(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6625897
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】搬送物の切り出し機構
(51)【国際特許分類】
B65G 47/88 20060101AFI20191216BHJP
【FI】
B65G47/88 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-31565(P2016-31565)
(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公開番号】特開2017-149510(P2017-149510A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】592129774
【氏名又は名称】株式会社FDKエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】辻本 康浩
(72)【発明者】
【氏名】橋本 省一
(72)【発明者】
【氏名】榛葉 清志
【審査官】
土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−047399(JP,A)
【文献】
特開2013−032189(JP,A)
【文献】
特開2003−120781(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0321220(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/88
B65G 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り出し位置に供給された複数の搬送物を、搬送手段側に一定間隔で順次送り出す搬送物の切り出し機構であって、
上記搬送手段は、回転装置の第1の回転軸によって回転駆動されるとともに、
上記第1の回転軸と平行に第2の回転軸を回転自在に設け、かつこの第2の回転軸と平行に外周部が上記切り出し位置に臨む位置に配置された円板状の切り出し部材を回転自在に設け、上記第1の回転軸に固定された第1の歯車を上記第2の回転軸に固定された第2の歯車に歯合させ、かつ上記第2の回転軸に固定された第3の歯車を上記切り出し部材に固定された第4の歯車に歯合させるとともに、上記切り出し部材の上記外周部に上記搬送物を通過可能とする開口部を形成することにより、上記第1の回転軸の一定回転数毎に上記切り出し部材の上記開口部を上記切り出し位置に合致させて、当該搬送物を上記開口部から順次上記搬送手段側に送り出すようにしたことを特徴とする搬送物の切り出し機構。
【請求項2】
上記搬送手段は、上記第1の回転軸によって回転駆動されるとともに外周部に搬送方向に向けて螺旋状を描く係合溝が刻設された円柱状の搬送スクリューと、この搬送スクリューの外周に沿って上記搬送方向に配設された搬送プレートとを備えてなり、
かつ上記搬送物は、上記搬送プレート上に沿って移動自在に設けられたキャリアであるとともに、
上記搬送プレートおよび上記キャリアは、上記キャリアに一体的に設けられて当該キャリアから上記切り出し部材側に突出するカム部材が上記開口部を通過可能となる位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送物の切り出し機構。
【請求項3】
上記キャリアは、上記搬送プレート上に載置される方形板状の基台を有し、かつ上記キャリアの側面の中央部に上記カム部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の搬送物の切り出し機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の物品の搬送ラインにおいて、切り出し位置に供給された複数の搬送物を、搬送手段側に一定間隔で順次送り出す際に用いられる搬送物の切り出し機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な機械部品や電子部品の製造設備においては、製造工程間を搬送するベルトコンベアやチェーンコンベア等の搬送ラインに、連続的に搬送されてきた複数の搬送物を、後工程における作業スパンに対応させて一定間隔で順次送り出すための切り出し機構が設けられている。
【0003】
従来、このような切り出し機構としては、例えば下記特許文献1に見られるように、仕切ストッパをエアシリンダ等によって搬送ラインと直交する方向に進退自在に設け、当該仕切ストッパによって上記搬送物の搬送を一旦停止させるとともに、一定時間毎に仕切ストッパを搬送ラインから後退させて上記搬送物を一定の間隔で順次次工程に送り出すようにしたものが多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−247411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の切り出し機構においては、搬送物の搬送間隔を一定に保持するために、搬送ラインの速度と仕切ストッパのエアシリンダの作動時間とを連動させる必要があるために、別途エアシリンダを駆動させるための動力に加えて、この動力と搬送ラインの駆動とを同期させるためのセンサおよびリレー回路等の制御装置が必要になるという問題点があった。
【0006】
しかも、特に高速搬送時においては、制御装置における応答遅れ等に起因して、両者のタイミングを合致させることが難しくなるという問題点があった。加えて、仕切ストッパやエアシリンダ等の機構が搬送ラインと直交する方向に突出するために、周囲に広いスペースを確保する必要が有るという問題点もあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、仕切手段を駆動するための別の動力や搬送手段とタイミングを取るための制御装置等を用いる必要がなく、しかも高速搬送にも確実に対応することができるとともに、コンパクトであって狭隘なスペースでも容易に設置することが可能になる搬送物の切り出し機構を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、切り出し位置に供給された複数の搬送物を、搬送手段側に一定間隔で順次送り出す搬送物の切り出し機構であって、上記搬送手段は、回転装置の第1の回転軸によって回転駆動されるとともに、上記第1の回転軸と平行に第2の回転軸を回転自在に設け、かつこの第2の回転軸と平行に外周部が上記切り出し位置に臨む位置に配置された円板状の切り出し部材を回転自在に設け、上記第1の回転軸に固定された第1の歯車を上記第2の回転軸に固定された第2の歯車に歯合させ、かつ上記第2の回転軸に固定された第3の歯車を上記切り出し部材に固定された第4の歯車に歯合させるとともに、上記切り出し部材の上記外周部に上記搬送物を通過可能とする開口部を形成することにより、上記第1の回転軸の一定回転数毎に上記切り出し部材の上記開口部を上記切り出し位置に合致させて、上記搬送物を上記開口部から順次上記搬送手段側に送り出すようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記搬送手段は、上記第1の回転軸によって回転駆動されるとともに外周部に搬送方向に向けて螺旋状を描く係合溝が刻設された円柱状の搬送スクリューと、この搬送スクリューの外周に沿って上記搬送方向に配設された搬送プレートとを備えてなり、かつ上記搬送物は、上記搬送プレート上に沿って移動自在に設けられたキャリアであるとともに、上記搬送プレートおよび上記キャリアは、上記キャリアに一体的に設けられて当該キャリアから上記切り出し部材側に突出するカム部材が上記開口部を通過可能となる位置に配設されていることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、上記キャリアは、上記搬送プレート上に載置される方形板状の基台を有し、かつ上記キャリアの側面の中央部に上記カム部材が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜3のいずれかに記載の発明においては、切り出し位置に供給された複数の搬送物を搬送手段側に一定間隔で順次送り出す際に、搬送手段を回転駆動する第1の回転軸の回転によって、搬送物を送り出す切り出し部材を駆動しているために、別途上記切り出し部材を駆動するための動力や、切り出し部材と搬送手段とのタイミングを合致させるための制御を行う必要が無い。
【0012】
しかも、第1の回転軸の回転を第1〜第4の歯車を介して直接切り出し部材の回転に伝達しているために、高速搬送においても、確実に切り出し部材の動きを搬送手段における搬送速度に同期させて搬送物を一定間隔で搬送手段側に順次切り出して行くことができる。しかも、第1の歯車と第2の歯車とのギヤ比および第3の歯車と第4の歯車とのギヤ比を適宜設定することにより、搬送物を送り出す間隔を自由に設定あるいは変更することも可能になる。
【0013】
また、第1の回転軸の外周に切り出し部材を回転自在に設けるとともに、第1の回転軸の近傍に第2の回転軸を平行に配置すれば、切り出し機構の全体をコンパクトに構成することができるために、狭隘なスペースでも容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る搬送物の切り出し機構の一実施形態を示す要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図4は、本発明に係る搬送物の切り出し機構の一実施形態を示すものである。
この切り出し機構は、ベルトコンベア1から切り出し位置Pに送られて来る複数のキャリア(搬送物)2を、順次一定の間隔で搬送プレート3側へと送り出すためのもので、図中符号4が送り出された後のキャリア2を搬送プレート3上に沿って搬送するための搬送スクリュー(搬送手段)である。
【0016】
この搬送スクリュー4は、外観略円柱状に形成されたもので、一端部に第1の回転軸5が一体的に設けられ、軸受けボックス6内に組み込まれた軸受け7を介して回転自在に設けられている。また、この第1の回転軸5の端部には、タイミングベルト8がモータMとの間に架け渡されている。
【0017】
そして、搬送スクリュー4の外周には、上記モータMおよびタイミングベルト8によって第1の回転軸5が回転するに従って、漸次キャリア2を搬送プレート2上に沿って搬送方向へと案内する螺旋状の係合溝9が刻設されている。
【0018】
また、第1の回転軸5の外方には、この第1の回転軸5と平行に第2の回転軸10が軸受けボックス6内に組み込まれた軸受け11を介して回転自在に設けられている。そして、第1の回転軸5における軸受けボックス6とタイミングベルト8との間には、第1の歯車12が一体的に設けられ、この第1の歯車12が第2の回転軸10の一端部に一体化された第2の歯車13に歯合されている。ここで、第1の歯車12および第2の歯車13は、互いのギヤ比が1:1になるように形成されている。
【0019】
他方、第1の回転軸5の外周であって軸受けボックス6と搬送スクリュー4との間の切り出し位置Pに臨む位置には、軸受け14を介して切り出し部材15が回転自在に設けられている。この切り出し部材15は、上記軸受け14が介装された円筒状の基部16と、この基部16の一端部にボルト17aによって一体的に固定された円環板状の切り出しストッパ17とから構成されており、切り出しストッパ17は、その外径寸法が搬送スクリュー4の外径寸法と等しくなるように形成されている。
【0020】
そして、第2の回転軸10の他端部外周に、第3の歯車18が一体に設けられるとともに、この第3の歯車18に、切り出し部材15の基部16の外周に形成された第4の歯車19が歯合されている。ここで、第3の歯車18と第4の歯車19とのギヤ比は、1:2に設定されている。これにより、第1の回転軸5が2回転した際に、切り出しストッパ17が1回転するように構成されている。
【0021】
また、キャリア2は、搬送プレート3上に載置される方形板状の基台20と、この基台20上に固定された部品(図示を略す。)の載置台21を有し、この載置台21の側面の中央部に、カム部材22が設けられている。
【0022】
さらに、搬送プレート3の上面には、キャリア2の基台20の下面に形成された凹部に係合してキャリア2を搬送プレート3に沿って案内するガイドキー23と、同様にキャリア2を搬送プレート3に沿って案内するとともにキャリア2の浮き上がりを防止すべく基台20の上面を係止するオーバーガイド24が搬送方向の全長にわたって設けられている。
【0023】
そして、キュアリア2は、カム部材22を搬送スクリュー4側に突出させてベルトコンベア1上を搬送されるとともに、切り出しストッパ17の外周部には、上記カム部材22が通過可能となる大きさの開口部25が形成されている。ちなみに、予め搬送スクリュー4と切り出し部材15とは、カム部材22が開口部25を通過可能な位置において、当該開口部25が搬送スクリュー4の係合溝9の端部9aと搬送方向に連通するように互いの原位置が設定されている。
【0024】
上記構成からなるキャリア(搬送物)2の切り出し機構においては、ベルトコンベア1から送られてくるキャリア2が、切り出し部材15の切り出しストッパ17によって切り出し位置Pにおいて一旦停止される。そして、これと併行してモータMによりタイミングベルト8を介して第1の回転軸5を回転させると、第1および第2の歯車12、13によって第2の回転軸10が回転し、さらに第3および第4の歯車18、19によって切り出し部材15が回転する。
【0025】
そして、第1の回転軸5が2回転すると、切り出しストッパ17に形成した開口部25が切り出し位置Pに移動するとともに、上記開口部25と搬送スクリュー4の係合溝9の端部9aとが合致する。これにより、搬送方向の最前方のキャリア2のカム部材22が開口部25を通過して係合溝9内に係合し、搬送スクリュー4の回転に伴って搬送方向に進む係合溝9により搬送プレート3上を搬送されて行く。
【0026】
他方、上記キャリア2の後方のキャリア2は、切り出しストッパ17によって切り出し位置Pにおいて一旦停止され、その後第1の回転軸5が2回転すると、同様にカム部材22が開口部25を通過して係合溝9内に係合し、搬送スクリュー4の回転に伴って係合溝9により搬送プレート3上を搬送されて行く。
【0027】
そして、上記作動が繰り返されることにより、ベルトコンベア1によって切り出し位置Pに送られてくる複数のキャリア2が、第1の回転軸5が2回転する毎に、順次搬送スクリュー4によって搬送プレート3上を搬送されて行く。
【0028】
このように、上記構成からなる切り出し機構によれば、切り出し位置Pに供給された複数のキャリア2を搬送スクリュー4の回転によって搬送プレート3上を一定間隔で順次送り出す際に、搬送スクリュー4を回転駆動する第1の回転軸5の回転によって、キャリア2を送り出す切り出し部材15を駆動しているために、別途切り出しのための動力を設けたり、あるいは当該動力とのタイミングを取る制御装置を設けたりする必要が無い。
【0029】
加えて、搬送スクリュー4の第1の回転軸5の回転を、第1〜第4の歯車12、13、18、19によって直接切り出し部材15に伝達しているために、高速搬送においても確実に搬送スクリュー4による搬送速度に同期させてキュアリア2を一定間隔で搬送スクリュー4側に順次切り出して行くことができる。
【0030】
しかも、第1の歯車12と第2の歯車13とのギヤ比(本実施形態においては、1:1)および第3の歯車18と第4の歯車19とのギヤ比(本実施形態では、1:2)を、要求されるキャリア2の搬送間隔によって適宜設定することにより、キャリア2を送り出す間隔を自由に設定あるいは変更することができる。
【0031】
また、第1の回転軸5の外周に軸受け14を介して切り出し部材15を回転自在に設けるとともに、第1の回転軸5の近傍に第2の回転軸10を平行に配置することにより、コンパクトに構成することができる。この結果、狭隘なスペースでも容易に設置することができる。
【0032】
さらに、この切り出し機構においては、切り出し位置Pにおける切り出しストッパ17によるキャリア2の停止および開口部25からの切り出しを、キャリア2から突出するカム部材22によって行っていることに加えて、このカム部材22をキャリア2の載置台21の側面の中央部に設けている。
【0033】
このため、
図3に示すように、1つのキャリア2を切り出した後に、後方のキャリア2が切り出しストッパ17に到達するまでの長さ寸法Lを大きく確保することができる。この結果、後方のキャリア2を停止させるためには、当該キャリア2が上記長さ寸法Lを移動するまでの間に切り出しストッパ17の開口部25が切り出し位置Pから外れれば良く、よって
図4に示すように、開口部25の周方向の開き角度θを大きくすることができるために、前方のキャリア2のカム部材22を、円滑に開口部25を通過させて搬送スクリュー4側へと送り出すことができる。
【0034】
なお、上記実施形態においては、キャリア2の搬送手段として、搬送プレート3および搬送スクリュー4を用いた場合に付いてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一般的なベルトコンベアやチェーンコンベア等の搬送装置を用いた場合にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
2 キャリア(搬送物)
3 搬送プレート(搬送手段)
4 搬送スクリュー(搬送手段)
5 第1の回転軸
9 係合溝
10 第2の回転軸
12 第1の歯車
13 第2の歯車
15 切り出し部材
17 切り出しストッパ
18 第3の歯車
19 第4の歯車
22 カム部材
25 開口部
P 切り出し位置