特許第6625142号(P6625142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6625142DPP−IV阻害剤の製造のための新規中間体、その製造方法、及びそれを用いたDPP−IV阻害剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625142
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】DPP−IV阻害剤の製造のための新規中間体、その製造方法、及びそれを用いたDPP−IV阻害剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 241/08 20060101AFI20191216BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20191216BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALN20191216BHJP
   A61K 31/495 20060101ALN20191216BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20191216BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20191216BHJP
   C07C 271/22 20060101ALN20191216BHJP
   C07C 269/06 20060101ALN20191216BHJP
【FI】
   C07D241/08
   C07D487/04 144
   C07D487/04 145
   !A61K31/4985
   !A61K31/495
   !A61P43/00 111
   !A61P3/10
   !C07C271/22
   !C07C269/06
【請求項の数】4
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-566030(P2017-566030)
(86)(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公表番号】特表2018-519290(P2018-519290A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】KR2016001716
(87)【国際公開番号】WO2016204376
(87)【国際公開日】20161222
【審査請求日】2017年12月26日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0085346
(32)【優先日】2015年6月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517438044
【氏名又は名称】キュン ドン ファーム. カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202577
【弁理士】
【氏名又は名称】林 浩
(72)【発明者】
【氏名】イ ビョン スク
(72)【発明者】
【氏名】シン サン ホン
(72)【発明者】
【氏名】アン ユ キル
(72)【発明者】
【氏名】チュン ウン ジョン
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/087650(WO,A1)
【文献】 特表2011−500508(JP,A)
【文献】 特表2011−508735(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0232807(US,A1)
【文献】 特表2007−503422(JP,A)
【文献】 特表2003−513075(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0018436(US,A1)
【文献】 特開2008−007443(JP,A)
【文献】 インド特許出願公開2013DE00740号,インド特許出願公開,2014年12月12日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 271/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)塩基の存在下において、下記化学式2で示される化合物と下記化学式3で示される化合物とを反応させ、下記化学式1で示される化合物を製造する工程;及び
(S2)下記化学式1で示される化合物を、下記化学式4a〜4cで示される化合物又はそれらの塩の内のいずれか一つと反応させ、下記化学式5a〜5cで示される化合物のいずれか一つを製造する工程;
を含工程(S1)で製造された化学式1で示される化合物を単離せずに工程(S2)を行う、DPP−IV阻害剤の製造方法。
【化6-1】
【化6-2】
前記式中、
Rは、ペンタフルオロフェニル(pentafluorophenyl)、4−ニトロフェニル(4−nitrophenyl)、又は2−ピリジル(2−pyridyl)であり、
PGは、t−ブトキシカルボニル基である。
【請求項2】
工程(S1)の化学式2で示される化合物、工程(S2)の化学式4a〜4cで示される化合物又はそれらの塩の内のいずれか一つ、とのモル当量比は1:1〜1:3である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程(S2)の反応は、0〜80℃の温度で行われる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
(S3)アミン保護基を脱保護化し、下記化学式6a〜6cで示される化合物の内のいずれか一つを製造する工程をさらに含む、請求項1〜3いずれかに記載の製造方法。
【化7】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV(Dipeptidyl Peptidase IV、以下、「DPP−IV」という)阻害剤の製造のための新規中間体、その製造方法、及びそれを用いたDPP−IV阻害剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の治療法の一つとして、インスリンを除いたその他ホルモンで血糖を下げることができる候補群のうちで、グルカゴン様ペプチド−1(Glucagon Like Peptide−1、以下「GLP−1」という)というインクレチン(incretin)ホルモンを調節して治療する治療方法がある。特に、2型糖尿病患者において、GLP−1を破壊するDPP−IVを阻害すれば、GLP−1の濃度が高くなって血糖値が下がり(Diabetes.1998、47(11)、1663−1670)、DPP−IVの選択的な阻害がGLP−1の分解を防ぐことによって、インスリン分泌を促進する効果を高められることが報告されている(Diabetes.1998、47(5)、764−769)。
【0003】
2型糖尿病の治療のために開発された初めてのDPP−IV阻害剤であるシタグリプチン(sitagliptin)は、国際公開特許公報WO2003/004498号で初めて開示され、下記反応式1の経路によるシタグリプチン塩酸塩の製造方法が開示されている。
【0004】
【化1】
【0005】
前記反応式1には、(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸と3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾール[4,3−α]ピラジンを、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)及びヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)の存在下において、ジクロロメタン中で約14時間反応させることにより、シタグリプチンの中間体である7−[(3R)−3−[(1,1−ジメチルエトキシカルボニル)アミノ]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−1,2,4−トリアゾロ[4,3−α]ピラジンを製造した後、メタノール中に飽和された塩酸で処理して、シタグリプチン塩酸塩を製造する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、前記反応に用いられるEDCとHOBTは、非常に高価な試薬であり、抽出工程で層分離し難いデメリットがあるだけでなく、クロマトグラフィーによる精製を行うことから、産業化のための大量生産が難しいという問題がある。また、中間体の収率も33.3%と非常に低いレベルである。
【0007】
国際公開特許公報WO2004/087650号には、下記反応式2のように(3S)−3−ヒドロキシ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸より5段階の工程を経てシタグリプチンを製造する方法が開示されている。
【0008】
【化2】
【0009】
しかし、前記反応式2には、通常保管温度の条件が−20℃である1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)が、工程1と工程4の3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾール[4,3−α]ピラジン塩酸塩との反応工程に用いられ、原料保管及び管理の面で難しく、また、アミノ保護基であるベンジルオキシ基を脱保護化するためには、パラジウム/カーボンの存在下における水素反応を必要とする。このように非常に高価な金属触媒の使用や爆発の危険性のある水素反応を必要とすることから、産業化するにはコストの増加と危険性を伴うといった問題がある。
【0010】
国際公開特許公報WO2009/064476号には、下記反応式3によるシタグリプチンの製造方法が開示されている。
【0011】
【化3】
【0012】
前記反応式3には、(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸と、3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾール[4,3−α]ピラジン塩酸塩とを、N、N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、及びトリエチルアミンの存在下において、ジメチルホルムアミド中で1日以上、長時間反応させることにより、シタグリプチンの中間体である7−[(3R)−3−[(1,1−ジメチルエトキシカルボニル)アミノ]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−1,2,4−トリアゾロ[4,3−α]ピラジンを製造した後、2−プロパノール中で塩酸で処理し、シタグリプチンを製造する方法が開示されている。
【0013】
しかし、DCCとDMAPの使用によって反応が終わった後に副産物が多量生成されてしまうため、必ずろ過除去する必要があるというデメリットがある。また、沸点が約152℃と高いジメチルホルムアミドを、(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸に重量対比12.5倍の体積で過剰に用いた後濃縮して抽出工程を行うが、抽出工程で層分離し難い上、純度も低下してしまう問題がある。
【0014】
そこで、本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するために、シタグリプチンの新規中間体及びその製造方法を導入し、穏やかな条件で、簡単かつ経済的な方法によってシタグリプチンを高收率、高純度で製造し、産業化に適用することができる方法を発明した。
【0015】
また、DPP−IV阻害剤であるエボグリプチン(Evogliptin)は、大韓民国公開特許公報第2008−0094604号で初めて開示され、下記反応式4の経路による製造方法が開示されている。
【0016】
【化4】
【0017】
前記反応式4には、(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸と、(R)−(3−t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンを、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の第3級アミンの存在下において、N、N−ジメチルホルムアミド中で約12時間反応させることにより、エボグリプチンの中間体であるt−ブチル(R)−4−[(R)−2−(t−ブトキシメチル)−3−オキソピペラジン−1−イル]−4−オキソ−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−イルカルバメートを製造した後、メタノールに溶解し、2N−塩酸/ジエチルエーテルで処理して、エボグリプチン塩酸塩を製造する方法が開示されている。
【0018】
しかしながら、前記反応に用いられるEDCとHOBTは、非常に高価な試薬であり、抽出工程で層分離し難いデメリットがあるだけでなく、カラムクロマトグラフィーによる精製を行うことから、産業化のための大量生産は難しい。中間体の収率も62.0%と非常に低いレベルである。
【0019】
大韓民国公開特許公報第2010−0109493号には、下記反応式5によるエボグリプチンの製造方法が開示されている。
【0020】
【化5】
【0021】
前記反応式5には、(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸と、(R)−(3−t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンを、イソブチルクロロホルメート(IBCF)、4−メチルモルホリン(NMM)、及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の塩基の存在下において、ジクロロメタン中で0℃の温度で反応させることにより、エボグリプチンの中間体であるt−ブチル(R)−4−[(R)−2−(t−ブトキシメチル)−3−オキソピペラジン−1−イル]−4−オキソ−1−(2,4、5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−イルカルバメートを製造した後、メタノールに溶解し、2N−塩酸/ジエチルエーテルで処理して、エボグリプチン塩酸塩を製造する方法が開示されている。
【0022】
しかしながら、前記反応に用いられるIBCFは、湿気によって分解されてしまう試薬であり、非常に水分に敏感であり、低温で冷蔵保管しないといけないため原料保管及び管理が難しいだけでなく、カラムクロマトグラフィーによる精製を行うことから、産業化のための大量生産はやはり難しい。中間体の収率も55.7%と非常に低いレベルである。
【0023】
大韓民国公開特許公報第2010−0109494号には、下記反応式6によるエボグリプチンの製造方法が開示されている。
【0024】
【化6】
【0025】
前記反応式6には、(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸と、(R)−(3−t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンを、ビス(2,2’−ベンゾチアゾリル)ジスルフィド(DBTDS)、トリフェニルホスフィン(TPP)、トリエチルアミン、及びピリジンの塩基の存在下において、トルエン中で反応させることにより、エボグリプチンの中間体であるt−ブチル(R)−4−[(R)−2−(t−ブトキシメチル)−3−オキソピペラジン−1−イル]−4−オキソ−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−イルカルバメートを製造した後、メタノールに溶解し、2N−塩酸/ジエチルエーテルで処理して、エボグリプチン塩酸塩を製造する方法が開示されている。
【0026】
しかし、前記反応では、反応が終わった後に、2−ベンゾチアゾールチオール(MBT)とトリフェニルホスフィンオキシドという副産物が多量生成されるため、純度や収率が低下する要因となる。その上、カラムクロマトグラフィーによる精製を行うことから、産業化のための大量生産はやはり難しい。また、中間体の収率もカラムクロマトグラフィー精製の影響で5.6%と非常に低い。
【0027】
そこで、本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するため、エボグリプチンの新規中間体及びその製造方法を導入し、産業化に適用できる方法を提供しようとしている。
【0028】
さらに、DPP−IV阻害剤であるレタグリプチン(Retagliptin)は、大韓民国公開特許公報第2011−0002003号で初めて開示され、下記反応式7の経路による製造方法が開示されている。
【0029】
【化7】
【0030】
前記反応式7において、(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸と、3−トリフルオロメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−α]ピラジンとの反応工程は、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)塩化ホスホン酸(BOP−Cl)とトリエチルアミンの存在下において、ジクロロメタン中で反応させることにより、レタグリプチンの中間体である(R)−[3−オキソ−1−(2,4,5−トリフルオロ−ベンジル)−3−(3−トリフルオロメチル−5,6−ジヒドロ−8H−イミダゾ[1,5−α]ピラジン−7−イル)−プロピル]−カルバミン酸t−ブチルエステルを製造した後、臭素置換、メチルエステル置換反応を行い、アミン保護基を脱保護化してレタグリプチン塩酸塩を製造する。
【0031】
しかし、前記製造方法は、カラムクロマトグラフィー精製が、ほとんどの工程で行われることから、産業化のための大量生産が難しく、多くの工程を必要とするデメリットがある。また、中間体の収率も50.0%と低い。
【0032】
さらに、下記反応式8の経路により、凝集剤であるビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)塩化ホスホン酸(BOP−Cl)の存在下において、凝集生成物を得、さらに酸の存在下において、アミノ保護基を脱保護化することにより、レタグリプチンを製造する方法を請求しているが、実施例や収率などの説明は明示されていない。
【0033】
【化8】
【0034】
そこで、本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するため、レタグリプチンの新規中間体及びその製造方法を導入し、産業化に適用できる方法を提供しようとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
本発明の目的は、DPP−IV阻害剤の製造に用いられる新規中間体を提供することである。
【0036】
本発明の別の目的は、前記新規中間体の製造方法を提供することである。
【0037】
そして、本発明の別の目的は、前記新規中間体を用いてDPP−IV阻害剤を簡単に、かつ、高純度及び収率で得られる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明は、DPP−IV阻害剤の製造に用いられる新規中間体を提供する。
【0039】
詳しくは、本発明の新規中間体は、下記化学式1で示される化合物である。
【0040】
【化9】
【0041】
前記式中、
Rは、ペンタフルオロフェニル(pentafluorophenyl)、4−ニトロフェニル(4−nitrophenyl)、又は2−ピリジル(2−pyridyl)であり、
PGは、アミン保護基である。
【0042】
また、本発明は、前記化学式1で示される化合物の製造方法を提供する。
【0043】
詳しくは、本発明の新規中間体(化学式1)の製造方法は、塩基の存在下において、下記化学式2で示される化合物と、下記化学式3で示される化合物とを反応させる工程を含む。
【0044】
【化10】
【0045】
前記式中、
Rは、ペンタフルオロフェニル(pentafluorophenyl)、4−ニトロフェニル(4−nitrophenyl)、又は2−ピリジル(2−pyridyl)であり、
PGは、アミン保護基である。
【0046】
また、本発明は、化学式1で示される新規中間体を用いてDPP−IV阻害剤を製造する方法を提供する。
【0047】
詳しくは、(S1)塩基の存在下において、下記化学式2で示される化合物と、下記化学式3で示される化合物とを反応させ、下記化学式1で示される新規中間体を製造する工程;及び、(S2)下記化学式1で示される化合物を、下記化学式4a〜4cで示される化合物又はそれらの塩の内のいずれか一つと反応させ、下記化学式5a〜5cで示される化合物の内のいずれか一つを製造する工程を含む。
【0048】
【化11-1】
【化11-2】
【0049】
前記式中、
Rは、ペンタフルオロフェニル(pentafluorophenyl)、4−ニトロフェニル(4−nitrophenyl)、又は2−ピリジル(2−pyridyl)であり、
PGは、アミン保護基である。
【0050】
なお、本発明のDPP−IV阻害剤を製造する方法は、(S3)アミン保護基を脱保護化し、下記化学式6a(シタグリプチン)、化学式6b(エボグリプチン)、又は化学式6c(レタグリプチン)で示される化合物の内のいずれか一つを製造する工程をさらに含んでいてもよい。
【0051】
【化12】
【発明の効果】
【0052】
本発明の新規中間体を用いれば、簡単かつ経済的に高純度のDPP−IV阻害剤を高収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、DPP−IV阻害剤の製造に有用な新規中間体及びその製造方法を提供する。
【0054】
また、本発明は、前記新規中間体を用いてDPP−IV阻害剤を製造する方法を提供する。
【0055】
以下、それぞれについて詳細に説明する。
【0056】
新規中間体
本発明の新規中間体は、下記化学式1で示される化合物である。
【0057】
【化13】
【0058】
前記式中、
Rは、ペンタフルオロフェニル(pentafluorophenyl)、4−ニトロフェニル(4−nitrophenyl)、又は2−ピリジル(2−pyridyl)であり、
PGは、アミン保護基である。
【0059】
本発明において、PGは、アミン保護基として用いられるものであれば、どれでも適用することができる。アミン保護基の具体的な例としては、Boc[t−ブチルオキシカルボニル(t−butyloxycarbonyl)]、Cbz[ベンジルオキシカルボニル(benzyloxycarbonyl)]、Fmoc[フルオレニルメチルオキシカルボニル(fluorenylmethyloxycarbonyl]、アセチル(acetyl)、又はベンゾイル(benzoyl)がある。ただし、これに限定されない。
【0060】
本発明の一実施様態によると、化学式1で示される化合物は、下記化学式1aの(R)−ペンタフルオロフェニル3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノエートであってもよい。
【0061】
【化14】
【0062】
本発明の別の実施様態によると、化学式1で示される化合物は、下記化学式1bの(R)−4−ニトロフェニル3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノエートであってもよい。
【0063】
【化15】
【0064】
本発明の別の実施様態によると、化学式1で示される化合物は、下記化学式1cの(R)−ピリジン−2−イル 3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4、5−トリフルオロフェニル)ブタノエートであってもよい。
【0065】
【化16】
【0066】
本発明の化学式1で示される化合物は、DPP−IV阻害剤、特に、シタグリプチン、エボグリプチン、又はレタグリプチンを製造する際に中間体として用いることができる。本発明の新規中間体を用いてDPP−IV阻害剤を製造する場合、DPP−IV阻害剤を高純度かつ高収率で製造できるメリットがある。
【0067】
新規中間体(化学式1)の製造方法
本発明の新規中間体(化学式1)の製造方法は、塩基の存在下において、下記化学式2で示される化合物と、下記化学式3で示される化合物とを反応させる工程を含む。
【0068】
【化17】
【0069】
前記式中、
Rは、ペンタフルオロフェニル(pentafluorophenyl)、4−ニトロフェニル(4−nitrophenyl)、又は2−ピリジル(2−pyridyl)であり、
PGは、アミン保護基である。
【0070】
前記アミン保護基は、上述の通りである。
【0071】
本発明において、前記化学式3のカーボネート誘導体は、電子求引基(Electron Withdrawing Group)を含むフェニル基又はピリジル基を含むことが好ましい。より好ましくは、ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート(bis(pentafluorophenyl)carbonate)、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート(bis(4−nitrophenyl)carbonate)、ジ−2−ピリジルカーボネート(di−2−pyridyl carbonate)であってもよい。
【0072】
本発明において、前記化学式3のカーボネート誘導体は、前記化学式2の化合物1モル当たり1〜3モル当量で用いることが好ましい。より好ましくは、1〜1.5モル当量の割合で用いることである。
【0073】
本発明において、前記塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、トリイソプロピルアミン、及びジイソプロピルエチルアミンからなる群より選択されることが好ましい。より好ましくは、トリエチルアミンである。また、塩基の使用量は、前記化学式2の化合物1モル当量当たり1〜3モル当量で用いることが好ましい。より好ましくは、1〜1.5モル当量の割合で用いることである。
【0074】
本発明において、前記反応は、有機溶媒中で行われてもよい。前記有機溶媒は、2−プロパノール、アセトニトリル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、ジメチルホルムアミドである。また、有機溶媒の使用量は、化学式2の化合物に対して2〜20体積比で用いることが好ましい。より好ましくは、3〜10体積比で用いることである。
【0075】
本発明において、前記反応は、0〜100℃の温度で行われてもよい。好ましくは、0〜80℃、より好ましくは、20〜70℃の温度で行われてもよい。
【0076】
新規中間体を用いたDPP−IV阻害剤の製造方法
本発明は、化学式1で示される新規中間体を用いてDPP−IV阻害剤を製造する方法を提供する。
【0077】
詳しくは、(S1)塩基の存在下において、下記化学式2で示される化合物と、下記化学式3で示される化合物とを反応させ、下記化学式1で示される新規中間体を製造する工程;及び、(S2)下記化学式1で示される化合物を、下記化学式4a〜4cで示される化合物又はそれらの塩の内のいずれか一つと反応させ、下記化学式5a〜5cで示される化合物の内のいずれか一つを製造する工程を含む。
【0078】
【化18-1】
【化18-2】
【0079】
前記式中、
Rは、ペンタフルオロフェニル(pentafluorophenyl)、4−ニトロフェニル(4−nitrophenyl)、又は2−ピリジル(2−pyridyl)であり、
PGは、アミン保護基である。
【0080】
前記アミン保護基は、上述の通りである。
【0081】
本発明において、前記工程(S1)は、本発明の新規中間体の製造方法に関する説明で述べた通りである。
【0082】
本発明において、前記工程(S2)は、工程(S1)で製造された化学式1で示される化合物を単離せずに、すぐに反応に用いてもよい。
【0083】
本発明において、工程(S2)の化学式4a〜4cで示される化合物又はそれらの塩の内のいずれか一つは、工程(S1)の化学式2で示される化合物の1モル当量当たり1〜3モル当量で用いることが好ましい。より好ましくは、1〜1.5モル当量の割合で用いることである。
【0084】
本発明において、前記工程(S2)の反応は、0〜100℃の温度で行われてもよい。好ましくは、0〜80℃、より好ましくは、20〜70℃の温度で行われてもよい。
【0085】
本発明において、S3)アミン保護基を脱保護化し、化学式6a(シタグリプチン)、化学式6b(エボグリプチン)、又は化学式6c(レタグリプチン)で示される化合物の内のいずれか一つを製造する工程をさらに含んでいてもよい。
【0086】
【化19】
【0087】
本発明において、前記工程(S3)は、通常のアミン保護基の脱保護化反応条件で行われてもよい。
【0088】
本発明のDPP−IV阻害剤の製造方法は、化学式1で示される新規中間体を用いることにより、簡単な工程にもかかわらず、高純度かつ高収率でDPP−IV阻害剤を製造できるメリットがある。したがって、化学式1で示される新規中間体は、DPP−IV阻害剤、特に、シタグリプチン、エボグリプチン、レタグリプチン、又はこれらの薬剤学的に許容可能な塩を大量生産するのに用いることができる。
【0089】
以下、本発明の好ましい方法について実施例を挙げながら具体的に述べることにする。ただし、これらの実施例は、本発明を説明するための一つの例に過ぎず、本発明の権利範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0090】
実施例1:(R)−ペンタフルオロフェニル3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノエート(化学式1a)の製造
ジメチルホルムアミド100mlに(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸33.3g(0.10モル)を加え、25℃で20分間撹拌した。反応液にトリエチルアミン16.7ml(0.12モル)を加え、20分間撹拌した。反応液にビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート39.4g(0.10モル)を加え、懸濁液を25℃で2時間撹拌した。TLCで反応が終わったことを確認した後、反応液に2−プロパノール165ml及び水330mlを加え、室温で2時間以上撹拌した。生成された固体を室温で減圧ろ過して洗浄した後、乾燥して46.1g(92.3%)の(R)−ペンタフルオロフェニル3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノエートを得た。
【0091】
H NMR(CDCl3, 400MHz):δ1.41(s,9H)、2.95−2.96(m,4H)、4.25−4.29(m,1H)、4.91−4.92(m,1H)、6.92−7.09(m,2H)
2117NOに関する元素分析
理論値−C:50.5、H:3.4、N:2.8
実験値−C:50.8、H:3.5、N:2.8
m.p.:129〜131℃
【0092】
実施例2:(R)−4−ニトロフェニル3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノエート(化学式1b)の製造
ジメチルホルムアミド100mlに(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸33.3g(0.10モル)を加え、25℃で20分間撹拌した。反応液にトリエチルアミン16.7ml(0.12モル)を加え、20分間撹拌した。反応液にビス(4−ニトロフェニル)カーボネート30.4g(0.10モル)を加え、懸濁液を70℃で4時間撹拌した。TLCで反応が終わったことを確認した後、反応液に2−プロパノール100ml及び水330mlを加え、室温で2時間以上撹拌した。生成された固体を室温で減圧ろ過して洗浄した後、乾燥して41.7g(91.9%)の(R)−4−ニトロフェニル3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノエートを得た。
【0093】
H NMR(CDCl、400MHz):δ1.39(s,9H)、2.81−2.96(m,4H)、4.32(m,1H)、5.04(m,1H)、6.94−8.26(m,6H)
2121に関する元素分析
理論値−C:55.8、H:4.7、N:6.2
実験値−C:55.8、H:4.8、N:6.1
m.p.:138〜140℃
【0094】
実施例3:(R)−ピリジン−2−イル3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノエート(化学式1c)の製造
ジメチルホルムアミド100mlに(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸33.3g(0.10モル)を加え、25℃で20分間撹拌した。反応液にトリエチルアミン16.7ml(0.12モル)を加え、20分間撹拌した。反応液にジ−2−ピリジルカーボネート21.6g(0.10モル)を加え、懸濁液を70℃で2時間撹拌した。TLCで反応が終わったことを確認した後、反応液に2−プロパノール33ml及び水330mlを加え、室温で2時間以上撹拌した。生成された固体を室温で減圧ろ過して洗浄した後、乾燥して37.5g(91.4%)の(R)−ピリジン−2−イル3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノエートを得た。
【0095】
H NMR(CDCl、400MHz):δ1.38(s,9H)、2.81−2.92(m,4H)、4.27−4.28(m,1H)、5.14−5.16(m,1H)、6.90−8.41(m,6H)
2021に関する元素分析
理論値−C:58.5、H:5.2、N:6.8
実験値−C:58.5、H:5.3、N:6.9
m.p.:134〜137℃
【0096】
実施例4:(R)−t−ブチル4−オキソ−4−(3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル)−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−イルカルバメート(化学式5a)の製造
ジメチルホルムアミド100mlに(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸33.3g(0.10モル)を加え、25℃で20分間撹拌した。反応液にトリエチルアミン16.7ml(0.12モル)を加え、20分間撹拌した。反応液にビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート43.3g(0.11モル)を加え、懸濁液を25℃で3時間撹拌した。
【0097】
TLCで反応が終わったことを確認した後、3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾール[4,3−α]ピラジン塩酸塩25.1g(0.11モル)を加え、70℃で2時間撹拌した。TLCで反応が終わったことを確認した後、反応液に2−プロパノール165ml及び水330mlを加え、室温で2時間以上撹拌した。生成された固体を室温で減圧濾過した後、165mlの2−プロパノールを加えて2時間以上還流撹拌した。徐々に10℃以下に冷却してから減圧ろ過して洗浄した後、乾燥して46.1g(91.3%)の(R)−t−ブチル4−オキソ−4−(3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル)−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−イルカルバメートを得た。
【0098】
HPLCでの含量:99.3%
H NMR(400MHz,CDCl):δ1.35(s,9H)、3.00(m,2H)、3.30(m,2H)、3.93(m,1H)、4.04−4.24(m,2H)、4.23(s,1H)、4.35(m,1H)、4.97−5.48(m,2H)、7.22(m,1H)、7.44(m,1H)、8.04(m,1H)
【0099】
実施例5:(R)−t−ブチル4−オキソ−4−(3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル)−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−イルカルバメート(化学式5a)の製造
ジメチルホルムアミド100mlに(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸33.3g(0.10モル)を加え、25℃で20分間撹拌した。反応液にトリエチルアミン16.7ml(0.12モル)を加え、20分間撹拌した。反応液にビス(4−ニトロフェニル)カーボネート30.4g(0.10モル)を加え、懸濁液を70℃で4時間撹拌した。
【0100】
TLCで反応が終わったことを確認した後、3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾール[4,3−α]ピラジン塩酸塩25.1g(0.11モル)を加え、70℃で8時間撹拌した。TLCで反応が終わったことを確認した後、反応液に2−プロパノール100ml及び水330mlを加え、室温で2時間以上撹拌した。生成された固体を室温で減圧ろ過した後、100mlの2−プロパノールを加えて2時間以上還流撹拌した。徐々に10℃以下に冷却してから減圧ろ過して洗浄した後、乾燥して46.5g(92.0%)の(R)−t−ブチル4−オキソ−4−(3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル)−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−イルカルバメートを得た。
【0101】
HPLCでの含量:99.3%
ここで、spectrum dataは、実施例4と同じである。
【0102】
実施例6:(R)−t−ブチル4−オキソ−4−(3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル)−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−イルカルバメート(化学式5a)の製造
ジメチルホルムアミド100mlに(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸33.3g(0.10モル)を加え、25℃で20分間撹拌した。反応液にトリエチルアミン16.7ml(0.12モル)を加え、20分間撹拌した。反応液にジ−2−ピリジルカーボネート21.6g(0.10モル)を加え、懸濁液を70℃で2時間撹拌した。
【0103】
TLCで反応が終わったことを確認した後、3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾール[4,3−α]ピラジン塩酸塩25.1g(0.11モル)を加え、70℃で2時間撹拌した。TLCで反応が終わったことを確認した後、反応液に2−プロパノール33ml及び水330mlを加え、室温で2時間以上撹拌した。生成された固体を室温で減圧ろ過した後、100mlの2−プロパノールを加えて2時間以上還流撹拌した。徐々に10℃以下に冷却してから減圧ろ過して洗浄した後、乾燥して45.9g(90.9%)の(R)−t−ブチル4−オキソ−4−(3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル)−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−イルカルバメートを得た。
【0104】
HPLCでの含量:99.2%
ここで、spectrum dataは、実施例4と同じである。
【0105】
実施例7:7−[(3R)−3−アミノ−1−オキソ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブチル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−3−(トリフルオロメチル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−α]ピラジン(化学式6a:シタグリプチン)の製造
実施例4で製造した50.5g(0.10モル)の(R)−t−ブチル4−オキソ−4−(3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾール[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル)−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−イルカルバメートを150mlの2−プロパノールに加え、61mlの濃塩酸(35.0%)を徐々に加え、40℃を保持しながら、2時間以上撹拌した。TLCで反応が終わったことを確認した後、室温に冷却し、4N NaOHを徐々に加え、pH6〜7に調節した。反応液を減圧濃縮して、150mlのジクロロメタンを加え、4N NaOHを徐々に加え、pH12に調節した後、抽出した。有機層を集めて150mlの精製水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えた後、乾燥して、減圧濃縮した。濃縮された残渣を150mlの2−プロパノール中で結晶化して、7−[(3R)−3−アミノ−1−オキソ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブチル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−3−(トリフルオロメチル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−α]ピラジン(シタグリプチン)34.4g(84.6%)を得た。
【0106】
HPLCでの含量:99.8%
H NMR(CHOD、400MHz):1.37(s,9H)、2.61〜3.00(m,4H)、3.92〜4.30(m,5H)、4.93(s,1H)、4.95〜5.12(m,1H)、5.22〜5.35(br,1H)、6.83〜6.95(m,1H)、7.02〜7.12(m,1H)
【0107】
本発明の好ましい実施例は、例示の目的で開示されたものである。当業者であれば、添付された特許請求の範囲に開示された本発明の範囲及び思想を超えない範囲で、様々な変更、追加、及び代替が可能であることが理解できるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の新規中間体を用いれば、高純度のDPP−IV阻害剤を簡単かつ経済的に高収率で製造することができる。