(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625392
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】耐久性が向上されたステアリングホイールカバー用人造皮革及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06N 3/14 20060101AFI20191216BHJP
B62D 1/06 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
D06N3/14
B62D1/06
【請求項の数】17
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-205808(P2015-205808)
(22)【出願日】2015年10月19日
(65)【公開番号】特開2016-89326(P2016-89326A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2018年5月17日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0154261
(32)【優先日】2014年11月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162123
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 誠
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヒョン、デ
(72)【発明者】
【氏名】クォン、オ、ドク
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ウォン、ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、キ、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チャ、ユン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】アン、ソン、ドク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン、テ、ホ
【審査官】
飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
韓国登録特許第10−1402783(KR,B1)
【文献】
特開平06−146175(JP,A)
【文献】
特開2014−001463(JP,A)
【文献】
特開2004−084076(JP,A)
【文献】
特開平06−264371(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0041965(US,A1)
【文献】
特開2002−054079(JP,A)
【文献】
特開2010−042539(JP,A)
【文献】
特表平11−507606(JP,A)
【文献】
特開平04−077250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00−7/06
B62D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)長繊維型高密度極細糸不織布を含んだ繊維基材(101);
b)微細気孔を有するウレタン気孔層(102);
c)上記ウレタン気孔層と下記スキン層を接着するためのウレタン系接着剤が含まれたウレタン接着剤層(103);及び
d)イソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールを含むポリオール化合物を重合して製造されたポリウレタン樹脂が含まれたポリウレタンスキン層(104);
この順に積層されており、
前記ポリウレタンスキン層のポリオール化合物は、ポリカーボネート系ポリオール(重量平均分子量800〜3500)、フッ素系ポリオール(重量平均分子量200〜4000)及びエステル系ポリオール(重量平均分子量1000〜3000)を含み、
ポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールが70〜95:1〜10:1〜20の重量比を成す、
ステアリングホイールカバー用人造皮革。
【請求項2】
上記スキン層(104)の表面に、イソシアネート化合物とポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールを含むポリオール化合物を重合して製造されたポリウレタン樹脂が含まれたポリウレタン表面処理コーティング層(105)がさらに積層されている、請求項1に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革。
【請求項3】
長繊維型高密度極細糸不織布の見掛密度が0.35〜0.8g/cm3であることを特徴とする、請求項1に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革。
【請求項4】
長繊維型高密度極細糸不織布は、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート及びポリトリメチレンテレフタレートからなる群から選択された熱可塑性樹脂を島成分として含み、生分解性特性を有するポリ乳酸を海成分として含み、上記島成分60〜80重量%と海成分15〜40重量%の混合比を成していることを特徴とする、請求項1に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革。
【請求項5】
ウレタン気孔層に含まれたポリウレタン樹脂がイソシアネート化合物とポリエステル系ポリオール(重量平均分子量1、000〜6、000)、ポリエーテル系ポリオール(重量平均分子量1、000〜6、000)及びポリカーボネート系ポリオール(重量平均分子量1、000〜6、000)を含有するポリオール化合物を重合して製造されたことを特徴とする、請求項1に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革。
【請求項6】
ポリオール化合物は、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール及びポリカーボネート系ポリオールが10〜60:20〜80:5〜60の重量比を成すことを特徴とする、請求項5に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革。
【請求項7】
ポリウレタン表面処理コーティング層のポリオール化合物は、ポリカーボネート系ポリオール(重量平均分子量800〜3500)、フッ素系ポリオール(重量平均分子量200〜4000)及びエステル系ポリオール(重量平均分子量1000〜3000)を含むことを特徴とする、請求項2に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革。
【請求項8】
ポリウレタン表面処理コーティング層のポリオール化合物は、ポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールが70〜95:1〜10:1〜20の重量比を成すことを特徴とする、請求項7に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革。
【請求項9】
i)長繊維型高密度極細糸不織布を含んだ繊維基材層(101)の上に微細気孔を有するウレタン気孔層(102)を形成して第1シートを製造する段層;
ii)剥離紙の上に、イソシアネート化合物とポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールを含むポリオール化合物を重合して製造されたポリウレタン樹脂が含まれたポリウレタン組成物をコーティングしてポリウレタンスキン層(104)を形成する段層;
iii)上記スキン層(104)の上にウレタン接着剤層(103)を形成して第2シートを製造する段層;及び
iv)上記第1シートと第2シートを合紙した後、剥離紙を剥離する段層;
を含み、
前記ポリウレタンスキン層のポリオール化合物は、ポリカーボネート系ポリオール(重量平均分子量800〜3500)、フッ素系ポリオール(重量平均分子量200〜4000)及びエステル系ポリオール(重量平均分子量1000〜3000)を含み、
ポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールが70〜95:1〜10:1〜20の重量比を成す、
ステアリングホイールカバー用人造皮革の製造方法。
【請求項10】
v)上記剥離紙が剥離されたスキン層の表面に、ポリウレタンコーティング液をコーティングしてポリウレタン表面処理コーティング層(105)を形成する段層;
をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革の製造方法。
【請求項11】
長繊維型高密度極細糸不織布の見掛密度が0.35〜0.8g/cm3であることを特徴とする、請求項9に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革の製造方法。
【請求項12】
長繊維型高密度極細糸不織布は、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート及びポリトリメチレンテレフタレートからなる群から選択された熱可塑性樹脂を島成分として含み、生分解性特性を有するポリ乳酸を海成分として含み、上記島成分60〜80重量%と海成分15〜40重量%の混合比を成していることを特徴とする、請求項9に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革の製造方法。
【請求項13】
ウレタン気孔層に含まれたポリウレタン樹脂がイソシアネート化合物と、ポリエステル系ポリオール(重量平均分子量1、000〜6、000)、ポリエーテル系ポリオール(重量平均分子量1、000〜6、000)及びポリカーボネート系ポリオール(重量平均分子量1、000〜6、000)を含有するポリオール化合物を重合して製造されたことを特徴とする、請求項9に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革の製造方法。
【請求項14】
ポリオール化合物はポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール及びポリカーボネート系ポリオールが10〜60:20〜80:5〜60の重量比を成すことを特徴とする、請求項13に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革の製造方法。
【請求項15】
ポリウレタン表面処理コーティング層のポリオール化合物は、ポリカーボネート系ポリオール(重量平均分子量800〜3500)、フッ素系ポリオール(重量平均分子量200〜4000)及びエステル系ポリオール(重量平均分子量1000〜3000)を含むことを特徴とする、請求項10に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革の製造方法。
【請求項16】
ポリオール化合物は、ポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールが70〜95:1〜10:1〜20の重量比を成すことを特徴とする、請求項15に記載のステアリングホイールカバー用人造皮革の製造方法。
【請求項17】
請求項1乃至請求項8の中から選択されたいずれか一項の人造皮革で施されているステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐光性、耐熱老化性、摩擦着色性、耐薬品性などの耐久物性及びしわ性、ボリューム性などの感性が改善されて自動車内装材、特にステアリングホイールのカバーとして有用な高性能人造皮革及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングホイール(Steering Wheel)は、一般的にハンドル(handle)と呼ばれているが、車輪を左右に動かして進行方向を変えるために使う円形の操向装置である。
【0003】
ステアリングホイールは、運転手の回転操作力をその中心に結合される操向軸を媒介にして操向装置へ伝達し、車を角運動させる作用をする。このような、ステアリングホイールは、運転手が握る円形のリム(Rim)と、このリムの中央に形成されてその中心に操向軸が結合されるリムサポート(Rim Support)から構成されている。そして、ステアリングホイールは、多様な材質によって形成されることがあるが、金属パイプをリング状に形成したリムにリムサポートを熔接する方法で製作したり、比較的に剛性が大きくて軽い非鉄金属であるアルミニウムまたはマグネシウムを鋳造などの方式で製作する。このように製作されたステアリングホイールのリムサポート部分には、エアバッグ、警音器ボタン、オーディオ操作ボタンなどが組み立てられた後、合成樹脂材カバーが施されて結合し、リム部分には布、人造皮革、皮などで製作されたリムカバーが施される。
【0004】
人造皮革の一般的製造工程は、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトンなどのような有機溶剤が含有されたウレタン樹脂配合液を剥離紙の上に塗布して乾燥させフィルムを形成した後、形成されたウレタンフィルムの上に接着剤を塗布して架橋・硬化させた後、短繊維型極細糸不織布あるいは織物繊維基材と合布する方法を使っている。
【0005】
一例として、韓国特許公開第10-2012-0133210号(特許文献1)は、自動車内装材用ポリウレタン人造皮革の製造方法に関するもので、剥離紙(release paper)を用意する第1段層;上記剥離紙の上面に水分散ポリカーボネートウレタンを含むポリウレタン樹脂を複数回繰り返して塗布及び乾燥して、複数個の層に積層される表面層を形成する第2段層;上記表面層の上面に無溶剤型接着剤を塗布して接着層を形成する第3段層;及び上記接着層の上面に合成繊維で織られた織物、編物または不織布を接着して原反層を形成する第4段層;を含むことを特徴とするポリウレタン人造皮革の製造方法を開示している。
【0006】
しかし、特許文献1に開示された人造皮革は、密度が比較的小さい短繊維型不織布あるいは織物などの繊維基材の上にスキンコーティング層が形成されていて、ステアリングホイールのリムカバーとして適用する時、しわが多く発生し、縫製穴の開く問題点があり、天然皮革のボリューム感、触感などと類似の感性を表すことに限界がある。また、従来のポリウレタンスキンコーティング層は、一般的な自動車シート、ドアトリム用途の物性である84MJの照射量による耐光性には耐えるが、ステアリングヒールカバーリング用の126MJの照射量に対する耐光性が不足し、耐薬品性、耐熱老化性、摩擦着色性などの物性が低い短所を示して、ステアリングホイールのリムカバーとして適用しにくかった。
【0007】
また、韓国登録特許第10-1,402,783号(特許文献2)には、長繊維型高密度極細糸不織布を含んだ繊維基材層;微細気孔を有するウレタン気孔層;及びスキン層;この順に積層されたことを特徴とする人造皮革が開示されている。すなわち、上記特許文献2では、長繊維型高密度極細糸不織布の上に構造的に強い結合力を持つウレタン気孔層を導入することで、従来の人造皮革に比べて耐加水分解性、耐熱性、耐薬品性及び機械的特性を補う技術が開示されている。しかし、屈曲が多いステアリングホイールのカバーとして使うには、しわ性及び耐汚染性の物性の改善が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国特許公開第10-2012-0133210号
【特許文献2】韓国登録特許第10-1,402,783号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、長繊維型高密度極細糸不織布を繊維基材にして、スキン層を形成するポリウレタン製造に使われるポリオールの造成を制御する場合、高耐光性、耐熱老化性、摩擦着色性、耐薬品性の物性が改善されると同時に天然皮革のボリューム感、触感などと類似の感性を表しながらも、特に屈曲が多いステアリングホイールのカバーとして使用する時、しわ性及び耐汚染性を改善することを確認し、これに基づいて本発明を完成した。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、天然皮革と類似の感性を表しながら高耐光性、耐熱老化性、摩擦着色性、耐薬品性、耐汚染性の優秀な耐久物性を持ち、しわ性が良好で自動車内装材、特にステアリングホイールのリムカバー用として使うことができる人造皮革を提供することである。
【0011】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、長繊維型高密度極細糸不織布の繊維基材層の上部に、ウレタン気孔層、ウレタン接着剤層及びポリウレタンスキン層を順に積層し、各層に含まれるポリウレタン樹脂のポリオール成分を特異性があるように構成させて、物性が制御された人造皮革の製造方法を提供することである。
【0012】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、上記の人造皮革が施されたステアリングホイールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題解決のために、本発明では、
a)長繊維型高密度極細糸不織布を含んだ繊維基材層101;
b)微細気孔を有するウレタン気孔層102;
c)上記ウレタン気孔層と下記スキン層を接着するためのウレタン系接着剤が含まれたウレタン接着剤層103;及び
d)イソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールを含むポリオール化合物を重合して製造されたポリウレタン樹脂が含まれたポリウレタンスキン層104;
この順に積層されているステアリングホイールカバー用人造皮革を提供する。
【0014】
また、本発明では、
i)長繊維型高密度極細糸不織布を含んだ繊維基材層101の上に微細気孔を有するウレタン気孔層102を形成して第1シートを製造する段層;
ii)剥離紙の上に、イソシアネート化合物とポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールを含むポリオール化合物を重合して製造されたポリウレタン樹脂が含まれたポリウレタン組成物をコーティングしてポリウレタンスキン層104を形成する段層;
iii)上記スキン層104の上に接着層を形成して第2シートを製造する段層;及び
iv)上記第1シートと第2シートを合紙した後、剥離紙を剥離する段層;
を含むステアリングホイールカバー用人造皮革の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明では、上記の人造皮革で施されているステアリングホイールを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、自動車内装材、特にステアリングホイールリムカバーの要求物性である高耐光性、耐熱老化性、摩擦着色性、耐薬品性、耐汚染性などの耐久性が向上されながらボリューム感、しわ性などの感性が改善される效果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1で製造した人造皮革の切断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した写真である。
【
図2】繊維基材層を構成する不織布の切断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した写真であって、(A)は通常の極細糸不織布の写真で、(B)は本発明で使われた長繊維型高密度極細糸不織布の写真である。
【
図3】本発明の実施例1で製造した人造皮革を活用して製造したステアリングホイールを撮影した写真である。
【
図4】本発明の実施例3で製造した人造皮革を活用して製造したステアリングホイールを撮影した写真である。
【
図5】比較例1で製造した人造皮革を活用して製造したステアリングホイールを撮影した写真である。
【0018】
本発明は、ステアリングホイールカバー用人造皮革及びその製造方法に関する。本発明の人造皮革は、長繊維型高密度極細糸不織布を繊維基材層101の上部に、ウレタン気孔層102、ウレタン接着剤層103及びポリウレタンスキン層104を順に積層させて製造されたもので、上記スキン層104を形成するポリウレタン樹脂の重合反応に使われるポリオールの造成を新たに設計することでステアリングホイールのリムカバー用として適した物性を制御する。
【0019】
一般的に、ポリウレタンは高分子内に二つの相、すなわち、硬性セグメント(hard segment、HS)と軟性セグメント(soft segment、SS)から構成され、物理的結合によって結晶性構造の役割をする硬性セグメントが軟性セグメントのドメイン(domain)に分散されている形態で存在する。ポリウレタンの物理的特性と強直性は、硬性セグメントの凝集力だけでなく軟性セグメントの種類によっても変わるが、軟性セグメントとして使われるポリオールの種類によって機械的物性、熱的特性、耐加水分解性、耐薬品性などが変わる。
【0020】
本発明では、人造皮革のスキン層104を構成するにあたり、イソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールを共に含むポリオール化合物を重合して製造されたポリウレタン樹脂を含む。こうすることで、ステアリングホイールカバー用として適用するために人造皮革に求められる物性である高耐光性、耐熱老化性、摩擦着色性、耐薬品性、耐汚染性などの耐久性とボリューム感、しわ性などの感性を同時に改善した效果がある。
【0021】
本発明の一態様によると、本発明は長繊維型高密度極細糸不織布を含む繊維基材層101;ウレタン気孔層102;ウレタン接着剤層103;及びポリウレタンスキン層104が順に積層された構造を持つ人造皮革をその特徴とする。
【0022】
図1は、本発明による人造皮革の層の構造を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0023】
図1に示したように、本発明の人造皮革は、長繊維型高密度極細糸不織布を含む繊維基材層101、ウレタン気孔層102、ウレタン接着剤層103及びポリウレタンスキン層104が順に積層された構造を持つ。
【0024】
本発明による人造皮革を構成する各層について、より具体的に説明すると下記のとおりである。
【0025】
a)繊維基材層101
上記繊維基材層101は、天然皮革と類似の感性を表しながらも屈曲の多いステアリングホイールのリムカバーとして適用する時、優れたしわ性を確保するために長繊維型高密度極細糸不織布を繊維基材として活用する。
【0026】
上記繊維基材層101の長繊維型高密度極細糸不織布は、スパンボンド、ニードルパンチング及びスパンレース工法の中で選択された2種以上の複合工程によって製造された長繊維型不織布である。上記長繊維型高密度極細糸不織布は、見掛密度が0.35g/cm
3以上、好ましくは0.35〜0.8g/cm
3、さらに好ましくは0.4〜0.5g/cm
3と密度が非常に高くて、別途の収縮工程なしに高密度化が可能であるため、含浸工程がなかったり、または低濃度の水分散性ポリウレタンを含浸加工することができる長所がある。このような特性を有する上記長繊維型高密度極細糸不織布は、既存の短繊維型高密度不織布に比べて強度及び密度が高くて品質が優秀であるため、人造皮革の繊維基材として適している。
図2には、既存の短繊維型高密度不織布(A)と長繊維型高密度極細糸不織布(B)の内部構造を確認した走査電子顕微鏡(SEM)が添付されている。
【0027】
また、上記長繊維型高密度極細糸不織布は、ポリエチレンテレフタレート(PET、polyethylene terephthalate)及びポリアミド(PA、polyamide)からなる群から選択された1種以上の一般的な汎用フィラメント糸;またはPET/PA(polyethylene terephthalate/polyamide)、PET/PLA(polyethylene terephthalate/polylactic acid)、PET/Co-PET(polyethylene terephthalate/co-polyethylene terephthalate)及び PA/Co-PET (polyamide/co-polyethylene terephthalate)からなる群から選択された1種以上を含む海島型または分割型フィラメント糸を使うことができる。
【0028】
上記長繊維極細高密度不織布を製造するための一具現例によると、ポリアミド(PA、polyamide)、ポリエチレンテレフタレート(PET、polyethylene terephthalate)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT、polytrimethylene terephthalate)などの熱可塑性樹脂を島成分として含み、生分解性特性を有するポリ乳酸(PLA、polylactic acid)を海成分として含みながら、上記島成分60〜80重量%、海成分20〜40重量%の混合比で高速紡糸(3、000〜7、000m/min)し、スパンボンド法でウェブ(30〜50g/cm
2)を形成する。ウェブの形態安定性のために熱を加えずに表面処理するコールドカレンダー掛け(cold calendaring)方式でカレンダーリングをした後、上記ウェブを要求重量(300〜600g/cm
2)に基づいて、90g/cm
2以上の高重量の場合には積層(cross lapping)及び延伸(draft)し、ニードルパンチングのPPSC(penetrations per square centimeter)を100〜800ea/cm
2と処理した後、水流結合して長繊維極細高密度不織布を製造する。
【0029】
本発明の好ましい具現例によると、上記長繊維極細高密度不織布は熱可塑性樹脂と生分解性樹脂を用いて複合紡糸法によって不織布を製造し、この時の紡糸速度は3、000〜7、000m/min、好ましくは4、000〜7、000m/minの高速で紡糸して製造することが品質面で優秀である。また、海成分としてポリ乳酸(PLA)を使うと、不織布の製造工程時、水流結合工程で溶剤を使わずに物理的方法によって不織布繊維分繊を誘導できる工程上の便利性があり、この後の湧出工程で既存のCo-PETの湧出条件と同一の条件またはそれ以下の低濃度(3%以下)であるNaOH水溶液で均一に湧出することができるので、繊維の損傷または密度低下を最小化することができて優秀な品質を発現できる長所がある。
【0030】
本発明の人造皮革の繊維基材層に利用される長繊維型高密度極細糸不織布は、ASTM5035方法に基づいて測定された引張強度において、MD(machine direction)40〜60kgf/inch及びCD(cross direction)50〜60kgf/inchで、好ましくはMD42〜50kgf/inch及び CD52〜58kgf/inchである。また、上記長繊維型高密度極細糸不織布は、ASTM5035方法に基づいて測定された伸率(伸度)において、MD60〜80%及びCD100〜140%で、好ましくはMD65〜75%及びCD110〜130%である。また、ASTM5035方法に基づいて測定された引裂強度において、MD5.5〜6.0kgf及びCD5.2〜5.8kgf、好ましくはMD5.5〜5.9kgf及びCD5.3〜5.7kgfである。もし、伸率が低い場合、ステアリングホイールカバーリングの製造過程中に皮を引くことが難しくて作業性が悪く、曲面部にしわが発生し、伸率が高い場合は、表面が伸びて物性が不均一となり、長期間使用する時に形態安定性が低下する。また、引裂強度が低いと、ステアリングホイールカバーリングの製造過程中に皮の破断が生じ、縫製する時、縫製穴が垂れる問題が生じえるので、上記範囲内での人造皮革繊維基材が適合する。
【0031】
本発明の人造皮革を構成する繊維基材層101は、その平均厚さが0.7〜1.3mmである。
【0032】
b)ウレタン気孔層102
上記ウレタン気孔層102は、
図1でも確認されるように、ポリウレタン樹脂内に均一な気孔が形成されていて人造皮革にボリューム感をさらに増加することができる。
【0033】
上記ウレタン気孔層102は、ポリウレタン樹脂、溶媒、ウレタン気孔調節剤及びトナー(Toner)を100:30〜60:0.5〜2:0.1〜1:5〜15重量比で含むウレタン気孔層の組成物を上記繊維基材の一表面上にコーティングして形成することができる。
【0034】
上記ウレタン気孔層の組成物において、上記ポリウレタン樹脂はイソシアネート化合物とポリエステル系ポリオール(重量平均分子量1、000〜6、000)、ポリエーテル系ポリオール(重量平均分子量1、000〜6、000)及びポリカーボネート系ポリオール(重量平均分子量1、000〜6、000)を含むポリオール化合物を重合して得られるポリウレタン予備重合体と鎖延長剤を反応させて製造することができる。
【0035】
上記ポリウレタン予備重合体の製造のための重合方法は、本発明で特に限定せず、通常ポリオールとポリイソシアネートの反応に使われる方法なら如何なることでも可能であり、これに関わる様々な文献を通じて探すことができる。これら重合方法ではエマルジョン重合、懸濁重合、光重合、塊状重合、溶液重合などの方法が使われるし、多様な触媒と共に必要な場合、分散剤、安定化剤、界面活性剤、鎖移動剤、終末剤などの使用が可能である。
【0036】
上記ポリウレタン樹脂を重合するために使われたイソシアネート化合物は、当業界で使う一般的なものを使うことができ、特に限定はしないが、2、4- または2、6-トルエンジイソシアネート(TDI)、4、4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、1、5-ナフタレンジイソシアネートなどのベンゼン環を持つ芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、プロピレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、2、2、4- または2、4、4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;1、4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4、4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)などの指環族ジイソシアネート;及びこれらの組合からなる群から選択された1種を含むことができる。
【0037】
上記ポリウレタン樹脂を重合するために使われたポリオール化合物は、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール及びポリカーボネート系ポリオールを10〜60:20〜80:5〜60の重量比で、好ましくは20〜40:30〜65:20〜50の重量比で使うことが耐加水分解性及び耐薬品性の向上面で良い。上記重合では、ポリオール成分として反応型リン酸エステル系ポリオール、ポリエーテルエステル系ポリオールなど1種または2種以上の難燃性ポリオールをさらに含むことができる。
【0038】
上記ポリウレタン樹脂の製造過程で使われる鎖延長剤は、当業界で一般的に使われる成分として、本発明は鎖延長剤の使用について特に限定しない。好ましくは、結晶化度を高めるために有利な偶数個の反復単位を持つ低分子量ジオール化合物またはジアミン化合物を使うことができる。具体的に、上記鎖延長剤はエチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、1、4-ブタンジオール(1、4-BD)、1、6-ヘキサンジオール(1、6-HD)、ネオペンチルグリコール(NPG)及びイソホロンジアミン(IPDA)の中で選択された1種以上を使う。この時、鎖延長剤の使用量はポリオール100重量部に対して1〜15重量部、好ましくは2〜10重量部を使う。
【0039】
そして、上記ポリウレタン樹脂を重合するために使われたイソシアネート化合物とポリオール化合物の使用量は、NCO/OHのモル比が0.95〜1.05、好ましくは1.0になるように使った方が良い。
【0040】
上記ウレタン気孔層の組成物において、上記溶媒はジメチルホルムアミド(DMF)、アセト酸エチル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル及びエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの中で選択された1種以上を含むことができ、ポリウレタン樹脂に対して100:30〜60の重量比で、好ましくは100:35〜45の重量比で使った方が良い。この時、30重量比未満であると溶液の粘度が高くて均一な気孔を形成することが難しく、60重量比を超えると溶液の粘度が低くすぎて精密に厚さを調節しにくいので、上記範囲内で使った方が良い。
【0041】
上記ウレタン気孔層の組成物において、上記ウレタン気孔調節剤はウレタン気孔層に均一な気孔を形成するためのものとして、特に限定しないが、アニオン(Anion)系、ノニオン(Nonion)系の中で選択された1種以上の界面活性剤を使った方が良い。そして、上記ウレタン気孔調節剤の使用量は、上記ポリウレタン樹脂に対して100:0.5〜2の重量比で、好ましくは100:0.5〜1.5の重量比で使った方が良いが、0.5重量比未満であるとウレタン気孔層に気孔の形成が十分にならないこともあり、2重量比を超えると気孔が不均一になれるので、上記範囲内で使った方が良い。
【0042】
上記ウレタン気孔層の組成物において、上記トナー(Toner)はウレタン気孔層の色相を与える顔料である。上記トナーの使用量は、上記ポリウレタン樹脂に対して100:5〜15の重量比で、好ましくは100:7〜12の重量比で使った方が良いが、5重量比の未満であると色相の具現が難しく、15重量比を超えて製品の諸般物性を低下させる問題があり得るので、上記範囲内で使った方が良い。
【0043】
本発明の人造皮革を構成する上記ウレタン気孔層は、KS M 6782に基づいて測定する時、モジュラスが60〜80kgf/cm
2、好ましくは60〜75kgf/cm
2である。また、ASTM D-412に基づいて測定する時、引張強度が幅方向370〜420kgf/cm
2、好ましくは380〜400kgf/cm
2、及び長手方向410〜450kgf/cm
2、好ましくは420〜440kgf/cm
2である。また、上記ウレタン気孔層は、JIS K7311に基づいて測定する時、伸率が幅方向430〜480%、好ましくは440〜480%で、長手方向が400〜450%、好ましくは410〜440%である。
【0044】
本発明の人造皮革を構成するウレタン気孔層102は、その平均厚さが0.1〜0.4mmである。
【0045】
c)ウレタン接着剤層103
本発明の人造皮革は、ウレタン気孔層102とポリウレタンスキン層104の間に接着層103がさらに含まれることができる。
【0046】
上記接着剤層は、当業界で使う一般的な接着剤を使うことができ、特に限定しないが、ウレタン系接着剤を使うことが好ましい。また、リン、窒素系列の難燃剤が添加された2液型ウレタン接着剤を使うことが人造皮革の難燃性を付与することができるという面で良い。
【0047】
本発明の人造皮革を構成するウレタン接着剤層103は、その平均厚さが0.06〜0.3mmである。
【0048】
d)ポリウレタンスキン層104
上記ポリウレタンスキン層104は、イソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールを含むポリオール化合物を重合して得られるポリウレタン予備重合体と鎖延長剤を反応させて製造することができる。
【0049】
上記ポリウレタンスキン層104に含まれたポリウレタン樹脂を重合するために使われたイソシアネート化合物は、上記ウレタン気孔層102で説明したように、当業界で使う一般的なものを使うことができるし、特に限定しない。
【0050】
上記ポリウレタン樹脂を重合するために使われたポリオール化合物は、ポリカーボネート系ポリオール(重量平均分子量800〜3500)、フッ素系ポリオール(重量平均分子量200〜4000)及びエステル系ポリオール(重量平均分子量1000〜3000)を含む。もし分子量が低いポリオール化合物を使うことになると、スキン層のモジュラスが増加するようになり、伸率が低くなって表面触感が悪くなり、製品が固くなることがある。一方、分子量の高いポリオール化合物を使う場合、スキン層が柔らかいが、表面がべたつくことがあり、機械的物性が落ちる現象が表れる。
【0051】
上記ポリウレタン樹脂を重合するために使われたポリオール化合物としてポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールは70〜95:1〜10:1〜20の重量比を成す方が良い。上記ポリオール化合物の使用比が上記重量比を成している時、高耐光性、耐加水分解性、耐熱老化性、摩擦着色性及び耐汚染性などを確保することができる。
【0052】
上記ポリオール化合物として、上記ポリカーボネート系ポリオールはエチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)、プロピレングリコール(PG)、1、4-ブタンジオール(1、4-BD)、1、3-ブタンジオール(1、3-BD)、1、5-ペンタンジオール(1、5-PD)、1、6-ヘキサンジオール(1、6-HD)、1、4-シクロヘキサンジオール、1、4-シクロヘキサンジメタノール、2、2-ジメチル-1、3-プロパンジオール及び1、8-オクタンジオールからなる群から選択された1種以上のジヒドロキシル化合物とジアリルカーボネート、ジアルキルカーボネート、またはホスゲンとの縮合反応と共に公知された合成法によって合成されたポリオールを使う。このようなポリカーボネート系ポリオールを利用して製造されるポリウレタンは、耐加水分解性、耐候性、耐熱性面で優秀である。
【0053】
上記ポリオール化合物として上記フッ素系ポリオールは、パーフルオロポリエーテルまたはポリテトラフルオロエチレンを使うことが耐汚染性、摩擦着色性を向上するために有用である。
【0054】
上記ポリオール化合物として、上記エステル系ポリオールはエチレングリコール(EG)、1、4-ブタンジオール(1、4-BD)、1、6-ヘキサンジオール(1、6-HD)、ネオペンチルグリコール(NPG)、ジエチレングリコール(DEG)などの低分子量のポリオールと、アジピン酸(AA)のようなポリカルボン酸をエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオールである。または、上記エステル系ポリオールは、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオールである。または、上記エステル系ポリオールは、脂肪族ポリエステルポリオール、ポリエステルポリオールを共重合したポリエステルポリオール共重合体である。
【0055】
また、上記ポリウレタン樹脂を重合するために使われたポリオール化合物として、反応型リン酸エステル系ポリオール、ポリエーテルエステル系ポリオールなど1種または2種以上の難燃性ポリオールをさらに含むことができる。
【0056】
また、上記ポリウレタン樹脂を重合するために使われた鎖延長剤は、当業界で一般的に使われる鎖延長剤として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、4-ブタンジオール、1、6-ヘキサンジオール及びメチルペンタンジオールの中で選択された1種以上を含むことができる。
【0057】
本発明の人造皮革を構成するポリウレタンスキン層104は、その平均厚さが0.05〜0.3mmである。
【0058】
e)ポリウレタン表面処理コーティング層105
本発明の人造皮革は、上記ポリウレタンスキン層104の表面に光沢度を調節し、耐汚染性を向上するために、ポリウレタン表面処理コーティング層105がさらに含まれることがある。
【0059】
上記ポリウレタン表面処理コーティング層105は、無黄変型樹脂を主要原料として活用することができる。すなわち、無黄変型ポリウレタン樹脂、光沢除去剤及び溶媒を含む表面処理コーティング液を上記ポリウレタンスキン層104の表面にコーティングして形成させることができる。上記表面処理コーティング液は、目的によって当分野で通常使われている分散剤、酸化防止剤、消泡剤、UV吸収剤などをさらに含むことができる。
【0060】
上記表面処理コーティング液に含まれるポリウレタン樹脂は、ポリウレタンスキン層104を構成するポリウレタン樹脂である。すなわち、イソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールを含むポリオール化合物を重合して製造された無黄変型ポリウレタン樹脂を含む。
【0061】
上記ポリウレタン樹脂を重合するために使われたポリオール化合物として、ポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールは70〜95:1〜10:1〜20の重量比を成した方が良い。特に、本発明では表面処理コーティング層105の耐光性、耐熱老化性、耐薬品性を向上するためにポリオール化合物としてポリカーボネートポリオールとエステル系ポリオールを選択して使い、耐汚染性を向上するためにフッ素系ポリオールを選択して使う。
【0062】
上記表面処理コーティング液に含まれる光沢除去剤は、有機系微粉末または無機系微粉末を使うことができる。この時、有機系微粉末はアクリル樹脂粒子、スチレン樹脂粒子、スチレン-アクリル樹脂粒子、フェノール樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、アクリル-ポリウレタン樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子、シリコン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子などを挙げることができる。また、上記無機系微粉末は滑石、雲母、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、泥、アルミナ、シリカ、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、カーボンブラック、酸化チタン、モリブデン、水酸化マグネシウム、ベントナイト、黒煙などを使うことができる。このような粉末としては、粒子の平均粒径が10μm 未満なら制限なしに使うことが可能である。もし、平均粒径が10μmを超えると、表面処理コーティング液に分散させて製品表面に薄膜コーティングをする場合に耐スクラッチ性が悪くなって製品の外観に問題が生じることになる。この時、光沢除去剤の含量は表面処理コーティング液100重量部に対して1〜10重量部の範囲で使うことができる。上記範囲の未満では光沢を消光するための效果が十分ではなく、上記範囲を超えると人造皮革の物性が低下されるので、上記の範囲内で適切に使う。
【0063】
上記表面処理コーティング液に含まれる溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールなどを挙げることができる。また、溶媒を使った表面処理コーティング液の中で表面処理用ポリウレタン樹脂の含量は3〜60重量%であることが好ましい。
【0064】
樹脂の含量が上記最小値の未満では、成膜性及び摩擦着色性が劣れ、上記最大値を超えると乾燥後の被膜の形成が不完全であると同時に、被膜の中への有機溶剤の残留などの問題が生じる恐れがあるので好ましくない。
【0065】
本発明の人造皮革を構成する表面処理コーティング層105は、その平均厚さが0.01〜0.02mmである。
【0066】
本発明の他の態様によると、本発明はi)長繊維型高密度極細糸不織布を含んだ繊維基材層101の上に微細気孔を有するウレタン気孔層102を形成して第1シートを製造する段層;ii)剥離紙の上に、イソシアネート化合物とポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールを含むポリオール化合物を重合して製造されたポリウレタン樹脂が含まれたポリウレタン組成物をコーティングしてポリウレタンスキン層104を形成する段層;iii)上記スキン層104の上に接着層を形成して第2シートを製造する段層;及びiv)上記第1シートと第2シートを合紙した後、剥離紙を剥離する段層;を含むステアリングホイールカバー用人造皮革の製造方法をその特徴とする。
【0067】
本発明による人造皮革の製造方法を各段層毎により具体的に説明すると下記の通りである。
【0068】
i)第1シートの製造段層
長繊維型高密度極細糸不織布を含んだ繊維基材層101の上に微細気孔を有するウレタン気孔層102を形成して第1シートを製造する。
【0069】
具体的には、見掛密度が0.35g/cm
3以上、好ましくは0.35〜0.8g/cm
3、さらに好ましくは0.4〜0.5g/cm
3の長繊維型高密度極細糸不織布を繊維基材層101として使い、上記繊維基材層101の一表面上にウレタン気孔層の組成物をコーティングして第1シートを製造する。
【0070】
この時、長繊維型高密度極細糸不織布は、ポリアミド(PA、polyamide)、ポリエチレンテレフタレート(PET、polyethylene terephthalate)及びポリトリメチレンテレフタレート(PTT、polytrimethylene terephthalate)からなる群から選択された熱可塑性樹脂を島成分として含み、生分解性特性を有するポリ乳酸(PLA、polylactic acid)を海成分として含み、上記島成分60〜80重量%と海成分20〜40重量%の混合比を成しているフィラメント糸を原料として使って製造されたものを使うことができる。
【0071】
上記ウレタン気孔層の組成物は、ポリウレタン樹脂、溶媒、ウレタン気孔調節剤及びトナー(Toner)を100:30〜60:0.5〜2:0.1〜1:5〜15の重量比で含むことができる。
【0072】
上記ウレタン気孔層の組成物において、上記ポリウレタン樹脂は、イソシアネート化合物とポリエステル系ポリオール(重量平均分子量1、000〜6、000)、ポリエーテル系ポリオール(重量平均分子量1、000〜6、000)及びポリカーボネート系ポリオール(重量平均分子量1、000〜6、000)を含むポリオール化合物を重合して得られるポリウレタン予備重合体と鎖延長剤を反応させて製造することができる。上記ポリオール化合物は、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール及びポリカーボネート系ポリオールを10〜60:20〜80:5〜60の重量比で、好ましくは20〜40:30〜65:20〜50の重量比で使うことが耐加水分解性及び耐薬品性向上の面で良い。
【0073】
上記ウレタン気孔層の組成物をコーティングして形成されたウレタン気孔層102の平均厚さは0.1〜0.4mmの範囲になるようにする。
【0074】
ii)ポリウレタンスキン層104の形成段層
剥離紙の上に、特定の造成比で配合されたポリオール化合物を重合して製造されたポリウレタン樹脂が含まれたポリウレタン組成物をコーティングしてポリウレタンスキン層104を形成する段層である。
【0075】
上記剥離紙(release paper)は、紙またはフィルム材質で供えられることがあり、様々な種類を利用することができるが、特に、厚さが一定で、寸法安定性が高いものを備えて熱及び圧力によって変形されないようにすることが好ましい。
【0076】
上記ポリウレタンスキン層104を形成するためのポリウレタン組成物は、スキン層形成用ポリウレタン樹脂、溶媒及びトナーを含む。この時、スキン層形成用ポリウレタン樹脂、溶媒及びトナーは、上記ウレタン気孔層で言及したことに従う。
【0077】
具体的に、上記ポリウレタンスキン層104に含まれたポリウレタン樹脂は、イソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール(重量平均分子量800〜3500)、フッ素系ポリオール(重量平均分子量200〜4000)及びエステル系ポリオール(重量平均分子量1000〜3000)を含むポリオール化合物を重合して得られるポリウレタン予備重合体と鎖延長剤を反応させて製造することができる。上記ポリオール化合物は、ポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールは70〜95:1〜10:1〜20の重量比を成した方が良い。
【0078】
上記スキン層を形成するための組成物をコーティングして形成されたポリウレタンスキン層104の平均厚さは0.05〜0.3mmの範囲になるようにする。
【0079】
iii)第2シートの製造段層
ポリウレタンスキン層104の上部に接着層103を形成して第2シートを製造する段層である。
【0080】
上記接着剤は、当業界で使う一般的な接着剤を使うことができ、特に限定しない。好ましくは、ウレタン系接着剤、さらに好ましくは、リン、窒素系列の難燃剤が添加された2液型ウレタン接着剤を使うことが人造皮革の接着性及び難燃性を付与することができるという点で適切である。このように製造された第2シートは、剥離紙の上にポリウレタンスキン層104及び接着層103が順に積層された構造を持つ。
【0081】
iv)第1シートと第2シートの合紙段階
上記で製造した第1シートと第2シートを合紙した後、剥離紙を剥離する段層である。
【0082】
すなわち、長繊維型高密度極細糸不織布を含む繊維基材層101の上に上記ウレタン気孔層102が積層された第1シートを、第2シートの接着層を挟んで合紙した後、剥離紙を剥離する。
【0083】
v)ポリウレタン表面処理コーティング層105の形成段層
剥離紙が剥離されたスキン層の表面に、表面処理コーティング液をコーティングして光沢度を調節するためのポリウレタン表面処理コーティング層を形成する段層である。
【0084】
この時、表面処理コーティング液は、無黄変型ポリウレタン樹脂、光沢除去剤及び溶媒を含む。上記表面処理コーティング液に含まれるポリウレタン樹脂は、ポリウレタンスキン層104を構成するポリウレタン樹脂である。すなわち、イソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール(重量平均分子量800〜3500)、フッ素系ポリオール(重量平均分子量200〜4000)及びエステル系ポリオール(重量平均分子量1000〜3000)を含むポリオール化合物を重合して得られるポリウレタン予備重合体と鎖延長剤を反応して製造することができる。上記ポリオール化合物は、ポリカーボネート系ポリオール、フッ素系ポリオール及びエステル系ポリオールは70〜95:1〜10:1〜20の重量比を成した方が良い。特に、上記表面処理コーティング層105の耐光性、耐熱老化性、耐薬品性を向上するためにポリカーボネートポリオールとエステル系ポリオールを一定の含量比で使い、耐汚染性を向上するためにフッ素系ポリオールを一定の含量比で使う。
【0085】
この時、表面処理コーティング液に含まれる溶媒及びトナーは上記で言及したことに従う。
【0086】
上記表面処理コーティング液をコーティングして形成された表面処理コーティング層105は、その平均厚さが0.01〜0.02mmである。
【0087】
以上で説明した人造皮革の製造方法に従って各層を形成するためのコーティングは通常のコーティング方式によって実施するところ、例えば、エアナイフ式、グラビア方式、リバースロール式、リバースグラビア方式、スプレー方式、スロットダイコーティング、ブレードコーティング、含浸法またはスプレーコーティング法を使って成ることができ、特に制限はない。
【0088】
本発明の他の態様によると、本発明は以上で説明した人造皮革をステアリングホイールカバー材として使うことを特徴とする。したがって、本発明は上記の人造皮革を施したステアリングホイールを権利範囲に含む。
【0089】
図3及び
図4には、本発明の人造皮革を活用して製造したステアリングホイールを撮影した写真が添付されている。
図5に添付された比較例1の人造皮革と比べる時、本発明の人造皮革は耐久性に優れて、特に、しわ性、ボリューム性などの感性が優秀であることが分かる。
【0090】
以下では、本発明の好ましい実施例及び実験例を記載する。下記の実施例及び実験例は、本発明をより明確に表現するための目的として記載するだけであり、本発明の内容が下記実施例及び実験例に限定されることはない。
【0091】
[実施例]
比較準備例1: 繊維基材層用不織布の製造
繊度1.4デニール、繊維長51mmのポリエステル50%と繊度2デニール、繊維長51mmのナイロン50%を通常のニードルパンチング不織布の製造方法にしたがって230g/m
2の原反を製造して収縮させた後、3%NaOH水溶液下で30分間減量を行い、その結果は下記の表1のとおりである。
【0093】
上記表1で示すように、不織布の密度は0.21g/cm
3で収縮処理した後0.30g/cm
3と41.9%増加した。また、縦及び横方向の収縮による綿収縮率は28%収縮された。収縮して密度を高めても0.3g/cm
3以上の密度を発現することは難しい。また、減量後には、繊維が一部損傷を受けて密度が0.25g/cm
3低下される現象を表す。
【0094】
準備例1: 長繊維型高密度極細糸繊維基材層の製造
繊度3デニール、海島型(PET/Co-PET、70/30、25islands)フィラメント糸をスパンボンド/スパンレースの複合連続工程によって長繊維型高密度極細糸不織布を幅1950mm、平均重量450g/m
3及び平均厚さ1.13mmと製造し、3%NaOH水溶液下で30分間減量工程を経て長繊維型極細糸不織布を製造した。その結果は表2に示した。
【0096】
上記表2で示すように、長繊維型不織布の密度は、一般のニードルパンチング不織布の密度(一般的に0.21前後)に比べて非常に高い見掛密度を有し、別途の収縮工程を経らずに高密度の特性を表した。長繊維型不織布の場合、繊維が元の形態に戻ろうとする性質のため、減量などの後の工程で熱または物理的力などを受けても減量後の密度が減量前と類似の傾向を見せるので、安定的な高密度不織布を提供することができる。
【0097】
比較準備例2: ウレタン気孔層形成用ポリウレタン樹脂
平均分子量2、000のポリエステルポリオール110重量部(K-340(EG/1.4BD/AA)、東星化学製)、ポリエーテルポリオール50重量部(PTMEG2000、コリアPTG製)、エチレングリコール15重量部、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒100重量部を反応槽の中にそれぞれ1次投入し、50℃の温度を維持しながら1時間撹拌した後、2次で4、4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)80重量部を急激な反応が起きないように23回にわたって投入する。反応熱による温度上昇で過熱しないように80℃に温度が維持されるようにしながら、6時間ポリオールとジイソシアネートのNCO/OH比が1.0になるように反応させる。反応物の温度が75 ℃以下でブロッキング剤でメタノール1重量部、ジメチルホルムアミド(DMF)190重量部を投入してNCO基をマスキングした後、-NCO基がないことを確認して反応を終了した。
【0098】
次に、上記反応過程で黄変防止剤と酸化防止剤0.3重量部をそれぞれ添加して末端NCO基をブロッキングした一般タイプのウレタン気孔層形成用ポリウレタンを製造した。
【0099】
準備例2: ウレタン気孔層形成用ポリウレタン樹脂
平均分子量2、000であるポリエステルポリオール(K-340(EG/1.4BD/AA)、東星化学製)、平均分子量2、000であるポリエーテルポリオール(PTMEG2000、コリアPTG製)、平均分子量2、000であるポリカーボネートポリオール(T-6002、日本、Asahi Kasei製)を30:50:20の重量比で含むポリオール100重量部に対して、エチレングリコール16重量部、ジメチルホルムアミド270重量部を反応槽の中にそれぞれ1次投入し、50℃の温度を維持しながら1時間撹拌した後、2次で4、4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)90重量部を急反応が起きないように3回にわたって投入し反応させた。反応熱による温度上昇で過熱されないように80℃の範囲内と温度が保つようにしながら、6時間ポリオールとジイソシアネートのNCO/OH比が1.0になるように反応させ、反応物の温度が70℃でブロッキング剤で上記ポリオール100重量部に対してメタノール0.01重量部、ジメチルホルムアミド270重量部を投入し、NCO基をマスキングした後、NCO基がないことを確認して反応を終了した。そして上記反応過程で黄変防止剤と酸化防止剤それぞれ0.3重量部、セル調節剤0.2重量部を添加して末端NCO基をブロッキングしたポリウレタン樹脂を製造した。
【0100】
準備例3: ウレタン気孔層形成用ポリウレタン樹脂
上記準備例2と同一の方法でポリウレタン樹脂組成物を製造するが、ポリオールを平均分子量2、000のポリエステルポリオール(K-340(EG/1.4BD/AA)、東星化学製)、平均分子量2、000のポリエーテルポリオール(PTMEG2000、コリアPTG製)、平均分子量2、000のポリカーボネートポリオール(T-6002、日本 Asahi Kasei製)を20:30:50の重量比でポリオールを使用した。
【0101】
比較準備例3: スキン層形成用ポリウレタン樹脂
重量平均分子量2、000のポリカーボネートポリオール100重量部(T-6002、日本 Asahi Kasei製)、1、4-ブタンジオール3重量部、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒190重量部を反応槽の中にそれぞれ1次投入し、50℃の温度を維持しながら1時間撹拌した後、2次でイソホロンジイソシアネート(Isophorone Diisocyanate、IPDI)30重量部を急激な反応が起きないように2〜3回にわたって投入した。反応熱による温度上昇で過熱されないように、80℃と温度が維持されるようにしながら、6時間ポリオールとジイソシアネートのNCO/OH比が1.0になるように反応させた。反応物の温度が75℃以下でブロッキング剤としてメタノール1重量部、メチルエチルケトン(MEK)60重量部、イソプロピルアルコール(IPA)100重量部を投入し、NCO基をマスキングした後、-NCO基がないことを確認して反応を終了した。
【0102】
次に、上記反応過程で黄変防止剤と酸化防止剤0.3重量部をそれぞれ添加して末端NCO基をブロッキングしたポリカーボネートタイプのスキン層形成用ポリウレタンを製造した。
【0103】
準備例4: スキン層形成用ポリウレタン
重量平均分子量2、000のポリカーボネートポリオール100重量部(T-6002、Asahi Kasei製)、重量平均分子量580のフッ素系ポリオール(FC-502、3M社製)6重量部、重量平均分子量2000のエステル系ポリオール(K-340(EG/1.4BD/AA)、東星化学製)10重量部、エチレングリコール2重量部、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒90重量部を反応槽の中にそれぞれ1次投入し、50℃の温度を維持しながら1時間撹拌した後、2次でジシクロヘキシルメタン-4、4-ジイソシアネート(H
12MDI)40.4重量部を急激な反応が起きないように2〜3回にわたって投入した。2時間ポリオールとジイソシアネートを反応させた。3次でイソホロンジアミン(Isophorondiamine、IPDA)10重量部を反応熱による温度の上昇で過熱されないように80℃と温度が維持しながら3〜4回にわたって投入し、粘度を上昇させた。適正粘度に達すると、反応物の温度が75℃以下でブロッキング剤としてメタノール1重量部、ジメチルホルムアミド(DMF)180重量部、メチルエチルケトン(MEK)40重量部、イソプロピルアルコール(IPA)140重量部を投入してNCO基をマスキングした後、-NCO基がないことを確認して反応を終了した。次に、上記反応過程で黄変防止剤と酸化防止剤0.3重量部をそれぞれ添加し、末端NCO基をブロッキングしたスキン層形成用ポリウレタンを製造した。
【0104】
ジメチルホルムアミド15重量部、メチルエチルケトン30重量部、色相発現トナー15重量部を混合した後、高速撹拌機で約30分間混合してポリウレタンスキンコーティング液を製造した。ポリウレタン接着溶液は、ウレタン接着剤(ポリカーボネートポリオール/1、4-ブチレングリコール/トルエンジイソシアネート/メチレンジイソシアネートの反応合成物、70%固形分、80、000〜100、000 cps/25)100重量部、ジメチルホルムアミド10重量部、メチルエチルケトン30重量部を混合した後、架橋剤13重量部を添加して接着剤組成物を製造した。
【0105】
準備例5: 表面処理コーティング液の製造
重量平均分子量2、000のポリカーボネートポリオール(T-6002、Asahi Kasei製)100重量部、重量平均分子量580のフッ素系ポリオール(FC-502、3M社製)10重量部、重量平均分子量2000のエステル系ポリオール(K-340(EG/1.4BD/AA)、東星化学製)5重量部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及び4、4-ジアミノジシクロヘキシルメタン(H
12MDI)を主原料とする無黄変型ポリウレタン樹脂を準備した。無黄変型ポリウレタン樹脂100重量部にジメチルホルムアミド(DMF)50重量部、メチルエチルケトン(MEK)20重量部、イソプロピルアルコール(IPA)30重量部を投入し、常温で2時間低速撹拌して固形分15%のウレタンコーティング液を製造した。ここに反応性添加剤であるヒドロキシシリコン変性ポリアクリレート(BYK-SILCLEAN3700、BYK コリア製)を6重量部投入して約1時間撹拌した後、消泡剤(BYK-066N、BYK コリア製)0.2重量部、酸化防止剤(Irganox1135、BASF社製)0.5重量部及び黄変防止剤(ZIKASORB BS、Jico社製)0.15重量部を投入して撹拌した。以後、シリカ(Deggusa TS-100)0.5重量部、ウレタンビード(C-800T、Doosung Chemis社製)1.0重量部を撹拌しながら順に投入した後、混合した。以後、メラミン樹脂(CYMEL325、Allnex製)15重量部を投入して約20分間低速で撹拌した後、反応促進剤であるp-トルエンスルホン酸20重量部を混合して表面処理コーティング液を製造した。
【0106】
実施例1: 人造皮革の製造
上記準備例1によって用意された長繊維型極細糸不織布の上に上記準備例2によって製造されたウレタン気孔層形成用ポリウレタン樹脂、ジメチルホルムアミド、ウレタン気孔調節剤(ポリエーテル変性ポリシロキサン溶液、BYK-L9525、UnI Trading Corp.製)、界面活性剤(DISPERBYK-130、BYK コリア)、トナー(SBW-7388-Black、一三製)が100:40:1:0.5:5の重量部比からなる気孔層形成用コーティング液でコーティングし、ジメチルホルムアミド水溶液で凝固及び水洗工程を通じてウレタン微細気孔層が形成された湿式銀層コーティング面を形成し、これを熱テンタで乾燥して繊維基材層-ウレタン気孔層が積層された第1シートを製造した。
【0107】
以後、上記準備例4によるスキン層形成用組成物を剥離紙にスキンコーティングして0.09mmの厚さ(乾燥後の厚さ基準)のスキン層を形成した後、100℃で5分間乾燥した。乾燥したスキン層に上記準備例4による2液型接着剤をコーティングして0.12mmの厚さ(乾燥後の厚さ基準)の接着層を形成した後、90℃で1分間熱を加えて接着剤層を硬化して第2シートを製造した。そして、第2シートの接着層に上記で製造された繊維基材層-ウレタン気孔層が積層された第1シートを合紙し、80℃の温度を維持させながら48時間熟成した後、剥離紙に積層された人造皮革を剥離させて人造皮革を製造した。
【0108】
実施例2: 人造皮革の製造
上記準備例3によって製造された気孔層形成用ポリウレタン樹脂を使ったことを除いて上記実施例1と同一に行って人造皮革を製造した。
【0109】
実施例3: 人造皮革の製造
上記準備例5で製造した表面処理コーティング液をグラビアコータを利用して上記実施例1の人造皮革に20g/m
2をコーティングした後、100℃で2分間乾燥した。
【0110】
比較例1: 人造皮革の製造
上記比較準備例1によって製造された原反を用意した後、上記比較準備例3によるスキン層形成用組成物を剥離紙にスキンコーティングし、0.09mmの厚さ(乾燥後の厚さ基準)のスキン層を形成した後、100℃で5分間乾燥した。乾燥したスキン層の上部に上記比較準備例3による2液型接着剤をコーティングして0.12mmの厚さ(乾燥後の厚さ基準)の接着層を形成した後、90℃で1分間熱を加えて硬化させた。そして、接着剤層に比較準備例1によって用意された原反を合紙し、80℃の温度を維持しながら48時間熟成した後、剥離紙に積層された人造皮革を剥離して、短繊維型極細糸繊維基材にスキン層が形成された人造皮革を製造した。
【0111】
[実験例]
実験例1: ウレタン気孔層の物性測定
上記比較準備例2、準備例2及び準備例3で製造したポリウレタン樹脂組成物を湿式加工で平均厚さ0.25mmを有するシート形態にそれぞれ製造した後、シートの物性を下記のような方法で測定した。その結果を下記表3に示した。
【0112】
[実験方法]
(1)引張特性: シートをKS M 6782、ASTM D-412、JIS K7311に基づいて引張特性を測定した。
(2)耐熱老化性: シートを100±2℃の温度で維持した熱風循環オーブンで168時間維持した後、上記同様に引張特性を測定した。
(3)耐加水分解性:DIN EN ISO2440に基づいてシートを70±2℃、98±2% RH条件の飽和水蒸気中に168時間保持した後、取り出して室温中に1時間放置し、上記同様に引張特性を測定した。
(4)剥離強度: シートの両面に25mm幅のホットメルトテープを130℃で5秒間熱融着し、KS M0533、JIS K 6854に基づいてシートの層間剥離強度を測定した。
下記表3において、Wは幅方向(width)を意味し、Lは長手方向(length)を意味する。
【0114】
上記表3に記載されたウレタン気孔シートの物性結果を見ると、耐加水分解性及び耐熱老化性のテスト後の物性変化の程度を比べると、本発明の準備例2と準備例3が比較準備例2に比べて優秀な特性を有することが分かる。
【0115】
実験例2: 人造皮革製品の物性測定
上記実施例1〜3及び比較例1で製造した人造皮革の物性を下記のような方法で測定した。その結果を下記表4に示した。
【0116】
[実験方法]
(1)耐光性
ISO105によって規定した試験機でブラックパネル(Black Panel)の温度90℃、槽内湿度50%RHで126MJ/m
2に照射した後、肉眼による退色の差をISO105-A02に規定されているグレースケール(Gray Scale)で判定して等級を求めた。
(2)耐熱老化性
シートを140℃の温度で維持した熱風循環オーブンで96時間維持した後、肉眼による退色の差をISO105-A02に規定されているグレースケール(GREY SCALE)で判定して等級を求めた。
(3)摩擦着色性
摩擦試験機(JIS L0823の染色堅牢度用摩擦試験機II型の試験台に固定し、白綿布で試験機の摩擦子を覆って固定した。4.9N(500gf)の荷重、往復速度30 回/分、移行距離100mmで試片の表面を100回往復させた後、白綿布の汚染度を汚染用グレースケール(JIS L0805の汚染用グレースケール)で判定して等級を求めた。さらに、白綿布を人工汗液に10分間沈積し、軽く絞って摩擦試験を行って判定した。上記人工汗液はJIS K9019(リン酸ナトリウム12水塩)の1級以上8g、JIS K8150(塩化ナトリウム)の1級以上8g及びJIS K8355(氷酢酸)の1級以上5gを純水に混合して体積を1Lと合わせた(pH4.5)。
(4)耐薬品性
試験液(弱アルカリ性ガラス洗浄剤、95%の蒸溜水と5%の中性洗剤の混合液、50%のイソプロピルアルコールと50%の蒸溜水の混合液、無縁ガソリン)を十分につけて濡らしたガーゼで表皮面を10回往復して拭いた後、室温中で1時間放置して肉眼による退色の差をISO105-A02に規定されているグレースケール(GREY SCALE)で判定して等級を求めた。
(5)静荷重伸率
幅50mm、長さ250mmの試験片を縦方向で5個、横方向で5個の試片を取り、その中央部に距離100mmの標線を引く。試片をクランプ間隔150mmにして披露度試験機に装着して78.4N(8kgf)の荷重(下部クランプの荷重を含む)をかける。荷重をかけたまま10分間放置して標線間距離を求めた。
【数1】
(上記式1で、Loは8kgfの荷重をかけて10分間放置した後の標線間距離(mm)である)
(6)感性
EN ISO17235に基づいた試験方法によってボリューム感、触感などの感性(softness)を評価した。
【0118】
上記表4で確認されるように、本発明の実施例1及び2の人造皮革は、比較例1に比べて耐光性、耐薬品性、耐熱老化性などに優れた特性を示し、ボリューム感、触感などの感性が卓越で、天然皮革の質感と類似の傾向を見せている。
【0119】
特に、静荷重伸率が横方向の静荷重伸率が25%以上であると縫製時に縫製穴が垂れるし、長期間使用する時に形態安定性が低下する。
【0120】
一方、
図3は本発明の実施例1で製造した人造皮革を活用して製造したステアリングホイールを撮影した写真、
図4は本発明の実施例3で製造した人造皮革を活用して製造したステアリングホイールを撮影した写真、
図5は比較例1で製造した人造皮革を活用して製造したステアリングホイールを撮影した写真をそれぞれ添付した。
図3及び
図4に示したように、実施例1及び実施例3の場合、
図5に図示した比較例1に比べて縫目強度及び曲面部位のしわ性が非常に良好であることが分かる。