特許第6625542号(P6625542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6625542電気パルスを用いた血小板活性化及び成長因子放出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625542
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】電気パルスを用いた血小板活性化及び成長因子放出
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/42 20060101AFI20191216BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20191216BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20191216BHJP
   G01N 33/86 20060101ALI20191216BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20191216BHJP
   A61K 35/14 20150101ALI20191216BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20191216BHJP
   A61K 35/16 20150101ALI20191216BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   C12M1/42
   C12M1/00 A
   C12Q1/02
   G01N33/86
   G01N33/49 Z
   A61K35/14 D
   A61K38/18
   A61K35/16 Z
   A61P7/04
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-545972(P2016-545972)
(86)(22)【出願日】2015年1月9日
(65)【公表番号】特表2017-505608(P2017-505608A)
(43)【公表日】2017年2月23日
(86)【国際出願番号】US2015010817
(87)【国際公開番号】WO2015108778
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2017年12月21日
(31)【優先権主張番号】14/157,819
(32)【優先日】2014年1月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ネキュラエス,ヴェイジル・ボダン
(72)【発明者】
【氏名】トーレス,アンドリュー・ソリズ
(72)【発明者】
【氏名】カイアファ,アントーニオ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ブライアン・ダー−ラン
(72)【発明者】
【氏名】ガーナー,アレン・ローレンス
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−500501(JP,A)
【文献】 特表2008−545415(JP,A)
【文献】 特表2013−508066(JP,A)
【文献】 特表2012−508771(JP,A)
【文献】 特表2010−512151(JP,A)
【文献】 特表2010−504706(JP,A)
【文献】 特開2008−237214(JP,A)
【文献】 特表2012−500629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−1/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のプロセッサ実行可能ルーチンを記憶する非一時的なコンピュータ可読メモリ(28)であって、前記プロセッサ実行可能ルーチンは、実行される場合、血液試料(22)中での血小板由来成長因子の放出を誘発するために、1つ又は複数の電気パルスのシーケンスを、前記血液試料(22)に当て、1つ又は複数の電気パルスの前記シーケンスは、前記血小板由来成長因子の前記放出と同時に起こる前記血液試料(22)内での凝固を生じさせない、非一時的なコンピュータ可読メモリ(28)と、
前記血液試料(22)の1つ又は複数の電気特性の推定値を判定するように構成される電流感知回路(34)であって、前記1つ又は複数のプロセッサ実行可能ルーチンはさらに、実行される場合、前記血液試料(22)の少なくとも1つの電気特性を示す感知信号を生成する、前記電流感知回路(34)と、
前記コンピュータ可読メモリ(28)内に記憶される前記1つ又は複数のプロセッサ実行可能ルーチンにアクセスしてこれを実行するように構成されるプロセッサ(26)と
を備えるシステム(10)。
【請求項2】
前記パルスの持続期間が1ナノ秒〜100マイクロ秒であり、前記パルスの電場強度が0.1kV/cm〜350kV/cmである、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記血液試料(22)は、1つ又は複数の電気パルスの前記シーケンスが当てられる前に、塩化カルシウム(CaClを含む、又は塩化カルシウム(CaCl)およびアデノシン二リン酸遮断化学物質を含む、請求項1または2に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記血液試料(22)は、全血試料又は血小板の豊富な血漿である、請求項1乃至3のいずれかに記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの電気特性が導電率及び/又は誘電率である、請求項1乃至4のいずれかに記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記血液試料(22)の1つ又は複数の電気特性の推定値を判定するように構成される電流感知回路(34)をさらに備え、前記1つ又は複数のプロセッサ実行可能ルーチンはさらに、実行される場合、電気パルスを前記血液試料(22)に当てるプロセッサ実行可能ルーチンを含み、前記電気パルスは、前記電流感知回路(34)によって処理される、請求項1乃至5のいずれかに記載のシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示される主題は、一般に、種々の医療用途、例えば外科手術又は外傷の処置に用いられる血小板治療に関する。具体的には、記載される実施形態は、血小板の豊富な血漿中での血小板活性化及び成長因子放出に関する。
【背景技術】
【0002】
血小板治療は、多くのタイプの損傷ならびに症状、例えば神経損傷、腱炎、骨関節炎、心筋損傷、ならびに骨の修復及び再生に用いられる創傷治療的処置である。血小板治療はまた、外科手術後の創傷治癒を促進するのに用いられてもよい。
【0003】
通常、医者は、血液を患者から採取することができる。血液はその後、血小板の豊富な血漿(PRP)を生じさせるために、遠心分離される。生体内での血小板活性化のために、医者は、血小板活性化剤を添加することなく、PRPを部位に適用することができる。成長因子放出及び凝固を含む血小板活性化は通常、結合組織内のコラーゲンによって誘導される。生体外での血小板活性化のために、医者は、トロンビンのような典型的な活性化剤を添加することによって、PRP内での血小板活性化を誘発してから、活性化されたPRPを部位に適用することができる。
【0004】
そのような生体外での用途のために、ウシトロンビンを用いて血小板活性化を誘導することができる。しかしながら、動物ベースのトロンビンを用いると、感染体によるPRPのアレルギー反応又は汚染が生じるおそれがある。動物ベースのトロンビンの代替物は、費用がかかる傾向があり、そして依然としてアレルギー反応を引き起こすおそれがある。
【0005】
さらに、一部の創傷の治療的用途において、成長因子放出が望ましいが、以降の凝固は望ましくない。例えば、医者は、PRP試料を注射して、成長因子を部位中に放出することを望む場合があるが、これは、関節損傷の一般的な処置である。PRP試料を種々のタイプの光(例えば、赤外線)に曝すことで、以降に凝固することなく成長因子放出が誘発され得る。しかしながら、実験の準備は複雑であり、ラボでの設置に費用も時間もかかるおそれがある。加えて、試料の露光時間が長くなり得、以降の処置の合計時間が長くなるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6897069号明細書
【発明の概要】
【0007】
当初特許請求された発明の範囲に相応するある実施形態が、以下に要約される。これらの実施形態は、特許請求された発明の範囲を限定することが意図されるのではなく、むしろこれらの実施形態は、本発明のあり得る形態の概要を提供すことが単に意図される。実際に、本発明は、以下に説明される実施形態と類似し得る、又は異なり得る様々な形態を包含し得る。
【0008】
第1の実施形態では、血液試料中でのアデノシン二リン酸(ADP)放出を誘導する方法は、血液試料中でのADPの放出を誘発するために、血液試料を1つ又は複数の電気パルスのシーケンスに曝すことを含む。ADPの放出は、血液試料内での血小板活性化及び凝固を誘発する。
【0009】
第2の実施形態では、成長因子を放出させる方法は、血液試料中での成長因子の放出を誘発するために、血液試料を1つ又は複数の電気パルスのシーケンスに曝すことを含む。成長因子放出は、血液試料内での凝固を伴わない。
【0010】
第3の実施形態では、創傷を処置する方法は、患者から血液試料を収集することを含む。その後、血液試料は、凝固が付随することなく血液試料中での成長因子の放出を誘発するために、1つ又は複数の電気パルスのシーケンスに曝される。その後、成長因子は収集されて、患者を処置するために用いられる。
【0011】
第4の実施形態では、系は、1つ又は複数のプロセッサ実行可能ルーチンを記憶する非一時的なコンピュータ可読メモリを備える。プロセッサ実行可能ルーチンは、実行される場合、1つ又は複数の電気パルスのシーケンスを、血液試料に当てることができる。これは、血液試料中でのアデノシン二リン酸(ADP)の放出を誘発し得、これが今度は血液試料内での血小板活性化及び凝固を誘発する。系はまた、コンピュータ可読メモリ内に記憶される1つ又は複数のプロセッサ実行可能ルーチンにアクセスしてこれを実行するように構成されるプロセッサを備える。
【0012】
第5の実施形態では、系は、1つ又は複数のプロセッサ実行可能ルーチンを記憶する非一時的なコンピュータ可読メモリを備える。プロセッサ実行可能ルーチンは、実行される場合、血液試料中での成長因子の放出を誘発するために、1つ又は複数の電気パルスのシーケンスを、血液試料に当てる。1つ又は複数の電気パルスのシーケンスは、成長因子の放出と同時に起こる血液試料内での凝固を生じさせない。系はまた、コンピュータ可読メモリ内に記憶される1つ又は複数のプロセッサ実行可能ルーチンにアクセスしてこれを実行するように構成されるプロセッサを備える。
【0013】
本発明のこれらの、そして他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明を、添付の図面を参照して読めば、よりよく理解されるであろう。図面の全体にわたって、同種の文字は同種の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本アプローチの実施形態に従うパルス発生系の概略図である。
図2】本アプローチの実施形態に従う、生体外での血小板活性化法を示すフローチャートである。
図3】本アプローチの実施形態に従う、生体外での成長因子放出法を示すフローチャートである。
図4】本アプローチの別の実施形態に従う、生体外での成長因子放出法を示すフローチャートである。
図5】ウシトロンビンを用いて活性化した、血小板の豊富な血漿試料(左側)、及び、凝固することなく成長因子放出が生じる、電気パルスに曝した後の血小板の豊富な血漿試料(右側)を示す。
図6】本明細書中で説明されるアプローチが挙げられる種々のアプローチを用いて、図5に示される血小板の豊富な血漿試料中に放出された血小板由来成長因子(PDGF)の量を示すグラフである。
図7】ある実施形態に関して説明される、パルス電場に曝された、血小板の豊富な血漿の2つの試料を示す。
図8】本明細書中で説明されるアプローチが挙げられる種々のアプローチを用いて、図7に示される血小板の豊富な血漿試料中に放出された血小板由来成長因子(PDGF)の量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本主題の1つ又は複数の具体的な実施形態が、以下に記載されこととなる。これらの実施形態の簡潔な記載を提供することを目指して、実際の実施のすべての特徴が本明細書中に記載されていないかもしれない。あらゆる工学又は設計プロジェクトにおけるような実際のあらゆる実施例の開発において、数多くの実施例に特異的な決定が、開発者の具体的な目標、例えば系に関連し、かつビジネスに関連する制約(ある実施から別の実施にまで変わり得る)の遵守を達成するようになされなければならないことが理解されるべきである。さらに、そのような開発努力は複雑であり、かつ時間がかかり得るが、それでもやはり、本開示の利益を受ける当業者にとって、設計、構成、及び製造の日常的作業となるであろうことが理解されるべきである。
【0016】
本発明の種々の実施形態の要素を紹介する場合、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、「前記(the)」及び「前記(said)」は、要素が1つ以上あることを意味することが意図される。「含む、備える(comprising)」、「含む、備える、挙げられる(including)」、及び「有する(having)」という用語は、包括的であり、一覧にされた要素以外の付加的な要素があってよいことを意味することが意図される。
【0017】
血小板活性化及び/又は凝集は、生体内でかつ/又は生体外で創傷を処置するのに用いられ得る。従来、プロセス中に、血液中の血小板が、トロンビンのような血小板活性化化合物に曝されて、成長因子(例えば、血小板由来成長因子(PDGF))の放出及び凝固の双方が誘導される。生体内での血小板活性化のために、不活化PRPが、損傷の部位に適用される、又は注射される。典型的に、結合組織内のコラーゲンが、血小板活性化、成長因子放出、及び凝固を誘発する。生体外での血小板活性化のために、医者は、患者から血液を採取し、血液試料を遠心分離して、血小板の豊富な血漿(PRP)試料を生産することができる。塩化カルシウム(CaCl)、及びトロンビン等のような血小板活性化化合物が、PRP試料に添加されて、血小板活性化が誘発され、かつ、創傷に適用されるゲルが形成され得る。しかしながら、血小板活性化に動物ベースのトロンビンを用いると、PRP試料のアレルギー反応又は汚染が生じるおそれがある。さらに、動物ベースのトロンビンの代替物は、費用がかかる傾向があり、そして依然としてアレルギー反応を引き起こすおそれがある。
【0018】
本実施形態は、生体外での血小板活性化及び成長因子放出に関し、血小板活性化と典型的に関連する凝固事象を生じさせることなく、成長因子を放出させる手法を含む。具体的な創傷治療的用途は、PRP試料が挙げられる血液試料を処理して、成長因子を凝固させることなく放出させることを含んでよい。本明細書中で説明される生体外での血小板活性化法は、血小板活性化を誘発するためにPRP試料のような血液試料を電気パルスに曝すことを含んでよい。ある実施例では、パルス電場に応じた血小板活性化放出の一部として、アデノシン二リン酸(ADP)の放出が観察され得る。生体外成長因子放出法は、本明細書中で説明されるように、電気刺激の前に、血液試料に化学物質を添加することを含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0019】
前述のことを念頭に置いて、図1は、概略的に、生体外での血小板活性化及び成長因子放出のためのパルス発生系10を示す。系10は、パルス発生回路12、ならびに電極セット(又は電極のアレイ)14及び16を備えてよい。示された実施形態では、電極14及び16は、キュベット18の対向側面上に間隔を空けて置かれる。即ち、キュベット18は、電極間に配置され、電極14及び16は、接点20を介してパルス発生回路に接続する。キュベット18は、血小板を含有する試料22を保持するように構成される。ある実施形態では、キュベット18は、使い捨て可能であってよく、そして電極14及び16を備える試料ホルダ24から取外し可能であってよい。したがって、キュベット18の挿入、及び接点20との電極14及び16の接触により、パルス発生回路は電気パルスを発生させることができ、キュベット18内の試料22はパルスに曝される。理解されるように、キュベット18は、単に試料コンテナの例であり、試料22を保持し、電極14及び16に接触し、かつ電気パルスを導くように構成されるあらゆる好適なコンテナが、系10と連携して用いられてよい。電極14と電極16の間隔は、パルス電場の強度に影響し得、これは、印加電圧とキュベットギャップ距離との比として定義される。例えば、1cm幅のキュベットを1kVのパルスに曝すと、1kV/cmの場強度が生じる。
【0020】
ある実施形態では、系は、好適な制御及び入力回路を備え、かつ専用のハウジング内で実施されてもよいし、コンピュータ又は他のプロセッサベースの制御系に接続されてもよい。系10は、パルス発生回路12を制御するプロセッサ26を備えてもよいし、これと通信してもよい。系10の付加的な構成要素として、プロセッサ26によって実行される命令を記憶するメモリ28が挙げられ得る。そのような命令として、パルス発生回路12によって発生する電気パルスのためのプロトコル及び/又はパラメータが挙げられ得る。プロセッサ26として、例えば、汎用シングル又はマルチチップマイクロプロセッサが挙げられ得る。また、プロセッサ26は、従来のあらゆる専用プロセッサ、例えば特定用途向けプロセッサ又は回路であってよい。メモリ28は、あらゆる好適な非一時的なコンピュータ可読媒体、例えばランダムアクセスメモリ、大容量記憶装置、フラッシュメモリ装置、又は着脱式メモリであってよい。また、ディスプレイ30は、系10の操作に関係するオペレータに指示を与えることができる。系10は、パルス発生回路12をアクティブ化するための、かつ/又は適切なパラメータを選択するためのユーザ入力装置32(例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン、トラックボール、ハンドヘルド装置(PDA又はスマートフォンなど)、又はそれらの任意の組合せ)を備えてよい。
【0021】
本明細書中で規定されるパルス発生系10は、血小板活性化の単一目的装置として、又は、本明細書中で説明される血小板活性化に加えて、エレクトロポーレーションのような他の電場曝露用途に用いられ得る多目的装置として、実施され得る。さらに、系10は、1つ又は複数のプロトコルに従って電気パルスを発生するように構成されてよい。プロトコルは、ユーザ入力によって生じてよく、かつ/又は、ユーザによって選択されるようにメモリ28内に記憶されてよい。一実施形態では、パルス発生回路12は、所定の電場強度、パルス長、及び/又は総曝露時間を指定するプロトコルを実施するようなプロセッサ26の制御下で、作動し得る。そのようなプロトコルは、経験的研究又は理論的研究によって決定されてよい。他の実施形態では、系10は、電場強度、パルス長、及び/又は総曝露時間に関係するユーザ入力を受けるように構成されてよい。即ち、ユーザは、これらの操作可能なパラメータの1つ又は複数を指定することができる。さらに、系10は、ユーザ入力及び/又は記憶されたプロトコル設定に従って、特定のパルス波形を発生させるように、又は互いに異なってよい一連のパルスを発生させるように、構成されてよい。
【0022】
ある実施形態では、系10によって発生するパルスは、用途に応じて、持続期間が約1ナノ秒〜約100マイクロ秒であり、かつ電場強度が約0.1kV/cm〜約350kV/cmであってよい。先に述べられるように、パルスの電場強度は、電極14と電極16間の距離で割った印加電圧である。系10によって発生するパルスは、電場強度が少なくとも0.1kV/cmである一方、細胞を含む懸濁液の絶縁破壊電界(breakdown field)を上回るべきでない。
【0023】
ある実施形態では、パルス発生系10は、感知機能を備えてよい。即ち、パルス発生系10は、試料22を感知信号に曝すように構成されてよく、これは、電場強度が、血小板活性化に用いられる電気パルスの電場強度未満である電気パルスであってよい。パルス発生系10は、図1に示されるように、電流感知回路34を備えてよく、これは、限定されないが導電率及び誘電率が挙げられる、試料22のいくつかの電気特性を推定するために、感知信号を獲得かつ/又は処理することができる。電流感知回路34は、プロセッサ26に接続してよく、これは、感知信号の発生及び処理を制御し得、ある実施形態では、処理の一部を実行し得る。他の実施形態では、電流感知回路34は、感知信号の処理を制御するために専用プロセッサを備えてよく、そして結果を報告するためにプロセッサ26と通信してよい。あるいは、電流感知回路34は、パルス発生回路12と一体化されてよい。さらに他の実施形態では、感知信号の処理は、先に記載される専用プロセッサ、又はプロセッサ26によって実行されてよい。
【0024】
生体外での血小板活性化を用いた損傷処置法40は、図2に示されるように、系10と連携して用いられてよい。方法40のある工程が、オペレータによって実行されてよい一方で、当該方法の他の工程が、系10によって実行されてよいことが理解されるべきである。工程42にて、従事者(例えば、医者又は看護師)が患者から血液を採取する。ある実施形態では、採取された血液は、工程44においてPRP試料を生じさせるように処理されてよい。血小板の分離に適した種々の技術(遠心分離又は濾過など)が用いられて、PRP試料が生じ得る。そのような実施形態では、工程46〜工程54は、PRP試料を用いて実行されてよい。あるいは、工程44は省略されてよく、そして、方法40における工程の残りは、全血試料を用いて実行されてよい。示された実施例では、工程48中に系10を介して1つ又は複数のパルスに曝す前に、工程46において試料にCaClが添加される。CaClを試料に添加することで、血小板間のカルシウム動員の可能性及び量が増し、血小板活性化が促進される。工程48の電気刺激は、工程50において試料内でのADPの放出を誘発し、これがその後、CaClと連携して、工程52における血小板活性化を誘発する。工程54において、血小板が活性化された試料はその後、患者の損傷部位に適用されてよい。
【0025】
先に述べられるように、血小板活性化は、ある活性化アプローチにおいて、成長因子放出及び凝固の双方を含むプロセスである。しかしながら、ある状況において、可能であれば、凝固活性を回避することが望ましい。先に説明されるように、これは、本明細書中で説明されるパルス電場を用いて達成され得る。
【0026】
例えば、図3に目を向ければ、成長因子放出を凝固なく誘発する方法60が記載されている。方法60は、電気パルスを用い、血小板活性化法40と類似するので、系10によって部分的に実行され得る。工程62において、従事者は患者から血液を採取する。ある実施形態では、工程62からの血液試料は、前述のように、工程64においてPRP試料を生じさせるように処理されてよい。他の実施形態では、先に述べられるように、方法60の工程66〜工程70は、全血試料を用いて実行されてよい。工程66にて、試料は系10を介して1つ又は複数のパルスに曝され、これが工程68において成長因子の放出を誘発する。この例では、CaClは、パルス電場への曝露前に、又はこの曝露中に、添加されない。その後、放出された成長因子は、工程70において収集かつ貯蔵され得る。
【0027】
記載されるように、方法60は、電気刺激の前にCaClを試料に添加することを除いては、方法40と類似する。しかしながら、この相違は、成長因子が依然として放出される一方で、凝固が試料中に生じないという点で、異なる結果をもたらす。結果として、キュベット18は、プロトコルの履行が実行された後に放出されるあらゆる成長因子のみを含有する。
【0028】
図4は、成長因子放出を凝固なく誘発する代替の方法80を示す。従事者は、工程82において患者から血液を採取し、これがその後、工程84においてPRP試料を生じさせるように処理されてよい。あるいは、方法80の工程86〜工程92は、全血試料を用いて実行されてよい。その後、CaCl及びADP遮断化学物質(例えば、アピラーゼ)が、工程86において試料に添加される。工程88にて、試料は系10を介して1つ又は複数の電気パルスに曝され、これが工程90において成長因子の放出を誘発する。その後、放出された成長因子は、工程92において収集かつ貯蔵される。この例では、ADP遮断化学物質は、試料中のCaClの存在によって放出されるあらゆるADPと結合するように作用し、凝固は観察されない。
【実施例】
【0029】
血小板の豊富な血漿試料について、電気刺激前の塩化カルシウム及びADP遮断薬の添加の有無
前述の説明を念頭に置いて、図5は、3.7×濃度の血小板の豊富な血漿(PRP)の2つの試料を示す。図5は、ウシトロンビンを用いて活性化させた、血小板の豊富な血漿試料を示し(左側)、チューブの底部へと流動していないPRPによって示されるように、血小板活性化が、凝固と共に成長因子放出を伴う。逆に、右に示される、電気パルスに曝した後の血小板の豊富な血漿試料(本明細書中で説明される)は、チューブの底部へと流動するPRPによって示されるように、凝固することなく成長因子放出が生じることが示される。塩化カルシウム及びアピラーゼ、アデノシン二リン酸(ADP)遮断化学物質を、電気パルス刺激の前に右のチューブ内のPRP試料に添加した。左の試料において、ウシトロンビンを用いる血小板活性化の前に、塩化カルシウム及びアピラーゼを添加した。
【0030】
示される通り、そして上述の通り、ウシトロンビンを用いて活性化した試料は概して、チューブの先端に残り、凝固したことが示される。ゆえに、この研究からよく理解され得るように、ADP遮断は、トロンビンを活性化に用いる場合に凝固カスケードに影響を及ぼさないので、凝固が生じる。逆に、右の試料は、他の試料において観察される凝固を実証しないので、チューブの底部に向けてより自由に流動する。これらの結果を鑑みて、塩化カルシウム及び電気パルスの双方に曝す場合、ADP遮断化学物質は、試料から放出されるADPを遮断するように作用すると考えられる。ADPが遮断されると、CaClの存在下でも凝固は観察されない。上述の通り、これは、ウシトロンビンが用いられる場合との著しい差異であり、電気刺激が利用される場合、ADP遮断が凝固カスケードに影響を及ぼすという結論に至る。ゆえに、右の試料は、図4の方法80に従って調製した試料に相当する。
【0031】
図6は、活性化しなかったPRP試料、塩化カルシウム及びアピラーゼを添加し、かつウシトロンビンで活性化したPRP試料、ならびに塩化カルシウム及びアピラーゼを添加し、かつ電気パルスに曝したPRP試料について、放出された血小板由来成長因子(PDGF)の量を比較する。凝固は、ウシトロンビンで活性化したPRP試料中で生じるが、電気パルスに曝したPRP試料中で生じない。特に、図6は、本明細書中で説明したアプローチが挙げられる種々のアプローチを用いて、図5に示した血小板の豊富な血漿試料中に放出された血小板由来成長因子(PDGF)の量を示すグラフである。示すように、パルス電場は、血小板から成長因子を凝固させることなく放出させることができる。さらに、電気パルスに曝したPRP試料中に放出されたPDGFの量は、ウシトロンビンで活性化したPRP試料中に放出されたPDGFの量に匹敵する。前述のように、凝固は、電気パルスに曝したPRP試料中で生じない。
【0032】
血小板の豊富な血漿試料について、電気刺激前の塩化カルシウムの添加の有無
3.7×濃度のPRPの2つの試料を、電気パルスに曝した。生じた試料チューブを、図7に示す。特に、図7は、(同じ電気的条件下で)パルス電場に曝した、血小板の豊富な血漿の2つの試料を示す。右の試料は、チューブの底部へと流動しないPRP、及び成長因子放出によって実証されるように、完全に活性化され、凝固した。左の試料は、チューブの底部へと流動するPRPによって示されるように、凝固しなかった。しかしながら、図8中のデータによって例示されるように、成長因子放出が依然として生じていた(以下で説明する)。
【0033】
塩化カルシウムを、電気刺激の前に、左の試料にではなく右のチューブ内のPRP試料に添加した。即ち、右の試料を図2の方法40に従って処理し、左の試料を図3の方法60に従って処理した。上述の通り、右側のチューブ内の試料は凝固し、反転してもチューブの先端に留まる。逆に、左の試料は凝固せず、反転するとチューブの先端に対して下向きに流動する。
【0034】
図8は、電気パルスに曝さなかったPRP試料、塩化カルシウムなしでパルス電場に曝したPRP試料、及び塩化カルシウムの存在下でパルス電場に曝したPRP試料について、放出された血小板由来成長因子(PDGF)の量を比較するチャートを示す。凝固は、塩化カルシウムを含有するPRP試料中で生じるが、塩化カルシウムなしの、電気パルスに曝したPRP試料中で生じない。特に、図8は、本明細書中で説明したアプローチが挙げられる種々のアプローチを用いて、図7に示した血小板の豊富な血漿試料中に放出された血小板由来成長因子(PDGF)の量を示すグラフである。このグラフは、成長因子が、凝固があってもなくても放出され得ることを示す。塩化カルシウムなしのPRP試料中に放出されたPDGFの量は、塩化カルシウムありのPRP試料中に放出されたPDGFの量に匹敵する。さらに、塩化カルシウムなしのPRP試料中で凝固は生じない。
【0035】
開示した実施形態の1つ又は複数は、単独で、又は組み合わされて、生体外での血小板活性化及び成長因子放出のための医療技術に有用な1つ又は複数の技術的効果を提供することができる。生体外での血小板活性化のための本技術は、血小板由来の成長因子のような成長因子を放出させるために、電気刺激を用いる。ある実施形態によれば、オペレータは、凝固を誘導することなく成長因子を血小板から抽出することができる。さらに、生体外での成長因子放出のための本技術は、多くの医療ラボに既に存在する医療装置を用いて部分的に実行され得る。本明細書中に記載される技術的効果及び技術的問題は、例として与えられるだけであり、限定されることは意図されない。なお、本明細書中に記載される実施形態は、他の技術的効果を有し得、かつ他の技術的問題を解決し得る。
【0036】
本発明のある特徴のみが本明細書中に示され、かつ記載されてきたが、多くの修正及び変更が当業者に思い浮かぶであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神の範囲内にあるようなすべての修正及び変更を含むすることが意図されていると理解されるべきである。ある実施形態は、生体内での血小板活性化ワークフローに用いられてよい。1つは、電気刺激によって、凝固させることなくPRP内で成長因子放出を誘発し、このPRPを損傷の部位に注射することができる。このように放出された成長因子は、損傷の部位の創傷治療に用いることができる。さらに、ある実施形態では、血小板はまた、結合組織内のコラーゲンによって完全に活性化され得る。
【符号の説明】
【0037】
10 パルス発生系
12 パルス発生回路
14、16 電極セット(電極のアレイ)
18 キュベット
20 接点
22 試料
24 試料ホルダ
26 プロセッサ
28 メモリ
30 ディスプレイ
32 ユーザ入力装置
34 電流感知回路
40、60、80 方法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8