(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625319
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】車両用のエアバッグの充填を制御する方法、及び、エアバッグ制御装置、及び、エアバッグシステム、及び、コンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
B60R 21/263 20110101AFI20191216BHJP
【FI】
B60R21/263
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-168320(P2014-168320)
(22)【出願日】2014年8月21日
(65)【公開番号】特開2015-40043(P2015-40043A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2017年8月18日
(31)【優先権主張番号】10 2013 216 583.8
(32)【優先日】2013年8月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ コラチェク
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ フライエンシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン アントニオ ダデッタ
【審査官】
森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−030367(JP,A)
【文献】
特開平11−268605(JP,A)
【文献】
特開2006−193036(JP,A)
【文献】
特開平09−301115(JP,A)
【文献】
特開平07−257315(JP,A)
【文献】
特開平11−165608(JP,A)
【文献】
特表2003−504272(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0172157(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)用のエアバッグ装置(104)の充填を制御する方法(300)であって、
前記方法(300)は、
前記エアバッグ装置(104)のエアバッグ(106)への界面に、前記エアバッグ装置(104)のガス発生器(108)のバルブ(200)が配置されており、ガスのメインボリュームが、第1のガス質量流として、前記ガス発生器(108)から前記バルブ(200)を通して前記エアバッグ(106)へ流れた後に、前記バルブ(200)を閉鎖するステップ(304)と、
ガスの残留ボリュームを、前記第1のガス質量流よりも小さい第2のガス質量流(214)として、前記ガス発生器(108)から前記バルブ(200)を通して前記エアバッグ(106)へ導入するために、前記バルブ(200)を開放するステップ(308)と
を含み、
前記閉鎖するステップ(304)を、前記エアバッグ(106)の第1の充填状態を表す第1のセンサ信号(208)に基づいて行い、前記開放するステップ(308)を、前記エアバッグ(106)の第2の充填状態を表す第2のセンサ信号(212)に基づいて行い、前記第1の充填状態は、前記車両(100)の衝突から乗員を保護するのに適した充填量を表し、前記第2の充填状態は、前記第1の充填状態よりも低い充填率を表しており、前記衝突の過程においていったん排気された前記エアバッグ(106)に前記ガスの残留ボリュームを再充填して、前記衝突の後に前記乗員にかかる力学的エネルギの低減に必要なライドダウンスペースを形成するように構成されている、ことを特徴とする方法(300)。
【請求項2】
さらに、前記エアバッグ(106)の第1のガス圧(206)を求めて前記第1のセンサ信号(208)を形成するステップ(302)と、前記エアバッグ(106)の第2のガス圧(210)を求めて前記第2のセンサ信号(212)を形成するステップ(306)とを行う、請求項1記載の方法(300)。
【請求項3】
前記バルブ(200)を開放するステップ(308)において、前記ガスの残留ボリュームを前記エアバッグ(106)へ導入することにより、前記エアバッグ(106)の奥行きを5cmから10cmまでの範囲で増大させる、請求項1または2記載の方法(300)。
【請求項4】
車両(100)用のエアバッグ装置(104)の充填を制御するエアバッグ制御装置(114)であって、
前記エアバッグ制御装置(114)では、
前記エアバッグ装置(104)のエアバッグ(106)への界面に、前記エアバッグ装置(104)のガス発生器(108)のバルブ(200)が配置されており、
ガスのメインボリュームが、第1のガス質量流として、前記ガス発生器(108)から前記バルブ(200)を通して前記エアバッグ(106)へ流れた後に、前記バルブ(200)を閉鎖する、閉鎖装置(202)と、
ガスの残留ボリュームを、前記第1のガス質量流よりも小さい第2のガス質量流(214)として、前記ガス発生器(108)から前記バルブ(200)を通して前記エアバッグ(106)へ導入するために、前記バルブ(200)を開放する、開放装置(204)と
が設けられており、
前記閉鎖装置(202)は、前記エアバッグ(106)の第1の充填状態を表す第1のセンサ信号(208)に基づいて前記バルブ(200)を閉鎖し、前記開放装置(204)は、前記エアバッグ(106)の第2の充填状態を表す第2のセンサ信号(212)に基づいて前記バルブ(200)を開放するように構成され、前記第1の充填状態は、前記車両(100)の衝突から乗員を保護するのに適した充填量を表し、前記第2の充填状態は、前記第1の充填状態よりも低い充填率を表しており、前記衝突の過程においていったん排気された前記エアバッグ(106)に前記ガスの残留ボリュームを再充填して、前記衝突の後に前記乗員にかかる力学的エネルギの低減に必要なライドダウンスペースを形成することを特徴とするエアバッグ制御装置(114)。
【請求項5】
車両(100)の衝突時に乗員を保護するための、車両(100)用のエアバッグシステム(102)であって、
該エアバッグシステム(102)は、
エアバッグ(106)とガス発生器(108)とを含むエアバッグ装置(104)と、
前記エアバッグ装置(104)の前記ガス発生器(108)に接続された、請求項4記載のエアバッグ制御装置(114)と
を備える
ことを特徴とするエアバッグシステム(102)。
【請求項6】
さらに、前記エアバッグ(106)に接続されたセンサユニット(112)が設けられており、該センサユニット(112)は、前記エアバッグ(106)の第1の充填状態を表す第1のセンサ信号(208)と、前記エアバッグ(106)の第2の充填状態を表す第2のセンサ信号(212)とを形成して、前記エアバッグ制御装置(114)へ供給するように構成されている、請求項5記載のエアバッグシステム(102)。
【請求項7】
エアバッグ制御装置(114)上で実行される際に、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法(300)を実行するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のエアバッグの充填を制御する方法、及び、エアバッグ制御装置、及び、車両の衝突時に車両乗員を保護するためのエアバッグシステム、及び、相応のコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なパイロ技術によるエアバッグシステムは、今日のほぼ全ての車両に搭載されている。ここで、衝突時に乗員を拘束する本来のエアバッグには高温のガスが充填される。こうしたガスは、いわゆるガス発生器内のタブレット状の材料の燃焼作用から生じる。
【0003】
膨張過程は、材料の化学特性と(主として表面の)ジオメトリとに依存して定まる。また、材料の2回目のロード分に点火することにより、及び/又は、エアバッグ内もしくはガス発生器内のバルブを開放することにより、エアバッグを“アダプティブ”に適合化して、ガスを放出させたり、エアバッグ内にガスが導入されないようにしたりできる。
【0004】
これに代えて、所定圧力の容積のガスでエアバッグを充填する冷間ガスエアバッグを使用することもできる。
【0005】
さらに、冷間ガス要素とパイロ技術要素とを組み合わせたハイブリッドシステムも存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした背景技術から、本発明では、各独立請求項に記載された、車両用のエアバッグの充填を制御する方法、及び、エアバッグ制御装置、及び、車両の衝突時に乗員を保護するためのエアバッグシステム、及び、相応のコンピュータプログラム製品を提供する。有利な実施形態は各従属請求項及び以下の説明から得られる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、車両用のエアバッグ装置の充填を制御する方法において、エアバッグ装置のエアバッグへの界面に、エアバッグ装置のガス発生器のバルブが配置されており、ガスのメインボリュームが、第1のガス質量流として、ガス発生器からバルブを通してエアバッグへ流れた後に、バルブを閉鎖するステップと、ガスの残留ボリュームを、第1のガス質量流よりも小さい第2のガス質量流として、ガス発生器からバルブを通してエアバッグへ導入するために、バルブを開放するステップとを含むことにより解決される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例による、車両のエアバッグシステムの基本図である。
【
図2】Aは
図1のエアバッグ制御装置の第1の動作方式を示す基本図であり、Bは
図1のエアバッグ制御装置の第2の動作方式を示す基本図である。
【
図3】本発明の実施例による、車両のエアバッグシステムの制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
エアバッグ装置の冷間ガス発生器に接続された開閉可能なバルブを介して、エアバッグ及びガス発生器のガスボリュームを制御して、エアバッグ装置の保護機能を有利に改善することができる。こうしたバルブは、適切な蓄圧装置が設けられていれば、パイロ技術によるエアバッグシステムにもハイブリッドエアバッグシステムにも利用できる。
【0010】
本発明のコンセプトでは比較的小さな放出開口を利用できる。なぜなら、ガス質量流の精細なモデリングにより、過度に高い圧力が発生しないからである。
【0011】
本発明のアプローチにより、衝突後のガスの残留ボリュームを乗員保護機能の延長に有利に利用できる。なお、残留ガスボリュームは、小さな放出開口とエアバッグ材料の低い透過率による損失の小ささと組み合わされて、冷間ガス発生器もしくは他の蓄圧装置からのガスを適合化して節約的に扱うことで生じるものである。
【0012】
ガス発生器は、1次衝突の間だけでなくその後も、保護機能をシミュレートしている。このことは、1次衝突に続いて高い確率で1回もしくは複数回の別の衝突又は連鎖衝突(例えば車両が車道外へ滑走して複数回衝突するケース)が発生するような状況を考察する場合、特に重要である。本発明のコンセプトによれば、最初の衝突で傷害を被った乗員もしくは最初の衝突後に傷害が深刻化する危険が増す乗員を付加的なエアクッションによって保護できるので有利である。こうしたアダプティブ制御可能なエアクッションにより、乗員にかかる力学的エネルギの低減に必要なライドダウンスペース(生存空間とも称される)を最適に利用することができる。
【0013】
バルブの開放ステップは時間的に複数回連続して行うことができる。連続する2回のバルブ開放過程の間に、そのつどバルブを完全に又は部分的に閉鎖することができる。したがって、第2のガス質量流を平均して第1のガス質量流よりも小さいインパルス状のガス質量流とすれば、バルブを複数回開閉することも可能である。この手段は、予め定められた中程度のガス流を長い時間にわたって維持できるので、有利である。
【0014】
メインボリュームは残留ボリュームよりも大きくてよい。これにより、全体として、第1のガス質量流のエアバッグへの流入量は第2のガス質量流のエアバッグへの流入量よりも大きくなる。また、第2のガス質量流の導入期間中は、第1のガス質量流の導入期間中に比べ、時間単位当たりで平均して少量のガスがエアバッグへ流入することになる。
【0015】
本発明の制御方法は、特に、ガス発生器からエアバッグへのガスの供給に関連する。ガス発生器は所定圧力で冷間ガスを蓄積しているタンクであり、バルブの開放によってタンクからこれに接続されたエアバッグへ冷間ガスが流入する。バルブは遮断弁であり、ガス発生器からのガス流をエアバッグへ流入させるか又は流入を停止させ、ガス体積流の大きさを調整するように構成されている。特に、メインボリュームは、ガスの残留ボリュームよりも大きな体積を有する。ガス質量流は、予め定められたバルブの開口断面積に依存する予め定められた時間範囲において、ガス発生器からエアバッグへ流入するガスボリュームの大きさを表している。ガス質量流が大きくなるにつれて、エアバッグの膨張も迅速に行われる。エアバッグはできる限りガス密の適切なプラスティック材料から形成されており、複数の小さな放出開口を有する。各放出開口を介して、第1のガス質量流としてエアバッグへ導入されたガスメインボリュームが、保護すべき車両乗員の身体がエアバッグに乗りかかったことによる圧力上昇に基づいて、少なくとも部分的にエアバッグから放出され、その後、本発明にしたがってバルブが開放されることにより、ガスの残留ボリュームが第2のガス質量流としてエアバッグに導入され、ソフトかつ部分的な再膨張を生じさせることができる。
【0016】
本発明の方法の有利な実施形態によれば、閉鎖するステップはエアバッグの第1の充填状態を表す第1のセンサ信号に基づいて行われ、開放するステップはエアバッグの第2の充填状態を表す第2のセンサ信号に基づいて行われる。第1の充填状態では、エアバッグが、ガスによって、乗員の身体を車両の衝突時に適切に受け止めて保護するのに充分な程度に充填される。第2の充填状態では、乗員の身体がエアバッグに乗りかかったことによる放出開口からのガスの放出によってエアバッグが部分的に排気されており、この場合、「ライドダウンスペース」を形成するためのガスの残留ボリュームの導入が表示される。第1のセンサ信号及び第2のセンサ信号は、有利には、簡単な構成のそれぞれ異なるセンサによって実現可能である。エアバッグの充填状態を測定することに関連して、エアバッグのフルアダプティブ制御ストラテジにより、エアバッグ圧力、ひいては、衝突時の乗員もしくは危機に瀕している人員に対する拘束力を最適化することができる。
【0017】
このために、本発明の方法はさらに、エアバッグで支配的な第1のガス圧を求めて第1のセンサ信号を形成するステップと、エアバッグで支配的な第2のガス圧を求めて第2のセンサ信号を形成するステップとを含む。充填状態を直接に測定する手段に代えて、間接測定を行ってもよい。例えば、予めの試行によって形成されたテーブルを用いて、バルブ開放時間から直接にエアバッグの充填状態を取得することができる。また、ガス蓄積器内の圧力を測定し、圧力低下量から放出ガス量を求め、これに基づいてエアバッグの充填状態を推定してもよい。間接測定の品質は、個々の乗員特性、例えば座席位置、重量、体格などを考慮することにより、いっそう向上させることができる。
【0018】
特には、バルブを開放するステップにおいて、ガスの残留ボリュームをエアバッグへ導入することにより、エアバッグの奥行き(Tiefe)を5cmから10cmまでの範囲で増大させることができる。このようにすれば、本来の衝突の後も、付加的なエアクッションによって簡単にいわゆる「ライドダウンスペース」を形成でき、長期間にわたって衝突による傷害から乗員を良好に保護することができる。
【0019】
また、本発明は、車両用のエアバッグ装置の充填を制御するエアバッグ制御装置に関する。エアバッグ装置のエアバッグへの界面に、エアバッグ装置のガス発生器のバルブが配置されている。当該エアバッグ制御装置は閉鎖装置と開放装置とを備えており、閉鎖装置は、ガスのメインボリュームが第1のガス質量流としてガス発生器からバルブを通ってエアバッグへ流れた後に、バルブを閉鎖する。開放装置は、ガスの残留ボリュームを第1のガス質量流よりも小さい第2のガス質量流としてガス発生器からバルブを通してエアバッグへ導入するために、バルブを開放する。
【0020】
エアバッグ制御装置は、本発明の方法の各ステップを相応の手段において実行乃至開始するように構成されている。本発明の制御装置の形態の特徴によっても、本発明の基礎とする課題を迅速かつ効率的に解決することができる。
【0021】
本発明のエアバッグ制御装置とは、センサ信号を処理し、これに依存して制御信号及び/又はデータ信号を出力する電気機器のことであると理解されたい。こうした装置は、ハードウェア及び/又はソフトウェアによって構成可能なインタフェースを含む。ハードウェア構成では、インタフェースは例えば制御装置の種々の機能を含むいわゆるシステムASICの一部である。また、インタフェースが固有の複数の集積回路又は少なくとも部分的に個別の複数のモジュールから成っていてもよい。ソフトウェア構成では、インタフェースは、例えばマイクロコントローラ上で他のソフトウェアモジュールとともに設けられるソフトウェアモジュールである。
【0022】
さらに、本発明は、車両の衝突時に乗員もしくは人員を保護するための、車両用のエアバッグシステムに関する。当該エアバッグシステムは、エアバッグとガス発生器とを含むエアバッグ装置と、エアバッグ装置のガス発生器に接続されたエアバッグ制御装置とを備える。
【0023】
エアバッグとセンサユニットとエアバッグ制御装置とが例えばバスシステムを介して相互に接続されている。センサユニットは、エアバッグの第1の充填状態、すなわち、直接の衝突保護に適した充填量を検出し、さらに、エアバッグの第2の充填状態、すなわち、衝突過程においていったん排気されたエアバッグに残留ボリュームを再充填して「ライドダウンスペース」を形成するのに適した充填量を検出するように構成されている。
【0024】
ここで、エアバッグシステムは、エアバッグに接続されたセンサユニットを備え、このセンサユニットは、エアバッグの第1の充填状態を表す第1のセンサ信号と、エアバッグの第2の充填状態を表す第2のセンサ信号とを形成してエアバッグ制御装置に供給するように構成されている。
【0025】
有利には、本発明はさらに、機械読み出し可能な担体、例えば、ハードディスクメモリもしくは光学メモリ等に記憶されたプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品に関する。本発明のコンピュータプログラム製品は、コンピュータ又はエアバッグ制御装置上で実行される際に、上述した方法を実行するためのプログラムコードを含む。
【実施例】
【0026】
添付の図に即して本発明を以下に詳細に説明する。図示の本発明の有利な実施例に関して、図中、同じ要素又は同様の機能を有する要素には同じ参照番号を付し、繰り返しての説明は省略する。
【0027】
図1には、車両の衝突時に車両乗員を保護するためのエアバッグシステムの実施例が示されている。図示されているのは、車両100内に組み込まれた本発明のエアバッグシステム102である。エアバッグシステム102は、エアバッグ106とガス発生器108とを含むエアバッグ装置104を有する。エアバッグ装置104はここではフロントエアバッグ装置として構成されており、相応に車両100のキャビン前部領域に配置されている。これにより、衝突時に、車両100の乗員(ここではドライバー)110を、特に頭部領域及び胸部領域の傷害から保護することができる。
【0028】
フロント衝突の状況を観察すると、乗員110が車両100の舵輪もしくは計器パネルに衝突した後、最適位置から前方へ大きくずれている可能性が高い。この場合、当該時点で生じうる傷害の危険又は既に発生している傷害の悪化を防止することが重要である。
【0029】
図1に示されている車両シーンでは、衝突は起こっておらず、車両100の舵輪に組み込まれているエアバッグ106は舵輪中央のエアバッグ区画に折りたたまれた状態で収容されている。エアバッグ106は透過率の小さいプラスティック材料から形成されており、ガス発生器108に接続されている。ガス発生器108は、所定圧力でエアバッグ106用の充填ガスを蓄積している冷間ガス発生器である。
図1では見えないバルブにより、車両100の衝突が起こっていないときに冷間ガス発生器108からのガスがエアバッグ106へ流入することが防止されている。センサユニット112は適切な線路を介してエアバッグ106に接続されており、エアバッグ106の充填状態を求めるように構成される。
【0030】
エアバッグシステム102はさらに、適切なインタフェースを介してセンサユニット112とガス発生器108とを接続しているエアバッグ制御装置114を含む。エアバッグ制御装置114は、センサユニット112から受信されたセンサ信号に基づいて、ガス発生器108のバルブを適切に駆動することにより、エアバッグ106のガス充填量を制御する。
【0031】
図2のA,Bには、車両のエアバッグ制御装置114の詳細図が示されている。これを用いて
図1の冷間ガス発生式エアバッグシステム102の「衝突後ライドダウンアビリティ」機能を以下に説明する。
【0032】
図2のAには、エアバッグ制御装置114の第1の機能の基本方式が概略図で示されている。
図2のAでは、
図1の車両が衝突した後の状況が示されている。エアバッグ装置104がトリガされ、ガス発生器108に蓄積されていたガスのメインボリュームが、ガス発生器108とエアバッグ106とを接続するバルブ200を介してエアバッグ106へ導入され、エアバッグ106を膨張させる。これにより、衝突による乗員の前方ずれが受け止められ、遅延される。
図2のAに示されているように、エアバッグ制御装置114は、それぞれ適切な線路系を介してバルブ200に接続された閉鎖装置202と開放装置204とを含む。当該実施例のバルブ200は遮断弁であるが、ガス質量流を開制御もしくは閉ループ制御できるバルブであれば別の形態も可能である。
【0033】
図2のAに示されているように、ガスのメインボリュームがガス発生器108からエアバッグ106へ導入されるので、エアバッグ106は高い充填率に達している。センサユニット112はエアバッグ106で支配的な第1のガス圧206を検出し、適切なインタフェースを介して、エアバッグ106の高い充填率を第1の充填状態として表す第1のセンサ信号208をエアバッグ制御装置114へ送信する。第1のセンサ信号208に基づいて、閉鎖装置202は
図2のAに示されているようにバルブ200の閉鎖を行う。バルブ200が閉鎖されると、ガス発生器108からエアバッグ106へのガス流が遮断され、ガスの残留ボリュームがガス発生器108内に残る。
【0034】
図2のBには、エアバッグ制御装置114の第2の機能の基本方式が概略図で示されている。ここでは、衝突が起こった後の遅い時点でのエアバッグ106が示されている。衝突によって乗員がエアバッグ106に乗りかかったことにより、エアバッグ106に設けられている複数の放出開口から、エアバッグ106に導入されたガスのメインボリュームの大部分が放出され、エアバッグ106が少なくとも部分的に収縮する。センサユニット112はエアバッグ106内で支配的な第2のガス圧210を検出し、
図2のBに示されているエアバッグ106の第2の充填状態、すなわち、低い充填率を表す第2のセンサ信号212を、インタフェースを介してエアバッグ制御装置114へ送信する。
【0035】
第2のセンサ信号212に基づいて、開放装置204がバルブ200を開放する。
図2Bに示されているように、ガス発生器108に残っていた残留ガスボリュームを、矢印で示されている第2のガス質量流214として再び部分的に吹き込んでエアバッグ106へ流入させ、さらなるエアクッションの形態の本発明の「ライドダウンスペース」を形成できるようにする。
【0036】
衝突が終了しても、ガス発生器108内のガスボリュームが完全には排気されていない場合、念のために残留ボリュームをエアバッグ106へ吹き込むこともできる。つまり、ガス発生器108からの残留ボリュームにより、エアバッグ106を侵襲性の低い適切に選定された量のガス流214によって充填できる。このようにすれば、念のために乗員をキャビンの幾何学的限界からずらすことができる。
【0037】
1次衝突後のエアバッグ106の緩慢な充填により、付加的な5cmから10cmの「ライドダウンスペース」を有するエアクッションが形成され、比較的小さな力作用によって乗員をより安全な位置へ移動させることができる。
【0038】
図3には、本発明のエアバッグ制御方法300の実施例のフローチャートが示されている。ステップ302では、エアバッグ装置のエアバッグの第1の充填状態(高い充填量)を表す第1のセンサ信号が読み込まれる。ステップ304では、第1のセンサ信号に基づいて、エアバッグに接続されたガス発生器のバルブが閉鎖され、貯蔵されているガスの残留ボリュームがガス発生器内に残る。ステップ306では、エアバッグの第2の充填状態(低い充填量)を表す第2のセンサ信号が読み込まれる。ステップ308では、第2のセンサ信号に基づいて、エアバッグに接続されたガス発生器のバルブが開放され、ガスの残留ボリュームがエアバッグへ導入される。これにより、エアバッグの高さが増大し、「ライドダウンスペース」が形成される。
【0039】
上述した図示の実施例は例示のためのものである。種々の実施例乃至個々の特徴は任意に相互に組み合わせることができ、また、或る実施例を別の実施例の特徴によって補充することも可能である。
【0040】
さらに、本発明の方法の各ステップは反復実行することもできるし、上述したのと異なる順序で実行することもできる。
【0041】
或る実施例が「及び/又は」で接続された第1の特徴と第2の特徴とを含む場合、この実施例は、実施形態に応じて、第1の特徴及び第2の特徴の双方を含んでもよいし、第1の特徴もしくは第2の特徴のいずれか一方のみを含んでもよい。
【符号の説明】
【0042】
100 車両、 102 エアバッグシステム、 104 エアバッグ装置、 106 エアバッグ、 108 ガス発生器、 110 乗員、 112 センサユニット、 114 エアバッグ制御装置、 200 バルブ、 202 閉鎖装置、 204 開放装置、 206 第1のガス圧、 208 第1のセンサ信号、 210 第2のガス圧、 212 第2のセンサ信号、 214 ガス質量流、 300 エアバッグ制御方法、 302−308 ステップ