特許第6625611号(P6625611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625611
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】ターボ機械のモジュール
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/24 20060101AFI20191216BHJP
   F01D 9/04 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   F02C7/24 A
   F01D9/04
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-505608(P2017-505608)
(86)(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公表番号】特表2017-529481(P2017-529481A)
(43)【公表日】2017年10月5日
(86)【国際出願番号】FR2015052151
(87)【国際公開番号】WO2016024060
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2018年7月17日
(31)【優先権主張番号】1457829
(32)【優先日】2014年8月14日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロワゾー,シリル
(72)【発明者】
【氏名】ジャンドロー,アラン・ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】プレステル,セバスチャン・ジャン・ロラン
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−257402(JP,A)
【文献】 特表2012−510027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00−11/24
F02C 1/00− 9/58
F16J 15/00−15/14
F23R 3/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジンのモジュールであって、モジュールのケーシング(14)の内側に回転可能に装着された、隣接した2つのセクタの円周端縁(58)同士が実質的に互いに向き合うように配置されたリングセクタの環状列を備える区画化された密閉リング(18、18’)によって取り囲まれた可動インペラ(16)を備え、各リングセクタは、ケーシングの環状の取り付けレール(36)と協働するように設計された少なくとも1つの円周フック(32)を備え、モジュールは、リングセクタのフックとケーシングレールとの間に置かれた、隣接した2つのセクタの円周端縁(60)同士が実質的に互いに向き合うように配置されたフォイルセクタの環状列を備える環状の区画化された保護フォイル(50、50’)をさらに備える、タービンエンジンのモジュールであって、リングセクタ(18、18’)の数はフォイルセクタ(50、50’)の数と等しいこと、フォイルセクタは、フォイルセクタの円周端の縁がモジュールの縦軸に沿ったリングセクタの円周端の縁と位置合わせされないように設計された位置決め手段(66)および/または回転ロック手段(70、74)を備えることを特徴とする、タービンエンジンのモジュール。
【請求項2】
リングセクタ(18、18’)がフォイルセクタ(50、50’)に対して互い違いになるように配置される、請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
リングセクタ(18、18’)のフック(32)が一般的にU字形状またはC字形状の断面を有し、その開口部は上流方向に配向され、各々が、同軸の2つの環状壁、それぞれ半径方向内壁(40)と外壁(38)を連結する中間底壁(42)を備え、フォイルセクタ(50、50’)は、一般的にU字形状またはC字形状の横断面を有し、その開口部は上流方向に配向され、各々が、同軸の2つの環状壁、それぞれ半径方向内壁(52)と外壁(54)を連結する中間側壁(56)を備え、フォイルセクタは、フォイルセクタの内壁がケーシングレールの内面とリングセクタのフックの内壁との間に置かれるように、フォイルセクタの底壁がケーシングレールの実質的半径方向面とリングセクタのフックの底壁との間に置かれるように、かつフォイルセクタの外壁がケーシングレールの外面とリングセクタのフックの外壁との間に置かれるように、リングセクタのフックの開口部内に係合され、ケーシングレール(36)上に装着される、請求項1および請求項2のいずれかに記載のモジュール。
【請求項4】
リングセクタ(18、18’)のフック(32)の内壁(40)が、予め半径方向に応力が掛けられた形でケーシングレール(36)上に装着されるようにレールの曲率半径とは異なる曲率半径を有する、請求項3に記載のモジュール。
【請求項5】
フォイルセクタ(50、50’)の内壁(52)が、フォイルセクタの自由円周縁上に出現する、リングセクタ(18、18’)のフック(32)の円周端の縁(58)と実質的に軸方向に位置合わせされた半径方向凹部(66)を備える、請求項3または請求項4いずれかに記載のモジュール。
【請求項6】
前記凹部(66)が各々一般的にV字形状であり、実質的にフォイルセクタ(50、50’)の内壁(52)の中心に形成される、請求項5に記載のモジュール。
【請求項7】
リングセクタ(18、18’)のフック(32)の内壁(40)の円周端が、実質的に凹部(66)の底(68)と位置合わせされてフォイルセクタ(50、50’)の内壁(52)上に半径方向に当接する、請求項5または請求項6のいずれかに記載のモジュール。
【請求項8】
リングセクタ(18)のフック(32)の内壁(40)または外壁(38)が、実質的にそれらの中心に半径方向凹部(72、78)を備え、フォイルセクタ(50、50’)の内壁(52)または外壁(54)は、リングセクタのフックの上述の凹部(72)と実質的に半径方向に位置合わせされた半径方向端凹部(70)、あるいは折り畳まれ、リングセクタのフックの上述の凹部(78)内に係合されるように設計された折り畳み可能な半径方向ラグ(74)のいずれかを備える、請求項4から請求項7のいずれかに記載のモジュール。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の少なくとも1つのモジュールを備えるタービンエンジン。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のモジュール用の、フォイルセクタの環状列を備える環状の区画化された保護フォイル(50、50’)であって、各フォイルセクタは一般的にU字形状またはC字形状の断面を有し、その開口部は軸方向に配向され、同軸の2つの環状壁、それぞれ半径方向内壁(52)と外壁(54)を連結する中間底壁(56)を備え、前記内壁は実質的にそれらの中心に、セクタの自由円周縁上に出現する半径方向凹部(66)を備える、環状の区画化された保護フォイル(50、50’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタービンエンジンのモジュール、例えばタービンであり、またはタービンの一部を形成するなどのタービンエンジンのモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術には、特に文書の国際公開第98/53228号パンフレット、欧州特許出願公開第2612998号明細書、および欧州特許出願公開第2508715号明細書がある。
【0003】
タービンエンジンのタービンは1つまたは複数の段を備え、各段はタービンのケーシングによって担持された固定羽根の環状列によって形成されたノズルと、一般的にはノズルの下流に回転可能に装着されたインペラとを備える。インペラは、円周方向に端同士を接して配置された、タービンケーシングに取り付けられたセクタによって区画化および形成された密閉リングによって取り囲まれる。
【0004】
各リングセクタは一般的に、摩耗性材料のブロックが内表面に取り付けられた、円周方向に配向された金属板を備える。このブロックは、例えばハニカム式であり、インペラの羽根の外部環状ワイパの摩擦によって摩耗するように意図されており、これによりラビリンスシールを形成し、インペラとリングセクタの間の半径方向隙間を最小限に抑える。
【0005】
各リングセクタはその上流端と下流端に、ケーシングに取り付ける手段を備える。各リングセクタはその上流端に、環状溝を画定する円周フックを備えることができ、その環状溝には、ケーシングの環状レールと上流に位置付けられたノズルの下流の円周フックとの両方が係合される。ノズルの下流の円周フックは、リングの上流の円周フックによってケーシングレールに半径方向に締め付けられた状態にされる。上流の円周フックは、一方が他方の内側に、ノズルのフックの内側とケーシングレールの外側とにそれぞれ延在する同軸の2つの環状壁を備える。このことによって、ノズルをケーシングに対して半径方向に保持することに関与することが可能になる。ノズルは、ケーシングによって担持される、ノズル内の凹部内に係合される回転防止ピンによって円周方向または接線方向に保持されることが可能である。前記ノズルは一般的に、外側に向かって半径方向に出現する上述のケーシングレール内の環状溝内に装着された環状割りリングによって軸方向に下流方向へ保持される。ノズルの下流の円周フックはこのリングに下流方向に軸方向に当接する。リングは、リングの内側で半径方向に延在するリングセクタのフックの内部壁によってケーシングレール内の溝内に半径方向に保持される。変化形態では、このリングの軸方向停止機能は直接ケーシングレールによってもたらされることができる。
【0006】
ケーシングを特に摩耗および高温から保護するために、環状フォイルを使用することが知られている。このフォイルは区画化され、円周方向に端同士を接して配置されたフォイルセクタの環状列を備える。前記フォイルは一般的にU字形状またはC字形状の断面を有し、中間底壁によって相互連結された同軸の2つの環状壁、それぞれ内壁と外壁を備える。
【0007】
リングセクタのフックの開口部は軸方向上流に配向され、フォイルセクタを受容する。フォイルセクタはそれらの壁がリングセクタのフックの開口部を覆うように設計される。フォイルセクタの内壁は、リングセクタのフックの内壁の半径方向外方面にわたって延在するように意図され、フォイルセクタの外壁は、リングセクタのフックの外壁の半径方向内方面にわたって延在するように意図され、フォイルセクタの底壁は、リングセクタのフックの底壁の上流の半径方向面にわたって延在するように意図される。
【0008】
ケーシングレール上にリングセクタを装着する位置で、フォイルセクタの内壁は、リングセクタのフックの内壁とノズルまたはさらに環状リングのフックとの間に置かれ、フォイルセクタの外壁は、リングセクタのフックとケーシングレールとの間に置かれ、フォイルセクタの底壁はリングセクタのフックの底壁とケーシングレールとの間に置かれる。
【0009】
フォイルセクタは板金から製造され、リングセクタのフックとケーシングレールとの間の直接的接触を防止することを可能にする。これによって、前記レールを摩擦による摩耗から保護すること、それをリングから熱的に保護することの両方を可能にする。リングは、それがタービンダクト内を流れる燃焼ガスに接近していることから、動作中に極めて高温になる場合がある。
【0010】
リングの区画化によって、リングの隣接した2つのセクタの円周端の縦縁同士は互いに向き合い、ダクトの高温ガスが通過することの可能な円周隙間によって互いに分離される。これらの高温ガスはケーシングを加熱する傾向を有するが、いくつかの理由からそれは有害である。その理由の1つは、ケーシングの加熱が起こるとその膨張および変形が生じ、それが可動インペラとリングの間の半径方向隙間を変更する危険を冒し、したがって、タービンの性能を低下させる、ということである。この問題の知られている解決法は、リングセクタ同士間に密閉舌部を置くことであり、それらの舌部は前記リングセクタの上述の縦縁内の溝内に収容される。
【0011】
しかし、フォイルの区画化によって、隣接した2つのフォイルセクタの円周端の縦縁同士が互いに向かい合い、円周隙間によって互いに分離される。従来技術では、フォイルセクタ同士間の円周隙間は、リングセクタ同士間の円周隙間と軸方向に位置合わせされ、特に、上述のタイプの舌部を装着することが特に所要空間の理由から、領域で可能でないリングセクタのフック同士間の円周隙間と位置合わせされる。このように高温ガスは、リングセクタのフック同士間かつフォイルセクタ同士間の円周隙間を通過することが可能であり、ケーシングレールを加熱する。このことはケーシングレールの耐用年数を縮小するリスクを冒す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第98/53228号
【特許文献2】欧州特許出願公開第2612998号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2508715号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、特に上述の状況のケーシングレールへの熱保護を改善することによって、特にこの必要事項へのシンプル、効果的、かつ経済的な解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって本発明は、タービンエンジンのモジュールであって、モジュールのケーシングの内側に回転可能に装着された、隣接した2つのセクタの円周端縁同士が実質的に互いに向き合うように配置されたリングセクタの環状列を備える区画化された密閉リングによって取り囲まれた可動インペラを備え、各リングセクタは、ケーシングの環状の取り付けレールと協働するように設計された少なくとも1つの円周フックを備え、モジュールは、リングセクタのフックとケーシングレールとの間に置かれた、隣接した2つのセクタの円周端縁同士が実質的に互いに向き合うように配置されたフォイルセクタの環状列を備える環状の区画化された保護フォイルをさらに備える、タービンエンジンのモジュールであって、リングセクタの数はフォイルセクタの数と等しいこと、フォイルセクタは、フォイルセクタの円周端の縁がモジュールの縦軸に沿ったリングセクタの円周端の縁と位置合わせされないように設計された位置決め手段および/または回転ロック手段を備えることを特徴とする、タービンエンジンのモジュールを提案する。
【0015】
本発明はケーシングレールをよりうまく保護することを可能にする。これは、リングセクタの円周端の縁同士間を通過する傾向のあるガスがフォイルセクタによって遮断され(リングセクタに対するその角度的偏位によって)、ケーシングレールのところまで到達しないことによる。
【0016】
本発明によるモジュールは、以下の特色のうちの1つまたは複数を個別にまたは互いに組み合わせて備えることができる。
【0017】
‐リングセクタの数はフォイルセクタの数と等しく、
‐リングセクタはフォイルセクタに対して互い違いになるように配置され、
‐リングセクタのフックは一般的にU字形状またはC字形状の断面を有し、その開口部は軸方向に配向され、各々が、同軸の2つの環状壁、それぞれ半径方向内壁と外壁を連結する中間底壁を備え、
‐フォイルセクタは、一般的にU字形状またはC字形状の横断面を有し、その開口部は軸方向に配向され、各々が、同軸の2つの環状壁、それぞれ半径方向内壁と外壁を連結する中間側壁を備え、フォイルセクタは、フォイルセクタの内壁がケーシングレールの内面とリングセクタのフックの外壁との間に置かれるように、フォイルセクタの底壁がケーシングレールの実質的半径方向面とリングセクタのフックの底壁との間に置かれるように、かつフォイルセクタの外壁がケーシングレールの外面とリングセクタのフックの外壁との間に置かれるように、リングセクタのフックの開口部内に係合され、ケーシングレール上に装着され、
‐リングセクタのフックの内壁は、予め半径方向に応力が掛けられた仕方でケーシングレール上に装着されるようにレールの曲率半径とは異なる曲率半径を有し、
‐フォイルセクタの内壁は、フォイルセクタの自由円周縁上に出現する、リングセクタのフックの円周端の縁と実質的に軸方向に位置合わせされた半径方向凹部を備え、これらの凹部は本発明の意味するところの位置決め手段を形成し、
‐前記凹部は各々一般的にV字形状であり、実質的にフォイルセクタの内壁の中心に形成され、
‐リングセクタのフックの内壁の円周端は、実質的に凹部の底と位置合わせされてフォイルセクタの内壁上に半径方向に当接し、
‐リングセクタのフックの内壁または外壁は、実質的にそれらの中心に半径方向凹部を備え、フォイルセクタの内壁または外壁は、リングセクタのフックの上述の凹部と実質的に半径方向に位置合わせされた半径方向端凹部、あるいは折り畳まれ、リングセクタのフックの上述の凹部内に係合されるように設計された折り畳み可能な半径方向ラグのいずれかを備え、これらの凹部および/またはラグは本発明の意味するところの回転(モジュールの縦軸のまわりの)ロック手段を形成し、
‐モジュールはタービンである。
【0018】
本発明は少なくとも1つの上述のモジュールを備えるタービンエンジンにも関する。
【0019】
最後に、本発明は上述のモジュール用の、フォイルセクタの環状列を備える区画化された環状の保護フォイルであって、各フォイルセクタは一般的にU字形状またはC字形状の断面を有し、その開口部は軸方向に配向され、同軸の2つの環状壁、それぞれ半径方向内壁と外壁を連結する中間底壁を備え、前記内壁は実質的にそれらの中心に、セクタの自由円周縁上に出現する半径方向凹部を備える、区画化された環状の保護フォイルに関する。
【0020】
非制限的な例としてここに掲げられ、添付図面を参照した以下の記述を読めば、本発明がより充分に理解され、本発明の他の詳細、特色、および利点が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】タービンエンジンのタービンの軸方向断面の概略部分片側図である。
図2図1の一部の概略拡大図であり、タービンの密閉リングおよび環状フォイルを示す図である。
図3】従来技術によるタービンの密閉リングおよび環状フォイルの概略部分平面図である。
図4】本発明によるタービンの密閉リングおよび環状フォイルの概略部分平面図である。
図5図2の線V〜Vに沿った断面の概略図である。
図6】本発明の実施形態によるリングセクタとフォイルセクタの概略斜視図である。
図7】本発明の実施形態によるリングセクタとフォイルセクタの概略斜視図である。
図8図6および図7のフォイルの下から見た極めて概略的な部分図である。
図9】リングセクタとフォイルセクタの変化形態の概略斜視図である。
図10】リングセクタとフォイルセクタの変化形態の概略軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に図1および図2を参照すると、それらは、航空機のターボジェットエンジンまたはターボプロップエンジンなどのタービンエンジンの、この事例では低圧のタービン10を示し、前記タービンは複数の段を備え(本明細書では1つしか示されない)、各段はタービンのケーシング14によって担持された固定羽根の環状列よって形成されたノズル12と、ノズル12の下流に装着され、ケーシング14に取り付けられたリング18内で回転するインペラ16とを備える。
【0023】
リング18は、タービンのケーシング14によって円周方向に端同士を接して担持された複数のセクタによって形成される。
【0024】
各リングセクタ18は、円錐台形壁20と壁20の半径方向内表面にロウ付けおよび/または溶接によって固定された摩耗性材料のブロック22とを備え、このブロック22はハニカム式であり、インペラ16の羽根の外方環状ワイパ24上で摩擦によって摩耗するよう意図され、これによってインペラとリングセクタ18の間の半径方向隙間を最小限に抑える。
【0025】
各リングセクタ18は、その上流端にC字形状またはU字形状の断面を有する円周フック32を備え、その開口部は上流方向に出現し、一方端で、リングセクタ18の上流に位置付けられたノズル12の下流方向に配向された円筒フック34上に下流方向から軸方向に係合され、他方端で、前記ノズルが取り付けられたケーシング14の円筒レール36上に係合される。
【0026】
各リングセクタ18のフック32は2つの円周壁38と40、それぞれ半径方向外壁と半径方向内壁を備え、それらは上流方向に延在し、実質的に半径方向中間底壁42によってそれらの上流端で相互連結され、それぞれレール36の半径方向に外側と内側に延在し、内壁40はノズルのフック34を半径方向にレール36に対して保持する。
【0027】
ノズル12は、ケーシング14によって担持された回転防止ピン44によって円周方向に保持され、ノズル12内の凹部内に係合される。前記ノズルは、半径方向に内側に向かって出現するレール36内の環状溝48内に装着された環状割りリング46によって軸方向に下流方向に保持される。ノズル12のフック34は下流方向にリング46上に軸方向に当接しており、リング46は、リング46の内側で半径方向に延在する内壁40によってケーシング内の溝内に半径方向に保持される。変化形態では、リング46の軸方向停止機能がケーシングレール36によって直接もたらされることが可能である。
【0028】
リングセクタ18の下流端は、リングセクタの下流に位置付けられたノズルによって半径方向にケーシングの円筒レール30上に締め付けられる。リングセクタ18は、外側に向かってケーシングのレール30の半径方向内方円筒面上に、内側に向かって下流ノズルの円筒リム28の半径方向外方円筒面上に半径方向に当接する。
【0029】
レール36を熱および摩耗から保護するために、区画化された、円周方向に端同士を接して配置されたフォイルセクタの環状列を備えた環状フォイル50を使用することが知られている。前記フォイルは一般的にC字形状またはU字形状の横断面を有し、中間底壁56によって相互連結された2つの同軸の環状壁、それぞれ内壁52と外壁54を備える。
【0030】
フォイル50は、ケーシングレール36上とノズル12のフック34上とに装着されて、これによってフォイルセクタ50の内壁52が、リングセクタ18のフック32の内壁40とノズル12のフック34および環状リング46との間に置かれるように、フォイルセクタの外壁54がリングセクタのフック32の外壁38とケーシングレール36との間に置かれるように、かつフォイルセクタの底壁56がリングセクタのフックの底壁42とケーシングレール36との間に置かれるようになる(図2)。
【0031】
フォイルセクタ50は板金から製造され、リングセクタ18のフック32とケーシングレール36との直接的接触を防止することを可能にし、そのことは前記レールを摩擦による摩耗から保護すること、リングから熱的に保護することの両方を可能にする。リングは、タービンダクト内を流れる燃焼ガスに近接していることから動作中に極めて高温になる場合がある。
【0032】
上に説明し、かつ本発明に対する従来技術を示す図3によって示したように、リングセクタ18の円周端の縦縁58同士は、タービンダクトのガスが通過することの可能な円周隙間によって互いに分離される。フォイルセクタ50の円周端の縦縁60同士も、リングセクタ18同士間の隙間と軸方向に位置合わせされた円周隙間によって互いに分離される。上述の高温ガスは、リングセクタ18のフック32同士間とフォイルセクタ50同士間との円周隙間を通過し、ケーシングレール36を加熱することが可能であるが(図2の矢印62)、そのことはケーシングレール36の耐用年数を縮小するリスクを冒す。これは、リングセクタ18の円周端の縦縁58同士間に装着された舌部64がリングセクタ18のフック32のところまで延在せず、この領域内のガスの流れを防止しないことによる。
【0033】
本発明はこの問題を、フォイルセクタ50の円周端の縦縁60の、リングセクタ18の円周端の縦縁58に対する角度的偏位によって克服することを可能にする。図4は、フォイルセクタ50がリングセクタ18に対して互い違いになるように配置される本発明の実施形態を示す。したがってリングセクタ18のフック32同士間の円周隙間を通過する傾向のあるガスは、フォイルセクタ50によって遮断され、ケーシングレール36のところまで到達しない。ケーシングレール36はより長い耐用年数を有する。
【0034】
図5で分かるように、リングセクタ18の壁38、40はケーシングレール36に対して「予備反らせ」される。即ち、それらはケーシングレール36の曲率半径よりも大きな曲率半径を有する。そのことはそれらをある程度予め応力を掛けられるようにレール上に装着することを可能にする。この予備反らせによって、図5に示されたリングセクタ18は、あまり広くない支承ゾーンC1、C2、C3をレール36上に有する。ここに示された実施例の通り、セクタ18の壁38の内面の中間部はC1でレール36の外方面上に当接し(使用中、フォイルセクタ50の壁54によって)、壁40の外面の端部はC1およびC3でレール36の内面上、あるいはノズル12のフック34とリング46と上に当接する(使用中、フォイルセクタ50の壁52によって)。
【0035】
フォイルセクタ50上に過剰な応力を置かないように、リングセクタ18とケーシングレール36との円周端同士間でピンチすることによって、図6から図8に示した実施形態は、フォイルセクタ、特にその内壁52の特定の形状化を提案する。そのような形状化が無い場合、リスクとしてフォイルセクタ50を時期尚早に摩耗させ、支承ゾーンC1、C3内に亀裂発生ゾーンを創り出すことがある。
【0036】
ここに示された実施例では、各フォイルセクタ50の内壁52は、実質的にその中心に凹部66を備える。この凹部66は壁52の上流の自由円周縁上に出現し、本明細書では一般的にV字形状である。各凹部66はフォイルセクタ50の円周範囲の30%から60%の円周範囲と、フォイルセクタ50の縦寸法の10%から50%の間の縦寸法を有する。
【0037】
フォイルセクタ50が連続線で示され、リングセクタ18が破線で示される図8で分かるように、リングセクタ18のフック32の円周端の縦縁58は実質的に凹部66の底68と位置合わせして位置付けられる。これらの凹部66はフォイルセクタ50の内壁52にある程度の柔軟性をもたらす。
【0038】
本発明によると、フォイルセクタ50には回転ロック手段が設けられることもできる。
【0039】
図6から図8に示された実施例では、これらのロック手段は各フォイルセクタ50の内壁52の円周端に形成された凹部70を備える。この凹部70は壁52の上流の自由円周縁上、ならびに壁の対応する端の縦縁上に出現する。これは、本明細書では長方形である。各凹部70は、フォイルセクタ50の円周範囲の10%から30%の間の円周範囲と、フォイルセクタ50の縦寸法の20%から70%の間の縦寸法とを有する。
【0040】
装着位置では、各フォイルセクタ50の凹部70は、リングセクタ18のフックの内壁40内の凹部72と半径方向に位置合わせされる。凹部72は実質的にこの壁の中心に位置付けられる。凹部70、72はノズル12の止め金(図示せず)を受け取るよう意図されて、リングセクタ18とフォイルセクタが互いに対して、ならびにケーシング14に対して回転するのを不動化する。
【0041】
図9および図10は、本明細書では折り畳み可能なラグ74を備えるロック手段の変化形態を示す。この事例では、ラグ74は各フォイルセクタ50’の外壁54によって担持される。前記ラグは実質的にセクタ50’の中心に位置付けられ、静止状態で半径方向外向きかつ下流に延在する。その外方半径方向端76は、リングセクタ18’のフックの外壁38内の外方半径方向凹部78内に係合するように、半径方向に変形され、折り畳まれるように意図される。このことは、フォイルセクタ50’がリングセクタ18’に対して回転するのを不動化する。変化形態では、各フォイルセクタはこのタイプの2つ以上の回転防止ラグを備えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10