(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
医薬品、食品等、世の中には一定温度範囲内で保存する必要のある商品が非常に多い。工場で製造された商品は保冷機能を有する車両で病院、スーパー、卸売業者等の顧客に輸送される。また、工場内の倉庫で一時保管された後、顧客に輸送される商品もある。
【0003】
商品の変質を防止するためには、輸送又は保管の際は、適正な温度で管理しなければならない。例えば、医薬品の場合、適正な温度で管理されないと、薬効の低下や有害な物質の発生、或いは増加といった問題が生じる。また食品の場合も変性による味、風味の劣化といった問題が生じる。
【0004】
そのため欧州連合(EU)では、医薬品において適切な温度管理等を定めたGood Distribution Practice of Medical Products for Human Use(2013/C 68/01)が2013年9月より施行されている。これにより、医薬品を輸送するコンテナ内の温度管理は温度センサによるリアルタイム管理、ペンレコーダー等による記録が行われるようになってきた。しかし、工場からかなりの数の商品がまとまって輸送される場合はこのような管理ができても、卸売り業者から1個〜数個ずつ病院等に搬送される場合はここまで厳密な管理は人員・コスト両面から見て困難な状況である。
【0005】
そこで、保管温度を逸脱した場合にその情報を表示できる表示が検討されている。これは保管温度が適切であれば発色しないが、保管温度が適正値未満となると発色し、再び温度上昇してもその発色が消色しないものである。このような温度トレーサ機能を有する表示を商品又はその包装に設けることにより、商品を保管温度未満の環境に曝した場合にはその履歴が残る。
【0006】
特許文献1には、準可逆的熱変色材料を含む熱変色層を設けた、温度履歴検知用不可逆的熱変色表示体が開示されている。これはある温度以下になると「適温保冷中」の表示が消え、「適正保存温度外」と表示され、ある温度以下になったことを知らせるものである。
【0007】
特許文献2には、支持体上に、温度変化によって透明状態又は白濁状態をとり得る示温層を備える可逆性示温材が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る温度履歴表示体の断面図である。
図1において、温度履歴表示体は、基材1の上部に表示層2が積層され、表示層2の上部に示温層3が積層されている。示温層3は、結晶化開始温度が10℃以下であって、かつ融点が結晶化開始温度よりも20℃以上高い物質を含む。示温層3は、所定温度以下になると結晶化することにより曇化(透明性が低下)する。その結果、示温層3の下部にある表示層2の表示が見えなくなる。
【0017】
図2に本発明の他の実施形態に係る温度履歴表示体の断面図を示す。基材1の上部には第1表示層12が形成されている。第1表示層12の上部には、ある温度以下で着色する示温層3がある。更に示温層3の上部には第2表示層4が形成されている。なお、示温層3の「着色」とは、透明から白、或いは白色から黒、赤などに着色することを意味する。本明細書において、透明とは、JIS(Japanese Industrial Standards)の規格番号であるJIS K 7136で規定されるようにヘイズメーターで測定される曇度(Haze値)が5%以下であることをいう。
【0018】
基材1としては、例えば、紙、フィルム、金属などを用いることができる。フィルムを用いる場合には、安価で種々の有機溶媒に耐えられる点でポリエチレン、ポリプロピレン等の材質が好ましい。また、耐溶剤性や接着性が必要な場合には、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムが好ましい。また、基材1を用いず、直接製品上に表示層等を形成することも可能である。そうすることにより、作製した温度トレーサを張り付ける手間を削減でき、簡便に温度履歴表示体を用いることができる。
【0019】
温度履歴表示体に含まれる第1表示層12、第2表示層4などの表示層の少なくともいずれかは、インクジェット法などで印刷されたバーコードなどの読み取りコードである。コードは、機械で読み取り可能な光コードであることが好ましい。ここで、コードは、1次元コード、2次元コードのいずれでもよい。バーコードには、JAN(EAN),CODE39,ITF,NW−7,CODE128,UPC,CODE93,INDUSTRIAL 2 OF 5などの種類がある。製品における標準規則などに従って、適宜の種類のバーコードを用いることができる。2次元コードとしては、マトリックス型2次元コード、スタック型2次元コードを用いることができる。
【0020】
印刷はインクジェット法やレーザマーカーで直接印字する方法やテープなどに印刷しておいたものを張り付ける方法がある。インクジェット法で直接製品に印字することができると基材を用いる必要がなく、更にあとから温度トレーサを張り付ける必要がなくなり、低コスト化に有効である。
【0021】
示温層3は示温度材料として結晶化開始温度が10℃以下であって、融点が結晶化開始温度よりも20℃以上高い物質を含む。具体的な構成は、着色する色、商品の管理温度によって構成が異なる。
【0022】
示温材料としては、水、アルコール、エステル類或いはそれらの混合物を用いることができる。これらはある温度以下になると結晶化しはじめ、それにより白色化するものである。
【0023】
アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクタノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコールなどがあげられる。
【0024】
エステル類としては、例えば、4−tert−ブチル安息香酸セチル、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピロデン)ビスフェノールジミリステート、カプリン酸ステアリル、ラウリン酸ステアリル、りん酸ステアリル、ネオペンチルグリコールジパルミテート、ステアリン酸ラウリル、ジジピン酸ジミリスチル、マロン酸ジミリスチル、グルタン酸ジミリスチルなどがあげられる。
【0025】
上記のようなアルコール、エステル類などから適切に材料を選択することにより、
図3に示したように、凝固(結晶化)開始温度T2と溶解(透明化)開始温度T3は違う温度とすることができる。このようにすると、一度ある温度以下になると曇化(白色化)するが、それが溶解開始温度以上にならないと透明化せず、低温を検知したという情報が残ることになる。このT2とT3の温度差はできるだけ大きいことが好ましい。少なくとも20℃以上であり、好ましく30℃以上である。この温度差が小さいと、高温にすることで、低温になったことという情報が消えてしまう。
【0026】
透明から白色化する示温層を用いる場合には、材料は常温で液体である。そのため、材料を保持する構造が必要である。そのような構造としては、表示層を読み取ることができるため、透明であることが必要である。したがって、示温層は、示温材料が、高分子フィルム等の保持フィルムで覆われた構造とすることが好ましい。保持フィルムは、袋状の構造を用いることができる。高分子フィルムとしては透明性が高いという観点から、ポリエチレン、ポロプロピレンなどがあげられる。耐溶剤性や接着性が必要な場合には、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムが好ましい。このようなフィルムの袋状の構造に低温で白色化する材料を注入し、封じる。また、2枚のフィルムの間にスペーサを挿入し、空隙を一定化させた中に低温で白色化する材料を注入ことも可能である。
【0027】
示温層には、示温材料の他に所定温度以下で発色又は変色する物質を混合してもよい。所定温度以下で発色又は変色する物質を混合することにより、所定温度以下になったときに、示温層を着色することができる。所定温度以下で発色又は変色する物質としては、例えば、ロイコ色素をあげることができる。この場合、示温層は、アルコール類、エステル類、フェノール類とロイコ色素を含むマイクロカプセルを含む。この場合、低温着色層は常温で固体にすることも可能である。アルコール類、エステル類は上記の材料と同じであり、上記のような材料から種々選択できる。フェノール類はロイコ色素を着色させる顕色剤として作用する。
【0028】
ここで、フェノール類とはフェノール性水酸基を有する材料のことである。そのような材料としては、フェノール、o―クレゾール,p−エチルフェノール、ブチルフェノール、2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、没食子酸プロピルエステル、没食子酸イソオクチルエステル、没食子酸n−オクチルエステル、没食子酸n−ドデシルエステル、没食子酸n−セチルエステル、p−オキシ安息香酸メチルエステル、p−オキシ安息香酸エチルエステル、p−オキシ安息香酸プロピルエステル、p−オキシ安息香酸イソオクチルエステル、p−オキシ安息香酸n−ドデシルエステル、o−フェニルフェノール、5−アミノナフトール、2,3−キシリルアシッドホスフェート、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ピロカテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、モノクロル−o―フェニルフェノール、2,4,6−トリクロルフェノール、ピロガロール、βーナフトール、2,3−ジヒドロキシナフタレン、メトキノン、4,4’−チオービス−(6−tBu−3−メチルフェノール)、
4,4’−(へキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(2−メチループロピリデン)ビスフェノールなどがあげられる。
【0029】
ロイコ色素は、フタリド類、カルビノール類、オーラミン類、ラクタム類、インドリン類、スピロピラン類、フルオラン類などの様々な色素を用いることができる。所望の色、耐光性などの観点から適宜用いることができる。
【0030】
マイクロカプセル化は従来公知の方法を用いて形成できる。例えば、コアセルベーション法、界面重合法、in situ重合法、液中硬化被膜法、気中懸濁被膜法、スプレードライ法などを用いることができる。また、これらに限定されることはなく、2種類以上の異なる方法を組合せて採用することができる。マイクロカプセル壁膜物質としては、ポリ尿素、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ビニル系樹脂などを用いることができる。インクジェット法でマイクロカプセルを含んだインクを用いて、示温層を形成する場合には、マイクロカプセルのインク中での分散性を向上させることが必要となる。そのためには、適宜、表面処理剤をマイクロカプセル状に形成し、分散性を向上することができる。また、インクジェット用のインクで印字する場合には、インクジェット装置のヘッドでの目詰まりをなくすため、マイクロカプセルの大きさを十分小さくする必要がある。少なくとも50μm以下のサイズである必要がある。できれば、10μm以下のサイズが好ましい。また、マイクロカプセルが凝集しないよう、表面を凝集抑制剤で修飾してもよい。
【0031】
表示層の上部には、表示層を保護するための保護膜などが形成されていてもよい。保護膜を形成する場合、表示が読み取れるように、可視域で透明或いはほぼ透明であることが必要である。そのような材料としては、結晶性の高い材料よりは非晶質の材料の方が好ましい。具体的には結晶性の高分子であるポリエチレンやポリプロピレン等よりは、非晶質のPET樹脂、或いはポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等が好ましい。ただ、結晶性の樹脂でもカバー層を薄く形成することにより、光の透過性を向上させることによって使用は可能である。
【0032】
また、保護膜材料は下地となる表示層などを溶解しない部材であることも必須条件となる。更に保護膜材料を有機溶媒等に溶解し、表示層を形成した上に塗布し、保護膜を形成する場合は、保護膜材料を溶解している溶媒が下地にある表示層などを溶解しないものを選ぶ必要がある。
【実施例1】
【0034】
実施例1の温度トレーサの構造を
図4に示した。基材11には、紙を用いた。第1表示層12はインクジェット法でバーコードを印刷して形成した。インクジェット法で用いる黒色インクには、BONJET BLACK CW1(オリエント化学工業製)を用いた。
図5に第一の表示層の上面図を示す。第1表示層12は
図5のように印刷した。示温層を構成する保持フィルム131にはポリエチレンを用いた。また、示温材料132には、ステアリン酸ラウリルを用いた。ステアリン酸ラウリルの結晶化開始温度は6℃、融点は41℃であった。結晶化開始温度は、示差熱分析(DTA)により測定した。JIS K 7121に規定された方法にてDTA曲線から補外結晶化開始温度を求めた。なお低温着色材料の厚みは10μm程度とした。第2表示層14はインクジェット法でバーコードを形成した。バーコードは、CODE39の形式のバーコードを用いた。インクジェット法に用いる黒色インクにはVALIFAST BLACK 3810(オリエント化学工業製)を用いた。
図6に第二の表示層の上面図を示す。第2表示層14は
図6のように印刷した。第二の表示層は、バーコードリーダで「*NG_LowTemp*」と読み取れるものを用いた。
【0035】
上記のように作製した温度トレーサを張り付けた物品を室温に放置した。
図7に実施例1に係る温度履歴表示体の上面図を示す。室温下に放置された温度履歴表示体をバーコードリーダで読み取ることはできなかった。
【0036】
次に実施例1に係る温度履歴表示体トレーサを張り付けた物品を5℃に30分間保管した。その後室温に戻した際の温度履歴表示体を上部から見た図を
図8に示す。このバーコードは読み取り装置で読むことができる。読み取り結果は「*NG_LowTemp*」であり、この温度トレーサが6℃以下になったことを示した。このように、ある温度以下になったことを本発明の温度トレーサで表示し、バーコードリーダで読み取り、簡便にデータ化することが可能である。
【実施例2】
【0037】
実施例2は、複数の表示体を用いた例である。実施例2では、所定温度以下となると文字が表示される示温層を備える温度履歴表示体(第一の温度履歴表示体)と、実施例1に係る温度履歴表示体(第二の温度履歴表示体)を用いた。
【0038】
図9に所定温度以下となると文字が表示される示温層を備える温度履歴表示体の断面図を示す。この温度履歴表示体は、基材21上に、示温層22と、表示層24が積層されてなる。基材21は紙を用いた。示温層22は、ステアリル酸ラウリル、没食子酸エチル、6−(ジエチルアミノ)−2−[(3−トリフルオロメチル)アニリノ]キサンテン−9−スピロ−3’−フタリドを含有するマイクロカプセルを含むインクを、インクジェット法を用いて印刷したものである。ステアリル酸ラウリル、没食子酸エチル、6−(ジエチルアミノ)−2−[(3−トリフルオロメチル)アニリノ]キサンテン−9−スピロ−3’−フタリドの重量比は24:2:1である。マイクロカプセルの壁膜材料としては、メラミン樹脂を用いた。マイクロカプセル化には界面重合法を用いた。上述したインクを用いることにより、通常温度では白色であるが、6℃以下の温度になると印字部分が黒色化し、目視で確認できる示温層を作製した。本実施例においては、黒色化すると、「LOW TEMP」という文字が現れるように印字した。
【0039】
表示層24は
図10のようなコードをインクジェット法で印刷したものである。このバーコードはCODE39の形式で記載されており、バーコードリーダで読み取ることができるものである。読み取ると「*OK*」という情報が記録できる。
【0040】
作製した温度履歴表示体を張り付けた物品を室温に保管し、バーコードリーダで読み取った。第一の温度履歴表示体の読取結果は「*OK*」であったが、第二の温度履歴表示体は読み取ることができなかった。
【0041】
この物品を5℃で30分間保管し、それぞれの温度履歴表示体をバーコードリーダで読み取った、第一の温度履歴表示体は
図11のように表示され、バーコードリーダでは読み取れなかった。また、この
図11のように、低温になったことを示す、LOW TEMPという文字が現れたため、この物品が6℃以下になったことを目視で確認できた。第二の温度履歴表示体の読み取り結果は「*NG_LowTemp*」であり、この物品が6℃以下になったことを示した
このように、複数のバーコードを用いる場合は、同じ種類のバーコードを用いると、読み取りの設定を逐次変化させる必要がなく、より簡便にバーコードを読み取り、データ化することができる。
【実施例3】
【0042】
実施例3に係る温度履歴表示体は、実施例2における第一の温度履歴表示体の示温層に、ステアリル酸ラウリル、没食子酸エチル、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−フルオランを含むインクを用いたこと以外は実施例2と同様に作製した。本実施例の温度履歴表示体によれば、低温で現れる「LOW TEMP」という文字が赤色となり、より高い視認性が得られる。その結果、目視での確認がしやすくなるものである。
【実施例4】
【0043】
実施例4に係る温度履歴表示体の断面図を
図12に示した。実施例4に係る温度履歴表示体は基材31上に、表示層32が積層され、表示層の上に示温層33が積層された構造を有する。示温層は、示温材料を保持するフィルム331中に示温材料332を含む構成となっている。
【0044】
基材31には紙を用いた。表示層32にはインクジェット法を用いて、バーコードを印刷した。このバーコードはCODE39の形式で記載されている。この表示層32を上部から見た図を
図13に示した。これを読み取ると「*OK*」という情報が記録できるものである。フィルム331にはポリエチレンを用いた。また、示温材料332にはステアリン酸ラウリルを用いた。示温層の厚みは約5μmとした。
【0045】
作製後の温度履歴表示体は、示温層が透明であるため、示温層下部の表示層を読み取ることができた。
【0046】
本実施例の温度履歴表示体を張り付けた物品を5℃に30分保管した。30分後、温度履歴表示体は、示温材料332が白色化し、表示層32が読み取れなくなった。このように、本実施例に係る温度履歴表示体は低温を検知する温度トレーサとして動作する。
【実施例5】
【0047】
実施例5は示温材料として、ミリスチルアルコールを用いた以外は実施例1と同様に温度履歴表示体を作製した。ミリスチルアルコールの結晶化開始温度は4℃、融点は39℃であった。本実施例の温度履歴表示体は4℃以上では示温層が透明であるため、第2の表示層と、示温層の下部にある第1の表示層とが重なってバーコードが読み取れない。しかし、4℃以下になると示温度層が白濁し、下部にある第1表示層が見えなくなる。その結果、第2表示層のバーコードが読み取れるようになる。
【0048】
この温度履歴表示体を4℃以下の環境に放置した後、バーコードリーダを用いて読み取った。読み取り結果は「*NG_LowTemp*」であった。このように本実施例に係る温度履歴表示体が4℃以下になったという情報を記録することができる。
【実施例6】
【0049】
実施例6の温度トレーサの構造図を
図14に示した。基材41の表面上には、表示層421と、示温層43とが、積層されている。また、基材41の表面上には、示温表示部422が配置している。基材41には紙を用いた。表示層421はインクジェット法でバーコードを印刷した。このバーコードはCODE39の形式で書かれたものである。インクジェット法で用いる黒色インクはBONJET BLACK CW1(オリエント化学工業製)を用いた。表示層421を上部から見た図を
図15に示した。このバーコードをバーコードリーダで読み取ると、「*OK*」という情報が記録できるものである。示温表示部422は常温では白色の、ステアリル酸ラウリル、没食子酸エチル、6−(ジエチルアミノ)−2−[(3−トリフルオロメチル)アニリノ]キサンテン−9−スピロ−3’−フタリドを含有するマイクロカプセルを含むインクを用いた。ステアリル酸ラウリル、没食子酸エチル、6−(ジエチルアミノ)−2−[(3−トリフルオロメチル)アニリノ]キサンテン−9−スピロ−3’−フタリドの重量比は、24:2:1である。マイクロカプセルの壁膜材料としては、メラミン樹脂を用いた。また、マイクロカプセル化には界面重合法を用いた。示温表示部422は6℃以下になると「LowTemp」という黒色表示が目視で確認できるようになる。示温材料保持フィルム431にはポリエチレンを用いた。示温材料432にはステアリン酸ラウリルを用いた。示温層の厚みは約10μmとした。本実施例の温度トレーサを張り付けた物品を室温で保管した場合は、表示層421のバーコードがそのまま読み取れる。一方、本実施例の温度トレーサを張り付けた物品を5℃で30分保管した場合には、
図16のような表示になる。このようになると、バーコードリーダで読み取れなくなり、「*OK*」という情報が入力されなくなる。更に、脇に「Low Temp」という情報が目視で確認できるようになる。このようにして、ある温度以下になったことがわかる情報が入力され更に目視から認識できるようになる。
【実施例7】
【0050】
実施例7の温度トレーサは下記の点を除けば、実施例6と同様である。基材の表面上には、表示層521と、示温層とが、積層されている。また、基材の表面上には、第1の示温表示部522と、第2の示温表示部523と、が配置している。
【0051】
表示層521と、示温層と、第1の示温表示部522とは、実施例7と同様である。第2の示温表示部523を形成した。第2の示温表示部523はインクジェット法を用いて印刷した。インクには、ステアリル酸ラウリル、没食子酸エチル、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−フルオランを含有するマイクロカプセルを含むインクを用いた。ステアリル酸ラウリル、没食子酸エチル、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−フルオランの重量比は、24:2:1である。マイクロカプセルの壁膜材料としては、メラミン樹脂を用いた。マイクロカプセル化には界面重合法を用いた。第2の示温表示部523の印字は6℃以下になると赤色に着色し、特殊なリーダを用いて情報を読み取れるものである。
【0052】
本実施例の温度トレーサを張り付けた物品を5℃で30分保管した場合には、
図17のような表示になる。表示層のバーコードは読み取れなくなる。また、脇にある第1の示温表示部の「Low Temp」という情報が目視で確認できるようになる。また、第2の示温表示部523のコードが現れ、これをリーダで読み取ることにより、「NG_Low Temp」という情報を手入力せずに入力することができる。