(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の判定回路の各々が、制御電源の電圧を分圧する分圧回路を備え、該分圧により前記分圧回路の分圧ノードに現れる電圧を、前記閾値として出力する閾値生成回路と、
前記閾値生成回路から出力された前記閾値を基準値として、前記検出された電流が該基準値よりも大きいか否かを判定する比較器とを有し、
前記分圧回路が、前記制御電源とグランドとの間に直列接続された複数の抵抗を有し、
前記無効化回路が、前記直列接続された複数の抵抗のうちの一つを短絡して、前記閾値の代わりに、前記選択された結線状態に対応する閾値よりも大きい値を前記分圧ノードから出力させる
ことを特徴とする請求項4に記載の電動機駆動装置。
前記複数の判定回路の各々が、制御電源の電圧を分圧する分圧回路を備え、該分圧により前記分圧回路の分圧ノードに現れる電圧を、前記閾値として出力する閾値生成回路と、
前記閾値生成回路から出力された前記閾値を基準値として、前記検出された電流が該基準値よりも大きいか否かを判定する比較器とを有し、
前記分圧回路が、前記制御電源とグランドとの間に直列接続された複数の抵抗を有し、
前記無効化回路が、前記直列接続された複数の抵抗のうちの一つを短絡して、前記閾値の代わりに、前記選択された結線状態に対応する閾値よりも小さい値を前記分圧ノードから出力させる
ことを特徴とする請求項7に記載の電動機駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
以下の実施の形態は、本発明を、空気調和機の圧縮機を駆動する電動機の駆動装置に適用したものである。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の電動機駆動装置を、電動機とともに示す概略配線図である。
図示の電動機駆動装置2は、電動機4を駆動するためのものであり、コンバータ20と、インバータ30と、インバータ駆動回路32と、結線切替手段40と、制御装置50と、過電流保護回路60とを有する。
【0017】
インバータ30とインバータ駆動回路32との組合せは、IPM(intelligent power module)12で構成されている。IPM12と、コンバータ20と、結線切替手段40と、制御装置50と、過電流保護回路60とは、インバータ基板10上に実装されている。
【0018】
コンバータ20は、交流電源6からリアクトル7を介して交流電力を受けて整流、平滑化等を行なって直流電力を出力する。コンバータ20は、次に述べるインバータ30に直流電力を供給する直流電源として作用する。
【0019】
インバータ30は、入力端子がコンバータ20の出力端子に接続され、出力端子がそれぞれ、U相、V相、W相の出力線30u、30v、30wを介して電動機4の3相の巻線4u、4v、4wに接続されている。
【0020】
インバータ30は、インバータ駆動回路32からの駆動信号Sr1〜Sr6に応じて、6つのアームのスイッチング素子がオン、オフ動作し、3相交流電流を生成し、電動機4に供給する。
【0021】
インバータ駆動回路32は、制御装置50から後述のオン・オフ制御信号、例えばPWM信号Sm1〜Sm6に基づいて、上記の駆動信号Sr1〜Sr6を生成する。
【0022】
電動機4は、複数の結線状態のいずれかで運転可能である。以下では、複数の結線状態がスター結線状態及びデルタ結線状態を含む場合について説明する。電動機4がスター結線状態及びデルタ結線状態のいずれかで運転可能である場合、結線切替手段40として、スター結線及びデルタ結線のいずれかへの切替え(選択)が可能なものが用いられる。
図2に、電動機の巻線と結線切替手段40をより詳細に示す。
【0023】
図示のように、3つの相、即ちU相、V相、W相の各々の巻線4u、4v、4wの第1の端部4ua、4va、4wa及び第2の端部4ub、4vb、4wbが外部端子4uc、4vc、4wc、4ud、4vd、4wdに接続され、電動機4の外部との接続が可能となっている。外部端子4uc、4vc、4wcには、インバータ30の出力線30u、30v、30wが接続されている。
【0024】
結線切替手段40は、図示の例では、3個の切替スイッチ41u、41v、41wで構成されている。3個の切替スイッチ41u、41v、41wはそれぞれ3つの相に対応して設けられたものである。
【0025】
切替スイッチ41u、41v、41wとしては、電磁的に駆動される機械スイッチが用いられている。そのようなスイッチは、リレー、コンタクターなどと呼ばれるものであり、図示しない励磁コイルに電流が流されているときと、電流が流されていないときとで、異なる状態を取る。
【0026】
切替スイッチ41uの共通接点41ucは、リード線44uを介して端子4udに接続され、常閉接点41ubは、中性点ノード42に接続され、常開接点41uaは、インバータ30のV相の出力線30vに接続されている。
切替スイッチ41vの共通接点41vcは、リード線44vを介して端子4vdに接続され、常閉接点41vbは、中性点ノード42に接続され、常開接点41vaは、インバータ30のW相の出力線30wに接続されている。
切替スイッチ41wの共通接点41wcは、リード線44wを介して端子4wdに接続され、常閉接点41wbは、中性点ノード42に接続され、常開接点41waは、インバータ30のU相の出力線30uに接続されている。
【0027】
通常は、切替スイッチ41u、41v、41wが図示のように、常閉接点側に切替わった状態、即ち、共通接点41uc、41vc、41wcが常閉接点41ub、41vb、41wbに接続された状態にある。この状態では、電動機4は、スター結線状態にある。
図示しない励磁コイルに電流が流されると、切替スイッチ41u、41v、41wが図示とは逆に、常開接点側に切替わった状態、即ち、共通接点41uc、41vc、41wcが常開接点41ua、41va、41waに接続された状態にある。この状態では、電動機4は、デルタ結線状態にある。
【0028】
制御装置50は、結線切替手段40を制御して、電動機の結線状態の切替えを制御するとともに、インバータ30をオン・オフ制御して電動機4に交流電力を供給させる。制御装置50は、オン・オフ制御のため、オン・オフ制御信号Sm1〜Sm6を生成して、インバータ駆動回路32に供給する。
以下では、オン・オフ制御として例えばPWM制御が行われる場合について説明する。PWM制御が行われる場合には、制御信号としてPWM信号Sm1〜Sm6がインバータ駆動回路32に供給される。この場合、インバータ30から周波数可変で電圧可変の3相交流電流を発生させることができる。オン・オフ制御の他の例としては、矩形波駆動制御がある。矩形波駆動制御の場合には、例えば各相の巻線に120度ずつ通電させるための制御信号が供給される。この場合、インバータ30から周波数可変の3相交流電流を発生させることができる。
【0029】
制御装置50は、
図3に示すように、マイコン52を備えている。
マイコン52は、結線切替制御部521と、PWM信号生成部524と、強制遮断部525とを有する。
【0030】
結線切替制御部521は、結線選択信号Swを生成する。この信号Swは、電動機4をスター結線状態にすべきかデルタ結線状態にすべきかを指定するものである。
例えば、結線選択信号Swは、スター結線を指定するときはLowとなり、デルタ結線を指定するときはHighとなる。
【0031】
結線選択信号Swは、結線切替手段40に供給されて、切替スイッチ41u、41v、41wの状態の制御に用いられる。具体的には、結線選択信号SwがLowであるときに、切替スイッチ41u、41v、41wは、
図2に示すように共通接点と常閉接点とが接続された状態にあり、結線選択信号SwがHighであるときには、切替スイッチ41u、41v、41wは、
図2とは逆に共通接点と常開接点とが接続された状態にある。
【0032】
結線切替制御部521はさらに、反転結線選択信号Ssを過電流保護回路60に供給する。反転結線選択信号Ssは、結線選択信号Swとは逆の論理値を取る。即ち、結線選択信号SwがLowであるとき(スター結線が指定されているとき)には、反転結線選択信号SsはHighとなり、結線選択信号SwがHighであるとき(デルタ結線が指定されているとき)には、反転結線選択信号SsはLowとなる。
【0033】
PWM信号生成部524は、インバータ30をPWM制御するためのPWM信号Sm1〜Sm6を出力する。
【0034】
PWM信号Sm1〜Sm6は、それぞれ、インバータ30の6つのアームのスイッチング素子のオン・オフ制御に用いられる。
PWM信号Sm1〜Sm6は、それぞれ対応するスイッチング素子をオン状態に維持したい期間にHighの状態を維持し、それぞれ対応するスイッチング素子をオフ状態に維持したい期間にLowの状態を維持する。
【0035】
上記のように、インバータ駆動回路32は、それぞれPWM信号Sm1〜Sm6に基づいて、インバータ30の6つのアームのスイッチング素子をオン・オフさせるための駆動信号Sr1〜Sr6を生成して出力する。
【0036】
駆動信号Sr1〜Sr6は、それぞれPWM信号Sm1〜Sm6に対応して生成されるものであり、対応するPWM信号がHighの期間中対応するスイッチング素子をオン状態に維持し、対応するPWM信号がLowの期間中、対応するスイッチング素子をオフ状態に維持するようにスイッチング素子を制御する。
PWM信号Sm1〜Sm6が論理回路の信号レベルの大きさ(0〜5V)のものであるのに対し、駆動信号Sr1〜Sr6は、スイッチング素子を制御するのに必要な電圧レベル、例えば15Vの大きさを持つ。
【0037】
インバータ駆動回路32は、IPM12の過電流遮断ポートCinに接続されており、過電流遮断ポートCinに信号が入力されると(該信号がHighとなると)、インバータ30のすべてのアームのスイッチング素子をオフさせる。
【0038】
強制遮断部525は、マイコン52のインバータ出力異常遮断ポートPOEに接続されており、該ポートPOEに信号が入力されると(該信号がHighとなると)、PWM信号生成部524からのPWM信号Sm1〜Sm6の出力を停止させる。インバータ駆動回路32は、PWM信号Sm1〜Sm6がすべて供給されなくなると、インバータ30のすべてのアームのスイッチング素子をオフさせる。
スイッチング素子がオフとなる結果、インバータ30は交流電力の出力を停止する(インバータ30が停止状態になる)。
【0039】
強制遮断部525は、マイコン52で実行されている制御プログラムから独立して動作するハードウェアで構成されている。
インバータ出力異常遮断ポートPOEへの信号に応じてPWM信号生成部524からPWM信号Sm1〜Sm6の出力を停止させる処理は、ハードウェアで構成された強制遮断部525で行われ、マイコン52のソフトウェアによる処理を介さないので、高速に行われる。
【0040】
以上のようにインバータ30を停止させるための処理を二重に行うのは、動作をより高速に、かつより確実に行うためである。
【0041】
過電流保護回路60は、例えば
図4及び
図5に示すように構成されている。
図4は、過電流保護回路60の概略構成を示すブロック図、
図5は、過電流保護回路60の配線図である。
図4に示されるように、過電流保護回路60は、電流値検出回路61と、第1の判定回路62と、第2の判定回路63と、無効化回路65と、合成回路66とを有する。
【0042】
電流値検出回路61は、
図5に示すように、抵抗R611と、平滑回路612とを有する。
抵抗R611は、コンバータ20の出力端子と、インバータ30の入力端子とを結ぶ母線に挿入され、第1の端部がグランドに接続されている。
平滑回路612は、抵抗R613、R614とコンデンサC615とを有する。
抵抗R613の第1の端部は抵抗R611の第2の端部に接続されている。
抵抗R614の第1の端部は制御電源Vdに接続され、抵抗R614の第2の端部は抵抗R613の第2に端部に接続されている。
コンデンサC615の第1の端子は抵抗R613の第2の端部に接続され、コンデンサC615の第2の端子は、グランドに接続されている。
電流値検出回路61では、抵抗R611の両端間の電圧を平滑化した電圧がコンデンサC615の両端子間に現れ、コンデンサC615の両端子間の電圧が、電流検出値を示す信号(電流値信号)Scとして第1の判定回路62及び第2の判定回路63に供給される。
【0043】
第1の判定回路62は、第1の閾値生成回路621と、比較器622とを有する。比較器622は例えば演算増幅器で構成されている。
第1の閾値生成回路621は、互いに直列接続された抵抗R623及びR624から成る分圧回路と、平滑用コンデンサC625とを有する。
抵抗R623の第1の端部は制御電源Vdに接続され、抵抗R624の第1の端部は抵抗
R623の第2の端部に接続され、抵抗R624の第2の端部は、グランドに接続されている。コンデンサC625は、抵抗R624に並列接続されている。
【0044】
制御電源Vdの電圧(制御電圧)Vdは、抵抗R623及びR624からなる分圧回路で分圧されて、その分圧比に応じた電圧VtΔが抵抗R623と抵抗R624の接続点、即ち分圧回路の分圧ノードに現れる。
電圧VtΔは、
VtΔ=Vd×R624/(R623+R624) (1)
で与えられる。
電圧VtΔがデルタ結線用の閾値(第1の閾値)であり、第1の基準値Vref1として比較器622の非反転入力端子(+端子)に供給される。
【0045】
比較器622の反転入力端子(−端子)には、電流値検出回路61からの電流値信号Scが供給される。
比較器622は、電流値信号Scを基準値Vref1と比較し、電流値信号Scが基準値Vref1よりも高ければ、その出力がLowとなり、そうでなければその出力がHighとなる。
【0046】
第2の判定回路63は、第2の閾値生成回路631と、比較器632とを有する。
比較器632は例えば演算増幅器で構成されている。
第2の閾値生成回路631は、互いに直列接続された抵抗R633及びR634から成る分圧回路と、平滑用コンデンサC635とを有する。
抵抗R633の第1の端部は、制御電源Vdに接続され、抵抗R634の第1の端部は抵抗R633の第2の端部に接続され、抵抗R634の第2の端部は、グランドに接続されている。コンデンサC635は、抵抗R634に並列接続されている。
【0047】
制御電圧Vdは、抵抗R633及びR634からなる分圧回路で分圧されて、その分圧比に応じた電圧VtYが抵抗R633と抵抗R634の接続点、即ち分圧回路の分圧ノードに現れる。
電圧VtYは、
VtY=Vd×R634/(R633+R634) (2)
で与えられる。
電圧VtYがスター結線用の閾値(第2の閾値)であり、スター結線時には、第2の基準値Vref2として、比較器632の非反転入力端子(+端子)に供給される。
【0048】
上記のVtΔと、VtYとの間には、以下の関係がある。
VtΔ=√3×VtY (3)
即ち、式(3)の関係が満たされるように、抵抗R623、R624、R633、R634の抵抗値が定められている。
【0049】
なお、VtΔがVtYの√3倍よりも小さい値になるように(但し、VtYよりは大きい値に)構成してもよい。これは例えば、デルタ結線では巻線に循環電流が流れるが、
循環電流はインバータ電流には反映されないためである。
【0050】
比較器632の反転入力端子(−端子)には、電流値検出回路61からの電流値信号Scが供給される。
比較器632は、電流値信号Scを基準値Vref2と比較し、電流値信号Scが基準値Vref2よりも高ければ、その出力がLowとなり、そうでなければその出力がHighとなる。
【0051】
無効化回路65は、第2の判定回路63における閾値(スター結線に対応する閾値)VtYとの比較を無効化するものであり、npn型のデジタルトランジスタQ651を有する。該デジタルトランジスタQ651は、エミッタ及びコレクタが抵抗R633の第1の端部及び第2の端部にそれぞれ接続されている。
【0052】
デジタルトランジスタQ651は、制御装置50から出力される反転結線選択信号Ssがベースに入力されており、該信号SsがHighのとき(スター結線時)にはオフ状態にあり、Lowのとき(デルタ結線時)にはオン状態となる。
【0053】
デジタルトランジスタQ651がオフのとき(スター結線時)には、上記のように、第2の閾値生成回路631では上記の閾値VtYが生成されて、第2の基準値Vref2として、比較器632に供給される。
【0054】
デジタルトランジスタQ651がオンのとき(デルタ結線時)には、抵抗R633がデジタルトランジスタQ651で短絡されるため、制御電圧Vdに近い電位、即ち、制御電圧VdよりもデジタルトランジスタQ651のオン時のエミッタ・コレクタ間の電圧降下Vonだけ低い電位Vp=(Vd−Von)が、抵抗R633と抵抗R634の接続点、即ち分圧回路の分圧ノードに現れる。この電位Vp=(Vd−Von)が、閾値VtYの代わりに、第2の基準値Vref2として、比較器632の非反転入力端子(+端子)に供給される。
比較器632は、閾値VtYの代わりに、Vp=(Vd−Von)を第2の基準値Vref2として用いて、電流値信号Scとの比較を行う。
【0055】
以上のように、デジタルトランジスタQ651がオフのときは、閾値VtYが基準値Vref2として用いられ、デジタルトランジスタQ651がオンのときは、Vp=(Vd−Von)が基準値Vref2として用いられる。
【0056】
合成回路66は、ワイヤードOR回路661と、反転回路662とを有する。
ワイヤードOR回路661は、第1の端部が制御電源Vdに接続され、第2の端部が比較器622及び632の出力端子に接続された抵抗R663で構成されている。
ワイヤードOR回路661では、比較器622及び632の出力端子の少なくとも一方がLow(出力端子とグランドとの間がLowインピーダンス)となれば、その出力(抵抗R663の第2の端部)がLow(Lowレベル)となり、比較器622及び632の出力端子の双方がHighとなれば、その出力(抵抗R663の第2の端部)がHighとなる。
【0057】
反転回路662は、エミッタが制御電源Vdに接続され、ベースがワイヤードOR回路の出力(抵抗R663の第2の端部)に接続されたデジタルトランジスタQ664と、第1の端部がデジタルトランジスタQ664のコレクタに接続され、第2の端部がグランドに接続された抵抗R665とを有する。
デジタルトランジスタQ664のコレクタ端子には、ワイヤードOR回路661の出力の論理状態を反転した信号が現れる。
この信号(過電流検出信号)Seが、反転回路662の出力であり、かつ合成回路66の出力であり、従って、過電流保護回路60の出力である。
【0058】
過電流保護回路70の出力は、IPM12の過電流遮断ポートCinに供給されるとともに、マイコン52のインバータ出力異常遮断ポートPOEに供給される。
【0059】
IPM12の過電流遮断ポートCinに信号が供給されると(該信号がHighとなると)、インバータ駆動回路32がインバータ30のすべてのアームのスイッチング素子をオフさせる。
また、マイコン52のインバータ出力異常遮断ポートPOEに信号が供給されると(該信号がHighとなると)、強制遮断部525の動作により、PWM信号生成部524からのPWM信号Sm1〜Sm6の出力が停止され、その結果、インバータ駆動回路32には、PWM信号が供給されなくなる。すると、インバータ駆動回路32は、インバータ30のすべてのアームのスイッチング素子をオフさせる。
インバータ30のそれぞれのアームのスイッチング素子がオフとなると、インバータ30は交流電力を出力しない状態(停止状態)となる。
上記のように、合成回路66の出力がHighとなると、インバータを停止させる処理が二重に行われる。
【0060】
以下、判定回路62、63、及び合成回路66の動作を
図6(a)及び(b)を参照して説明する。
【0061】
デジタルトランジスタQ651のベースに供給される反転結線選択信号Ssは、上記のように制御装置50の結線切替制御部521から供給される。
この信号Ssは、スター結線時には、
図6(a)に示すようにHighとなり、デルタ結線時には、
図6(b)に示すようにLowとなる。
そのため、デジタルトランジスタQ651は、スター結線時には、
図6(a)に示すようにオフとなり、デルタ結線時には、
図6(b)に示すようにオンとなる。
【0062】
従って、比較器632の+端子には、スター結線時にはVtYが第2の基準値Vref2として供給され(
図6(a))、デルタ結線時にはVp=(Vd−Von)が第2の基準値Vref2として供給される(
図6(b))。
【0063】
比較器622の+端子には、スター結線時にもデルタ結線時にもVtΔが第1の基準値Vref1として供給される。
【0064】
スター結線時には、上記のように、比較器632の+端子にVtYが第2の基準値Vref2として供給される(
図6(a))。また上記のように、VtY<VtΔの関係がある。
このため、インバータ30の入力電流が次第に大きくなり、これに伴い、電流値信号Scが次第に大きくなっていくと、比較器632で、電流値信号Scが基準値Vref2よりも大きくなったとの判定がなされ、その出力がLowとなる。
するとその時点で、ワイヤードOR回路661の出力がLowとなる。その結果、反転回路662の出力(従って、合成回路66の出力)SeがHighとなる。
【0065】
このように、スター結線時には、電流値信号Scが、スター結線用に定められた閾値VtYを超えた時点で、過電流検出信号SeがHighとなる。
【0066】
デルタ結線時には、上記のように、比較器632の+端子にVp=(Vd−Von)が第2の基準値Vref2として供給される(
図6(b))。
電流値信号ScはVp=(Vd−Von)を上回ることがないように構成されており、比較器632の出力は、Highに維持される。
【0067】
従って、インバータ30の入力電流が次第に大きくなり、これに伴い、電流値信号Scが次第に大きくなっていくと、比較器622で、電流値信号Scが基準値Vref1よりも大きくなったとの判定がなされ、その出力がLowとなる。
するとその時点で、ワイヤードOR回路661の出力がLowとなる。その結果、反転回路662の出力(従って、合成回路66の出力)SeがHighとなる。
【0068】
このように、デルタ結線時には、電流値信号Scが、デルタ結線用に定められた閾値VtΔを超えた時点で、過電流検出信号SeがHighとなる。
【0069】
以上のように、デルタ結線時には、第2の判定回路63におけるスター結線に対応する閾値VtYを用いた比較が無効化される。従って、スター結線時にも、デルタ結線時にもそれぞれの場合に適切な閾値(それぞれの結線状態に対応する閾値)との比較の結果に基づいて過電流検知を行うことができる。
【0070】
なお、過電流検出信号SeがHighとなると、上記のようにインバータ30が停止し、その結
果、電流値信号Scが低下するが、
図6(a)、(b)では、比較器622、632の動作を分かり易くするため、電流値信号Scが低下しないものとして図示している。後述の
図10、
図13(a)、(b)、
図15についても同様である。
【0071】
閾値との比較の無効化を行う無効化回路65は、デジタルトランジスタによって構成することができる。デジタルトランジスタは安価であるので、コストを抑制することができる。さらに、判定回路62、63は、比較的安価な演算増幅器で構成された比較器、抵抗などによって構成することができるので、コストを抑制することができる。
【0072】
判定回路62、63における閾値VtΔ、VtYの生成は、デジタルトランジスタの回路定数の影響を受けない。従って、閾値の生成及び閾値を用いた比較を正確に行うことができる。このため、過電流保護を高精度に行うことができる。
【0073】
過電流保護を高精度に行うことができる結果、減磁電流に対して過電流保護レベルを極力高く設定することが可能となるため、高出力化が可能である。
【0074】
複数の判定回路が設けられている場合、それらの出力をマイコン、IPMに入力しようとすれば、マイコン、IPM等にも、複数の入力端子が必要となる。一方、一般的なマイコン(汎用品)は、インバータ出力異常遮断ポートPOEを一つしか備えておらず、また、一般的なIPM(汎用品)は、過電流遮断ポートCinを一つしか備えていない。従って、複数の判定回路の出力をそのままマイコン、IPMに入力する構成であれば、上記のような汎用品を用いることができないという問題がある。
これに対して、本発明では複数の判定回路での判定結果を合成して出力しているため、マイコンとしてインバータ出力異常遮断ポートPOEを一つしか備えていないものを用いることができ、IPMとして過電流遮断ポートCinを一つしか備えていないものを用いることができる。
【0075】
また、過電流保護回路60、特にその判定回路62、63がハードウェアにより構成されているため、保護のための動作が高速に行われる。
【0076】
さらに、強制遮断部525は、ハードウェアで構成されており、マイコン52の制御プログラムから独立して動作するため、動作を高速に行うことができ、またマイコン52が暴走した場合にも、駆動信号の供給を確実に停止させることができる。
従って、信頼性の高いシステムを得ることができる。
【0077】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2で用いられる過電流保護回路を示す配線図である。
実施の形態2の過電流保護回路60は、
図4及び
図5に示すのと概して同じである。但し、以下の点で異なる。
まず、電流値検出回路61から出力される電流値信号Scが、比較器622及び比較器632の+端子に供給され、第1の閾値生成回路621からの基準値Vref1が、比較器622の−端子に供給され、第2の閾値生成回路631からの基準値Vref2が、比較器632の−端子に供給される。
【0078】
さらに、合成回路66が、ダイオードOR回路671で構成されている。
ダイオードOR回路671は、抵抗R672、R673と、ダイオードD674、D675と、抵抗R676とを有する。
【0079】
抵抗R672は第1の端部が制御電源Vdに接続され、第2の端部が比較器622の出力端子に接続されている。ダイオードD674は、アノードが比較器622の出力端子に接続され、カソードが抵抗R676の第1の端部に接続されている。
抵抗R673は第1の端部が制御電源Vdに接続され、第2の端部が比較器632の出力端子に接続されている。ダイオードD675は、アノードが比較器632の出力端子に接続され、カソードが抵抗R676の第1の端部に接続されている。
抵抗R676の第2の端部はグランドに接続されている。
【0080】
ダイオードOR回路671では、比較器622及び632の出力端子の少なくとも一方がHighとなれば、その出力(抵抗R676の第1の端部の電位)がHighとなり、比較器622及び632の出力端子の双方がLowとなれば、その出力(抵抗R676の第1の端部の電位)がLowとなる。
抵抗R676の第1の端部の信号が、ダイオードOR回路671の出力であり、かつ合成回路66の出力であり、従って過電流保護回路60の出力である。
【0081】
実施の形態1と同様に、デジタルトランジスタQ651のベースに供給される反転結線選択信号Ssは、制御装置50から供給される。
インバータ電流が次第に大きくなっていくときの
図7の回路の動作は、実施の形態1に関し
図6(a)及び(b)を参照して説明したのと同様である。但し、比較器622、632の出力の論理値が
図6(a)及び(b)とは逆になる。
【0082】
実施の形態3.
上記の実施の形態2では、合成回路66がダイオードOR回路671で構成されているが、代わりに、トランジスタ、例えばMOSトランジスタを組み合わせることで構成されたOR回路681を用いてもよい。その場合の構成例を
図8に示す。
【0083】
変形例.
実施の形態1〜3では、第2の判定回路63における閾値VtYを用いた比較を無効にする際に、第2の判定回路63の閾値生成回路631の分圧ノードにVp=(Vd−Von)が現れるように構成している。しかしこの点は、必須ではない。要するに、第1の判定回路62の閾値生成回路621から出力される閾値VtΔよりも高い電位Vpが第2の判定回路63の閾値生成回路の分圧ノードに現れて、基準値Vref2として比較器632に供給されるように構成すれば良い。
【0084】
例えば、
図5の第2の判定回路63の閾値生成回路631の代わりに、
図9に示される閾値生成回路631bを用い、この閾値生成回路631bに無効化回路65を
図9に示すように接続しても良い。
図9に示される閾値生成回路631bは、
図5に示される閾値生成回路631と同様であるが、抵抗R633の代わりに、抵抗R633A及びR633Bの直列接続が用いられ、従って、互いに直列接続された抵抗R633A、R633B、R634により分圧回路が構成されており、デジタルトランジスタQ651が、抵抗R633A (分圧ノードと制御電源との間に接続された抵抗)を短絡するように設けられている。
【0085】
例えば、抵抗R633A、R633Bの抵抗値R633A、R633Bが、実施の形態1の抵抗R633の抵抗R633に対して、
R633A+R633B=R633 (4)
という関係を満たすように定められている。
この場合、デジタルトランジスタQ651がオフのときの動作(スター結線時の動作)は、
図5の回路に関し、
図6(a)を参照して説明したのと同じである。
【0086】
デジタルトランジスタQ651がオンのとき(デルタ結線時)には、
図10に示すように、
Vp=(Vd−Von)×R634/(R633B+R634)
(5)
で与えられる電位Vpが閾値生成回路631bの分圧ノードに現れ、基準値Vref2として比較器632に供給される。
【0087】
VpがVtΔよりも大きいので、デルタ結線時には、比較器632でScがVpを超えたとの判定がなされる前に、比較器622でScがVtΔを超えたとの判定がなされる。従って、ScがVtΔを超えた時点で過電流検出信号SeがHighとなる。このように、過電流検出信号SeがHighとなるのは、
図5の回路に関し、
図6(b)を参照して説明したのと同じくScがVtΔを超えた時点である。
【0088】
設計に当たっては、素子の定数のバラツキを考慮して、VpがVtΔよりも十分大きくなるように素子の定数を定めるのが望ましい。即ち、式(5)で与えられるVpが、VtΔに余裕分を加算した値よりも大きくなるように、抵抗R633B、R634の抵抗値を定めるのが望ましい。
【0089】
実施の形態4.
以上のように、実施の形態1、2、3では、デルタ結線の際に第2の判定回路63における、電流値信号Scとスター結線用閾値VtYとの比較を無効化している。代わりに、スター結線の際に第1の判定回路62における、電流値信号Scと、デルタ結線用閾値VtΔとの比較を無効化することとしてもよい。この場合、例えば、スター結線の際には、第1の判定回路62では、基準値を極めて低くすることで、「電流値信号Scが基準値を上回っている」との判定結果が常時得られるようにし、第1の判定回路62の判定結果と、第2の判定回路63の判定結果とを合成回路66で、AND合成するようにしてもよい。
その場合にも、上記と同様の効果を得ることができる。
【0090】
そのような構成の例を
図11及び
図12に示す。
図11は、実施の形態4の過電流保護回路60bの概略構成を示すブロック図、
図12は、過電流保護回路60bの配線図である。
図11に示される過電流保護回路60bは、実施の形態1〜3で用いられる過電流保護回路60と概して同じであるが、無効化回路65の代わりに、無効化回路65bを備えている。
【0091】
無効化回路65bは、第2の判定回路63ではなく、第1の判定回路62での比較を無効化するように設けられており、この点で実施の形態1〜3と異なる。
また、実施の形態1〜3の無効化回路65がpnp型のデジタルトランジスタQ651で構成されているのに対し、本実施の形態の無効化回路65bは、npn型のデジタルトランジスタQ653で構成されている。
【0092】
第2の判定回路63では、制御電圧Vdは、抵抗R633及びR634からなる分圧回路で分圧されて、その分圧比に応じた電圧VtYが分圧ノードに現れる。
電圧VtYは、
VtY=Vd×R634/(R633+R634) (6)
で与えられる。
電圧VtYはスター結線用の閾値(第2の閾値)であり、第2の基準値Vref2として比較器632の反転入力端子(−端子)に供給される。
【0093】
無効化回路65bのデジタルトランジスタQ653は、コレクタ及びエミッタが抵抗R624の第1の端部及び第2の端部にそれぞれ接続されている。
【0094】
デジタルトランジスタQ653のベースには、制御装置50から、実施の形態1〜3の反転結線選択信号Ssが供給される。デジタルトランジスタQ653は、該信号SsがLowのとき(デルタ結線時)にはオフ状態にあり、Highのとき(スター結線時)にはオン状態となる。
【0095】
デジタルトランジスタQ653がオフのとき(デルタ結線時)には、制御電圧Vdは、抵抗R623及びR624からなる分圧回路で分圧されて、その分圧比に応じた電圧VtΔが分圧ノードに現れる。
電圧VtΔは、
VtΔ=Vd×R624/(R623+R624) (7)
で与えられる。
電圧VtΔは、デルタ結線用の閾値(第1の閾値)であり、デルタ結線時には第1の基準値Vref1として、比較器622の反転入力端子(−端子)に供給される。
【0096】
上記のVtΔと、VtYとの間に、上記の式(3)の関係が満たされるように、或いは
VtΔがVtYの√3倍よりも小さい値となるように(但し、VtYよりは大きい値に)、抵抗R623、R624、R633、R634の抵抗値が定められている。
【0097】
デジタルトランジスタQ653がオンのとき(スター結線時)には、抵抗R624がデジタルトランジスタQ653で短絡されるため、グランドの電位0Vに近い電位、即ち、グランドの電位0VよりもデジタルトランジスタQ653のオン時のコレクタ・エミッタ間の電圧降下Vonだけ高い電位Vq(=Von)が、分圧回路の分圧ノードに現れる。
この電位Vq(=Von)が、閾値VtΔの代わりに、第1の基準値Vref1として、比較器622の反転入力端子(−端子)に供給される。
【0098】
比較器622及び632の非反転入力端子(+端子)には、電流値検出回路61からの電流値信号Scが供給される。
比較器622は、電流値信号Scを第1の基準値Vref1と比較し、電流値信号Scが第1の基準値Vref1よりも高ければ、その出力がHighとなり、そうでなければその出力がLowとなる。
デジタルトランジスタQ653がオフのとき(デルタ結線時)には、第1の閾値VtΔが第1の基準値Vref1として用いられ、デジタルトランジスタQ653がオンのとき(スター結線時)には、Vq=Vonが第1の基準値Vref1として用いられる。
【0099】
比較器632は、電流値信号Scを第2の基準値Vref2と比較し、電流値信号Scが第2の基準値Vref2よりも高ければ、その出力がHighとなり、そうでなければその出力がLowとなる。
閾値生成回路631には、デジタルトランジスタQ653が接続されていないので、比較器632では、デルタ結線時もスター結線時も、VtYが第2の基準値Vref2として用いられる。
【0100】
合成回路66はAND回路683で構成されている。
AND回路683では、比較器622及び632の出力端子の双方がHighとなれば、その出力がHighとなり、比較器622及び632の出力端子の少なくとも一方がLowとなれば、その出力がLowとなる。
AND回路683の出力Seは、合成回路66の出力であり、従って過電流保護回路60bの出力である。
【0101】
過電流保護回路60bの出力は、IPM12の過電流遮断ポートCin及びマイコン52のインバータ出力異常遮断ポートPOEに供給される。
【0102】
以下、判定回路62、63、及び合成回路66の動作を
図13(a)及び(b)を参照して説明する。
【0103】
デジタルトランジスタQ653のベースに供給される反転結線選択信号Ssは、上記のように制御装置50の結線切替制御部521から供給される。
この信号Ssは、スター結線時には、
図13(a)に示すようにHighとなり、デルタ結線時には、
図13(b)に示すようにLowとなる。
そのため、デジタルトランジスタQ653は、スター結線時には、
図13(a)に示すようにオンとなり、デルタ結線時には、
図13(b)に示すようにオフとなる。
【0104】
従って、比較器622の−端子には、デルタ結線時にはVtΔが第1の基準値Vref1として供給され(
図13(b))、スター結線時にはVq(=Von)が第1の基準値Vref1として供給される(
図13(a))。
【0105】
比較器632の−端子には、スター結線時にもデルタ結線時にもVtYが第2の基準値Vref2として供給される。
【0106】
デルタ結線時には、上記のように、比較器622の−端子にVtΔが第1の基準値Vref1として供給される(
図13(b))。また、上記のように、VtY<VtΔの関係がある。
このため、インバータ30の入力電流が次第に大きくなり、これに伴い、電流値信号Scが次第に大きくなっていくと、比較器632で、電流値信号Scが基準値Vref2よりも大きくなったとの判定がなされ、その出力がHighとなり、そのあとで、比較器622で、電流値信号Scが基準値Vref1よりも大きくなったとの判定がなされて、その出力がHighとなる。
するとその時点で、AND回路683の出力(過電流検出信号)SeがHighとなる。
【0107】
このように、デルタ結線時には、電流値信号Scが、デルタ結線用に定められた閾値VtΔを超えた時点で、過電流検出信号SeがHighとなる。
【0108】
スター結線時には、上記のように、比較器622の−端子にVq(=Von)が第1の基準値Vref1として供給される(
図13(a))。
電流値信号ScはVq(=Von)以下となることがないように構成されており、比較器622の出力は、Highに維持される。
【0109】
インバータ30の入力電流が次第に大きくなり、これに伴い、電流値信号Scが次第に大きくなっていくと、比較器632で、電流値信号Scが基準値Vref2よりも大きくなったとの判定がなされ、その出力がHighとなる。
すると、その時点で、AND回路683の出力SeがHighとなる。
【0110】
このように、スター結線時には、電流値信号Scが、スター結線用に定められた閾値VtYを超えた時点で、過電流検出信号SeがHighとなる。
【0111】
以上のように、スター結線時には、第1の判定回路62におけるデルタ結線に対応する閾値VtΔを用いた比較が無効化され、それにより、スター結線時にも、デルタ結線時にもそれぞれの場合に適切な閾値(それぞれの結線状態に対応する閾値)との比較の結果に基づいて過電流検知を行うことができる。
【0112】
変形例.
実施の形態4では、第1の判定回路62における閾値VtΔを用いた判定を無効にする際に、第1の判定回路62の閾値生成回路621の分圧ノードにVq(=Von)が現れるように構成している。しかしこの点は、必須ではない。要するに、第2の判定回路63の閾値生成回路631から出力される閾値VtYよりも低い電位Vqが第1の判定回路62の閾値生成回路の分圧ノードに現れるように構成すれば良い。
【0113】
例えば、第1の判定回路62の閾値生成回路621の代わりに、
図14に示される閾値生成回路621cを用い、この閾値生成回路621cに無効化回路65bを
図14に示すように接続しても良い。
図14に示される閾値生成回路621cは、
図12に示される閾値生成回路621と同様であるが、抵抗R624の代わりに、抵抗R624A及びR624Bの直列接続が用いられ、従って、互いに直列接続された抵抗R623、R624A、R624Bにより分圧回路が構成されており、デジタルトランジスタQ653が、抵抗R624B(分圧ノードとグランドの間に接続された抵抗)を短絡するように設けられている。
【0114】
例えば、抵抗R624A、R624Bの抵抗値R624A、R624Bが、実施の形態4の抵抗R624の抵抗値R624に対して、
R624A+R624B=R624 (8)
という関係を満たすように定められている。
この場合、デジタルトランジスタQ653がオフのときの動作(デルタ結線時の動作)は、
図12の回路に関し、
図13(b)を参照して説明したのと同じである。
【0115】
デジタルトランジスタQ653がオンのとき(スター結線時)には、
図15に示すように、
Vq={(Vd−Von)×R624A/(R623+R624A)}+Von
(9)
で与えられる電位Vqが閾値生成回路621cの分圧ノードに現れ、基準値Vref1として比較器622に供給される。
【0116】
VqがVtYよりも小さいので、スター結線時には、比較器622でScがVqを超えたとの判定がなされた後に、比較器632でScがVtYを超えたとの判定がなされる。従って、ScがVtYを超えた時点で過電流検出信号SeがHighとなる。このように、過電流検出信号SeがHighとなるのは、
図12の回路に関し、
図13(a)を参照して説明したのと同じくScがVtYを超えた時点である。
【0117】
設計に当たっては、素子の定数のバラツキを考慮して、VqがVtYよりも十分小さくなるように、素子の定数を定めるのが望ましい。即ち、式(9)で与えられるVqがVtYから余裕分を減算した値よりも小さくなるように、抵抗R623、R624Aの抵抗値を定めておくのが望ましい。
【0118】
実施の形態5.
実施の形態1〜4では結線切替手段40として、切替スイッチを用いている。代わりに、常閉スイッチと常開スイッチとの組み合わせで結線切替手段を構成してもよい。その場合の結線切替手段の構成例を
図16に示す。
【0119】
図16の構成では、切替スイッチ41uの代わりに常閉スイッチ46uと常開スイッチ47uとの組合せが用いられ、切替スイッチ41vの代わりに常閉スイッチ46vと常開スイッチ47vとの組合せが用いられ、切替スイッチ41wの代わりに常閉スイッチ46wと常開スイッチ47wとの組合せが用いられている。
【0120】
図示のように、常閉スイッチ46u、46v、46wが閉じ(オンしており)、常開スイッチ47u、47v、47wが開いた(オフしている)状態では、電動機はスター結線されており、図示とは逆に、常閉スイッチ46u、46v、46wが開き、常開スイッチ47u、47v、47wが閉じた状態では、電動機はデルタ結線されている。
【0121】
結線切替手段40で用いるスイッチとしては、オン時の導通損失が小さいものが好適であり、リレー、コンタクタ等の機械スイッチが好適である。
しかしながら、
図16に示すように、常閉スイッチと常開スイッチとの組合せを用いる場合、SiCやGaNといったWBG半導体を用いてもよい。これらは、オン抵抗が小さく、低損失で素子発熱も少ない。これらはまた、切替え動作を高速に行うことができる。従って、電動機の駆動中に結線状態を切替えるには半導体で構成した方が好適である。
【0122】
また、電動機が空気調和機の圧縮機の駆動に用いられるものである場合であって、
図16に示すように、常閉スイッチと常開スイッチとの組合せを用いる場合、圧縮機の負荷が小さいときに用いられる結線状態(例えばスター結線状態)が選択された際にオンとなるスイッチとして、ノーマリオン型の半導体スイッチを用いるのが望ましい。そのようにすることで、軽負荷時の損失を低減することができ、運転時間のうち軽負荷での運転が占める割合が高い空気調和機の圧縮機の駆動に用いられる電動機に適用した場合に、総合的効率が高くなるからである。
【0123】
実施の形態6.
実施の形態1〜5では、固定子巻線をスター結線又はデルタ結線に切替え得る電動機に本発明を適用している。
本発明は、結線の切替えが他の方法で行われる場合にも適用できる。
例えば各相の巻線として2以上の巻線部分から成るものを用い、並列結線及び直列結線のいずれかに切替え得る電動機にも適用できる。
この場合、各相の巻線を構成する2以上の巻線部分の各々の両端部を、電動機の外部に接続可能として、結線切替手段で結線状態を切替える。
【0124】
図17には、スター結線された電動機において各相の巻線を2つの巻線部分で構成し、該巻線部分の各々の両端部を、電動機の外部に接続可能として、結線切替手段で結線状態を切替える構成を示す。
【0125】
具体的には、U相の巻線4uが2つの巻線部分4ue、4ufで構成され、V相の巻線4vが2つの巻線部分4ve、4vfで構成され、W相の巻線4wが2つの巻線部分4we、4wfで構成されている。
巻線部分4ue、4ve、4weの第1の端部は、外部端子4uc、4vc、4wcを介してインバータ30の出力線30u、30v、30wに接続されている。
巻線部分4ue、4ve、4weの第2の端部は、外部端子4ug、4vg、4wgを介して切替スイッチ48u、48v、48wの共通接点に接続されている。
巻線部分4uf、4vf、4wfの第1の端部は、外部端子4uh、4vh、4whを介して切替スイッチ49u、49
v、49wの共通接点に接続されている。
巻線部分4uf、4vf、4wfの第2の端部は、外部端子4ud、4vd、4wdを介して中性点ノード42に接続されている。
切替スイッチ48u、48
v、48wの常閉接点は、切替スイッチ49u、49
v、49wの常閉接点に接続されている。
切替スイッチ48u、48
v、48wの常開接点は、中性点ノード42に接続されている。
切替スイッチ49u、49
v、49wの常開接点は、インバータ30の出力線30u、30v、30wに接続されている。
切替スイッチ48u、48v、48w、49u、49v、49wにより、結線切替手段40が構成されている。
【0126】
このような場合にも、実施の形態1〜5で示したのと同様の過電流保護回路を用いることができる。但し、判定回路62、63の閾値の決定にあたっては、以下の点を考慮する必要がある。
【0127】
図17に示される構成の場合、切替スイッチ48u、48v、48w、49u、49v、49wが図示のように常閉接点側に切替えられた状態では、電動機は、直列結線状態となり、切替スイッチ48u、48v、48w、49u、49v、49wが図示とは逆の常開接点側に切替えられた状態では、電動機は並列結線状態となる。直列結線状態と並列結線状態とでは、電動機の巻線に流れる電流と、インバータ電流との比が異なる。即ち、直列結線状態では、電動機の巻線に流れる電流と、インバータ30の出力電流とは等しいが、並列結線状態では、電動機の巻線に流れる電流に対して、インバータ30の出力電流は2倍となる。
従って、減磁の防止を目的として、インバータ電流の検出値が一定の閾値を超えないようにインバータを制御する場合、直列結線の際の閾値に対して、並列結線の際の閾値を2倍にする必要がある。即ち、それぞれの結線状態に対応する判定回路を設ける場合、直列結線に対応する判定回路で用いる閾値に対して、並列結
線に対応する判定回路で用いる閾値を2倍に定める。
なお、実施の形態6でも実施の形態5で述べたように、切替スイッチの代わりに常閉スイッチと、常開スイッチとの組合せを用いることができる。
【0128】
以上、スター結線された電動機において、直列結線状態と並列結線状態との切替えを行う場合について説明したが、デルタ結線された電動機において、直列結線状態と並列結線状態との切替えを行う場合にも、上記と同様に本発明を適用することができる。
【0129】
変形例.
以上の実施の形態1〜6では、インバータ30の入力電流を検出している。
代わりに、インバータ30の出力電流を検出してもよい。この場合、一つの相にのみ電流検出素子、例えば変流器を設けて、該一つの相の電流
に基づいて過電流の検出を行ってもよい。代わりに、3つの相にそれぞれ電流検出素子、例えば変流器を設け、3つの相についての電流の平均を用いて過電流の検出を行ってもよく、3つの相の電流の各瞬時における最大値を用いて過電流の検出を行ってもよい。さらにまた、2つの相にそれぞれ電流検出素子、例えば変流器を設け、2つの相についての電流の平均を用いて過電流の検出を行ってもよく、2つの相の電流の各瞬時における最大値を用いて過電流の検出を行ってもよい。
【0130】
上記の実施の形態1〜6では、電動機が2つの結線状態のいずれかを取り得るものであり、2つの結線状態にそれぞれ対応する2つの閾値をそれぞれ用いて判定を行う2つの判定回路が設けられており、結線状態に対応する閾値以外の閾値を用いた比較を必要に応じて無効化している。
本発明は、電動機が取り得る結線状態が3つ以上の場合にも適用可能である。即ち、一般化していえば、本発明は、電動機が、複数の(n個の)結線状態のいずれかを選択可能なものである場合に適用可能である。
【0131】
その場合、過電流保護回路として、
上記複数の結線状態にそれぞれ対応して設けられた複数の判定回路と、
上記複数の判定回路での比較の結果を合成する合成回路と、
上記複数の判定回路における比較のうちの一部を無効化する無効化回路とを有する
ものを用いれば良い。
【0132】
この場合、例えば、上記過電流保護回路としては、上記インバータの入力電流又は出力電流を検出し、検出された電流が過大になったときに、上記インバータを停止させるものが用いられる。
また、上記複数の判定回路としては、上記複数の結線状態にそれぞれ対応して設けられ、上記複数の結線状態にそれぞれ対応する閾値を基準値として用いて、上記検出された電流との比較を行うものが用いられる。
また、上記無効化回路としては、上記複数の判定回路における比較のうち、選択されている結線状態に対応する閾値以外の閾値を用いた比較を必要に応じて無効化し、該無効化により、上記複数の判定回路のうち、上記選択されている結線状態に対応する
判定回路の出力に、上記合成回路の出力が一致するようにするものが用いられる。
【0133】
そして、実施の形態1〜3(
図1〜
図10)の構成において、結線状態の数を2から複数(n個)に一般化した場合、
上記合成回路としては、上記複数の判定回路の出力の論理和を取るOR回路を有するものを用い、
上記無効化回路としては、上記選択された結線状態に対応する閾値よりも小さい閾値の代わりに、上記選択された結線状態に対応する閾値よりも大きい値を上記基準値として用いた比較を行わせるものを用いることとすれば良い。
【0134】
その場合、例えば、上記複数の判定回路の各々が、制御電源の電圧を分圧する分圧回路を備え、該分圧により上記分圧回路の分圧ノードに現れる電圧を、上記閾値として出力する閾値生成回路と、
上記閾値生成回路から出力された上記閾値を基準値として、上記検出された電流が該基準値よりも大きいか否かを判定する比較器とを有し、
上記分圧回路が、上記制御電源とグランドとの間に直列接続された複数の抵抗を有し、
上記無効化回路が、上記直列接続された複数の抵抗のうちの一つを短絡して、上記閾値の代わりに、上記選択された結線状態に対応する閾値よりも大きい値を上記分圧ノードから出力させることとすれば良い。
上記の短絡される抵抗は、例えば、上記分圧ノードと上記制御電源との間に接続された抵抗である。
【0135】
また、実施の形態4(
図11〜
図15)の構成において、結線状態の数を2から複数(n個)に一般化した場合、
上記合成回路としては、上記複数の判定回路の出力の論理積を取るAND回路を有するものを用い、
上記無効化回路としては、上記選択された結線状態に対応する閾値よりも大きい閾値の代わりに、上記選択された結線状態に対応する閾値よりも小さい値を上記基準値として用いた比較を行わせるものを用いることとすれば良い。
【0136】
その場合、例えば、上記複数の判定回路の各々が、制御電源の電圧を分圧する分圧回路を備え、該分圧により上記分圧回路の分圧ノードに現れる電圧を、上記閾値として出力する閾値生成回路と、
上記閾値生成回路から出力された上記閾値を基準値として、上記検出された電流が該基準値よりも大きいか否かを判定する比較器とを有し、
上記分圧回路が、上記制御電源とグランドとの間に直列接続された複数の抵抗を有し、
上記無効化回路が、上記直列接続された複数の抵抗のうちの一つを短絡して、上記閾値の代わりに、上記選択された結線状態に対応する閾値よりも小さい値を上記分圧ノードから出力させることとすれば良い。
上記の短絡される抵抗は、例えば、上記分圧ノードと上記グランドとの間に接続された抵抗である。