(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
弾力的伸縮性をもつ筒状の内層(24)及び外層(26)を有し、内圧の変化によって拡張及び収縮が可能なバルーン(14)と、前記内層(24)と前記外層(26)との間に配置された筒網状の補強部材(28、28a)と、を備えたカテーテル(10)を製造するためのカテーテル製造方法であって、
引張破断強度が2GPa以上で弾性率が50GPa以上の繊維である高強度繊維からなる第1線状部材(29)と、所定温度以上に加熱することで軟化及び溶融することが可能な可溶融性材料からなる第2線状部材(30)とを含む素材スリーブ(50)を作製する素材スリーブ作製工程と、
前記素材スリーブ(50)の軸方向の複数個所を加熱及び切断することにより、前記可溶融性材料からなり且つ前記第1線状部材(29)に融着したリング状の拡張規制部(36)が軸方向の両端部に形成された前記補強部材(28、28a)を作製する加熱及び切断工程と、を含む、
ことを特徴とするカテーテル製造方法。
【発明の概要】
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、補強部材で補強されたバルーンの柔軟性を向上させることができるカテーテル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のカテーテルは、弾力的伸縮性をもつ筒状の内層及び外層を有し、内圧の変化によって拡張及び収縮が可能なバルーンと、前記内層と前記外層との間に、前記内層及び前記外層に対して少なくとも一部が直接固定されていない筒網状の補強部材と、を備え、前記補強部材は、高強度繊維からなる第1線状部材を有し、前記補強部材の軸方向の両端部には、前記第1線状部材に融着したリング状の拡張規制部がそれぞれ設けられており、前記拡張規制部により前記両端部の周方向の拡張が規制されている、ことを特徴とする。ここで、「補強部材」について、「内層及び外層に対して少なくとも一部が直接固定されていない」とは、補強部材の少なくとも一部が、内層及び外層に接着されておらず、且つ、内層及び外層に埋め込まれていないため、内層及び外層の間に形成される空間内で自由に動けることをいう。
【0008】
上記の構成によれば、高強度繊維からなる第1線状部材を有する補強部材がバルーンの内層と外層との間に配置されているため、バルーンに高耐圧性及び低コンプライアンス性を好適に付与することができる。ここで、低コンプライアンス性とは、バルーンを高圧拡張した際、バルーン径が圧力に応答して際限なく拡がることがなく、適切な径で高い圧力の拡張を行える性質である。また、高強度繊維とは、引張破断強度が2GPa以上、弾性率が50GPa以上の繊維のことをいう。
【0009】
また、補強部材がバルーンに対して動きの自由度を有するため、バルーンの良好な柔軟性を維持することができる。これにより、複雑に蛇行した生体管腔内においても高い通過性を備えたバルーンを実現できる。
【0010】
さらに、バルーンの拡張時、補強部材の軸方向の両端部は拡張規制部により拡張が規制されるため、生体管腔内においてバルーンを所望の形状に拡張させ、病変部に対する処置を効果的に行うことができる。
【0011】
上記のカテーテルにおいて、前記補強部材は、可溶融性材料からなる第2線状部材を有し、前記第2線状部材は、前記拡張規制部と同じ材料で構成されていてもよい。この構成では、拡張規制部は、可溶融性材料からなり、第1線状部材に融着して形成されているため、両端部の拡張が規制された補強部材を簡便に製造することができる。
【0012】
上記のカテーテルにおいて、前記第1線状部材により筒網状体が形成され、複数の前記第2線状部材が前記筒網状体の周方向に間隔をおいて配置されており、前記第2線状部材の各々は、前記筒網状体に沿って、前記筒網状体の一端部から他端部まで延在し、前記両端部において前記拡張規制部に連結されていてもよい。この構成では、耐圧機能を担う筒網状体が高強度繊維からなる第1線状部材で構成されるとともに、当該筒網状体とは独立した構成として、融着機能を担う第2線状部材が筒網状体に沿って配置されている。従って、耐圧機能を担う部分と融着機能を担う部分とが独立の構成として構築されていることから、耐圧機能と融着機能とを個別に設定することができ、所望の耐圧性を有し且つ両端部の拡張が規制された補強部材を簡易に構築することができる。
【0013】
上記のカテーテルにおいて、前記第1線状部材と前記第2線状部材とにより筒網状体が形成されていてもよい。この構成では、筒網状体の構成部材として第1線状部材と第2線状部材とが一緒に編み込まれている。従って、第1線状部材と第2線状部材とを編んで素材スリーブを作製し、素材スリーブを加熱及び切断することにより、両端部に拡張規制部が形成された補強部材を簡易に製造することができる。
【0014】
上記のカテーテルにおいて、軸方向に垂直な断面における前記第1線状部材の総断面積は、前記第2線状部材の総断面積よりも大きくてもよい。この構成により、補強部材に求められる耐圧性を好適に確保することができる。
【0015】
また、本発明は、弾力的伸縮性をもつ筒状の内層及び外層を有し、内圧の変化によって拡張及び収縮が可能なバルーンと、前記内層と前記外層との間に配置された筒網状の補強部材と、を備えたカテーテルを製造するためのカテーテル製造方法であって、高強度繊維からなる第1線状部材と可溶融性材料からなる第2線状部材とを含む素材スリーブを作製する素材スリーブ作製工程と、前記素材スリーブの軸方向の複数個所を加熱及び切断することにより、前記可溶融性材料からなり且つ前記第1線状部材に融着したリング状の拡張規制部が軸方向の両端部に形成された前記補強部材を作製する加熱及び切断工程と、を含む、ことを特徴とする。
【0016】
上記のカテーテル製造方法によれば、素材スリーブを加熱及び切断することによって、素材スリーブから所望長さの補強部材を切り出す際、加熱部位では可溶融性材料が溶融し、第1線状部材と融着したリング状の拡張規制部が形成される。これに対し、第1線状部材(高強度繊維)のみによって補強部材が構成される場合、一般に高強度繊維は溶融せず融着性がほとんどない(極めて低い)ため、補強部材の両端部において繊維同士が融着しにくく、両端部が規制されない。よって、本発明のカテーテル製造方法によれば、両端部の拡張が規制された補強部材を簡便に製造することができる。
【0017】
上記のカテーテル製造方法において、素材スリーブ作製工程では、第1線状部材により形成された筒網状体に沿って複数の前記第2線状部材が前記筒網状体の周方向に間隔をおいて配置された状態を構築してもよい。これにより、耐圧機能と融着機能とを個別に設定することができることから、所望の耐圧性を有し且つ両端部の拡張が規制された補強部材を簡易に構築することができる。
【0018】
上記のカテーテル製造方法において、前記素材スリーブ作製工程では、芯棒の外面に沿って配置された前記複数の第2線状部材の外側に、前記筒網状体を被せてもよい。これにより、筒網状体と芯棒との間に複数の第2線状部材が保持されるため、補強部材を効率的に作製することができる。
【0019】
上記のカテーテル製造方法において、前記素材スリーブ作製工程では、前記第1線状部材と前記第2線状部材とにより筒網状の前記素材スリーブを形成してもよい。これにより、第1線状部材と第2線状部材とを編んで素材スリーブを作製し、素材スリーブを加熱及び切断することにより、両端部に拡張規制部が形成された補強部材を簡易に製造することができる。
【0020】
上記のカテーテル製造方法において、前記素材スリーブ作製工程では、前記素材スリーブの軸方向に垂直な断面における前記第1線状部材の総断面積が前記第2線状部材の総断面積よりも大きくなるように、前記素材スリーブを形成してもよい。これにより、補強部材に求められる耐圧性を好適に確保することができる。
【0021】
本発明のカテーテル及びその製造方法によれば、補強部材で補強されたバルーンの柔軟性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るカテーテル及びその製造方法について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るカテーテル10の構成を示す一部省略概略図である。カテーテル10は、長尺なシャフト12を生体器官、例えば冠動脈に挿通させ、その先端側に設けられたバルーン14を狭窄部(病変部)で拡張させることで該狭窄部を押し広げて治療する、いわゆるPTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠動脈形成術)拡張カテーテルである。
【0025】
本発明は、PTCA拡張カテーテル以外のもの、例えば、他の血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器等の生体器官内に形成された病変部の改善のためのカテーテルにも適用可能である。
【0026】
図1(及び
図2)に示すように、カテーテル10は、細径で長尺なシャフト12と、シャフト12の先端に接合されたバルーン14と、バルーン14を構成する膜(壁)内に配置された補強部材28と、シャフト12及びバルーン14に挿通された内管16と、バルーン14の先端に接合された先端チップ18と、シャフト12の基端側に設けられたハブ20とを備える。
【0027】
図1において、カテーテル10は、シャフト12の長手方向の途中部分にガイドワイヤ21が導出される開口部22を設けた、いわゆる「ラピッドエクスチェンジタイプ」のカテーテルとして構成されている。別の実施形態において、カテーテル10は、ガイドワイヤルーメンがカテーテル10の全長に渡って形成され、ガイドワイヤ21がハブ20の基端から導出される「オーバーザワイヤタイプ」のカテーテルとして構成されてもよい。
【0028】
シャフト12は、軸方向の両端が開口した長尺で細径の可撓性チューブである。シャフト12は、バルーン14の後端からハブ20の先端まで延びており、先端から開口部22までの部位は内管16との間に拡張用ルーメン12aを形成する二重管を構成し、開口部22からハブ20までの部位は一重管である。シャフト12は、バルーン14の拡張用流体を供給するための拡張用ルーメン12aを形成している。
【0029】
シャフト12は、ハブ20に設けられるルアーテーパー20a等を介して接続される図示しないインデフレータ等の圧力印加装置から圧送される拡張用流体をバルーン14まで送液可能となっている。例えば、拡張用流体は、造影剤や生理食塩水、あるいはその混合物である。
【0030】
内管16は、ガイドワイヤ21が挿通されるワイヤ用ルーメン16aを形成するガイドワイヤチューブである。内管16の先端は、先端チップ18の基端よりも先端側に位置する。内管16は、バルーン14及びシャフト12内を延在し、その基端がシャフト12の中間部に形成された開口部22(
図1参照)に液密に接合されている。従って、先端チップ18の先端開口部18aを入口として挿入されたガイドワイヤ21は、内管16のワイヤ用ルーメン16aを先端側から基端側へと挿通し、出口である開口部22から導出される。
【0031】
バルーン14内の内管16には、造影マーカー41が設けられているとよい。造影マーカー41は、X線(放射線)不透過性を有する材質(例えば、金、白金、タングステンあるいはこれらの混合物等)によって構成され、生体内でバルーン14の位置をX線造影下で視認するためのものである。造影マーカー41は、例えば筒状(リング状)に構成され得る。なお、
図2のようにバルーン14内で内管16の軸方向に間隔を置いて複数の造影マーカー41が設けられてもよく、あるいは、バルーン14内の内管16に造影マーカー41が1つだけ設けられてもよい。
【0032】
シャフト12及び内管16は、術者がカテーテル10の基端側を把持及び操作しながら、長尺なカテーテル10を血管等の生体器官内へと円滑に挿通させることができるために、適度な可撓性と適度な剛性を有する構造であることが好ましい。そこで、シャフト12及び内管16は、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら2種以上の混合物等)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料あるいはこれらの混合物、あるいは上記2種以上の高分子材料の多層チューブ等で形成するとよい。
【0033】
バルーン14は、内圧の変化により収縮及び拡張が可能である。バルーン14の先端部は内管16の先端部近傍に接合され、バルーン14の基端部はシャフト12の先端部に接合されている。バルーン14の内部空間は、拡張用ルーメン12aと連通する。
【0034】
拡張用ルーメン12aを介して、バルーン14への拡張用流体の流入(導入)、及びバルーン14からの拡張用流体の排出が可能となっている。バルーン14内に拡張用流体が導入されることに伴って、バルーン14は拡張する。そして、最大拡張時には、バルーン14は、
図1において仮想線で示すように、先端と基端との間の部分が軸方向に沿って略一定の外径で拡径した形状を呈する。
【0035】
バルーン14は、生体管腔の蛇行又は屈曲した箇所を通過できるように、適度な柔軟性が必要とされる。また、バルーン14は、病変部を確実に押し広げることができる程度の強度が必要であり、高耐圧性と低コンプライアンス性が必要である。そのため、本実施形態では、バルーン14は、弾力的伸縮性をもつ流体不透過性のバルーン壁を構成する筒状の内層24及び外層26を有しており、内層24と外層26との間には、補強部材28が配置されている。バルーン14と補強部材28とにより、カテーテル10の先端部において径方向に拡張及び収縮可能な拡張部15が構成されている。
【0036】
内層24は、バルーン14内への拡張用流体の導入(加圧)に伴って補強部材28に力を伝達し、補強部材28の拡張形状によって規制される形状まで膨らむ。外層26は、バルーン14内への拡張用流体の導入(加圧)に伴って補強部材28の拡張形状に沿って膨らみ、バルーン14内からの拡張用流体の排出(減圧)に伴って補強部材28を拡張前の元の形状(位置)に戻すために初期形状まで縮む。そのため、外層26は、伸長回復率の高い素材からなることが好ましい。
【0037】
内層24と外層26は、それらの先端部同士及び基端部同士が、例えば融着、接着等によってそれぞれ接合されており、内層24と外層26との間には、補強部材28を収容する密閉された環状の収容室17が形成されている。
【0038】
内層24及び外層26の構成材料としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等が挙げられる。内層24の構成材料と、外層26の構成材料は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0039】
補強部材28は、内層24と外層26との間に、バルーン14に対して少なくとも一部が可動に配置された筒網状の部材であり、バルーン14の耐圧性を高める機能を担う。
【0040】
補強部材28は、軸方向の両端部(第1端部31及び第2端部32)と、第1端部31と第2端部32との間を構成する中間部34とを有する。補強部材28において、第1端部31と第2端部32のうち少なくとも一方及び中間部34は、内層24及び外層26に直接固定されておらず、これにより、内層24及び外層26に対する軸方向及び周方向への移動が許容されている。
【0041】
内層24及び外層26は、補強部材28を形成する第1の糸29同士の隙間(網目)を介して固着(例えば、融着、接着等)されていてもよい。これにより、補強部材28の内層24及び外層26に対するある程度の移動を許容しつつ、補強部材28の移動範囲を規制することができる。
【0042】
本実施形態の場合、第1端部31と第2端部32のうち他方も、内層24及び外層26に直接固定されておらず、これにより、内層24及び外層26に対する軸方向への移動が許容されている。すなわち、本実施形態では、補強部材28は、内層24及び外層26のどこにも固定されておらず、従って、内層24及び外層26によって規制された範囲内(収容室17の範囲内)で周方向及び軸方向に自由に動くことが可能である。
【0043】
なお、第1端部31と第2端部32のうち一方だけが、内層24又は外層26に固定されていてもよい。この場合、固定するための手段は特定のものに限定されず、融着、接着等の適宜の固定手段であってよい。
【0044】
補強部材28は、高強度繊維からなる第1の糸29(第1線状部材)と、可溶融性材料からなる第2の糸30(第2線状部材)とを有する。また、補強部材28の軸方向の両端部には、可溶融性材料からなり且つ第1の糸29に融着したリング状の拡張規制部36がそれぞれ設けられている。拡張規制部36により両端部(第1端部31及び第2端部32)の周方向の拡張が規制されている。
【0045】
本実施形態において、具体的には、1以上の第1の糸29により筒網状体37が形成されている。筒網状体37は、1以上の第1の糸29を編む(織る)ことによって筒状の網状体に形成されており、少なくとも周方向(及び径方向)に伸縮性を有する。
【0046】
筒網状体37の形成の仕方は、特定の形態に限定されるものではなく、例えば、筒編み、組紐編み等が挙げられる。筒編みの場合、筒網状体37は、周方向に波形状に延在する第1の糸29が軸方向に並んでおり、軸方向に隣接する波形状の第1の糸29同士が絡み合っている(
図3A参照)。組紐編みの場合、筒網状体37は、1以上の第1の螺旋方向に延在する第1の糸29と、1以上の第2の螺旋方向に延在する第1の糸29とが交差して織り上げられ筒状に形成される。
【0047】
高強度繊維とは、引張破断強度が2GPa以上、弾性率が50GPa以上の繊維のことをいい、スーパー繊維とも呼ばれる。第1の糸29は、高強度繊維からなる撚糸であるのが好ましい。高強度繊維としては、例えば、アラミド繊維、炭素繊維、ポリアリレート繊維、PBO繊維、超高分子量ポリエチレン、LCP繊維等が挙げられる。なお、一般に、これらの高強度繊維は、加熱しても溶融することがないため、他の部材との融着性がないか、極めて低い。
【0048】
第1の糸29の直径は、例えば、5〜100μm程度としてよい。第1の糸29として高強度繊維の撚糸を使用する場合、高強度繊維の単繊維径は、例えば、5〜30μm程度としてよい。高強度繊維としては、例えば、単繊維径が12μmのものを使用できるが、より細い繊維を使用してもよく、より太い繊維を使用してもよい。より太い繊維の場合は、撚糸に張力が掛からないときに解れた状態になるように、撚りが甘いものであるのがよい。
【0049】
また、補強部材28において、可溶融性材料からなる複数の第2の糸30が筒網状体37の周方向に間隔をおいて配置されている。ここで、可溶融性材料とは、所定温度以上に加熱することで軟化・溶融することが可能な材料をいい、他の部材に対する融着性を有する。
【0050】
第2の糸30の各々は、筒網状体37に沿って、筒網状体37の一端部から他端部まで延在し、両端部において拡張規制部36に連結されている。また、拡張規制部36間の領域では、第2の糸30は、筒網状体37(第1の糸29)に対して接着も融着もされておらず、従って、固定されていない。
【0051】
拡張規制部36は、補強部材28の製造過程で、周方向に配列された複数の第2の糸30が溶融し、溶融材料が周方向に流動し、その後に固化することによって形成された部分である。このような拡張規制部36を構築するため、第2の糸30を加熱した際の溶融及び流動に伴って溶融材料がリング状に繋がり、且つ補強部材28の両端部の拡張を確実に規制できる程度の強度(剛性)を有するように、第2の糸30の本数、周方向の配置間隔、及び/又は太さ等が設定される。
【0052】
第2の糸30の構成材料(可溶融性材料)としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)、ポリアミドエラストマー等が挙げられる。
【0053】
本実施形態では、第2の糸30は、筒網状体37の内面側に配置されている。なお、第2の糸30は、筒網状体37の外面側に配置されてもよい。
【0054】
図2のように、第2の糸30の各々は、収縮時の補強部材28の軸方向に沿って延在するように配置されてよい。あるいは、第2の糸30の各々は、補強部材28の軸方向に対して傾斜する方向に延在するように(すなわち螺旋状に)配置されてもよい。
【0055】
図2に示すように、内層24の先端部は内管16に接合されている。また、内層24の基端部は、シャフト12の先端部(細径部40)に接合されているとともに、シャフト12の最先端部は、内層24の内側で内層24の最基端面よりも先端側に位置する。従って、内層24のうちバルーン14の拡縮変形時に伸縮可能な領域(以下、「内層24の可伸縮領域25」という)は、内層24と内管16との接合箇所と、シャフト12の最先端部との間の部分である。
【0056】
補強部材28の最基端部は、内層24の可伸縮領域25の最基端部よりも基端側に位置する。なお、
図2に示すように、補強部材28の第2端部32は、バルーン14の内層24と外層26との間に形成される収容室17において、シャフト12の最先端部より基端側に配置してもよい。これにより、補強部材28の第2端部32は、バルーン14を拡張した際、バルーン14の拡張による影響が少なく、補強部材28によるバルーン14の最大拡張径の規制に寄与する。
【0057】
図3Aは、拡張時の補強部材28を示す側面図であり、
図3Bは、収縮時の補強部材28を示す側面図である。
図3Aに示すように、補強部材28は、周方向に拡張されると、第1の糸29同士が張った状態となり、ある一定以上の外径にはならない。この場合、第1端部31と第2端部32の拡張が規制されているため、拡張時の補強部材28(中間部34)の形状は、外径が略一定のストレート部42と、ストレート部42の両側にそれぞれ位置して軸方向の外側に向かって縮径する外径変化部(テーパ部)45、46とを有する。
【0058】
なお、
図3A及び
図3Bに示すような補強部材28を使用してバルーン14を作成した場合、拡張時のバルーン14は、補強部材28により、外形が略一定のストレート部と、ストレート部の両側にそれぞれ位置して軸方向の外側に向かって縮径する外径変化部(テーパ部)とを有する。このような場合、造影マーカー41は、バルーン14のストレート部の位置が分かるように内管16に配置される。これにより、術者は、X線造影下においてバルーン14の最大拡張径を有する位置を視認することができるため、バルーン14の最大拡張径の領域と病変部との位置合わせを容易に行うことができる。
【0059】
軸方向に隣接する波形状の第1の糸29同士を絡ませる編み方で形成した筒網状体37を有する補強部材28の場合、
図3Bに示すように、周方向に圧縮されると第1の糸29が畳まれることで、補強部材28(筒網状体37)は縮径する。また、この補強部材28は、軸方向に圧縮されると網目の第1の糸29がずれて軸方向に隣接する第1の糸29同士が重なることが可能であるとともに、軸方向に隣接する第1の糸29同士の絡み合い部分の回転で屈曲することが可能である。従って、このような補強部材28は、曲げに対する柔軟性に優れる。
【0060】
図1及び
図2において、バルーン14の先端側に設けられる先端チップ18は、カテーテル10の最先端として生体器官内での湾曲部や凹凸部等を柔軟に進むとともに、病変部(狭窄部)を貫通し、カテーテル10の円滑な挿通を先導するための部位であり、その内径が内管16の内径と略同一とされた短尺なチューブである。
【0061】
先端チップ18は、内管16の先端部に外嵌及び液密に接合されてワイヤ用ルーメン16aの先端開口部18aよりも先端側に突出するとともに、その基端面がバルーン14の先端面に接合されている。先端チップ18の先端開口部18aは、内管16のワイヤ用ルーメン16aに連通し、ガイドワイヤ21の入口となっている。
【0062】
先端チップ18は、その材質や形状を適宜設定することにより、少なくともシャフト12及び内管16よりも柔軟に構成される。なお、先端チップ18は省略してもよく、その場合には、内管16の最先端位置とバルーン14の最先端位置とを一致させた構成や、バルーン14の最先端位置よりも内管16の最先端位置を多少突出させた構成とするとよい。
【0063】
次に、カテーテル10の製造方法(主として、拡張部15及びその周辺部の製造工程)の一例を説明する。なお、本発明は、例示する製造方法に限定されるものではない。
図4A〜
図9Bでは、筒網状体37を模式的に示しており、筒網状体37が特定の編み方に限定されるものではない。
【0064】
図4A〜
図4Dは、補強部材28の製造工程の説明図である。
図4Aのように、まず、補強部材28の素材となる筒網状の素材スリーブ50を作製する工程(素材スリーブ作製工程)を実施する。素材スリーブ50は、補強部材28複数個分以上の長さを有する。
【0065】
素材スリーブ作製工程では、具体的には、第1の糸29により形成された筒網状体37に沿って複数の第2の糸30が筒網状体37の周方向に間隔をおいて配置された状態を構築する(
図4AにおけるIVB−IVB線に沿った断面図である
図4Bも参照)。この場合、
図4Aのように、芯棒39の外面に沿って複数の第2の糸30を周方向に間隔を置いて配置し、さらに、配置された複数の第2の糸30の外側に筒網状体37を被せるとよい。これにより、筒網状体37と芯棒39との間に複数の第2の糸30が保持されるため、第2の糸30を保持するための別の機構を要することなく、第2の糸30を適切に配置することができ、効率的である。
【0066】
次に、素材スリーブ50の軸方向の複数個所を加熱及び切断することにより、
図4Dのように、可溶融性材料からなり且つ第1の糸29に融着したリング状の拡張規制部36が軸方向の両端部に形成された1以上(
図4Dでは複数)の補強部材28を作製する工程(加熱及び切断工程)を実施する。
【0067】
この場合、素材スリーブ50を加熱及び切断することによって、素材スリーブ50から所望長さの補強部材28を切り出す際、加熱部位では第2の糸30が溶融し、溶融材料が素材スリーブ50の周方向に流動して広がる。この結果、加熱部位では
図4Bから
図4Cのような構造変化が起き、第1の糸29と融着したリング状の拡張規制部36が形成される。
【0068】
次に、
図5Aのように、内層24の素材である内層チューブ52に補強部材28を被せる工程(第1被せ工程)を実施する。この場合、内層チューブ52の両端部を補強部材28の両端開口から突出させる。
【0069】
次に、
図5Bのように、内層チューブ52及び補強部材28(内側に内層チューブ52が挿入された状態の補強部材28)に、外層26の素材である外層チューブ54を被せる工程(第2被せ工程)を実施する。この場合、外層チューブ54内に補強部材28の全長が収まる(補強部材28の両端部よりも外層26の両端部が軸方向に突出する)ように外層チューブ54を被せる。
【0070】
次に、内層チューブ52と外層チューブ54とを接合する工程(内外層接合工程)を実施する。具体的には、まず、
図6Aのように、芯棒56(芯金)を内層チューブ52(内層チューブ52、外層チューブ54及び補強部材28の組立体)の内側に挿入する。次に、
図6Bのように、内層チューブ52と外層チューブ54の一端部同士と他端部同士をそれぞれ融着によって接合する。これにより、内層24と外層26との間に密閉された環状の収容室17が形成され、当該収容室17内に補強部材28が配置された状態の拡張部15が得られる。内外層接合工程後、芯棒56を抜去する。
【0071】
この場合、本実施形態では、補強部材28は、収容室17内に配置されているだけであり、他の部材に対して融着、接着等の接合がなされておらず、従って、バルーン14(内層24及び外層26)のどの部分にも固定されていない。
【0072】
次に、バルーン14(拡張部15)とシャフト12とを接合する工程(バルーン・シャフト接合工程)を実施する(
図7A及び
図7B)。具体的には、シャフト12の先端部に細径部40を形成する。この場合、例えば、シャフト12の先端部を引き落す(シャフト12の中空部に芯金を挿入し、そのシャフト12よりも小径の穴を有する金型にシャフト12の先端部を圧入する)ことにより、先端部を細径化することができる。次に、
図7Aのように、バルーン14の基端側にシャフト12の細径部40を挿入する。次に、
図7Bのように、バルーン14の基端部とシャフト12の先端部(細径部40)とを融着によって接合する。
【0073】
次に、工程は図示していないが、内管16に造影マーカー41を取り付ける。具体的には内管16より若干大きな内径を有する筒状の造影マーカー41を内管16の外側に通し、内管16に芯金を挿入した後、造影マーカー41の全周を叩き(スウェージ工程)、造影マーカー41を縮径させ内管16に噛み込ませることで内管16に造影マーカー41を固定する。
【0074】
次に、バルーン14と内管16とを接合する工程(バルーン・内管接合工程)を実施する(
図8A及び
図8B)。具体的には、
図8Aのように、バルーン14及びシャフト12内に内管16を挿入する。次に、
図8Bのように、バルーン14の先端部と内管16とを融着により接合する。
【0075】
次に、先端チップ18と内管16とを接合する工程(先端チップ・内管接合工程)を実施する(
図9A及び
図9B)。具体的には、まず、内管16の先端部を切断して長さ調整をする(
図9A)。次に、先端チップ18の基端部を内管16の先端部に外嵌合し、先端チップ18の基端部と内管16の先端部とを融着により接合する(
図9B)。
【0076】
なお、シャフト12の基端とハブ20の先端部とを接合する工程(シャフト・ハブ接合工程)の実施は、任意のタイミングで行うことができる。例えば、シャフト・ハブ接合工程の実施は、バルーン・シャフト接合工程の前でもよく、先端チップ・内管接合工程の後でもよく、あるいは、バルーン・シャフト接合工程と先端チップ・内管接合工程との間でもよい。
【0077】
上述した製造方法において、各部材同士を接合する手段として、融着を例示したが、融着に代えて、接着等の他の接合手段を適用してもよい。
【0078】
本実施形態に係るカテーテル10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0079】
カテーテル10を用いた治療は、例えば、以下のように行う。まず、血管内に発生した病変部(狭窄部)の形態を、血管内造影法や血管内超音波診断法により特定する。次に、例えばセルジンガー法によって経皮的に血管内にガイドワイヤ21を先行して導入するとともに、該ガイドワイヤ21を先端チップ18の先端開口部18aから内管16のワイヤ用ルーメン16aを挿通させて開口部22へと導出しつつカテーテル10を血管内へと挿入する。そして、X線透視下で、ガイドワイヤ21を目的とする病変部へ進め、その病変部を通過させて留置するとともに、カテーテル10をガイドワイヤ21に沿って進行させる。
【0080】
カテーテル10の先端チップ18が病変部を通過すると、バルーン14が病変部に位置する。そして、ハブ20側から拡張用ルーメン12a内へと拡張用流体(例えば、造影剤)を圧送することにより、バルーン14が拡張して病変部が押し広げられ、これにより病変部の治療を行うことができる。次に、拡張用流体をバルーン14内から拡張用ルーメン12aを通ってハブ20側へと吸引し、バルーン14を再収縮させる。生体管腔内の別の箇所に治療を要する他の病変部がある場合には、バルーン14を当該他の病変部へ送達し、上記と同様にバルーン14を拡張及び収縮させる。治療対象のすべての病変部に対する処置を終えたら、カテーテル10を体外へと抜去する。
【0081】
この場合、上述したように本実施形態に係るカテーテル10では、高強度繊維からなる第1の糸29を有する補強部材28がバルーン14の内層24と外層26との間に配置されているため、バルーン14に高耐圧性及び低コンプライアンス性を好適に付与することができる。また、補強部材28がバルーン14に対して動きの自由度を有するため、バルーン14の良好な柔軟性を維持することができる。これにより、複雑に蛇行した生体管腔内においても高い通過性を備えたバルーン14を実現できる。
【0082】
特に、本実施形態の場合、補強部材28の第1端部31と第2端部32のうち少なくとも一方及び中間部34は、バルーン14に対して直接固定されていない。すなわち、補強部材28の略全体が、バルーン14に対して軸方向及び周方向に動きの自由度を有するため、バルーン14の良好な柔軟性を維持することができる。これにより、生体管腔内での高い通過性を有するバルーン14を実現することができる。
【0083】
さらに、本実施形態の場合、第1端部31と第2端部32のうち一方だけでなく他方も、内層24及び外層26に対して直接固定されていない。この構成により、補強部材28は、バルーン14のどこにも固定されていないため、バルーン14に対する補強部材28の動きの自由度がさらに向上し、柔軟性の向上と、それに伴う生体管腔内での通過性を一層向上させることができる。
【0084】
ここで、
図10は、補強部材28が設けられているが固定の態様が異なるバルーンA1〜A3及び補強部材28が設けられていないバルーンBについて、圧力とバルーン径との関係を示すグラフである。
図10において、バルーンA1は、補強部材28の軸方向の両端部が内層24に固定されている。バルーンA2は、補強部材28の軸方向の一端部のみが内層24に固定されている。バルーンA3は、補強部材28がどこにも固定されていない。
【0085】
図10から、補強部材28が設けられているバルーンA1〜A3は、補強部材28が設けられていないバルーンBと比較して、圧力の増大に対するバルーン径の増大が緩やかであり、耐圧性が高く、コンプライアンス性が低いことが分かる。一方、補強部材28が設けられているバルーンA1〜A3では、補強部材28の固定の態様による有意な差異は認められない。従って、高耐圧性及び低コンプライアンス性のバルーンは、補強部材28の固定の有無に関係なく、補強部材28が内層24と外層26の間に設けられることによって実現できることが理解できる。このため、バルーン14の良好な柔軟性を維持し、且つ、カテーテル10の生体管腔内での通過性を向上させる観点から、補強部材28の両端部のうち少なくとも一方及び中間部34は、バルーン14の内層24及び外層26に固定しない方がよい。
【0086】
また、カテーテル10によれば、バルーン14の拡張時、補強部材28の軸方向の両端部は拡張規制部36により拡張が規制されるため、生体管腔内においてバルーン14を所望の形状に拡張させ、病変部に対する処置を効果的に行うことができる。しかも、拡張規制部36は、可溶融性材料からなり、第1の糸29に融着して形成されているため、両端部の拡張が規制された補強部材28を簡便に製造することができる。
【0087】
本実施形態の場合、耐圧機能を担う筒網状体37が高強度繊維からなる第1の糸29で構成されるとともに、当該筒網状体37とは独立した構成として、融着機能を担う第2の糸30が筒網状体37に沿って配置されている。従って、耐圧機能を担う部分と融着機能を担う部分とが独立の構成として構築されていることから、耐圧機能と融着機能とを個別に設定することができ、所望の耐圧性を有し且つ両端部の拡張が規制された補強部材28を簡易に構築することができる。
【0088】
また、本実施形態の場合、バルーン14は、弾力的な伸縮を伴って拡張・収縮するものであり、収縮状態で折り畳まれないゼロフォールディング型であるため、拡張後の再収縮時に元の外径に戻りやすい。従って、生体管腔内の異なる場所に生じた複数の病変部を同一のバルーン14で治療する場合に、再収縮後の外径が初期外径よりも大きくなることが抑制されるため、バルーン14の再収縮後でも生体管腔内での良好な通過性を維持できる。
【0089】
加えて、弾力的伸縮性を有するバルーン14は、ブロー成形によることなく作製できるため、カテーテル10を簡便に製造することができる。すなわち、非伸縮性材料で構成されるバルーンの場合、バルーン素材の成形後にブロー成形を実施することにより、所望のバルーン形状に成形する必要があり、さらに、バルーンを収縮状態とするためにバルーンを折り畳む(バルーンの1以上の外周部を周方向に折り重ねる)ラッピング工程を実施する必要がある。これに対し、本実施形態のバルーン14の場合、上述した製造方法の説明から明らかなように、ブロー成形が不要であり、その後のラッピング工程も不要であることから、工程数を減らし、製造コストを低減することができる。
【0090】
また、本実施形態の場合、補強部材28の第1端部31及び第2端部32は、拡張規制部36により、周方向及び径方向の拡張が規制されている(
図2参照)。この構成により、補強部材28において、第1端部31と第2端部32との間に位置する中間部34の最大拡張径を効果的に規制することができ、補強部材28としての機能を好適に発揮することができる。
【0091】
本実施形態の場合、補強部材28は、1以上の第1の糸29を筒状に編むことによって形成され、軸方向に隣接する波形状の第1の糸29同士が絡み合っている(
図3A参照)。この構成により、補強部材28は、周方向に圧縮されると第1の糸29が周方向に畳まれ、軸方向に圧縮されると網目の第1の糸29が軸方向にずれる。このため、補強部材28は柔軟に曲がることができる。
【0092】
また、軸方向に隣接する蛇行する第1の糸29同士が絡み合っている補強部材28は、第1の糸29の絡み合いの部分が連結部を構成している。この連結部は、第1の糸29同士が接着されておらず、第1の糸29同士が可動的になるように形成されている。この構成により、補強部材28は第1の糸29の絡み合いの部分の回転により屈曲可能であるため、バルーン14の柔軟性を一層高めることができる。
【0093】
また、本実施形態に係るカテーテル製造方法によれば、素材スリーブ50を加熱及び切断することによって、素材スリーブ50から所望長さの補強部材28を切り出す際、加熱部位では可溶融性材料が溶融し、第1の糸29と融着したリング状の拡張規制部36が形成される。これに対し、第1の糸29(高強度繊維)のみによって構成される補強部材(図示せず)の場合、一般に高強度繊維は溶融せず融着性がほとんどない(極めて低い)ため、補強部材の両端部において繊維同士が融着しにくく、両端部が規制されない。よって、本実施形態に係るカテーテル製造方法によれば、両端部の拡張が規制された補強部材28を簡便に製造することができる。
【0094】
また、本実施形態のように、素材スリーブ作製工程において、芯棒39の外面に沿って配置された複数の第2の糸30の外側に筒網状体37を被せると、筒網状体37と芯棒39との間に複数の第2線状部材が保持される。よって、補強部材28を効率的に作製することができる。
【0095】
上述したカテーテル10において、補強部材28に代えて、
図11に示す補強部材28aが適用されてもよい。この補強部材28aでは、高強度繊維からなる1以上の第1の糸29と、可溶融性材料からなる1以上の第2の糸30とにより筒網状体37aが形成されている。この場合、筒網状体37aの形成の仕方は、特に限定されず、上述した筒編み、組紐編み等であり得る。
【0096】
この構成では、筒網状体37aの構成部材として第1の糸29と第2の糸30とが一緒に編み込まれている。従って、補強部材28aの製造に係る素材スリーブ作製工程では、第1の糸29と第2の糸30とを編んで素材スリーブを作製し、素材スリーブの軸方向の1以上の箇所を加熱及び切断することにより、両端部に拡張規制部36が形成された補強部材28aを簡易に製造することができる。
【0097】
特に、補強部材28aの軸方向に垂直な断面における第1の糸29の総断面積が、第2の糸30の総断面積よりも大きいと、補強部材28aに求められる耐圧性を好適に確保することができる。この場合、補強部材28aの製造に係る素材スリーブ作製工程では、素材スリーブの軸方向に垂直な断面における第1の糸29の総断面積が第2の糸30の総断面積よりも大きくなるように、素材スリーブを形成する。
【0098】
例えば、素材スリーブを構成する第1の糸29の本数を第2の糸30の本数よりも多くすることにより、あるいは、素材スリーブを構成する第1の糸29の太さを第2の糸30の太さよりも太くすることにより、第1の糸29の総断面積を第2の糸30の総断面積よりも大きくしてもよい。あるいは、第1の糸29と第2の糸30の本数及び太さを調整することにより、第1の糸29の総断面積を第2の糸30の総断面積よりも大きくしてもよい。
【0099】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。