(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626114
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】ポンプを運転するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20191216BHJP
F04B 51/00 20060101ALI20191216BHJP
G01M 15/02 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
F02D45/00 364Z
F04B51/00
G01M15/02
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-542326(P2017-542326)
(86)(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公表番号】特表2017-535793(P2017-535793A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】EP2015075767
(87)【国際公開番号】WO2016071427
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2018年11月2日
(31)【優先権主張番号】A50807/2014
(32)【優先日】2014年11月5日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】398055255
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ブラツァー・フェドラン
(72)【発明者】
【氏名】ブーフナー・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】リヒテネガー・ゲオルク
【審査官】
萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−159277(JP,A)
【文献】
特開昭59−211752(JP,A)
【文献】
特開昭53−075501(JP,A)
【文献】
実開昭60−167189(JP,U)
【文献】
特開平07−128110(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0030113(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00 − 15/14
G01M 99/00
F02D 45/00
F04B 49/00 − 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプライン内にフローモニタが設けられている、ポンプを運転するための方法において、
フローモニタは、流量が所定の閾値であるスイッチポイント(SP)を上回った時にスイッチを起動するフロースイッチであること、
ポンプが、アクチュエータと結合しており、このアクチュエータが、ポンプの移送能力を決定する操作値を設定すること、及び、
この方法が、
・ポンプの始動時にフローモニタのスイッチポイント(SP)までアクチュエータの操作値を実質的に連続的に変化させ、
・スイッチポイント(SP)に対応する操作値を求め、この操作値を基準操作値(fR)として記憶することによって、
−予め、新しいポンプの使用前に、ポンプのアクチュエータ用の基準操作値(fR)を一旦求めるステップと、
・ポンプの始動時にフローモニタのスイッチポイント(SP)までアクチュエータの操作値を実質的に連続的に変化させ、
・スイッチポイント(SP)に対応する操作値を求め、この操作値を較正操作値(fK)として定義し、
・ポンプ及びフローモニタのために記憶された基準操作値(fR)と、較正操作値(fK)の間の操作値差値(Δf)を求め、
・操作値差値(Δf)に基づいてポンプのアクチュエータの操作値を較正することによって、
−同じポンプの再使用前に、ポンプの較正ステップを実施するステップと、
を備えること、を特徴とする方法。
【請求項2】
圧送される媒体の密度及び/又は粘度が、密度センサ及び/又は粘度センサを介して求められ、基準操作値を求める時の媒体の密度及び/又は粘度と、較正ステップ時の媒体の密度及び/又は粘度の差が、アクチュエータを較正する時に考慮されること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
較正ステップ時に、操作値差値(Δf)に基づいて、ポンプの消耗を示す摩耗値が求められること、を特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
摩耗値に基づいて、ポンプ用の交換時点が求められること、を特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
装置が、ポンプ(1)のポンプ能力を調整するためのアクチュエータ(2)と調整ユニット(3)とを備える、ポンプライン(6)内に設けられたポンプ(1)を較正するための装置において、
装置が、燃料ライン(6)内にフローモニタ(4)を備え、フローモニタ(4)は、流量が所定の閾値であるスイッチポイント(SP)を上回った時にスイッチを起動するフロースイッチであること、
ポンプ(1)が、アクチュエータ(2)と結合しており、このアクチュエータ(2)が、ポンプ(1)の移送能力を決定する操作値を設定すること、及び、
調整ユニット(3)は、
−新しいポンプの使用前に、アクチュエータ(2)の操作値を、ポンプ(1)の始動時にフローモニタ(4)のスイッチポイント(SP)まで実質的に連続的に変化させ、スイッチポイント(SP)に対応する操作値を求めて基準操作値(fR)として記憶し、
−同じポンプの再使用前に、クチュエータ(2)の操作値を、ポンプ(1)の始動時にフローモニタ(4)のスイッチポイント(SP)まで実質的に連続的に変化させ、スイッチポイント(SP)に対応する操作値を求めて較正操作値(fK)として定義し、
−ポンプ(1)及びフローモニタ(4)のために記憶された基準操作値(fR)と、較正時に求められた較正操作値(fK)の間の操作値差値(Δf)を求め、
−ポンプ(1)のアクチュエータ(2)の操作値を操作値差値(Δf)に基づいて較正するために、
形成されていること、を特徴とする装置。
【請求項6】
フローモニタ(4)が、ポンプ(1)に統合されていること、を特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
フローモニタ(4)が、バイナリセンサであること、を特徴とする請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
フローモニタ(4)が、ポンプ(1)の吐出側に設けられていること、を特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
装置が、圧送される媒体用の密度センサ(5)及び/又は粘度センサを備えること、を特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
装置が、エンジン試験ベンチ用の燃料消費量測定装置であり、ポンプ(1)が、燃料消費量測定装置の測定回路内に設けられた測定回路ポンプ(17)であること、を特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
ポンプ用の整備時点及び/又は交換時点を求めるための請求項5〜10のいずれか1項に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプライン内に、所定のスイッチポイントを有するフローモニタが設けられている、ポンプ、特にエンジン試験ベンチでの燃料消費量測定用の測定回路ポンプを運転するための方法に関する。更に、本発明は、装置が、ポンプのポンプ能力を調整するためのアクチュエータと調整ユニットとを備える、ポンプライン内に設けられたポンプを較正するための装置に関する。本発明は、更に、ポンプ用の整備時点及び/又は交換時点を求めるためのこの装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
操作値、即ち例えば周波数コンバータによって提供される操作周波数、に依存したポンプの移送能力は、摩耗の増加と共に低下する。移送能力の加速された低下は、ポンプの早急な故障を示し得る。
【0003】
これは、特にエンジン試験ベンチの燃料供給時に問題となり得る。エンジン試験ベンチでの試運転の実施は、一般に、高いコストと結びついており、日毎の試験ベンチの賃料だけでも高い金額が生じ得る。個々の試運転は、場合によっては数週間にわたって実行され、試運転中には、一般に、例えばエンジンへの燃料供給用の測定回路ポンプのような所定の試験装置を整備又は交換する可能性はない。従って、試運転の終わり頃のたった1つの部品の故障は、非常に高いコストを惹起する。何故なら、中断された試験の結果は、大抵は無価値であり、やり直す必要があるからである。これまで試験のために生じたコストだけでなく、開発時間に作用する無駄な時間も考慮する必要がある。試運転の中断の原因と、これにより生じるコストが、たとえば測定回路ポンプのような比較的割安な部品の故障にある場合は、特に不愉快である。
【0004】
測定回路ポンプは、異なった試運転の場合には非常に異なった要求を受けるので、大抵は、1つの試運転又は複数の試運転の後にポンプの摩耗が既にどこまで進んでいるかを正確に示すことはできない。しかしながら、これは、2つの点で問題がある:第1に、ポンプの故障の確率が、所定の消耗以降に上昇し、他方で、ポンプの移送量も、消耗の進行と共に低下し、最悪の場合には、開発者もしくは試験ベンチオペレータによって定義された試運転用の最低量を、気付かないうちに下回り得る。両場合に、試験結果は、無価値であり、ポンプが、試運転前に交換されていなければならないことがわかった。
【0005】
これらリスクを回避するために、測定回路ポンプは、しばしば、目標寿命の約30%しか経過してないのに交換される。何故なら、外からは、どのような強さで、ポンプが、実際に既に消耗しているのか確定できないからである。これは、確かに、かなり高価な浪費であるが、依然として、故障時に負担すべき購入におけるコストよりも安上がりである。
【0006】
これら欠点を回避するため、ポンプの実際の消耗度を、例えば圧力、密度及び移送量の測定により求めるために、費用のかかるセンサ技術を燃料供給システムに設けることが可能である。しかしながら、これは、著しいコストと結びついており、更に、事情によっては、高価値のセンサ技術の取付けが、可能な問題を更に増大させる。何故なら、その場合、ポンプユニット用のコストが上昇した以外に、ポンプだけでなく、センサ技術も規則的に整備及び適時に交換する必要があるからである。著しい整備需要により、作業投入用のコストも上昇する。流量センサは、例えば、わざわざ考慮する必要のある付加的な圧力上昇も惹起し得る。
【0007】
従って、一方で、所定の移送量が達成されるように、ポンプを使用前に較正し、他方で、ポンプを故障前の適時に交換できるように、ポンプの消耗の度合いを十分正確に決定し得るために、簡単に、僅かなコスト及び高い作動信頼性で、ポンプの実際の消耗度を求めることを許容する方法及び装置における需要がある。
【0008】
その移送量に影響を与えるポンプの消耗及び摩耗(例えば軸受、歯車等の)の程度以外に、通常使用されるポンプの移送量は、更に非常に強く、圧送される媒体の圧力及び粘度に依存している。現在の移送量を監視するための費用の掛かるセンサ技術無しで、最悪の場合には、特に、実質的に3つの影響因子−燃料の圧力及び粘度とポンプの摩耗−の1つ又は複数が変化した時に、開発者/試験ベンチオペレータによって定義された燃料供給のための最低量を気付かないうちに下回り得る。その場合、このような試験シリーズの結果は、役に立たない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/030113号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2 667 031号明細書
【特許文献3】西独国特許出願公開第41 38 477号明細書
【特許文献4】独国実用新案第203 12 986号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、特に、条件が変化した時の燃料供給が確実かつ簡単に再調整でき、これにより、運転中に実際にエンジンのために提供される燃料量が設定通りに常に維持できるように、これら因子の補正ができる、較正システムを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題及び別の課題は、冒頭で述べた方法によれば、
この方法が、
・スイッチポイントまでアクチュエータの操作値を実質的に連続的に変化させることによってポンプを始動させ、
・スイッチポイントに対応する操作値を求め、この操作値を基準操作値として記憶することによって、
−予め、新しいポンプにおいて、ポンプのアクチュエータ用の基準操作値を一旦求めるステップと、
・スイッチポイントまでアクチュエータの操作値を実質的に連続的に変化させることによってポンプを始動させ、
・スイッチポイントに対応する操作値を求め、この操作値を較正操作値として定義し、
・ポンプ及びフローモニタのために記憶された基準操作値と、較正操作値の間の操作値差値を求め、
・操作値差値に基づいてポンプのアクチュエータを較正することによって、
−ポンプの使用前に、同じポンプの較正ステップを実施するステップと、
を備えること、によって解決される。
【0012】
本発明による方法は、簡単なフローモニタのスイッチポイントが、時間にわたってほとんど変化せずに、スイッチポイントが、更に、圧送される媒体の圧力にほとんど依存しないとの事実を利用する。非常に簡単で低コストのフローモニタも、時間経過にわたって、非常に高いスイッチポイント信頼性を備える。更に、フローモニタ又はフロースイッチは、非常に低コストで実現することができ、非常に僅かな所要空間しか要求しない。また、フローモニタは、圧送される媒体の流動特性に対して僅かな作用しか有しない。
【0013】
操作値としては、特にポンプの周波数コンバータの周波数を見なすことができ、周波数コンバータは、ポンプ用のアクチュエータとして使用される。しかしながらまた、本発明は、当業者に知られたように、他のアクチュエータでもって使用することもできる。
【0014】
“スイッチポイントに対応する操作値”又は“スイッチポイント操作値”と、アクチュエータのそれぞれの操作値が、即ち例えば、フローモニタが流れの存在の検出を始める周波数コンバータの周波数が呼ばれる。
【0015】
“操作値を実質的に連続的に変化させる”との表現は、フローモニタのスイッチポイントを適用のために設定された精度で求め得るために、ポンプの移送能力、即ち流量の十分ゆっくりとした上昇を生じさせる操作値の変化を意味する。特に、スイッチポイントを十分正確に決定するために、段が十分小さい場合には、操作値の段階的な変化も、“実質的に連続的に”と見なすことができる。
【0016】
所定のフローモニタのスイッチポイントが一定であり続ける限りは、方法の実施のために、どのような流量の時に、フローモニタが正確に切り替わるかを正確に知っていることは、必ずしも必要ではない。従って、本発明による方法の実施のために、フローモニタを較正することは必要ない。
【0017】
一般に、新しいポンプ用の基準操作値は、新しいポンプの取付け後に求められ、その後、基準操作値は、ポンプのライフサイクル全体にわたって較正のために使用される。較正ステップは、各新たな使用の前、例えばエンジン試験ベンチの新たな試運転の前に実施され、それぞれのポンプ特性曲線−このポンプ特性曲線を介して、移送すべき燃料量が、操作値に依存して調整される−は、使用のために、求められた操作値差値に基づいて再調整することができる。求められた操作値差値が、ポンプの規則的な運転のために求められた基準領域外に低下すれば、ポンプは、試運転の開始前の適時に交換することができる。未だ許容可能な領域内での操作値差値の突然に生じる変化も、欠陥のあるポンプを指摘し得る。
【0018】
フローモニタのスイッチポイントが、媒体の圧力によって少ししか影響を受けず、時間にわたって変化もしないが、スイッチポイントは、燃料の密度及び粘度に依存している。従って、本発明によれば、有利なことに、圧送される媒体の密度及び/又は粘度は、密度センサ及び/又は粘度センサを介して求めることができ、基準操作値を求める時の媒体の密度及び/又は粘度と、較正ステップ時の媒体の密度及び/又は粘度の差は、アクチュエータを較正する時に考慮することができる。これにより、本発明による方法は、同じ設備で及び予め求められた同じ基準操作値(及び基準密度)でもって、異なった密度を有する入れ替わる媒体を圧送するために利用されるポンプを較正するために使用できる。フローモニタのスイッチポイントと監視される流体の粘度との間の関係は、通常は、厳密に直線的であり、簡単に、フローモニタのデータシートから読み取ることができる。この場合、フローモニタのスイッチポイントは、固定設定されていても、又は調整可能であってもよい。
【0019】
更に有利な実施形態では、較正ステップ時に、操作値差値に基づいて、ポンプの消耗を示す摩耗値を求めることができる。これは、ポンプの消耗状態の監視を容易化する。
【0020】
有利にことに、摩耗値に基づいて、ポンプ用の交換時点を求めることができる。摩耗値は、例えばポンプの目標寿命のパーセント値とすることができ、この値から、所定の試運転のプランニングデータと関係して、この試運転時のポンプ用の故障の確率を求めることができる。故障の確率が、所定の限界値を超えた時、ポンプは、試運転の開始前に交換することができる。
【0021】
本発明は、更に、冒頭で述べた形式の装置に関するが、この装置は、燃料ライン内にフローモニタを備え、調整ユニットは、アクチュエータの操作値を、ポンプの始動時にフローモニタのスイッチポイントまで実質的に連続的に変化させ、それぞれのスイッチポイントに対応する操作値を求めて記憶し、ポンプ及びフローモニタのために記憶された基準操作値と、較正時に求められた較正操作値の間の操作値差値を求め、ポンプのアクチュエータの操作値を操作値差値に基づいて較正するために、形成されている。このような装置により、本発明による方法は、実行に移すことができる。
【0022】
本発明の有利な実施形態では、フローモニタは、ポンプに統合することができる。これにより、最もコンパクトなポンプアッセンブリを得ることができる。
【0023】
有利なことに、フローモニタは、バイナリセンサとすることができる。バイナリセンサとしては、具象的な説明と関連して、正確に2つの状態を、即ち“流れがある”と“流れを検出しない”状態を測定する能力があるセンサを見なすことができる。これにより、コストにも有利に作用するこのセンサの単純さにもかかわらず、本発明による利点を得ることができる。
【0024】
別の実施形態によれば、フローモニタは、ポンプの吐出側に設けることができる。これは有利である。何故なら、それぞれの圧送媒体に依存した、フローモニタによって惹起される吸込側の流動抵抗は、負圧に基づいてキャビテーションを生じさせ得るからである。
【0025】
有利な実施形態では、装置は、圧送される媒体用の密度センサ及び/又は粘度センサを備えることができる。この実施形態は、特に、異なった密度もしくは粘度を有する異なった圧送媒体、例えば異なった燃料が圧送される必要がある設備のために有利である。
【0026】
本発明による装置は、ポンプの移送量を費用のかかる流量測定によってわざわざ求める必要なしに、ポンプの確実な較正を許容する。有利なことに、装置は、エンジン試験ベンチ用の燃料消費量測定装置とすることができ、ポンプは、燃料ポンプ、特に燃料消費量測定装置の測定回路内に設けられた測定回路ポンプとすることができる。これにより、試験ベンチにおいて、エンジンに供給される燃料量は、いつでも正確に調整もしくは点検することができる。これは、構造を簡素化し、試験ベンチ用のコスト及び整備コストを軽減し、設備のエラー率を軽減する。本発明による装置の別の利点は、その小さい寸法である。これは、特に試験ベンチの場合には重要である。何故なら、測定器機の最大寸法が、しばしば設定されているからである。従って、測定回路ポンプ用の費用のかかるセンサ技術の取付けは、低減されたスペース提供に基づいてしばしば全く可能でない。
【0027】
最後に、本発明は、ポンプ用の整備時点及び/又は交換時点を求めるための予め説明した本発明による装置の使用に関する。本発明によれば、これは、最適な整備戦略の把握を許容し、故障リスク及び/又は期待すべき故障のコストを計算するための複雑なアルゴリズムも、整備計画に関与させることができる。
【0028】
具象的な発明を、以下で、本発明の有利な構成を模範的、概略的及び限定せずに示す
図1〜3に関係させて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】エンジン試験ベンチ用の燃料消費量を測定するための本発明による装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明による装置を、簡素化した概略図で示し、ポンプ1は、圧送すべき媒体を、ポンプライン6内を媒体源7から媒体ドレイン8へ圧送する。具象的な説明と関連して、ポンプが配置され、ポンプが圧送すべき媒体を圧送するラインが“ポンプライン”と呼ばれる。ポンプラインは、例えば加熱システムの場合では慣例であるように、1つの循環回路内で案内されていてもよい。
【0031】
ポンプ1は、アクチュエータ2と結合しており、このアクチュエータ2は、ポンプ1の移送能力を決定する操作値を設定する。操作値は、例えば周波数とすることができ、アクチュエータ2は、周波数コンバータとすることができる。
【0032】
ポンプの上流に配置されるように、ポンプライン6内に密度センサ5が設けられており、密度センサ5の代わり又は密度センサに対して付加的に、粘度センサを設けることもできる。
【0033】
ポンプの下流に配置されるように、フローモニタ4が設けられている。このフローモニタ4は、燃料ライン内に配置されたパドルを有する従来のフロースイッチとすることができ、流れが特定の閾値を上回った時に(これは、予め述べたフローモニタのスイッチポイントを定義する)、パドルは、流れによって側方に押し付けられ、この場合、スイッチを起動する。他の原理に基づくフローモニタも使用することができ、しかしながら、図示した構想は、特に簡単で低コストの解決策であり、この解決策は、非常に高いスイッチポイント信頼性の利点を有する(即ち、フローモニタが切り替わる流速もしくは流量は、寿命にわたってほとんど変化しない)。
【0034】
調整ユニット3は、アクチュエータ2、フローモニタ4及び密度センサ5と接続されている。調整ユニット3は、密度センサ5(及び場合によっては粘度センサ)から、密度(もしくは粘度)を示す信号を受け取る。更に、調整ユニット3は、フローモニタ4から、ポンプライン6内の流れの存在又は不在を示す信号を受け取る。調整ユニット3は、アクチュエータ2の操作値を調整し得る。ユーザインターフェース11を介して、調整ユニット3のパラメータがユーザによって調整され得る。密度センサ5又は粘度センサが設備内に存在しない場合には、例えば、ユーザインターフェース11を介して、圧送すべき媒体の密度及び/又は粘度用のパラメータも入力することができる。
【0035】
ポンプを運転するための本発明による方法を、
図2に関係させて詳細に説明する。
図2は、ポンプの周波数コンバータの周波数f(ヘルツ)(x軸)に関する流量Q(リットル毎時)(y軸)がプロットされたグラフを示す。
【0036】
基準操作値f
Rを求めるために、新しいポンプの取付け後、周波数コンバータの周波数が、ポンプの停止状態から連続的に(又は実質的に連続的に)高められ、それ以降はフローモニタが流れを検出する周波数f
Rが求められ、このポイントが、スイッチポイントSP
Rと呼ばれている。このスイッチポイントに対応する流量が、Q
SPと呼ばれている。スイッチポイントSP
Rは、新しいポンプの特性曲線KL
R上に位置し、この特性曲線KL
Rは、大抵はポンプのデータシートから知られているか、予め求めることができる。ポンプの移送能力は、周波数の調整によって確定され、この周波数が、所望の移送能力に相当し、操作周波数と流量の間の関係は、特性曲線KL
Rによって定義されている。
【0037】
既知の特性曲線KL
Rにより、フローモニタのスイッチポイント流量の正確な値Q
SPを求めることは、それ自身簡単であるが、この値を正確に知っていることは、較正の別のステップのために必要でない。基準周波数を求めるためのステップが予め一旦実施された時に、基準周波数f
Rの値は、記憶され、後でポンプとフローモニタの同じ組合せのために使用されるに過ぎない。
【0038】
装置の各再使用前に、例えばエンジン試験ベンチにおいて各新たな試運転前に、ポンプは、基準周波数f
R用の記憶された値によって較正される。較正のため、ポンプは、基準周波数を求める時のように、周波数コンバータの周波数を連続的に(又は少なくとも実質的に連側的に)高めることによってランプ状に増加され、図示した例では基準周波数f
Rよりも高い較正周波数f
Kが求められる。(相応のスイッチポイントは、
図2ではSP
Kで示され、このスイッチポイントは、基準スイッチポイントSP
Rと同じ流量Q
SPに相当する)。
【0039】
記憶された基準周波数f
Rと、較正時に求められた較正周波数f
Kの間の周波数差Δf(ただし、Δf=f
R−f
K)は、ポンプの現在の特性曲線KL
Kが新しいポンプの特性曲線KL
Rとは異なることを検知させる。ポンプが当初の調整で更に使用される場合には、それぞれの操作周波数に依存した偏差ΔQが、この周波数における流量に対して得られ、この流量は、較正によって各試運転の前に補正されなければならない。
図2には、較正周波数f
Kにおける流量の偏差ΔQ
Kが記載されている。
【0040】
アクチュエータ、即ちポンプの周波数コンバータを較正するため、現在の特性曲線KL
Kは、制御周波数の適合によって当初の特性曲線KL
Rに向かって“移動”されなければならない。特性曲線は、質の点では異ならないので(
図2には、両特性曲線が、簡単のために直線として原点を経て図示されている)、特性曲線をその経過全体内で較正するために、較正周波数f
Kの測定だけで十分である。図示した例で、これは、
【数1】
の関係によって容易に理解することができる。
【0041】
基準特性曲線KL
Rからの較正されるそれぞれの特性曲線KL
Kの偏差は、試運転から試運転へと強く異なり得る。何故なら、この偏差は、圧送される燃料のそれぞれの圧力とポンプの消耗度によって影響を受けるからであり、スイッチポイント流量に対するフローモニタの値Q
SPは、少ししか変化しない。実際に、試験時に、非常に簡単で低コストのフローモニタによって驚くほど正確なポンプの較正を達成し得ることがわかった。
【0042】
フローモニタのスイッチポイントは時間にわたってほとんど変化せず、またこのスイッチポイントは媒体の圧力によって少ししか影響を受けないにもかかわらず、スイッチポイントは、いくらか強く燃料のそれぞれの密度及び粘度に依存している。これを較正時に考慮するため、本発明によれば、スイッチポイント流量の値Q
SPの変化を較正時に考慮し得るようにするために、密度センサ及び/又は粘度センサが使用され得る。
【0043】
本発明による方法は、直線的な特性曲線を有するポンプに適用可能であるだけでなく、その特性曲線が他の形態を備えるポンプに対しても使用することができる。例えば、特性曲線は、凸又は凹に湾曲していること及び/又は屈曲箇所もしくは不連続箇所を備えることができる。他の特性曲線のために本発明による方法を実施することは、平均的な当業者の能力の範囲内にある。
【0044】
図3は、エンジン試験ベンチ用の燃料消費量を測定するための装置の重要な要素を示す。燃料タンク7’から試験対象8’(もしくはテストエンジン)に通じる燃料ライン6’内に、入力回路ポンプ16、流量センサ12(例えばコリオリセンサ)、密度センサ5、測定回路ポンプ17及びフローモニタ4が配置されている。良好な応答特性に基づいて、フローモニタ4は、測定回路ポンプ17の吐出側に配置されている。
【0045】
図3に次視した装置は、2つの回路、即ち、燃料タンク7’と燃料ライン6’内に設けられた流量センサ12との間の入力回路9と、流量センサ12と試験対象8の間の測定回路10と、に区分することができる。入力回路9内で、入力回路ポンプ16と流量センサ12の間でタンクリターンライン14が分岐し、このタンクリターンラインは、燃料タンク7’に戻され、このタンクリターンライン内に、リターンライン圧力調整器15が設けられている。測定回路10内で、試験対象8’から始まるようにエンジンリターンライン13が設けられ、このエンジンリターンラインは、流量センサ12と密度センサ5の間で燃料ライン6’に合流する。
【0046】
図示した概略図で、密度センサ5は、測定回路ポンプ17とフローモニタ4の直前に配置されている。しかしながら、密度センサ5は、他の任意の箇所に、例えばタンク7の領域又はエンジン8の近くに設けることができる。特に燃料の三つの実質的な変化が期待できない場合、又は、密度が、異なるように求められる又はユーザインターフェースを介して入力され得る場合には、簡単な実施形態のために、密度センサを完全に省略することもできる。付加的又は道度センサ5の代わりに、粘度センサを設けることもできる。
【0047】
通常使用される燃料の粘度及び密度は、一般に既知であるか、予め実験により求めることができる。燃料種類を知っており(例えばディーゼル又はガソリン)、全ての流体のためにスイッチポイントを実験により一旦決定した場合は、密度を介して、流体に帰結すること及び正確なスイッチポイントを求めることができる。最小の密度を有する流体及び最大の密度を有する流体しか知らない場合には、動粘度の直線的な依存に基づいて、密度から、非常に良好な評価をすることができ、そこに、スイッチポイントが位置するようになる。この評価が、少なくとも自動車産業で慣用の液体に対して測定精度内にあることが期待できる。当業者は、本発明をそれぞれの燃料特性及び要求される測定精度に適合させる状況にある。
【0048】
入力回路16は、燃料タンク7’からの燃料を圧送し、入力回路ポンプ16と測定回路ポンプ17の間の領域に、リターンライン圧力調整器15によって制限された供給圧を発生させる。試験対象8’によって燃料が消費されず、従って、燃料が流量センサ12を経て流れない時には、入力回路ポンプ16によって移送される燃料は、タンクリターンライン14を介してタンク7’へ再び戻るように圧送される。測定回路10内では更にまた、測定回路ポンプ17によって圧送される燃料が、試験対象8’に連続流で供給される。試験対象8’によって消費されない燃料は、エンジンリターンライン13を介して再び燃料ライン6’に戻される。
【0049】
入力回路9及び測定回路10から成るこれら両循環回路システムの利点は、入力回路ポンプ16と測定回路ポンプ17の移送能力が圧程度の公差範囲内で変化することができる点にある。何故なら、入力回路ポンプ16及び測定回路ポンプ17によって圧送される量が正確に認識されていない場合でも、試験対象8’によって実際に消費される燃料量は、非常に正確な流量センサ12を介して非常に正確に求めることができるからである。入力回路ポンプ16及び測定回路ポンプ17が、それぞれ必要な圧力上昇を提供し得ることしか必要ない。
【0050】
試験対象8’に応じて、測定回路ポンプ17のために、非常に高い圧力を供給しなければならないことも必要となり得るが、この負荷に基づいて、故障は、一般に測定回路ポンプ17において生じ、入力回路ポンプ16において生じない。入力回路ポンプ16及び測定回路ポンプ17の移送量の変動が、ある程度問題がない場合でも、あまりにも大きい移送量の低下は、試験対象8’が、燃料の必要量を受け取らないこと、もしくは、検査対象8’に提供された燃料の圧力が非常に低いこと、を生じさせ得る。この場合、試運転の結果は、役に立たない。
【0051】
出願人によって実施された試験は、測定回路ポンプ17のポンプ能力が移送される媒体に依存して、ポンプの目標寿命の1/3の経過後には既に、200l/hだけ本来調整された値(例えば800l/h)と異なり得ることを明らかにした。これは、25%の偏差に相当する。本発明による装置により、この偏差は、非常に僅かな費用で、10%未満の値へ、寿命全体にわたって制限され得る。付加的に、各較正ステップが、ポンプの実際の消耗の確実な評価を可能にする。
【0052】
本発明による方法は、前記措置と同様の
図3による装置によって実施され、測定回路ポンプ17の移送能力のランプ状の増加時に、燃料は、測定回路10内で1つの循環回路内を圧送される。
【0053】
測定回路ポンプ17のポンプ能力を正確に求めるために、確かに、第2の流量センサを測定回路の領域に、即ち例えば測定回路ポンプ17の後に取り付けることも可能であるが、このために一般に使用されるコリオリセンサは、非常に高価であり、これらセンサが、試験対象8’に供給される燃料の圧力に影響を与えるとの欠点を有する。従って、実際には、第2の流量測定器は、有効なオプションではない。
【0054】
本発明による方法を入力回路ポンプ16に対しても有利に適用し得るために、入力回路9は、図視した実施形態では、専用のフローモニタ4’を備え、入力回路9は、遮断弁18によって測定回路10から分離され得るので、入力回9内の燃料全体が、リターンライン圧力調整器15及びタンクリターンライン14を介して1つの循環回路内をタンクに戻されるように圧送される。その場合、較正は、前記方法と同様に、入力回路ポンプ9に対しても実施され得る(制御ユニット、即ち特にアクチュエータと、調整ユニット−この調整ユニットを介して、入力回路ポンプが調整される−は、明瞭さから図示されていないが、どのように調整が実際に行なわれるべきかは、当業者に知られている)。
【0055】
ポンプとしては、具象的な発明と関連して任意のポンプが使用され得るが、それらのポンプ能力は、使用されるアクチュエータによってそれぞれの適用に対して十分正確に調整され得る。このようなポンプの例には、ギヤポンプ、ローターリベーンポンプ、ロータリーピストンポンプ、ロータリーローブポンプ等が含まれる。基本的に、本発明による方法は、移送量を可変調整することができる各ポンプに有利に適用され得る。ポンプが直線的な移送量−回転数−特性曲線経過を備える場合が有利である。しかしながら、これは、強制的な前提条件ではない。
【0056】
本発明は、エンジン試験ベンチによる燃料測定と関連した使用のために使用可能であるだけでなく、ポンプの他の種類のためにも使用され得る。例えば、本発明は、加熱循環回路内でのポンプの移送能力の監視及び再調整のためにも有利に使用され得る。
【符号の説明】
【0057】
1 ポンプ
2 アクチュエータ
2’ 周波数コンバータ
3 調整ユニット
4,4’ フローモニタ
5 密度センサ
6 ポンプライン
6’ 燃料ライン
7 媒体源
7’ 燃料タンク
8 媒体ドレイン
8’ 試験対象
9 入力回路
10 測定回路
11 ユーザインターフェース
12 流量センサ
13 エンジンリターンライン
14 タンクリターンライン
15 リターンライン圧力調整器
16 入力回路ポンプ
17 測定回路ポンプ
18 遮断弁