【文献】
松井陽,胆道閉鎖症早期発見のための便色カード活用マニュアル,平成23年度厚生労働科学研究費補助金成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業小児慢性特定疾患の登録・管理・解析・情報提供に関する研究,2012年 3月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、前記色特徴量それぞれについて、前記第1の特徴量と前記色特徴量との類似度、及び前記第2の特徴量と前記色特徴量との類似度を用いて、判定が可能か否か決定し、判定が可能で無ければ前記判定結果として判定不能と判定し、
前記判定結果それぞれは、特定の病気の可能性の有無、判定不能の三つの選択肢が取り得るか、または健康状態の善し悪し、判定不能の三つの選択肢が取り得、
前記多数決部は、多数決の結果、判定不能となった場合には、所定の時間経過後の再判定を促すための出力情報を出力する
請求項1に記載の情報処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
更に、被特許文献1では自動判別化により、観察者が紙ベースの便色見本と乳幼児の便色を比較したときに発生しうる、主観によるバイアスは軽減できるものの、便色カラーカードが内包する他の問題点をすべて解消するには至っていない。主観的なバイアスが入り込む以外の問題点としては、カラーカード4番の偽陰性の問題があげられる。これは、胆道閉鎖症と最終的に診断を受けた乳幼児の多くが、カラーカード上では、「要観察(明らかな陽性色ではない)」として定義されている4番の色を示しているという実態があるからである。要観察の色味に対応する便色は、健常児と同様に胆道閉鎖症の発症の初期段階でもみられるため、1時点での判別ではなく、その後、便色が薄くなっていくか否かの継時的な観察と判断が必要となる。胆道閉鎖症の発症から60日以内の外科的介入が予後を改善するという点を踏まえ、胆道閉鎖症の早期発見を促すためには、生後1か月の段階で、このカラーカードの4番の色味に対して継時的な観察が必要であること、さらに、継時的に観察し色味が変化してきた時点で検知できるシステムが必要である。
【0020】
また、胆道閉鎖症ではない他の病気であっても、「要観察(明らかな陽性色ではない)」と判断された場合には、継時的な観察し、色味が変化してきた時点で検知できるシステムが必要である。
【0021】
各実施形態では一例として、生体からの排出物として便を対象とし、特定の病気として胆道閉鎖症を対象として、胆道閉鎖症の可能性の有無の判定方法について説明する。以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
第1の実施形態では、既存の胆道閉鎖症児と健常児の便色写真の色情報を50サンプル抽出し、それぞれからRGB及びHSV値を測定し、胆道閉鎖症の有無をアウトカムとして、ロジスティック回帰分析を行った。
図1は、ロジスティック回帰分析の結果を示す表である。
図1では、Red(赤)、Green(緑)、Blue(青)、Hue(色相)、Saturation(彩度)、 Value(明度)それぞれの粗オッズ比(Crude OR)と95%信頼区間(Confidence Interval:CI)とp値(p-value)を示している。
【0023】
このロジスティック回帰分析の結果、
図1に示すように、Hue(色相)及びSaturation(彩度)のp値が最も小さいので、胆道閉鎖症の有無を予測する因子として、Hue(色相)及びSaturation(彩度)の値が統計的に最も有意であるという結果が得られた。このため、第1の実施形態では、色情報は、Hue(色相)及びSaturation(彩度)の情報が含まれるHSVの値を使用する。これにより、胆道閉鎖症の可能性の有無を精度良く判定することができる。
【0024】
図2は、第1の実施形態に係る情報処理システムの概略構成図である。情報処理システム10は、端末装置1−1、…、1−N(Nは自然数)と、情報処理装置2とを備える。
端末装置1−1、…、1−Nは、無線通信可能であり、通信ネットワーク網3を介して情報処理装置2と通信可能である。端末装置1−1、…、1−Nは、多機能携帯電話(いわゆるスマートフォン)、タブレット端末またはノートパソコンなどである。第1の実施形態に係る端末装置1−1、…、1−Nは一例としてスマートフォンであるものとして以下説明する。情報処理装置2は一例としてサーバであるものとして以下説明する。以下、端末装置1−1、…、1−Nを総称して端末装置1という。
【0025】
図3は、端末装置の概略構成図である。
図3に示すように、端末装置1は、RAM(Random Access Memory)11、記憶部12、タッチパネル13、撮像部14、表示部15、通信部16及びCPU(Central Processing Unit)17を備える。RAM(Random Access Memory)11は、情報を一次記憶する。記憶部12は、各種プログラムが記憶されている。タッチパネル13は、タッチパネル上におけるユーザの操作を受け付ける。撮像部14は、タッチパネル13を用いたユーザの操作に応じて、便を撮像する。表示部15は、CPU17の制御に従って情報を表示する。通信部16は、無線通信回路であり、CPU17の制御に従って情報処理装置2と通信する。
【0026】
CPU17は、ユーザの操作に従って、アプリケーション配信サーバから、胆道閉鎖症の可能性の有無を判定する対象アプリをダウンロードするよう通信部16を制御し、ダウンロードして対象アプリを記憶部12に記憶させる。CPU17は、ユーザの操作に従って、対象アプリを起動する。そして、CPU17は、対象アプリにおいて、ユーザの操作に従って、便を撮像するよう撮像部14を制御する。
【0027】
図4は、対象アプリにおける便の画像領域の指定方法である。
図4に示すように、
図4の左側の赤枠F1の範囲で撮影することにより、
図4の右側のように便の画像の画像領域B1が特定される。そして通信部16は、画像領域B1のデータを情報処理装置2へ送信する。情報処理装置2では一例として、この画像領域B1が破線に示すように9つに分割され、分割後の9つの画像領域それぞれについて判定が行われる。
【0028】
図5は、対象アプリにおける便の画像領域の別の指定方法である。
図5に示すように、便の画像を、スワイプするなどして拡大した場合に、拡大画像B2全体が判定に使用される。そして通信部16は、拡大画像B2のデータを情報処理装置2へ送信する。情報処理装置2では一例として、この拡大画像B2が破線に示すように9つに分割され、分割後の9つの画像領域それぞれについて判定が行われる。
【0029】
図6は、第1の実施形態に係る情報処理装置の概略構成図である。
図6に示すように、情報処理装置2は、RAM21、記憶部22、通信部23、CPU24が記憶されている。RAM21は、情報を一次記憶する。記憶部22は、各種プログラムが記憶されている。通信部23は、無線通信回路であり、CPU24の制御に従って端末装置1と通信する。CPU24は、記憶部22からプログラムを読み出して実行することにより、
図7に示す機能ブロック図の各機能を実行する。
【0030】
図7は、第1の実施形態に係る情報処理装置の機能ブロック図である。
図7に示すように、CPU24は、第1の特徴量決定部241、第2の特徴量決定部242、抽出部243、生成部244、判定部245、及び多数決部246として機能する。
【0031】
第1の特徴量決定部241は、特定の病気または特定の健康異常がある群における排出物または対象領域の色の特徴を表す第1の特徴量を決定する。第1の実施形態ではその一例として、第1の特徴量決定部241は、胆道閉鎖症患者における便の色の特徴を表す第1の特徴量を決定する。
【0032】
第2の特徴量決定部242は、健常者または健康良好な群における排出物または対象領域の色の特徴を表す第2の特徴量を決定する。第1の実施形態ではその一例として、第2の特徴量決定部242は、健常児における便の色の特徴を表す第2の特徴量を決定する。
【0033】
以下、具体的な処理について説明する。第1の実施形態では機械学習の一例としてクラフィック法(CLAFIC法)を用いる。また、胆道閉鎖症30症例、健常児34症例の便色写真を使用する。予め各症例につき1枚の便色写真から観測値としてHSVの情報に基づく数値ベクトルを獲得し、その後、分割交差検証に基づき、自己相関行列の固有ベクトルを何次まで用いるかを示す閾値の最適を行う。
【0034】
図8は、画素値の取得順序を示す模式図である。
図9は、色ベクトルの概略を示す図である。
図10は、固有ベクトルを表す表である。続いて、胆道閉鎖症30症例、健常児34症例の便色写真それぞれについて、
図8のように、便が写った画像領域Rを抽出する。そして、抽出した画像について、
図8の矢印A1に示す方向に、所定数の画素飛ばしで、画素値をHSVにより抽出する。そして、
図9に示すように、それぞれの症例について、H値の集まり、S値の集まり、V値の集まりが順に並んだ色ベクトルを作る。例えば、抽出した画像が396×379の合計150084のピクセル数値データの場合、132個ごとの画素値を抽出すれば最終的にH値、S値、V値に関するデータはそれぞれ1137個になる。従って、この場合の色ベクトルは1行3411列のデータである。
【0035】
胆道閉鎖症児の群のi番目の観測値(色ベクトル)は、次の式により表される。
【0036】
X1_{i} = (x1_{i,1}, x1_{i,2}, ... , x1_{i,3411})
T (1)
【0037】
ただし、X1_{i}はノルム1に正規化されているものとする。ここで、jをインデックスとするとx1_{i,j}は画素値を表し、Tは転置を表す。胆道閉鎖症児の群の観測値数(症例数)をN1(ここでは一例として30)としたとき、はじめに自己相関行列G1が計算される。自己相関行列G1は以下の式(2)で表される。
【0039】
ここで、Tは転置を表している。自己相関行列G1は、自己相関行列G1の固有値λ1および正規固有ベクトルv1により、次式のように展開される。
【0040】
G1 = λ1_1・v1_1・v1_1
T +λ1_2・v1_2・v1_2
T + ・・・ + λ1_3411・v1_3411・v1_3411
T
【0041】
交差検証法により与えられた閾値に基づき、最大固有値λ1_1に対する固有ベクトルv1_1からc1番目に大きい固有値λ1_c1に対する固有ベクトルv1_c1までを採用し、次の固有ベクトル行列C1が作成される(ただし、1≦c1≦3411)。
【0042】
C1 := (v1_1, v1_2, ... , v1_c1)
【0043】
これらの計算が第1の特徴量決定部241により行われる。続いて、健常児の群のi番目の観測値は(色ベクトル)は、次の式により表される。
【0044】
X0_{i} := (x0_{i,1}, x0_{i,2}, ... , x0_{i,3411})
T (3)
【0045】
ただし、X0_{i}はノルム1に正規化されているものとする。ここで、x0_{i,j}は画素値を表し、Tは転置を表す。健常児の群の観測値数(症例数)をN0(ここでは一例として34)としたとき、はじめに自己相関行列G0が計算される。自己相関行列G0は以下の式(4)で表される。
【0047】
ここで、Tは転置を表している。自己相関行列G0は自己相関行列G0の固有値λ0および正規固有ベクトルv0により以下のように展開される。
【0048】
G0 = λ0_1・v0_1・v0_1
T +λ0_2・v0_2・v0_2
T + ・・・ + λ0_3411・v0_3411・v0_3411
T
【0049】
最終的に交差検証法により与えられた閾値に基づき、最大固有値λ0_1に対する固有ベクトルv0_1からc0番目に大きい固有値λ0_c0に対する固有ベクトルv0_c0までが採用され、以下の固有ベクトル行列C0が作成される(ただし、1≦c0≦3411)。
【0050】
C0 := (v0_1, v0_2, ... , v0_c0)
【0051】
これらの計算は、第2の特徴量決定部242により行われる。
【0052】
第1の特徴量決定部241は、自己相関行列G1の固有ベクトルv1_1, v1_2, ... , v1_c1を、胆道閉鎖症児の便の色の特徴を表す第1の特徴量として記憶部22に記憶する。ここで固有ベクトルv1_1は最も大きい固有ベクトルで、固有ベクトルv1_2は固有ベクトルv1_1と直交する2番目に大きい固有ベクトルであり、固有ベクトルv1_c1は、他の固有ベクトル全てと直交するc1番目に大きい固有ベクトルである。
【0053】
第2の特徴量決定部242は、自己相関行列G0の固有ベクトルv0_1, v0_2, ... , v0_c0を、健常児の便の色の特徴を表す第2の特徴量として記憶部22に記憶する。ここで固有ベクトルv0_1は最も大きい固有ベクトルで、固有ベクトルv0_2は固有ベクトルv0_c0と直交する2番目に大きい固有ベクトルであり、固有ベクトルv0_c0は、他の固有ベクトル全てと直交するc0番目に大きい固有ベクトルである。
【0054】
これにより、
図10に示すように、記憶部22には、自己相関行列G1の固有ベクトルv1_1, v1_2, ... , v1_c1と、自己相関行列G0の固有ベクトルv0_1, v0_2, ... , v0_c0が予め記憶される。以下、閾値c1,c0が3であるものとして説明する。
【0055】
抽出部243は、生体からの排出物の画像または生体の対象領域の画像から複数の画像領域を抽出する。第1の実施形態では生体からの排出物は、便であり、抽出部243は一例として、便の画像(例えば、画像領域B1または拡大画像B2)から9つの画像領域を抽出する。
【0056】
生成部244は、抽出された画像領域それぞれについて、色情報を表す色特徴量を生成する。この際に生成部244は、抽出された画像領域それぞれについて、
図8の矢印A1に示す方向に、所定数の画素飛ばしで、画素値をHSVにより抽出する。そして、生成部244は、
図9に示すように、H値の集まり、S値の集まり、V値の集まりが順に並んだ色ベクトルxを色特徴量として生成する。
【0057】
判定部245は、生成された色特徴量それぞれに対する、特定の病気または特定の健康異常がある群における排出物または対象領域の色の特徴を表す第1の特徴量との類似度、及び健常者または健康良好な群における排出物または対象領域の色の特徴を表す第2の特徴量との類似度を計算し、これらの類似度を用いて特定の病気の可能性の有無または健康状態の善し悪しを判定する。第1の実施形態では、特定の病気は、胆道閉鎖症であり、判定部245は、胆道閉鎖症の可能性の有無を判定する。
【0058】
具体的には例えば、判定部245は、自己相関行列G1の固有ベクトルv1_1, v1_2, … ,v1_c1から計算される射影行列に色ベクトルxを射影したときのベクトルのノルム2乗値(第1のノルム2乗値という)を計算する。この量が大きいほど、xとベクトルX1_{i}との距離の総和(第1の総和という)が小さいことになる。従って、この総和は、色ベクトルxと第1の特徴量の類似度の一例である。
また、判定部245は、自己相関行列G0の固有ベクトルv0_1, v0_2, … ,v0_c0から計算される射影行列に色ベクトルxを射影したときのベクトルのノルム2乗値(第2のノルム2乗値という)を計算する。この量が大きいほど、xとベクトルX0_{i}との距離の総和(第2の総和という)が小さいことになる。従って、この総和は、色ベクトルxと第2の特徴量の類似度の一例である。
【0059】
そして、判定部245は、第1のノルム2乗値と第2のノルム2乗値同士を比較して、大きい方の群に属しているものと判定する。すなわち、判定部245は、第1のノルム2乗値の方が大きければ、胆道閉鎖症の可能性有りと判定し、一方、第2のノルム2乗値の方が大きければ、胆道閉鎖症の可能性無しと判定する。
【0060】
多数決部246は、判定部245による複数の判定結果を多数決して、多数決結果に基づく出力情報を出力する。この出力情報は通信部23から端末装置1に送信される。これにより、端末装置1は、胆道閉鎖症の可能性の有無の表示することができる。この結果、胆道閉鎖症児の学習データ30例は全て正しく判別された。
【0061】
また、健常児の学習データ34例についても全て正しく判別された。すなわち、本実施形態に係る特異度は100%である。ここで、特異度は陰性のものを正しく陰性と判定する確率である。一方、非特許文献1で報告されたPoopMDは、健常者の学習データ27例について、3例については中間と判断しており、特異度は89(=24/27×100)%である。よって、本実施形態に係る情報処理装置2は、非特許文献1で報告されたPoopMDに比べて、特異度が高い点で優れている。
【0062】
特に、日本で全国的に使用されている既存の便色カラーカードでは判別が難しいカラーカード4番の色味についても、同じような色味をもった胆道閉鎖症の症例の便色情報と、健常児の便色情報を読み込ませることにより、判断が難しい色調の便色についても正しく判別可能であった。
【0063】
但し、カラーカード4番に相当するような便色については1時点では判断が難しい場合もある。それに対して第1の実施形態では、判定部245は、色特徴量それぞれについて、前記第1の特徴量と色特徴量との類似度、及び第2の特徴量と色特徴量との類似度を用いて、判定が可能か否か決定し、判定が可能で無ければ判定結果として判定不能と判定する。具体的には例えば、第1のノルム2乗値と第2のノルム2乗値のうちの大きい方の値が予め決められた第1の設定値以下である場合、「判定不能」と判定し、第1の設定値を超え且つ予め決められた第2の設定値以下である場合、「明日もう一度」と判定し、第2の設定値を超える場合に、胆道閉鎖症の可能性の有無を判定することなども可能である。ここで、第2の設定値は第1の設定値より大きい。
【0064】
そして、多数決部246は、多数決の結果、判定不能となった場合には、所定の時間経過後の再判定を促すための出力情報を出力する。例えば、多数決部246は、翌日の検査値で再判定するよう促すアラートを端末装置1に表示するための出力情報を出力する。この出力情報は通信部23から端末装置1に送信される。これにより、端末装置1は翌日の検査値で再判定するよう促すアラートを表示することができる。
【0065】
これにより、カラーカード4番に相当する便色で1時点では判断が難しい場合、翌日にもう一度検査を行うように促す。このため、翌日に便色が更に白っぽく変わっていき、カラーカード3以下の便色に相当する便色の場合に胆道閉鎖症の可能性が有ると判断することができる。これにより、カラーカード4番に相当する便色の後に、便色が薄くなっていくか否かの継時的な観察と判断を行うように促すことができ、胆道閉鎖症の早期発見を促すことができる。
【0066】
以上、第1の実施形態に係る情報処理装置2において、抽出部243は、便の画像から複数の画像領域を抽出する。そして、生成部244は、抽出された画像領域それぞれについて、色情報を表す色特徴量を生成する。そして、判定部245は、生成された色特徴量それぞれに対する、胆道閉鎖症児群における便の色の特徴を表す第1の特徴量との類似度、及び健常児群における便の色の特徴を表す第2の特徴量との類似度を用いて、胆道閉鎖症の可能性の有無を判定する。そして、多数決部246は、複数の判定結果を多数決して、多数決結果に基づく出力情報を出力する。
【0067】
この構成により、便の画像から抽出した複数の画像領域について判定を行い、判定で得られた複数の判定結果を多数決する。このため、便の画像の一部に色が異なる領域があるかまたはノイズが載って一部の画像領域について間違った判定を行ったとしても、他の過半数以上の画像領域で正しい判定を行えば、正しい判定結果を得ることができる。これにより、便の画像の一部に色が異なる領域があるかまたはノイズが載ったとしても、胆道閉鎖症の有無の判定の精度を維持することができる。
【0068】
なお、第1の実施形態では色情報として、Hue(色相)及びSaturation(彩度)の情報が含まれるHSVの値を使用したが、これに限ったものではない。色情報は、Hue(色相)及びSaturation(彩度)のいずれか一つだけでも良いし、HVの値を使用してもよいし、SVの値を使用してもよい。
【0069】
また、第1の実施形態では、ロジスティック回帰分析の結果に基づいて、Hue(色相)及びSaturation(彩度)の情報が含まれるHSVの値を色情報の好ましい態様として用いたが、RGBの値を色情報として使用してもよい。
【0070】
なお、第1の実施形態では、多数決部246は、判定結果全てを多数決したが、これに限ったものではない。判定不能以外の判定結果を多数決してもよい。
【0071】
また第1の実施形態では、判定結果それぞれは、胆道閉鎖症の可能性の有無、判定不能の三つの選択肢が取り得たが、これに限ったものではない。健康状態の善し悪しを判定する場合には、健康状態の善し悪し、判定不能の三つの選択肢が取り得る。
【0072】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について説明する。
図11は、第2の実施形態に係る情報処理装置の機能ブロック図である。
図11に示すように、
図7の構成と比べて、第2の実施形態は分割数決定部247、及び第2の多数決部248が追加された構成になっている。
分割数決定部247は、抽出部243で分割する画像領域の数を複数決定する。例えば、分割数決定部247は、乱数を用いて分割する画像領域の数を複数決定する。ここでは、分割する画像領域の数を9、16、25とした場合を例に説明する。
【0073】
抽出部243が9分割した場合について、生成部244、判定部245、多数決部246が順次処理を実行し、多数決部246は第1の多数決結果を記憶部22に保存する。同様に、抽出部243が16分割した場合について、生成部244、判定部245、多数決部246が順次処理を実行し、多数決部246は第2の多数決結果を記憶部22に保存する。同様に、抽出部243が25分割した場合について、生成部244、判定部245、多数決部246が順次処理を実行し、多数決部246は第3の多数決結果を記憶部22に保存する。
【0074】
次に第2の多数決部248は、記憶部22から、第1の多数決結果〜第3の多数決結果の三つの多数決結果を読み出して多数決し、多数決結果に基づく出力情報を出力する。この出力情報は、胆道閉鎖症の可能性の有無または所定の時間経過後の再判定を促すための情報が含まれる。これにより、画像の分割数を三つ用意してそれぞれの多数決結果を更に多数決することによって、画像の分割数に起因する判定誤りを防ぐことができ、判定結果のロバスト性を向上させることができる。
【0075】
(第3の実施形態)
続いて、第3の実施形態について説明する。
図12は、第3の実施形態に係る情報処理装置の機能ブロック図である。
図12に示すように、
図7の構成と比べて、第3の実施形態は判定部245−1、245−2、245−3の三つに増え、多数決部246−1、246−2、246−3の三つに増え、及び第2の多数決部249が追加された構成になっている。
【0076】
図13は、第3の実施形態に係る固有ベクトルを表す表である。第1の実施形態では、一つの症例について一つの画像領域Rを抽出して固有ベクトルを決定したが、第3の実施形態では一つの症例について三つの領域R1、R2、R3を抽出して、それぞれの領域毎に固有ベクトルを決定する。これにより、記憶部22には、
図13の表に示すように、胆道閉鎖症児の領域R1の固有ベクトルとしてv1_{1,1}, v1_{2,1}, ... ,v1_{c1_1,1}が記憶され、健常児の領域R1の固有ベクトルとしてv0_{1,1},v0_{2,1}, ... ,v0_{c0_1,1}が記憶されている。更に、記憶部22には、
図13の表に示すように、胆道閉鎖症児の領域R2の固有ベクトルとしてv1_{1,2}, v1_{2,2}, ... ,v1_{c1_2,2}が記憶され、健常児の領域R2の固有ベクトルとしてv0_{1,2}, v0_{2,2}, ... ,v0_{c0_2,2}が記憶されている。更に、記憶部22には、
図13の表に示すように、胆道閉鎖症児の領域R3の固有ベクトルとしてv1_{1,3}, v1_{2,3}, ... ,v1_{c1_3,3}が記憶され、健常児の領域R3の固有ベクトルとしてv0_{1,3}, v0_{2,3}, ... ,v0_{c0_3,3}が記憶されている。
【0077】
判定部245−1は、記憶部22を参照して胆道閉鎖症児の領域R1の固有ベクトルv1_{1,1}, v1_{2,1}, ... ,v1_{c1_1,1}と、健常児の領域R1の固有ベクトルv0_{1,1}, v0_{2,1}, ... ,v0_{c0_1,1}を用いて、色特徴量それぞれについて胆道閉鎖症の可能性の有無を判定する。そして、多数決部246−1は、判定部245−1による複数の判定結果を多数決する。
【0078】
また判定部245−2は、記憶部22を参照して胆道閉鎖症児の領域R2の固有ベクトルv1_{1,2}, v1_{2,2}, ... ,v1_{c1_2,2}と、健常児の領域R2の固有ベクトルv0_{1,2}, v0_{2,2}, ... ,v0_{c0_2,2}を用いて、色特徴量それぞれについて胆道閉鎖症の可能性の有無を判定する。そして、多数決部246−2は、判定部245−2による複数の判定結果を多数決する。
【0079】
また判定部245−3は、記憶部22を参照して胆道閉鎖症児の領域R3の固有ベクトルv1_{1,3}, v1_{2,3}, ... ,v1_{c1_3,3}と、健常児の領域R3の固有ベクトルv0_{1,3}, v0_{2,3}, ... ,v0_{c0_3,3}を用いて、色特徴量それぞれについて胆道閉鎖症の可能性の有無を判定する。そして、多数決部246−3は、判定部245−3による複数の判定結果を多数決する。
【0080】
第2の多数決部249は、多数決部246−1、246−2、246−3による多数決結果を更に多数決して、この多数決結果に基づく出力情報を出力する。この出力情報は、胆道閉鎖症の可能性の有無または所定の時間経過後の再判定を促すための情報が含まれる。これにより、胆道閉鎖症児の固有ベクトル及び健常児の固有ベクトルを生成する画像領域を三つ用意して、それぞれについて多数決した結果を更に多数決することによって、画像領域の選択に起因する判定誤りを防ぐことができ、判定結果のロバスト性を向上させることができる。
【0081】
なお、第3の実施形態では、胆道閉鎖症児の固有ベクトル及び健常児の固有ベクトルを生成する画像領域を三つ選択したが、これに限らず、二つであっても四つ以上であってもよい。
【0082】
なお、複数の装置を備えるシステムが、各実施形態に係る情報処理装置の各処理を、それらの複数の装置で分散して処理してもよい。また、各実施形態に係る情報処理装置の一部または全部の処理を端末装置1が処理してもよい。
【0083】
また、各実施形態に係る情報処理装置の各処理を実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な他の記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、プロセッサが実行することにより、情報処理装置に係る上述した種々の処理を行ってもよい。
また、各実施形態に係る情報処理装置の各部は、ハードウェアで実装されていてもよい。
【0084】
以上、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。