(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記搬送体および前記歯状体は、それぞれ、有端チェーンおよびスプロケットであるか、または、フレキシブルラックおよびピニオンであることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の熱処理炉。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、この発明に係る熱処理炉の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1から
図8を参照しながら、第1実施形態に係る熱処理炉1を詳細に説明する。
図1は、熱処理炉1において、第1蓋および第2蓋が閉位置Aにある状態を示す断面図である。
図2は、熱処理炉1において、第1蓋13および第2蓋14が退避位置Eにある状態を示す断面図である。
図3は、熱処理炉1において、第1蓋13を搬送する蓋搬送機構20を説明する図である。
図4は、第1フック部6aと第1ハンガー部15との間での係脱を説明する平面図である。
図5は、第1フック部6aと第1ハンガー部15との間での係脱を説明する側面図である。
図6は、第1フック部6aと第1ハンガー部15との間での係脱を説明する断面図である。
図7は、蓋案内部21における第1支持突起17の動きを説明する模式図である。
図8は、第2フック部8aと第2ハンガー部16との間での係脱を説明する断面図である。
【0012】
なお、図面において、第1蓋13などが、例えば、13(A)、13(B)、13(E)として表記されている場合があるが、当該表記は、それぞれ、閉位置にある第1蓋13、開位置にある第1蓋13、退避位置Eにある第1蓋13を意味している。すなわち、Aは閉位置、Bは開位置、Cは係合位置、Dは離脱位置、Eは退避位置を示している。
【0013】
〔熱処理炉の全体構成〕
図1および
図2に示すように、熱処理炉1は、ケーシング3と、ケーシング3内に配置される熱処理室5とを備える。熱処理室5の中には、ワークWが収容される。熱処理炉1は、例えば、ワークWに対して、減圧下で加熱処理を行い、冷却ガスを流して冷却処理を行う、いわゆる単室型真空熱処理炉である。例えば、ケーシング3は円筒形状をした真空容器であり、熱処理室5は直方体形状をした単室の断熱チャンバである。
【0014】
熱処理室5において互いに対向する2つの側面には、開口部がそれぞれ設けられている。例えば、熱処理室5の上面には、第1開口部(例えば上開口部)11が形成され、熱処理室5の下面には、第2開口部(例えば下開口部)12が形成されている。第1開口部11および第2開口部12は、熱処理室5内への冷却ガス導入のために、または、熱処理室5からの冷却ガス排出のために使用される。第1開口部11は第1蓋(例えば上蓋)13によって押圧状態で閉止され、第2開口部12は第2蓋(例えば下蓋)14によって押圧状態で閉止される。第1蓋13は、蓋開閉機構10により、第1開口部11を閉止する閉位置Aまたは第1開口部11を開放する開位置Bに移動する。第1蓋13を開閉させる蓋開閉機構10は、上下方向に延びる第1ロッド6と、第1ロッド6を上下方向に駆動する第1シリンダ7とを備える。第2蓋14は、蓋開閉機構10により、第2開口部12を閉止する閉位置Aまたは第2開口部12を開放する開位置Bに移動する。第2蓋14を開閉させる蓋開閉機構10は、上下方向に延びる第2ロッド8と、第2ロッド8を上下方向に駆動する第2シリンダ9とを備える。
【0015】
第1ロッド6は、第1開口部11の側に位置する端部(すなわち下端部)において、第1フック部6aを有する。第1フック部6aは、円板形状の鍔であり、第1ハンガー部15と係合することにより、第1蓋13を吊り下げて支持する機能を有する。
【0016】
第2ロッド8は、第2開口部12の側に位置する端部(すなわち上端部)において、第2フック部8aを有する。第2フック部8aは、第2ロッド8の長手方向に離間した2つのフックによって構成されている。第2開口部12に近い方(すなわち上方)のフックは、円板形状の鍔であり、第2蓋14を引き下げる機能を有する。第2開口部12から遠い方(すなわち下方)のフックは、円板形状の鍔であり、第2ハンガー部16と係合するとともに第2蓋14を支持する機能を有する。
【0017】
熱処理炉1は、加熱処理を行うための装置として、ワークWを加熱する加熱ヒータ(図示せず)と、熱処理炉1内を減圧する真空ポンプ(図示せず)とを有する。
【0018】
熱処理炉1は、冷却処理を行うための装置として、熱処理炉1内に冷却ガス(例えば窒素やアルゴンのような不活性ガス)を供給するガス供給装置(図示せず)と、加温された冷却ガスを冷却するガス冷却装置(図示せず)を備える。ガス冷却装置は、送風機と熱交換器と風向切替板とを有する。送風機は、熱処理炉1内の冷却ガスを強制循環させる。熱交換器は、ワークWの冷却によって加温された冷却ガスを冷却する。風向切替板は、熱処理炉1内の適所を閉じるとともに適所を開くことによって、熱処理炉1内での冷却ガスの循環方向を変化させる。したがって、熱処理炉1は、第1開口部11及び第2開口部12を開放した状態で、熱処理炉1内の冷却ガスを強制循環させることにより、ワークWを冷却処理する。
【0019】
ケーシング3と熱処理室5との間には、隙間部4が形成されている。熱処理室5の上部から上コーナー部にかけて形成される上部の隙間部4には、第1蓋13を周方向に案内し且つ搬送するための蓋案内部21が設けられている。熱処理室5の下部から下コーナー部にかけて形成される下部の隙間部4には、第2蓋14を周方向に案内し且つ搬送するための蓋案内部21が設けられている。そして、蓋案内部21は、第1蓋13および第2蓋14を周方向に案内し且つ搬送するときに、ケーシング3の内周面や熱処理室5のコーナー部などに接触しないように構成されている。
【0020】
〔蓋および蓋案内部の構成〕
図3から
図7を参照しながら、第1蓋13および蓋案内部21を説明する。
【0021】
図3から
図6に示すように、第1蓋13は、段差を持った板形状をしており、第1取付面13aと第1閉止面13bと2つの第1支持側面13cと第1開側側面13dと第1退避側側面13eとを有する。第1閉止面13bによって、第1開口部11が閉止される。第1取付面13aは、第1閉止面13bの反対側に位置して、第1取付面13aには第1ハンガー部15が取り付けられる。各第1支持側面13cには、第1支持突起17が取り付けられる。第1支持突起17は、蓋案内部21による第1蓋13の支持および案内に使用される。第1開側側面13dは、第1蓋13の開位置Bの側に位置して、第1退避側側面13eは、第1蓋13の退避位置Eの側に位置する。
【0022】
第1ハンガー部15は、搬送方向に延びて、平面視でU字形状をしている。第1ハンガー部15は、フック案内凹部15aとフック出入口15bとを有する。フック案内凹部15aは、搬送方向に切り欠かれて、第1ロッド6の第1フック部6aが開位置Bと離脱位置Dとの間で移動するときに係合する案内溝である。フック出入口15bは、退避位置Eの反対側に形成されて、第1ロッド6の第1フック部6aの出入りを可能にするフック係合開口である。第1フック部6aは、フック係合開口として働くフック出入口15bを通じて、第1ハンガー部15に対して係脱可能に係合するように構成されている。
【0023】
第1支持突起17がフック出入口15bよりも退避位置Eの側に位置する。離脱位置Dでは、第1ハンガー部15と係合していた
第1フック部6aが、第1ハンガー部15から脱離し始める。なお、開位置Bでの第1蓋13は、第1ロッド6の第1フック部6aによって吊り下げられて支持される。第1蓋13が安定的に支持されるように、開位置Bでの第1フック部6aは、第1蓋13の略重心に位置している。
【0024】
第1蓋13は、蓋案内部21に対面する第1支持側面13cのそれぞれにおいて、外方に突出する第1支持突起17を有する。一側および他側の第1支持突起17は、それぞれ、円柱形状の2つの突起部を備える。2つの突起部は、閉位置Aでの第1ロッド6の第1フック部6aを挟んで退避方向T1および開方向T2に離間して位置している。2つの突起部は、対面する蓋案内部21によって支持され且つ案内される。詳細には、一側および他側の第1支持突起17は、閉位置Aおよび開位置Bにあるとき、蓋案内部21によって支持されない。一側および他側の第1支持突起17は、係合位置Cにあるとき、蓋案内部21の突起案内凹部22と係合する。したがって、係合位置Cでは、第1支持突起17が、蓋案内部21の突起案内凹部22と係合している。一側および他側の第1支持突起17は、離脱位置Dおよび退避位置Eにあるとき、蓋案内部21によって支持される。
【0025】
また、閉位置A、開位置Bおよび係合位置Cにおいて、
第1フック部6aが第1ハンガー部15と係合するとともに、離脱位置Dにおいて、
第1フック部6aが第1ハンガー部15から脱離するように、フック案内凹部15aが寸法構成されている。
【0026】
蓋搬送機構20は、蓋案内部21と蓋搬送部30とを備える。蓋案内部21は、隙間部4において第1蓋13を案内するために周方向に延びる案内部材である。第1蓋13に対応する蓋案内部21は、第1支持突起17に対面するように、2つ設けられている。なお、周方向に延びる蓋案内部21は、蓋案内部21の曲率が一定である円弧形状、楕円のように蓋案内部21の曲率が変化する湾曲形状、および、蓋案内部21が直線状に斜めに延びる形状を含んでいる。
【0027】
蓋案内部21は、突起案内凹部22と突起開口23と搬送案内部24を有する。突起案内凹部22は、第1支持突起17を支持し且つ案内する溝状の凹部である。突起開口23は、突起案内凹部22での退避位置Eの反対側であり且つ第1開口部11の側に位置する部分を切り欠くことによって、開位置Bでの第1支持突起17の出入りを可能にするように構成されている。突起開口23を通じて、突起案内凹部22への第1支持突起17の出入りが可能になるので、蓋搬送機構20と蓋搬送部30との間で第1蓋13を容易に受け渡しできる。搬送案内部24は、搬送体31が収容されるとともに退避方向T1または開方向T2に搬送される搬送路である。
【0028】
蓋搬送部30は、第1蓋13を蓋案内部21に沿って開位置Bと退避位置Eとの間で搬送する搬送手段である。蓋搬送部30は、搬送体31と歯状体35と駆動モータ37とを備える。搬送体31は、蓋案内部21の搬送案内部24に収容されて、周方向に延びる蓋案内部21に沿って移動できるように屈曲可能に構成されている。搬送体31は、退避方向T1または開方向T2に搬送されるとき、蓋案内部21の搬送案内部24に沿って自在に変形するので、歯状体35からの搬送駆動力を搬送体31の端部に伝達できる。搬送体31は、例えば、チェーンまたはフレキシブルラックである。歯状体35は、搬送体31に噛み合うように構成されている。歯状体35は、例えば、チェーンに対してはスプロケットであり、フレキシブルラックに対してはピニオンである。駆動モータ37は、歯状体35を回転駆動する電動モータである。駆動モータ37で歯状体35を回転駆動すると、第1蓋13は、搬送体31によって、蓋案内部21に沿って退避方向T1または開方向T2に搬送される。
【0029】
搬送体31での開位置Bの側の端部には、突起係合部32が設けられている。突起係合部32が、第1蓋13の第1支持突起17に対して係脱可能に係合するように構成されている。すなわち、第1支持突起17に対する突起係合部32が、逆U字形状をしており、第1開口部11の側に突起係合開口32aを有する。突起係合開口32aは、第1支持突起17が例えば上下方向に出し入れ可能に構成されている。
【0030】
突起係合部32が第1支持突起17と係合している状態で、駆動モータ37で歯状体35を回転駆動すると、第1蓋13は、搬送体31によって、蓋案内部21に沿って退避方向T1または開方向T2に搬送される。蓋案内部21が、搬送体31の収容および搬送と、第1支持突起17の支持および案内とを兼ねることによって、第1蓋13の搬送に係る部材を削減できる。
【0031】
第1蓋13が搬送体31によって退避方向T1に搬送されるとき、係合位置Cにおいて、第1支持突起17が、蓋案内部21の突起案内凹部22と係合する。離脱位置Dにおいて、第1フック部6aが第1ハンガー部15から離脱する。第1フック部6aが第1ハンガー部15に対して係脱することによって、蓋搬送機構20と蓋搬送部30との間で第1蓋13を容易に受け渡しできる。そして、離脱位置Dにある第1蓋13が、退避位置Eまで搬送される。
【0032】
逆に、退避位置Eにある第1蓋13が、開方向T2に離脱位置Dまで搬送される。第1蓋13が離脱位置Dよりも開方向T2に搬送されると、第1フック部6aと第1ハンガー部15との係合が開始し、そのあと、当該係合が開位置Bまで継続する。第1蓋13が係合位置Cよりも開方向T2に搬送されると、第1支持突起17が突起案内凹部22と部分的に係合した状態になり、開位置Bでは、第1支持突起17が突起案内凹部22に対して非係合の状態になる。
【0033】
したがって、
図7に示すように、第1蓋13の第1支持突起17は、蓋開閉機構10によって閉位置Aから開位置Bに移動したあと、蓋搬送機構20によって係合位置C,離脱位置D、および、退避位置Eの順で移動する。
【0034】
第2蓋14は、第1蓋13の反対側に設けられていて第1蓋13と大略同じ構成を有する。
図8を参照しながら、第2蓋14および蓋案内部21を説明する。
【0035】
第2蓋14は、段差を持った板形状をしており、第2取付面14aと第2閉止面14bと2つの第2支持側面14cとを有する。第2閉止面14bによって、第2開口部12が閉止される。第2取付面14aは、第2閉止面14bの反対側に位置して、第2取付面14aには第2ハンガー部16が取り付けられる。各第2支持側面14cには、第2支持突起18が取り付けられる。第2支持突起18は、蓋案内部21による第2蓋14の支持および案内に使用される。
【0036】
第2ハンガー部16は、搬送方向に延びて、平面視でU字形状をしている。第2ハンガー部16は、フック案内凹部16aとフック出入口16bとを有する。フック案内凹部16aは、搬送方向に切り欠かれて、第2ロッド8の第2フック部8aが開位置Bと離脱位置Dとの間で移動するときに係合する案内溝である。フック出入口16bは、退避位置Eの反対側に形成されて、第2ロッド8の第2フック部8aの出入りを可能にするフック係合開口である。第2フック部8aは、フック係合開口として働くフック出入口16bを通じて、第2ハンガー部16に対して係脱可能に係合するように構成されている。
【0037】
第2支持突起18がフック出入口16bよりも退避位置Eの側に位置する。離脱位置Dでは、第2ハンガー部16と係合していた
第2フック部8aが、第2ハンガー部16からの脱離を開始する。なお、開位置Bでの第2蓋14は、第1ロッド6の第2フック部8aによって支持される。第2蓋14が安定的に支持されるように、開位置Bでの第2フック部8aは、第2蓋14の略重心に位置している。
【0038】
第2蓋14は、蓋案内部21に対面する支持側面14cのそれぞれにおいて、外方に突出する第2支持突起18を有する。一側および他側の第2支持突起18は、それぞれ、円柱形状の2つの突起部を備える。2つの突起部は、閉位置Aでの第2ロッド8の第2フック部8aを挟んで退避方向T1および開方向T2に離間して配置されている。2つの突起部は、対面する蓋案内部21によって支持され且つ案内される。詳細には、一側および他側の第2支持突起18は、閉位置Aおよび開位置Bにあるとき、蓋案内部21によって支持されない。一側および他側の第2支持突起18は、係合位置Cにあるとき、蓋案内部21の突起案内凹部22と係合する。一側および他側の第2支持突起18は、離脱位置Dと退避位置Eとの間にあるとき、蓋案内部21の突起案内凹部22によって支持され且つ案内される。
【0039】
また、閉位置A、開位置Bおよび係合位置Cにおいて、
第2フック部8aが第2ハンガー部16と係合するとともに、離脱位置Dにおいて、
第2フック部8aが第2ハンガー部16から脱離するように、フック案内凹部16aが寸法構成されている。
【0040】
蓋搬送機構20は、蓋案内部21と蓋搬送部30とを備える。蓋案内部21は、隙間部4において第2蓋14を支持し且つ案内するために周方向に延びる案内部材である。第2蓋14に対応する蓋案内部21は、第2支持突起18に対面するように、2つ設けられている。
【0041】
第2蓋14用の蓋案内部21は、第1蓋13用の蓋案内部21と同様に、突起案内凹部22と突起開口23とを有する。突起案内凹部22は、第2支持突起18を支持し且つ案内する溝状の凹部である。突起開口23は、突起案内凹部22での第2開口部12の側に位置する部分を切り欠くことによって、開位置Bでの第2支持突起18を受け入れ可能に構成された開口である。突起開口23を通じて、突起案内凹部22への第2支持突起18の出入りが可能になるので、蓋搬送機構20と蓋搬送部30との間で第2蓋14を容易に受け渡しできる。
【0042】
第2蓋14用の蓋搬送部30は、第1蓋13用の蓋搬送部30と同様に、第2蓋14を蓋案内部21に沿って開位置Bと退避位置Eとの間で搬送するために、搬送体31と歯状体35と駆動モータ37とを備える。
【0043】
搬送体31での開位置Bの側の端部には、突起係合部32が設けられている。突起係合部32が、第2蓋14の第2支持突起18に対して係脱可能に係合するように構成されている。すなわち、第2支持突起18に対する突起係合部32が、U字形状をしており、第2開口部12の側に突起係合開口を有する。突起係合開口は、第2支持突起18が上下方向に出し入れ可能に構成されている。
【0044】
突起係合部32が第2支持突起18と係合している状態で、駆動モータ37で歯状体35を回転駆動すると、第2蓋14は、搬送体31によって、蓋案内部21に沿って退避方向T1または開方向T2に搬送される。蓋案内部21が、搬送体31の収容および搬送と、第2支持突起18の支持および案内とを兼ねることによって、第2蓋14の搬送に係る部材を削減できる。
【0045】
第2蓋14が搬送体31によって退避方向T1に搬送されるとき、係合位置Cにおいて、第2支持突起18が、蓋案内部21の突起案内凹部22と係合する。離脱位置Dにおいて、第2フック部8aが第2ハンガー部16から離脱する。第2フック部8aが第2ハンガー部16に対して係脱することによって、蓋搬送機構20と蓋搬送部30との間で第2蓋14を容易に受け渡しできる。そして、離脱位置Dにある第2蓋14が、退避位置Eまで搬送される。
【0046】
逆に、退避位置Eにある第2蓋14が、開方向T2に離脱位置Dまで搬送される。第2蓋14が離脱位置Dよりも開方向T2に搬送されると、第2フック部8aと第2ハンガー部16との係合が開始し、そのあと、当該係合が開位置Bまで継続する。第2蓋14が係合位置Cよりも開方向T2に搬送されると、第2支持突起18が突起案内凹部22と部分的に係合した状態になり、開位置Bでは、第2支持突起18が突起案内凹部22に対して非係合の状態になる。
【0047】
第1蓋13と同様に、第2蓋14の第2支持突起18は、蓋開閉機構10によって閉位置Aから開位置Bに移動したあと、蓋搬送機構20によって係合位置C,離脱位置D、および、退避位置Eの順で移動する。
【0048】
上記第1実施形態をまとめると次のようになる。
【0049】
第1蓋13および第2蓋14は、蓋開閉機構10によって閉位置Aから開位置Bに移動したあと、蓋搬送機構20によって係合位置C,離脱位置D、および、退避位置Eの順で移動する。第1蓋13および第2蓋14が退避位置Eに位置するとき、第1開口部11を正面視したときに第1蓋13が第1開口部11と重なることが防止されているとともに、第2開口部12を正面視したときに第2蓋14が第2開口部12と重なることが防止されている。したがって、退避位置Eにある第1蓋13が、ケーシング3と熱処理室5との間に形成される右上方の隙間部4に位置するので、ケーシングサイズの増大が防止されるとともに、退避位置Eにある第1蓋13が第1開口部11と重なっていないので、第1開口部11の周辺での流路抵抗を低減して十分な流量を確保できる。同様に、退避位置Eにある第2蓋14が、ケーシング3と熱処理室5との間に形成される左下方の隙間部4に位置するので、ケーシングサイズの増大が防止されるとともに、退避位置Eにある第2蓋14が第2開口部12と重なっていないので、第2開口部12の周辺での流路抵抗を低減して十分な流量を確保できる。
【0050】
〔第2実施形態〕
図9を参照しながら、第2実施形態に係る熱処理炉1を詳細に説明する。
図9は、第2実施形態に係る熱処理炉1において、第1蓋13を搬送する蓋搬送機構20を説明する図である。
図9に示すように、第2実施形態に係る熱処理炉1は、第3フック部6gおよび第1ハンガー部15の構成を除いて、上記第1実施形態の熱処理炉1と同じ構成をしている。
【0051】
第1ロッド6は、第1開口部11の側に位置する端部(すなわち下端部)において、第3フック部6gを有する。第3フック部6gは、搬送方向に延びて、側面視でU字形状をしている。第3フック部6gは、第1ロッド6の長手方向に離間した2つのフックによって構成されている。第1開口部11から遠い方(すなわち上方)のフックは、搬送方向に延びている。第1開口部11に近い方(すなわち下方)のフックは、搬送方向に延びており、第1ハンガー部15と係合するとともに第1蓋13を支持する。第1開口部11に近い方のフックと第1開口部11から遠い方のフックとは、湾曲部を介して接続されている。湾曲部の反対側、すなわち退避位置Eの反対側には、ハンガー出入口6hが形成されている。ハンガー出入口6hは、第1ハンガー部15のハンガー梁部15hの出入りを可能にするハンガー係合開口である。第3フック部6gが、ハンガー係合開口として働くハンガー出入口6hを通じて、第1ハンガー部15に対して係脱可能に係合するように構成されている。
【0052】
第1ハンガー部15は、2つのハンガー柱部15gと1つのハンガー梁部15hとを有する。2つのハンガー柱部15gは、搬送方向の直交方向に離間して配置されている。ハンガー梁部15hは、円柱形状をしており、2つのハンガー柱部15gをつなぐように搬送方向の直交方向に延びている。
【0053】
開位置Bでの第1蓋13は、第1ロッド6の第3フック部6gによって吊り下げられて支持される。第1蓋13が安定的に支持されるように、ハンガー梁部15hが第1蓋13の略重心に位置するとともに、開位置Bでの第3フック部6gを支える第1ロッド6が、第1蓋13の略重心に位置している。
【0054】
突起係合部32が第1支持突起17と係合している状態で、駆動モータ37で歯状体35を回転駆動すると、第1蓋13は、搬送体31によって、蓋案内部21に沿って退避方向T1または開方向T2に搬送される。
【0055】
第1蓋13が退避方向T1に搬送されるとき、係合位置Cにおいて、第1支持突起17が蓋案内部21の突起案内凹部22と係合する。離脱位置Dにおいて、第3フック部6gが第1ハンガー部15から離脱する。第1フック部6aがハンガー部15に対して係脱することによって、蓋搬送機構20と蓋搬送部30との間で第1蓋13を容易に受け渡しできる。そして、離脱位置Dにある第1蓋13が、退避位置Eまで搬送される。第1蓋13が退避位置Eに位置するとき、第1開口部11を正面視したときに第1蓋13が第1開口部11と重なることが防止されている。したがって、退避位置Eにある第1蓋13が、ケーシング3と熱処理室5との間に形成される隙間部4に位置するので、ケーシングサイズの増大が防止されるとともに、退避位置Eにある第1蓋13が第1開口部11と重なっていないので、第1開口部11の周辺での流路抵抗を低減して十分な流量を確保できる。
【0056】
逆に、第1蓋13が開方向T2に搬送されるとき、第1蓋13が退避位置Eから離脱位置Dまで搬送される。第1蓋13が離脱位置Dよりも開方向T2に搬送されると、第3フック部6gと第1ハンガー部15との係合が開始し、そのあと、当該係合が開位置Bまで継続する。第1蓋13が係合位置Cよりも開方向T2に搬送されると、第1支持突起17が突起案内凹部22と部分的に係合した状態になり、開位置Bでは、第1支持突起17が突起案内凹部22に対して非係合になる。
【0057】
第1ロッド6の第3フック部6gと第1蓋13の第1ハンガー部15との上述した構成は、第2ロッド8の第4フック部(図示しない)と第2蓋14の第2ハンガー部16との構成にも適用される。第1蓋13および第2蓋14の開閉および搬送に係る部材を共通化することによって、部材管理の容易化および低コスト化が可能になる。
【0058】
〔第3実施形態〕
図10を参照しながら、第3実施形態に係る熱処理炉1を説明する。
図10は、第3実施形態に係る熱処理炉において、第1蓋13を搬送する蓋搬送機構20を説明する図である。
図10に示すように、第3実施形態に係る熱処理炉1は、搬送体31が上記の蓋案内部21とは別体に設けられた搬送体案内部41において搬送されることを除いて、上記実施形態の熱処理炉1と同一の構成をしている。
【0059】
第1蓋13に対応する蓋案内部21は、第1支持突起17に対面するように、2つ設けられている。蓋案内部21のそれぞれは、断面がU字形状をしており、突起案内凹部22によって第1支持突起17だけが支持され且つ案内されるように構成されている。
【0060】
熱処理炉1は、蓋案内部21とは別体に設けられた搬送体案内部41をさらに備える。搬送体案内部41は、2つの蓋案内部21の略中間であり且つ蓋案内部21の上方または下方に配置される。搬送体案内部41は、蓋案内部21と同様に周方向に延びて、連絡体60および搬送体31を案内する案内部材である。搬送体案内部41は、連絡体案内凹部42と搬送案内部44とを有する。連絡体案内凹部42は、連絡体60を案内する溝状の凹部である。搬送体案内部41の内部には、搬送案内部44が形成されている。搬送案内部44は、搬送体31が収容されるとともに退避方向T1または開方向T2に搬送される搬送路である。
【0061】
搬送体31における開位置B側の端部には、連絡体60が設けられている。連絡体60は、接続部61と連絡脚部62と連絡係合部63とを有する。接続部61は、搬送体31における開位置B側の端部に取り付けられており、搬送体31とともに搬送案内部44内を移動する。連絡脚部62は、上下方向に延びており、接続部61と連絡係合部63とをつないでいる。連絡係合部63は、側面視でU字形状をして、上下方向に延びている。連絡係合部63の下方は開口している。
【0062】
第1蓋13の退避位置Eの側に位置する第1退避側側面13eには、2つの係合脚部51が、搬送方向の直交方向に離間して取り付けられている。2つの係合脚部51をつなぐように係合アーム部52が搬送方向の直交方向に延びている。開位置Bでは、連絡係合部63が係合アーム部52と係合している。すなわち、連絡係合部63の連絡凹部64に対して係合アーム部52が収容されている。蓋開閉機構10によって第1蓋13が下動して閉位置Aになると、連絡係合部63が係合アーム部52に対して非係合になる。したがって、連絡体60の連絡係合部63が、係合アーム部52に対して係脱可能に係合している。
【0063】
駆動モータ37を作動させると、歯状体35が回転駆動されて搬送体31が移動する。連絡体60の連絡係合部63が、係合アーム部52と係合した状態で、搬送体31が移動すると、搬送体31に取り付けられた連絡体60および係合アーム部52との係合によって、第1蓋13が蓋案内部21に沿って退避方向T1または開方向T2に搬送される。
【0064】
第1蓋13が退避方向T1に搬送されるとき、係合位置Cにおいて、第1支持突起17が蓋案内部21の突起案内凹部22と係合する。離脱位置Dにおいて、第1フック部6aが第1ハンガー部15から離脱する。第1フック部6aが第1ハンガー部15に対して係脱することによって、蓋搬送機構20と蓋搬送部30との間で第1蓋13を容易に受け渡しできる。そして、離脱位置Dにある第1蓋13が、退避位置Eまで搬送される。第1蓋13が退避位置Eに位置するとき、第1開口部11を正面視したときに第1蓋13が第1開口部11と重なることが防止されている。したがって、退避位置Eにある第1蓋13が、ケーシング3と熱処理室5との間に形成される隙間部4に位置するので、ケーシングサイズの増大が防止されるとともに、退避位置Eにある第1蓋13が第1開口部11と重なっていないので、第1開口部11の周辺での流路抵抗を低減して十分な流量を確保できる。
【0065】
逆に、第1蓋13が開方向T2に搬送されるとき、第1蓋13が退避位置Eから離脱位置Dまで搬送される。第1蓋13が離脱位置Dよりも開方向T2に搬送されると、第1フック部6aと第1ハンガー部15との係合が開始し、そのあと、当該係合が開位置Bまで継続する。第1蓋13が係合位置Cよりも開方向T2に搬送されると、第1支持突起17が突起案内凹部22と部分的に係合した状態になり、開位置Bでは、第1支持突起17が突起案内凹部22に対して非係合になる。
【0066】
上述した連絡係合部63および係合アーム部52の係合構造と、蓋案内部21の構造とは、第1蓋13に関するが、第2蓋14にも適用される。搬送体31の搬送に係る搬送体案内部41と、第1蓋13および第2蓋14の案内に係る蓋案内部21とを別体にすることによって、連絡係合部63のサイズが制約されにくくなるので、係合対象である係合アーム部52の位置ばらつきの影響を受けにくくなる。
【0067】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0068】
熱処理炉1として、減圧下での加熱処理及び冷却ガスによる冷却処理を行う真空熱処理炉を例示したが、この発明は、熱処理室5がケーシング3内に配置される他の熱処理炉にも適用できる。また、この発明は、例えば、中空筒状のケーシング3内に中空筒状の熱処理室5が2重筒状に設けられて、熱処理室5の円周側面において第1開口部11および第2開口部12が対向して配置された熱処理炉にも適用できる。
【0069】
第1開口部11および第2開口部12は、上記実施形態のように上下方向(垂直方向)に対向して配置された構成だけでなく、左右方向(水平方向)に対向して配置された構成、あるいは、水平面に対して傾斜した状態で対向して配置された構成にすることができる。
【0070】
図7に示した蓋案内部21では、突起開口23に隣接するガイド壁のコーナー端部が、直角形状で示されているが、突起開口23に隣接するガイド壁のコーナー端部が、切り欠かれた形状にすることができる。ガイド壁のコーナー端部での切り欠き形状は、例えば、テーパー状または湾曲形状にすることができる。当該構成によれば、第1支持突起17および第2支持突起18を突起案内凹部22に導きやすくなる。
【0071】
第1フック部6aの上縁部と、第1ハンガー部15でのフック出入口15b側の下端部との少なくとも一方が、切り欠かれた形状にすることができる。第1フック部6aと第1ハンガー部15とが係合し始める部分での切り欠き形状は、例えば、テーパー状または湾曲形状にすることができる。第2フック部8aと第2ハンガー部16とにおいても、同様の切り欠き形状にすることができる。当該構成によれば、第1フック部6aを第1ハンガー部15に導くこと、および、第2フック部8aを第2ハンガー部16に導くことが容易になる。
【0072】
この発明および実施形態をまとめると、次のようになる。
【0073】
この発明の一態様に係る熱処理炉は、
ケーシング3と、
前記ケーシング3内に配置される熱処理室5と、
前記熱処理室5において互いに対向する位置に設けられる2つの開口部11,12と、
前記開口部11,12を閉止するための蓋13,14とを備える熱処理炉1において、
前記熱処理炉1は、
前記開口部11,12を閉止する閉位置Aにまたは前記開口部11,12を開放する開位置Bに前記蓋13,14を移動させる蓋開閉機構10と、
前記開位置Bに、または、前記開口部11,12を正面視したときに前記蓋13,14が前記開口部11,12と重ならない退避位置Eに、前記蓋13,14を搬送する蓋搬送機構20とを備え、
前記蓋搬送機構20が、前記蓋13,14を案内する蓋案内部21と、前記蓋13,14を前記開位置Bと前記退避位置Eとの間で搬送する蓋搬送部30とを有し、
前記蓋案内部21が、前記ケーシング3と前記熱処理室5との間に形成される隙間部4において、周方向に沿って延在することを特徴とする。
【0074】
上記構成によれば、退避位置Eにある蓋13,14が、ケーシング3と熱処理室5との間に形成される隙間部4に位置することによって、ケーシングサイズの増大が防止される。それとともに、退避位置Eにある蓋13,14が開口部11,12と重ならないことによって、開口部11,12の周辺での流路抵抗を低減して十分な流量を確保できる。
【0075】
また、一実施形態の熱処理炉では、
前記蓋13,14が、前記開口部11,12を閉止する閉止面13b,14bの反対側に位置する取付面13a,14aにおいて、前記蓋13,14を支持するためのハンガー部15,16を有し、
前記蓋開閉機構10が、前記開口部11,12の側に位置する端部において、前記ハンガー部15,16と係合するフック部6a,8aを有し、
前記ハンガー部15,16が、前記退避位置Eとは反対側において、前記フック部6a,8aの出入りを可能にするフック係合開口15b,16bを有し、
前記フック部6a,8aが、前記フック係合開口15b,16bを通じて、前記ハンガー部15,16に対して係脱可能に係合する。
【0076】
上記実施形態によれば、フック部6a,8aがハンガー部15,16に対して係脱することによって、蓋搬送機構20と蓋搬送部30との間で蓋13,14を容易に受け渡しできる。
【0077】
また、一実施形態の熱処理炉では、
前記蓋13,14が、前記開口部11,12を閉止する閉止面13b,14bの反対側に位置する取付面13a,14aにおいて、前記蓋13,14を支持するためのハンガー部15,16を有し、
前記蓋開閉機構10が、前記開口部11,12の側に位置する端部において、前記ハンガー部15,16と係合するフック部6gを有し、
前記フック部6a,8aが、前記退避位置Eとは反対側において、前記ハンガー部15,16の出入りを可能にするハンガー係合開口6hを有し、
前記フック部6gが、前記ハンガー係合開口6hを通じて、前記ハンガー部15,16に対して係脱可能に係合する。
【0078】
上記実施形態によれば、フック部6a,8aがハンガー部15,16に対して係脱することによって、蓋搬送機構20と蓋搬送部30との間で蓋13,14を容易に受け渡しできる。
【0079】
また、一実施形態の熱処理炉では、
前記蓋13,14が、前記蓋案内部21に対面する支持側面13c,14cにおいて、前記蓋案内部21によって支持される支持突起17,18を有し、
前記蓋案内部21が、
前記支持突起17,18を案内する突起案内凹部22と、
前記突起案内凹部22での前記退避位置Eの反対側であり且つ前記開口部11,12の側に位置する部分を切り欠くことによって、前記開位置Bでの前記支持突起17,18の出入りを可能にする突起開口23とを有する。
【0080】
上記実施形態によれば、突起開口23を通じて、突起案内凹部22への支持突起17,18の出入りが可能になるので、蓋搬送機構20と蓋搬送部30との間で蓋13,14を容易に受け渡しできる。
【0081】
また、一実施形態の熱処理炉では、
前記蓋搬送機構20の前記蓋搬送部30は、前記蓋案内部21に収容される屈曲可能な搬送体31と、前記搬送体31に噛み合う歯状体35と、前記歯状体35を回転駆動する駆動モータ37とを備え、
前記搬送体31における前記開位置B側の端部には、突起係合部32が設けられており、
前記突起係合部32が、前記蓋13,14の前記支持突起17,18に対して係脱可能に係合する。
【0082】
上記実施形態によれば、蓋案内部21が搬送体31の収容および搬送と支持突起17,18の支持および案内とを兼ねることによって、蓋13,14の搬送に係る部材を削減できる。
【0083】
また、一実施形態の熱処理炉では、
前記蓋案内部21とは別体の搬送体案内部41をさらに備え、
前記蓋搬送機構20の前記蓋搬送部30は、前記搬送体案内部41に収容される屈曲可能な搬送体31と、前記搬送体31に噛み合う歯状体35と、前記歯状体35を回転駆動する駆動モータ37とを備え、
前記搬送体31における前記開位置B側の端部には、連絡体60が設けられており、
前記蓋13,14における前記退避位置Eの側に位置する退避側側面13eには、係合アーム部52が設けられており、
前記連絡体60の連絡係合部63が、前記係合アーム部52に対して係脱可能に係合する。
【0084】
上記実施形態によれば、連絡係合部63のサイズが制約されにくくなるので、係合対象である係合アーム部52の位置ばらつきの影響を受けにくくなる。
【0085】
また、一実施形態の熱処理炉では、
前記搬送体31および前記歯状体35は、それぞれ、有端チェーンおよびスプロケットであるか、または、フレキシブルラックおよびピニオンである。
【0086】
上記実施形態によれば、搬送体31が搬送案内部24,44に沿って自在に変形することによって、歯状体35からの搬送駆動力を搬送体31の端部に伝達できるとともに、蓋13,14を周方向に沿って退避方向T1および開方向T2に搬送できる。