ10Rの嵌着縦溝部10Eにおける、側板20R(24a)を挟持する複数の規制面(凸部)10m、10n、10o、10pと側板20Rのスリット24の縦縁部24aの内面および外面と間には隙間M、N、O、Pがある。M=N、O=Pのように設定されている。
【0053】
また、フィルム72のローラ軸方向(スラスト方向)の位置はフランジ10Rの鍔座部10Aの規制面10rにて規制されている。即ち、フィルム72がローラ軸方向に寄る際にフィルム72の長手端部の端面72aが規制面10rに突き当たることでフィルム72の位置ずれを防止している。
【0054】
しかしながら、加圧バネ50Rの中心線50cが側板20Rに対してローラ軸方向の外側へ配置される構成においては、加圧時にフランジ10Rが隙間M、N、O、Pの範囲内で
図11の(c)のようにR方向に傾くことがある。したがって、フランジ10Rの規制面10rも傾くため、フィルム72の端面72aに対して局所的に接触し、フィルム端面(フィルム端部)の破損につながる虞がある。なお、
図11の(c)はフランジ10RのR方向への傾く様子の誇張図である。
【0055】
そこで、課題の項に記載したように、フランジ10の規制面10rの定着フレーム20に対する傾きを抑制し、規制面10rとフィルム72の端面72aとの安定した接触を達成する定着装置が求められている。また一方で、加圧時および圧解除時の円滑な動作を妨げることのない安定した圧解除構成が求められており、これら2つを両立する定着装置が望まれている。
【0056】
そのために、本実施例1においては
図1に示したようなフランジ10の傾き防止構成を採っている。
図1の(a)はフィルム72を加圧ローラ71に加圧する際のローラ軸方向(スラスト方向)における概略構成図である。(b)は(a)における一点鎖線で囲んだ部分の拡大図であり、フランジ10Rと側板20Rの係合部、即ち、フランジ10Rの嵌着縦溝部10Eと側板スリット24の縦縁部24aとの係合部の隙間を表す説明図である。
【0057】
10a、10b、10c、10dはフランジ10Rの側板20Rに対するローラ軸方向の規制面(凸部)を示している。規制面10a、10bはローラ軸方向の内側、即ち側板20Rのスリット24の縦縁部24aの内面
(第1の面)を規制している。規制面10c、10dはローラ軸方向の外側、即ち側板20Rのスリット24の縦縁部24aの外面
(第2の面)を規制している。また、A、B、C、Dは規制面10a、10b、10c、10dと側板スリット24の縦縁部24aの内面および外面とのそれぞれの隙間である。
【0058】
本実施例1の定着装置70においては、フランジ10Rの規制面10a、10b、10c、10dと側板20Rのローラ軸方向の係合部の隙間をA<B、C<Dとしている。より詳細には、規制面10a
(第1の突出部)の凸量(突出量)を同10b
(第2の突出部)の凸量より大きくし、規制面10c
(第3の突出部)の凸量を同1
0d(第4の突出部)の凸量より大きくする。規制面10aと同10cの凸量を同一とし、規制面10bと同10dの凸量を同一とする。
【0059】
この規制面10a、10b、10c、10dの構成により、例えば、A=0.05mm、B=0.10mm、C=0.05mm、D=0.10mmと設定し、部品の寸法がA<B、C<Dとなるように寸法公差を設定して管理している。つまり、フランジ10Rが加圧バネ50Rおよび加圧レバー51RにZ方向に加圧されて傾く際の隙間AおよびCを、対向側の隙間BおよびDよりも小さく設定している。
【0060】
本実施例1における上記の規制面と隙間の関係をまとめると次のとおりである。フランジ10Rに設けられた側板20Rを挟持する複数の規制面10a、10b、10c、10dと側板20Rとの隙間A、B、C、Dがある。そのうち、加圧機構による加圧時にフランジ10Rが傾く際に側板20Rに近づく側の規制面10a、10cと側板20L・20Rとの隙間A、Cが、側板20Rから遠ざかる側の規制面10b、10dと側板20Rとの隙間B、Dよりも小さい。
【0061】
複数の規制面10a、10b、10c、10dのうち、加圧機構による加圧時にフランジ10Rが傾く際に側板20Rに近づく側の規制面10a、10cを第1の規制面とする。また、側板20Rから遠ざかる側の規制面10b、10dを第2の規制面とする。これにおいて、第1の規制面10a、10cは第2の規制面10b、10dよりもフランジ10Rの側へ延びる突出量が大きい。
【0062】
これにより、加圧バネ50Rに加圧された際のフランジ10Rの側板20Rに対する傾きを最小限に抑えることができる。つまりはフランジ10Rの規制面10rの傾きを抑えることができる。よって、規制面10rとフィルム72の局所的な接触を防止することができ、フィルム72の端部破損を防止することができる。
【0063】
また、A<D、C<Bと設定し、積極的に突き当てる面と隙間を設ける面を明確に分けることにより、定着装置70の加圧状態と圧解除状態を切り替える際のフランジ10Rの動作を妨げない構成とすることができる。上記の構成はフランジ10Lと側板20Lについても同様である。
【0064】
したがって、フィルム72の端部破損の防止と、加圧・圧解除時の円滑な動作を両立することができる。
【0065】
《実施例2》
図2は本実施例2におけるフランジの側板に対する取り付け構成の説明図である。(a)はフィルム72を加圧ローラ71に加圧する際のローラ軸方向(スラスト方向)における概略構成図である。(b)は(a)における一点鎖線で囲んだ部分の拡大図であり、フランジ10Rと側板20Rの係合部、即ち、フランジ10Rの嵌着縦溝部10Eと側板スリット24の縦縁部24aとの係合部の隙間を表す説明図である。基本構成は、実施例1の
図1と同様であり、詳細な説明は省略する。以下では他端側のフランジ10Rを代表して説明するが、一端側のフランジ10Lについても同様である。
【0066】
本実施例2は実施例1に対し、フランジ10Rの嵌着縦溝部10Eと側板スリット24の縦縁部24aとの係合部の隙間を小さくするために、側板20Rの側に凸部20e、20gを設けた構成である。すなわち、フランジ10Rの規制面(凸部)10eと10fの凸量(突出量)、10gと10hの凸量を同一としつつ、規制面10eおよび10gと対向する箇所に側板20Rの規制面(凸部)20e、20gを設けている。これにより、フランジ10Rの規制面(凸部)10e、10f、10g、10hと側板20R、規制面20e、20gのローラ軸方向の係合部の隙間をE<F、G<Hとしている。
【0067】
より詳細には、例えば、E=0.05mm、F=0.10mm、G=0.05mm、H=0.10mmと設定し、部品の寸法がE<F、G<Hとなるように寸法公差を設定して管理している。つまり、フランジ10Rが加圧バネ50Rおよび加圧レバー51RにZ方向に加圧されて傾く際の隙間EおよびGを、対向側の隙間FおよびHよりも小さく設定している。
【0068】
本実施例2における上記の規制面と隙間の関係をまとめると次のとおりである。定着フレームである側板20Rは、フランジ10Rに設けられた複数の規制面10e、10f、10g、10hに対向する位置に規制面20e、20f、20g、20hを有する。
【0069】
側板20Lに設けられた規制面のうち、加圧機構による加圧時にフランジ10Rが傾く際にフランジ10Rの規制面10e、10gが近づく側の規制面20e、20gを第1の規制面とする。また、フランジ10Rの規制面10f、10hが遠ざかる側の規制面20f、20hを第2の規制面とする。これにおいて、第1の規制面20e、20gは第2の規制面20f、20hよりもフランジ10Rの側へ延びる突出量が大きい。
【0070】
これにより、加圧バネ50Rに加圧された際のフランジ10Rの側板20Rに対する傾きを最小限に抑えることができる。つまりはフランジ10Rの規制面10rの傾きを抑えることができる。よって、規制面10rとフィルム72の局所的な接触を防止することができ、フィルム72の端部破損を防止することができる。
【0071】
また、E<H、G<Fと設定し、積極的に突き当てる面と隙間を設ける面を明確に分けることにより、加圧状態と圧解除状態を切り替える際のフランジ10Rの動作を妨げない構成とすることができる。フランジ10Lと側板20Lについても同様である。
【0072】
したがって、フィルム72の端部破損の防止と、加圧・圧解除時の円滑な動作を両立することができる。
【0073】
《実施例3》
図3は本実施例3におけるフランジの側板に対する取り付け構成の説明図である。以下では他端側のフランジ10Rを代表して説明するが、一端側のフランジ10Lについても同様である。基本構成は、
図9や、実施例1・2の
図1・
図2と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0074】
図3の(a)はフィルム72を加圧ローラ71に加圧する前のローラ軸方向(スラスト方向)における概略構成図である。(b)は(a)における一点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。(c)はフィルム72を加圧ローラ71に加圧する際のローラ軸方向(スラスト方向)における概略構成図である。
【0075】
本実施例3は、フランジ10Rが加圧バネ50Rに加圧されて嵌着縦溝部10Eと側板スリット24の縦縁部24aとの係合部の隙間内で傾く際に、規制面10rが側板20Rと実質平行になるよう構成したものである。
【0076】
すなわち、本実施例3の定着装置70は、フランジ10Rの嵌着縦溝部10Eにおける規制面(凸部)10iと10jの凸量、10kと10lの凸量を同一としている。そして、加圧バネ50Rにより加圧する前の状態において、規制面(凸部)10i、10j、10k、10lと側板20Rとの隙間I、J、K、LをI=J、K=Lのように設定し、フランジ10Rと側板20Rの隙間を確保している。このとき、本実施例3の定着装置70においては、フランジ10Rにおける規制面10rは、
図3の(a)に示すように、側板20Rに対して少し下向きに傾いている。
【0077】
ここで、フランジ10Rが加圧バネ50Rにより加圧されると、フランジ10Rは
図3の(c)に示すように側板20Rとの隙間I、J、K、Lの範囲内でR方向に回転し、規制面(凸部)10iおよび10kが側板20Rに突き当たる位置まで傾く。このとき、規制面10rは側板20Rと実質平行となる。
【0078】
本実施例3における上記の構成をまとめると次のとおりである。フランジ10Rに設けられた定着フレームである側板20Rを挟持する規制面10i、10j、10k、10lが加圧機構による押圧時に傾いて側板20Rと接触する。その際、フランジ10Rにおけるフィルム72の長手方向の移動を規制する回転体規制面10rが側板20Rと実質平行である。
【0079】
これにより、加圧機構の加圧バネ50Rによる加圧状態において、規制面10rの傾きを抑えることができる。よって、規制面10rとフィルム72の局所的な接触を防止することができ、フィルム72の端部破損を防止することができる。
【0080】
また、規制面(凸部)10i、10j、10k、10lと側板20Rとの隙間I、J、K、Lを確保することにより、加圧状態と圧解除状態を切り替える際のフランジ10Rの動作を妨げない構成とすることができる。フランジ10Lと側板20Lについても同様である。
【0081】
したがって、フィルム72の端部破損の防止と、加圧・圧解除時の円滑な動作を両立することができる。
【0082】
上記の3つの実施例のように、加圧バネ50に加圧された際のフランジ10における規制面10rの定着フレーム20の側板に対する傾きを最小限に抑えることができ、規制面10rとフィルム72の局所的な接触を防止することができる。また、フランジ10と定着フレーム20の側板の規制面のうち積極的に突き当てる面と隙間を設ける面を明確に分けることにより、加圧状態と圧解除状態を切り替える際のフランジ10の動作を妨げることなく構成できる。したがって、フィルム72の端部破損の防止と、加圧・圧解除時の円滑な動作を両立することができる。
【0083】
《その他の事項》
(1)上記の3つの実施例において、フランジ10の嵌着縦溝部10Eにおける規制面(凸部)の数は定着フレーム20の側板を挟んで2つずつで構成している。しかし、これに限定するものではなく、上記で説明したようにフランジ10の傾きを考慮した隙間関係を満たせば片側を1つのみで構成することもできるし、3つ以上の規制面を設けてもよい。
【0084】
(2)実施例の定着装置70においてはフィルム72の一端側と他端例にそれぞれフランジ10L・10Rを配設している。しかし、フィルム72の寄り移動方向が専らに一方向となるよう装置構成されていれば、フランジ10はそのフィルム寄り移動側の1つにすることもできる。
【0085】
(3)実施例における定着装置70は、その一例として上記のようなフィルム方式の定着装置を挙げている。しかし、これに限定するものではなく、例えば、定着ローラ(熱ローラ)の内部にハロゲンヒータを備えて定着ローラを加熱する方式の定着装置等においても適応することができる。
【0086】
(4)フィルム72の内側の摺動部材(バックアップ部材)はヒータ30以外の部材であってもよい。
【0087】
(5)第1の回転体フィルム72の加熱手段は実施例のヒータ30に限られない。ハロゲンヒータ、電磁誘導コイルなど他の加熱手段を用いた、内部加熱構成、外部加熱構成、接触加熱構成、非接触加熱構成など適宜の加熱構成を採ることができる。
【0088】
(6)フィルム72を駆動回転体とし、加圧ローラ71をフィルム72の回転に従動回転させる装置構成にすることもできる。
【0089】
(7)実施例では、像加熱装置として、記録材上に形成された未定着のトナー像を加熱して定着する定着装置を例にして説明したがこれに限られない。記録材に定着若しくは仮定着されたトナー像を再加熱して画像のグロス(光沢度)を増大させる装置(光沢度向上装置)にも本発明を適用することが可能である。
【0090】
(8)画像形成装置は実施例のようなモノカラーの画像を形成するものに限られない。カラー画像を形成する画像形成装置でもよい。また、画像形成装置は、必要な機器、装備、筺体構造を加えて、複写機、FAX、及び、これらの機能を複数備えた複合機等、種々の用途で実施できる。