特許第6626024号(P6626024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626024
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】電圧変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20191216BHJP
【FI】
   H02M3/155 H
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-37125(P2017-37125)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-143065(P2018-143065A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2018年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】丸山 龍彦
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−216712(JP,A)
【文献】 特開2016−025825(JP,A)
【文献】 特開2010−245675(JP,A)
【文献】 特開2011−139609(JP,A)
【文献】 特開2013−165537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を受信して、基準電圧に応じた出力電圧を出力する出力部と、
前記出力電圧から得られた電圧と前記基準電圧との比較結果を示す比較信号を出力する比較器と、
前記比較信号の立ち上がりタイミングまたは立ち下がりタイミングを遅延させた遅延信号を出力する遅延回路であって、前記遅延信号の遅延時間を、周期的に変化する変調信号に基づいて変化させる遅延回路と、
前記遅延信号に基づいて前記出力部を制御する制御回路であって、前記出力電圧の周波数を、前記変調信号に依存する所定値に調整する制御回路と、
を備える電圧変換装置。
【請求項2】
前記所定値は、前記変調信号の周波数である、請求項1に記載の電圧変換装置。
【請求項3】
前記遅延回路は、前記変調信号に基づいて前記遅延時間を周期的に変化させる、請求項1または2に記載の電圧変換装置。
【請求項4】
前記遅延回路は、前記変調信号に基づいて、周期的に変化する変調電流を生成し、前記変調電流に基づいて前記遅延時間を変化させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【請求項5】
前記遅延回路は、前記変調信号に基づいて、周期的に変化する変調電圧を生成し、前記変調電圧に基づいて前記遅延時間を変化させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【請求項6】
前記遅延回路は、前記変調信号に基づいて、前記遅延回路に作用する静電容量を周期的に変化させ、前記静電容量に基づいて前記遅延時間を変化させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【請求項7】
前記遅延回路は、
前記比較信号に応じた第1信号を出力する第2出力部と、
前記第1信号と基準信号との比較結果を示す第2信号を出力する第2比較器と、
前記比較信号と前記第2信号とのOR演算結果を示す前記遅延信号を出力するOR演算器と、
を備える請求項1から6のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電圧変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーを促進するため、オンチップのDCDCコンバータを使用することが一般的になってきている。この場合、回路構成が簡単で、応答速度が速い非線形制御方式(ヒステリシス制御方式)のDCDCコンバータを使用することが多い。
【0003】
一方、無線通信などの分野では、雑音に対する要求がシビアであるため、DCDCコンバータの動作周波数を一定にすることが求められる。しかしながら、非線形制御方式は、外部クロックを必要としない制御方式であるため、動作周波数が一定にならないことが問題となる。
【0004】
そこで、非線形制御方式のDCDCコンバータにPLL(Phase Locked Loop)を適用することが提案されているが、PLLによりDCDCコンバータの回路規模が大きくなることが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−165537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
簡単な構成で動作周波数を固定化することが可能な電圧変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一の実施形態によれば、電源変換装置は、入力電圧を受信して、基準電圧に応じた出力電圧を出力する出力部と、前記出力電圧から得られた電圧と前記基準電圧との比較結果を示す比較信号を出力する比較器とを備える。前記装置はさらに、前記比較信号の立ち上がりタイミングまたは立ち下がりタイミングを遅延させた遅延信号を出力する遅延回路であって、前記遅延信号の遅延時間を、周期的に変化する変調信号に基づいて変化させる遅延回路を備える。前記装置はさらに、前記遅延信号に基づいて前記出力部を制御する制御回路であって、前記出力信号の周波数を、前記変調信号に依存する所定値に調整する制御回路を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の電圧変換装置の構成を示す回路図である。
図2】第1実施形態の電圧変換装置の動作を説明するための波形図である。
図3】第1実施形態の遅延回路の構成を示す回路図である。
図4】第1実施形態の遅延回路の動作を説明するための波形図である。
図5】第1実施形態の遅延時間の例を説明するための波形図である。
図6】第1実施形態の遅延時間の例を説明するための波形図である。
図7】第1実施形態の遅延時間の別の例を説明するための波形図である。
図8】第2実施形態の電圧変換装置の構成を示す回路図である。
図9】第2実施形態の電流源の構成を示す回路図である。
図10】第2実施形態の電流源の動作を説明するための波形図である。
図11】第3実施形態の遅延回路の構成を示す回路図である。
図12】第3実施形態の遅延回路の動作を説明するための波形図である。
図13】第4実施形態の電圧供給部の構成を示す回路図である。
図14】第4実施形態の電圧供給部の動作を説明するための波形図である。
図15】第5実施形態の遅延回路の構成を示す回路図である。
図16】第5実施形態の遅延回路の動作を説明するための波形図である。
図17】第6実施形態の電圧変換装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の電圧変換装置1の構成を示す回路図である。図1は、電圧変換装置1、インダクタL、キャパシタC、および抵抗R、Rにより構成される非線形制御方式のDCDCコンバータを示している。
【0011】
電圧変換装置1は、入力電圧Vinを受信して、入力電圧Vinと0Vとの間で変化する矩形波を出力電圧Vout’として出力する。本実施形態の電圧変換装置1は、半導体チップにより構成されている。出力電圧Vout’は、インダクタLやキャパシタCの作用により最終的な出力電圧Voutに変化し、出力電圧Voutが負荷2に供給される。
【0012】
インダクタL、抵抗R、および抵抗Rは、電圧変換装置1の出力端子と接地ノードとの間に直列に接続されている。キャパシタCと負荷2は、インダクタLと抵抗Rの間のノードと接地ノードとの間に並列に接続されている。抵抗Rと抵抗Rは、出力電圧Voutを分圧してフィードバック電圧Vfbを生成する。フィードバック電圧Vfbは、抵抗Rと抵抗Rとの間のノードから電圧変換装置1に供給される。
【0013】
電圧変換装置1は、入力電圧Vin、基準電圧Vref、およびフィードバック電圧Vfbに基づいて出力電圧Vout’を制御する。その結果、電圧変換装置1は、基準電圧Vrefに応じた出力電圧Vout’を出力する。具体的には、出力電圧Vout’の平均値が、基準電圧Vrefに(R+R)/Rを乗じた値となる。出力電圧Vout’と出力電圧Voutの詳細については、後述する。
【0014】
電圧変換装置1は、比較器11と、変調信号供給回路12と、遅延回路13と、制御回路14と、出力部の一例としての第1および第2出力トランジスタ15、16とを備えている。
【0015】
比較器11は、フィードバック電圧Vfbと基準電圧Vrefとを比較し、これらの電圧の比較結果を示す比較信号Vd1を遅延回路13に出力する。変調信号供給回路12は、周期的に変化する信号である変調信号Vmodを遅延回路13に供給する。本実施形態の変調信号Vmodは、一定の周波数Fmodを有するパルス信号である。
【0016】
遅延回路13は、比較信号Vd1の立ち上がりタイミングまたは立ち下がりタイミングを遅延させた遅延信号Vd2を制御回路14に出力する回路である。遅延回路13は、遅延信号Vd2の遅延時間を変調信号Vmodに基づいて変化させる。遅延回路13の構成や動作の詳細は、後述する。
【0017】
制御回路14は、遅延信号Vd2に基づいて第1および第2出力トランジスタ15、16を制御する。その結果、本実施形態の出力信号(出力電圧)out’と出力信号(出力電圧)outの周波数は、変調信号Vmodに依存する所定値に調整され、具体的には、変調信号Vmodの周波数Fmodに調整される。
【0018】
第1および第2出力トランジスタ15、16は、電圧変換装置1の入力端子と接地ノードとの間に直列に接続されている。本実施形態の第1出力トランジスタ15はpMOSであり、本実施形態の第2出力トランジスタ16はnMOSである。第1および第2出力トランジスタ15、16のゲートには、制御回路14からの制御信号が入力される。第1および第2出力トランジスタ15、16の間のノードは、電圧変換装置1の出力端子に接続されている。よって、第1および第2出力トランジスタ15、16は、電圧変換装置1の入力端子から入力電圧Vinを供給され、基準電圧Vrefに応じた出力電圧Vout’を電圧変換装置1の出力端子に出力する。
【0019】
図2は、第1実施形態の電圧変換装置1の動作を説明するための波形図である。
【0020】
図2(a)は、出力電圧Vout’の一例を示し、図2(b)は、出力電圧Voutの一例を示している。符号Fは、これらの出力電圧Vout’、Voutの周波数を表す。符号Tonは、上述の遅延信号Vd2の遅延時間を表す。符号Vmax、Vminは、出力電圧Voutの最大値と最小値を表す。遅延回路13や制御回路14は、これらの出力電圧Vout’、Voutの周波数Fを、変調信号Vmodの周波数Fmodに調整するよう動作する(F=Fmod)。
【0021】
図2(a)の出力電圧Vout’は、最大値がVin、最小値が0、パルス幅がTonのパルス波(矩形波)である。図2(a)の出力電圧Vout’の平均値は、上述のように、基準電圧Vrefに(R+R)/Rを乗じた値となる。一方、図2(b)の出力電圧Voutは、時間Tonの間に最大値Vmaxから最小値Vminに変化する三角波である。
【0022】
出力電圧Vout’のデューティ比Dは、次の式(1)で与えられる。出力電圧Vout’、Voutの周波数Fは、次の式(2)で与えられる。
D = Ton/(1/F) 〜 Vout/Vin ・・・(1)
F = D/Ton 〜 Vout/(Vinon) ・・・(2)
ただし、式(1)と式(2)中のVin、Voutは、Vin、Voutの平均値を表す。
【0023】
図3は、第1実施形態の遅延回路13の構成を示す回路図である。
【0024】
本実施形態の遅延回路13は、第2出力部の一例としての第1および第2トランジスタ13a、13bと、電流源13cと、電圧供給部13dと、第2比較器の一例としての比較器13eと、OR演算器13fと、キャパシタCとを備えている。
【0025】
第1および第2トランジスタ13a、13bは、電流源13cと接地ノードとの間に直列に接続されている。本実施形態の第1トランジスタ13aはpMOSであり、本実施形態の第2トランジスタ13bはnMOSである。第1および第2トランジスタ13a、13bのゲートには、比較器11からの比較信号Vd1が入力される。そして、第1および第2トランジスタ13a、13bは、比較信号Vd1に応じた第1信号Vを第1および第2トランジスタ13a、13bの間のノードに出力し、比較器13eとキャパシタCとに第1信号Vを供給する。キャパシタCは、このノードと接地ノードとの間に配置されている。
【0026】
電流源13cは、第1トランジスタ13aにバイアス電流Ibiasを供給する。第1および第2トランジスタ13a、13bは、このバイアス電流Ibiasと比較信号Vd1とに基づいて第1信号Vを出力する。一方、電圧供給部13dは、比較器13eに基準信号である電圧Vtuneを供給する。
【0027】
比較器13eは、第1信号Vと電圧Vtuneとを比較し、これらの信号の比較結果を示す第2信号VをOR演算器13fに出力する。OR演算器13fは、比較信号Vd1と第2信号VとのOR演算結果を示す遅延信号Vd2を出力する。
【0028】
本実施形態の遅延回路13は、上述の変調信号Vmodに基づいて、電流源13cのバイアス電流Ibias、電圧供給部13dの電圧Vtune、またはキャパシタCの静電容量を周期的に変化させる。そして、遅延回路13は、このようなバイアス電流Ibias、電圧Vtune、または静電容量に基づいて、遅延信号Vd2の遅延時間Tonを変化させる。その結果、出力信号Vout’と出力信号Voutの周波数は、変調信号Vmodの周波数Fmodに調整される。なお、周期的に変化するバイアス電流Ibias、電圧Vtune、または静電容量の詳細については、後述する第2〜第5実施形態にて説明する。
【0029】
図4は、第1実施形態の遅延回路13の動作を説明するための波形図である。
【0030】
図4(a)、図4(b)、図4(c)はそれぞれ、比較信号Vd1、第2信号V、遅延信号Vd2の例を示している。図4(a)の比較信号Vd1は、時間Tにローからハイに変化し、時間Tにハイからローに変化している。そのため、図4(b)の第2信号Vは、時間Tから増加し始めており、時間Tに電圧Vtuneに達している。その結果、図4(c)の遅延信号Vd2は、時間Tにローからハイに変化し、時間Tにハイからローに変化している。
【0031】
このように、遅延回路13は、比較信号Vd1の立ち上がりタイミングを時間Tに維持し、比較信号Vd1の立ち下がりタイミングを時間Tから時間Tに遅延させることで、遅延信号Vd2を生成する。遅延信号Vd2の遅延時間Tonは「T−T」となる。
【0032】
図4(b)と図4(c)から明らかなように、電圧Vtuneが変化すると遅延時間Tonも変化する。例えば、電圧Vtuneが周波数Fmodで変化すると、遅延時間Tonも周波数Fmodで変化する。このように、遅延回路13は、電圧Vtuneを変調信号Vmodに応じて周期的に変化させることで、遅延時間Tonを変調信号Vmodに応じて周期的に変化させることができる。これは、バイアス電流Ibiasを周期的に変化させる場合や、キャパシタCの静電容量を周期的に変化させる場合にも同様である。遅延時間Tonは、次の式(3)で与えられる。
on 〜 Vtune/Ibias ・・・(3)
ただし、式(3)中のCは、キャパシタCの静電容量を表す。
【0033】
なお、比較信号Vd1と遅延信号Vd2は、正論理ではなく負論理の信号でもよい。この場合、遅延回路13は、比較信号Vd1の立ち下がりタイミングを時間Tに維持し、比較信号Vd1の立ち上がりタイミングを時間Tから時間Tに遅延させることで、遅延信号Vd2を生成することとなる。
【0034】
図5は、第1実施形態の遅延時間Tonの例を説明するための波形図である。
【0035】
図5(a)は、遅延時間Tonの一例を示している。遅延回路13は、図5(a)に示すように、変調信号Vmodに基づいて遅延時間Tonを周期的に変化させる。図5(a)の遅延時間Tonは、周波数Fmodの「のこぎり波」の形で周期的に変化している。符号Ton(t)は、遅延時間Tonの目標値を表す。
【0036】
図5(b)は、出力電圧Voutの一例を示している。遅延時間Tonが周波数Fmodで周期的に変化すると、出力電圧Voutの周波数Fは、図5(b)に示すように、周波数Fmodに調整されることとなる(F=Fmod)。符号Vout(t)は、出力電圧Voutの最大値の目標値を表す。出力電圧Voutの周波数Fが周波数Fmodに調整されると、出力電圧Voutが最小値から最大値に変化する時間はTon(t)となる。時間Ton(t)は、次の式(4)で与えられる。
on(t) 〜 Vout/(Vinmod) ・・・(4)
ただし、式(4)中のVin、Voutは、Vin、Voutの平均値を表す。
【0037】
図6は、第1実施形態の遅延時間Tonの例を説明するための波形図である。図6は、出力電圧Voutの周波数Fが周波数Fmodに調整される過程を示している。
【0038】
図6(a)は、遅延時間Tonの一例を示し、図6(b)は、出力電圧Voutの一例を示している。時間t、t、t、tは、図4(a)のTと同様に、比較信号Vd1がローからハイに変化する時間を表す。
【0039】
比較信号Vd1が時間tにローからハイに変化すると、出力電圧Voutが時間tに増加し始める(図6(b))。ここで、時間tの遅延時間Ton1は、目標値Ton(t)よりも大きい(図6(a))。その結果、時間t+Ton1の出力電圧Vout1は、目標値Vout(t)よりも高くなる(図6(b))。さらには、時間tから時間tまでの時間も長くなる。
【0040】
その後、比較信号Vd1が時間tにローからハイに変化すると、出力電圧Voutが時間tに再び増加し始める。ここで、時間tの遅延時間Ton2は、目標値Ton(t)よりも小さい。その結果、時間t+Ton2の出力電圧Vout2は、目標値Vout(t)よりも低くなる。さらには、時間tから時間tまでの時間も短くなる。
【0041】
比較信号Vd1と出力電圧Voutは、その後も同様の変化を繰り返す。その結果、比較信号Vd1は、遅延時間Tonが目標値Ton(t)になる時間にローからハイに変化するようになる(図5(a)を参照)。さらには、出力電圧Voutは、出力電圧Voutの最大値が目標値Vout(t)となるように変化するようになる(図5(b)を参照)。このようにして、出力電圧Voutの周波数Fが周波数Fmodに調整される。すなわち、電圧変換装置1の動作周波数Fが周波数Fmodに固定化される。
【0042】
図7は、第1実施形態の遅延時間Tonの別の例を説明するための波形図である。
【0043】
本実施形態の遅延時間Tonは、周期的に変化すれば、のこぎり波以外の形で変化してもよい。図7(a)は、その一例として、周波数Fmodの「三角波」の形で周期的に変化する遅延時間Tonを示している。図7(b)は、その別の例として、周波数Fmodの「擬似的な三角波」の形で周期的に変化する遅延時間Tonを示している。さらに別の例としては、周波数Fmodの「正弦波」の形で周期的に変化する遅延時間Tonが考えられる。
【0044】
以上のように、本実施形態の電圧変換装置1は、遅延信号Vd2の遅延時間Tonを変調信号Vmodに基づいて変化させ、出力信号Vout’と出力信号Voutの周波数Fを、変調信号Vmodの周波数Fmodに調整する。よって、非線形制御方式のDCDCコンバータの動作周波数を、PLLのような大規模な回路を用いずに一定に調整することができる。すなわち、本実施形態によれば、電圧変換装置1の動作周波数を簡単な構成で固定化することが可能となる。
【0045】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の電圧変換装置1の構成を示す回路図である。
【0046】
図8の電圧変換装置1は、図1に示す構成要素に加え、フリップフロップ17を備えている。フリップフロップ17は、比較信号Vd1が入力されるR(リセット)端子と、遅延信号Vd2が入力されるS(セット)端子と、比較信号Vd1と遅延信号Vd2とに応じた出力信号を出力するQ端子とを備えている。Q端子からの出力信号は、後述する切替器SWに供給される。
【0047】
図9は、第2実施形態の電流源13cの構成を示す回路図である。
【0048】
本実施形態の電流源13cは、三角波発生回路21と、VI(電圧電流)変換回路22とを備えている。三角波発生回路21は、トランジスタ23と、電流源24と、キャパシタCと、抵抗Rとを備えている。VI変換回路22は、オペアンプ25と、第1トランジスタ26と、第2トランジスタ27と、切替器SWと、キャパシタCと、抵抗Rとを備えている。
【0049】
本実施形態の遅延回路13は、このような電流源13cによりバイアス電流Ibiasを周期的に変化させる。一方、電圧供給部13dの電圧Vtuneと、キャパシタCの静電容量は一定とする。その結果、遅延信号Vd2の遅延時間Tonは、バイアス電流Ibiasに応じて変化する。バイアス電流Ibiasは、周期的に変化する変調電流の一例である。
【0050】
トランジスタ23のゲートには、変調信号Vmodが供給される。キャパシタCと抵抗Rは、電流源24と接地ノードとの間に直列に接続されており、キャパシタCは、トランジスタ23と並列に接続されている。電流源24は、トランジスタ23およびキャパシタCに電流を供給する定電流源である。三角波発生回路21は、このような回路構成により、電流源24とキャパシタCとの間のノードから三角波電圧を出力する。
【0051】
切替器SWは、このノードとオペアンプ25の非反転入力端子との間に配置され、キャパシタCは、この非反転入力端子と接地ノードとの間に配置されている。切替器SWは、フリップフロップ17から出力信号を受け取り、出力信号がハイのときに三角波電圧を通過させ、出力信号がローのときに三角波電圧を遮断する。このように、フリップフロップ17からの出力信号は、三角波電圧をVI変換回路22に供給するタイミングを制御するために使用される。
【0052】
符号Vは、オペアンプ25の非反転入力端子に印加される電圧を示し、符号Vは、オペアンプ25の反転入力端子に印加される電圧を示す。オペアンプ25の反転入力端子は、第1トランジスタ26のドレインと抵抗Rとの間のノードに接続されている。その結果、オペアンプ25は、ボルテージフォロワとして機能し、このノードの電圧は電圧V、Vと等しくなる。オペアンプ25の出力端子は、第1および第2トランジスタ26、27のゲートに接続されている。
【0053】
なお、キャパシタCは、切替器SWが三角波電圧を遮断している間に、電圧Vを遮断直前の電圧に維持する作用を有する。
【0054】
第1トランジスタ26のゲートは、オペアンプ25の出力端子と、第2トランジスタ27のゲートに接続されており、第1および第2トランジスタ26、27は、カレントミラーを構成している。抵抗Rは、第1トランジスタ26のドレインと接地ノードとの間に配置されている。第1および第2トランジスタ26、27のゲートには、オペアンプ25からの出力電圧が印加される。第2トランジスタ27は、この出力電圧に応じたバイアス電流Ibiasをドレイン電流として出力する。VI変換回路22は、このような回路構成により、三角波電圧をバイアス電流Ibiasに変換して、周期的に変化するバイアス電流Ibiasを生成する。
【0055】
図10は、第2実施形態の電流源13cの動作を説明するための波形図である。
【0056】
図10(a)、図10(b)、図10(c)はそれぞれ、変調信号Vmod、電圧V、遅延時間Tonの例を示している。三角波発生回路21は、図10(a)の変調信号Vmodに応じて三角波電圧を出力し、その結果、周波数Fmodの電圧Vがオペアンプ25の非反転入力端子に印加される(図10(b))。よって、オペアンプ25からの出力電圧や、VI変換回路22からのバイアス電流Ibiasも、図10(b)と同様の波形を有することとなる。その結果、遅延時間Tonは、電圧Vを反転した波形を有することとなり、周波数Fmodで周期的に変化することとなる(図10(c))。
【0057】
以上のように、本実施形態の遅延回路13は、バイアス電流Ibiasを周期的に変化させることで、遅延時間Tonを周期的に変化させる。これにより、出力信号Vout’と出力信号Voutの周波数Fを、変調信号Vmodの周波数Fmodに調整することが可能となる。本実施形態によれば、PLLよりもシンプルな電流源13cにより、電圧変換装置1の動作周波数を固定化することが可能となる。
【0058】
(第3実施形態)
図11は、第3実施形態の遅延回路13の構成を示す回路図である。
【0059】
本実施形態の電流源13cは、電流源31と、第1から第N電流源の例としての電流源31〜31と、第1から第N切替器の例としてのトランジスタ32〜32とを備えている(Nは2以上の整数)。
【0060】
電流源31〜31は、第1トランジスタ13aにそれぞれ電流Ibias0〜IbiasNを供給する定電流源であり、互いに並列に接続されている。トランジスタ32〜32はそれぞれ、電流源31〜31に直列に接続されている。トランジスタ32〜32のゲートには、互いに異なる変調信号Vmodが供給される。
【0061】
本実施形態の電流源13cは、電流源31〜31からの電流Ibias0〜IbiasNにより、周期的に変化するバイアス電流Ibiasを生成する。一方、電圧供給部13dの電圧Vtuneと、キャパシタCの静電容量は一定とする。その結果、遅延信号Vd2の遅延時間Tonは、バイアス電流Ibiasに応じて変化する。バイアス電流Ibiasは、周期的に変化する変調電流の一例である。
【0062】
なお、図11は、一定の電圧Vtuneの例として、基準電圧Vrefを示している。この基準電圧Vrefは、図1の基準電圧Vrefと同じものでもよいし、図1の基準電圧Vrefと別のものでもよい。
【0063】
図12は、第3実施形態の遅延回路13の動作を説明するための波形図である。
【0064】
図12(a)、図12(b)、図12(c)はそれぞれ、トランジスタ32、32、32に供給される変調信号Vmodの例を示している。図12(d)は、バイアス電流Ibiasの例を示している。トランジスタ32〜32に供給される変調信号Vmodは、いずれも周波数Fmodで周期的に変化するが、パルス幅が互いに異なる(図12(a)〜図12(c))。その結果、バイアス電流Ibiasの波形は、図12(d)に示すように、周波数Fmodで周期的に変化する階段状の波形となる。
【0065】
以上のように、第2実施形態の遅延回路13は、バイアス電流Ibiasを連続的な周期波形に変化させるのに対し、本実施形態の遅延回路13は、バイアス電流Ibiasを離散的な周期波形に変化させる。これにより、本実施形態の電圧変換装置1は、遅延時間Tonを周期的に変化させ、出力信号Vout’と出力信号Voutの周波数Fを、変調信号Vmodの周波数Fmodに調整することができる。本実施形態によれば、PLLよりもシンプルな電流源13cにより、電圧変換装置1の動作周波数を固定化することが可能となる。
【0066】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態の電圧供給部13dの構成を示す回路図である。
【0067】
図13の電圧供給部13dは、図9の電流源13cから第1トランジスタ26、第2トランジスタ27、および抵抗Rを取り除いた構成を有している。ただし、オペアンプ25の反転入力端子は、オペアンプ25の出力端子と接続されている。そして、オペアンプ25は、電圧Vと同じ値の出力電圧を出力端子から出力し、この出力電圧が電圧Vtuneとなる。なお、本実施形態の遅延回路13は、第2実施形態の遅延回路13と同様に、図8の電圧変換装置1に設けられており、切替器SWの動作がフリップフロップ17により制御される。
【0068】
本実施形態の遅延回路13は、このような電圧供給部13dにより電圧Vtuneを周期的に変化させる。一方、電流源13cのバイアス電流Ibiasと、キャパシタCの静電容量は一定とする。その結果、遅延信号Vd2の遅延時間Tonは、電圧Vtuneに応じて変化する。電圧Vtuneは、周期的に変化する変調電圧の一例である。
【0069】
図14は、第4実施形態の電圧供給部13dの動作を説明するための波形図である。
【0070】
図14(a)、図14(b)、図14(c)はそれぞれ、変調信号Vmod、電圧V、遅延時間Tonの例を示している。三角波発生回路21は、図14(a)の変調信号Vmodに応じて三角波電圧を出力し、その結果、周波数Fmodの電圧Vがオペアンプ25の非反転入力端子に印加される(図14(b))。よって、電圧Vtuneや遅延時間Tonは、図14(b)と同様の波形を有することとなり、遅延時間Tonは、周波数Fmodで周期的に変化することとなる(図14(c))。
【0071】
以上のように、本実施形態の遅延回路13は、電圧Vtuneを周期的に変化させることで、遅延時間Tonを周期的に変化させる。これにより、出力信号Vout’と出力信号Voutの周波数Fを、変調信号Vmodの周波数Fmodに調整することが可能となる。本実施形態によれば、PLLよりもシンプルな電圧供給部13dにより、電圧変換装置1の動作周波数を固定化することが可能となる。また、本実施形態によれば、第2実施形態の電流源13cよりもシンプルな電圧供給部13dにより、電圧変換装置1の動作周波数を固定化することが可能となる。
【0072】
(第5実施形態)
図15は、第5実施形態の遅延回路13の構成を示す回路図である。
【0073】
本実施形態のキャパシタCは、キャパシタCd0と、第1から第Nキャパシタの例としてのキャパシタCd1〜CdNと、第1から第N切替器の例としてのトランジスタ33〜33とを備えている(Nは2以上の整数)。
【0074】
キャパシタCd0〜CdNは、一定の静電容量を有し、第1および第2トランジスタ13a、13bの間のノードと接地ノードとの間で互いに並列に接続されている。トランジスタ33〜33はそれぞれ、キャパシタCd1〜CdNに直列に接続されている。トランジスタ33〜33のゲートには、互いに異なる変調信号Vmodが供給される。
【0075】
本実施形態の遅延回路13は、これらの変調信号Vmodに基づいて、遅延回路13に作用する静電容量を周期的に変化させる。具体的には、キャパシタCd1〜CdNに接続されたトランジスタ33〜33のオン/オフを切り替えることで、遅延回路13に作用する静電容量を周期的に変化させる。一方、電流源13cのバイアス電流Ibiasと、電圧供給部13dの電圧Vtuneは一定とする。その結果、遅延信号Vd2の遅延時間Tonは、遅延回路13に作用する静電容量の変化に応じて変化する。
【0076】
なお、図15は、一定の電圧Vtuneの例として、基準電圧Vrefを示している。この基準電圧Vrefは、図1の基準電圧Vrefと同じものでもよいし、図1の基準電圧Vrefと別のものでもよい。
【0077】
図16は、第5実施形態の遅延回路13の動作を説明するための波形図である。
【0078】
図16(a)、図16(b)、図16(c)はそれぞれ、トランジスタ33、33、33に供給される変調信号Vmodの例を示している。図12(d)は、遅延回路13に作用する静電容量の値の例を示している。トランジスタ33〜33に供給される変調信号Vmodは、いずれも周波数Fmodで周期的に変化するが、パルス幅が互いに異なる(図16(a)〜図16(c))。その結果、遅延回路13に作用する静電容量の値は、図16(d)に示すように、周波数Fmodで周期的に変化することとなる。
【0079】
以上のように、本実施形態の遅延回路13は、遅延回路13に作用する静電容量を周期的に変化させることで、遅延時間Tonを周期的に変化させる。これにより、出力信号Vout’と出力信号Voutの周波数Fを、変調信号Vmodの周波数Fmodに調整することが可能となる。本実施形態によれば、PLLよりもシンプルな遅延回路13により、電圧変換装置1の動作周波数を固定化することが可能となる。
【0080】
(第6実施形態)
図17は、第6実施形態の電圧変換装置1の構成を示す回路図である。
【0081】
図17は、図1に示す構成要素に加え、リップル注入回路の一例としてのリップル注入フィルタ3を備えるDCDCコンバータを示している。リップル注入フィルタ3は、フィードバック電圧Vfbにリップルを注入して、フィードバック電圧Vfb’を出力する回路であり、フィードバック電圧Vfb’を比較器11に供給する。
【0082】
リップル注入フィルタ3は、抵抗Rと、キャパシタCR1、CR2、CR3とを備えている。抵抗RとキャパシタCR1は、電圧変換装置1とインダクタLとの間の第1ノードと、抵抗R、R間のノードと比較器11との間の第2ノードとの間に直列に接続されている。キャパシタCR2は、抵抗RとキャパシタCR1との間の第3ノードと、インダクタLと抵抗Rとの間の第4ノードとの間に配置されている。キャパシタCR3は、抵抗R、R間のノードと第2ノードとの間の第5ノードと、キャパシタCR2と第4ノードとの間の第6ノードとの間に配置されている。
【0083】
本実施形態のDCDCコンバータは、このようなリップル注入フィルタ3により、フィードバック電圧Vfb’のピークをフィードバック電圧Vfbのピークより高くすることができる。よって、本実施形態によれば、電圧変換装置1におけるフィードバック電圧Vfb’の変化の検出精度を向上させることが可能となる。
【0084】
なお、本実施形態のリップル注入フィルタ3は、第1から第5実施形態のいずれに対しても適用可能である。
【0085】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0086】
1:電源変換装置、2:負荷、3:リップル注入フィルタ、
11:比較器、12:変調信号供給回路、13:遅延回路、
13a:第1トランジスタ、13b:第2トランジスタ、13c:電流源、
13d:電圧供給部、13e:比較器、13f:OR演算器、
14:制御回路、15:第1出力トランジスタ、
16:第2出力トランジスタ、17:フリップフロップ、
21:三角波発生回路、22:VI変換回路、23:トランジスタ、24:電流源、
25:オペアンプ、26:第1トランジスタ、27:第2トランジスタ、
31、31、31、・・・31:電流源、
32、32、・・・32:トランジスタ、
33、33、・・・33:トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17