(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625512
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】光海底ケーブルシステム及び分岐装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/075 20130101AFI20191216BHJP
H04B 10/27 20130101ALI20191216BHJP
H04B 10/29 20130101ALI20191216BHJP
H04Q 11/02 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
H04B10/075
H04B10/27
H04B10/29
H04Q11/02
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-219114(P2016-219114)
(22)【出願日】2016年11月9日
(65)【公開番号】特開2018-78452(P2018-78452A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2018年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英憲
【審査官】
前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−182725(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/147655(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0028502(US,A1)
【文献】
国際公開第2016/051774(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/075
H04B 10/27
H04B 10/29
H04Q 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号及び前記第1信号とは異なる帯域の第2信号を含む第1光信号と、前記第1信号と同じ帯域の第3信号及び前記第2信号と同じ帯域の第4信号を含む第2光信号を受信する分岐装置であって、
前記第2光信号が正常であるか否かを監視する監視手段と、
前記第2光信号が正常であると、前記第1信号及び前記第4信号を含む光信号を出力し、前記第2光信号が正常ではないと、前記第1信号及び前記第2信号を含む光信号を出力する出力手段と、
を備え、
前記出力手段は、前記第1信号及び前記第2信号を含む光信号を出力する場合、前記受信した前記第1光信号を分離することなく出力することを特徴とする分岐装置。
【請求項2】
前記監視手段は、前記第2光信号又は前記第4信号のレベルを閾値と比較することで前記第2光信号が正常であるか否かを監視することを特徴とする請求項1に記載の分岐装置。
【請求項3】
前記出力手段は、
前記第1光信号をフィルタして前記第1信号を出力する第1フィルタ手段と、
前記第2光信号をフィルタして前記第4信号を出力する第2フィルタ手段と、
前記第2光信号が正常か否かに基づき、前記第1光信号又は前記第1フィルタ手段が出力する前記第1信号を出力する選択手段と、
前記選択手段の出力と前記第2フィルタ手段が出力する前記第4信号とを合波する合波手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分岐装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の分岐装置を有する光海底ケーブルシステムであって、
前記第1光信号を前記分岐装置に向けて送信する第1端局装置と、
前記第2光信号を前記分岐装置に向けて送信する第2端局装置と、
前記分岐装置の前記出力手段が出力する光信号を受信する第3端局装置と、
を備えていることを特徴とする光海底ケーブルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐を有する光海底ケーブルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、特許文献1に記載された光海底ケーブルシステムの構成図である。
図1において、端局装置1、2及び3は、通信局舎内に設置されるが、分岐装置4は、海底に設置される。以下の説明では、分岐装置4から端局装置1までの区間を区間Aと呼び、端局装置2から分岐装置4までの区間を区間Bと呼び、端局装置3から分岐装置4までの区間を区間Cと呼ぶものとする。なお、端局装置1は、端局装置2及び3それぞれに光信号を送信し、端局装置2及び3は、それぞれ、端局装置1に光信号を送信する。端局装置1から端局装置2及び3に向かう方向は下り方向と呼ばれ、端局装置2及び3から端局装置1に向かう方向は上り方向と呼ばれる。なお、本発明は、上り方向に関するものであるため、以下では、上り方向についてのみ説明する。区間A、区間B及び区間Cには、それぞれ、
図1では三角形で示す1つ以上の光中継器が設けられる。なお、各光中継器は光増幅器を含み、通過する光信号の増幅を行う。
【0003】
図2は、
図1に示す光海底ケーブルシステムの給電構成を示す図である。例えば、給電装置(PFE)51、52及び53は、それぞれ、端局装置1、2及び3と同じ通信局舎に設置される。区間A及び区間Cは、所謂、両端給電構成であり、例えば、PFE51及びPFE53が出力する電圧により、区間A及び区間Cの各光中継器には所定電流が流れる。これにより、区間A及び区間Cの各光中継器は動作する。一方、区間Bは、所謂、片端給電構成であり、給電ラインのPFE52とは反対側の端部は、分岐装置4において接地される。そして、PFE52が出力する電圧により、区間Bの各光中継器には所定電流が流れる。この様に、光海底ケーブルシステムの光中継器は、定電流制御(定出力制御)であり、増幅するために光信号に加えるパワーは一定である。
【0004】
図1の構成において、端局装置2は、信号Lを端局装置1に送信し、端局装置3は、信号Lとは周波数(波長)が異なる信号Sを端局装置1に送信する。なお、信号L及び信号Sそれぞれも波長多重信号であり得る。分岐装置4は、端局装置2からの信号Lと端局装置3からの信号Sとを合波して端局装置1に向けて出力する。上述した様に、光海底ケーブルシステムの光中継器は、定電流制御であるため、区間Aの光中継器では、増幅のためのパワーが信号Sと信号Lにそれぞれ分配される。一方、区間Bの光中継器では、区間Aの光中継器と同じ増幅のためのパワーが信号Lにのみ加えられ、区間Cの光中継器では、区間Aの光中継器と同じ増幅のためのパワーが信号Sにのみ加えられる。これにより、区間B及び区間Cでは、信号Lや信号Sのパワーが増大しすぎ、光ファイバの非線形効果により信号品質が劣化し得る。一方、通過する信号に光中継器が与える増幅のためのパワーを、区間B及びCでの信号品質劣化が起こらない程度まで小さくすると、区間Aでの増幅が十分に行われなくなり、区間Aにおける中継間隔が短くなる。これは、光中継器数を増大させ、コスト高となる。さらに、区間A、B、Cそれぞれの光中継器を、通過する信号に応じて最適な増幅率となる様に個別に設計すると、区間毎に異なる仕様の光中継器が必要となり、やはり、コスト高となる。
【0005】
このため特許文献1は、端局装置2及び3が、それぞれ、ダミー光信号を送信することを開示している。具体的には、
図1に示す様に、端局装置2は、信号Lと、ダミー信号Sd(以下、単に信号Sdと呼ぶ。)を送信する。信号Sdは、端局装置3が送信する信号Sと同じ帯域の信号である。同様に、端局装置3は、信号Sと、ダミー信号Ld(以下、単に信号Ldと呼ぶ。)を送信する。信号Ldは、端局装置2が送信する信号Lと同じ帯域の信号である。そして、分岐装置4は、端局装置2からの信号のうち、信号Lのみを取出し、端局装置3からの信号のうち、信号Sのみを取出し、取り出した信号S及びLを合波して区間Aに出力する。この構成により、区間に拘らず、光中継器での増幅のパワーは信号S(又は信号Sd)及び信号L(又は信号Ld)に同様に配分され、中継間隔を短くすることなく、信号品質の劣化を抑え、かつ、同じ光中継器を各区間で使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−82751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、光海底ケーブルシステムでは、ケーブルの絶縁体が破壊されて給電ラインが地絡する、所謂、シャント障害が起こり得る。区間A及びCの様な両端給電構成の場合、PFE51及び53は、給電ラインからシャント位置(電位が零)まで所定電流が流れる様に、その出力電圧を調整するため、区間A及びCでシャント障害が発生しても区間A及びCの光中継器には所定電流が供給され、区間A及びCの光中継器は、動作を継続させることができる。一方、区間Bの様な片端給電の場合、PFE53が、給電ラインからシャント位置(電位が零)まで所定電流が流れる様に、その出力電圧を調整したとしても、シャント位置から分岐装置4までの区間にある光中継器には電流が流れず、よって、分岐装置4は、端局装置2からの信号を受信しなくなる。
【0008】
この様に、区間Bからの信号が途絶えると、分岐装置4が区間Aに向けて送信する信号は信号Sのみとなる。この場合、区間Aの光中継器は、増幅のためのパワーを総て信号Sに加えることになり、よって、区間Aにおいて信号Sの品質が劣化し得る。
【0009】
本発明は、障害に対しても信号品質の劣化を抑えることができる光海底ケーブルシステム及びその分岐装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によると、第1信号及び前記第1信号とは異なる帯域の第2信号を含む第1光信号と、前記第1信号と同じ帯域の第3信号及び前記第2信号と同じ帯域の第4信号を含む第2光信号を受信する分岐装置であって、前記第2光信号が正常であるか否かを監視する監視手段と、前記第2光信号が正常であると、前記第1信号及び前記第4信号を含む光信号を出力し、前記第2光信号が正常ではないと、前記第1信号及び前記第2信号を含む光信号を出力する出力手段と、を備え
、前記出力手段は、前記第1信号及び前記第2信号を含む光信号を出力する場合、前記受信した前記第1光信号を分離することなく出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、障害に対しても信号品質の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態による光海底ケーブルシステムの構成図。
【
図2】一実施形態による光海底ケーブルシステムの給電構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0014】
図1は、本発明の各実施形態による光海底ケーブルシステムの構成図である。端局装置1、2及び3は、通信局舎内に設置され、分岐装置4は、海底に設置される。以下の説明では、分岐装置4から端局装置1までの区間を区間Aと呼び、端局装置2から分岐装置4までの区間を区間Bと呼び、端局装置3から分岐装置4までの区間を区間Cと呼ぶものとする。区間A、区間B及び区間Cには、それぞれ、
図1では三角形で示す1つ以上の光中継器が設けられる。なお、各光中継器は光増幅器を含み、通過する光信号の増幅を行う。
図1に示す様に、端局装置2は、信号Lと信号Sdと、を区間Bに送信する。一方、端局装置3は、信号Sと信号Ldと、を区間Cに送信する。信号Sd及び信号Ldは、上述した様に、ダミー信号であり、情報を搬送する光信号ではない。一方、信号S及び信号Lは、情報を搬送する信号である。なお、信号S及び信号Lは、例えば、波長多重信号であり得る。また、信号Sdは、端局装置3が送信する信号Sと同じ帯域の信号であり、信号Ldは、端局装置2が送信する信号Lと同じ帯域の信号である。光海底ケーブルシステムに障害が発生していない通常時、分岐装置4は、端局装置2からの信号のうち、信号Lのみを取出し、端局装置3からの信号のうち、信号Sのみを取出し、取り出した信号S及びLを合波して区間Aに出力する。
【0015】
図2は、
図1に示す光海底ケーブルシステムの給電構成を示す図である。例えば、給電装置(PFE)51、52及び53は、それぞれ、端局装置1、2及び3と同じ通信局舎に設置される。区間A及び区間Cは、所謂、両端給電構成であり、例えば、PFE51及びPFE53が出力する電圧により、区間A及び区間Cの各光中継器には所定電流が流れる。これにより、区間A及び区間Cの各光中継器は動作する。一方、区間Bは、所謂、片端給電構成であり、給電ラインのPFE52とは反対側の端部は、分岐装置4において接地される。そして、PFE52が出力する電圧により、区間Bの各光中継器には所定電流が流れる。この様に、光海底ケーブルシステムの光中継器は、定電流制御(定出力制御)であり、増幅するために光信号に加える電力は一定である。
【0016】
上述した様に、例えば、区間Bでシャント障害が発生し、これにより、分岐装置4が区間Aに向けて送信する信号が信号Sのみとなると、端局装置3から端局装置1への光伝送路は正常であるにも拘らず区間Aにおいて信号Sの品質が劣化し得る。本発明では、この様な場合でも信号Sの品質劣化を抑える。このため、分岐装置4は、区間Bからの光信号又は当該光信号に含まれる信号Lのレベルを閾値と比較することで区間Bが正常であるか否かを監視・判定する監視制御部と、区間Bが正常であると監視制御部が判定すると、信号S及び信号Lを含む光信号を区間Aに出力し、区間Bが障害であると監視制御部が判定すると、信号S及び信号Ldを含む光信号を区間Aに出力する出力部と、を備えている。以下、出力部の様々な実施形態について説明する。
【0017】
<第一実施形態>
図3は、本実施形態による分岐装置4の構成図である。分離部41は、区間Cから信号S及びLdを含む光信号を受信し、信号Sを合波部45に出力し、信号Ldを光スイッチ部44に出力する。分離部41は、区間Cからの光信号を2分岐する分岐部と、分岐された各光信号から信号Sと信号Ldそれぞれを取り出すフィルタにより構成することができる。フィルタ部42は、区間Bから信号Sd及びLを含む光信号を受信し、信号Sdを阻止し、信号Lのみを光スイッチ部44に出力する。また、監視制御部43は、フィルタ部42が出力する信号Lのレベルを閾値と比較することで区間Bからの光信号の正常性、つまり、区間Bが正常状態であるか障害状態であるかを監視する。具体的には、信号Lのレベルが閾値以上の間、区間Bは正常状態であると判定し、監視制御部43は、光スイッチ部44が信号Lを合波部45に向けて出力する様に光スイッチ部44を制御する。一方、信号Lが閾値未満の間、区間Bが障害状態であると判定し、監視制御部43は、光スイッチ部44が信号Ldを合波部45に向けて出力する様に光スイッチ部44を制御する。合波部45は、光スイッチ部44が出力する信号L又は信号Ldと、分離部41からの信号Sとを合波して区間Aに出力する。
【0018】
この構成により、区間Bが正常であると、分岐装置4は、区間Aに信号S及び信号Lを含む光信号を送信する。一方、区間Bのシャント障害、区間Bの光ファイバの断線、区間Bの光中継器の故障等により、区間Bが障害となると、分岐装置4は、区間Aに信号S及び信号Ldを含む光信号を送信する。したがって、区間Aの光中継器において、その増幅のためのパワーが信号SのみならずLdにも加えられ、これにより信号Sの品質が劣化することを防止することができる。なお、監視制御部43は、フィルタ部42の出力を監視するのではなく、フィルタ部42の入力を監視する構成であっても良い。
【0019】
<第二実施形態>
図4は、本実施形態による分岐装置4の構成図である。分岐・分離部46は、区間Cから信号S及びLdを含む光信号を受信し、信号Sを合波部45に出力し、信号S及びLdを含む光信号を光スイッチ部44に出力する。分岐・分離部46は、区間Cからの光信号を2分岐する分岐部と、分岐された一方の光信号から信号Sを取り出すフィルタにより構成することができる。なお、分岐された他方の光信号は、光スイッチ部44に出力される。監視制御部43は、区間Bから受信する信号Sd及びLを含む光信号のレベルを監視する。光信号のレベルが閾値以上の間、光スイッチ部44が信号Sd及びLを含む光信号をフィルタ部42に向けて出力する様に監視制御部43は光スイッチ部44を制御する。一方、信号Sd及びLを含む光信号のレベル信号Lが閾値未満の間、光スイッチ部44が信号S及びLdを含む光信号をフィルタ部42に向けて出力する様に監視制御部43は光スイッチ部44を制御する。フィルタ部42は、光スイッチ部44からの光信号の内、信号S又はSdを阻止し、信号L又はLdのみを合波部45に出力する。合波部45は、フィルタ部42が出力する信号L又は信号Ldと、分岐・分離部41からの信号Sとを合波して区間Aに出力する。
【0020】
この構成により、区間Bが正常であると、分岐装置4は、区間Aに信号S及び信号Lを含む光信号を送信する。一方、区間Bが障害となると、分岐装置4は、区間Aに信号S及び信号Ldを含む光信号を送信する。したがって、区間Aの光中継器において、その増幅のためのパワーが信号SのみならずLdにも加えられ、これにより信号Sの品質が劣化することを防止することができる。
【0021】
<第三実施形態>
図5は、本実施形態による分岐装置4の構成図である。分離部41は、区間Cから信号S及びLdを含む光信号を受信し、信号Sを合波部47に出力し、信号Ldを光ブロッカ48に出力する。フィルタ部42は、区間Bから信号Sd及びLを含む光信号を受信し、信号Sdを阻止し、信号Lのみを合波部45に出力する。また、監視制御部43は、フィルタ部42が出力する信号Lのレベルを監視する。信号Lのレベルが閾値以上の間、光ブロッカ48が、信号Ldをブロック、つまり、出力しない様に監視制御部43は光ブロッカ48を制御する。一方、信号Lが閾値未満の間、光ブロッカ48が、信号Ldを合波部47に向けて出力する様に監視制御部43は光ブロッカ48を制御する。したがって、合波部47は、信号Lのレベルが閾値以上の間、信号Sのみを出力し、信号Lのレベルが閾値未満の間、信号S及びLdを含む光信号を合波部45に出力する。合波部45は、フィルタ部42が出力する光信号と、合波部47が出力する光信号を合波して区間Aに出力する。したがって、合波部45は、信号Lのレベルが閾値以上の間、信号S及びLを含む光信号を区間Aに出力し、信号Lのレベルが閾値未満の間、信号S及びLdを含む光信号を区間Aに出力する。
【0022】
この構成により、区間Bが正常であると、分岐装置4は、区間Aに信号S及び信号Lを含む光信号を送信する。一方、区間Bが障害となると、分岐装置4は、区間Aに信号S及び信号Ldを含む光信号を送信する。したがって、区間Aの光中継器において、その増幅のためのパワーが信号SのみならずLdにも加えられ、これにより信号Sの品質が劣化することを防止することができる。なお、監視制御部43は、フィルタ部42の出力を監視するのではなく、フィルタ部42の入力を監視する構成であっても良い。
【0023】
<第四実施形態>
図6は、本実施形態による分岐装置4の構成図である。分岐・分離部46は、区間Cから信号S及びLdを含む光信号を受信し、信号Sと、信号S及びLdを含む光信号とを、光スイッチ部44に出力する。フィルタ部42は、区間Bから信号Sd及びLを含む光信号を受信し、信号Sdを阻止し、信号Lのみを合波部45に出力する。監視制御部43は、フィルタ部42が出力する信号Lのレベルを監視する。信号Lのレベルが閾値以上の間、光スイッチ部44が信号Sを選択して合波部45に出力し、信号Lのレベルが閾値未満の間、光スイッチ部44が信号S及びLdを含む光信号を選択して合波部45に出力する様に、監視制御部43は光スイッチ部44を制御する。合波部45は、フィルタ部42からの出力信号と、光スイッチ部44の出力信号とを合波して区間Aに出力する。よって、合波部45は、信号Lのレベルが閾値以上の間、信号S及びLを含む光信号を区間Aに出力し、信号Lのレベルが閾値未満の間、信号S及びLdを含む光信号を区間Aに出力する。
【0024】
この構成により、区間Bが正常であると、分岐装置4は、区間Aに信号S及び信号Lを含む光信号を送信する。一方、区間Bが障害となると、分岐装置4は、区間Aに信号S及び信号Ldを含む光信号を送信する。したがって、区間Aの光中継器において、その増幅のためのパワーが信号SのみならずLdにも加えられ、これにより信号Sの品質が劣化することを防止することができる。なお、監視制御部43は、フィルタ部42の出力を監視するのではなく、フィルタ部42の入力を監視する構成であっても良い。
【0025】
なお、本実施形態において、信号Lのレベルが閾値未満の間、区間Aに出力される信号S及びLdを含む光信号は、区間Cから受信した光信号に対して分離処理を行っていないものである。これに対して第一実施形態から第三実施形態では、区間Aに出力する信号S及びLdを含む光信号は、区間Cから受信した光信号を信号Sと信号Ldに分離し、その後、再度、多重(合波)したものである。この場合、分離、多重や、その経路の違いにより、信号Sと信号Ldとのレベルの関係が区間Cから受信したときとは異なるものとなる。したがって、第一実施形態から第三実施形態では、区間Aに出力する信号S及びLdを含む光信号の信号Sと信号Ldとのレベルの関係を調整する調整部材(増幅器又は減衰器)が必要になる。一方、本実施形態では、区間Aに出力する信号S及びLdを含む光信号は、区間Cから受信した光信号を同じ経路で伝送したものであり、調整部材を不要とすることができる。
【0026】
<第五実施形態>
図7は、本実施形態による分岐装置4の構成図である。区間Cからの信号S及びLdを含む光信号と、区間Bからの信号Sd及びLを含む光信号は、それぞれ、波長選択スイッチ49に入力される。監視制御部43は、区間Bから受信する信号Sd及びLを含む光信号のレベルを監視する。そして、信号Sd及びLを含む光信号のレベルが閾値以上の間、波長選択スイッチ49が、信号S及び信号Lを含む光信号を出力する様に、監視制御部43は波長選択スイッチ49を制御する。一方、信号Sd及びLを含む光信号のレベルが閾値未満の間、波長選択スイッチ49が、信号S及び信号Ldを含む光信号を出力する様に、監視制御部43は波長選択スイッチ49を制御する。
【0027】
この構成により、区間Bが正常であると、分岐装置4は、区間Aに信号S及び信号Lを含む光信号を送信する。一方、区間Bが障害となると、分岐装置4は、区間Aに信号S及び信号Ldを含む光信号を送信する。したがって、区間Aの光中継器において、その増幅のためのパワーが信号SのみならずLdにも加えられ、これにより信号Sの品質が劣化することを防止することができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、監視制御部43が、区間Cから受信する信号S及びLdを含む光信号のレベルをさらに監視する構成とすることができる。この場合、信号S及びLdを含む光信号のレベルが閾値以上の間、波長選択スイッチ49が、信号S及び信号Lを含む光信号を出力する様に、監視制御部43は波長選択スイッチ49を制御する。一方、信号S及びLdを含む光信号のレベルが閾値未満の間、波長選択スイッチ49が、信号Sd及び信号Lを含む光信号を出力する様に、監視制御部43は波長選択スイッチ49を制御する。
【0029】
この構成により、区間Cの光ファイバの断線、区間Cの光中継器の故障等により、区間Cが障害となると、分岐装置4は、区間Aに信号Sd及び信号Lを含む光信号を送信する。したがって、区間Aの光中継器において、その増幅のためのパワーが信号LのみならずSdにも加えられ、これにより信号Lの品質が劣化することを防止することができる。
【0030】
<第六実施形態>
第五実施形態では、監視制御部43が、区間Bからの光信号のみならず、区間Cからの光信号のレベルを監視することで、区間Cの障害時、区間Aに信号Sd及び信号Lを含む光信号を送信することで、信号Lの劣化を抑える構成について述べた。本実施形態でも、第五実施形態と同様に、区間Bの障害時のみならず、区間Cの障害時にも区間Aの光中継器での信号品質の劣化を抑える。
【0031】
図8は、本実施形態による分岐装置4の構成図である。分離部411は、区間Cから信号S及びLdを含む光信号を受信し、信号Sを光スイッチ部442に出力し、信号Ldを光スイッチ部441に出力する。同様に、分離部412は、区間Bから信号Sd及びLを含む光信号を受信し、信号Sdを光スイッチ部442に出力し、信号Lを光スイッチ部441に出力する。監視制御部43は、区間Bからの信号のレベルと、区間Cからの信号のレベルをそれぞれ監視し、そのレベルが閾値未満となると、当該区間の障害と判定する。なお、監視するポイントは、分離部411及び分離部412の入力側であっても出力側であっても良い。
【0032】
そして、監視制御部43は、区間B及び区間Cが共に正常であると、光スイッチ部442が信号Sを出力し、光スイッチ部441が信号Lを出力する様に、光スイッチ部442及び441を制御する。一方、監視制御部45は、区間Bが正常であるが、区間Cが障害であると、光スイッチ部442が信号Sdを出力し、光スイッチ部441が信号Lを出力する様に、光スイッチ部442及び441を制御する。さらに、区間Cが正常であるが、区間Bが障害であると、光スイッチ部442が信号Sを出力し、光スイッチ部441が信号Ldを出力する様に、光スイッチ部442及び441を制御する。そして、合波部45は、光スイッチ部442及び441それぞれからの光信号を合波して区間Aに出力する。
【0033】
この構成により、区間B及びCが共に正常であると、分岐装置4は、区間Aに信号S及び信号Lを含む光信号を送信する。一方、区間Bが障害であるが、区間Cが正常であると、分岐装置4は、区間Aに信号S及び信号Ldを含む光信号を送信する。さらに、区間Cが障害であるが、区間Bが正常であると、分岐装置4は、区間Aに信号Sd及び信号Lを含む光信号を送信する。したがって、区間Aの光中継器において、その増幅のためのパワーが信号Lのみに加えられたり、信号Sのみに加えられたりすることで生じる信号品質の劣化を防止することができる。
【符号の説明】
【0034】
1〜3:端局装置、4:分岐装置、41:分離部、411:分離部、412:分離部、42:フィルタ部、43:監視制御部、44:光スイッチ部、441:光スイッチ部、442:光スイッチ部、45:合波部、46:分岐・分離部、47:合波部、48:光ブロッカ、49:波長選択スイッチ、51〜53:給電装置(PFE)