(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625344
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】ワークピースを加工する工作機械およびこのような工作機械を運転する方法
(51)【国際特許分類】
B21D 37/04 20060101AFI20191216BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20191216BHJP
B21D 28/04 20060101ALI20191216BHJP
B21D 28/24 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
B21D37/04 A
B23Q3/155 K
B21D37/04 P
B21D28/04 Z
B21D28/24 A
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-94336(P2015-94336)
(22)【出願日】2015年5月1日
(65)【公開番号】特開2015-211986(P2015-211986A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2017年5月25日
(31)【優先権主張番号】14166860.8
(32)【優先日】2014年5月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Trumpf Werkzeugmaschinen GmbH + Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ケアシャー
(72)【発明者】
【氏名】マーク クリンクハマー
【審査官】
飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−030896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/04
B21D 28/04
B21D 28/24
B23Q 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを加工する工作機械であって、
前記ワークピースを加工する加工工具(20)を着脱することができる工具収容部(7)を有する加工ステーション(6)と、
加工工具(20)用の少なくとも1つの収納スペース(18)を有する工具マガジン(19)と、
制御される駆動装置(26)によって引渡し/受取り位置へと移動可能な工具ハンドリング装置(23/1,23/2)と、
移動ユニット(12)であって、該移動ユニット(12)によって、前記ワークピースと工具マガジン(19)とが移動可能であり、移動ユニット(12)は、制御される駆動装置(21)によって、一方では、準備位置へと移動可能であり、他方では、加工位置の形態の運転位置および/または工具交換位置の形態の運転位置へと移動可能である移動ユニット(12)と、
工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の駆動装置(26)用に設けられた制御装置(27)であって、該制御装置(27)によって、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の前記引渡し/受取り位置を定めることができる制御装置(27)と、
移動ユニット(12)の駆動装置(21)用に設けられた制御装置(22)であって、該制御装置(22)によって、一方では、移動ユニット(12)の前記準備位置を定めることができ、他方では、移動ユニット(12)の前記加工位置および/または前記工具交換位置を定めることができる制御装置(22)と、
を備え、
移動ユニット(12)の前記準備位置では、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)が前記引渡し/受取り位置に同時にあるときには、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)によって1つの加工工具(20)を工具マガジン(19)の収納スペース(18)に供給することができる位置および/または工具マガジン(19)の収納スペース(18)から導出することができる位置へと、工具マガジン(19)の収納スペース(18)が、移動ユニット(12)によって移動させられており、
移動ユニット(12)の前記加工位置では、前記ワークピース用に設定された箇所で該ワークピースを、加工ステーション(6)の工具収容部(7)に取り付けられた加工工具(20)によって加工することができる位置へと、移動ユニット(12)に運動結合された前記ワークピースが、移動ユニット(12)によって移動させられており、
移動ユニット(12)の前記工具交換位置では、加工ステーション(6)において、取り付けるべき加工工具(20)を工具マガジン(19)の収納スペース(18)から加工ステーション(6)の工具収容部(7)に引き渡すことができる位置または取り外すべき加工工具(20)を加工ステーション(6)の工具収容部(7)から工具マガジン(19)の収納スペース(18)に引き渡すことができる位置へと、移動ユニット(12)に運動結合された工具マガジン(19)が、移動ユニット(12)によって移動させられている、ワークピースを加工する工作機械において、
移動ユニット(12)の駆動装置(21)の制御装置(22)が、移動ユニット(12)の前記準備位置を、
移動ユニット(12)の運転位置として定めるか、または
移動ユニット(12)の前記準備位置が、移動ユニット(12)の前記運転位置と異なる場合には、
一方では、移動ユニット(12)の前記準備位置と、他方では、該準備位置以前の移動ユニット(12)の前記運転位置および/または該準備位置以後の移動ユニット(12)の前記運転位置との間での移動ユニット(12)の移動のために必要となる時間が可能な限り少なくなる移動ユニット(12)の位置として定め、かつ/又は
一方では、移動ユニット(12)の前記準備位置と、他方では、該準備位置以前の移動ユニット(12)の前記運転位置および/または該準備位置以後の移動ユニット(12)の前記運転位置との間での移動ユニット(12)の移動の量が可能な限り小さくなる移動ユニット(12)の位置として定め、かつ、
工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の駆動装置(26)の制御装置(27)が、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の前記引渡し/受取り位置を、移動ユニット(12)の駆動装置(21)の制御装置(22)により定められた前記準備位置に応じて定めることにより、移動ユニット(12)の駆動装置(21)の制御装置(22)は、移動ユニット(12)の前記準備位置を可変に定め、かつ工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の駆動装置(26)の制御装置(27)は、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の前記引渡し/受取り位置を可変に定めることを特徴とする、ワークピースを加工する工作機械。
【請求項2】
遅くとも移動ユニット(12)が、該移動ユニット(12)の制御される駆動装置(21)によって移動ユニット(12)の前記準備位置へと移動させられているときには、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)は、該工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の制御される駆動装置(26)によって、前記準備位置に応じて定められた前記引渡し/受取り位置へと移動させられている、請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
移動ユニット(12)は、前記工作機械の機械フレーム(2)の上側のフレーム辺部(3)と、該上側のフレーム辺部(3)と同じ方向に延びる下側のフレーム辺部(4)との間の辺部中間スペース(5)内に配置されたガイド装置(11)のガイド支持体として形成されており、上側のフレーム辺部(3)および/または下側のフレーム辺部(4)に加工ステーション(6)の工具収容部(7)が設けられており、前記ガイド支持体は、上側のフレーム辺部(3)および下側のフレーム辺部(4)の横方向に延びていて、上側のフレーム辺部(3)および下側のフレーム辺部(4)に対して相対的に移動可能であり、
前記ガイド支持体に前記ワークピースが位置固定可能であり、加工工具(20)用の少なくとも1つの収納スペース(18)を備えた工具マガジン(19)が設けられている、請求項1又は2記載の工作機械。
【請求項4】
工具ハンドリング装置(23/1,23/2)は、該工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の制御される駆動装置(26)によって上側のフレーム辺部(3)および下側のフレーム辺部(4)の長手方向で前記引渡し/受取り位置へと送り可能である、請求項3記載の工作機械。
【請求項5】
工具マガジン(19)は、加工ステーション近位の工具マガジン(19)を形成しており、加工ステーション遠位の工具マガジン(29)がさらに設けられており、加工ステーション近位の工具マガジン(19)に供給すべき加工工具(20)は、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)によって加工ステーション遠位の工具マガジン(29)で受取り可能であり、かつ/または加工ステーション近位の工具マガジン(19)から導出された加工工具(20)は、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)によって加工ステーション遠位の工具マガジン(29)に引渡し可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項6】
加工ステーション(6)の工具収容部(7)は、移動ユニット(12)に対して相対的に送り可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項7】
前記工作機械は、金属薄板(8)を加工するために設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項8】
ワークピースを加工する工作機械を運転する方法であって、前記工作機械は、
前記ワークピースを加工する加工工具(20)を着脱することができる工具収容部(7)を備える加工ステーション(6)と、
加工工具(20)用の少なくとも1つの収納スペース(18)を備える工具マガジン(19)と、
制御装置(27)により制御される駆動装置(26)を備える工具ハンドリング装置(23/1,23/2)と、
制御装置(22)により制御される駆動装置(21)を備える、前記ワークピースおよび工具マガジン(19)に運動結合された移動ユニット(12)と、
を有し、前記方法の範囲内で、
一方では、工具マガジン(19)の準備のために、移動ユニット(12)を、該移動ユニット(12)の駆動装置(21)の制御装置(22)により定められた準備位置へと移動させ、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)を、該工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の駆動装置(26)の制御装置(27)により定められた引渡し/受取り位置へと移動させ、移動ユニット(12)の前記準備位置と工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の前記引渡し/受取り位置とを同時に定めて、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)によって1つの加工工具(20)を工具マガジン(19)の収納スペース(18)に供給することができかつ/または工具マガジン(19)の収納スペース(18)から導出することができ、他方では、
移動ユニット(12)を、該移動ユニット(12)の駆動装置(21)の制御装置(22)により定められた加工位置の形態の運転位置へと移動させて、移動ユニット(12)に運動結合された前記ワークピースを、該ワークピース用に設定された箇所で該ワークピースを、加工ステーション(6)の工具収容部(7)に取り付けられた加工工具(20)により加工することができる位置へと移動させ、かつ/または
移動ユニット(12)を、該移動ユニット(12)の駆動装置(21)の制御装置(22)により定められた工具交換位置の形態の運転位置へと移動させて、移動ユニット(12)に運動結合された工具マガジン(19)を、加工ステーション(6)において、取り付けるべき加工工具(20)が工具マガジン(19)の収納スペース(18)から加工ステーション(6)の工具収容部(7)に引渡し可能である位置または取り外すべき加工工具(20)が加工ステーション(6)の工具収容部(7)から工具マガジン(19)の収納スペース(18)に引渡し可能である位置へと移動させる、ワークピースを加工する工作機械を運転する方法において、
移動ユニット(12)の前記準備位置を、移動ユニット(12)の駆動装置(21)の制御装置(22)によって、
移動ユニット(12)の運転位置として定めるか、または
移動ユニット(12)の前記準備位置が、移動ユニット(12)の前記運転位置と異なる場合には、
一方では、移動ユニット(12)の前記準備位置と、他方では、該準備位置以前の移動ユニット(12)の前記運転位置および/または該準備位置以後の移動ユニット(12)の前記運転位置との間での移動ユニット(12)の移動のために必要となる時間が可能な限り少なくなる移動ユニット(12)の位置として定め、かつ/又は
一方では、移動ユニット(12)の前記準備位置と、他方では、該準備位置以前の移動ユニット(12)の前記運転位置および/または該準備位置以後の移動ユニット(12)の前記運転位置との間での移動ユニット(12)の移動の量が可能な限り小さくなる移動ユニット(12)の位置として定め、かつ、
工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の前記引渡し/受取り位置を、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の駆動装置(26)の制御装置(27)によって、移動ユニット(12)の駆動装置(21)の制御装置(22)により定められた前記準備位置に応じて定めることにより、移動ユニット(12)の前記準備位置を、移動ユニット(12)の駆動装置(21)の制御装置(22)によって可変に定め、かつ工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の前記引渡し/受取り位置を、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の駆動装置(26)の制御装置(27)によって可変に定めることを特徴とする、ワークピースを加工する工作機械を運転する方法。
【請求項9】
移動ユニット(12)の駆動装置(21)用の数値制御装置(22)と、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の駆動装置(26)用の数値制御装置(27)とを備える機械数値制御装置(28)が設けられた請求項1から7までのいずれか1項記載の工作機械を運転する加工プログラムであって、
前記加工プログラムは、移動ユニット(12)の駆動装置(21)用の制御命令と、工具ハンドリング装置(23/1,23/2)の駆動装置(26)用の制御命令とを有し、前記加工プログラムが機械数値制御装置(28)で実行された場合に、両制御命令によって、請求項8記載の方法が実施されることを特徴とする、工作機械を運転する加工プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピース、特に金属薄板を加工する工作機械であって、
前記ワークピースを加工する加工工具を着脱することができる工具収容部を有する加工ステーションと、
加工工具用の少なくとも1つの収納スペースを有する工具マガジンと、
制御される駆動装置によって引渡し/受取り位置へと移動可能な工具ハンドリング装置と、
移動ユニットであって、該移動ユニットによって、前記ワークピースと工具マガジンとが移動可能であり、移動ユニットは、制御される駆動装置によって、一方では、準備位置へと移動可能であり、他方では、加工位置の形態の運転位置および/または工具交換位置の形態の運転位置へと移動可能である移動ユニットと、
工具ハンドリング装置の駆動装置用に設けられた制御装置であって、該制御装置によって、工具ハンドリング装置の前記引渡し/受取り位置を定めることができる制御装置と、
移動ユニットの駆動装置用に設けられた制御装置であって、該制御装置によって、一方では、移動ユニットの前記準備位置を定めることができ、他方では、移動ユニットの前記加工位置および/または前記工具交換位置を定めることができる制御装置と、
を備え、
移動ユニットの前記準備位置では、工具ハンドリング装置が前記引渡し/受取り位置に同時にあるときには、工具ハンドリング装置によって1つの加工工具を工具マガジンの収納スペースに供給することができる位置および/または工具マガジンの収納スペースから導出することができる位置へと、工具マガジンの収納スペースが、移動ユニットによって移動させられており、
移動ユニットの前記加工位置では、前記ワークピース用に設定された箇所で該ワークピースを、加工ステーションの工具収容部に取り付けられた加工工具によって加工することができる位置へと、移動ユニットに運動結合された前記ワークピースが、移動ユニットによって移動させられており、
移動ユニットの前記工具交換位置では、加工ステーションにおいて、取り付けるべき加工工具を工具マガジンの収納スペースから加工ステーションの工具収容部に引き渡すことができる位置または取り外すべき加工工具を加工ステーションの工具収容部から工具マガジンの収納スペースに引き渡すことができる位置へと、移動ユニットに運動結合された工具マガジンが、移動ユニットによって移動させられている、ワークピースを加工する工作機械に関する。
【0002】
さらに、本発明は、ワークピース、特に金属薄板を加工する工作機械を運転する方法であって、前記工作機械は、
前記ワークピースを加工する加工工具を着脱することができる工具収容部を備える加工ステーションと、
加工工具用の少なくとも1つの収納スペースを備える工具マガジンと、
制御装置により制御される駆動装置を備える工具ハンドリング装置と、
制御装置により制御される駆動装置を備える、前記ワークピースおよび工具マガジンに運動結合された移動ユニットと、
を有し、前記方法の範囲内で、
一方では、工具マガジンの準備のために、移動ユニットを、該移動ユニットの駆動装置の制御装置により定められた準備位置へと移動させ、工具ハンドリング装置を、該工具ハンドリング装置の駆動装置の制御装置により定められた引渡し/受取り位置へと移動させ、移動ユニットの前記準備位置と工具ハンドリング装置の前記引渡し/受取り位置とを同時に定めて、工具ハンドリング装置によって1つの加工工具を工具マガジンの収納スペースに供給することができかつ/または工具マガジンの収納スペースから導出することができ、他方では、
移動ユニットを、該移動ユニットの駆動装置の制御装置により定められた加工位置の形態の運転位置へと移動させて、移動ユニットに運動結合された前記ワークピースを、該ワークピース用に設定された箇所で該ワークピースを、加工ステーションの工具収容部に取り付けられた加工工具により加工することができる位置へと移動させ、かつ/または
移動ユニットを、該移動ユニットの駆動装置の制御装置により定められた工具交換位置の形態の運転位置へと移動させて、移動ユニットに運動結合された工具マガジンを、加工ステーションにおいて、取り付けるべき加工工具が工具マガジンの収納スペースから加工ステーションの工具収容部に引渡し可能である位置または取り外すべき加工工具が加工ステーションの工具収容部から工具マガジンの収納スペースに引渡し可能である位置へと移動させる、ワークピースを加工する工作機械を運転する方法に関する。
【0003】
さらに、本発明は、移動ユニットの駆動装置用の数値制御装置と、工具ハンドリング装置の駆動装置用の数値制御装置とを備える機械数値制御装置が設けられた前述したような工作機械を運転する加工プログラム、このような加工プログラムを作成する方法ならびに後者の方法の全てのステップを実施するコード化手段を備えるコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0004】
冒頭に記載の工作機械および冒頭に記載の方法は、欧州特許出願公開第2198991号明細書に基づき公知である。この先行技術は、上側のフレーム辺部と下側のフレーム辺部とを有するC字形の機械フレームを備えた工作機械に関する。両フレーム辺部の自由端部には、加工ステーションが設けられている。この加工ステーション自体は、上側のフレーム辺部に設けられた上側の工具収容部と、下側のフレーム辺部に設けられた下側の工具収容部とを有している。上側のフレーム辺部と下側のフレーム辺部との間の辺部中間スペース内には、水平なクロスレールを備えた座標ガイドが設けられている。クロスレールは、両フレーム辺部の横方向に延びていて、モータ駆動されると共に数値制御されて、1つの水平な運動平面の両軸方向に走行することができる。座標ガイドのクロスレールに沿って、複数のクランプ爪と複数の工具ホルダとが相並んで設けられている。クランプ爪は、クロスレールに1つの金属薄板を解離可能に位置固定するために働く。工具ホルダは、クロスレールに設けられた工具マガジンを形成している。この工具マガジンは、加工工具を収容するために規定されている。クロスレールにクランプ爪により位置固定された1つの金属薄板は、加工目的のために、クロスレールの相応の移動によって、加工ステーションと、この加工ステーションの工具収容部内に取り付けられた加工工具とに対して位置決めされる。さらに、クロスレールは機械フレームの加工ステーションに対して、工具交換のために、加工工具が、加工ステーションの工具収容部と、クロスレールに設けられた工具マガジンとの間で移送される位置へと走行する。
【0005】
各加工タスクに関連して、クロスレールに設けられた工具マガジンに加工工具が装着されなければならない。この目的のために、公知の工作機械の機械フレームに設けられたクロスレールは、機械フレームの上側のフレーム辺部と下側のフレーム辺部との間の辺部中間スペースの後方の端部における不変に設定された準備位置へと移動させられる。クロスレールは不変の準備位置へ加工ステーションでのワークピース加工前にまたはワークピース加工後に到達することもできるし、工具交換前にまたは工具交換後に到達することもできる。クロスレールが準備位置にある場合には、クロスレールに設けられた工具ホルダに工具ハンドリング装置が接近可能となる。この工具ハンドリング装置自体は、公知の工作機械の金属薄板ローディング・金属薄板アンローディングユニットによって形成される。この金属薄板ローディング・金属薄板アンローディングユニットは、クロスレールに設けられた工具マガジンと、工作機械の機械フレームから間隔を置いて配置された定置の工具マガジンとの間で加工工具を移送する。この目的のためには、金属薄板ローディング・金属薄板アンローディングユニットが、クロスレールの該当する工具ホルダにアクセスすることができる引渡し/受取り位置に到達する。
【0006】
クロスレールに設けられた工具マガジンの準備中、クロスレールは停止している。工作機械の加工ステーションでの金属薄板加工は中断されており、加工ステーションでの工具交換は不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2198991号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、工作機械における一連の全てのプロセスへの、工作機械の移動ユニットに設けられた工具マガジンの準備作業の組込みを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明に係る工作機械では、移動ユニットの駆動装置の制御装置が、移動ユニットの前記準備位置を、該準備位置以前の移動ユニットの前記運転位置および/または該準備位置以後の移動ユニットの前記運転位置に応じて定め、かつ工具ハンドリング装置の駆動装置の制御装置が、工具ハンドリング装置の前記引渡し/受取り位置を、移動ユニットの駆動装置の制御装置により定められた前記準備位置に応じて定めることにより、移動ユニットの駆動装置の制御装置は、移動ユニットの前記準備位置を可変に定め、かつ工具ハンドリング装置の駆動装置の制御装置は、工具ハンドリング装置の前記引渡し/受取り位置を可変に定める。
【0010】
本発明に係る工作機械の好ましい態様では、移動ユニットの駆動装置の制御装置は、一方では、移動ユニットの前記準備位置と、他方では、該準備位置以前の移動ユニットの前記運転位置および/または該準備位置以後の移動ユニットの前記運転位置との間での移動ユニットの移動のために必要となる時間が可能な限り少なくなるように、移動ユニットの前記準備位置を定める。
【0011】
本発明に係る工作機械の好ましい態様では、移動ユニットの駆動装置の制御装置は、一方では、移動ユニットの前記準備位置と、他方では、該準備位置以前の移動ユニットの前記運転位置および/または該準備位置以後の移動ユニットの前記運転位置との間での移動ユニットの移動の量が可能な限り小さくなるように、移動ユニットの前記準備位置を定める。
【0012】
本発明に係る工作機械の好ましい態様では、遅くとも移動ユニットが、該移動ユニットの制御される駆動装置によって移動ユニットの前記準備位置へと移動させられているときには、工具ハンドリング装置は、該工具ハンドリング装置の制御される駆動装置によって、前記準備位置に応じて定められた前記引渡し/受取り位置へと移動させられている。
【0013】
本発明に係る工作機械の好ましい態様では、移動ユニットは、前記工作機械の機械フレームの上側のフレーム辺部と、該上側のフレーム辺部と同じ方向に延びる下側のフレーム辺部との間の辺部中間スペース内に配置されたガイド装置のガイド支持体として形成されており、上側のフレーム辺部および/または下側のフレーム辺部に加工ステーションの工具収容部が設けられており、前記ガイド支持体は、上側のフレーム辺部および下側のフレーム辺部の横方向に延びていて、上側のフレーム辺部および下側のフレーム辺部に対して相対的に移動可能であり、
前記ガイド支持体に前記ワークピースが位置固定可能であり、加工工具用の少なくとも1つの収納スペースを備えた工具マガジンが設けられている。
【0014】
本発明に係る工作機械の好ましい態様では、工具ハンドリング装置は、該工具ハンドリング装置の制御される駆動装置によって上側のフレーム辺部および下側のフレーム辺部の長手方向で前記引渡し/受取り位置へと送り可能である。
【0015】
本発明に係る工作機械の好ましい態様では、工具マガジンは、加工ステーション近位の工具マガジンを形成しており、加工ステーション遠位の工具マガジンがさらに設けられており、加工ステーション近位の工具マガジンに供給すべき加工工具は、工具ハンドリング装置によって加工ステーション遠位の工具マガジンで受取り可能であり、かつ/または加工ステーション近位の工具マガジンから導出された加工工具は、工具ハンドリング装置によって加工ステーション遠位の工具マガジンに引渡し可能である。
【0016】
本発明に係る工作機械の好ましい態様では、加工ステーションの工具収容部は、移動ユニットに対して相対的に送り可能である。
【0017】
さらに、前述した課題を解決するために、工作機械を運転する本発明に係る方法では、移動ユニットの前記準備位置を、移動ユニットの駆動装置の制御装置によって、前記準備位置以前の移動ユニットの前記運転位置および/または前記準備位置以後の移動ユニットの前記運転位置に応じて定め、かつ工具ハンドリング装置の前記引渡し/受取り位置を、工具ハンドリング装置の駆動装置の制御装置によって、移動ユニットの駆動装置の制御装置により定められた前記準備位置に応じて定めることにより、移動ユニットの前記準備位置を、移動ユニットの駆動装置の制御装置によって可変に定め、かつ工具ハンドリング装置の前記引渡し/受取り位置を、工具ハンドリング装置の駆動装置の制御装置によって可変に定める。
【0018】
さらに、前述した課題を解決するために、本発明に係る加工プログラムでは、前記加工プログラムは、移動ユニットの駆動装置用の制御命令と、工具ハンドリング装置の駆動装置用の制御命令とを有し、前記加工プログラムが機械数値制御装置で実行された場合に、両制御命令によって、工作機械を運転する本発明に係る方法が実施される。
【0019】
さらに、前述した課題を解決するために、加工プログラムを作成する本発明に係る方法では、移動ユニットの駆動装置用の制御命令と、工具ハンドリング装置の駆動装置用の制御命令とを生成し、前記加工プログラムが機械数値制御装置で実行された場合に、両制御命令によって、工作機械を運転する本発明に係る方法を実施する。
【0020】
さらに、前述した課題を解決するために、本発明に係るコンピュータプログラム製品では、前記コンピュータプログラム製品は、該コンピュータプログラム製品がデータ処理装置で作動させられた場合に、加工プログラムを作成する本発明に係る方法の全てのステップを実施するために適合されたコード化手段を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の事例では、移動ユニットの準備位置と、工具ハンドリング装置の、移動ユニットの準備位置に合わせて調整される引渡し/受取り位置とが可変に規定される。移動ユニットの準備位置は、移動ユニットが準備工程前にかつ/または準備工程後にとる1つ以上の位置に関連して設定される。したがって、移動ユニットの工具マガジンにおける準備工程の実施時には、工作機械において準備工程前にかつ/または準備工程後に実行されるプロセスが考慮される。これによって、工作機械における一連の全てのプロセスが最適化される。移動ユニットに対しては、準備位置として、工具ハンドリング装置の引渡し/受取り位置に対応することができる位置が可能である。
【0022】
本発明に係る方法を実施するためには、この方法のために作成された加工プログラムが、本発明に係る工作機械の機械数値制御装置において実施される。加工プログラムは、移動ユニットの駆動装置のための制御命令と、工具ハンドリング装置の駆動装置のための制御命令とを有している。両制御命令は、加工プログラムを作成するための本発明に係る方法の範囲内で生成される。後者の方法のステップを実施するためには、相応のコード化手段を備えたコンピュータプログラム製品が役立つ。このコンピュータプログラム製品は、コンピュータアシストされるプログラミングシステムの主要な要素を成している。このプログラミングシステム自体によって、使用者が、本発明に係る加工プログラムの制御命令を生成することができる。
【0023】
独立請求項に記載の本発明の特別な種々の態様は、従属請求項2〜8から明らかである。
【0024】
本発明に係る工作機械の可能な限り高い効率のためには、工作機械の運転時間のうち、ワークピース加工のために使用されることがない割合を最小限に抑えなければならない。
【0025】
この目的のために、本発明の好適な態様では、準備位置と、この準備位置以前にかつ/または準備位置以後に移動ユニットによりとられる運転位置との間での移動ユニットの移動を可能な限り迅速にもしくは可能な限り短い距離で実施することができるように、移動ユニットの駆動装置の制御装置が、移動ユニットの準備位置を規定していることが提案されている(請求項2および3参照)。理想的には、移動ユニットの加工位置が移動ユニットの準備位置に合致している。この事例では、移動ユニットに運動結合された工具マガジンを主時間に並行して準備することが可能となる。移動ユニットの準備位置と、この準備位置以前のもしくは準備位置以後の移動ユニットの運転位置とが互いに異なっていて、移動ユニットの駆動のために、迅速な機械軸が使用されると、準備位置および/または準備に先行する運転位置および/または準備に続く運転位置への移動ユニットの到達に関連する副時間が最小限に抑えられている。
【0026】
準備工程自体も可能な限り少ない時間を利用するようにするために、本発明の別の態様では、遅くとも移動ユニットが準備位置に到達する場合に、工具ハンドリング装置が引渡し/受取り位置に位置していることが提案されている(請求項4参照)。工具ハンドリング装置を引渡し/受取り位置に移送するためには、移動ユニットが準備位置に到達するまで、比較的長い期間、たとえば1つのワークピースが加工されるかまたは1つの加工工具が工作機械の加工ステーションにおいて交換される期間が提供される。この期間が十分に長ければ、工具ハンドリング装置のためには、比較的少ない出力を伴う駆動装置ひいては特に廉価な駆動装置で十分となる。
【0027】
請求項5は、本発明によるコンセプトを構造的に実現するための好適な可能性に関する。移動ユニットとして、工作機械の機械フレームの上側のフレーム辺部と、この上側のフレーム辺部と同じ方向に延びる下側のフレーム辺部との間の辺部中間スペース内に配置されたガイド装置、特に座標ガイドのガイド支持体が設けられている。したがって、機械フレームは、たとえばC字形を有していてもよいし、O字形に形成されていてもよい。ガイド支持体は、上側のフレーム辺部および下側のフレーム辺部の横方向に延びていて、両フレーム辺部に対して相対的に移動可能である。加工すべきワークピースはガイド支持体に、たとえばクランプ爪によって位置固定される。ガイド支持体に設けられた工具マガジンは、1つ以上の工具ホルダによって形成することができる。この工具ホルダはガイド支持体に沿って取り付けられていて、これに相応して、リニアマガジンを形成している。本発明に係る工作機械の加工ステーションとして、たとえば打抜きステーションまたは曲げステーションが可能であり、これに相応して、加工工具として、打抜き工具または曲げ工具を設けることができる。
【0028】
工具ハンドリング装置に対しても、本発明によれば、種々異なる構造形態が可能である。請求項6によれば、対応する駆動装置によって上側のフレーム辺部および下側のフレーム辺部の長手方向で引渡し/受取り位置へと送り可能である工具ハンドリング装置が好適となる。本発明によれば、工具ハンドリング装置として、特に工具グリッパが使用される。
【0029】
本発明の別の好適な態様では、工具ハンドリング装置が、加工工具を加工ステーション遠位の工具マガジンから、移動ユニットに設けられた工具マガジンに供給する。相応して、工具ハンドリング装置によって、移動ユニットの工具マガジンから導出された加工工具を加工ステーション遠位の工具マガジンに引き渡すことができる(請求項7参照)。この加工ステーション遠位の工具マガジンとして、たとえば、工作機械の機械フレームに組み付けられている工具マガジンが可能である。しかしながら、工作機械の機械フレームから離して配置された工具マガジンも可能である。また、加工ステーション遠位の工具マガジンは、場合により、工作機械に課せられる工具要求に関連して準備されてもよい。
【0030】
請求項8によれば、本発明の別の変化態様において、加工ステーションの工具収容部が、移動ユニットに対して相対的に送り可能であることが提案されている。工具収容部はその可動性に基づき、たとえば、移動ユニットに位置固定されたワークピースに対して相対的に加工運動を実施することができる。さらに、移動ユニットに対して相対的に送り可能な工具収容部は、工具交換の準備のために、移動ユニットにより移動させられる工具マガジンに向かって走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】座標ガイドと、この座標ガイドの、移動ユニットとして設けられた支持レールとを備えた、金属薄板を打抜き加工するための工作機械を示す図である。
【
図2】加工・準備位置における座標ガイドの支持レールを備えた
図1に示した工作機械を示す図である。
【
図3】工作機械の工具収容部に対する工具交換時の
図1および
図2に示した工作機械を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0033】
図1〜
図3によれば、打抜き機1として形成された工作機械は、上側のフレーム辺部3と、下側のフレーム辺部4と、上側のフレーム辺部3および下側のフレーム辺部4の間に設けられた辺部中間スペース5とを有するC字形の機械フレーム2を備えている。
【0034】
上側のフレーム辺部3および下側のフレーム辺部4の自由端部には、打抜きステーション6の形態の加工ステーションが位置している。慣用の形式では、打抜きステーション6に設けられた工具収容部7内に、加工工具として、
図1に認めることができない打抜き工具が取り付けられている。工具収容部7は、機械フレーム2の上側のフレーム辺部3に設けられた上側の工具収容部と、機械フレーム2の下側のフレーム辺部4に設けられた下側の工具収容部とを有している。
【0035】
金属薄板8を打抜き加工するためには、上側の工具収容部内に取り付けられた打抜きパンチが、慣用の形式で、
図1では金属薄板8により隠れている下側の工具収容部内に取り付けられた打抜きダイと協働する。数値制御されるストローク駆動装置によって、打抜きパンチが双方向矢印10の方向に昇降可能であり、これによって、打抜きダイに対して相対的に可動となっている。打抜きステーション6の工具収容部7内に取り付けられた打抜き工具は、打抜きパンチおよび打抜きダイに対して付加的に、慣用の形式で、ストリッパを有している。
【0036】
上側のフレーム辺部3と下側のフレーム辺部4との間の辺部中間スペース5は、慣用の構造形態の座標ガイド11として形成されたガイド装置を収容している。
【0037】
座標ガイド11は、移動ユニットとして、座標ガイド11のベース支持体13に長手方向可動にガイドされた支持レール12の形態のガイド支持体を有している。ベース支持体13には、2つのテーブル半部15/1,15/2から成るワークピーステーブル15が取り付けられている。両テーブル半部15/1,15/2は、中間スペースによって互いに分離されていて、この中間スペースの範囲内に下側の工具収容部が配置されている。
【0038】
支持レール12には、複数のクランプ爪17と、更には、工具マガジン19の複数の収納スペース18とが設けられている。クランプ爪17は、1つの金属薄板8を支持レール12に対して解離可能に位置固定するために働く。工具マガジン19の収納スペース18は、打抜きステーション6の工具収容部7内に取り付けられた打抜き工具の代わりに使用することができるような打抜き工具20を加工工具として収容している。1つの収納スペース18への途中の1つの打抜き工具20が、
図2に示してある。打抜き工具20のための複数の収納スペース18は、支持レール12に沿って設けられている。したがって、工具マガジン19は、いわゆる「リニアマガジン」として形成されている。図面を見やすくするため、
図1には、空いた収納スペース18しか示していない。実際には、支持レール12に設けられた収納スペース18は、打抜き工具20でほぼ完全に埋まっている。
【0039】
座標ガイド11のベース支持体13は、その長手方向でもって第1の軸方向(x軸)に延びていて、第2の軸方向(y軸)において下側のフレーム辺部4に対して可動にガイドされている。x軸とy軸とは、1つの水平な運動平面を展開している。
【0040】
図1に示したモータ駆動式の駆動装置21は、機械フレーム2の下側のフレーム辺部4に沿った座標ガイド11のベース支持体13の運動(y方向)と、このベース支持体13に沿った支持レール12の運動(x方向)とを発生させるために働く。モータ駆動式の駆動装置21は数値制御装置22によって制御される。
【0041】
ベース支持体13と一緒に、ワークピーステーブル15と、収納スペース18を備えた工具マガジン19と、クランプ爪17と、場合により、このクランプ爪17により保持された1つの金属薄板8とが、y方向に移動させられる。支持レール12によって、収納スペース18を備えた工具マガジン19と、クランプ爪17と、場合により、金属薄板8とが、ベース支持体13に対して相対的にx軸に沿って走行可能となる。
【0042】
座標ガイド11の上方では、機械フレーム2の上側のフレーム辺部3に、2つのグリッパユニット23/1,23/2の形態の工具ハンドリング装置を備えたダブルグリッパ23が組み付けられている。グリッパユニット23/1,23/2は支持構造体24に支持されている。
【0043】
この支持構造体24と一緒に、グリッパユニット23/1,23/2が、支持構造体24に対する長手方向ガイド25においてy方向ひいては上側のフレーム辺部3の長手方向に走行可能となる。付加的には、グリッパユニット23/1,23/2の各々が、支持構造体24に対して相対的にx方向ひいては上側のフレーム辺部3の横方向に送り可能となる。
【0044】
x軸およびy軸に沿ったダブルグリッパ23の両グリッパユニット23/1,23/2の運動を発生させるためには、数値制御装置27を備えたモータ駆動式の駆動装置26が働く。グリッパユニット23/1,23/2のモータ駆動式の駆動装置26の数値制御装置27は、支持レール12のモータ駆動式の駆動装置21の数値制御装置22と同様に、打抜き機1の機械数値制御装置28内に組み込まれている。
【0045】
この機械数値制御装置28によって、打抜き機1を運転するための数値加工プログラムが実行される。この数値加工プログラムはプログラミングシステムによって作成される。このプログラミングシステムの主要な要素は、数値加工プログラムの個々の制御命令を生成するためのコンピュータプログラム製品である。
【0046】
ダブルグリッパ23のグリッパユニット23/1,23/2は、座標ガイド11の支持レール12に設けられた工具マガジン19の収納スペース18にアクセスすることができるだけでなく、機械フレーム2の後方の端部に設けられていて、打抜き工具20のための複数の収納スペース30を有する工具トレイ29にもアクセスすることができる。この工具トレイ29は、加工ステーション遠位の工具マガジンを形成しており、支持レール12に設けられた工具マガジン19は、工具トレイ29と比較して加工ステーション近位に配置されている。
【0047】
図1には、打抜きステーション6の工具収容部7内に取り付けられた打抜き工具による金属薄板8の加工中の工作機械1が示してある。加工すべき金属薄板8は、クランプ爪17によって支持レール12に対して位置固定されていて、所望の打抜き部を製作するために、支持レール12の相応の移動によって打抜きステーション6の打抜き工具に対して送られる。その際には、y方向で支持レール12がベース支持体13によって移動させられる。場合によっては、ベース支持体13に沿って支持レール12がx方向への移動を実施する。本形態において金属薄板8に製作すべき打抜き部の切断線が、
図1に破線で示してある。これに相応して、製作すべき打抜き部は、y方向において、金属薄板8の内側から、
図1で見て手前側の金属薄板縁部にまで延びている。
【0048】
金属薄板加工中にはすでに、ダブルグリッパ23のグリッパユニット23/1が上側のフレーム辺部3に沿って、必要とあれば、この上側のフレーム辺部3の横方向でも、工具トレイ29に設けられた打抜き工具20の上方の位置へと走行する。なお、この打抜き工具20は、進行中の金属薄板加工工程の終了後、支持レール12に設けられた工具マガジン19の特定の収納スペース18に引き渡されるようになっている。進行している金属薄板加工中にはなおも、グリッパユニット23/1が工具トレイ29上の当該打抜き工具20に向かって下降させられる。グリッパユニット23/1が打抜き工具20を受け取った後、グリッパユニット23/1は、制御されたモータ駆動式の駆動装置26によって打抜きステーション6に向かって引渡し/受取り位置へと走行する。グリッパユニット23/1の代わりに、ダブルグリッパ23のグリッパユニット23/2が使用されてもよい。
【0049】
グリッパユニット23/1の引渡し/受取り位置は、グリッパユニット23/1のモータ駆動式の駆動装置26の数値制御装置27によって、支持レール12の準備位置に関連して規定される。この支持レール12の準備位置もまた、支持レール12のモータ駆動式の駆動装置21の数値制御装置22によって、支持レール12の加工位置に関連して設定される。なお、「支持レール12の加工位置」とは、打抜きステーション6に取り付けられた打抜き工具が進行中の加工工程の最後の打抜きストロークを実施した時点において支持レール12がとっている位置である。また、「支持レール12の準備位置」としては、支持レール12が加工位置を起点として最短の距離で到達することができる位置であって、グリッパユニット23/1が、これに保持された打抜き工具20に対して規定されている支持レール12における収納スペース18へと接近することができる位置が定義される。
【0050】
本形態の状況では、進行中の加工工程の最後の打抜きストロークの時点における支持レール12の加工位置が直接的に支持レール12の準備位置を成している。これに相応して、支持レール12の、打抜き工具が装着される収納スペース18は、進行中の加工工程の最後の打抜きストロークの時点ですでに、相応の引渡し/受取り位置に前もって走行させられているグリッパユニット23/1が当該収納スペース18に接近することができる位置をとっている。準備位置における支持レール12と、引渡し/受取り位置におけるグリッパユニット23/1とが、
図2に示してある。
【0051】
支持レール12が準備位置にあって、グリッパユニット23/1が引渡し/受取り位置に移動させられている場合には、グリッパユニット23/1が、これに保持された打抜き工具20でもって、支持レール12の、打抜き工具が装着される収納スペース18に鉛直方向で向かい合っている。打抜き工具20を、支持レール12に設けられた工具マガジン19の、打抜き工具20のために設けられた収納スペース18に引き渡すためには、もはや、グリッパユニット23/1の下降運動しか必要とならない。
【0052】
グリッパユニット23/1から支持レール12の当該収納スペース18への打抜き工具20の引渡しは、進行中の加工工程の最後の打抜きストロークと同時にひいては主時間に並行して、つまり、実際の加工中に行われてもよいし、進行中の加工工程の最後の打抜きストロークに続いてすぐに行われてもよい。これによって、当該収納スペース18の準備に起因する一連のプロセスの中断が完全に回避され、少なくとも支持レール12における当該収納スペース18の準備のために必要となる、副時間として金属薄板加工のために使用されることがない期間が最短化される。
【0053】
グリッパユニット23/1またはグリッパユニット23/2の引渡し/受取り位置を準備位置への到達前の支持レール12の加工位置に合わせて調整することに対して択一的または付加的に、グリッパユニット23/1の引渡し/受取り位置は、支持レール12が準備位置への到達前にとる工具交換位置に関連して規定されてもよい。
【0054】
打抜きステーション6における工具交換時の状況が、
図3に示してある。
【0055】
まず、打抜きステーション6の工具収容部7に対する支持レール12の相応の移動によって、打抜きステーション6に取り付けられている打抜き工具20が、支持レール12に設けられた工具マガジン19の所定の収納スペース18へと引き渡される。次いで、支持レール12が工具収容部7に対して相対的に走行させられて、当初の打抜き工具20の代わりに打抜きステーション6で使用すべき打抜き工具20が工具収容部7に引き渡される。当初の打抜き工具20の代わりに設けられた打抜き工具20が打抜きステーション6の工具収容部7内に取り付けられた時点では、支持レール12が工具交換位置をとっており、この工具交換位置に合わせて、支持レール12の準備位置と、ダブルグリッパ23のグリッパユニット23/1またはグリッパユニット23/2の引渡し/受取り位置とが調整される。
【0056】
支持レール12の工具交換位置を考慮して、支持レール12のモータ駆動式の駆動装置21の数値制御装置22は、グリッパユニット23/1またはグリッパユニット23/2が、支持レール12の、打抜き工具が装着される収納スペース18へと接近することができ、かつ支持レール12が、工具交換位置を起点として最短の距離で到達することができる支持レール12の位置を、支持レール12の準備位置と規定している。このようにして規定された支持レール12の準備位置に合わせて、ダブルグリッパ23のモータ駆動式の駆動装置26の数値制御装置27が、該当するグリッパユニット23/1,23/2の引渡し/受取り位置を決定する。
【0057】
支持レール12に引き渡すべき打抜き工具20を備えた該当するグリッパユニット23/1,23/2は、すでに打抜きステーション6での工具交換中、予め規定された引渡し/受取り位置へと移動させられる。支持レール12が工具交換の終了後に準備位置に到達する際には、すでに引渡し/受取り位置に移動させられているグリッパユニット23/1,23/2が支持レール12を待ち受けており、この支持レール12が準備位置に達した直後に、支持レール12の、打抜き工具が装着される収納スペース18への工具引渡しが行われるようになっている。
【0058】
前述した順序と異なり、支持レール12の準備位置と、ダブルグリッパ23のグリッパユニット23/1,23/2の引渡し/受取り位置とを、支持レール12が準備位置を起点として移動させられる加工位置に関連して規定することが可能である。この形態では、モータ駆動式の駆動装置21の数値制御装置22により考慮すべき支持レール12の加工位置が、そのあとに続く金属薄板加工の最初の打抜きストロークの時点において支持レール12がとっている位置である。
【0059】
また、支持レール12の準備位置と、ダブルグリッパ23のグリッパユニット23/1,23/2の引渡し/受取り位置とを、支持レール12が準備位置を起点として到達する工具交換位置に関連して規定することも可能である。この形態では、支持レール12の工具交換位置が、支持レール12の相応の走行運動によって工具交換が実施される支持レール12の位置である。
【0060】
支持レール12が工具交換位置に支持レール12の準備位置以前に到達するかまたは準備位置以後に到達するかに左右されることなく、工具収容部7が打抜き機1の機械フレーム2に対して相対的にy方向に走行することができる場合には、準備位置と工具交換位置との間の支持レール12の走行距離を短縮することが可能となる。このことは、たとえば工具収容部7が、加工目的のために、加工すべきワークピースに対して相対的に高動的な短い移動を実施することができる機械に当てはまる。さもないと、ワークピースが座標ガイド11によって、工具収容部7に取り付けられた加工工具に対して送られてしまう。工具収容部7のこのような可動性は、工具交換の場所を、ダブルグリッパ23およびそのグリッパユニット23/1,23/2が到達することができる引渡し/受取り位置へと近づけるために利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 打抜き機
2 機械フレーム
3 上側のフレーム辺部
4 下側のフレーム辺部
5 辺部中間スペース
6 打抜きステーション
7 工具収容部
8 金属薄板
10 双方向矢印
11 座標ガイド
12 支持レール
13 ベース支持体
15 ワークピーステーブル
15/1,15/2 テーブル半部
17 クランプ爪
18 収納スペース
19 工具マガジン
20 打抜き工具
21 駆動装置
22 数値制御装置
23 ダブルグリッパ
23/1,23/2 グリッパユニット
24 支持構造体
25 長手方向ガイド
26 駆動装置
27 数値制御装置
28 機械数値制御装置
29 工具トレイ
30 収納スペース