(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転数が回転数第2閾値以上である場合は、前記弁機構は、前記油出入口と前記油溜め空間とを連通し、前記給油ポンプから吐出される油の一部が前記油溜め空間に排出される、請求項6又は7に記載の圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る圧縮機を示す縦断面模式図である。以下、
図1を参照しながら圧縮機100の構成について説明する。
図1の圧縮機100は、いわゆる縦型のスクロール圧縮機であって、例えば冷媒等の作動ガスを圧縮し吐出するものである。圧縮機100は、密閉容器1と、圧縮機構部10と、電動機8と、駆動軸7と、油溜め空間2cと、給油ポンプ20と、差圧給油機構30aとを備える。
【0011】
密閉容器1は、例えば円筒形状に形成されており、耐圧性を有している。密閉容器1の側面には作動ガスを密閉容器1内に取り込むための吸入配管2aが接続されており、他の側面には圧縮した作動ガスを密閉容器1から外へと放出する吐出配管2bが接続されている。配管内の矢印は作動ガスの流れる方向を示す。吸入配管2aの内部には、逆止弁2xとバネ2yが配置されている。逆止弁2xは、バネ2yにより吸入配管2aを閉じる方向に付勢されており作動ガスの逆流を防ぐ。密閉容器1は、密閉容器1内に高圧ガス雰囲気1aを有する。そして、密閉容器1は、圧縮機構部10で圧縮されたガスで満たされた密閉容器1の底部に設けられた、冷凍機油(以下、油)を貯留するための油溜め空間2cを有する。油溜め空間2cは、高圧ガス雰囲気1a中に有り、駆動軸7の端部を支持するサブフレーム3cよりも下、副軸受5cよりも下、駆動軸7の端部よりも下などにある空間である。そして、密閉容器1内に圧縮機構部10、電動機8、駆動軸7及び給油ポンプ20が収容されている。
【0012】
密閉容器1内において、電動機8の上部にはガイドフレーム3aが密閉容器1に固定されており、電動機8の下部には駆動軸7を保持するサブフレーム3cが密閉容器1に固定されている。ガイドフレーム3aの内周側にはコンプライアントフレーム3bが収納されている。ガイドフレーム3aの内周面の固定スクロール12側には、上部嵌合円筒面4aが形成されている。この上部嵌合円筒面4aは、コンプライアントフレーム3bの外周面に形成された上部嵌合円筒面4bと係合されている。一方、ガイドフレーム3aの内周面の電動機8側には、下部嵌合円筒面4dが形成されており、この下部嵌合円筒面4dは、コンプライアントフレーム3bの外周面に形成された下部嵌合円筒面4cと係合されている。
【0013】
コンプライアントフレーム3bの外周面の2ヶ所に上部円環状シール部材9a及び下部円環状シール部材9bが配置されている。そして、ガイドフレーム3aの内面とコンプライアントフレーム3bの外面との間が、上部円環状シール部材9a及び下部円環状シール部材9bで仕切られている。上部円環状シール部材9aと下部円環状シール部材9bとの間には、コンプライアントフレーム下部空間6bが設けられている。なお、上部円環状シール部材9a及び下部円環状シール部材9bは、
図1においてコンプライアントフレーム3bの外周面の2ヶ所に配置されているが、シール部材の位置は
図1の例に限られず、例えば、ガイドフレーム3aの内周面の2ヶ所に配置されても良い。
【0014】
コンプライアントフレーム3bには、スラスト軸受5dとコンプライアントフレーム下部空間6bとを連通するガス導入流路6cが形成されている。ガス導入流路6cは、台板11xの抽気孔11cと連通するように設けられている。さらに、ガイドフレーム3aと密閉容器1の内壁とで流路14が形成される。流路14は、吐出口12aから流出した高圧の作動ガスが通る流路である。
【0015】
ボス部17aの外部とコンプライアントフレーム3bとの間には、吐出圧より低く、かつ吸入圧よりも高い圧力の中間圧の空間である中間圧空間17bが設けられている。また、コンプライアントフレーム3bには、中間圧空間17bの圧力を調整する中間圧調整弁18b、中間圧調整弁おさえ18d、中間圧調整バネ18cを収納するための中間圧調整弁空間18eが設けられている。なお、中間圧調整バネ18cは自然長より縮められて収納されている。さらに、コンプライアントフレーム3bには、中間圧空間17bと中間圧調整弁空間18eとを連通する貫通流路18aが設けられている。また、中間圧調整弁空間18eとコンプライアントフレーム上部空間6aとは連通している。さらに、コンプライアントフレーム上部空間6aは、オルダムリング15の内側に連通するように形成されている。したがって、中間圧空間17bとオルダムリング15の往復摺動面15eとは、貫通流路18a、中間圧調整弁空間18e、コンプライアントフレーム上部空間6aを介して連通している。
【0016】
圧縮機構部10は、吸入配管2aから密閉容器1内に吸入される流体(例えば冷媒)を圧縮するものであり、揺動スクロール11及び固定スクロール12を備えている。揺動スクロール11は、コンプライアントフレーム3bに公転運動可能に支持されており、揺動スクロール11の下面には筒状の揺動軸受11aが設けられている。揺動軸受11aには駆動軸7の偏心軸部7aが挿入されており、偏心軸部7aの回転により揺動スクロール11が公転運動を行う。なお、コンプライアントフレーム3bと揺動スクロール11との間には、揺動スクロール11の自転を防止しながら揺動運動を与えるために、コンプライアントフレーム3bに揺動自在に支持されたオルダムリング15が設けられている。
【0017】
固定スクロール12は、揺動スクロール11の上部に配置されたものであり、密閉容器1に固定支持されたガイドフレーム3aにボルト(図示せず)等で固定されている。固定スクロール12の中心には圧縮室で圧縮された高圧の作動ガスを吐出するための吐出口12aが形成されており、吐出口12a上にはこの作動ガスの逆流を防止する吐出バルブ12cが配置されている。
【0018】
固定スクロール12の台板12xの片側には渦巻体12bが形成されている。固定スクロール12の外周部には2個1対の固定側オルダムリング溝15bが一直線上に形成されている。固定側オルダムリング溝15bには、オルダムリング15の2個1対の固定側キー15dが往復摺動自在に設置されている。
【0019】
揺動スクロール11の台板11xの片側には渦巻体11bが形成されている。固定スクロール12及び揺動スクロール11は、渦巻体12bと渦巻体11bとが互いに向き合うように配置されている。そして、渦巻体11bと渦巻体12bとが逆位相で組み合わされており、固定スクロール12の渦巻部および揺動スクロール11の渦巻部との間に圧縮室が形成される。
【0020】
揺動スクロール11の台板11xにおいて、渦巻体11bが形成されている面と対向する面側には筒状のボス部17aが形成されている。ボス部17aの内面には、揺動軸受11aが設けられている。ボス部17aが形成されている面側の外周部には、コンプライアントフレーム3bが収納されている。また、台板11xには、渦巻体11b側とコンプライアントフレーム3b側とを連通する抽気孔11cが設けられている。
【0021】
揺動スクロール11の台板11xにおいて、ボス部17aが形成されている面には、コンプライアントフレーム3bのスラスト軸受5dと摺動可能なスラスト面16が形成されている。また、揺動スクロール11の外周部には2個1対の揺動側オルダムリング溝15aが一直線上に形成されている。この揺動側オルダムリング溝15aは、固定側オルダムリング溝15bと約90度の位相差を持ち、オルダムリング15の2個1対の揺動側キー15cが往復摺動自在に設置されている。コンプライアントフレーム3bのスラスト軸受5dの外周部には、往復摺動面15eが形成されており、オルダムリング15の揺動側キー15cが往復摺動する。ここで、固定スクロールの渦巻体12bと揺動スクロールの渦巻体11bの外側の台板外周部空間(以下、吸入側空間13)は、吸入ガス雰囲気(吸入圧)の低圧空間となっている。
【0022】
電動機8は、駆動軸7を回転駆動させるものであって、電動機回転子8a及び電動機固定子8bを有して、回転数可変で、回転力を発生する。電動機回転子8aは焼嵌め等により駆動軸7に固定されており、電動機固定子8bは焼嵌め等により密閉容器1に固定されている。電動機固定子8bには、ガラス端子(図示せず)が接続されており、ガラス端子は外部から電力を得るためのリード線(図示せず)に接続されている。そして、電動機固定子8bに電力が供給されたとき、駆動軸7及び電動機回転子8aが電動機固定子8bに対し回転する。なお、圧縮機100における回転系全体のバランシングを行うため、電動機回転子8a及び駆動軸7にはバランスウェイト19a、19bが固定されている。
【0023】
駆動軸7は、コンプライアントフレーム3bの内周面に設けられた主軸受5a及び補助主軸受5b、密閉容器1に固定支持されたサブフレーム3c内に設けられた副軸受5cにより回転可能に支持されている。主軸受5a及び補助主軸受5b並びに副軸受5cは、例えば銅鉛合金等の滑り軸受からなる軸受構造で、駆動軸7を回転可能に軸支している。なお、主軸受5a及び補助主軸受5b並びに副軸受5cが滑り軸受からなる場合について例示しているが、別の公知の軸受構造によって駆動軸7を軸支してもよい。
【0024】
駆動軸7は、電動機8により発生する回転力を圧縮機構部10に伝える。駆動軸7の内部には、駆動軸7の端部から軸方向(矢印Z方向)に延びる給油路7xと、給油路7xに通じた径方向に延びる複数の供給路7yとが形成されている。給油路7x及び供給路7yを介して主軸受5a及び補助主軸受5b並びに副軸受5c等の各摺動部位に油が供給される。駆動軸7の軸方向端部には給油路7xが開口し、この開口から給油ポンプ20により加圧した油が供給される。駆動軸7
には、偏心軸部7aが設置されており、揺動スクロール11のボス部17aに形成される揺動軸受11aに係合されている。駆動軸7の下端には、給油ポンプ20と、給油ポンプ20と油溜め空間2cとを連通する吸入パイプ24が備えられている。
【0025】
給油ポンプ20は、駆動軸7の他端側に取り付けられており、密閉容器1の油溜め空間2cに貯留された油を吸引して駆動軸7内の給油路7xに供給するものである。給油路7xに供給された油は、主軸受5a、補助主軸受5b、副軸受5c及び揺動軸受11a等の各摺動部位に供給される。給油ポンプ20は、例えば回転容積式ポンプからなっており、駆動軸7の回転により給油ポンプ20が作動する。給油ポンプ20は、駆動軸7の回転数が高くなるにつれて高い圧力で給油路7xに供給する油量が多くなるような特性を有している。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態1に係る圧縮機の給油ポンプの一例を示す縦断面模式図である。
図3は、本発明の実施の形態1に係る圧縮機の給油ポンプの一例を示す横断面模式図である。
図1〜
図3を参照して給油ポンプ20について説明する。給油ポンプ20は、いわゆるトロコイド型のポンプであり、保持具21、アウターロータ22、インナーロータ23、吸入パイプ24を有する。
【0027】
保持具21は、サブフレーム3cに収納され、上端面で駆動軸7を軸方向に支承している。アウターロータ22は、外周面が断面円形状に形成されており、保持具21内に回転可能に収容されている。なお、アウターロータ22は、駆動軸7に対し偏心した状態で保持具21内に収容されている。また、アウターロータ22の内周面にはトロコイド曲線で形成された複数の歯が形成されている。
【0028】
インナーロータ23は、アウターロータ22内に収容されており、駆動軸7に固定されている。インナーロータ23の外周面には、トコロイド曲線で形成された複数の歯が形成されており、インナーロータ23の歯数はアウターロータ22の歯数より例えば1つ少ない数になっている。インナーロータ23と、アウターロータ22とによって区切られる隙間の体積は、これらの回転にあわせて拡大・縮小する。インナーロータ23と、アウターロータ22などの回転型のポンプ機構は、隙間が拡大する回転角度位置で油を吸込み、縮小する角度位置で油を吐き出す。
【0029】
給油ポンプ20の吸入側の位置には、吸入パイプ24に連通する油流入路21aが形成され、給油ポンプ20の吐出側の位置には、油出入口21xに連通する油流出路21bが形成されている(
図3に点線で囲む部分)。油流入路21a及び油流出路21bは断面形状がそら豆状に形成され左右に配置されており、それぞれがアウターロータ22とインナーロータ23で形成される空間と連通するように構成されている。油流入路21aは、吸入パイプ24の管路とアウターロータ22とインナーロータ23との間に形成される空間とを接続する流路である。油流出路21bは、アウターロータ22とインナーロータ23との間に形成される空間と、駆動軸7の給油路7xとを接続する流路である。つまり、油流出路21bは、給油ポンプ20内にあって、ポンプ機構の吐出口から加圧した油が給油路7xに流入するまでの流路である。保持具21の底部には、保持具21の外部から油流出路21bに油を流入させ、あるいは、油流出路21bに流れる油の一部を保持具21の外部へ流出させる、貫通孔からなる油出入口21xが設けられている。なお、
図2において油出入口21xは、保持具21の底部に1つ設けられているが、複数設けられていても良い。
【0030】
吸入パイプ24は、油溜め空間2cに貯留された油を保持具21の内部に流入させるものであり、例えば軸方向に油溜め空間2cの下部まで延びた形状を有する。これにより、油が油溜め空間2cの下部まで減少するような運転条件であっても、油をすぐに吸入パイプ24に導くことができ、油の供給不足を防ぐことができる。
【0031】
油出入口21xの下部には差圧給油機構30aが設けられている。差圧給油機構30aは、給油ポンプ20とは別に、油溜め空間2cと給油路7xとの圧力差を利用して給油路7xに油溜め空間2cの油を導く油供給経路を有するものである。差圧給油機構30aの油供給経路は給油ポンプ20の吐出側にある油出入口21xと連通し、かつ、弁機構30を有する。弁機構30は、給油ポンプ20の吐出側の圧力が、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差以上である場合に油供給経路を遮断し、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差未満である場合に油供給経路を開通するものである。
【0032】
弁機構30は、ハウジング31a、弁体34a、弾性部材36を有する。ハウジング31aは、給油ポンプ20の油出入口21xを覆うように配置されており、油出入口21xに通じる中空部33を有する。なお、
図1〜3では、ハウジング31aは、給油ポンプ20の保持具21と別体で構成されているが、ハウジング31aは、給油ポンプ20の保持具21と一体的に構成されてもよい。中空部33は、例えば軸方向(Z軸方向)に延びて形成されている。中空部33は、弁体34aが当接する段差部37を有する。ハウジング31aには、油出入口21xと対向する面に、中空部33と油溜め空間2cとを連通する連通口32aが形成されている。連通口32aは、油溜め空間2c内に位置している。ここで、油溜め空間2cにおける油面の高さは運転条件によって変動する。このため、連通口32aはできるだけ下方に設置することが好ましい。なお、駆動軸7が鉛直方向となる縦置きの配置では、油は油溜め空間2c内に収まっていることが多い。しかし、油は常に油溜め空間2c内に収まっているわけではなく、圧縮機に入れた油の量、圧縮機を用いる冷媒システムの運転条件等によって、油の上面が油溜め空間2cよりも上、つまりサブフレーム3c、または副軸受5cよりも上となることもある。
【0033】
弁体34aは、弾性部材36により、ハウジング31aの中空部33の内部を軸方向(Z軸方向)に移動可能に収容されている。弁体34aは、油出入口21xの油の圧力によって移動する。弁体34aは、ハウジング31aに設けられた油出入口21xの開閉を行うものである。弁体34aは、例えばハウジング31aの中空部33の断面積とほぼ同一の大きさを有し、ハウジング31aの内壁と弁体34aとの間から油が流通するのを規制する。弾性部材36は、ハウジング31aと弁体34aとの間に設けられており、弁体34aを油出入口21x側へ付勢する。弁体34aには、弾性部材36の付勢する方向(Z軸方向)にのびる、連通流路35aが形成されている。連通流路35aは、油出入口21xと連通口32aとの間に流路を形成し、油出入口21xと油溜め空間2cとを連通させるものである。弁体34aが、最も油出入口21x側にあるときに連通流路35aの両端部が開放し、弁体34aが、油出入口21x側から反対側に移動したときに連通流路35aの端部が塞がれる。具体的には、弁体34aが移動し、弁体34aが段差部37と当接する際、連通流路35aの端部は、段差部37によって閉塞される。そのため、弁体34aが移動し、弁体34aが段差部37と当接する際、連通流路35aと連通口32aとは連通しない位置関係となっている。なお、弁体34aの移動する量は、油出入口21xの油の圧力の大きさに応じて変化すればよく、弁体34aが受ける油の圧力が油出入口21xの油の圧力と完全に同一でなくともよい。
【0034】
次に、
図1〜
図3を参照して圧縮機100の動作について説明する。まず、吸入配管2aに流れ込んだ低圧の作動ガス(吸入圧力)により、逆止弁2xがバネ2yのバネ力に打ち勝ち、弁止まり(図示せず)まで押し下げられる。その後、作動ガスは密閉容器1内の吸入側空間13に流入する。一方、インバータ装置から電動機8へ電力が供給されることにより駆動軸7が回転する。駆動軸7の回転により偏心軸部7aが回転し、揺動スクロール11が揺動運動(公転運動)を行う。このとき、揺動スクロール11と固定スクロール12との間に形成された圧縮室(図示せず)に作動ガスが吸い込まれる。そして、作動ガスは、渦巻体11b及び渦巻体12bが形成する両渦巻体の動作に伴う圧縮室の幾何学的な容積変化によって低圧から高圧へと昇圧され、吐出口12aより吐出される。吐出口12aより吐出された作動ガスは、流路14を通り、密閉容器1の内部を高圧ガス雰囲気1aとして、密閉容器1の側面に設けられた吐出配管2bから外部へ吐出される。
【0035】
圧縮機構部10で圧縮途中の中間圧(吸入圧以上、吐出圧以下)の作動ガスは、台板11xの抽気孔11cからガス導入流路6cを介し、コンプライアントフレーム下部空間6bへと導かれる。コンプライアントフレーム下部空間6bは、上部円環状シール部材9aと下部円環状シール部材9bとで密閉された空間となっている。そのため、コンプライアントフレーム下部空間6bに導入された中間圧の作動ガスにより、コンプライアントフレーム3bは軸方向(Z軸方向)に浮上する。
【0036】
中間圧空間17bの中間圧力Pm1は、中間圧調整バネ18cの弾性力と中間圧調整弁18bとの中間圧に晒された面積によって決定される所定の圧力α、および吸入側空間13の圧力Psの和であり、Ps+αとなる。また、コンプライアントフレーム下部空間6bの中間圧力Pm2は、連通する圧縮室の位置で決定される所定の倍率βと吸入側空間13の圧力Psとの積であり、Ps×βとなる。
【0037】
中間圧力Pm1、中間圧力Pm2およびコンプライアントフレーム下端面3xに作用する高圧(高圧ガス雰囲気1aによる)の圧力により、コンプライアントフレーム3bは、ガイドフレーム3aの内周面に沿って軸方向に浮上する。
【0038】
これにより、揺動スクロール11もスラスト軸受5dを介して浮上するため、圧縮室を形成する固定スクロール12と揺動スクロール11それぞれの渦巻体の先端と台板の隙間が小さくなる。その結果、高圧の作動ガスは圧縮室から漏れにくくなり、高効率な圧縮機を得ることができる。
【0039】
一方、起動時や液圧縮時において、圧縮室内が異常に高圧になる場合、揺動スクロール11に作用する軸方向のガス負荷が過大になる。そうすると、揺動スクロール11は、スラスト軸受5dを介してコンプライアントフレーム3bを押し下げる。すなわち固定スクロール12と揺動スクロール11それぞれの渦巻体の先端と台板に比較的大きな隙間が生じ、圧縮室内の異常な圧力上昇を抑制でき、摺動部の損傷がない信頼性の高い圧縮機を得ることができる。
【0040】
次に、
図1〜
図3を参照して油の流れについて説明する。電動機回転子8aの回転に伴い、駆動軸7が回転すると、インナーロータ23が
図3の矢印で示す方向に回転する。インナーロータ23が回転すると、インナーロータ23の歯とアウターロータ22の歯がかみ合うことにより、アウターロータ22が回転する。これにより、密閉容器1の底部の油溜め空間2cの油が吸入パイプ24から保持具21内へ吸い上げられる。そして、保持具21内の油は、油流出路21bを通過して駆動軸7の給油路7xに供給される。この油が、給油路7x及び供給路7yから主軸受5a、補助主軸受5b、副軸受5c及び揺動軸受11aにそれぞれ供給される。副軸受5cに給油された油は副軸受5cを潤滑した後、密閉容器1の下部の油溜め空間2cに戻される。
【0041】
揺動スクロール11に設けられたボス部17aまで供給された油は、揺動軸受11aを通って減圧され、中間圧(吸入圧以上、吐出圧以下)となり中間圧空間17bに導かれる。中間圧空間17bに導かれた油は、貫通流路18aを通る際に、中間圧調整バネ18cのバネ力に打ち勝ち、中間圧調整弁18bを押し上げて、一旦、コンプライアントフレーム上部空間6aに排出される。その後、この油はオルダムリング15の内側に排出され、吸入側空間13に供給される。また、一部の油はスラスト面16に給油された後に、往復摺動面15eに供給され、吸入側空間13へと流入する。吸入側空間13へと流入した油は低圧の作動ガスとともに圧縮機構部10へと吸入される。
【0042】
上述のように、給油ポンプ20が容積式ポンプである場合、駆動軸7の回転数が高くなるほど、前述の圧縮機構部10の吸入側空間13および各摺動部に供給される油量は増加し、回転数が低くなると油量は減少するという特性を有する。従って、駆動軸7の回転数が低すぎる場合は、コンプライアントフレーム3bは浮上せず、圧縮室を形成する固定スクロール12と揺動スクロール11それぞれの渦巻体の先端と台板の隙間が大きくなる。そのため、圧縮機構部10のシール性が低下し、作動ガスの漏れ損失が増大する。さらには各摺動部への給油不足により焼きつきが発生するなど、信頼性の低下を招く場合がある。差圧給油機構30aは、この課題を解決するために設けた機構であり、以下に差圧給油機構30aを構成する弁機構30の機能を中心に説明をする。
【0043】
図4は、本発明の実施の形態1に係る圧縮機の回転数が高い場合の差圧給油機構の挙動を示す模式図である。
図5は、本発明の実施の形態1に係る圧縮機の回転数が低い場合の差圧給油機構の挙動を示す模式図である。なお、
図4は、圧縮機の回転数が高く、油出入口21xの圧力が油溜め空間2cの圧力よりも高い場合における運転状態を示している。
図5は、圧縮機の回転数が低く油出入口21xの圧力が油溜め空間2cの圧力よりも低い場合における運転状態を示している。
【0044】
図4において、圧縮機100の回転数が高いため、油出入口21xでの圧力が大きくなり、弁機構30の弁体34aを下に押す差圧による力Fp(油出入口21xの圧力と、油溜め空間2cの高圧ガス雰囲気1aの圧力との差圧によって生じる力)が弁体34aを上に押す弾性部材36の弾性力Fsより大きくなる。このとき、弁体34aの下端がハウジング31aの段差部37に当接し、連通流路35aは段差部37によって閉塞される。また、弁体34aによって連通口32aは閉塞される。その結果、油出入口21xは、差圧給油機構30aの油供給経路を遮断されるため、油流出路21bに送られた油はそのまま給油路7xに流入する。
【0045】
一方、
図5においては、圧縮機100の回転数が低いため、油出入口21xの圧力は低くなり、弁体34aを下に押す力Fpは、弾性部材36の弾性力Fsより小さくなる。このとき、弁体34aは弾性部材36の付勢力により上に持ち上げられ、連通口32aは開放される。そして、弁体34aと段差部37との間に間隔が開き、弁体34aが、最も油出入口21x側にあるときには連通流路35aの両端部が開放し、油出入口21xと油溜め空間2cとが連通する。その結果、高圧ガス雰囲気1a中の油溜め空間2cの油は、低圧である圧縮機構部10の吸入側空間13との圧力差により、連通流路35aを介して、油出入口21x、油流出路21bに導かれる。油流出路21bに導かれた油は給油路7xより圧縮機構部10の吸入側空間13及び各摺動部へと供給される。
【0046】
図6は、本発明の実施の形態1に係る圧縮機の回転数と給油量との関係を示す図である。差圧給油機構30aのない従来の圧縮機の場合は、圧縮機の回転数と給油量との関係は、ほぼ比例関係となり、回転数が高くなるほど給油量が増加する(図中、破線で示す)。
【0047】
本発明の実施の形態1に係る圧縮機100の場合は、回転数が大きくなり、回転数第1閾値N1以上になった時に、回転数と給油量との関係は比例関係となる(図中、実線で示す)。
図4に示すように、油供給経路は遮断され、給油ポンプ20により油流出路21bに送られた油はそのまま給油路7xに流入するために、給油量は従来の圧縮機と同じとなる。これに対し、回転数が低くなり、回転数第1閾値N1未満になった時に、給油量は従来の圧縮機と比べて、図中の斜線領域だけ増加する。
図5に示すように、油溜め空間2cと圧縮機構部10の吸入側空間13との差圧によって油供給経路を開通し、給油路7xに油が流入するためである。この回転数第1閾値N1は、給油ポンプ20による油圧により、弾性部材36により付勢された弁体34aが連通口32aを閉塞させる位置まで押し下げる(移動する)油圧になるような回転数になっている。
【0048】
回転数第1閾値N1は例えば弾性部材36の弾性力により設定することができる。この回転数第1閾値N1として、たとえば圧縮機100の定格回転周波数の10〜50%の範囲内の値などとしてもよい。なお、回転数第1閾値N1を完全に1つの値に固定するものではない。異なる圧縮機100において、この回転数第1閾値N1が、少し異なっていてもよい。また、同じ圧縮機100においても、吸入する冷媒の圧力などの運転条件によって、回転数第1閾値N1が、多少の変化をしてもよい。たとえば、特定の運転条件で、回転数第1閾値N1が、ある所定の範囲内に保つように弁機構30を調整してもよい。
【0049】
以上のように本発明の実施の形態1に係る圧縮機100によれば、差圧給油機構30aにより、所定の回転数未満では、圧力差によって、油溜め空間から給油ポンプを介さず油が供給され、給油量を増加させることができる。その結果、給油ポンプからの給油量が不足する低速回転時でも、十分な給油が実現できることで圧縮機構部10の隙間のシール性を確保することができ、漏れ損失を抑制することができる。また、各摺動部への給油不足による焼きつきを防止することができる。
【0050】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る圧縮機を示す縦断面模式図である。次に、本発明の実施の形態2に係る圧縮機200について説明する。本発明の実施の形態2に係る圧縮機200は、本発明の実施の形態1に係る圧縮機100の差圧給油機構30aの構造のみが異なるものである。
【0051】
図8は、本発明の実施の形態2に係る圧縮機の回転数が回転数第1閾値N1未満の場合の差圧給油機構の挙動を示す模式図である。
図9は、本発明の実施の形態2に係る圧縮機の回転数が回転数第1閾値N1以上かつ回転数第2閾値N2未満の場合の差圧給油機構の挙動を示す断面図である。
図10は、本発明の実施の形態2に係る圧縮機の回転数が回転数第2閾値N2以上の場合の差圧給油機構の挙動を示す断面図である。まず、
図7〜
図10を参照して、本発明の実施の形態2に係る圧縮機の差圧給油機構130aの構造について説明する。なお、
図1〜
図6の圧縮機と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
油出入口21xの下部には差圧給油機構130aが設けられている。差圧給油機構130aは、給油ポンプ20とは別に、油溜め空間2cと給油路7xとの圧力差を利用して給油路7xに油溜め空間2cの油を導く油供給経路を有するものである。差圧給油機構130aの油供給経路は給油ポンプ20の吐出側にある油出入口21xと連通し、かつ、弁機構130を有する。弁機構130は、給油ポンプ20の吐出側の圧力が、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差以上である場合に油供給経路を開通し、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差以上で、かつ、所定の圧力差未満ある場合に油供給経路を遮断し、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差未満である場合に油供給経路を開通するものである。なお、差圧給油機構130aは、油流出路21b内の油を油溜め空間2c内へ返油することもできる。
【0053】
弁機構130は、ハウジング31b、弁体34b、弾性部材36を有する。ハウジング31bは、弁体34bが摺動する側壁38を有しており、側壁38には連通口32bを有している。ハウジング31bは、給油ポンプ20の油出入口21xを覆うように配置されており、油出入口21xに通じる中空部33を有する。連通口32bは、油溜め空間2c内に位置している。
【0054】
弁体34bは、弾性部材36により、ハウジング31bの中空部33の内部を軸方向(Z軸方向)に移動可能に収容されている。弁体34bは、油出入口21xの油の圧力によって移動する。弁体34bは、ハウジング31bに設けられた油出入口21xの開閉を行うものである。弁体34bは、例えばハウジング31bの中空部33の断面積とほぼ同一の大きさを有し、ハウジング31bの内壁と弁体34bとの間から油が流通するのを規制する。弾性部材36は、ハウジング31bと弁体34bとの間に設けられており、弁体34bを油出入口21x側へ付勢する。弁体34bには、弁体34bの油出入口21x側と側壁38側とをつなぐように連通流路35bが形成されている。そして、連通流路35bの側壁側とハウジング31bの連通口32bとが連通することで、油出入口21xと油溜め空間2cとが連通する。弁体34bが、ハウジング31b内を移動することにより、連通流路35bの側壁38側が連通口32bと連通する位置から外れる。この場合、連通流路35bは、ハウジング31bの側壁38によって閉塞される。弁体34bが油出入口21x側から反対側にさらに移動したときには、油出入口21xは、中空部33、連通口32bを介して油溜め空間2cと連通する。なお、弁体34bの動く量は、油出入口21xの油の圧力の大きさに応じて変化すればよく、弁体34bが受ける油の圧力が油出入口21xの油の圧力と完全に同一でなくともよい。
【0055】
次に、本発明の実施の形態2に係る圧縮機200の動作について説明する。
図8において、圧縮機200の回転数が回転数第1閾値N1未満のとき、弁体34bを下に押す差圧による力Fp(油出入口21xの圧力と、油溜め空間2cの高圧ガス雰囲気1aの圧力との差圧によって生じる力)が弁体34bを上に押す弾性部材36の弾性力Fsより小さくなる。このとき弁機構130は、ハウジング31bの連通口32bと連通流路35bの側壁38側とが連通し、油供給経路を開通する。そして、高圧ガス雰囲気1a中の油溜め空間2cの油は、低圧である圧縮機構部10の吸入側空間13との圧力差により、連通口32b及び連通流路35bを介して、油出入口21x、油流出路21bに導かれる。その後、油は、給油路7xより圧縮機構部10の吸入側空間13及び各摺動部へと供給される。
【0056】
図9において、圧縮機200の回転数が回転数第1閾値N1以上かつ回転数第2閾値N2未満のとき、弁体34bを下に押す差圧による力Fpと、弁体34bを上に押す弾性部材36の弾性力Fsとの力が釣り合う。このとき弁機構130は、弁体34bがハウジング31b内を移動することにより連通流路35bの側壁38側が連通口32bと連通する位置から外れてハウジング31bの側壁38によって閉塞され、油供給経路を遮断する。そして、圧縮機構部10の吸入側空間13及び各摺動部への給油は、給油ポンプ20のみを用いて行われる。
【0057】
図10において、圧縮機200の回転数が回転数第2閾値N2以上のとき、弁体34bを下に押す差圧による力Fpが弁体34bを上に押す弾性部材36の弾性力Fsより大きくなる。このとき弁機構130は、弁体34bがハウジング31b内をさらに移動することにより、油出入口21xが中空部33と連通口32bとを介して油溜め空間2cと連通し、油供給経路を開通する。そして、給油ポンプ20により圧縮機構部10の吸入側空間13及び各摺動部へ供給される油の一部は、油流出路21bから、油出入口21x、中空部33及び連通口32bを介して、油溜め空間2cへと排出される。
【0058】
図11は、本発明の実施の形態2に係る圧縮機の回転数と給油量との関係を示す模式図である。差圧給油機構130aのない従来の圧縮機を用いた場合を破線で示し、本発明の実施の形態2に係る圧縮機200を用いた場合を実線及び斜線領域で示す。
【0059】
圧縮機200の回転数が回転数第1閾値N1未満のときは、給油量は従来の圧縮機を用いた場合に比べて、
図11中の斜線領域だけ増加する。
図8に示すように、油溜め空間2cと圧縮機構部10の吸入側空間13との差圧によって、連通口32b及び連通流路35bとが連通し、油供給経路を開通することで、油溜め空間2cから給油路7xに油が流入するためである。
【0060】
圧縮機200の回転数が回転数第1閾値N1以上かつ回転数第2閾値N2未満のときは、圧縮機200の回転数と給油量との関係は、従来の圧縮機を用いた場合と同様に比例関係となる。
図9に示すように、弁機構130は、弁体34bがハウジング31b内を移動することにより連通流路35bの側壁38側が連通口32bと連通する位置から外れてハウジング31bの側壁38によって閉塞され、油供給経路は遮断される。そのため、圧縮機構部10の吸入側空間13及び各摺動部への給油は給油ポンプ20のみを用いて行われるためである。
【0061】
圧縮機200の回転数が回転数第2閾値N2以上のときは、給油量は従来の圧縮機を用いた場合に比べて、
図11中の網掛領域だけ減少する。
図10に示すように、弁機構130は、弁体34bがハウジング31b内をさらに移動することにより、油出入口21xが中空部33と連通口32bとを介して
油溜め空間2cと連通し、油供給経路を開通する。その結果、給油ポンプ20により供給される油の一部が、中空部33及び連通口32bを介して、油溜め空間2cへと排出されるためである。
【0062】
回転数第1閾値N1及び回転数第2閾値N2は、例えば弾性部材36の弾性力、もしくは連通口32bの軸方向の形成位置等により設定することができる。なお、回転数第1閾値N1及び回転数第2閾値N2を完全に1つの値に固定するものではない。異なる圧縮機200において、この回転数第1閾値N1及び回転数第2閾値N2が、少し異なっていてもよい。また、同じ圧縮機200においても、吸入する冷媒の圧力などの運転条件によって、回転数第1閾値N1及び回転数第2閾値N2が、多少の変化をしてもよい。たとえば、特定の運転条件で、回転数第1閾値N1及び回転数第2閾値N2が、ある所定の範囲内に保つように弁機構130を調整してもよい。
【0063】
以上のように本発明の実施の形態2に係る圧縮機200によれば、圧縮機200は所定の回転数未満では、圧力差によって、油溜め空間から給油ポンプを介さず油が供給され、給油量を増加させることができる。その結果、給油ポンプからの給油量が不足する低速回転時でも、十分な給油が実現できることで圧縮機構部10の隙間のシール性を確保することができ、漏れ損失を抑制することができる。また、各摺動部への給油不足による焼きつきを防止することができる。さらに所定の回転数以上では油の一部が油溜め空間2cに排出されるため、過剰な油流出による油枯渇を防止できる。
【0064】
従って、本発明の実施の形態2に係る圧縮機200では、本発明の実施の形態1に係る圧縮機100に対して、高速回転時での過剰な油流出による油枯渇を防止できる効果があり、本発明の実施の形態1に係る圧縮機100よりもさらに信頼性の高い圧縮機が得られる。
【0065】
実施の形態3.
図12は、本発明の実施の形態3に係る圧縮機の差圧給油機構の断面図である。
次に、本発明の実施の形態3に係る圧縮機300について説明する。本発明の実施の形態3に係る圧縮機300は、本発明の実施の形態2に係る圧縮機200のハウジング31bの形状のみが異なるものであり、弁体34bの形状が円筒形状の場合である。まず、
図12を参照して、本発明の実施の形態3に係る圧縮機300の差圧給油機構230aの構造について説明する。なお、
図1〜
図11の圧縮機と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
油出入口21xの下部には差圧給油機構230aが設けられている。差圧給油機構230aは、給油ポンプ20とは別に、油溜め空間2cと給油路7xとの圧力差を利用して給油路7xに油溜め空間2cの油を導く油供給経路を有するものである。差圧給油機構230aの油供給経路は給油ポンプ20の吐出側にある油出入口21xと連通し、かつ、弁機構230を有する。弁機構230は、給油ポンプ20の吐出側の圧力が、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差以上である場合に油供給経路を開通し、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差以上で、かつ、所定の圧力差未満ある場合に油供給経路を遮断し、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差未満である場合に油供給経路を開通するものである。なお、差圧給油機構230aは、油流出路21b内の油を油溜め空間2c内へ返油することもできる。
【0067】
弁機構230のハウジング31cの内周壁には、連通口32bと弁体34bの連通流路35bが連通する内周流路39aが設けられている。内周流路39aは、ハウジング31cの側壁38の内周壁が凹んでいる部分であり、凹み部分が周方向に連なることでハウジング31cの内周壁に周方向の溝を形成している部分である。内周流路39aの軸方向の長さと、弁体34bの軸方向の長さは、弁体34bが軸方向へ移動したときに、内周流路39aを塞ぐことのできる長さである。
【0068】
次に、本発明の実施の形態3に係る圧縮機300の動作について説明する。
図12において、圧縮機300の回転数が回転数第1閾値N1未満のとき、弁体34bは、ハウジング31cの連通口32bと連通流路35bが内周流路39aを介して連通することで、油供給経路を開通する。
【0069】
圧縮機300の回転数が、回転数第1閾値N1以上かつ回転数第2閾値N2未満のとき、弁体34bはハウジング31c内を移動し、連通流路35bが内周流路39aと連通する位置から外れてハウジング31cの側壁38によって閉塞され、油供給経路は遮断される。そのため、圧縮機構部10の吸入側空間13及び各摺動部への給油は給油ポンプ20のみを用いて行われる。
【0070】
回転数第2閾値N2以上のときは、本発明の実施の形態2に係る圧縮機200と同様の動作を行う。すなわち、弁体34bがハウジング31c内をさらに移動することにより、油出入口21xが中空部33と連通口32bとを介して油溜め空間2cと連通し、油供給経路を開通する。そして、給油ポンプ20により圧縮機構部10の吸入側空間13及び各摺動部へ供給される油の一部は、油流出路21bから、油出入口21x、中空部33及び連通口32bを介して、油溜め空間2cへと排出される。
【0071】
圧縮機300は、ハウジング31cの内周壁に内周流路39aを設けることで、以下の効果を得ることができる。本発明の実施の形態2に係る圧縮機200の場合、圧縮機200の回転数が回転数第1閾値N1未満において、振動や油の流れの影響によって弁体34bが回転し、連通口32bと連通流路35bとが連通しなくなってしまう恐れがある。本発明の実施の形態3に係る圧縮機300では、圧縮機300の回転数が回転数第1閾値N1未満において、連通口32bと連通流路35bとは常に内周流路39aで連通しているため、弁体34bが回転しても差圧による給油が行なわれる。
【0072】
以上のように本発明の実施の形態3に係る圧縮機300によれば、圧縮機300は所定の回転数未満では、圧力差によって、油溜め空間から給油ポンプを介さず油が供給され、給油量を増加させることができる。その結果、給油ポンプからの給油量が不足する低速回転時でも、十分な給油が実現できることで圧縮機構部10の隙間のシール性を確保することができ、漏れ損失を抑制することができる。また、各摺動部への給油不足による焼きつきを防止することができる。さらに所定の回転数以上では油の一部が油溜め空間2cに排出されるため、過剰な油流出による油枯渇を防止できる。
【0073】
実施の形態4.
図13は、本発明の実施の形態4に係る圧縮機の差圧給油機構の断面図である。
図14は、本発明の実施の形態4に係る圧縮機の弁体の概略図である。次に、本発明の実施の形態4に係る圧縮機400について説明する。本発明の実施の形態4に係る圧縮機400は、本発明の実施の形態2に係る圧縮機200の弁体34bの形状のみが異なるものであり、弁体34bの形状が円筒形状の場合である。まず、
図13及び
図14を参照して、本発明の実施の形態4に係る圧縮機400の差圧給油機構330aの構造について説明する。なお、
図1〜
図12の圧縮機と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0074】
油出入口21xの下部には差圧給油機構330aが設けられている。差圧給油機構330aは、給油ポンプ20とは別に、油溜め空間2cと給油路7xとの圧力差を利用して給油路7xに油溜め空間2cの油を導く油供給経路を有するものである。差圧給油機構330aの油供給経路は給油ポンプ20の吐出側にある油出入口21xと連通し、かつ、弁機構330を有する。弁機構330は、給油ポンプ20の吐出側の圧力が、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差以上である場合に油供給経路を開通し、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差以上で、かつ、所定の圧力差未満ある場合に油供給経路を遮断し、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差未満である場合に油供給経路を開通するものである。なお、差圧給油機構330aは、油流出路21b内の油を油溜め空間2c内へ返油することもできる。
【0075】
図14に示すように、弁機構330の弁体34cには、連通流路35bと連通口32bが連通する外周流路39bが設けられている。外周流路39bは、弁体34cの側壁の外周壁34c1が凹んでいる部分であり、凹み部分が周方向に連なることで弁体34cの外周壁34c1に周方向の溝を形成している部分である。外周流路39bの軸方向の長さと、連通口32bの軸方向の長さは、弁体34cが軸方向へ移動したときに、連通口32bを塞ぐことのできる長さである。
【0076】
次に、本発明の実施の形態4に係る圧縮機400の動作について説明する。
図13において、圧縮機400の回転数が回転数第1閾値N1未満のとき、弁体34cは、ハウジング31bの連通口32bと連通流路35bが外周流路39bを介して連通することで、油供給経路を開通する。
【0077】
圧縮機400の回転数が回転数第1閾値N1以上かつ回転数第2閾値N2未満のとき、弁体34bはハウジング31b内を移動し、連通流路35bが外周流路39bと連通する位置から外れてハウジング31bの側壁38によって閉塞され、油供給経路は遮断される。そのため、圧縮機400は、圧縮機400の回転数が回転数第1閾値N1以上かつ回転数第2閾値N2未満のとき、圧縮機構部10の吸入側空間13及び各摺動部への給油は給油ポンプ20のみを用いて行われる。
【0078】
回転数第2閾値N2以上のときは、本発明の実施の形態2に係る圧縮機200と同様の動作を行う。すなわち、弁体34cがハウジング31b内をさらに移動することにより、油出入口21xが中空部33と連通口32bとを介して油溜め空間2cと連通し、油供給経路を開通する。そして、給油ポンプ20により圧縮機構部10の吸入側空間13及び各摺動部へ供給される油の一部は、油流出路21bから、油出入口21x、中空部33及び連通口32bを介して、油溜め空間2cへと排出される。
【0079】
圧縮機400は、弁体34cの外周壁34c1に外周流路39bを設けることで、以下の効果を得ることができる。本発明の実施の形態2に係る圧縮機200の場合、圧縮機200の回転数が回転数第1閾値N1未満において、振動や油の流れの影響によって弁体34bが回転し、連通口32bと連通流路35bとが連通しなくなってしまう恐れがある。本発明の実施の形態4に係る圧縮機400では、圧縮機400の回転数が回転数第1閾値N1未満において、連通口32bと連通流路35bとは常に外周流路39bで連通しているため、弁体34cが回転しても差圧による給油が行なわれる。
【0080】
以上のように本発明の実施の形態4に係る圧縮機400によれば、圧縮機400は所定の回転数未満では、圧力差によって、油溜め空間から給油ポンプを介さず油が供給され、給油量を増加させることができる。その結果、給油ポンプからの給油量が不足する低速回転時でも、十分な給油が実現できることで圧縮機構部10の隙間のシール性を確保することができ、漏れ損失を抑制することができる。また、各摺動部への給油不足による焼きつきを防止することができる。さらに所定の回転数以上では油の一部が油溜め空間2cに排出されるため、過剰な油流出による油枯渇を防止できる。
【0081】
実施の形態5.
図15は、本発明の実施の形態5に係る圧縮機の回転数が回転数第1閾値N1未満の場合の差圧給油機構の挙動を示す模式図である。次に、本発明の実施の形態5に係る圧縮機500について説明する。本発明の実施の形態5に係る圧縮機500は、本発明の実施の形態2に係る圧縮機200の差圧給油機構130aの構造が異なるものである。まず、
図15を参照して、本発明の実施の形態5に係る圧縮機500の差圧給油機構430aの構造について説明する。なお、
図1〜
図14の圧縮機と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0082】
油出入口21xの下部には差圧給油機構430aが設けられている。差圧給油機構430aは、給油ポンプ20とは別に、油溜め空間2cと給油路7xとの圧力差を利用して給油路7xに油溜め空間2cの油を導く油供給経路を有するものである。差圧給油機構430aの油供給経路は給油ポンプ20の吐出側にある油出入口21xと連通し、かつ、弁機構430を有する。弁機構430は、給油ポンプ20の吐出側の圧力が、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差以上である場合に油供給経路を開通し、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差以上で、かつ、所定の圧力差未満ある場合に油供給経路を遮断し、油溜め空間2cの圧力に対して所定の圧力差未満である場合に油供給経路を開通するものである。なお、差圧給油機構430aは、油流出路21b内の油を油溜め空間2c内へ返油することもできる。
【0083】
弁機構430は、油出入口21xに通じる中空部33が形成され、中空部33と油溜め空間2cとを連通する連通口41が形成されたハウジング31dと、リード弁40(40a、40b)とを有する。ハウジング31dは、少なくとも2つの連通口41(41a、41b)を形成する。第1リード弁40aは、薄く弾力のある板の一端をハウジング31dに固定して一方向のみに開く弁であり、一方の連通口41である第1連通口41aを開閉するようにハウジング31dの内壁31d1に配置されている。一方、第2リード弁40bは、薄く弾力のある板の一端をハウジング31dに固定して一方向のみに開く弁であり、他方の連通口41である第2連通口41bを開閉するようにハウジング31dの外壁31d2に配置されている。
【0084】
次に、
図15を参照して、本発明の実施の形態5に係る圧縮機500の動作について説明する。圧縮機500の回転数が回転数第1閾値N1未満のときは、中空部33での油の流れによる圧力が小さくなる。これにともない、第1リード弁40aをハウジング31dの内側に開く差圧による力Fp1(中空部33の圧力と、油溜め空間2cの高圧ガス雰囲気1aの圧力との差圧によって生じる力)が、第1リード弁40aの弾性力Fs1より大きくなる。このとき、第1リード弁40aは、リードが所定の開口高さを有した状態になるようにリフトし、第1連通口41aを開放する。そして、中空部33と油溜め空間2cとが第1連通口41aを介して連通し、油供給経路を開通する。
【0085】
一方、第2リード弁40bをハウジング31dの外側に開く差圧による力Fp2(中空部33の圧力と、油溜め空間2cの高圧ガス雰囲気1aの圧力との差圧によって生じる力)は、第2リード弁40bの弾性力Fs2より小さくなる。そのため、第2リード弁40bが第2連通口41bを閉塞し、第2連通口41bは第2リード弁40bによって遮断される。その結果、油出入口21xは、第1リード弁40aの動作により油供給経路を開通するため、油流出路21bに送られた油はそのまま給油路7xに流入する。
【0086】
図16は、本発明の実施の形態5に係る圧縮機の回転数が回転数第1閾値N1以上かつ回転数第2閾値N2未満の場合の差圧給油機構の挙動を示す模式図である。圧縮機500は、圧縮機500の回転数が回転数第1閾値N1以上かつ回転数第2閾値N2未満のときは、第1リード弁40aを開く力Fp1と弾性力Fs1とがほぼ釣り合う。同様に、圧縮機500は、圧縮機500の回転数が回転数第1閾値N1以上かつ回転数第2閾値N2未満のときは、第2リード弁40bを開く力Fp2と弾性力Fs2とがほぼ釣り合う。そのため、第1リード弁40aが第1連通口41aを閉塞すると共に第2リード弁40bが第2連通口41bを閉塞し、連通口41(41a、41b)はリード弁40(40a、40b)によって遮断される。その結果、圧縮機500は、圧縮機500の回転数が回転数第1閾値N1以上かつ回転数第2閾値N2未満のときは、圧縮機構部10の吸入側空間13及び各摺動部への給油は、給油ポンプ20のみを用いて行われる。
【0087】
図17は、本発明の実施の形態5に係る圧縮機の回転数が回転数第2閾値N2以上の場合の差圧給油機構の挙動を示す模式図である。圧縮機500は、圧縮機500の回転数が回転数第2閾値N2以上のときは、中空部33での油の流れによる圧力が大きくなる。これにともない、第2リード弁40bをハウジング31dの外側に開く差圧による力Fp2が第2リード弁40bの弾性力Fs2より大きくなる。このとき、第2リード弁40bは、リードが所定の開口高さを有した状態になるようにリフトし、第2連通口41bを開放する。そして、中空部33と油溜め空間2cとが第2連通口41bを介して連通する。
【0088】
一方、第1リード弁40aをハウジング31dの内側に開く差圧による力Fp1(中空部33の圧力と、油溜め空間2cの高圧ガス雰囲気1aの圧力との差圧によって生じる力)は、第1リード弁40aの弾性力Fs1より小さくなる。そのため、第1連通口41aは、第1リード弁40aが第1連通口41aを閉塞し、第1リード弁40aによって遮断される。その結果、給油ポンプ20により圧縮機構部10の吸入側空間13及び各摺動部へ供給される油の一部は、油流出路21bから、油出入口21x、中空部33及び第2連通口41bを介して、油溜め空間2cへと排出される。
【0089】
このように、圧縮機500は、本発明の実施の形態2に係る圧縮機200のような、弁体34bと弾性部材36とからなる差圧給油機構130aの代わりに、リード弁40(40a、40b)を用いる。そして、圧縮機500は、リード弁40(40a、40b)を用いることで、摺動部等へ油を供給することができ、また、圧縮機500から油を排出することができ、圧縮機200とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0090】
以上のように本発明の実施の形態5に係る圧縮機500によれば、圧縮機500は所定の回転数未満では、圧力差によって、油溜め空間から給油ポンプを介さず油が供給され、給油量を増加させることができる。その結果、給油ポンプからの給油量が不足する低速回転時でも、十分な給油が実現できることで圧縮機構部10の隙間のシール性を確保することができ、漏れ損失を抑制することができる。また、各摺動部への給油不足による焼きつきを防止することができる。さらに所定の回転数以上では油の一部が油溜め空間2cに排出されるため、過剰な油流出による油枯渇を防止できる。
【0091】
なお、圧縮機500において、回転数第1閾値N1及び回転数第2閾値N2は、例えばリード弁40(40a、40b)の弾性力、リードの開口高さ、もしくは連通口41(41a、41b)の面積により設定することができる。そして、圧縮機500は、回転数第1閾値N1及び回転数第2閾値N2を完全に1つの値に固定するものではない。異なる圧縮機500において、この回転数第1閾値N1及び回転数第2閾値N2が、少し異なっていてもよい。また、同じ圧縮機500においても、吸入する冷媒の圧力などの運転条件によって、回転数第1閾値N1及び回転数第2閾値N2が、多少の変化をしてもよい。たとえば、特定の運転条件で、回転数第1閾値N1及び回転数第2閾値N2が、ある所定の範囲内に保つようにリード弁40(40a、40b)を調整してもよい。
【0092】
なお、本発明の実施の形態は、上記本発明の実施の形態1〜5に限定されず、種々の変更を加えることができる。例えば、給油ポンプ20のポンプ機構として、静穏性、耐久性に優れるトロコイド型のギヤポンプを示したが、駆動軸7の回転を利用する別のポンプ機構であっても良い。また、圧縮機100は、段差部37を有し、押し下げられた弁体34aが段差部37と当接する際に、連通流路35aを閉塞するが、段差部37を有さず、弁体34aが、ハウジング31aの底板あるいは突出部などに当接する際に連通流路35aが閉塞されても良い。また、段差部37は、ハウジング31aと一体的に構成されているが、ハウジング31aと別体で構成されても良い。