(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、複数の室内機を備えるマルチ型の空気調和機が知られている。マルチ型の空気調和機は、室外機と、室外機に延長配管により接続された室内機とを備えている。室外機には、圧縮機、冷媒の流路方向を切り替える四方弁、室外熱交換器、室外送風機、液側延長配管接続用バルブ、ガス側延長配管接続用バルブ、圧縮機の高圧側である吐出側配管に配置される圧力センサ、冷房運転時に室外熱交換器の出口側に流れる冷媒の温度を検出する室外出口側温度センサ及び室外制御装置が設けられている。室内機には、凝縮された冷媒を減圧する複数の電子膨張弁、複数の室内熱交換器、複数の室内送風機、冷房運転時に室内熱交換器の入口側に流れる冷媒の温度を検出する室内入口側温度センサ、冷房運転時に室内熱交換器の出口側に流れる冷媒の温度を検出する室内出口側温度センサ及び室内制御装置が設けられている。圧縮機、四方弁、室外熱交換器、電子膨張弁及び室内熱交換器が配管により接続されることによって、冷媒回路が構成されている。室外制御装置及び室内制御装置は、圧力センサによって検出された圧力、室外出口側温度センサ、室内入口側温度センサ及び室内出口側温度センサによって検出された各温度に基づいて、電子膨張弁の動作を制御する。
【0003】
また、室内制御装置は、各室内機に固有の情報である室内機形態又は能力帯等を記憶しており、室内制御装置は、室内機形態又は能力帯等の情報を、各種通信手段を用いて室外制御装置に送信する。これにより、室内機と室外機とは、室内機形態又は能力帯等の情報を共有することができる。また、冷媒回路において、冷房運転時、四方弁は、圧縮機の吐出側配管と室外熱交換器とが接続するように切り替えられており、室外熱交換器が凝縮器として作用し、室内熱交換器が蒸発器として作用する。冷房運転時、各室内機内の電子膨張弁は、室内入口側温度センサによって検出された室内蒸発温度と、室内出口側温度センサによって検出された室内出口温度との差分から導出される蒸発器の過熱度SH_e[deg]が、目標過熱度SHm_e[deg]に近づくように、開度が制御される。概して、電子膨張弁の開度が下がるほどSH_eが大きくなり、電子膨張弁の開度が上がるほどSH_eが小さくなる。
【0004】
マルチ型の空気調和機において、室内機は複数台接続されている。そして、各室内機が設置される場所の室内温度と設定温度とには隔たりがある場合がある。室内温度と設定温度とがほぼ同等である部屋の場合、冷房能力が小さくて済む。一方、室内温度と設定温度との間に隔たりがある部屋の場合、冷房能力を大きくする必要がある。即ち、室内温度と設定温度とがほぼ同等である部屋の場合、SHm_eの値を大きくして、電子膨張弁の開度を絞ることによって流れる冷媒の量を抑えて、冷房能力を抑制する制御が望まれる。また、このような蒸発器の過熱度を用いて電子膨張弁の開度を制御するほかに、凝縮器の過冷却度を用いて電子膨張弁の開度を制御することも知られている。各室内機内の電子膨張弁は、圧力センサによって検出された高圧圧力が求められる高圧側飽和温度と、室外出口側温度センサによって検出された温度との差分から導出される凝縮器の過冷却度SC_hex[deg]が、目標過冷却度SCm_hex[deg]に近づくように、開度が制御され、各室内機の能力帯に応じて按分される。
【0005】
なお、凝縮器の過冷却度を用いて冷房運転時の各室内機の電子膨張弁を制御する場合、各室内機における個別の制御目標値が存在しない。このため、室内温度と設定温度とがほぼ同等である部屋の場合、SHm_eの値を大きくするといった室内毎の制御が困難である。また、室内熱交換器の出口が湿っている可能性があり、必要な冷媒量の増加、圧縮機に吸入される冷媒の乾き度が下がることによる低圧圧力損失の増加、圧縮機への液バック等の懸念がある。このため、マルチ型の空気調和機では、蒸発器の過熱度を用いた電子膨張弁の制御が採用される場合が多い。
【0006】
ここで、冷房運転時に、SH_eが過剰となった場合、室内熱交換器の一部が乾き状態となる可能性がある。室内熱交換器の一部が乾き状態になると、乾いている部分を通過した空気は冷却されず、高温高湿のままの風となる。一方、乾いていない部分を通過した空気は冷却され、低温低湿の風となる。高温高湿の風と低温低湿の風とが混合されると、高温高湿の空気が冷却され、露点温度まで達すると、露となって風路内に溜まる。これにより、溜まった露が風路を通過する風によって室内機の吹出し口から飛び出すという露飛び現象が発生するおそれがある。
【0007】
生産性等の種々の事情によって、室内出口側温度センサが、室内熱交換器の入口と出口との中間側に若干寄った位置に取り付けられている場合がある。この場合、室内入口側温度センサによって検出された温度と、室内出口側温度センサによって検出された温度とに基づいてSH_eを導出して電子膨張弁の開度が制御される際、導出されるSH_eが、実際の過熱度よりも小さい値となる。即ち、過熱度において、検出値と実際値との間に齟齬が生じる。齟齬が生じたまま、SH_eを目標過熱度SHm_eに近づけようとして、各室内機の電子膨張弁の開度の制御が継続されると、実際の過熱度が目標過熱度よりも大きくなってしまい、乾き状態による露飛び等の現象が発生し易くなる。
【0008】
室内機出口側の過熱度の最適値は、1〜5[deg]程度であり、概して目標過熱度SHm_eは、2〜4[deg]程度に設定される。乾き状態を回避するためには、室内出口側温度センサが、室内熱交換器の入口と出口との中間側に若干寄った位置に取り付けられている場合、室内機の目標過熱度SHm_eの値を故意に小さくする必要があるが、どの程度小さくするかを把握することは容易ではない。また、室内出口側温度センサが、過熱度を全く検出することができない位置に取り付けられている場合もある。この場合、目標過熱度を変更する等の簡易な仕様変更では、対応することができない。この場合、室内出口側温度センサの設置位置を、過熱度が適切に検出することができる位置に変更する必要がある。即ち、ハードウエア仕様の変更を伴う。
【0009】
ここで、特許文献1には、室外機に接続される室内機の機種に応じた蒸発器の目標過熱度を予め記憶する空気調和機が開示されている。特許文献1は、これにより、室内機毎に個別に最適な制御を行う。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
以下、本発明に係る空気調和機の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和機100を示す回路図である。この
図1に基づいて、空気調和機100について説明する。
図1に示すように、空気調和機100は、例えば1台の室外機7とn台の室内機13−1〜13−nとを備えており、室外機7とn台の室内機13−1〜13−nとは、それぞれ液側延長配管8及びガス側延長配管9によって接続されている。
【0018】
空気調和機100は、例えば冷凍サイクルを利用して空気の調和を行うマルチエアコンである。空気調和機100は、例えばn台の室内機13−1〜13−nのいずれもが冷房運転を行う冷房運転モードと、n台の室内機133−1〜13−nのいずれもが暖房運転を行う暖房運転モードとを有し、いずれか一方のモードが選択される。なお、室外機7は、1台である場合について例示しているが、2台以上でもよい。また、室内機13は、n台である場合について例示しているが、2台以上であればよい。なお、室内機13−1〜13−nを総称して室内機13と呼称する場合がある。
【0019】
(室外機7,室内機13)
室外機7は、室外に設置されるものであり、圧縮機1、流路切替装置2、室外熱交換器3、室外送風機4、液側延長配管接続用バルブ5、ガス側延長配管接続用バルブ6、吐出センサ、室外出口側温度センサ15及び室外制御装置16を有している。n台の室内機13−1〜13−nは、それぞれ膨張部10−1〜10−n、室内熱交換器11−1〜11−n、室内送風機12−1〜12−n、室内入口側温度センサ18−1〜18−n、室内出口側温度センサ19−1〜19−n及び室内制御装置17−1〜17−nを有している。ここで、圧縮機1、流路切替装置2、室外熱交換器3、n個の膨張部10−1〜10−n及びn個の室内熱交換器11−1〜11−nが配管により接続されて冷媒が流れる冷媒回路50が構成されている。
【0020】
なお、膨張部10−1〜10−nを総称して膨張部10と呼称する場合がある。また、室内熱交換器11−1〜11−nを総称して室内熱交換器11と呼称する場合がある。更に、室内送風機12−1〜12−nを総称して室内送風機12と呼称する場合がある。更にまた、室内入口側温度センサ18−1〜18−nを総称して室内入口側温度センサ18と呼称する場合がある。また、室内出口側温度センサ19−1〜19−nを総称して室内出口側温度センサ19と呼称する場合がある。更に、室内制御装置17−1〜17−nを総称して室内制御装置17と呼称する場合がある。
【0021】
(冷媒回路50)
圧縮機1は、低温低圧の状態の冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮して高温高圧の状態の冷媒にして吐出する機器である。流路切替装置2は、冷媒回路50において冷媒が流れる方向を切り替える機器であり、例えば四方弁である。室外熱交換器3は、例えば室外空気と冷媒との間で熱交換させる機器である。室外熱交換器3は、冷房運転時には凝縮器として作用し、暖房運転時には蒸発器として作用する。室外送風機4は、室外熱交換器3の近傍に設けられ、室外熱交換器3に室外空気を送る機器である。膨張部10は、冷媒を減圧して膨張する減圧弁又は膨張弁である。膨張部10は、例えば開度が調整される電子式膨張弁である。室内熱交換器11は、例えば室内空気と冷媒との間で熱交換させる機器である。室内熱交換器11は、冷房運転時には蒸発器として作用し、暖房運転時には凝縮器として作用する。室内送風機12は、室内熱交換器11の近傍に設けられ、室内熱交換器11に室内空気を送る機器である。
【0022】
液側延長配管接続用バルブ5は、室外機7と室内機13とを接続する液側延長配管8の近傍に設けられる機器である。液側延長配管接続用バルブ5は、室外機7と室内機13とのうち一方から他方に流れる冷媒の流れを許容又は遮断する。ガス側延長配管接続用バルブ6は、室外機7と室内機13とを接続するガス側延長配管9の近傍に設けられる機器である。ガス側延長配管接続用バルブ6は、室外機7と室内機13とのうち一方から他方に流れる冷媒の流れを許容又は遮断する。
【0023】
圧力センサ14は、圧縮機1の吐出側の配管に設けられており、圧縮機1によって圧縮されて吐出される高温高圧状態の冷媒の圧力Pd[kgf/cm
2G]を検出するセンサである。室外出口側温度センサ15は、冷房運転時における室外熱交換器3の出口側に流れる冷媒の室外出口側温度Tcout[℃]を検出するセンサである。室内入口側温度センサ18は、冷房運転時における室内熱交換器11の入口側に流れる冷媒の室内入口側温度Tein[℃]を検出するセンサである。ここで、室内機13−nの冷房運転時における室内熱交換器11−nの入口側に流れる冷媒の室内入口側温度をTein−n[℃]と呼称する。室内出口側温度センサ19は、冷房運転時における室内熱交換器11の出口側に流れる冷媒の室内出口側温度Teout[℃]を検出するセンサである。ここで、室内機13−nの冷房運転時における室内熱交換器11−nの出口側に流れる冷媒の室内出口側温度をTeout−n[℃]と呼称する。
【0024】
(制御部30)
室外制御装置16は、室外機7に設けられ、圧力センサ14によって検出された圧力及び室外出口側温度センサ15によって検出された温度等の情報を受信し、圧縮機1及び膨張部10等の各種アクチュエータの動作を制御する装置である。室内制御装置17は、室内入口側温度センサ18によって検出された温度及び室内出口側温度センサ19によって検出された温度等の情報を受信する。また、室内制御装置17は、室外制御装置16と通信し、各情報を共有する。そして、室内制御装置17は、膨張部10の開度及び室内送風機12の回転数等を調整する。なお、室外制御装置16及び室内制御装置17によって、制御部30が構成されている。
【0025】
(制御部30,算出手段31)
図2は、本発明の実施の形態1に係る空気調和機100の制御部30を示すブロック図である。
図2に示すように、制御部30は、算出手段31と、判定手段32と、切替手段33とを有している。算出手段31は、室内入口側温度Tein−1〜Tein−nと、室内出口側温度Teout−1〜Teout−nとの差分に基づいて各室内機13の過熱度SH_e−1〜SH_e−n[deg]を算出するものである。過熱度は、スーパーヒートとも呼称される。また、算出手段31は、圧力Pd[kgf/cm
2G]に対応する飽和温度に基づいて高圧飽和温度Ct[℃]を算出し、高圧飽和温度Ct[℃]から室外出口側温度Tcout[℃]を減算して過冷却度SC_hexを算出するものである。過冷却度は、サブクールとも呼称される。
【0026】
(過熱制御モード)
制御部30は、複数の膨張部10の動作を制御するモードとして、過熱制御モードと過冷却制御モードとを有している。過熱制御モードは、冷房運転時に複数の室内熱交換器11の出口側過熱度に基づいてそれぞれの膨張部10を制御するモードである。算出手段31は、室内入口側温度Tein−1〜Tein−nと、室内出口側温度Teout−1〜Teout−nとの差分に基づいて各室内機13の過熱度SH_e−1〜SH_e−n[deg]を算出する。そして、制御部30は、過熱度SH_e−1〜SH_e−n[deg]が目標過熱度SHm_e−1〜SHm_e−n[deg]に近づくように、対応する膨張部10−1〜10−nの開度を制御する。
【0027】
図3は、本発明の実施の形態1における過熱度を示すモリエル線図である。
図3において、横軸は比エンタルピ、縦軸は圧力である。
図3に示すように、制御部30が膨張部10−1〜10−nの開度を制御することによって、所望の過熱度となるように制御される。過熱度SH_e−1〜SH_e−nが目標過熱度SHm_e−1〜SHm_e−nより大きい場合、制御部30は、膨張部10の目標開度An=Anf+ΔS1n(Anf:現在時刻の膨張部10の開度、ΔS1n:過熱度制御による補正開度、n=1,2,・・・,n)のΔS1nを正の値に設定する。
【0028】
また、制御部30は、過熱度SH_e−1〜SH_e−nが目標過熱度SHm_e−1〜SHm_e−nより小さい場合、ΔS1nを負の値に設定する。制御部30は、過熱度SH_e−1〜SH_e−nが、SHm_e−1〜SHm_e−n−a1≦SH_e−1〜SH_e−n≦SHm_e−1〜SHm_e−n+a2(a1:SH_e−1〜SH_e−nの下限側安定温度範囲[℃]、a2:SH_e−1〜SH_e−nの上限側安定温度範囲[℃])を満たして開度安定域に収まっている場合、ΔS1nを零に設定し、膨張部10の開度を維持する。
【0029】
このように、過熱制御モードは、室内機13毎に、室内機13に対応する膨張部10の開度を個別に制御することができる。ここで、各室内機13が設置される場所の室内温度と設定温度とには隔たりがある場合がある。室内温度と設定温度とがほぼ同等である部屋の場合、冷房能力が小さくて済むが、室内温度と設定温度との間に隔たりがある部屋の場合、冷房能力を大きくする必要がある。即ち、室内温度と設定温度とがほぼ同等である部屋の場合、目標過熱度SHm_eの値を大きくして、電子膨張弁の開度を絞ることによって流れる冷媒の量を抑えて、冷房能力を抑制する制御が望まれる。その際、過熱制御モードは、室内機13に対応する膨張部10の開度を個別に制御することができるため、各室内機13に適した過熱度に制御することができる。従って、全ての室内機13において、最適な制御を行うことができる。
【0030】
(過冷却制御モード)
過冷却制御モードは、冷房運転時に室外熱交換器3の過冷却度に基づいて全ての膨張部10を制御するモードである。算出手段31は、圧力Pd[kgf/cm
2G]に対応する飽和温度に基づいて高圧飽和温度Ct[℃]を算出する。制御部30は、高圧飽和温度Ct[℃]から室外出口側温度Tcout[℃]を減算した過冷却度SC_hexが目標過冷却度SCm_hexに近づくように、全ての膨張部10−1〜10−nの開度を制御する。
【0031】
図4は、本発明の実施の形態1における過冷却度を示すモリエル線図である。
図4において、横軸は比エンタルピ、縦軸は圧力である。
図4に示すように、制御部30が全ての膨張部10の開度を制御することによって、所望の過冷却度となるように制御される。過冷却度SC_hexが目標過冷却度SCm_hexより大きい場合、制御部30は、全ての膨張部10の合計の目標開度ΣA=ΣAf+ΔS2(ΣAf:現在時刻の膨張部10の開度の合計、ΔS2:過冷却度制御による補正開度)のΔS2を正の値に設定する。また、制御部30は、過冷却度SC_hexが目標過冷却度SCm_hexより小さい場合、ΔS2を負の値に設定する。
【0032】
制御部30は、過冷却度SC_hexが、Scm_hex−b1≦SC_hex≦Scm_hex+b2(b1:SC_hexの下限側安定温度範囲[℃]、b2:SC_hexの上限側安定温度範囲[℃])を満たして開度安定域に収まっている場合、ΔS2を零に設定し、膨張部10の開度を維持する。各室内機13−1〜13−nの開度A1〜Anは、ΣAが算出された後、An=ΣA×Cnという式から求められる。ここで、Cnは、各室内機13の能力帯によって決定される評価値であり、室内制御装置17に記憶され、算出時に室内制御装置17から室外制御装置16に情報が送信される。
【0033】
(判定手段32)
図2に示すように、判定手段32は、複数の室内機13のなかに、過熱制御モードに不適な室内機13が存在するか否かを判定するものである。ここで、過熱制御モードに適合する室内機13と、過熱制御モードに不適な室内機13とについて説明する。
【0034】
(過熱制御モードに適合する室内機13)
図5は、本発明の実施の形態1における室内熱交換器11の断面図である。
図5に示すように、室内熱交換器11は、上部パス11aと下部パス11bとを有している。上部パス11aは、冷媒が流れるパスのうち、室内熱交換器11の上部に設けられている。冷房運転時において、冷媒は、上部パス11aの第1の入口41から流入して、第1の出口42から流出する。下部パス11bは、冷媒が流れるパスのうち、室内熱交換器11の下部に設けられている。冷房運転時において、冷媒は、下部パス11bの第2の入口43から流入して、第2の出口44から流出する。ここで、室内入口側温度センサ18は、下部パス11bにおいて、冷房運転時における入口の近傍に設けられている。また、室内出口側温度センサ19は、下部パス11bにおいて、冷房運転時における出口の近傍に設けられている。
【0035】
このように、室内出口側温度センサ19は、冷房運転時における室内熱交換器11の出口の近傍に設けられているため、室内出口側温度センサ19によって検出された室内出口側温度Teout[℃]は、冷房運転時に室内熱交換器11から流出する実際の温度に近い。このため、室内出口側温度に基づいて算出される過熱度の値は、実際の過熱度の値に近い。よって、
図5に示す室内熱交換器11を有する室内機13は、過熱制御モードに適合する。
【0036】
(過熱制御モードに不適な室内機13)
図6は、本発明の実施の形態1における室内熱交換器11の断面図である。
図6に示すように、室内熱交換器11は、上部パス11aと下部パス11bとを有している。上部パス11aは、冷媒が流れるパスのうち、熱交換器の上部に設けられている。冷房運転時において、冷媒は、上部パス11aの第1の入口41から流入して、第1の出口42から流出する。下部パス11bは、冷媒が流れるパスのうち、熱交換器の下部に設けられている。冷房運転時において、冷媒は、下部パス11bの第2の入口43から流入して、第2の出口44から流出する。ここで、室内入口側温度センサ18は、下部パス11bにおいて、冷房運転時における入口の近傍に設けられている。また、室内出口側温度センサ19は、下部パス11bにおいて、冷房運転時における出口の近傍ではなく、入口と出口との中間に設けられている。
【0037】
このように、室内出口側温度センサ19は、冷房運転時における室内熱交換器11の中間に設けられているため、室内出口側温度センサ19によって検出された室内出口側温度Teout[℃]は、冷房運転時に室内熱交換器11から流出する実際の温度よりも低い値となる。このため、室内出口側温度に基づいて算出される過熱度の値は、実際の過熱度よりも低い。よって、制御部30は、過熱度を目標過熱度に近づけようとする際、膨張部10の開度を過剰に絞り、過熱度が過剰に高くなるおそれがある。このため、
図6に示す室内熱交換器11を有する室内機13は、過熱制御モードに不適である可能性がある。
【0038】
ここで、室内制御装置17は、自身の室内機13が過熱制御モードに不適か否かの情報を記憶している。室外制御装置16は、通電時において、室内制御装置17と常に情報の送受信を行っており、過熱制御モードに不適な室内機13が冷房運転を行おうとする場合、直ちに認識する。
【0039】
図2に示すように、切替手段33は、判定手段32によって、過熱制御モードに不適な室内機13が存在すると判定された場合、過熱制御モードから過冷却制御モードに切り替えるものである。過熱制御モードに不適な室内機13が存在する場合にのみ、過冷却制御モードが実施される。
【0040】
(運転モード、冷房運転)
次に、空気調和機100の運転モードについて
図1を用いて説明する。先ず、冷房運転について説明する。冷房運転において、圧縮機1に吸入された冷媒は、圧縮機1によって圧縮されて高温高圧のガス状態で吐出する。圧縮機1から吐出された高温高圧のガス状態の冷媒は、流路切替装置2を通過して、凝縮器として作用する室外熱交換器3に流入し、室外熱交換器3において、室外送風機4によって送られる室外空気と熱交換されて凝縮液化する。凝縮された液状態の冷媒は、各室内機13に流入する。
【0041】
各室内機13において、冷媒は、それぞれの膨張部10に流入し、膨張部10において膨張及び減圧されて低温低圧の気液二相状態の冷媒となる。そして、気液二相状態の冷媒は、蒸発器として作用する室内熱交換器11に流入し、室内熱交換器11において、室内送風機12によって送られる室内空気と熱交換されて蒸発ガス化する。このとき、室内空気が冷やされ、室内において冷房が実施される。蒸発した低温低圧のガス状態の冷媒は、流路切替装置2を通過して、圧縮機1に吸入される。
【0042】
(運転モード、暖房運転)
次に、暖房運転について説明する。暖房運転において、圧縮機1に吸入された冷媒は、圧縮機1によって圧縮されて高温高圧のガス状態で吐出する。圧縮機1から吐出された高温高圧のガス状態の冷媒は、流路切替装置2を通過して、各室内機13に流入する。冷媒は、凝縮器として作用するそれぞれの室内熱交換器11に流入し、室内熱交換器11において、室内送風機12によって送られる室内空気と熱交換されて凝縮液化する。このとき、室内空気が暖められ、室内において暖房が実施される。
【0043】
凝縮された液状態の冷媒は、膨張部10に流入し、膨張部10において膨張及び減圧されて低温低圧の気液二相状態の冷媒となる。そして、気液二相状態の冷媒は、蒸発器として作用する室外熱交換器3に流入し、室外熱交換器3において、室外送風機4によって送られる室外空気と熱交換されて蒸発ガス化する。蒸発した低温低圧のガス状態の冷媒は、流路切替装置2を通過して、圧縮機1に吸入される。
【0044】
(制御部30の動作)
図7は、本発明の実施の形態1に係る空気調和機100の動作を示すフローチャートである。次に、制御部30の動作について説明する。室内機13から冷房運転開始の指令が送信されて圧縮機1の運転が開始されると、制御部30は、全ての膨張部10を初期開度に制御する(ステップST1)。初期開度は、室内機13の能力帯及び外気温度の条件等に応じて設定される。そして、固定時間t1が経過するか否かが判断される(ステップST2)。固定時間t1が経過するまで、ステップST2が繰り返される(ステップST2のNo)。固定時間t1が経過すると(ステップST2のYes)、起動直後から安定したとされ、過熱制御モードに移行する(ステップST3)。
【0045】
そして、判定手段32によって、自身の室内機13が過熱制御モードに不適か否かが記憶された情報が室内制御装置17から読み出されて、過熱制御モードに不適な室内機13が存在するか否かが判定される(ステップST4)。過熱制御モードに不適な室内機13が存在しないと判定された場合(ステップST4のNo)、SHm_e−1〜n−a1≦SH_e−1〜n≦SHm_e−1〜n+a2を満たすか否かが判断される(ステップST5)。SHm_e−1〜n−a1≦SH_e−1〜n≦SHm_e−1〜n+a2を満たさない場合(ステップST5のNo)、An=Anf+ΔS1nの数式を用いて過熱度が制御される(ステップST6)。
【0046】
そして、室内機13の運転指令が継続されているか否かが判断される(ステップST7)。室内機13の運転指令が継続される場合(ステップST7のYes)、所定時間t2が経過した後(ステップST8)、ステップST4に戻る。また、ステップST7において、室内機13の運転指令が継続されない場合(ステップST7のNo)、制御が終了する。ここで、ステップST5において、SHm_e−1〜n−a1≦SH_e−1〜n≦SHm_e−1〜n+a2を満たす場合(ステップST5のYes)、ステップST7に進む。
【0047】
一方、ステップST4において、過熱制御モードに不適な室内機13が存在すると判定された場合(ステップST4のYes)、Scm_hex−b1≦SC_hex≦Scm_hex+b2を満たすか否かが判断される(ステップST9)。Scm_hex−b1≦SC_hex≦Scm_hex+b2を満たさない場合(ステップST9のNo)、ΣA=ΣAf+ΔS2の数式及びAn=ΣA×Cnの数式を用いて過冷却度が制御される(ステップST10及びステップST11)。
【0048】
そして、室内機13の運転指令が継続されているか否かが判断される(ステップST12)。室内機13の運転指令が継続される場合(ステップST12のYes)、所定時間t3が経過した後(ステップST13)、ステップST4に戻る。また、ステップST12において、室内機13の運転指令が継続されない場合(ステップST12のNo)、制御が終了する。ここで、ステップST9において、Scm_hex−b1≦SC_hex≦Scm_hex+b2を満たす場合(ステップST9のYes)、ステップST12に進む。
【0049】
本実施の形態1によれば、過熱制御モードに不適な室内機13が存在するとき、過熱制御モードから過冷却制御モードに切り替える。このため、過熱制御モードに不適な室内機13が存在しないときは、過熱制御モードで制御され、過熱制御モードに不適な室内機13が存在するときに限り、過冷却制御モードで制御される。従って、過熱制御モードで得られる効果を極力維持しつつ、設計変更を伴わない。
【0050】
ここで、過熱制御モードで得られる効果とは、前述の如く、室内機13に対応する膨張部10の開度を個別に制御することができ、各室内機13に適した過熱度に制御することができることをいう。生産性等の種々の事情によって、室内出口側温度センサ19が、室内熱交換器11の入口と出口との中間側に若干寄った位置に取り付けられている場合でも、過冷却モードに変更するため、わざわざ設計変更をする必要がない。
【0051】
また、空気調和機100は、冷房運転時における室内熱交換器11の出口側に流れる冷媒の温度を検出する室内出口側温度センサ19を更に備え、過熱制御モードに不適な室内機13は、室内出口側温度センサ19が、室内熱交換器11の入口と出口との中間に設けられている室内機13である。このように、過熱制御モードに不適な室内機13が存在しても、過熱制御モードで得られる効果を極力維持しつつ、設計変更を伴わない。
【0052】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2に係る空気調和機200を示す回路図である。本実施の形態2は、空気調和機200が格納キット20を備えている点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態2では、実施の形態1と同一の部分は同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0053】
図8に示すように、格納キット20は、複数の膨張部10及び膨張制御装置21を有している。即ち、膨張部10は、室内機13の内部に設けられていない。格納キット20の膨張部10は、それぞれ室内機液側延長配管23−1〜23−nによって、室内機13に接続されている。膨張制御装置21は、室外制御装置16及び室内制御装置17と通信を行い、各種アクチュエータの動作状況及びセンサからの情報等を共有することができる。本実施の形態2のように、膨張部10が、室内機13の内部ではなく、格納キット20の内部に格納されていても、実施の形態1と同様に、過熱制御モード及び過冷却制御モードが実施される。従って、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0054】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る空気調和機300を示す回路図である。本実施の形態3は、複数の膨張部10が室外機7に設けられている点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態3では、実施の形態1と同一の部分は同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0055】
図9に示すように、複数の膨張部10が、室外機7の内部において、冷房運転時に液側延長配管接続用バルブ5の下流となる位置に設けられている。即ち、膨張部10は、室内機13の内部に設けられていない。また、ガス側延長配管9は、室外機7の内部においてn本に分岐して、室内機13に接続されている。本実施の形態3のように、膨張部10が、室内機13の内部ではなく、室外機7の内部に格納されていても、実施の形態1と同様に、過熱制御モード及び過冷却制御モードが実施される。従って、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0056】
実施の形態4.
図10は、本発明の実施の形態4に係る空気調和機400を示す回路図である。本実施の形態4は、空気調和機100が室外中間温度センサ22を備えている点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態4では、実施の形態1と同一の部分は同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0057】
図10に示すように、室外中間温度センサ22は、室外熱交換器3の中間部に設けられ、室外熱交換器3の中間部に流れる冷媒の室外中間温度を検出するセンサである。なお、空気調和機400は、圧力センサ14を有していない。算出手段31は、室外中間温度センサ22によって検出された室外中間温度に基づいて、高圧飽和温度Ct[℃]を直接算出する。この場合、圧力から一旦飽和温度を算出することなく、直接高圧飽和温度を算出することができるため、制御部30の処理速度を向上させることができる。