【文献】
「チタンブラック」,[online],掲載日不明,三菱マテリアル電子化成株式会社,インターネット<URL:https://www.mmc−ec.co.jp/biz/titan_black/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1乃至
図4Bを参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。まず
図1乃至
図2Bにより、本実施の形態における有機EL表示装置50全体について説明する。
【0020】
有機EL表示装置
図1に示すように、有機EL表示装置50は、光を放射する有機EL素子40と、有機EL素子40に対向するよう配置されたカラーフィルタ10と、を備えている。有機EL素子40とカラーフィルタ10との間は、例えば樹脂接着材からなる封止材49により封止されている。
図1に示す有機EL表示装置50において、カラーフィルタ10は、有機EL素子40からの光が放射される側、すなわち観察者側(ユーザー側)に配置されている。
【0021】
有機EL素子
はじめに有機EL素子40について説明する。
図1に示すように、有機EL素子40は、有機EL素子用基板47と、有機EL素子用基板47上に設けられ、光を放射する有機EL層44と、を有している。なお図示はしないが、有機EL素子用基板47上には、有機EL層44を駆動するためのトランジスタなどの駆動素子が形成されている。すなわち有機EL素子用基板47は、有機EL層44を駆動するための基板、いわゆるTFT基板となっている。
【0022】
本実施の形態において、有機EL素子40の有機EL層44において発光した光は、有機EL素子用基板47が位置する側とは反対の側へ取り出される。すなわち、有機EL層44からの光は、TFT基板を構成する有機EL素子用基板47の上方から取り出される。このように本実施の形態における有機EL表示装置50は、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示装置となっている。
【0023】
有機EL素子用基板47は、有機EL層44を支持するとともに、外気を遮断することができるものであれば特に限定されるものではないが、安定性、耐久性等が良好なことから、ガラスや透明ポリマーであることが好ましい。
【0024】
図1に示すように、有機EL層44は、陽極41と、陰極43と、陽極41と陰極43の間に設けられた有機発光層42とを有している。陽極41としては、効率良く正孔を注入できる材料であれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀または金およびそれらの合金等を使用することが好ましい。一方、陰極43としては、電子を注入しやすく、かつ光透過性の良好な材料が用いられており、例えば酸化リチウム、炭酸セシウム等が用いられる。有機発光層42としては、所定の電圧を印加することにより発光する蛍光性有機物質を含有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、キノリノール錯体、オキサゾール錯体、各種レーザー色素、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられる。
【0025】
なお、陽極41から注入された正孔を有機発光層42に効率的に輸送するため、陽極41と有機発光層42との間に正孔輸送層(図示せず)が設けられていてもよい。正孔輸送層の構成材料として、例えばテトラフェニルベンジジンが挙げられる。さらに、陽極41と正孔輸送層との間に正孔注入層(図示せず)が設けられていてもよい。また、有機発光層42と陰極43との間に、電子注入層(図示せず)や電子輸送層(図示せず)が設けられていてもよい。また、水分を遮蔽するバリア膜(図示せず)が有機EL層44上に設けられていてもよい。
【0026】
カラーフィルタ
次に、カラーフィルタ10について説明する。
図1に示すように、カラーフィルタ10は、観察者側の面11aおよび有機EL素子側の面11bを有する基材11と、基材11上に設けられたブラックマトリクス層12と、ブラックマトリクス層12間に設けられた複数色の着色部13,14,15および透過率調整部16と、を備えている。ブラックマトリクス層12、着色部13,14,15および透過率調整部16は、基材11の有機EL素子側の面11b上に設けられている。
【0027】
なお図示はしないが、基材11の観察者側の面11a上に、外光の反射を抑制するための反射防止膜が設けられていてもよい。反射防止膜の具体的な形態が特に限られることはなく、所望の反射防止効果を発現することができる様々な膜が用いられ得る。このような反射防止膜を基材11の観察者側の面11a上に形成する方法が特に限られることはなく、反射防止フィルムを接着する方法や、反射防止用材料を塗布する方法などが適宜用いられる。
【0028】
図2Aおよび
図2Bは、基材11の法線方向に沿って見た場合のカラーフィルタ10を示す平面図である。具体的には、
図2Aは、
図1の有機EL表示装置50のカラーフィルタ10を矢印IIA−IIA方向から見た図であり、
図2Bは、
図1の有機EL表示装置50の有機EL素子40を矢印IIB−IIB方向から見た図である。
図2Bに示すように、有機EL層44は、各々が有機EL素子40の単位画素に対応する複数の単位有機EL層44aからなっており、各単位有機EL層44aには駆動用配線48が接続されている。また
図2Aに示すように、ブラックマトリクス層12は、複数の開口部12aを区画するよう、マトリックス状のパターンを有している。ブラックマトリクス層12によって画定される複数の開口部12aがそれぞれ、有機EL素子40の単位画素に対応している。また、上述の着色部13,14,15および透過率調整部16は、基材11の法線方向に沿って見た場合に開口部12aと重なるよう設けられている。
【0029】
カラーフィルタ10のうち複数の着色部13,14,15および透過率調整部16を含む領域は、有機EL素子40から放射された光を透過させる領域である。従って、複数の着色部13,14,15および透過率調整部16を含む領域には、有機EL素子40から放射された光に基づく映像が表示されることになる。以下の説明において、カラーフィルタ10のうち複数の着色部13,14,15および透過率調整部16を含む領域のことを「表示領域D」とも称する。また、表示領域Dの周縁に位置する、ブラックマトリクス層12が設けられている領域のことを、「額縁領域P」とも称する。
図1に示すように、有機EL素子40のうち、基材11の法線方向から見た場合に額縁領域Pと重なる部分には、有機EL層44が設けられていなくてもよい。
【0030】
(ブラックマトリクス層)
ブラックマトリクス層12は、光を遮蔽する層となっている。ブラックマトリクス層12の材料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色着色材を含有する樹脂組成物等が挙げられる。この樹脂組成物に用いられる樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂が使用される。
【0031】
(着色部)
複数色の着色部13,14,15はそれぞれ、特定の波長域の光のみを選択的に透過させる層となっている。例えば複数色の着色部13,14,15は、赤色の波長域の光を選択的に透過させる赤色着色部13と、緑色の波長域の光を選択的に透過させる緑色着色部14と、青色の波長域の光を選択的に透過させる青色着色部15と、からなっている。赤色着色部13、緑色着色部14および青色着色部15は、各色の顔料や染料等の着色材を感光性樹脂中に分散または溶解させることにより形成されている。
【0032】
このうち赤色着色部13に用いられる着色材としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
緑色着色部14に用いられる着色材としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。これらの顔料もしくは染料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
青色着色部15に用いられる着色材としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料、トリアリールメタン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
なお、複数色の着色部が上記の赤色着色部13、緑色着色部14および青色着色部15に限られることは無く、その他の色の着色部、例えば黄色着色部が含まれていてもよい。
【0033】
図3は、各着色部13,14,15および透過率調整部16における透過スペクトルS
R,S
G,S
BおよびS
Aを示す図である。
図3に示すように、赤色着色部13の透過スペクトルS
Rは、赤色の波長域にピークを有するスペクトルとなっている。同様に、緑色着色部14および青色着色部15の透過スペクトルS
G,S
Bはそれぞれ、緑色および青色の波長域にピークを有するスペクトルとなっている。
【0034】
(透過率調整部)
一方、透過率調整部16は、可視光域の光を広域にわたって適切に透過させる部分となっている。例えば透過率調整部16は、透過率調整部16の透過スペクトルS
Aにおける、波長380〜780nmの範囲内での平均透過率が、30〜60%の範囲内となるよう構成されている。透過率調整部16の平均透過率を30%以上とすることにより、カラーフィルタ10全体としての透過率を向上させることができる。これによって、有機EL素子40の発光強度を過度に高めることなく有機EL表示装置50の輝度を増加させることができる。このことにより、有機EL素子40の素子寿命を長くすることができる。また、透過率調整部16の平均透過率を60%以下とすることにより、有機EL表示装置50のカラーフィルタ10に到達した外光が、高い強度を保ったまま再び観察者側に戻ってしまうことを防ぐことができる。これによって、表示領域Dにおける外光の反射を抑制することができ、このことにより、コントラストの低下や映り込みの発生を抑制することができる。ここで「平均透過率」とは、対象となる要素の透過スペクトルを波長380〜780nmの範囲内にわたって平均することにより得られる値である。例えば透過率調整部16の平均透過率とは、
図3Aに示すような透過率調整部16の透過スペクトルS
Aを可視光域全域にわたって平均することにより得られる値である。透過率調整部16の平均透過率を測定するための測定器としては、例えばオリンパス社製のOSP−2000を用いることができる。
【0035】
ところで上述のように、電源OFF時の有機EL表示装置50の美観を向上させるためには、単に表示領域Dにおける外光の反射を抑制することだけでなく、表示領域Dと額縁領域Pとの間の境界が目立たないようにすることも求められる。ここで上述のように、額縁領域Pにはブラックマトリクス層12が設けられている。また、有機EL素子40のうち額縁領域Pと重なる部分には、外光を反射させる要因となる金属製の陽極41が設けられていないことがある。従って一般に、額縁領域Pにおける外光の反射率は極めて小さくなっている。すなわち、電源OFF時の額縁領域Pの色味はほぼ黒色であると言える。一方、表示領域Dは映像を表示するための領域である。従って、電源OFF時の表示領域Dの外光の反射率を、額縁領域Pと同等のレベルにまで低くすることは困難である。このため、表示領域Dと額縁領域Pとの間の境界が目立たないようにするためには、電源OFF時の表示領域Dを透過した後に有機EL表示装置50によって反射されて再び観察者側に戻る外光(以下、「表示領域Dからの反射光」とも称する)の色味を、可能な限り無くすことが重要になる。このような背景を考慮し、本件発明者らは、D65光源からの光を表示領域Dに照射することにより生じる表示領域Dからの反射光の、L
*a
*b
*色空間における座標が、−2<a
*<+2、−5<b
*<+5、かつL<10となるよう、表示領域Dの各着色部13,14,15および透過率調整部16を構成することを提案する。なお、各着色部13,14,15の光学特性は主に、電源ON時の光学特性に基づいて、すなわち有機EL表示装置50の映像に対して求められる色味などの光学特性に基づいて決定される。従って、電源OFF時の表示領域Dからの反射光の所望の光学特性を実現するために調整可能な部分は、主に透過率調整部16である。
【0036】
ところで、有機EL表示装置50からの光の色味が観察者にどのように認識されるかは、人間の目の網膜にある、赤色、緑色および青色の三原色をそれぞれ感じる錐体の分光感度に依存する。ここで、緑色の錯体および赤色の錯体の感度は、橙色付近で大きくオーバーラップしている。このような人の目の特性を考慮すると、光の強度が同等である場合、青色の光源に比べて、緑色や赤色の光源の方が、人の目には強く検出されることになる。従って、表示領域Dからの反射光のa
*およびb
*をゼロに近づけるためには、透過率調整部16を、青色の光に比べて緑色や赤色の光を透過させにくいように構成することが有効であると考えられる。このような点を考慮し、本件発明者らは、透過率調整部16の透過スペクトルS
Aにおける、波長400〜500nmの範囲内での透過率の最大値をTmax(%)とし、波長600〜700nmの範囲内での透過率の最小値をTmin(%)とするとき、{Tmax−Tmin}が5〜20%の範囲内となるよう、透過率調整部16を構成することを提案する。これによって、表示領域Dからの反射光の色味を可能な限り無くすことができ、このことにより、表示領域Dと額縁領域Pとの間の境界が目立たないようにすることができる。
図3Aにおいては、波長400〜500nmの範囲が、符号R1が付された矢印によって表されており、波長600〜700nmの範囲が、符号R2が付された矢印によって表されている。
【0037】
好ましくは、D65光源からの光を表示領域Dおよび額縁領域Pに照射することにより生じる、表示領域Dからの反射光と額縁領域Pからの反射光との間の、L
*a
*b
*色空間における色差ΔEabが、3以下になるよう、表示領域Dおよび額縁領域Pが構成されている。これによって、表示領域Dと額縁領域Pとの間の境界をより目立たなくすることができる。
【0038】
表示領域Dからの反射光および額縁領域Pからの反射光の、L
*a
*b
*色空間における座標を測定するための測定器としては、例えばコニカミノルタ製のCM−2500dを用いることができる。なお、L
*a
*b
*色空間における座標は、カラーフィルタ10が有機EL素子40と組み合わされて有機EL表示装置50を構成している状態であって、かつ電源OFFの状態で測定されてもよい。若しくは、カラーフィルタ10のうち有機EL素子40が配置される側に、有機EL素子40の代わりに適切な反射板を配置した状態で測定されてもよい。
【0039】
(透過率調整用材料)
Tmax(%)およびTmin(%)に関する上述の条件が満たされる限りにおいて、透過率調整部16を構成する透過率調整用材料16aが特に限られることはない。例えば、透過率調整用材料16aの一例として、バインダー材と、バインダー材に分散された、窒化チタンを含む着色材と、を有するものを挙げることができる。窒化チタンの透過スペクトルS
TiNの一例を
図3Bに示す。
図3Aおよび3Bに示すように、窒化チタンの透過スペクトルS
TiN、および窒化チタンを含む透過率調整部16の透過スペクトルS
Aにおいては、波長400〜500nmの範囲内に透過率の最大値が位置している。また透過スペクトルS
TiNおよびS
Aにおいては、波長400〜500nmの範囲内の最大値よりも長波長側に向かうにつれて透過率が単調に減少している。
【0040】
なお
図3Bには、参考として、ブラックマトリクス層に含まれる着色材として一般に用いられているカーボンブラックの透過スペクトルS
carbonが点線で示されている。また
図3Bには、青色の着色材と紫色の着色材とを65:35の比率で混合した材料の透過スペクトルS
B:V=65:35が一点鎖線で示されている。透過スペクトルS
carbonおよびS
B:V=65:35のいずれにおいても、波長600〜700nmの範囲内における透過率が、波長400〜500nmの範囲内における透過率に対して比較的に大きくなっている。従って、カーボンブラックや、青色の着色材と紫色の着色材との混合物を用いて透過率調整部16を構成した場合、電源OFF時の表示領域Dの色味が、赤味を帯びたものになることが考えられる。
【0041】
透過率調整用材料16aのバインダー材が特に限られることはなく、高い透過率を有する透明な材料が適宜用いられ得る。製造の容易さを考慮すると、バインダー材として、透光性を有する感光性樹脂が用いられることが好ましい。感光性樹脂としては、ネガ型感光性樹脂およびポジ型感光性樹脂のいずれも用いることができる。
用いられるネガ型感光性樹脂が特に限定されることはなく、一般的に使用されるネガ型感光性樹脂を用いることができる。例えば、架橋型樹脂をベースとした化学増幅型感光性樹脂、具体的にはポリビニルフェノールに架橋剤を加え、さらに酸発生剤を加えた化学増幅型感光性樹脂等が挙げられる。また、アクリル系ネガ型感光性樹脂として、紫外線照射によりラジカル成分を発生する光重合開始剤と、分子内にアクリル基を有し、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する成分と、その後の現像により未露光部が溶解可能となる官能基(例えば、アルカリ溶液による現像の場合は酸性基をもつ成分)とを含有するものを用いることができる。上記のアクリル基を有する成分のうち、比較的低分子量の多官能アクリル分子としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、テトラメチルペンタトリアクリレート(TMPTA)等が挙げられる。また、高分子量の多官能アクリル分子としては、スチレン‐アクリル酸‐ベンジルメタクリレート共重合体の一部のカルボン酸基部分にエポキシ基を介してアクリル基を導入したポリマーや、メタクリル酸メチル−スチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。
また、用いられるポジ型感光性樹脂が特に限定されることはなく、一般的に使用されるポジ型感光性樹脂を用いることができる。具体的には、ノボラック樹脂をベース樹脂とした化学増幅型感光性樹脂等が挙げられる。
【0042】
バインダー材中の窒化チタンの含有比率は、カラーフィルタ10における所望の透過率や透過スペクトルの形状に応じて適宜設定される。
【0043】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0044】
透過に関する作用
はじめに、有機EL素子40からの光がカラーフィルタ10を透過して出射される際の作用について、
図4Aを参照して説明する。
【0045】
図4Aには、有機EL層44の有機発光層42から白色光L
outが放射される様子が示されている。有機発光層42から放射された白色光L
outは、各着色部13,14,15および透過率調整部16に入射する。
【0046】
着色部13,14,15に入射した光はそれぞれ、赤色光L
out(R),緑色光L
out(G),青色光L
out(B)となって着色部13,14,15から出射される。一方、透過率調整部16に入射した光は、輝度調整光L
out(A)となって透過率調整部16から出射される。
【0047】
上述のように、透過率調整部16は、可視光域の光を広域にわたって適切に透過させる層となっている。具体的には上述のとおり、透過率調整部16は、透過率調整部16の透過スペクトルS
Aにおける、波長380〜780nmの範囲内での平均透過率が、30〜60%の範囲内となるよう構成されている。このため輝度調整光L
out(A)により、カラーフィルタ10から出射する光の強度を可視光域のほぼ全域にわたって増加させることができ、これによって、有機EL表示装置50の輝度を増加させることができる。
【0048】
反射に関する作用
次に、カラーフィルタ10を透過した外光が、有機EL層44によって反射され、その後にカラーフィルタ10を再び透過して観察者に到達する際の作用について、
図4Bを参照して説明する。
【0049】
図4Bに示す例において、白色光からなる外光L
inがカラーフィルタ10に入射される様子が示されている。カラーフィルタ10に入射した外光L
inは、はじめに各着色部13,14,15および透過率調整部16に入射する。その後、各着色部13,14,15および透過率調整部16の透過スペクトルに応じてフィルタされた光が、有機EL層44へ向かって各着色部13,14,15および透過率調整部16から出射する。各着色部13,14,15および透過率調整部16から出射した光は、
図4Bに示すように、有機EL層44の陽極41により反射されて再び各着色部13,14,15および透過率調整部16に入射する。再び各着色部13,14,15および透過率調整部16に入射した光は、各着色部13,14,15および透過率調整部16の透過スペクトルに応じてフィルタされた後、反射光L
ref(R),反射光L
ref(G),反射光L
ref(B)および反射光L
ref(A)となって着色部13,14,15および透過率調整部16から出射する。
【0050】
反射光L
ref(R),反射光L
ref(G),反射光L
ref(B)および反射光L
ref(A)は、カラーフィルタ10に入射した外光L
inが各着色部13,14,15および透過率調整部16をそれぞれ2回透過した後の光となっている。一般に、各着色部13,14,15の平均透過率は、透過率調整部16の平均透過率に比べて低くなっている。このため、反射光L
ref(R),反射光L
ref(G),反射光L
ref(B)の強度は、反射光L
ref(A)の強度に比べて無視できる程度の強度となっている。一方、透過率調整部16の平均透過率が例えば50%となっている場合、反射光L
ref(A)の強度は、最大で(0.5)
2×L
in=0.25L
inとなっている。このように、透過率調整部16に入射した外光L
inは、約1/4の強度にまで減衰させられた後に透過率調整部16から出射する。このため、外光に起因するコントラスト低下や映り込みを抑制することができる。
【0051】
また上述のように、透過率調整部16は、透過率調整部16の透過スペクトルS
Aにおける、波長400〜500nmの範囲内での透過率の最大値Tmax(%)と、波長600〜700nmの範囲内での透過率の最小値Tmin(%)との差が5〜20%の範囲内となるよう、構成されている。これによって、有機EL表示装置50の電源OFF時の表示領域Dからの反射光が色味を帯びることを抑制することができる。このことにより、電源OFF時、表示領域Dと額縁領域Pとの間の境界をより目立たなくすることができる。
【0052】
第1の比較の形態
次に、本実施の形態の効果を第1の比較の形態と比較して説明する。
図5Aおよび
図5Bに示す第1の比較の形態によるカラーフィルタ100は、透過率調整部101がカーボンブラックを含む点が異なるのみであり、他の構成は、
図1乃至
図4Bに示す本実施の形態におけるカラーフィルタ10と略同一である。
図5Aおよび
図5Bに示す第1の比較の形態において、
図1乃至
図4Bに示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
電源ON時、透過率調整部101に入射した白色光L
outは、輝度調整光L
out’(A)となって透過率調整部101から出射する(
図5A参照)。また、電源OFF時、透過率調整部101に入射した外光L
inは、有機EL層44の陽極41によって反射された後に反射光L
ref’(A)となって透過率調整部101から出射する(
図5B参照)。ここで上述のように、カーボンブラックの透過スペクトルS
carbonにおいては、波長600〜700nmの範囲内における透過率が、波長400〜500nmの範囲内における透過率に対して比較的に大きくなっている。このため、有機EL素子40の電源OFF時、表示領域Dからの反射光が赤味を帯びることが考えられる。
【0054】
これに対して本実施の形態によれば、赤味を抑制するよう透過率調整部16を構成しているため、有機EL素子40の電源OFF時、表示領域Dからの反射光が赤味を帯びることを防ぐことができる。このことにより、電源OFF時、表示領域Dと額縁領域Pとの間の境界をより目立たなくすることができる。
【0055】
第2の比較の形態
次に、本実施の形態の効果を第2の比較の形態と比較して説明する。
図6Aおよび
図6Bに示す第1の比較の形態によるカラーフィルタ110は、基材11の観察者側の面11a上に円偏光板111が設けられている点が異なるのみであり、他の構成は、
図5Aおよび
図5Bに示す第1の比較の形態におけるカラーフィルタ100と略同一である。
図6Aおよび
図6Bに示す第2の比較の形態において、
図1乃至
図4Bに示す第1の実施の形態または
図5Aおよび
図5Bに示す第1の比較の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
第2の比較の形態において、円偏光板111は、偏光フィルムと位相差フィルムとを積層させることにより形成されている。位相差フィルムは、位相差が光の波長の1/4になるよう制御されている。この場合、カラーフィルタ110に入射した外光L
inは、はじめに偏光フィルムによって直線偏光となり、次に、位相差フィルムによって円偏光となる。その後、有機EL層44の陽極41によって反射される際に円偏光状態が反転する。その後、反射された光が再び位相差フィルムを通過すると、この光は、カラーフィルタ110に入射した時に比べて90度傾いた直線偏光となる。従って、この直線偏光は、再び偏光フィルムに到達する際に吸収される。
【0057】
第2の比較の形態によれば、上述のような特性を有する円偏光板111を設けることにより、反射光L
ref”(R),反射光L
ref”(G),反射光L
ref”(B)および反射光L
ref”(A)の強度を小さくすることができる(
図6B参照)。しかしながら第2の比較の形態によれば、
図6Aに示すように、有機EL層44の有機発光層42から放射される白色光L
outの強度も、円偏光板111を通る前後で1/2に減衰されてしまう(
図6AのL
out”(R),L
out”(G),L
out”(B)およびL
out”(A)参照)。
【0058】
これに対して本実施の形態によれば、カラーフィルタ10全体としての反射率を抑制しながら、カラーフィルタ10全体としての透過率を第2の比較の形態の場合よりも高くすることができる。
【0059】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0060】
(透過率調整部の変形例)
上述の本実施の形態においては、透過率調整部16を構成するための透過率調整用材料16aが、各着色部13,14,15と同様に、基材11の法線方向に沿って見た場合に開口部12aと重なる部分にのみ設けられている例を示した。しかしながら、カラーフィルタ10の表示領域Dおよび額縁領域Pにおける適切な光学特性を実現することができる限りにおいて、透過率調整用材料16aが設けられる場所が特に限られることはない。例えば透過率調整用材料16aは、
図7乃至
図9に示すように、表示領域Dの全域にわたって設けられていてもよい。また透透過率調整用材料16aは、
図7乃至
図9に示すように、さらに額縁領域Pにも設けられていてもよい。
【0061】
図7乃至
図9のいずれの例においても、カラーフィルタ10には、基材11の法線方向に沿って見た場合に、着色部13,14,15とは重ならないが透過率調整用材料16aとは重なる開口部12aを含む部分、すなわち透過率調整部16が存在している。このため、カラーフィルタ10から出射する光の強度を可視光域のほぼ全域にわたって増加させることができ、これによって、有機EL表示装置50の輝度を増加させることができる。また、透過率調整用材料16aを適切に選択することにより、有機EL表示装置50の電源OFF時の表示領域Dからの反射光が色味を帯びることを抑制することができる。このことにより、電源OFF時、表示領域Dと額縁領域Pとの間の境界をより目立たなくすることができる。
【0062】
図7に示すカラーフィルタ10を製造する工程においては、はじめに、基材11の面11b上にブラックマトリクス層12を形成し、次に、ブラックマトリクス層12間の開口部12aに各着色部13,14,15を形成し、その後、基材11の面11b上、ブラックマトリクス層12上および各着色部13,14,15上に透過率調整用材料16aを設ける。
図8に示すカラーフィルタ10を製造する工程においては、はじめに、基材11の面11b上に透過率調整用材料16aを設け、次に、透過率調整用材料16a上にブラックマトリクス層12を形成し、その後、ブラックマトリクス層12間の開口部12aに各着色部13,14,15を設ける。
図9に示すカラーフィルタ10を製造する工程においては、はじめに、基材11の面11b上にブラックマトリクス層12を形成し、次に、基材11の面11b上およびブラックマトリクス層12上に透過率調整用材料16aを設け、その後、透過率調整用材料16a上に各着色部13,14,15を設ける。いずれの場合も、各着色部13,14,15は、基材11の法線方向に沿って見た場合に、着色部13,14,15とは重ならないが透過率調整用材料16aとは重なる開口部12aが一定の比率で存在するよう形成される。これによって、カラーフィルタ10の表示領域Dの透過率を調整するための透過率調整部16を確保することができる。
【0063】
(有機EL表示装置の変形例)
また上述の本実施の形態においては、有機EL表示装置50がトップエミッション型である例を示した。すなわち、有機EL層44からの光が、TFT基板を構成する有機EL素子用基板47の上方から取り出される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図示はしないが、有機EL表示装置50は、有機EL層44Aから放射される光が有機EL素子用基板47を透過してカラーフィルタ10に到達するよう、構成されていてもよい。すなわち有機EL表示装置50は、いわゆるボトムエミッション型であってもよい。
【0064】
(その他の変形例)
また上述の本実施の形態においては、ブラックマトリクス層12がマトリックス状のパターンを有する例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、ブラックマトリクス層12がその他のパターンを有していてもよい。例えばブラックマトリクス層12がストライプ状のパターンを有していてもよい。この場合、ブラックマトリクス層12間に設けられる着色部13,14,15および透過率調整部16もストライプ状に形成される。
また着色部13,14,15および透過率調整部16のパターンが上述のマトリックス状やストライプ状に限られることはなく、様々なパターンが採用され得る。例えば、カラーフィルタ10における外光の反射を位置や光波長に応じて選択的に防止するという観点から、着色部13,14,15および透過率調整部16のパターンが決定されてもよい。
【0065】
なお、上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。