特許第6625114号(P6625114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

▶ インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーションの特許一覧
特許6625114官能性星型高分子を含む薄膜複合メンブレンおよびその製造方法
<>
  • 特許6625114-官能性星型高分子を含む薄膜複合メンブレンおよびその製造方法 図000006
  • 特許6625114-官能性星型高分子を含む薄膜複合メンブレンおよびその製造方法 図000007
  • 特許6625114-官能性星型高分子を含む薄膜複合メンブレンおよびその製造方法 図000008
  • 特許6625114-官能性星型高分子を含む薄膜複合メンブレンおよびその製造方法 図000009
  • 特許6625114-官能性星型高分子を含む薄膜複合メンブレンおよびその製造方法 図000010
  • 特許6625114-官能性星型高分子を含む薄膜複合メンブレンおよびその製造方法 図000011
  • 特許6625114-官能性星型高分子を含む薄膜複合メンブレンおよびその製造方法 図000012
  • 特許6625114-官能性星型高分子を含む薄膜複合メンブレンおよびその製造方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625114
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】官能性星型高分子を含む薄膜複合メンブレンおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/12 20060101AFI20191216BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20191216BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20191216BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20191216BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   B01D69/12
   B01D69/02
   B01D69/10
   B32B27/00 Z
   C08F293/00
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-500814(P2017-500814)
(86)(22)【出願日】2015年7月13日
(65)【公表番号】特表2017-523032(P2017-523032A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】IB2015055284
(87)【国際公開番号】WO2016009325
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2018年4月25日
(31)【優先権主張番号】14/330,801
(32)【優先日】2014年7月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】ナ、ヨン−ヘ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】デュボワ、ジェロ、ジャン−ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ロバート、デニス
(72)【発明者】
【氏名】スライ、ジョーセフ
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0076504(US,A1)
【文献】 特表平05−506807(JP,A)
【文献】 特開2000−334229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
B01D 1/44
C08F 251/00−283/00
C08F 291/00−297/08
B32B 1/00− 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性層を多孔質支持体上に含む薄膜複合メンブレン(TFC)であって、
前記活性層は、星型高分子の少なくとも8層の障壁層を含み、
前記星型高分子は、中心核において結合した少なくとも3つの線状高分子を含み、
前記障壁層の各々は厚さが5から50nmであり、
前記障壁層は交互の電荷を有
前記障壁層の、少なくとも1層がカルボキシル部分を有する負電荷星型高分子を含み、他の少なくとも1層がアンモニウム部分を有する正電荷星型高分子を含む、
薄膜複合メンブレン。
【請求項2】
前記障壁層が静電相互作用によって互いに付着している、請求項1に記載のメンブレン。
【請求項3】
星型高分子の交互の層の前記障壁層の少なくとも1層が水素結合によって他の1層に付着している、請求項1に記載のメンブレン。
【請求項4】
前記障壁層の少なくとも1層が電気的に中性な親水性表面官能性部分を含む、請求項2に記載のメンブレン。
【請求項5】
前記多孔質支持体の平均孔径が1から50nmの範囲である、請求項1に記載のメンブレン。
【請求項6】
薄膜複合メンブレンを製造する方法であって、
a)第1の表面電位を有する多孔質支持メンブレンの表面を第1の溶液にさらして、第1の帯電障壁層を前記表面に形成すること、ここで、前記第1の溶液は第1の星型高分子を第1の溶媒中に含み、前記第1の星型高分子は前記第1の表面電位と反対の第2の表面電位を有する、
b)前記第1の帯電障壁層を第2の溶液にさらして、第2の帯電障壁層を前記第1の帯電障壁層上に形成すること、ここで、前記第2の溶液は、第2の溶媒、及び前記第2の表面電位と反対の第3の表面電位を有する第2の星型高分子を含む、及び
c)ステップa)及びb)を繰り返して少なくとも8層の障壁層の積層体を前記支持メンブレン上に形成すること、ここで、前記障壁層の各々は自己組織化星型高分子を含前記第1の帯電障壁層または前記第2の帯電障壁層のいずれか一方はカルボン酸官能性星型高分子を含み、もう一方はアミノ官能性星型高分子を含む、
を含む方法。
【請求項7】
前記障壁層が浸漬被覆、スピンニング又は噴霧塗装、及びそれらの組合せによって施される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記多孔質支持メンブレンの平均孔径が1から50nmの範囲である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性層を含む薄層複合メンブレンに関し、特に星型高分子の層状官能性活性層を含む耐汚染性高透水性ナノ濾過メンブレンに関する。
【背景技術】
【0002】
精密濾過(MF:microfiltration)、限外濾過(UF:ultrafiltration)、ナノ濾過(NF:nanofiltration)、逆浸透法(RO:reverse osmosis)などのメンブレン技術は、水精製及び他の液分離のためのエネルギー効率がよく費用効果が高い方法である。NFメンブレンは、運転圧力がROよりも比較的低いので、汽水処理、廃水再利用及び軟水化に広く用いられる。NFメンブレンは、高水量も維持し、多孔質UFやMFメンブレンでは容易に除去できない小さい有機汚染物質及び多価イオン種に対して良好な濾過効率を有する。
図1を参照すると、NFメンブレン10は、支持織布12、多孔質中間層14、一般にポリスルホン(PSF:polysulfone)、及び障壁層16を含む。この多層構築物は、薄膜複合メンブレン(TFC:Thin Film Composite membrane)と称される。障壁層は分離性能の制御に重要な役割を果たし、支持層は十分な機械的強度を付与し、したがってTFC複合メンブレン10は外部運転圧力に耐えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ジアミンと酸塩化物の界面重合によって製造される市販NFメンブレンは、適度な高水量で小さい有機汚染物質及びイオン種を除去する。しかし、メンブレン汚染(細孔閉塞、又はメンブレン表面の有機汚染物質の物理吸着)の抑制、及び更なる流量増加が、メンブレン寿命を延ばし、運転費全体を削減するのに望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一般に、本発明の実施形態は、層状官能性星型高分子の活性層を含む耐汚染性高透水性NFメンブレンに関する。種々の実施形態においては、多孔質支持基体上の交互の電荷を有する星型高分子の多層(LBL:layer−by−layer)積層によって、高密度活性層を形成する。この活性層において障壁層を構成する星型高分子は、分離性能を高め、メンブレン汚染を軽減するように選択することができる高密度外部官能基を有する明確に定義された球状構造を有する。
【0005】
一実施形態においては、本開示は、活性層を支持体上に含む薄膜複合メンブレン(TFC)を対象とする。活性層は、星型高分子の少なくとも8層の障壁層を含み、星型高分子は、中心核において結合した少なくとも3つの線状高分子を含む。障壁層の各々は厚さが5から50nmであり、障壁層は交互の電荷を有する。
【0006】
別の一実施形態においては、本開示は、メンブレンを製造する方法であって、a)第1の表面電位を有する支持メンブレンの表面を第1の溶液にさらして、第1の帯電障壁層を表面に形成すること、ここで、第1の溶液は第1の星型高分子を第1の溶媒中に含み、第1の星型高分子は第1の表面電位と反対の第2の表面電位を有する、b)第1の帯電障壁層を第2の溶液にさらして、第2の帯電障壁層を第1の帯電障壁層上に形成すること、ここで、第2の溶液は、第2の溶媒、及び第2の表面電位と反対の第3の表面電位を有する第2の星型高分子を含む、及びc)ステップa)及びb)を繰り返して自己組織化(self−assembled)星型高分子の積層体を支持メンブレン上に形成することを含む方法を対象とする。
【0007】
一部の実施形態においては、球状星型高分子の側方自己組織化挙動は、充填密度が高く欠陥の少ない薄い高分子膜を与えることができる。一部の実施形態においては、球状星型高分子間の空間は、余分な自由体積を生成することができ、余分な自由体積は、水分子に浸出経路を与えることによって透水性を高めることができる。一部の実施形態においては、星型高分子は、荷電種の混合官能基を含み、広範囲の所望の利点を提供するように設計することができる。例えば、荷電種は、静電相互作用若しくは水素結合又はその両方によってLBL集合を行い、フィルム形成を強化するように選択することができる。別の一例においては、中性親水性部分は、汚染を抑制し、長期NF運転中のメンブレン汚染に起因する流量減少をより効果的に抑制することができる。
【0008】
次に、本発明の実施形態を、単なる例として、添付図面を参照して記述する。図面中の同一数字は類似要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ナノ濾過(NF)メンブレンの模式的断面図である。
図2】層状官能性星型高分子の障壁層を含むNFメンブレンの模式的断面図である。
図3】正及び負電荷星型高分子を有する構造の模式図である。
図4】多層(LBL)集合薄膜複合NFメンブレンの模式的断面図である。
図5】多孔質PSF支持体上のSPPとSPN星型高分子のLBL集合によって調製された薄膜複合メンブレンの一連のSEMトップダウン画像である。
図6】未改質PSF UFメンブレン、LBL集合星型高分子メンブレン(1〜4LBL)及び市販NFメンブレンを用いて得られた染料分離率(dye rejection ratio)(%)のプロット(左プロット)及び水量(右表)である。
図7】染料濾過実験直後に得られた様々なメンブレン表面(未改質PSF、LBL集合星型高分子メンブレン及び市販NFメンブレン表面)の一連の写真である。
図8】SPPとSPN星型高分子のLBL堆積による入射角のシフトを示すSPRスペクトルである。正方形の曲線は、PBS緩衝液によるバックグラウンド信号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図2を参照すると、ナノ濾過(NF)メンブレン20は、支持織布22、多孔質支持体24及び活性層26を含む。種々の実施形態においては、活性層26は、官能性星型高分子の複数の層28で構成される。
【0011】
活性層26が上に重なった多孔質支持体24は、意図する用途に応じて広範に変わる可能性があり、柔軟な場合も、剛直な場合もあり、有機材料、無機材料、ハイブリッド有機−無機材料、金属材料、又は上記材料の組合せを含むことができる。支持体24の例示的有機材料としては、酢酸セルロース、硝酸セルロース、再生セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリピペラジンアミド(ダウ・ケミカル、ミッドランド、MI製の商品名FILMTECで入手可能なものなど)、ポリアクリロニトリル及び共重合体、トラックエッチド(track−etched)ポリエステル(例えば、ワットマン社によって商品名CYCLOPOREで販売されているもの)、ポリカーボネート(例えば、ワットマン社によって商品名NUCLEPOREで販売されているもの)、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ナイロン6,6、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、DeWAL Industriesによって商品名PORO−TEX及びPARA−TELで販売されているもの)、及び上記材料の組合せが挙げられる。積層メンブレンの活性層の例示的無機材料としては、ナノポーラス・アルミナ(Al)(例えば、ワットマン社によって商品名ANOPOREで販売されているもの)、ベリリア(BeO)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、シリカ(SiO)、マグネシア(MgO)、カルシア(CaO)、イットリア(Y)、ストロンチア(SrO)、ランタナ(La)、ハフニア(HfO)、鉄酸化物、酸化マンガン(MnO)、炭化物、窒化物、ケイ化物、及び上記材料の組合せが挙げられる。多孔質支持体24に含むことができる例示的金属としては、例えば、ニッケル、ニッケル合金及びステンレス鋼が挙げられる。
【0012】
多孔質支持体24は、平均孔径が約1から約1000nm、約1から100nm(0.1マイクロメートル)、約1から50nm、約2から約30nm、更により具体的には約5から約20nmである。本願においては、「細孔」という用語は、多孔質支持体の1面から反対の面に延在する規則的及び不規則な空隙若しくは溝又はその両方を指す。精密濾過(MF)積層メンブレンは、平均孔径が約0.1マイクロメートルであり、分子量カットオフが約500,000ダルトンである。限外濾過(UF)ストック・メンブレンは、平均孔径が約0.01マイクロメートルから約0.1マイクロメートルであり、分子量カットオフが約1,000ダルトンから500,000ダルトンである。下記実施例に用いたポリスルホン(PSF)限外濾過ストック・メンブレンの孔径は、約5から約20nmである。
【0013】
多孔質支持体24は、厚さ1マイクロメートルから10ミリメートル、より具体的には1マイクロメートルから100マイクロメートル、より具体的には1マイクロメートルから80マイクロメートル、更により具体的には1マイクロメートルから50マイクロメートルとすることができる。
【0014】
一部の実施形態においては、多孔質支持体24は、場合によっては、その上に支持層22を載せることができ、支持層22は、例えば、別のメンブレン、織繊維材料若しくは不織繊維材料、高分子膜、又は紙の層とすることができる。
【0015】
活性層26は、互いに積層された星型高分子の複数の層28でできている。本開示においては、「星型高分子」という用語は、中心核において結合した複数の線状高分子(少なくとも3つ)でできた分岐高分子を指す。星型高分子の核、すなわち中心部は、原子、分子又は巨大分子とすることができ、一部の実施形態においては、それ自体が多官能性とすることができる。星型高分子の鎖、すなわち「腕」は、類似の高分子でも異なる高分子でもよい可変長の有機鎖からなる。腕は、化学的に同一である場合もあれば(ホモスター)、異なる場合もある(ヘテロスター又はミクトアーム・スター)。別の実施形態においては、腕は、複数の単量体(モノマー)又は高分子(ポリマー)で構成することができ、星型ブロック重合体又はランダム星型共重合体を生成することができる。
【0016】
星型高分子は、様々な手法によって合成することができる。最も一般的な合成としては、リビング鎖が開始剤として使用されるアーム(腕)・ファースト手法(arm−first approach)、及び核が開始剤として使用されるコア・ファースト手法(core−first approach)が挙げられる。別の合成経路としては、制御ゾルゲル法、グループ移動重合、遷移金属触媒反応、リビング・アニオン重合、リビング・カチオン重合、開環重合、開環メタセシス重合(ROMP:ring−opening metathesis polymerization)、原子移動ラジカル重合(ATRP:atom transfer radical polymerization)、可逆的付加−開裂連鎖移動重合(RAFT:reversible addition−fragmentation chain transfer polymerization)及び窒素酸化物媒介性ラジカル重合が挙げられる。
【0017】
カーネギーメロン大学のMatyjaszewskiグループは、参照により本明細書に援用するhttp://www.cmu.edu/maty/materials/Polymers_with_Specific_Architecture/star−copolymers.htmlのサイトで、種々の星型共重合体の構造及び合成に関する一般的情報を提供している。
【0018】
多種多様な星型高分子を使用して、NFメンブレン20の活性層26中に障壁層28を形成することができるが、一部の実施形態においては、星型高分子の腕上の官能基を、星型高分子が「自己組織化」して活性層26を形成するように選択する。一部の実施形態においては、「自己組織化する」という用語は、星型高分子が、腕上の官能基間の特異的局所的相互作用の結果として、活性層26の層28を形成する構成要素の組織構造又はパターンで整列し、互いに重なることを意味する。例えば、静電荷相互作用又は電気的(例えば、電荷移動)相互作用又は水素結合又は金属−リガンド相互作用のいずれかの結果であり得る、官能基間の相互作用によって、星型高分子が整列して、個々の障壁層を形成する。層は、外側の方向ではなく相互に重なって(lie down one over the other without external direction)、重なった個々の障壁層の配列を形成する。
【0019】
例えば、多孔質支持メンブレンが第1の表面電位(正又は負)を有する場合、その腕上に官能基を有し、第1の表面電位と反対の第2の表面電位を有する第1の星型高分子を選択することができる。第1の星型高分子を多孔質支持メンブレンに塗布すると、電子電荷相互作用若しくは水素結合又はその両方によって、第1の星型高分子は支持メンブレンに付着し、その上に自己制御性の第1の単一の障壁層を形成する。次いで、その腕上に官能基を有し、第1の星型高分子の第2の表面電位と反対の第3の表面電位を有する第2の星型高分子を選択することができる。第2の星型高分子を第1の星型高分子に塗布すると、電子電荷相互作用若しくは水素結合又はその両方によって、第2の星型高分子は、第1の星型高分子の上に載り、第1の星型高分子に付着し、その上に第2の単一の障壁層を形成する。次いで、別の第1の星型高分子を第2の障壁層に塗布して、その上に第3の単一の障壁層を形成することができ、別の第2の星型高分子を第3の障壁層に塗布して、第4の障壁層を形成することができる。第1の星型高分子と第2の星型高分子を構成要素のように連続的に塗布して、活性層が形成されるまで複数層のペアをこのようにして形成することができる。
【0020】
例えば、一実施形態においては、球状の核と正の表面電荷を付与するアンモニウム部分で官能性を持たせた少なくとも幾つかの腕とを有する第1の球状星型高分子を、球状の核を有し、負電荷カルボン酸(COO)と電気的に中性な親水性ポリ(エチレングリコール)(PEG:poly(ethylene glycol))又は両性イオン性部分の混合官能基を含み負の表面電荷を付与する腕を有する第2の球状星型高分子と組み合わせた。これらの星型高分子の略図を図3に示す。
【0021】
種々の実施形態においては、正電荷星型高分子が負電荷部分をその腕上に有する星型高分子と一緒に静電気的に自己組織化するのを潜在的に可能にする星型高分子の腕の別の正電荷部分としては、アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウムカチオン、並びに水溶液又は酸性溶液中でカチオン性になることが合理的に予測される官能基、例えば、アミンが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0022】
負電荷星型高分子が正電荷部分をその腕上に有する星型高分子と一緒に静電気的に自己組織化するのを潜在的に可能にする星型高分子の腕の有用な負電荷部分の非限定的例としては、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、リン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸及びヒドロキサム酸が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0023】
星型高分子が水素結合によって別の星型高分子と一緒に自己組織化し得るのに使用することができる星型高分子の腕の別の有用な部分の非限定的例としては、ケトン(例えば、ポリ(N−ビニルピロリドン))、アミド(例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、尿素、チオ尿素、グアニジン及びアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド)部分を含む水素受容体を伴うアルコール又は弱酸(COOH)を含めた水素供与体が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0024】
図4を参照すると、NFメンブレン構築物50は、支持織布52、多孔質支持体54(例えば、限外濾過(UF)又は精密濾過(MF)メンブレン)、及び活性層56を含む。活性層56は、正電荷星型高分子56Aと負電荷星型高分子56Bの交互の障壁層のペアを含む。障壁層は、多孔質支持体54の上に交互の多層(LBL)となり、その上に自己組織化配列を形成する。集合体は、浸漬、スピンニング又は噴霧によって構築することができる。
【0025】
種々の実施形態においては、障壁層は、厚さが約5nmから約50nm、又は約5nmから約20nmである。
【0026】
任意の数の障壁層を基体に施すことができるが、種々の実施形態においては、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、又は少なくとも10層の障壁層を施して、濾過性能及び表面性が最適なメンブレンを提供する。
【0027】
種々の実施形態においては、NFメンブレンの活性層は、正電荷官能基を腕上に有する星型高分子(SPP:star polymers with positively−charged)の溶液、及び負電荷高分子を腕上に有する星型高分子(SPN:star polymers with negatively−charged)の溶液を調製することによって調製することができる。星型高分子を溶解できるが、支持メンブレンには非溶媒である任意の溶媒を使用することができ、適切な例としては、アルコール、ハロゲン化溶媒、芳香族溶媒及び水系溶媒が挙げられるが、それだけに限定されない。水系溶媒、アルコール及び水は特に有用であることが判明した。
【0028】
SPPとSPN星型高分子の溶液を、複数の多層(LBL)集合サイクルを通して順次塗布して、障壁層を多孔質基体上に形成することができる。SPPとSPN星型高分子溶液を基体に任意の順序で塗布することができ、任意に選択できる水洗を各塗布の間に行って、未反応高分子を洗い流すことができる。図4に示すように、1LBLを、正電荷星型高分子(SPP)と負電荷星型高分子(SPN)の二重層を形成する1堆積サイクルと定義する。種々の実施形態においては、少なくとも4LBLを使用して、望ましい表面特性及び濾過性を有するメンブレンを提供する。
【0029】
種々の実施形態においては、支持体の表面の第1の層の充填密度を高めるために、場合によっては、星型高分子溶液を塗布する前に化学的又は物理的処理(例えば、プラズマ又はUV−オゾン)を支持体に適用することができる。本開示のNFメンブレンの更なる詳細を以下の非限定的実施例で示す。高荷電高分子の堆積では、最初の層を多孔質支持メンブレンの表面電位に基づいて選択することができる。
【実施例】
【0030】
材料:以下の実施例に用いる材料を表1に列挙する。
【0031】
【表1】
【0032】
p−ジビニルベンゼン(p−DVB)をY.Le Bigot,M.Delmas and A.Gaset,「A Simplified Wittig Synthesis Using Solid/Liquid Transfer Processes IV − Synthesis of symmetrical and asymmetrical mono−and di−olefins from terephtalic aldehyde」,Synthetic Communications,1983,13(2),177−182に記載の手順に従って調製した。
【0033】
計測手段:
核磁気共鳴分光法(NMR:Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy):星型高分子のH NMRスペクトルを外径(o.d.:outside diameter)5mmの管を用いたBruker Avance 2000分光計(400MHz)によって得た。内部残留溶媒(H、CDCl:デルタ=7.24)を基準にした。
【0034】
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC:Gel Permeation Chromatography):ウォーターズ高分解能カラムHR1、HR2、HR4E及びHR5E(流量1mL/min、THF)を用いたGPCを使用して、高分子試料の分子量分布M/Mを線状ポリスチレン標準に対して測定した。
【0035】
表面プラズモン共鳴分光法(SPR:Surface Plasmon Resonance Spectroscopy):SPRを減衰全反射(ATR:attenuated total reflection)構成の2アーム反射率計を用いて行った。P偏光レーザ光(854nm)を半円筒形BK7ガラスプリズムの半径に沿って導いた。BK7ガラスプリズムは、(屈折率整合液体を用いて)Schott SF11ガラス基板に接触しており、Schott SF11ガラス基板の上には、3nmの熱的に蒸着されたCr付着層、50nmの熱的に蒸着されたAu層、及び(UV/オゾン処理によって試料溶液接触前に前もって浄化された)4nmのスパッタSiO層が堆積した。これらの要素をKel−Fフローセルに押しつけた。Kel−Fフローセル中には楕円形のポケット(深さ0.5mm、軸7.0×2.1mm、体積40.8μl)が作られ、その中に試料溶液を導入することができた。反射率計の光源アームと収光アームは、等しいが反対の入射角で角度分解能0.001度で反対方向に回転することができ、レーザ光をすべての角度でプリズム表面に垂直にプリズム上に導き、入射角15から90度にわたって屈折なしに光を試料に当てることができた。光源は、レーザダイオード、偏光子、及び半円筒形プリズムによって導入された光強度を補正する補正光学系からなった。補正光学系は、試料からの反射光をケイ素検出器上に投影した。試料上の光学的プローブ領域をアームの回転の中心に固定し、入射角の関数としての反射光強度を記録した。
【0036】
原子間力顕微鏡法(AFM:Atomic Force Microscopy):LBL集合メンブレンのAFM画像を、ばね定数約3Nm−1のカンチレバーを用いてタッピングモードで操作したDigital Instruments 3100原子間力顕微鏡によって得た。
【0037】
紫外可視分光法:LBL集合メンブレン及び未改質メンブレンの染料分離率を、供給溶液と透過溶液のUV吸収強度をHP/アジレント8453ダイオードアレイUV/VIS分光光度計を用いて測定することによって求めた。
【実施例1】
【0038】
アミン官能性星型高分子(SPP、正電荷星型高分子)の合成
SPPを下記反応スキーム1に従って調製した。
【0039】
スキーム1
【0040】
【化1-1】
【0041】
【化1-2】
【0042】
ISP−1の調製。3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−1−プロピルリチウム(6.6mL、溶液の全重量に基づいてシクロヘキサン中約10wt%溶液)を、シクロヘキサン(200mL)とTHF(10mL)の混合液中のスチレン(12.00mL、104.0mmol)の撹拌溶液にアルゴン雰囲気下で添加した。20分後、一定分量(約2mL)を取り、脱気MeOH(約150mL)中でクエンチし、「遊離」ポリスチレン腕の代表試料を濾過によって収集した。(遊離腕のデータ:H NMR(400MHz、CDCl、デルタ)=7.12(br s、99H)、6.50〜6.70(br m、66H)、3.45(br s、2H)、1.90(br s、33H)、1.46(br s、66H)、1.03(br s、4H)、0.87(br s、9H)、0.00(br s、6H)。分析GPC:M=3300、M/M=1.03。これらのデータは、平均重合度=33を意味する)。シクロヘキサン(3.00mL)中のパラ−ジビニルベンゼン(2.70mL、19.0mmol)とスチレン(0.12mL、1.05mmol)の混合物を添加し、反応混合物を更に40分間撹拌した。次いで、反応溶液をMeOHとEtOH(1.5L、1:1v/v)の急速撹拌溶液に徐々に添加してクエンチした。形成された沈殿を濾過によって単離し、恒量まで風乾した。次いで、アセトン(150mL)、次いでイソプロピルアルコール(30mL)を徐々に添加する前に、粗製星型高分子をCHCl(100mL)に溶解させた。生成物が十分な油層を容器の底部に形成するまで溶液を静置した。混合物の上澄みを流して、油を単離し、次いで油を真空乾燥機で恒量まで乾燥させて、中間体星型高分子ISP−1(9.5g)を得た。H NMR(400MHz、CDCl、デルタ)=7.12(br s、99H)、6.50〜6.70(br m、66H)、3.45(br s、2H)、1.90(br s、33H)、1.46(br s、66H)、1.03(br s、4H)0.87(br s、9H)、0.00(br s、6H)。DLS(THF):M=104、000g/mol、M/M=1.12、R=5.5nm。(これらのデータは、星型高分子1個当たりの平均腕数が31であることを意味する。)
【0043】
ISP−2の調製。ISP−1(9.0g)をTHF(90.0mL)に溶解させ、フッ化テトラブチルアンモニウム(Bu)(THF中1.0M溶液、10.0mL)を添加した。反応溶液を50℃に1時間加温する前に24時間室温で撹拌した。急速撹拌しながらMeOH(1L)に徐々に添加する前に、溶液を室温に冷却した。形成された沈殿を濾過によって単離し、恒量まで風乾して、脱保護されたISP−2(8.5g)を得た。H NMR(400MHz、CDCl、デルタ)=7.12(br s、99H)、6.50〜6.70(br m、66H)、3.45(br s、2H)、1.90(br s、33H)、1.46(br s、66H)、1.03(br s、4H)。分析GPC:M=3300、M/M=1.03。分析GPC:M/M=1.14。光散乱:M=103000g/mol、M/M=1.14、R(THF、平均)5.5nm。
【0044】
ISP−3の調製。無水ジクロロメタン(30mL)中の臭化2−ブロモイソブチリル(1.4g、星型高分子アルコール末端基1個当たり4当量)の溶液を、無水ジクロロメタン(30mL)中の脱保護ISP−2(5.0g)及びトリエチルアミン(0.75g)の溶液に0℃で15分間滴下した。混合物を室温に14時間加温し、次いで加熱して4時間穏やかに還流させた。メタノール(3.7g)中に繰り返し沈殿後に生成物中間体高分子ISP−3を得た。H NMR(400MHz、CDCl、デルタ)=7.12(br s、99H)、6.50〜6.70(br m、66H)、3.78(br s、2H)、1.90(br s、33H)、1.46(br s、66H)、1.03(br s、4H)0.85(br s、6H)。分析GPC:M/M=1.14。光散乱:M=104000g/mol、M/M=1.13、R(THF、平均)5.5nm。
【0045】
星型高分子SPPの調製。ATRP開始剤ISP−3(1.0g)、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル(DMAEMA)(4.0g)、塩化銅(I)(70mg)及びN,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA、50mg)をアニソール(50mL)に溶解させた。溶液を45℃に0.5時間加熱する前に脱気し、窒素雰囲気下でシールした。次いで、反応溶液を冷却し、急速撹拌しながらヘキサン(200mL)に添加した。こうして形成された沈殿を単離し、塩化メチレンに溶解し、急速撹拌しながらヘキサン(200mL)に再度添加した。こうして形成された沈殿を単離し、恒量まで風乾して、星型高分子SPP(2g)を白色固体として生成した。H NMR(400MHz、CDCl、デルタ)=7.13(br s、99H)、6.50〜6.60(br m、66H)、4.57(br s、66H)、4.01(br s 66H)、2.33(br s、198H)、1.86(br s、132H)、1.45(br s、66H)、0.90(br s、66H)、0.78(br、s、6H)。光散乱:M=290000g/mol、M/M=1.19、R(THF、平均)12.3nm。
【実施例2】
【0046】
カルボン酸官能性星型高分子(SPN、負電荷星型高分子)の合成
SPNを下記スキーム2に従って調製した。
【0047】
スキーム2
【0048】
【化2】
【0049】
星型高分子SPNの調製。ATRP開始剤末端官能性ポリスチレン星型高分子ISP−3(0.3g)、メタクリル酸tert−ブチル(1.2g)、メタクリル酸オリゴ(エチレングリコール)(EGM)(DP4.5、2.6g)、塩化銅(I)(9.4mg)及びPMDETA(16.5 mg)をアニソール(12.0mL)に溶解させた。溶液を45℃に1時間加熱する前に脱気し、窒素雰囲気下でシールした。水素化トリブチルスズ(0.11g)を添加し、反応物を45℃で更に30分間加熱した。次いで、急速撹拌しながらヘキサン(50mL)に添加する前に溶液を約5mLに濃縮した。こうして形成された沈殿を単離し、ジアミン官能性シリカ捕捉樹脂(0.5g)の添加前に塩化メチレン(20mL)に溶解させ、混合物を終夜撹拌した。混合物を濾過し、濾液をヘキサン(50mL)に急速撹拌しながら再度添加した。こうして形成された沈殿をHCl(10N、0.2mL)の添加前にジオキサン(6mL)に溶解させた。次いで、溶液をヘキサン中のイソプロピルアルコール溶液(10wt%)に滴下する前に90℃で20時間加熱した。沈殿をそれぞれ水、メタノール及びアセトンに対して透析する(MWCO3.5kDa)前に単離し、DMF/アセトン(1:1)の溶液に溶解させた。生成した溶液をベンゼンから凍結乾燥させて、最終生成物SP−5(0.3g)を白色固体として得た。H NMR(400MHz、CDCl)デルタ(ppm)=0.90〜108(br m、107H)、1.36(br s、79H)、1.86(br s、85H)、3.31(br s、46H)、3.50〜3.59(br m、240H)、4.11(br s、32)、6.50〜6.60(br m、64H)、7.13(br s、96H)。M=87,000g/mol、M/M=1.23、流体力学的半径Rh(平均)=10.0nm。
【実施例3】
【0050】
表面プラズモン共鳴(SPR)による多層集合のモニタリング
星型高分子の多層集合をモニタするために、Cr(5nm)、金(50nm)及びSiO(4nm)で順次被覆されたガラス基板(Schott SF11)上でSPR分析を行った。基板表面をアミノ官能性星型高分子(SPP)の0.1%(w/v)水溶液にさらし、続いてPBSリンスすると、そのバックグラウンド信号(三角形の黒色曲線:1Xリン酸緩衝液)から共鳴角がシフトし、基板上に形成されたSPP星型高分子の薄層を示す(円の曲線)。こうして形成されたアミノ官能性表面をカルボン酸官能性星型高分子(SPN)の0.1%(w/v)水溶液に続いてさらすと、共鳴角が更にシフトし、SPP改質基板表面のSPN堆積が確認された(正方形の曲線)。得られた基板をSPPとSPNの交互の溶液に順次複数回さらすと(星型高分子堆積のたびに基板をPBSでリンスした)、共鳴角が極めて均一な間隔で連続的にシフトし、分子薄膜が基板上に十分制御されて多層集合することが実証された(図8)。フィルム形成の駆動力は、恐らく、初期には、酸性表面官能性と星型高分子SPPの塩基性末端アミノ基の強い相互作用から生じる。SPNの酸性基とSPP由来のアミノ官能性表面の同様の相互作用によって、逐次的な多層堆積が行われる。堆積する高分子と表面の官能性の多価相互作用のみが持続的に重要であり、過剰の高分子堆積は電荷の反発によってある程度阻止されるので、この自己組織化プロセスは自己制御的である。補足的に官能化された表面と直接的に相互作用しない高分子材料は、洗浄によって容易に除去された。
【実施例4】
【0051】
星型高分子の多層集合によるNFメンブレンの製作
ポリスルホン(PSF)UFメンブレンをUV−オゾンで40秒間前処理して、表面負電荷及び親水性を増加させた。次いで、前処理PSFメンブレンを枠内に配置し、メンブレンの上面を正電荷星型高分子(SPP)の0.1wt%水溶液に15分間さらし、続いて脱イオン水でリンスした。続いて、SPP飽和メンブレンを負電荷星型高分子(SPN)の0.1wt%水溶液に15分間さらし、脱イオン水で再度リンスして、完全な二重層堆積サイクル(1LBL)を得た。同じ手順を繰り返して、2LBL、3LBL及び4LBL厚さの星型高分子膜を形成した。LBL集合メンブレン及び未改質PSFメンブレンの表面形態をAFMによって走査し、図5に示す。
【0052】
図5は、SPPとSPN星型高分子のLBL集合(1LBLから3LBL)によって調製された薄膜複合メンブレンのトップダウンSEM画像である。裸のPSF支持体は多孔質表面構造であり、表面細孔は、LBL集合サイクルの増加によって次第に埋められた。3サイクルのLBL集合によって調製されたメンブレンは、比較的高密度な表面構造であり、目立つ細孔欠陥はなかった。
【実施例5】
【0053】
LBL集合星型高分子メンブレンを用いた分子染料濾過
分子染料溶液(100ppm、レッド・コンゴ)を供給液として用いて(Sterlitech Corp.から入手可能な)撹拌デッドエンド濾過セルによって濾過を行った。運転圧力は、星型高分子膜の層厚に応じて20psi(138kPa)から100psi(689kPa)まで変動した(0LBL:20psi(138kPa)、1〜2LBL:50psi(345kPa)、及び3〜4LBL:100psi(689kPa))。供給液と透過液の染料濃度を紫外可視分光法(HP/アジレント8453ダイオードアレイUV/VIS分光光度計)によって測定することによって染料分離率を計算した。流量及び染料分離率を図6に要約し、LBL改質メンブレンの耐汚染効率を図7に示した。
【0054】
ナノ濾過用障壁層としてのLBL集合星型高分子の可能性を確認するために、星型高分子(0LBLから4LBL)で被覆された薄膜複合メンブレンを染料含有溶液の全量濾過に供し、その性能を市販ナノ濾過メンブレンと比較した。約1nmサイズ(理論計算値)の標準染料分子コンゴ・レッドを濾過実験に使用した。図6に示すように、未改質多孔質PSF UFメンブレンは、コンゴ・レッド分離率が20%未満であるが、分離率は、星型高分子を堆積させることによってかなり増加した。4サイクルのLBL集合によって調製された星型高分子メンブレンは、高い染料分離率(約95%染料分離)を示し、これは市販NFメンブレンに匹敵し、水量は市販NFメンブレン(11LMH/bar(11×10−5LMH/Pa)未満)よりも更に高い(18LMH/bar(18×10−5LMH/Pa))。
【0055】
図7は、染料濾過実験直後に得られたメンブレン表面の写真である。疎水性PSF UFメンブレンは、染料分子が表面に強力に付着(汚染)し、長期濾過プロセス中に著しい流量減少を招くと考えられる。一般に、市販NFメンブレンは、その表面電荷(ポリアミドNFメンブレン表面のCOO官能基)のために多孔質UFメンブレンよりも親水性であり、本発明者らの実験で実証されたように、多孔質PSFメンブレンよりも表面汚染しにくい。
【0056】
しかし、市販NFメンブレンは、LBL集合星型高分子メンブレンに比べて有機分子の堆積を引き起こすためになおさら魅力的であり、中性親水性PEG及びCOO官能基を用いて処方される星型高分子の高い表面密度がナノ濾過プロセス中のメンブレン汚染を効果的に軽減し得ることを示している。
【0057】
分子付着モニタリングを含む染料濾過試験は、LBL集合星型高分子が耐汚染性高流量ナノ濾過メンブレンの有効な活性層として作用する能力を明瞭に示している。
【0058】
本発明の様々な実施形態を記述した。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求範囲の範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8