特許第6625135号(P6625135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6625135脊柱の不安定性を判定する方法および患者の努力が安定性判定に及ぼす影響を排除する方法
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  • 特許6625135-脊柱の不安定性を判定する方法および患者の努力が安定性判定に及ぼす影響を排除する方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625135
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】脊柱の不安定性を判定する方法および患者の努力が安定性判定に及ぼす影響を排除する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20191216BHJP
【FI】
   A61B6/00 350A
   A61B6/00 360B
   A61B6/00ZDM
【請求項の数】78
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-551567(P2017-551567)
(86)(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公表番号】特表2018-501057(P2018-501057A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】US2015065972
(87)【国際公開番号】WO2016106034
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2018年12月14日
(31)【優先権主張番号】14/579,563
(32)【優先日】2014年12月22日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517218686
【氏名又は名称】メディカル メトリクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100117444
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】ヒップ,ジョン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ワートン,ニコラス
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0086596(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0279650(US,A1)
【文献】 特開2012−045255(JP,A)
【文献】 特表2004−509722(JP,A)
【文献】 特表平06−511184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 −6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊柱の椎間の動きを分析するコンピュータで実施される方法であって、
第1の位置および第2の位置における第1の椎骨および第2の椎骨のデジタル画像を取得することであって、前記2つの位置の間の椎間の回転度が3度よりも大きい、第1の椎骨および第2の椎骨のデジタル画像を取得することと、
前記第1の位置における少なくとも1つの画像上で椎骨の少なくとも1つの目印の位置を検出するかまたは取得することと、
前記第1の位置における少なくとも1つの画像上の前記椎骨の少なくとも1つの目印の位置を前記第2の位置における少なくとも1つの画像上の同じ椎骨に電子的に転送することと、
前記第1の位置および前記第2の位置における前記椎骨のデジタル画像を整列させ、前記第1の位置および前記第2の位置における前記椎骨の画像を比較する測定を可能にすることと、
前記第1の位置および前記第2の位置における前記第2の椎骨の画像を整列させるのに必要な回転および並進を判定することと、
前記第1の位置と前記第2の位置における前記第1の椎骨と前記第2の椎骨との間の椎骨の回転度を測定することと、
前記第2の椎骨を固定しながら、前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記第1の椎骨上の目印の並進を測定することと、
椎骨寸法に基づいて前記椎間の並進測定値を正規化することと、
前記椎間の並進を前記椎間の回転によって除算して、椎骨寸法に依存しない回転度当たりの正規化された並進(TPDR)を得ることと、
を含む、コンピュータで実施される方法。
【請求項2】
前記デジタル画像は、X線、磁気共鳴画像法またはコンピュータ断層撮影から得られる、請求項1に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項3】
前記デジタル画像を整列させることは、前記第2の位置における少なくとも1つの画像を前記第1の位置における少なくとも1つの画像と重ね合わせることをさらに含む、請求項2に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項4】
前記TPDRに前記第1の椎骨および前記第2の椎骨(椎骨対)に固有の標準化係数を乗算して、無症状のX線写真上正常な集団についての同じ測定基準からの標準偏差の数として報告される安定性の測定基準を生成することをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項5】
少なくとも1つの第2の目印を検出または取得することをさらに含み、前記第2の目印は、並進の方向を確立するために使用される、請求項1に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項6】
前記目印は、特定の解剖学的平面を表すように選択される、請求項5に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項7】
前記目印は、椎体の正中矢状面を表すように選択される、請求項6に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項8】
少なくとも1つの第2の目印を検出または取得することは、前記第1の位置における画像上の少なくとも1つの第2の目印を選択し、前記選択された目印を前記第2の位置における画像に電子的に転送することを含む、請求項5に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項9】
無症状の集団についてのTPDRデータを取得または検出することをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項10】
前記TPDRの標準化係数は、無症状の集団の同じ椎骨対について測定されたTPDRおよび平均TPDRから計算される、請求項9に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項11】
前記TPDRの標準化係数は、無症状の集団の同じ椎骨対におけるTPDRの標準偏差によって除算された無症状の集団の同じ椎骨対の平均TPDRを引いた測定TPDRである、請求項10に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの目印が、前記椎骨の後上隅、前記椎骨の重心、または前記椎骨上で発見される特定の解剖学的特徴から選択される、請求項1に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項13】
使用される前記椎骨寸法が終板である、請求項1に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項14】
前記第1の位置は屈曲位であり、前記第2の位置は伸展位である、もしくは、前記第1の位置は伸展位であり、前記第2の位置は屈曲位である、もしくは、前記第1の位置および前記第2の位置は、いずれも屈曲位であるか、またはいずれも伸展位である、請求項1に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項15】
前記脊柱に沿った同じ前記第1の椎骨および前記第2の椎骨に対する無症状のX線写真上正常な個体における測定によって定義される基準と比較した場合に、前記TPDRが正常範囲内にあるかどうかを判定することをさらに含む、および/または、前記第1の位置における画像上の少なくとも1つの目印は、1つ以上の認識または画像安定化を使用して前記第2の位置における画像上に電子的に複製される、および/または、椎間の動きの量および質の包括的な評価を提供するために、TPDRを、椎間の並進、椎間の回転、回転中心または別の測定基準のうちの1つ以上とともに報告することをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項16】
各標準化された測定基準を、無症状のX線写真上正常な集団についての同じ測定基準からの標準偏差の数として解釈することができるように、前記報告された測定基準のうちの1つ以上に前記測定基準に固有の標準化係数を乗算する、請求項15に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項17】
プロセッサによって実行される場合に請求項1に記載の方法を制御するように構成された、コンピュータプログラムで符号化された非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
回転度当たりの脊柱の並進(TPDR)を計算する方法であって、
第1の位置における第1の椎骨および第2の椎骨のX線フィルムを得ることと、
第2の位置における第1の椎骨および第2の椎骨のX線フィルムを得ることであって、
前記2つの位置の間の椎間の回転度が3度よりも大きい、第1の椎骨および第2の椎骨のX線フィルムを得ることと、
前記第1の位置の前記X線フィルム上で前記第1の椎骨上の少なくとも1つの目印の位置をマーキングすることと、
前記2つのX線フィルムを重ね合わせて前記第1の椎骨を整列させ、前記第2の椎骨を整列させるのに必要な回転および並進を判定することと、
前記第1の位置と前記第2の位置における前記第1の椎骨と前記第2の椎骨との間の椎骨の回転度を測定することと、
前記第2の椎骨を固定しながら、前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記第1の椎骨上の目印の並進を測定することと、
椎骨寸法に基づいて前記椎間の並進測定値を正規化することと、
前記正規化された椎間の並進を椎間の回転によって除算して、TPDRを得ることと、
を含む、方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの目印が、前記椎骨の後上隅、前記椎骨の重心、または前記椎骨上で発見される特定の解剖学的特徴から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
使用される前記椎骨寸法が終板である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
後下隅は、前記第1の位置の前記X線フィルム上でマーキングされ、前記第2の位置の前記X線フィルム上に電子的に複製される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
使用される前記椎骨寸法が終板である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記2つのX線フィルムを重ね合わせて前記第2の椎骨を整列させることは、前記目印を前記第2の位置の前記X線フィルムに電子的に転写することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の位置の前記X線フィルム上で少なくとも1つの第2の目印を選択し、前記選択された目印を前記第2の位置の前記X線フィルムに電子的に転写することをさらに含み、前記第2の目印は、並進の方向を確立するために使用される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記方法はコンピュータで実施される方法であり、前記X線フィルムはデジタル形式である、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の位置は屈曲位であり、前記第2の位置は伸展位である、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の位置は伸展位であり、前記第2の位置は屈曲位である、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の位置および前記第2の位置は、いずれも屈曲位であるか、またはいずれも伸展位である、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記脊柱に沿った同じ前記第1の椎骨および前記第2の椎骨に対する無症状のX線写真上正常な個体における測定によって定義される基準と比較した場合に、前記TPDRが正常範囲内にあるかどうかを判定することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の位置の前記X線フィルム上の前記少なくとも1つの目印は、1つ以上の認識または画像安定化を使用して前記第2の位置の前記X線フィルム上に電子的に複製される、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
脊柱の安定性を定量化する方法であって、
第1の位置における第1の椎骨および第2の椎骨のX線フィルムを得ることと、
第2の位置における第1の椎骨および第2の椎骨のX線フィルムを得ることであって、
前記2つの位置の間の椎間の回転度が3度よりも大きい、第1および第2の椎骨のX線フィルムを得ることと、
前記第1の位置の前記X線フィルム上で前記第1の椎骨上の少なくとも1つの目印の位置をマーキングすることと、
前記2つのX線フィルムを重ね合わせて前記第1の椎骨を整列させ、前記第2の椎骨を整列させるのに必要な回転および並進を判定することと、
前記第1の位置と前記第2の位置における前記第1の椎骨と前記第2の椎骨との間の椎骨の回転度を測定することと、
前記第2の椎骨を固定しながら、前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記第1の椎骨上の目印の並進を測定することと、
椎骨寸法に対する前記椎間の並進測定値を正規化することと、
前記正規化された椎間の並進を椎間の回転によって除算して、TPDRを得ることと、
TPDRに前記第1の椎骨および前記第2の椎骨に固有の標準化係数を乗算して、無症状の脊柱がゼロであり、不安定性が正または負の値として表示される、安定性の測定基準を生成することと
を含む、方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つの目印が、前記椎骨の後上隅、前記椎骨の重心、または前記椎骨上で発見される特定の解剖学的特徴から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
使用される前記椎骨寸法が終板である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
使用される前記椎骨寸法が終板である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記2つのX線フィルムを重ね合わせて前記第2の椎骨を整列させることは、前記目印を前記第2の位置の前記X線フィルムに電子的に転写することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の位置の前記X線フィルム上で少なくとも1つの第2の目印を選択し、前記選択された目印を前記第2の位置の前記X線フィルムに電子的に転写することをさらに含み、前記第2の目印は、並進の方向を確立するために使用される、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記第2の椎骨の後下隅の位置を前記第2の位置の前記X線フィルム上にマーキングすることを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
後下隅は、前記第1の位置の前記X線フィルム上でマーキングされ、前記第2の位置の前記X線フィルム上に電子的に複製される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記方法はコンピュータで実施される方法であり、前記X線フィルムはデジタル形式である、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記X線フィルムは、動きが制限された個体から得られる、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の位置は屈曲位であり、前記第2の位置は伸展位である、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の位置は伸展位であり、前記第2の位置は屈曲位である、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の位置および前記第2の位置は、いずれも屈曲位であるか、またはいずれも伸展位である、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記脊柱に沿った同じ前記第1の椎骨および前記第2の椎骨のための無症状のX線写真上正常な個体における測定によって定義される基準と比較した場合に、前記TPDRが正常範囲内にあるかどうかを判定することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の位置の前記X線フィルム上の前記少なくとも1つの目印は、1つ以上の認識または画像安定化を使用して前記第2の位置の前記X線フィルム上に電子的に複製される、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
前記測定されたTPDRは、椎間の動きの量および質の包括的な評価を提供するために、椎間の並進、椎間の回転、回転中心または別の測定基準のうちの1つ以上とともに報告される、請求項31に記載の方法。
【請求項47】
各標準化された測定基準を、無症状のX線写真上正常な集団についての同じ測定基準からの標準偏差の数として解釈することができるように、前記報告された測定基準のうちの1つ以上に前記測定基準に固有の標準化係数を乗算する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
プロセッサによって実行される場合に脊柱の椎間の動きを分析する方法を制御するように構成された、コンピュータプログラムで符号化された非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、
第1の位置および第2の位置における第1の椎骨および第2の椎骨のデジタル画像を取得することであって、前記2つの位置の間の椎間の回転度が3度よりも大きい、第1の椎骨および第2の椎骨のデジタル画像を取得することと、
前記第1の位置の前記デジタル画像上で前記第1の椎骨の少なくとも1つの目印の位置を検出するかまたは取得することと、
前記第1の位置の前記デジタル画像上の前記第1の椎骨の前記少なくとも1つの目印の位置を第2の位置の前記デジタル画像上の前記第1の椎骨に電子的に転送することと、
前記第1の椎骨上で前記2つの画像を重ね合わせて整列させ、前記2つの画像において前記第2の椎骨を整列させるのに必要な回転および並進を判定することと、
前記第1の位置と前記第2の位置における前記第1の椎骨と前記第2の椎骨との間の椎骨の回転度を測定することと、
前記第2の椎骨を固定しながら、前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記第1の椎骨上の目印の並進を測定することと、
椎骨寸法に基づいて前記椎間の並進測定値を正規化することと、
前記椎間の並進を前記椎間の回転によって除算して、椎骨寸法に依存しない回転度当たりの正規化された並進(TPDR)を得ることと、
前記TPDRに前記第1の椎骨および前記第2の椎骨(椎骨対)に固有の標準化係数を乗算して、無症状のX線写真上正常な集団についての同じ測定基準からの標準偏差の数として報告される安定性の測定基準を生成することとを含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項49】
少なくとも1つの第2の目印を検出または取得することをさらに含み、前記第2の目印は、並進の方向を確立するために使用される、請求項48に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項50】
無症状の集団についてのTPDRデータを取得または検出することをさらに含む、請求項48に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項51】
前記TPDRの標準化係数は、無症状の集団の同じ椎骨対について測定されたTPDRおよび平均TPDRから計算される、請求項50に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項52】
前記TPDRの標準化係数は、無症状の集団の同じ椎骨対におけるTPDRの標準偏差によって除算された無症状の集団の同じ椎骨対の平均TPDRを引いた測定TPDRである、請求項50に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項53】
使用される前記椎骨寸法が終板である、請求項52に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項54】
前記第1の位置は屈曲位であり、前記第2の位置は伸展位である、請求項52に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項55】
前記第1の位置は伸展位であり、前記第2の位置は屈曲位である、請求項52に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項56】
前記第1の位置および前記第2の位置は、いずれも屈曲位であるか、またはいずれも伸展位である、請求項52に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項57】
前記脊柱に沿った同じ前記第1の椎骨および前記第2の椎骨に対する無症状のX線写真上正常な個体における測定によって定義される基準と比較した場合に、前記TPDRが正常範囲内にあるかどうかを判定することをさらに含む、請求項52に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項58】
前記第1の位置の前記デジタル画像上の前記少なくとも1つの目印は、1つ以上の認識または画像安定化を使用して前記第2の位置の前記デジタル画像上に電子的に複製される、請求項52に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項59】
椎間の動きの量および質の包括的な評価を提供するために、TPDRを、椎間の並進、椎間の回転、回転中心または別の測定基準のうちの1つ以上とともに報告することを含む、請求項52に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項60】
各標準化された測定基準を、無症状のX線写真上正常な集団についての同じ測定基準からの標準偏差の数として解釈することができるように、前記報告された測定基準のうちの1つ以上に前記測定基準に固有の標準化係数を乗算する、請求項59に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項61】
前記少なくとも1つの目印が、前記椎骨の後上隅、前記椎骨の重心、または前記椎骨上で発見される特定の解剖学的特徴から選択される、請求項48に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項62】
使用される前記椎骨寸法が終板である、請求項61に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項63】
脊柱の椎間板、椎間関節または椎間靭帯の損傷または構造的変性を検出する方法であって、
屈曲位における第1の椎骨および第2の椎骨のX線画像を得ることと、
伸展位における第1の椎骨および第2の椎骨のX線画像を得ることと、
前記第1の椎骨を整列させ、前記第2の椎骨を整列させるのに必要な回転および並進を判定することと、
屈曲位と伸展位との間の椎間板の高さの変化を測定することと、
前記椎間板の高さの変化を前記回転によって除算して、回転度当たりの脊柱の変位を得ることと、
を含む、方法。
【請求項64】
前記回転度当たりの変位に前記第1の椎骨および前記第2の椎骨(椎骨対)に固有の標準化係数を乗算して、無症状のX線写真上正常な集団についての同じ測定基準からの標準偏差の数として報告される安定性の測定基準を生成することとを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記屈曲位における前記第1の椎骨の前記X線画像上で少なくとも1つの目印をマーキングすることをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記屈曲位前記X線画像上の前記少なくとも1つの目印は、1つ以上の認識または画像安定化を使用して前記伸展位前記X線画像上に電子的に複製される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記少なくとも1つの目印が、前記第1の椎骨の後上隅、前記第1の椎骨の重心、または前記第1の椎骨上で発見される特定の解剖学的特徴から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記第2の椎骨を整列させるのに必要な回転および並進を判定する前に、前記2つのX線画像を重ね合わせて前記第1の椎骨を整列させることをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
前記方法はコンピュータで実施される方法であり、前記X線画像はデジタル形式である、請求項63に記載の方法。
【請求項70】
前記椎間板の高さは、前記2つのX線画像上で測定され、変換行列を適用することによって正規化される、請求項63に記載の方法。
【請求項71】
前記椎間板の高さは、正規化された画像上で測定される、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
先の画像からの椎間板の高さの変化を、後の画像における椎間板の高さの変化と比較することによって、椎間板の空間の相対的な変化を計算することをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項73】
前記脊柱に沿った同じ前記第1の椎骨および前記第2の椎骨のための無症状のX線写真上正常な個体における測定によって定義される基準と比較した場合に、前記回転度当たりの変位が正常範囲内にあるかどうかを判定することをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項74】
前記回転度当たりの変位に前記第1の椎骨および前記第2の椎骨(椎骨対)に固有の標準化係数を乗算して、無症状のX線写真上正常な部分母集団についての同じ測定基準からの標準偏差の数として報告される安定性の測定基準を生成することとを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項75】
形質固有の部分母集団の標準的な群を作成する方法であって、
無症状の集団から屈曲位における第1の椎骨および第2の椎骨のX線画像を得ることと、
同じ集団から伸展位における第1の椎骨および第2の椎骨のX線画像を得ることと、
前記第1の椎骨を整列させ、前記第2の椎骨を整列させるのに必要な回転および並進を判定することと、
屈曲位と伸展位との間の椎間板の高さの変化を測定することと、
前記椎間板の高さの変化を前記回転によって除算して、回転度当たりの脊柱の変位を得ることと、
前記集団からデータを集めて標準的なデータを作成することと、
無症状の集団全体についての標準的なデータを形質固有の標準的なデータに分割することであって、前記集団は、形質固有の部分母集団を作成するために前記集団全体と区別可能な脊柱の特徴に基づいて分割される、ことと、
を含む、方法。
【請求項76】
前記形質固有の部分母集団のデータを症状のある患者のデータと比較して、前記回転度当たりの変位が前記脊柱に沿った同じ前記第1の椎骨および前記第2の椎骨に対する正常範囲内にあるかどうかを判定することをさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記伸展位における前記第1の椎骨の前記X線画像上で少なくとも1つの目印をマーキングすることをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項78】
前記伸展位の前記X線画像上の前記少なくとも1つの目印は、1つ以上の認識または画像安定化を使用して前記屈曲位の前記X線画像上に電子的に複製される、請求項77に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脊柱の不安定性を判定するための方法を記載している。より具体的には、本開示は、無症状の集団からの標準偏差の数として不安定性の測定を医師に知らせるために、脊柱の不安定性の型および程度を標準化された方法で定量化する方法を記載している。さらに、本開示は、単純な画像を使用して椎骨対の間の椎間の回転および椎間の並進を測定すること、およびこれらの測定から、脊柱の1つ以上の椎骨対が不安定であるかどうかを判定することを含む方法を記載している。
【背景技術】
【0002】
腰痛は、治療を必要とする最も一般的な筋骨格疾患の1つである。何百万人もの人々が毎年、腰痛のための医学的解決策を模索している。腰痛の原因は診断および処置が非常に難しいため、多くの人々は長期間、疼痛管理のみによる処置を受けている。さらに、腰痛は、障害または仕事から離れる主な理由の1つである。脊柱障害が引き起こす重大な経済的影響を考慮すると、背痛のある人は、多くの場合、いくつかの方法を使用して脊柱の不安定性を診断するのに要求とされるよりも少ない努力をするので、信頼性があり、比較的安価であり、診療室で容易に入手できる情報のみを必要とし、理解しやすく、患者の努力に関係なく患者において測定することができる、脊柱の不安定性を測定して報告する方法を有することは有益であろう。
【0003】
現在、臨床医は一般に、脊柱の動きが異常であるかどうかを判定するために、物理的検査および画像検査を使用する。動きの異常(感度)を正確に特定する能力、および、最も一般的な臨床試験の異常(特異性)がないことを正確に判定する能力は、いずれも知られていないか、または、多くの患者において信頼性が低いかまたは不正確であると科学的研究によって示されている。脊柱の動きを評価するために使用される最も一般的な方法の1つは、単純なX線写真を使用した画像検査である。多くの場合、臨床医は、2つ以上の異なる位置にある人で撮影したX線写真を比較して脊柱の動きを評価する。このような方法は非常に信頼性が低く、訓練された臨床医は、評価された動きを解釈する方法についてしばしば同意しない。
【0004】
脊柱の椎骨間の動きを測定するために使用されている他の一般的な方法は、脊柱のコンピュータ断層撮影(CT)検査から得られた幾何学的情報と脊柱の透視画像検査の情報とを組み合わせることを含む。物体の実際の三次元形状を知ることにより、透視画像データから二次元の動きを推定することが可能である。この方法は非侵襲性であるが、CT検査とデータの実質的な後処理が必要である。これは、日常的臨床診療で容易に使用できる方法ではない。
【0005】
研究者らは、脊柱の不安定性を定義しようと長い間試みてきた。多くの研究努力にもかかわらず、脊柱の不安定性についての標準的で検証された客観的尺度は存在しない。脊柱の不安定性を診断するための可能な測定基準として、椎間の回転および並進が提案されているが、レベル(例えば、L3−L4対L5−S1)と個体との間の著しい変動性により、測定値を正常または異常として分類することは非常に困難であった。回転および並進を測定基準として使用する際の別の問題は、患者の努力によるものである。患者の動きが無症状のものであるかどうかを確かめるために、無症状の集団の一部として測定された個体と同じ程度に動く(すなわち、屈曲する、または伸展する)必要がある。そうでない場合、並進および回転の測定は、各レベルで起こり得る実際の動きを低く見積もる。
【0006】
回転度当たりの並進(TPDR)はまた、不安定性の測定基準として、具体的には患者の努力による変動性を制御する方法として提案されている。椎間板、椎間関節および椎間靭帯の損傷または変性は、必要な回転のために生じる並進量を増加させる原因となることが認識されている。損傷がなく変性のない脊柱では、並進と回転との間にはほぼ線形的な関係があり、この関係の傾きは個人間でかなり類似している。
【発明の概要】
【0007】
この作業の全ておよびTPDRを報告する少数の研究にもかかわらず、一人も脊柱の不安定性を診断するための一貫したアプローチを開発することはできていない。さらに、臨床診断のための基準のいずれかまたは全てを満たすことに及ぶ従来のアプローチはない。臨床診断に使用するためには、この方法は、正確かつ再現可能であり、理解しやすく、比較的安価で、患者の状態にかかわらず入手するのが比較的容易な情報に基づいていなければならない。本開示による方法は、異なる実施形態において、これらの基準の1つ以上を満たし、少なくとも1つの実施形態において、これらの基準の全てを満たす。
【0008】
第1の実施形態によれば、本開示は、椎骨の大きさとは無関係であり、画像の倍率を知る必要がない、回転度当たりの脊柱並進(TPDR)を計算する方法を説明する。TPDRを計算するこの方法は、症状のある集団を無症状の集団と直接比較することができる。一実施形態では、この方法は、第1の位置にある第1の椎骨および第2の椎骨のX線フィルムを得ることと、第2の位置にある第1の椎骨および第2の椎骨のX線フィルムを得ることであって、2つの位置の間の椎間の回転度が3度よりも大きい、第1および第2の椎骨のX線フィルムを得ることと、第1の位置のX線フィルム上で第1の椎骨上の少なくとも1つの目印の位置をマーキングすることと、2つのX線フィルムを重ね合わせて第1の椎骨を整列させ、2つのX線フィルムにおいて第2の椎骨を整列させるのに必要な回転および並進を判定することと、第1の位置と第2の位置における第1の椎骨と第2の椎骨との間の椎骨の回転度を測定することと、第2の椎骨を固定しながら、第1の位置と第2の位置との間の第1の椎骨上の目印の並進を測定することと、椎骨寸法に基づいて椎間の並進測定値を正規化することと、正規化された椎間の並進を椎間の回転によって除算して、TPDRを得ることとを含む。
【0009】
第2の実施形態では、本開示は、TPDRを取得し、椎骨対に固有の標準化式を適用して安定性の測定基準を生成することによって、脊柱の不安定性を定量化する方法を説明する。この実施形態によれば、無症状の脊柱は特定の範囲内の値を記録し、不安定性は正常範囲外の測定基準として表示される。より具体的には、安定性の測定基準は、「正常」からの標準偏差の数として報告され、ここで、正常とは、無症状の集団についてレベルの適切な値を指す。
【0010】
さらに別の実施形態では、本開示は、プロセッサによって実行される場合に脊柱の椎間の動きを分析する方法を実行する、コンピュータプログラムで符号化された非一時的なコンピュータ可読媒体を説明しており、この方法は、第1の位置にある第1の椎骨および第2の椎骨のデジタル画像、ならびに第2の位置にある第1の椎骨および第2の椎骨のデジタル画像を取得することであって、2つの位置の間の椎間の回転度が3度よりも大きい、第1の椎骨および第2の椎骨のデジタル画像を取得することと、第1の画像上で第1の椎骨の少なくとも1つの目印の位置を検出するかまたは取得することと、第1の画像上の第1の椎骨の少なくとも1つの目印の位置を第2の画像上の第1の椎骨に電子的に転写することと、第1の椎骨上で2つの画像を重ね合わせて整列させ、2つの画像において第2の椎骨を整列させるのに必要な回転および並進を判定することと、第1の位置と第2の位置における第1の椎骨と第2の椎骨との間の椎骨の回転度を測定することと、第2の椎骨を固定しながら、第1の位置と第2の位置との間の第1の椎骨上の目印の並進を測定することと、椎骨寸法に基づいて椎間の並進測定値を正規化することと、椎間の並進を椎間の回転によって除算して、椎骨寸法に依存しない回転度当たりの並進(TPDR)を得ることと、標準化式を第1の椎骨および第2の椎骨(椎骨対)に固有のTPDRに適用して、無症状のX線写真上正常な集団についての同じ測定基準からの標準偏差の数として報告される安定性の測定基準を生成することとを含む。
【0011】
開示された様々なシステムおよび方法の実施形態のさらなる理解は、以下の詳細な説明を図面と併せて考慮することによって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】安定しているとされる左の椎骨対と、不安定であるとされる右の椎骨対である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面は必ずしも縮尺通りではない。実施形態の特定の特徴は、尺度を誇張して、またはやや概略的な形態で示されている場合があり、従来の要素のいくつかの詳細は、明瞭さおよび簡潔さのために示されていないことがある。
【0014】
以下の説明は、本発明の様々な実施形態に関する。これらの実施形態の1つ以上が好ましい場合があるが、開示された実施形態は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、さもなければ使用されるべきではない。以下に説明する実施形態の異なる教示は、所望の結果を生成するために、別々にまたは任意の適切な組み合わせで使用され得ることが十分に認識されるべきである。さらに、当業者であれば、以下の説明は広範な適用を有し、任意の実施形態の議論は、その実施形態の例示に過ぎないことを意味するものであり、特許請求の範囲を含む本開示の範囲がその実施形態に限定されることを暗示するものではないことを理解するであろう。
【0015】
特定の特徴または構成要素を指すために、以下の説明および特許請求の範囲全体を通して特定の用語が使用される。当業者であれば分かるように、異なる人は、異なる名称で同一の特徴または構成要素に言及してもよい。本明細書は、名称が異なるが構造または機能は異ならない構成要素または特徴を区別するものではない。
【0016】
以下の説明および特許請求の範囲において、「含む(including)」および「含む(comprising)」という用語は、制約されることなく使用され、したがって、「含むが、これに限定されない」を意味すると解釈されるべきである。
【0017】
本明細書で使用される場合、「脊柱の安定性」および「脊柱の不安定性」という用語は、異なるものとして具体的に示されている場合、または当業者が、それらが異なるものであると理解して、無症状の集団と比較した場合の症状のある患者の脊柱の動きのずれに言及する場合を除いて互換性があると理解される。
【0018】
本明細書で使用される場合、「椎間の並進」および「並進」という用語は、異なるものとして具体的に示されている場合、または当業者が、それらが異なるものであると理解して、椎骨の側方運動または滑り運動に言及する場合を除いて互換性があると理解される。並進は、それ自体ではほとんど起こらないが、しばしば椎骨の他の動きに伴う。
【0019】
本明細書で使用される場合、「椎間の回転」および「回転」という用語は、異なるものとして具体的に示されている場合、または当業者が、それらが異なるものであると理解して、軸を中心とした椎骨の動きに言及する場合を除いて互換性があると理解される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「標準化TPDR」および「安定性の測定基準」という用語は、異なるものとして具体的に示されている場合、または当業者が、それらが異なるものであると理解して、正規化された並進値を使用して計算され、かつ標準化式を乗じたTPDRに言及する場合を除いて互換性があると理解される。
【0021】
本明細書に記載の方法は、椎間の動きの質を客観的に定量化し、動きの質が、無症状のX線写真上正常な集団における測定によって定義される正常範囲内にあるかどうかを判定するために使用することができる。本明細書に記載の方法は、患者の努力が及ぼす影響を低減する。より具体的には、本明細書に記載の方法は、患者が検出可能な異常な回転を引き起こすように十分に運動しなかったために、臨床的屈曲−伸展の研究から得られる回転が、異常な回転を検出できない可能性がある、という従来技術の方法の限界を克服する。
【0022】
健康な無症状の患者において、すなわち損傷または変性がない場合、運動は、椎間の並進および椎間の回転の両方を引き起こす。具体的には、無症状の人において起こり得る広範囲の人間の上半身の動きは、脊柱を構成する椎骨間の制御された回転によって可能になる。椎骨間で通常生じる椎間の並進の程度は、意図された椎間の回転を可能にするために必要とされる最小量である。椎間の回転を制御する正常な機構の損傷または変性は、所与の回転量に対して異常に高い椎間の並進をもたらすことがある。
【0023】
より具体的には、動きの際に生じる椎間の並進量は、椎間の回転量のごく一部であり、かつ線形的に関連する。脊柱が健康であれば、十分な大きさの椎間の回転により、予測可能な椎間の並進が生じる。隣接する椎骨間の回転度が3度より大きい場合、本明細書に記載の相関は、脊柱の安定性の正確な予測因子を提供する。本明細書に記載の一実施形態によれば、本方法は、少なくとも3度である椎骨対間の回転を必要とするが、例えば少なくとも4度、または少なくとも5度などの他の閾値を使用してもよい。
【0024】
図1は、屈曲位および伸展位の両方における各椎骨対100および120の2つのデジタル画像を表している。図に示すように、第1の椎骨10は、関連するデジタル画像の同じ椎骨10上に重ね合わされる。椎骨10が一定に保持される一方で、第2の椎骨20/30は屈曲位と伸展位との間で表されている。両方の椎骨対において、実線の椎骨20は、伸展位にある椎骨を表す。同様に、点線の椎骨30は、屈曲した椎骨を表す。2つの画像間の回転が一定に保持される場合、回転度当たりの並進の変化を視覚化することができる。
【0025】
終板40上の点線は、例えば後下隅などの選択された目印からも分かるように、椎骨の変位の方向を画定する。画像が線の方向に移動するにつれて、第2の椎骨20/30の並進が見られ、矢印50および60によって表される。矢印50は、この例では、示された椎骨対に対する脊柱の安定性と一致する小さな並進を示す。長い線60は、この例では、示された椎骨対に対する不安定性に関連する拡張並進を示す。
【0026】
絶対的な回転および並進が患者のための個々の測定基準を提供する一方で、無症状の集団と比較して関連する不安定性の予測を得ることは非常に困難である。動きの量、すなわち、椎骨間の絶対的な回転および並進は、患者の大集団における処置を比較するのに役立つことができる特性であることが頻繁に報告されている。しかし、動きの絶対量は、屈曲および伸展の画像が得られた場合の患者の労力に大きく依存する。分析された複数の臨床試験では、屈曲/伸展のX線が得られた臨床施設は、椎間の回転において他の単一の変動と同等、またはそれ以上の変動性を明らかにしている。本明細書に記載の方法は、回転度当たりの並進(TPDR)の比率を使用することで患者の努力の影響を最小限にする。
【0027】
TPDRは、椎間の並進および椎間の回転の測定値から計算される。TPDRは、椎間の並進および椎間の回転を測定するための任意の当技術分野で認識されている方法を使用して計算することができる。しかし、正確かつ再現可能な測定は、正常な質の動きと異常な質の動きとの区別を容易にする。例えばX線フィルムなどの画像から脊柱の様々な椎骨の並進および回転を信頼性をもって正確に測定するための好ましい方法は、米国特許第8,724,865号明細書(以下「‘865特許」とする)に記載されており、その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。‘865特許に記載された方法では、コンピュータによる実施形式において、複数の椎骨のX線撮影用フィルムが重ね合わされて位置合わせされる。画像の位置合わせは、第1の画像に設定され、かつ第2の画像に電子的に転写される一対の目印を使用して、着目された椎骨上で実行される。画像は、これらの目印に基づいて位置合わせされる。画像が位置合わせされると、1つの椎骨は静止状態に保持される。次に、画像を前後に切り替えて2つの位置の間の第2の椎骨および脊柱の動きを見ることができ、その位置は一般に完全に屈曲し、かつ完全に伸展している。
【0028】
本明細書に記載の方法では、第1および第2の位置は、着目される任意の2つの異なる位置であってもよい。この方法を、異なる屈曲レベルの2つの画像または異なる伸展レベルの画像に対して行ってもよい。同様に、2つの位置は、完全に屈曲し、かつ完全に伸展したものより低くてもよい。例えば、画像は、30度の屈曲と30度の伸展の比較とすることができる。TPDRおよび他の測定の精度を改善するために、同じ椎骨対に対して2つ以上の画像の比較から追加のデータが得られることが自明である。
【0029】
本明細書に記載の一実施形態では、‘865特許に記載の画像化方法を使用して脊柱の不安定性を特徴付ける方法が開示されており、ここで、目印の位置が第1のフィルム上にマーキングされ、1つの椎骨がコンピュータディスプレイ上の一定の位置にとどまるまで2つの画像が交互に表示されるので、画像が1つの画像の位置の調整に基づいて重ね合わされ、第2の椎骨が2つの画像に重ね合わされるまで画像が交互に表示されるので、1つの画像の位置を調整するこの処理を繰り返し、第1の椎骨を2つの画像に最初に重ね合わせた後に第2の椎骨を2つの画像に重ね合わせるのに必要な回転および並進を記述する変換行列を計算し、そして、変換行列を使用して、第2のフィルム上の目印の位置を計算する。このようにフィルムにマーキングすることにより、測定の精度を最大限にすることができる。さらに、一方のフィルムから他方のフィルムへ、脊柱の相対倍率および回転位置に基づいて2つのフィルムを位置合わせする困難さは、‘865特許に記載の方法で対処されて最小限にされる。
【0030】
少なくとも1つの目印の選択は、各患者および無症状の集団における並進および回転の一貫性および再現可能な測定を可能にする限りにおいてのみ重要である。開示された方法での使用に好ましい目印は、椎骨の後上隅、椎骨の重心、または椎骨上で発見される特定の解剖学的特徴から選択される。患者における並進を測定するために使用される目印は、無症状の集団における正常な並進を測定するために使用される目印と同一でなければならない。したがって、並進を測定するための好ましい目印は、椎骨の後上隅である。この位置目印の使用は、椎骨の大きさの影響を最小限にする値を提供するという追加の利点を有する。しかしながら、任意の選択された目印は、椎骨の大きさに対して補正されてもよいので、椎骨の後上隅が好ましい実施形態である一方で、別の目印の選択が容易に考慮される。
【0031】
‘865特許の方法が回転および並進を測定する好ましい方法である一方で、本明細書に記載の方法は、‘865特許に記載されているものよりも少ない目印を使用してもよい。‘865法からの変形は、本明細書に記載の測定方法において意図されており、この方法は、本請求項において定義されるようにのみ限定されるべきである。
【0032】
位置合わせされた画像によって画定される2つの位置から、椎間の並進、椎間の回転および回転中心を測定することができる。回転中心「COR」は先行技術において十分に報告されており、測定方法は当業者によって容易に理解される。X線画像は同じ倍率または回転でほとんど撮影されないので、回転中心値は画像の任意の大きさの差を考慮して正規化される。任意の当技術分野で認識されている方法を使用して、回転中心を正規化することができる。一実施形態によれば、回転中心は、並進値の正規化に関して以下に説明する方法を使用して正規化することができる。回転中心は、例えば過度に後方である、過度に前方である、過度に頭方である、過度に尾方である、またはこれらの組み合わせなど、多くの意味で異常である可能性がある。安定性の測定基準と組み合わされたCORは、椎間の動きの不安定性または他の異常の性質に関して、より完全な画像を医師に提供することができる。
【0033】
場合によっては、椎間の動きは矛盾していることがある。矛盾した動きは、測定されるレベルが一方向に動くが、脊柱が他方の方向に動く場合に対するものである。例えば、測定されるレベルは、脊柱がより伸展位に移動する間に、より屈曲位に移動することができる。動きの絶対値または後述の補正方法のいずれかを使用して矛盾した動きを補正することができる。
【0034】
中立位置の脊柱のX線に基づいて補正を行うことができる。したがって、適用される補正は、中立から屈曲への動きのみが矛盾しているか、中立から伸展への動きのみが矛盾しているか、または両方の動き成分が矛盾しているかどうかに依存する。さらに、各動き成分の符号(正または負)を使用して補正を判定する。表には、アルゴリズムを示す。
【0035】
【表1】
【0036】
椎間の並進が測定されると、回転中心に関して上述したように、異なる画像における椎骨の表現間の大きさの相対的差異に対して正規化が行われなければならない。X線画像は、同じ倍率または回転でほとんど撮影されない。したがって、並進値は、2つのX線写真の寸法の差によって影響を受ける。したがって、並進値は、第1のX線で示される椎骨の特徴と、第2のX線で示される同じ椎骨の同じ特徴との間の大きさの差を考慮することによって正規化される。方法は、一般にコンピュータ実施の発明として実施されるので、特定の椎骨寸法が第1のX線で測定され、さらに第2のX線で測定される。画素サイズの差は、並進値を正規化するために使用される。椎骨寸法の大きさを標準化するための任意の方法を、本明細書に記載の方法で使用することができる。
【0037】
椎骨寸法は、2つの画像において確実に測定することができる任意の解剖学的目印であってもよい。例えば、椎骨寸法は、終板の幅、椎体の前縁または後縁の高さ、または椎体を横切る対角線のうちの1つ以上から選択することができる。一実施形態によれば、終板の幅によるTPDRの正規化は、例えば、TPDRに対する椎骨の大きさの影響を取り除き、異なる個体間でのデータの比較を容易にする。
【0038】
回転および正規化された並進の測定により、TPDRは、正規化された椎間の並進の椎間の回転による除算によって計算することができる。TPDRとともに、各位置の回転中心を測定して記録することができる。測定されかつ提示される他の測定基準には、測定された並進、測定された回転、回転中心の特定の座標、例えば終板の上または下の距離、または椎骨終板の中央より後部または前部までの距離などが含まれる。
【0039】
測定された測定基準の各々を、測定値または計算値に無症状の集団から得られた情報に基づく標準化値を乗算することによって標準化することができる。例えば、測定されるレベル(例えば、L4−L5)の平均正常TPDRを測定されたTPDRから減算することによって、および、平均正常TPDRを分析されるレベルの無症状の集団のTPDRの標準偏差によって除算することによって、TPDRを安定性の測定基準またはZスコアに標準化することができる。レベル固有の標準的なTPDRデータを使用してTPDRを標準化することは、レベルの依存性を取り除き、脊柱の安定性を正常からの標準偏差の数として単に表すことができる。標準化TPDRを計算する際に使用される平均および標準偏差は、若年女性などの特定の集団に対して、正常な動きを異常な動きと区別する能力をさらに改善することができる。
【0040】
本明細書に記載の方法の別の実施形態によれば、目印は、TPDR計算の感度および選択性を改善するように選択されてもよい。より具体的には、予想される状態の最良の指標となる特定の目印および並進方向を選択することができる。例えば、外側線維輪の引き抜き損傷は、変位を屈曲と伸展との間の椎間板の高さの変化として測定し、かつ、回転によってこの変位を除算することによって最も検出される。棘突起の特定の解剖学的目印の上に目印を配置することができ、棘突起間の変位を、棘突起間靭帯の損傷を検出するのに役立つ回転度当たりの変位として表すことができる。
【0041】
本開示は、デジタル画像を生成するためのX線の取得および解析を頻繁に参照するが、当業者は、画像を磁気共鳴画像法、コンピュータ断層撮影または他の方法で取得し、かつ、記載の方法を使用して分析することができることを理解するであろう。
【0042】
本明細書に記載の方法は、症状のある患者の臨床診断、装置の臨床試験、脊柱障害を処置する技術、および脊柱用器具を有する個人の継続的介護において使用することができる。
【0043】
脊柱における1つ以上の運動分節の基本的安定性を確立して、患者が運動分節の初期安定性に関する特定の包含基準および排除基準を満たすかどうかを判定するために、本開示の方法を臨床研究で使用することができる。さらに、介入治療が初期の不安定な運動分節に安定性を効果的に与えることができるかどうかを判定するために、介入治療が処置または隣接するレベルのいずれかで運動分節の安定性に悪影響を及ぼすかどうかを判定するために、および、運動分節の初期安定性が将来の臨床的成功または処置の失敗を判定するのに役立つかどうかを判断するために、これらの方法を用いることができる。臨床設定では、記載の方法を使用して、特定の背痛源を診断し、各患者の最良の処置選択肢を決定することができる。
【0044】
実施例
無症状の集団データの生成
161名の無症状のボランティアを647個のX線写真上正常なレベルで測定してTPDRを得た。Medical Metrics社製品である510K承認ソフトウェアQMA(登録商標)を使用して測定を行った。結果を表1に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表1は、並進度(TPDR)当たりの(終板の幅に対して正規化される)椎間の並進の比率を示している。最も左の列は95%の信頼区間を提供する。これらのデータは、X線写真上正常なレベルのみを含む。表1のTPDRデータは、任意の代替測定方法を使用した比較のための参照データとして使用することができない。当業者には理解されるように、並進および回転の測定方法が変更される場合、無症状の集団は、変更された方法を使用して再測定されなければならない。
【0047】
安定性の測定基準の信頼性
本明細書に記載の方法は、十分に裏付けされており、他の既知の不安定性の指標と比較され、予測的であることが証明されている。
【0048】
標準化TPDRの結果および安定性の測定基準を、X線写真撮影データが利用可能であった異なる患者集団について計算した。標準化TPDR結果と他の不安定性の指標との間には、以下の相関が見出された。
【0049】
標準化TPDRは、椎間関節の液体兆候の存在下で上昇した。椎間関節の液体兆候は、不安定性のために現在利用可能な最良の指標の1つであると考えられている。さらに、標準化TPDRは、かなりの割合の腰部固定術の患者において手術前に異常に高いことが判明した。不安定性は脊椎固定術の主要な指標と考えられるため、これら一部の患者では不安定性が予想される。処置前に測定された標準化TPDRもまた、処置後の患者の転帰を予測することが見出されており、これらの類の所見は、患者にとって最良の処置を決定するのに役立つことができる。
【0050】
本明細書に記載の標準化TPDRを、2値(安定対不安定)変数として分析および報告することができ、または連続変数として分析することができる。これにより、より広範な統計的検査をデータ分析のために使用することができる。さらに、標準化TPDRの経時変化または基準値からの変化は、不安定性に近づくかまたはこれから離れる傾向を検出するために使用することができる。これは、減圧手術後に脊柱が不安定になっているか、または固定手術後に固定部に隣接するレベルが不安定になっているかどうかを判定するために使用することができる。
【0051】
本発明の他の実施形態は、代替の変形を含んでもよい。上記の開示が完全に理解されると、これらおよび他の変形および変更は当業者には明らかとなるであろう。以下の特許請求の範囲は、そのような変形および変更の全てを包含するものと解釈されることが意図される。
図1