特許第6625510号(P6625510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625510
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】遮熱カバーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/14 20100101AFI20191216BHJP
   F01N 13/18 20100101ALI20191216BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20191216BHJP
【FI】
   F01N13/14
   F01N13/18
   F01N13/08 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-212545(P2016-212545)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-71447(P2018-71447A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 高史
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−106415(JP,U)
【文献】 実開昭63−060008(JP,U)
【文献】 特開2015−117648(JP,A)
【文献】 特開2013−142298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源(11)からの放熱を遮断するようにして前記熱源(11)をカバーする遮熱カバーであって、前記熱源(11)に対応した形状に形成されるカバー主部(12a)と、当該カバー主部(12a)の外側もしくは内側に膨出しつつ一方向(22)に長く延びて前記カバー主部(12a)に一体に設けられる膨出部(12b)とを備え、前記一方向(22)と直交する幅方向(23)での前記膨出部(12b)の一端部に、当該膨出部(12b)の一部が切除されて成る通気孔(24,28)が、当該通気孔(24,28)に対応する部分で前記一方向(22)および前記幅方向(23)に直交する方向から見て視認し得る形状に、且つ前記膨出部(12b)の前記一方向(22)に沿う両端部間の範囲(A)を超えて前記一方向(22)に延びるように形成されることを特徴とする遮熱カバー。
【請求項2】
板厚の異なる2枚の金属板(20,21)が、板厚の厚い側の金属板(20)を外側に配置するようにして積層されて成ることを特徴とする請求項1に記載の遮熱カバー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遮熱カバーの製造方法であって、前記熱源(11)に対応した形状に形成された状態の前記カバー主部(12a)に前記膨出部(12b)をプレス成形する工程と、前記膨出部(12b)の一部を打ち抜いて前記通気孔(24,28)を形成する工程とを順次実行することを特徴とする遮熱カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源からの放熱を遮断するようにして前記熱源をカバーする遮熱カバーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気系部品を覆う遮熱カバーに、遮熱カバーおよび排気系部品間で熱気が滞留するのを防止するための複数の通気孔が設けられるようにしたものが特許文献1で知られている。また内燃機関の排気系部品を覆う遮熱カバーに通気孔が設けられ、排気系部品を外部から視認できないようにするために前記通気孔がルーバーで外方から覆われるようにしたものが特許文献2で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−065552号公報
【特許文献2】特開2015−151898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1で開示される技術では、空気が遮熱カバーと平行に流れる場合には遮熱カバーの内側および外側間での空気の流通量が少なく、熱気の滞留防止効果が低下する可能性がある。また上記特許文献2で開示される技術では、空気が遮熱カバーに対して直交する方向で流れるときには、熱気の滞留防止効果が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、空気が遮熱カバーに対して空気が平行に流れる場合ならびに空気が遮熱カバーに対して直交する方向で流れる場合のいずれでも、遮熱カバーおよび熱源間で熱気が滞留するのを防止することができるようにした遮熱カバー、ならびにその遮熱カバーを適切に製造し得るようにした遮熱カバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、熱源からの放熱を遮断するようにして前記熱源をカバーする遮熱カバーであって、前記熱源に対応した形状に形成されるカバー主部と、当該カバー主部の外側もしくは内側に膨出しつつ一方向に長く延びて前記カバー主部に一体に設けられる膨出部とを備え、前記一方向と直交する幅方向での前記膨出部の一端部に、当該膨出部の一部が切除されて成る通気孔が、当該通気孔に対応する部分で前記一方向および前記幅方向に直交する方向から見て視認し得る形状に、且つ前記膨出部の前記一方向に沿う両端部間の範囲を超えて前記一方向に延びるように形成されることを第1の特徴とする
【0007】
発明は、第1の特徴の構成に加えて、板厚の異なる2枚の金属板が、板厚の厚い側の金属板を外側に配置するようにして積層されて成ることを第の特徴とする。
【0008】
さらに本発明は、第1またはの特徴の構成の遮熱カバーの製造方法であって、前記熱源に対応した形状に形成された状態の前記カバー主部に前記膨出部をプレス成形する工程と、前記膨出部の一部を打ち抜いて前記通気孔を形成する工程とを順次実行することを第の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、通気孔が、カバー主部の外側もしくは内側に膨出しつつ一方向に長く延びる膨出部の前記一方向と直交する幅方向の一端部に形成されるので、空気が遮熱カバーと平行に流れる場合にはカバー主部の内側および外側間での空気の流出入が可能であり、また通気孔が当該通気孔に対応する部分で前記一方向および前記幅方向に直交する方向から見て視認し得る形状であるので、空気が遮熱カバーと直交する方向に流れる場合にもカバー主部の内側および外側間での空気の流出入が可能であり、いずれの場合にもカバー主部の内側および外側間での空気の流出入を可能として、遮熱カバーおよび熱源間で熱気が滞留するのを防止することができる。
【0010】
また通気孔が、膨出部の前記一方向に沿う両端部間の範囲を超えて前記一方向に延びるように形成されるので、ルーバーおよび通気孔を形成するものに比べて通気孔の両端が切れてしまう虞がなく、切り込みの両端に予め小孔が設けられるようにする工程を不要として通気孔の長手方向両端の強度を高めることができる上に、通気孔の両端の傾斜を緩やかなものとして穿孔に一般的な金型を用いることができ、金型の耐久性が向上する。
【0011】
本発明の第の特徴によれば、板厚の異なる2枚の金属板が積層されて遮熱カバーが形成され、厚い方の金属板が外側に配置されるので、良好な成形性を確保することができるとともに、石等による外力の作用に対する保護ならびに腐蝕に対する耐久性を得ることが可能となり、しかも各金属板の固有振動数を相互に吸収する効果もある。
【0012】
さらに本発明の第の特徴によれば、熱源に対応した形状を有するカバー主部に膨出部をプレス成形し、その後で膨出部の一部を打ち抜いて通気孔を形成するので、通気孔をルーバーで外方から覆うようにしたものに比べると、長手方向両端に強度を有する通気孔を形成することができる。すなわち通気孔をルーバーで覆うようにしたものでは、切り込みが設けられたカバー主部の切り込みに対応する部分を膨出させることでルーバーおよび通気孔を形成するのであるが、そのような方法では伸び難い金属板の場合には通気孔の両端が切れてしまう虞があるので、切り込みの両端に予め小孔が設けられるようにする工程が必要となるのであるが、そのような工程を不要として長手方向両端に強度を有する通気孔を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1参考形態を示すものであって遮熱カバーで覆われた状態の排気浄化用触媒コンバータの正面図である。
図2図1と同一方向から見た遮熱カバーの正面図である。
図3】遮熱カバーの斜視図である。
図4図2の4−4線断面図である。
図5】遮熱カバーの製造工程の一部を示す断面図である。
図6施の形態の図2に対応した遮熱カバーの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態および参考形態を、添付の図面を参照しながら説明する。
【0015】
本発明の参考形態について図1図5を参照しながら説明すると、先ず図1において、たとえば自動車用の排気浄化用の触媒コンバータ11は、胴部11aと、上流端に入口フランジ11bを有して前記胴部11aの上流端に連なる上流側頸部11cと、下流端に出口フランジ11dを有して前記胴部11aの下流端に連なる下流側頸部11eとを備え、本発明に従う遮熱カバー12は、熱源である前記触媒コンバータ11のうち前記上流側頸部11cの一部ならびに前記胴部11aの上流寄りの大部分を覆うように形成され、前記胴部11aに図示しないステー部材等を介して取付けられる。
【0016】
図2および図3を併せて参照して、前記遮熱カバー12は、前記触媒コンバータ11に対応した形状に形成されるカバー主部12aと、当該カバー主部12aの外側もしくは内側(この参考形態では外側)に膨出するようにして前記カバー主部12aに一体に設けられる複数個(たとえば6個)の膨出部12bとを有する。
【0017】
前記カバー主部12aは、前記触媒コンバータ11のうち前記胴部11aの上流寄りの部分のほぼ半周を覆うようにして横断面半円状に湾曲して形成される大径湾曲部分12aaと、前記触媒コンバータ11のうち前記上流側頸部11cの一部の略半周を覆うようにして横断面半円状に湾曲して形成されるとともに前記大径湾曲部分12aaに連設される小径湾曲部分12abと、小径湾曲部分12abから両側に張り出す平板状の取付け板部分12acとを一体に有するように形成される。
【0018】
前記大径湾曲部分12aaのうち前記小径湾曲部分12abとは反対側の端部の周方向に間隔をあけた2箇所には、前記触媒コンバータ11に締結するためのボルト13を挿通させる挿通孔15が設けられ、前記取付け板部分12acには、前記触媒コンバータ11に締結するためのボルト14を挿通させる挿通孔16がそれぞれ設けられる。また前記大径湾曲部分12aaのうち前記小径湾曲部分12abとは反対側の端部には、前記触媒コンバータ11の前記胴部11aに取付けられるO2 センサ17の挿入孔18が設けられる。
【0019】
図4を併せて参照して、前記遮熱カバー12は、2枚の金属板20,21が積層されて成るものである。しかも金属板20の板厚d1は、金属板21の板厚d2よりも大(d1>d2)に設定されており、前記遮熱カバー12は、一対の前記金属板20,21のうち板厚の厚い側の金属板20を外側に配置するようにして板厚d1,d2の異なる2枚の金属板20,21が積層されて成り、前記金属板20,21は、アルミニウム板、アルミナイズド鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)またはステンレス鋼板である。
【0020】
前記膨出部12bは、前記カバー主部12aにおける前記大径湾曲部分12aaに、その周方向に対をなして並ぶようにしつつ3列に配設されるものであり、一方向22(この参考形態では前記大径湾曲部分12aaの周方向)に長く延びて前記大径湾曲部分12aaに一体に設けられる。
【0021】
しかも前記一方向22と直交する幅方向23での前記膨出部12bの一端部、この参考形態では前記小径湾曲部分12abとは反対側の端部に、当該膨出部12bの一部が切除されて成る通気孔24が設けられ、その通気孔24は、当該通気孔24に対応する部分で前記一方向22および前記幅方向23に直交する方向(図4の矢印25で示す方向)から見て視認し得る形状に形成される。
【0022】
しかも前記通気孔24は、前記膨出部12bの前記一方向22に沿う両端部間の範囲Aで前記膨出部12bに形成される。
【0023】
ところで前記遮熱カバー12を製造するにあたっては、図5(a)で示すように、前記触媒コンバータ11に対応した形状に形成された状態の前記カバー主部12aに前記膨出部12bをプレス成形する工程と、図5(b)で示すように、前記膨出部12bの一部を打ち抜いて前記通気孔24を形成する工程とを順次実行するものであり、前記膨出部12bを形成する際に、前記カバー主部12aが、前記触媒コンバータ11に対応した形状に予め形成されていてもよく、また前記触媒コンバータ11に対応した形状に前記カバー主部12aを形成すると同時に前記膨出部12bを形成するようにしてもよい。
【0024】
次にこの参考形態の作用について説明すると、遮熱カバー12が、熱源である触媒コンバータ11に対応した形状に形成されるカバー主部12aと、当該カバー主部12aの外側に膨出しつつ一方向22に長く延びて前記カバー主部12aに一体に設けられる膨出部12bとを備え、前記一方向22と直交する幅方向23での前記膨出部12bの一端部に、当該膨出部12bの一部が切除されて成る通気孔24が形成されるので、空気が遮熱カバー12と平行に流れる場合にはカバー主部12aの内側および外側間での空気の流出入が可能であり、また通気孔24が当該通気孔24に対応する部分で前記一方向22および前記幅方向23に直交する方向から見て視認し得る形状であるので、空気が遮熱カバー12と直交する方向に流れる場合にもカバー主部12aの内側および外側間での空気の流出入が可能であり、いずれの場合にもカバー主部12aの内側および外側間での空気の流出入を可能として、遮熱カバー12および熱源間で熱気が滞留するのを防止することができる。
【0025】
また前記通気孔24が、前記膨出部12bの前記一方向22に沿う両端部間の範囲Aで前記膨出部12bに形成されるので、通気孔24の長手方向両端部には膨出部12bの端壁12baの一部が存在しており、通気孔24の長手方向両端部の剛性を確保することができ、遮熱カバー12の板厚を薄くして軽量化することができる。
【0026】
板厚d1,d2(d1>d2)の異なる2枚の金属板20,21が、板厚の厚い側の金属板20を外側に配置するようにして積層されて遮熱カバー12が構成されるので、良好な成形性を確保することができるとともに、自動車の走行時の飛び石等による外力の作用に対する保護ならびに腐蝕に対する耐久性を得ることが可能となり、しかも各金属板20,21の固有振動数を相互に吸収する効果もある。
【0027】
しかも前記遮熱カバー12を製造するにあたっては、前記触媒コンバータ11に対応した形状に形成された状態の前記カバー主部12aに前記膨出部12bをプレス成形する工程と、前記膨出部12bの一部を打ち抜いて前記通気孔24を形成する工程とを順次実行するので、通気孔24をルーバーで外方から覆うようにしたものに比べると、長手方向両端に強度を有する通気孔24を形成することができる。すなわち通気孔24をルーバーで覆うようにしたものでは、切り込みが設けられたカバー主部12aの切り込みに対応する部分を膨出させることでルーバーおよび通気孔24を形成するのであるが、そのような方法では伸び難い金属板の場合には通気孔24の両端が切れてしまう虞があるので、切り込みの両端に予め小孔が設けられるようにする工程が必要となるのであるが、そのような工程を不要として長手方向両端に強度を有する通気孔24を形成することができる。
【0028】
図6は本発明の実施の形態を示すものであり、上述の参考形態では通気孔24が膨出部12bの両端部間の範囲Aで膨出部12bに形成されるようにしたが、この実施の形態では、通気孔28が膨出部12bの前記範囲Aを越えて延びるように形成される。
【0029】
この第2の実施の形態によれば、ルーバーおよび通気孔を形成するものに比べて通気孔28の両端が切れてしまう虞がなく、切り込みの両端に予め小孔が設けられるようにする工程を不要として通気孔28の長手方向両端の強度を高めることができる上に、通気孔28の両端の傾斜を緩やかなものとして穿孔に一般的な金型を用いることができ、金型の耐久性が向上する。
【0030】
以上、本発明の実施の形態および参考形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0031】
たとえば上述の実施の形態では膨出部12bがカバー主部12aの外側に膨出するように形成されたが、カバー主部12aの内側に膨出するように形成されてもよい。
【符号の説明】
【0032】
11・・・熱源である触媒コンバータ
12・・・遮熱カバー
12a・・・カバー主部
12b・・・膨出部
20,21・・・金属板
22・・・一方向
23・・・幅方向
24,28・・・通気孔
A・・・膨出部の一方向に沿う両端部間の範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6