特許第6625866号(P6625866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625866
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】地絡電流測定装置及び地絡電流測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/02 20060101AFI20191216BHJP
   G01R 31/08 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   G01R31/02
   G01R31/08
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-222715(P2015-222715)
(22)【出願日】2015年11月13日
(65)【公開番号】特開2017-90326(P2017-90326A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓明
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 宏樹
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−284556(JP,A)
【文献】 特開2008−172964(JP,A)
【文献】 実開平02−007739(JP,U)
【文献】 実開昭60−038031(JP,U)
【文献】 米国特許第04297740(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/02
G01R 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流の主回路に接続された三次巻線付変流器の二次側と三次側のそれぞれで測定された地絡電流を相ごとに加算して、前記主回路における地絡電流を算出する加算部を備え
前記三次巻線付変流器の前記二次側の各相は前記主回路に並列に接続され、前記三次側の各相は前記主回路に直列に接続され、
地絡事故発生時において、
前記三次側の各相には地絡電流の3分の1の地絡電流が流れ、
前記二次側の健全相には、前記三次側の地絡電流と同じ大きさの地絡電流が、前記三次側の地絡電流を打ち消す方向に流れ、
前記二次側の事故相には、前記二次側の健全相に流れる地絡電流が流れ込み、
前記加算部は、前記二次側の地絡電流と前記三次側の地絡電流を相ごとに加算することで、前記主回路の事故相に流れる地絡電流を算出することを特徴とする地絡電流測定装置。
【請求項2】
三相交流の主回路に接続された三次巻線付変流器の二次側と三次側のそれぞれで測定された地絡電流を相ごとに加算して、前記主回路における地絡電流を算出する地絡電流測定方法であって、
前記三次巻線付変流器の前記二次側の各相は前記主回路に並列に接続され、前記三次側の各相は前記主回路に直列に接続され、
地絡事故発生時において、
前記三次側の各相には地絡電流の3分の1の地絡電流が流れ、
前記二次側の健全相には、前記三次側の地絡電流と同じ大きさの地絡電流が、前記三次側の地絡電流を打ち消す方向に流れ、
前記二次側の事故相には、前記二次側の健全相に流れる地絡電流が流れ込み、
前記二次側の地絡電流と前記三次側の地絡電流を相ごとに加算することで、前記主回路の事故相に流れる地絡電流を算出することを特徴とする地絡電流測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、三次巻線付変流器が接続された三相交流の主回路において、地絡事故発生時の地絡電流を測定するための地絡電流測定装置及び地絡電流測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三相交流の回路(以下、「主回路」という)に流れる電流を測定するために、変流器が用いられる。主回路を流れる電流を変流器の二次巻線側から取出し、電流測定装置によって測定する。主回路において地絡事故が生じたときには、地絡電流が発生する。この地絡電流を検出するために、変流器の残留回路を利用する方法がある。ただし、地絡電流は非常に小さい場合があり、残留回路では測定に十分な地絡電流が得られないことがある。地絡電流を検出するために、三次巻線付変流器が用いられることがある。三次巻線付変流器は、二次巻線と同一鉄心に三次巻線が巻かれたものである。三次巻線は三相分をΔ接続し、主回路に直列に接続される。地絡事故時、三次巻線には地絡電流の3分の1に相当する電流が流れる。三次巻線側に流れる電流を測定することで、地絡電流が小さい場合でも検出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−304870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地絡事故の復旧には、事故点を特定する必要がある。事故点の特定には、主回路に流れる地絡電流を正確に測定する必要がある。主回路において地絡電流は事故相にのみ流れる。しかしながら、三次巻線付変流器では、事故相に接続された回路だけでなく健全相に接続された回路にも地絡電流が流れる現象が発生する。そのため、三次巻線付変流器の二次巻線と三次巻線に流れる地絡電流を測定しても、主回路に流れる地絡電流を正確に把握することができなかった。
【0005】
上述した課題を解決するために、実施形態は、三相交流の主回路に流れる地絡電流を正確に測定することができる地絡電流測定装置及び地絡電流測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の地絡電流測定装置は、三相交流の主回路に接続された三次巻線付変流器の二次側と三次側のそれぞれで測定された地絡電流を相ごとに加算して、前記主回路における地絡電流を算出する加算部を備え、前記三次巻線付変流器の前記二次側の各相は前記主回路に並列に接続され、前記三次側の各相は前記主回路に直列に接続され、地絡事故発生時において、前記三次側の各相には地絡電流の3分の1の地絡電流が流れ、前記二次側の健全相には、前記三次側の地絡電流と同じ大きさの地絡電流が、前記三次側の地絡電流を打ち消す方向に流れ、前記二次側の事故相には、前記二次側の健全相に流れる地絡電流が流れ込み、前記加算部は、前記二次側の地絡電流と前記三次側の地絡電流を相ごとに加算することで、前記主回路の事故相に流れる地絡電流を算出する。
【0007】
実施形態の地絡電流測定方法は、三相交流の主回路に接続された三次巻線付変流器の二次側と三次側のそれぞれで測定された地絡電流を相ごとに加算して、前記主回路における地絡電流を算出する地絡電流測定方法であって、前記三次巻線付変流器の前記二次側の各相は前記主回路に並列に接続され、前記三次側の各相は前記主回路に直列に接続され、地絡事故発生時において、前記三次側の各相には地絡電流の3分の1の地絡電流が流れ、前記二次側の健全相には、前記三次側の地絡電流と同じ大きさの地絡電流が、前記三次側の地絡電流を打ち消す方向に流れ、前記二次側の事故相には、前記二次側の健全相に流れる地絡電流が流れ込み、前記二次側の地絡電流と前記三次側の地絡電流を相ごとに加算することで、前記主回路の事故相に流れる地絡電流を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】三相交流の主回路、三次巻線付変流器及び実施形態に係る地絡電流測定装置の構成を示す図である。
図2】地絡電流測定装置の構成を示すブロック図である。
図3】地絡事故時に主回路に流れる地絡電流を示すグラフである。
図4】(a)は地絡事故時に三次巻線付き変流器の二次側に流れる電流を示す図であり、(b)は三次側に流れる電流を示す図である。
図5】地絡事故時の主回路及び三次巻線付変流器の電流の流れを示す図である。
図6】加算部における加算処理を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
【0010】
[構成]
図1に示すように、R相、S相及びT相からなる三相交流の主回路2に、三次巻線付変流器(以下、「三次巻線付CT」という)3が接続されている。三次巻線付CTは二次巻線4と同一鉄心に三次巻線5が巻かれた変流器である。三次巻線付CT3の二次巻線4の三相は主回路2に並列接続されている。三次巻線付CT3の三次巻線5は、三相分がΔ接続され、主回路2に直列に接続されている。二次巻線4及び三次巻線5には、それぞれに流れる電流を測定する電流計6が接続されている。電流計6は、二次巻線側(以下、単に「二次側」ともいう)については、R相、S相及びT相それぞれに流れる電流の値を測定する。三次巻線側(以下、単に「三次側」ともいう)については、電流計6は主回路に直列に接続された三次巻線5に流れる電流を測定する。電流の測定は、所定のサンプリング時間毎に行うと良い。
【0011】
実施形態に係る地絡電流測定装置1は、メモリとCPU等の演算制御装置を含み構成され、電流計6と有線又は無線により接続されている。演算制御装置はROMに記憶されたプログラムの実行によってソフトウェア処理を行い、図2に示す構成を実現する。図2に示すように、地絡電流測定装置1は、通信部11、加算部13及びデータベース14で構成される。データベース14はROM,RAM,PPRAM等の記憶媒体から構成される。
【0012】
通信部11は、USB、SD、CAT−5など、電流計6と信号線を介して有線通信するためのポートを含むようにしても良い。あるいは、通信部11は、無線受信機を含むようにしても良い。無線受信機は、IEEE 802.11、IEEE 802.16、BlueTooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short-Range Communication)又は他の適当な無線通信方式を用いて二次側電流計6と通信を行うようにしても良い。通信部11は、電流計6で測定された、二次巻線4の三相それぞれの電流値と、三次巻線5のT相の電流値を受信する。受信タイミングは、電流計での測定タイミングと同様としても良いし、あるいは地絡事故発生後に、事故発生時付近のデータをまとめて受信するようにしても良い。
【0013】
通信部11は、受信した電流値をデータベース14に記憶させる。三次側についてはT相のみの電流値を受信するが、上述したように全ての相において同じ電流が流れるため、T相の電流値をR,S及びT相それぞれの電流値として記憶させる。したがって、データベース14には、三次巻線付CT3の二次側及び三次側の各相の電流値が、サンプリング時間毎に格納されている。
【0014】
加算部13は、CPU及びRAM等から構成される。加算部13は、データベース14を参照し、三次巻線付CT3の二次側及び三次側の電流値を、R,S及びT相毎に加算する。加算部13は、加算した各相の電流値をデータベース14に記憶させる。
【0015】
[作用効果]
実施形態の地絡電流測定装置1の作用を、図3図6を用いて説明する。ここでは、一例として、主回路2の三相のうち、R相において地絡事故100が発生した場合を説明する。
【0016】
図3は、地絡事故時に主回路2に流れる地絡電流を示したグラフである。図3に示すように、地絡事故時、事故相のR相のみに地絡電流が流れ、健全相のS相及びT相には地絡電流は流れない。一方、図4(a)は、地絡事故時に三次巻線付CT3の二次側に流れる地絡電流を示したグラフであり、図4(b)は三次側に流れる地絡電流を示したグラフである。図4(a)に示すように、二次側の事故相に接続されたR相に流れる地絡電流は主回路2の地絡電流と一致せず、更に、二次側では健全相に接続されたS,T相にも地絡電流が流れている。図4(b)に示すように、三次側に流れる地絡電流も、主回路2の地絡電流とは一致しない。
【0017】
ここで、地絡事故時に二次側の健全相にも地絡電流が流れる原因を、図5を用いて説明する。地絡事故時には、主回路2の事故相であるR相には、3I0の地絡電流16が流れるとする。三次巻線付CT3の場合、三次側に主回路2を流れる地絡電流16の3分の1であるI0の地絡電流17が流れる。三次側は、上述したように主回路に対して各相が直列に接続されているため、地絡電流17は各相に直列で流れる。
【0018】
一方、主回路2の健全相であるS相及びT相には、地絡電流が流れていない。すると、三次側と同一鉄心に巻かれた二次側のS相及びT相には、三次側のS相及びT相に流れる電流を打ち消す方向にI0の地絡電流18が流れる。S相及びT相のそれぞれに流れるI0の電流18は、そのまま並列に接続された事故相のR相に流れる。よって、二次側のR相には、三次側と同じ方向に、2I0の地絡電流19が流れることになる。
【0019】
このように、三次巻線付CT3において、二次側及び三次側で測定される地絡電流17,18,19が主回路2に流れる地絡電流16と一致せず、かつ二次側の健全相に接続された相にも地絡電流18が流れる。そのため、主回路2に流れる地絡電流16を正確に測定することができなかった。ここで、着目されることは、二次側のS相及びT相は、三次側のS相及びT相とは異なる向きに、同じ大きさの地絡電流が流れることである。そこで、二次側のS相及びT相の地絡電流18を、三次側の地絡電流17と加算すると、地絡電流は相殺される。一方、二次側のR相の地絡電流19は、三次側の地絡電流17と同じ向きに流れている。更に、二次側のR相の地絡電流19は、並列接続されたS相及びT相のそれぞれに流れたI0の地絡電流17が流れ込んだものである。すなわち、二次側のR相の地絡電流19は、主回路の地絡電流16の3分の2に相当する。よって、図6に示すように、2I0の二次側のR相の地絡電流19とI0の三次側の地絡電流17を加算すると、主回路2の事故相であるR相に流れる3I0の地絡電流16と同じとなる。
【0020】
したがって、健全相にも地絡電流が流れてしまう三次巻線付CT3においても、二次側と三次側の電流値を相ごとに加算する処理を行えば、健全相に流れる地絡電流18は打ち消され、主回路2の事故相を流れる地絡電流16を算出することができる。
【0021】
そこで、実施形態の地絡電流測定装置1では、加算部13を備える。加算部13において、図6に示すように、主回路2に接続された三次巻線付CT3の二次側と三次側のそれぞれで測定された地絡電流を相ごとに加算する処理を行い、主回路2における地絡電流を算出する。これによって、加算という簡潔な処理によって、正確に地絡電流を測定することができ、利便性が高い。
【0022】
具体的には、地絡電流測定装置1は、通信部11を更に備え、通信部11が電流計6で測定された二次側及び三次側それぞれの電流値を受信し、データベース14に記憶させる。加算部13は、データベース14を参照して、相互との電流値の加算処理を行う。また、加算して算出した主回路2の地絡電流の値は、データベース14に記憶させる。
【0023】
算出した地絡電流値を、通信装置を介して他の機器に出力し、様々な処理に利用しても良い。例えば、事故点標定装置において地絡事故100の地点を標定する処理に用いても良い。なお、地絡電流測定装置1と同じ演算制御装置に他の処理を行う処理部を備えるようにしても良い。その場合は、他の処理を行う処理部が、データベース14を参照して地絡電流値を取得すると良い。
【0024】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0025】
上記実施形態では、一つの電流計6で三次巻線付変流器3の二次側及び三次側の両方の電流を計測するようにしたが、二次側と三次側で別々の電流計を設けるようにしても良い。その場合は、地絡電流測定装置1の通信部11は、二次側の電流計と三次側の電流計のそれぞれと通信を行い、各電流計で測定された電流値を受信するようにすると良い。
【符号の説明】
【0026】
1 地絡電流測定装置
2 主回路
3 三次巻線付変流器(三次巻線付CT)
4 二次巻線
5 三次巻線
6 電流計
11 通信部
13 加算部
14 データベース
100 地絡事故

図1
図2
図3
図4
図5
図6