(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る車両傾斜角度計測装置10の構成例を示すブロック図である。実施の形態1に係る車両傾斜角度計測装置10は、受信部11、変曲点検出部12、勾配変化判定部13、加速度出力部14、記憶部15、および傾斜角度算出部16を備える。また、車両傾斜角度計測装置10は、車両に搭載された加速度センサ1と接続される。加速度センサ1は、
図14に示した車両前後方向の加速度axおよび車両上下方向の加速度azを検出し、車両傾斜角度計測装置10へ出力する。車両傾斜角度計測装置10は、加速度ax,azを用いて、路面に対する車両傾斜角度φを計測する。計測された車両傾斜角度φは、車両用灯具の光軸調節に用いられる。
【0017】
図2および
図3は、この発明の実施の形態1に係る車両傾斜角度計測装置10のハードウェア構成例を示す図である。車両傾斜角度計測装置10における受信部11は、受信装置2である。受信装置2は、加速度センサ1で検出される車両前後方向および車両上下方向の加速度の情報を受信する。車両傾斜角度計測装置10における記憶部15は、メモリ3である。車両傾斜角度計測装置10における変曲点検出部12、勾配変化判定部13、加速度出力部14、および傾斜角度算出部16の各機能は、処理回路により実現される。即ち、車両傾斜角度計測装置10は、上記各機能を実現するための処理回路を備える。処理回路は、専用のハードウェアとしての処理回路4であってもよいし、メモリ3に格納されるプログラムを実行するプロセッサ5であってもよい。
【0018】
図2に示すように、処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路4は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。変曲点検出部12、勾配変化判定部13、加速度出力部14、および傾斜角度算出部16の機能を複数の処理回路4で実現してもよいし、各部の機能をまとめて1つの処理回路4で実現してもよい。
【0019】
図3に示すように、処理回路がプロセッサ5である場合、変曲点検出部12、勾配変化判定部13、加速度出力部14、および傾斜角度算出部16の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ3に格納される。プロセッサ5は、メモリ3に格納されたプログラムを読みだして実行することにより、各部の機能を実現する。即ち、車両傾斜角度計測装置10は、プロセッサ5により実行されるときに、後述する
図4のフローチャートで示されるステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ3を備える。また、このプログラムは、変曲点検出部12、勾配変化判定部13、加速度出力部14、および傾斜角度算出部16の手順または方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。
【0020】
ここで、プロセッサ5とは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、またはマイクロコンピュータ等のことである。
メモリ3は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、またはフラッシュメモリ等の不揮発性もしくは揮発性の半導体メモリであってもよいし、ハードディスクまたはフレキシブルディスク等の磁気ディスクであってもよいし、CD(Compact Disc)またはDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクであってもよい。
【0021】
なお、変曲点検出部12、勾配変化判定部13、加速度出力部14、および傾斜角度算出部16の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、車両傾斜角度計測装置10における処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0022】
図4は、この発明の実施の形態1に係る車両傾斜角度計測装置10の動作例を示すフローチャートである。車両傾斜角度計測装置10は、車両が走行している期間、
図4のフローチャートに示される動作を繰り返す。なお、この発明の各実施の形態で説明する車両傾斜角度の計測方法は、走行中の車両の傾斜角度を計測する方法に関するものである。車両傾斜角度計測装置10は、車両が停止している期間、以下の方法を実施せずに、以下の方法とは異なる方法により停止中の車両の傾斜角度を計測する。停止中の車両の傾斜角度は周知の技術を用いて計測すればよいため、説明を省略する。
【0023】
ステップST10において、受信部11は、加速度センサ1で検出される車両前後方向の加速度axおよび車両上下方向の加速度azを受信する。受信部11は、受信した加速度ax,azを、変曲点検出部12および加速度出力部14へ出力する。
【0024】
ステップST11において、変曲点検出部12は、受信部11により受信された車両前後方向の加速度axおよび車両上下方向の加速度azの変曲点を検出する。具体的には、変曲点検出部12は、車両前後方向の加速度axに対する車両上下方向の加速度azの変化量を示す曲線から変曲点を検出する。変曲点検出部12は、変曲点検出の有無を勾配変化判定部13へ通知する。
【0025】
図5、
図6、および
図7は、この発明の実施の形態1における車両前後方向の加速度axに対する車両上下方向の加速度azの変化量を示す曲線例のグラフである。変曲点検出部12は、例えば、10ミリ秒ごとに検出された車両前後方向の加速度axおよび車両上下方向の加速度azをプロットして曲線にする。続いて変曲点検出部12は、例えば最小二乗法などを用いて、100ミリ秒ごとに曲線の傾きを求め、傾きの変化量が所定の範囲を超えた曲線部分を変曲点として検出する。なお、加速度センサ1の検出周期は10ミリ秒に限定されるものではなく、任意の周期でよい。また、曲線の傾きを求める周期は100ミリ秒に限定されるものではなく、任意の周期でよい。
【0026】
上式(1)〜(4)を用いて説明した通り、車両走行中または車両加減速中に路面勾配変化がない場合、加速度センサ1が検出した加速度ax,azには、重力加速度g0の影響分が重畳しない。そのため、
図5に示す通り、曲線は線形になる。
図5の曲線は、傾きの変化量が所定の範囲内であるため、変曲点は検出されない。
一方、車両走行中に路面勾配が変化したことにより車両が加速動作もしくは減速動作をした場合または車両加減速中に路面勾配が変化した場合、加速度センサ1が検出した加速度には、重力加速度g0の影響分が重畳する。そのため、
図6および
図7に示す通り、曲線の線形性が失われ、傾きの変化量が所定の範囲を超えた曲線部分が変曲点100として検出される。変曲点100は、加速度センサ1が検出した加速度ax,azに重力加速度g0の影響分が重畳した部分である。
【0027】
ステップST12において、勾配変化判定部13は、変曲点の有無を示す通知を変曲点検出部12から受け取る。勾配変化判定部13は、変曲点検出部12により変曲点が検出された場合(ステップST12“YES”)、ステップST13において路面の勾配変化ありと判定する。一方、勾配変化判定部13は、変曲点検出部12により変曲点が検出されなかった場合(ステップST12“NO”)、ステップST14において路面の勾配変化なしと判定する。勾配変化判定部13は、路面勾配変化の有無を加速度出力部14へ通知する。
【0028】
ステップST15において、加速度出力部14は、路面勾配変化の有無を示す通知を勾配変化判定部13から受け取る。加速度出力部14は、勾配変化判定部13により路面の勾配変化なしと判定された場合(ステップST15“YES”)、ステップST16へ進む。ステップST16において、加速度出力部14は、受信部11から受け取った車両前後方向の加速度axおよび車両上下方向の加速度azと、加速度検出時刻とを記憶部15へ出力する。記憶部15は、加速度出力部14から出力された加速度ax,azに、加速度検出時刻を付加して、時系列データにして記憶する。一方、加速度出力部14は、勾配変化判定部13により路面の勾配変化ありと判定された場合(ステップST15“NO”)、ステップST16をスキップする。したがって、記憶部15は、加速度センサ1により検出された加速度ax,azのうち、勾配変化判定部13により路面の勾配変化なしと判定された場合の加速度ax,azを記憶することになる。
【0029】
ステップST17において、傾斜角度算出部16は、記憶部15に記憶されている、車両前後方向の加速度axおよび車両上下方向の加速度azの時系列データを読み出す。傾斜角度算出部16は、この時系列データを用いて、路面に対する車両の傾斜角度を算出する。車両前後方向の加速度axおよび車両上下方向の加速度azに基づいて車両の傾斜角度を算出する方法は周知の技術であるため説明を省略する。
【0030】
例えば
図6の場合、変曲点100以外の加速度ax,azが記憶部15に記憶され、変曲点100に含まれる加速度ax,azは記憶部15に記憶されない。傾斜角度算出部16は、記憶部15に記憶されている、路面の勾配変化なしと判定された期間の加速度ax,azを用いて車両の傾斜角度を算出する。そのため、路面勾配変化の影響が排除され、路面に対する車両の傾斜角度の精度が向上する。これに対し、傾斜角度算出部16が
図6における全ての加速度ax,azを最小二乗法などで直線近似し、その近似直線101を用いて車両の傾斜角度を算出した場合、その傾斜角度は、路面勾配変化の影響を受け、正しい値にならない。
【0031】
以上のように、実施の形態1に係る車両傾斜角度計測装置10は、加速度センサ1で検出される、車両前後方向および車両上下方向の加速度ax,azを受信する受信部11と、受信部11により受信された加速度ax,azの変曲点を検出する変曲点検出部12と、変曲点検出部12の検出結果に基づいて路面の勾配変化の有無を判定する勾配変化判定部13と、受信部11により受信された加速度ax,azから、勾配変化判定部13により路面の勾配変化ありと判定された場合の加速度ax,azを除外して出力する加速度出力部14と、加速度出力部14から出力された加速度ax,azに基づいて路面に対する車両の傾斜角度を算出する傾斜角度算出部16とを備える構成である。この構成により、路面勾配変化の影響を排除でき、路面に対する車両の傾斜角度を精度よく算出できる。
【0032】
また、実施の形態1の変曲点検出部12は、車両前後方向の加速度axに対する車両上下方向の加速度azの変化量を示す曲線から変曲点を検出する構成である。この構成により、加速度センサ1により検出された加速度ax,azに、走行中に車両に加わる重力加速度の影響があった場合、その影響を変曲点として検出できる。
【0033】
また、実施の形態1の勾配変化判定部13は、変曲点検出部12により変曲点が検出された場合に路面の勾配変化ありと判定し、検出されなかった場合に路面の勾配変化なしと判定する構成である。この構成により、加速度センサ1に検出された加速度ax,azに、走行中に車両に加わる重力加速度の影響があった場合、その加速度ax,azを車両の傾斜角度算出に使用しないようにできる。
【0034】
実施の形態2.
図8は、この発明の実施の形態2に係る車両傾斜角度計測装置10の構成例を示すブロック図である。実施の形態2に係る車両傾斜角度計測装置10は、
図1に示した実施の形態1の車両傾斜角度計測装置10に対して類似度判定部20が追加された構成である。
図8において
図1と同一または相当する部分は、同一の符号を付し説明を省略する。
【0035】
類似度判定部20は、
図2に示した処理回路4により実現される。または、類似度判定部20は、
図3に示したプロセッサ5がメモリ3に格納されているプログラムを実行することにより実現される。この類似度判定部20は、変曲点検出部12により変曲点が検出された場合、変曲点前後の曲線の類似度を判定する。
【0036】
図9は、この発明の実施の形態2に係る車両傾斜角度計測装置10の動作例を示すフローチャートである。車両傾斜角度計測装置10は、車両が走行している期間、
図9のフローチャートに示される動作を繰り返す。以下では、
図9のフローチャートと
図4のフローチャートとで異なる部分を説明する。
【0037】
ステップST11において、変曲点検出部12は、変曲点検出の有無を、勾配変化判定部13および類似度判定部20へ通知する。
ステップST12において、勾配変化判定部13は、変曲点検出部12により変曲点が検出された場合(ステップST12“YES”)、類似度判定部20から類似度判定結果が通知されるのを待つ。
【0038】
類似度判定部20は、加速度センサ1により検出された車両前後方向の加速度axおよび車両上下方向の加速度azを受信部11から受け取るとともに、変曲点の有無を示す通知を変曲点検出部12から受け取る。変曲点検出部12により変曲点が検出された場合(ステップST12“YES”)、ステップST20において、その変曲点前後の曲線の類似度を判定する。類似度判定部20は、類似度の判定結果を勾配変化判定部13へ通知する。
【0039】
ここで、類似度判定部20の類似度判定方法を、
図6を用いて説明する。
図6の曲線から変曲点100が検出されたので、類似度判定部20は、変曲点100より前の曲線部分201の傾きと、変曲点100より後の曲線部分202の傾きとを算出し、曲線部分201,202の傾きの類似度を判定する。類似度判定部20は、曲線部分201の傾きと曲線部分202の傾きとのずれが5%未満であれば曲線部分201,202が類似していると判定し、ずれが5%以上であれば曲線部分201,202が類似していないと判定する。
図6の曲線部分201,202は、傾きのずれが5%未満であり、類似している。なお、類似度を判定するための傾きのずれは5%に限定されるものではなく、任意の値でよい。また、類似度判定部20は、受信部11から受け取る加速度ax,azを用いて曲線部分201,202の傾きを算出してもよいし、変曲点検出部12が変曲点検出のために算出した傾きを変曲点検出部12から受け取ってもよい。
【0040】
ステップST21において、勾配変化判定部13は、類似度の判定結果を類似度判定部20から受け取る。勾配変化判定部13は、類似度判定部20により変曲点前後の曲線が類似しないと判定された場合(ステップST21“NO”)、ステップST13おいて路面の勾配変化ありと判定する。一方、勾配変化判定部13は、類似度判定部20により変曲点前後の曲線が類似すると判定された場合(ステップST21“YES”)、ステップST14において路面の勾配変化なしと判定する。
【0041】
上式(1)〜(4)を用いて説明した通り、車両走行中に路面勾配が変化したことにより車両が加速動作もしくは減速動作をした場合または車両加減速中に路面勾配が変化した場合、加速度センサ1が検出した加速度ax,azには重力加速度g0の影響分が重畳する。そのため、路面勾配変化によって加速度ax,azの曲線に変曲点が生じる。また、車両が走行中に急加速または急減速した場合、式(1)〜(4)における車両加速度a0が変化する。そのため、車両の急加減速によっても加速度ax,azの曲線に変曲点が生じる。つまり、
図6に示した曲線の変曲点100は、(a)車両走行中に路面勾配が変化したことによる加減速動作もしくは車両加減速中の路面勾配変化が原因で生じたか、または、(b)路面勾配変化以外の原因、例えば車両走行中の急加減速が原因で生じたと考えられる。
実施の形態1の車両傾斜角度計測装置10は、
図6の曲線から変曲点100が検出された場合(ステップST12“YES”)、変曲点100が生じた原因として(a)路面勾配変化と(b)路面勾配変化以外とを判別せず、少なくとも(a)路面勾配変化の可能性があるので路面の勾配変化ありと判定して(ステップST13)、変曲点100に含まれる加速度ax,azを除外した。
これに対し、実施の形態2の車両傾斜角度計測装置10は、類似度判定部20により、変曲点100の原因が(a)路面勾配変化であるか、(b)路面勾配変化以外であるかを判別可能とする。車両傾斜角度計測装置10は、
図6の曲線から変曲点100が検出された場合(ステップST12“YES”)、変曲点100前後の曲線部分201,202が類似していたら(ステップST21“YES”)、変曲点100が生じた原因は(b)路面勾配変化以外である可能性が高いので、路面の勾配変化なしと判定する(ステップST14)。一方、車両傾斜角度計測装置10は、変曲点100前後の曲線部分201,202が類似していなかったら(ステップST21“NO”)、変曲点100が生じた原因は(a)路面勾配変化である可能性が高いので、路面の勾配変化ありと判定する(ステップST13)。
【0042】
以上のように、実施の形態2に係る車両傾斜角度計測装置10は、類似度判定部20を備える構成である。類似度判定部20は、変曲点検出部12により変曲点が検出された場合、変曲点前後の曲線の類似度を判定する。勾配変化判定部13は、類似度判定部20により変曲点前後の曲線が類似しないと判定された場合に路面の勾配変化ありと判定し、類似すると判定された場合に路面の勾配変化なしと判定する。この構成により、より正確に路面勾配変化の影響を排除でき、路面に対する車両の傾斜角度をより精度よく算出できる。
【0043】
実施の形態3.
図10は、この発明の実施の形態3に係る車両傾斜角度計測装置10の構成例を示すブロック図である。実施の形態3に係る車両傾斜角度計測装置10は、
図1に示した実施の形態1の車両傾斜角度計測装置10に対して受信部31、加速度算出部32、および類似度判定部33が追加された構成である。また、実施の形態3に係る車両傾斜角度計測装置10は、変曲点検出部12の代わりに変曲点検出部12Aを備える。さらに、実施の形態3に係る車両傾斜角度計測装置10は、車両に搭載された車速計測部30と接続される。車速計測部30は、車輪速センサまたはGPS(Global Positioning System)センサなどであり、車両の走行速度を計測し、車両傾斜角度計測装置10へ出力する。
図10において
図1と同一または相当する部分は、同一の符号を付し説明を省略する。
【0044】
受信部31は、
図2および
図3に示した受信装置2である。この受信部31は、車速計測部30により計測された車速の情報を受信する。なお、受信部11または受信部31のいずれか一方が、加速度センサ1により検出された車両前後方向および車両上下方向の加速度ax,azと車速計測部30により計測された車速とを両方受信する構成であってもよい。
【0045】
変曲点検出部12A、加速度算出部32、および類似度判定部33は、
図2に示した処理回路4により実現される。または、変曲点検出部12A、加速度算出部32、および類似度判定部33は、
図3に示したプロセッサ5がメモリ3に格納されているプロセッサを実行することにより実現される。この変曲点検出部12Aは、受信部11により受信された車両前後方向の加速度axの時間変化量を示す曲線から変曲点を検出する。加速度算出部32は、車速計測部30により計測された車速に基づいて車両の加速度を算出する。加速度算出部32が算出する車両の加速度とは、
図14に示した車両加速度a0である。類似度判定部33は、変曲点検出部12Aにより変曲点が検出された場合、車両前後方向の加速度axの時間変化量を示す曲線と加速度算出部32により算出された車両加速度a0の時間変化量を示す曲線の類似度を判定する。
【0046】
図11は、この発明の実施の形態3に係る車両傾斜角度計測装置10の動作例を示すフローチャートである。車両傾斜角度計測装置10は、車両が走行している期間、
図11のフローチャートに示される動作を繰り返す。以下では、
図11のフローチャートと
図4のフローチャートとで異なる部分を説明する。
【0047】
ステップST30において、受信部11は、加速度センサ1で検出される車両前後方向の加速度axおよび車両上下方向の加速度azを受信する。受信部11は、受信した加速度ax,azを、変曲点検出部12A、加速度出力部14および類似度判定部33へ出力する。受信部31は、車速計測部30で計測される車速を受信する。受信部31は、受信した車速を加速度算出部32へ出力する。
【0048】
ステップST31において、加速度算出部32は、受信部31により受信された車速に基づいて車両加速度a0を算出する。加速度算出部32は、車両加速度a0を類似度判定部33へ出力する。
【0049】
ステップST32において、変曲点検出部12Aは、受信部11により受信された車両前後方向の加速度axの変曲点を検出する。具体的には、変曲点検出部12Aは、車両前後方向の加速度axの時間変化量を示す曲線から変曲点を検出する。変曲点検出部12Aは、変曲点検出の有無を勾配変化判定部13および類似度判定部33へ通知する。
【0050】
図12および
図13は、この発明の実施の形態3における車両前後方向の加速度axおよび車両加速度a0の時間変化量を示す曲線例のグラフである。変曲点検出部12Aは、例えば、10ミリ秒ごとに検出された車両前後方向の加速度axを、検出時刻順にプロットして曲線にする。続いて変曲点検出部12Aは、例えば最小二乗法などを用いて、100ミリ秒ごとに曲線の傾きを求め、傾きの変化量が所定の範囲を超えた曲線部分を変曲点として検出する。なお、加速度センサ1の検出周期は10ミリ秒に限定されるものではなく、任意の周期でよい。また、曲線の傾きを求める周期は100ミリ秒に限定されるものではなく、任意の周期でよい。
【0051】
上式(1)〜(4)を用いて説明した通り、車両走行中または車両加減速中に路面勾配変化がない場合、加速度センサ1が検出した車両前後方向の加速度axには、重力加速度g0の影響分が重畳しない。そのため、
図12に示す通り、加速度axの時間変化量を示す曲線は、線形になる。
図12の曲線は、傾きの変化量が所定の範囲内であるため、変曲点は検出されない。
一方、車両走行中に路面勾配が変化したことにより車両が加速動作もしくは減速動作をした場合または車両加減速中に路面勾配が変化した場合、加速度センサ1が検出した車両前後方向の加速度axには、重力加速度g0の影響分が重畳する。そのため、
図13に示す通り、加速度axの曲線の線形性が失われ、傾きの変化量が所定の範囲を超えた曲線部分が変曲点300として検出される。また、車両が走行中に急加速または急減速した場合、式(1)〜(4)における車両加速度a0が変化する。そのため、車両の急加減速によっても加速度axの曲線に変曲点300が生じる。つまり、変曲点300は、加速度センサ1が検出した加速度axに重力加速度g0の影響分が重畳した部分、または車両加速度a0の変化分が重畳した部分である。
【0052】
ステップST33において、勾配変化判定部13は、変曲点の有無を示す通知を変曲点検出部12Aから受け取る。勾配変化判定部13は、変曲点検出部12Aにより変曲点が検出されなかった場合(ステップST33“NO”)、ステップST14において路面の勾配変化なしと判定する。一方、勾配変化判定部13は、変曲点検出部12Aにより変曲点が検出された場合(ステップST33“YES”)、類似度判定部33から類似度判定結果が通知されるのを待つ。
【0053】
類似度判定部33は、加速度センサ1により検出された車両前後方向の加速度axを受信部11から受け取るとともに、変曲点の有無を示す通知を変曲点検出部12Aから受け取る。さらに、類似度判定部33は、車両加速度a0を加速度算出部32から受け取る。類似度判定部33は、変曲点検出部12Aにより変曲点が検出された場合(ステップST33“YES”)、ステップST34において、車両前後方向の加速度axの時間変化量を示す曲線と車両加速度a0の時間変化量を示す曲線の類似度を判定する。類似度判定部33は、類似度の判定結果を勾配変化判定部13へ通知する。
【0054】
ここで、類似度判定部33の類似度判定方法を、
図13を用いて説明する。
図13の加速度axの曲線から変曲点300が検出されたので、類似度判定部33は、加速度axの曲線の傾きを算出する。加えて、類似度判定部33は、加速度算出部32から受け取った車両加速度a0を、計測時刻順にプロットして曲線にし、その曲線の傾きを算出する。続いて類似度判定部33は、車両前後方向の加速度axの曲線の傾きと車両加速度a0の曲線の傾きとのずれが5%未満であれば類似していると判定し、ずれが5%以上であれば類似していないと判定する。
図13の加速度axの曲線のうちの曲線部分301,302の傾きは、車両加速度a0の曲線の傾きと類似している。なお、類似度を判定するための傾きのずれは5%に限定されるものではなく、任意の値でよい。また、類似度判定部33は、受信部11から受け取る加速度axを用いて曲線の傾きを算出してもよいし、変曲点検出部12Aが変曲点検出のために算出した傾きを変曲点検出部12Aから受け取ってもよい。
【0055】
ステップST35において、勾配変化判定部13は、類似度の判定結果を類似度判定部33から受け取る。勾配変化判定部13は、類似度判定部33により車両前後方向の加速度axの曲線および車両加速度a0の曲線が類似しないと判定された場合(ステップST35“NO”)、ステップST13において路面の勾配変化ありと判定する。一方、勾配変化判定部13は、類似度判定部33により車両前後方向の加速度axの曲線および車両加速度a0の曲線が類似すると判定された場合(ステップST35“YES”)、ステップST14において路面の勾配変化なしと判定する。
【0056】
上式(1)〜(4)を用いて説明した通り、車両走行中に路面勾配が変化したことにより車両が加速動作もしくは減速動作をした場合または車両加減速中に路面勾配が変化した場合、加速度センサ1が検出した加速度axには重力加速度g0の影響分が重畳する。そのため、路面勾配変化によって加速度axの曲線に変曲点が生じる。また、車両が走行中に急加速または急減速した場合、式(1)〜(4)における車両加速度a0が変化する。そのため、車両の急加減速によっても加速度axの曲線に変曲点が生じる。つまり、
図13に示した曲線の変曲点300は、(a)車両走行中に路面勾配が変化したことによる加減速動作もしくは車両加減速中の路面勾配変化が原因で生じたか、または、(b)路面勾配変化以外の原因、例えば車両走行中の急加減速が原因で生じたと考えられる。
他方、車速から算出された車両加速度a0は、(a)路面勾配変化に伴う重力加速度g0の影響を受けない。そのため、路面勾配が変化しても、車両加速度a0の時間変化量の曲線に変曲点は生じない。これに対し、車両が走行中に急加速または急減速等した場合、車両加速度a0の時間変化量の曲線に変曲点が生じる。
図13に破線で示す車両加速度a0′は、車両が走行中に急加速もしくは急減速等した場合における車両加速度の時間変化量の曲線例である。車両走行中または車両加減速中に路面勾配が変化した場合、加速度axの曲線に変曲点300が生じるが、車両加速度a0の曲線には変曲点が生じないため、加速度axのうちの曲線部分301,302が車両加速度a0の曲線と類似していると判定される。一方、車両が急加速または急減速等した場合、加速度axの曲線および車両加速度a0′の曲線の両方に変曲点300が生じるため、
図13の加速度axの曲線すべてが車両加速度a0′の曲線と類似していると判定される。
【0057】
以上のように、実施の形態3の変曲点検出部12Aは、車両前後方向の加速度axの時間変化量を示す曲線から変曲点を検出する構成である。この構成により、加速度センサ1により検出された加速度axに、走行中に車両に加わる重力加速度の影響があった場合、その影響を変曲点として検出できる。
【0058】
また、実施の形態3に係る車両傾斜角度計測装置10は、加速度算出部32と類似度判定部33とを備える構成である。加速度算出部32は、車両の走行速度に基づいて車両加速度a0を算出する。類似度判定部33は、変曲点検出部12Aにより変曲点が検出された場合、車両前後方向の加速度axの時間変化量を示す曲線と加速度算出部32により算出された車両加速度a0の時間変化量を示す曲線の類似度を判定する。勾配変化判定部13は、類似度判定部33により2つの加速度ax,a0の曲線が類似しないと判定された場合に路面の勾配変化ありと判定し、類似すると判定された場合に路面の勾配変化なしと判定する。この構成により、より正確に路面勾配変化の影響を排除でき、路面に対する車両の傾斜角度をより精度よく算出できる。
【0059】
なお、本発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、または各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。