(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の水道池状構造物の維持管理装置、水道池状構造物の維持管理方法及びコンピュータプログラムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、水道池状構造物の維持管理装置を構成する手段(「・・手段」)は、「・・構成部」若しくは「・・部」と言い換えても良い。
【0025】
[実施形態1]
実施形態1の水道池状構造物101の維持管理装置1について説明する。
まず、「水道池状構造物」101とは、原水あるいは浄水を貯蔵できる池状に構成されている構造物をいう。水道用池状構造物は、主としてコンクリート等で造られた配水池、浄水池等をいう。維持管理装置1により池内塗装の要否を判断する対象構造物は、既設の構造物であり、新設の構造物を含まない。対象構造物の構造形式は、RC(鉄筋コンクリート、Reinnforced Concrete)造と、PC(プレストレストコンクリート、Prestressed concrete)造である。主として上部に蓋のある有蓋池状構造物である。評価対象箇所は、池内面(主に、液相部、気相部)である。評価対象となる池内面の状態は、主に、打ち放し(型枠にコンクリートを流し込んで造られた状態、塗装なし)、モルタル防水、樹脂塗装(塗装あり、健全状態、消失状態)である。
【0026】
1.水道池状構造物の維持管理装置の概要
図1は実施形態1に係る後述する水道池状構造物の維持管理装置の概略説明図である。
図1に示すように、水道池状構造物の維持管理装置1は、対象箇所を特定する手段10と、特定された対象箇所をカテゴライズするカテゴライズ手段20と、カテゴライズに沿って一次判定をする一次判定手段(気相部耐荷性判定手段21、液相部耐荷性判定手段22、液相部使用性判定手段23)と、一次判定手段の判定結果から塗装必要性の有無を判断する第1の塗装必要性判断手段30と、を有する。
なお、「液相部使用性判定手段」23は「使用性判定手段」23としてもよい。実施形態では、使用性については液相部の使用性を判定するため、実施形態における内容を分かりやすくするため「液相部」の語を入れた。本来的には「使用性判定手段」23である。
対象箇所を特定する手段10は、各種の判定をして塗装必要性(劣化防止対策の必要性の程度)を判断する対象とする箇所(以後、単に、「対象箇所」という)を特定する。
カテゴライズ手段20は、対象箇所(既設)を内面状態(塗装あり、塗装なし、モルタル防水)でカテゴライズする。必要に応じて更に新設/既設のカテゴライズをしてもよい。
【0027】
一次判定手段は、カテゴライズに沿って、気相部耐荷性判定手段21、液相部耐荷性判定手段22、(液相部)使用性判定手段23により判定する。
第1の塗装必要性判断手段30は、気相部耐荷性判定手段21、液相部耐荷性判定手段22、又は(液相部)使用性判定手段23の判定結果を受け、塗装の必要性あり/なし(あるいは塗装の必要性の高/低等の塗装の必要性の程度)を判断する。
新設の場合は塗装の必要性なしあるいは判断対象外とする。
更に、対象箇所の劣化グレードを判定するグレード判定手段40と、グレード判定手段40のグレード判定結果を受け、対象箇所の塗装必要性(塗装する/塗装しない、あるいは塗装の必要性高/低)を判断する第2の塗装必要性判断手段41とを備え、二次判定できるようにしてもよい。以下、これらについてより詳しく説明する。
【0028】
「対象箇所の特定」
既に述べたので説明を省略する。
【0029】
「カテゴライズ」
カテゴライズ手段20は、対象箇所を、新設/既設、内面状態(塗装あり/モルタル防水/塗装なし)、気相部/液相部にカテゴライズする。
【0030】
「新設/既設(カテゴライズ)」
「新設/既設」とは、コンクリートが打設されたばかりなのか、コンクリート打設後年月が経っているかのカテゴライズ(分類)である。例えば、コンクリート打設後5年以上経過していれば既設、それ未満であれば新設とする。このカテゴライズ基準は、既設/新設、コンクリート打設後3年以上/未満、コンクリート打設後4年以上/未満、コンクリート打設後6年以上/未満のように変更してもよい。
また、対象箇所が全て既設であれば、敢えて「既設」とカテゴライズする必要はない。
後述の
図7等に記載される「コンクリート打設時期」とは、一般的に、新設/既設の基準時期より古い時期を指す。既設を前提とした対象箇所でのコンクリート打設時期を判定するためである。
【0031】
「内面状態、気相部/液相部(カテゴライズ)」
内面状態、気相部/液相部について
図2、
図3(a)〜(c)を使って説明する。
維持管理の対象である水道池状構造物101を説明する
図2に示される水道池状構造物101は、RC造りやPC造りで建造された半恒久的な構造物である。ここではRC造りで図示している。
【0032】
図2に示すように、水道池状構造物101は地面102の上または下にコンクリート103で池が建造され、その中に水104を貯える。水道池状構造物101の多くは、コンクリート103で造られている。
RC造りは、コンクリート103中に鉄筋105を埋め込んだ(主要部に埋め込んだ)造り(構造)をいう。圧縮力に強いコンクリートと、引張力に強い鉄筋を組み合わせることで、コンクリートの弱点である引っ張ったときの強度等を補強し、鉄筋のない場合に比べ、水圧等に対する耐久性等を向上させている。
PC造りは、コンクリート103中に予めストレス(応力、緊張)を付与したコンクリート103中にPC鋼材(PC鋼線、PC鋼棒、PC鋼より線等)を埋め込んだ造り(構造)をいう。PC鋼材により、コンクリートに予めストレスを与え、コンクリートに水圧等による引っ張る力を軽減等する。
配水池、浄水池等の水道池状構造物101は主として上面に蓋が設けられた有蓋池状構造物となっている。なお、上面に蓋がなくてもよい。
【0033】
カテゴライズ手段20は、内面状態、気相部/液相部にカテゴライズする。
気相部/液相部のカテゴライズから説明すると、水道池状構造物101の内面(水を貯える方の面)106で、ほぼ常時水に浸かっている部分(箇所)を液相部107といい、ほぼ常時空気に接している部分(箇所)を気相部108という。カテゴライズ手段20は、対象箇所が気相部108であるか液相部107であるかをカテゴライズする。気相部108であるか液相部107であるかにより劣化のメカニズムが異なるからである。
気相部108と液相部107との境界部は液相部107にカテゴライズすると、劣化防止対策の必要性がある方(必要性が高い方)に傾いた判断が可能となるため、塗装必要性を安全側に立ってより厳しく判断できる。
気相部108と液相部107との境界部のように水位変動の大きい箇所については、ひび割れからの漏水やカルシウム溶出によるすり減りの評価を適切に行うためには液相部としての評価をすることが好ましい。
【0034】
図3は水道池状構造物101の内面状態のカテゴライズ説明図である。
内面に塗料がない場合(塗装なしの場合、打放しの場合)の水道池状構造物101は、
図3(a)に図示されるように、コンクリート103が打設された状態であり、内面106には塗装等がされていない。
「塗装なし(面)」には、過去に塗装があったが現在は殆ど消失している面も含む。但し、消失が限定的で、チョーキングや部分的な浮き・剥がれ等が見られる程度の場合は含まない。塗装がある程度劣化しても、コンクリート自体の防食効果は高いためである。
内面に塗料がある場合(塗装ありの場合)の水道池状構造物101は、
図3(b)に図示されるように、内面106には樹脂の塗料109aによる塗装がされている。
【0035】
ここで、「塗装」とは、日本水道協会規格(JWWA)に制定されている塗装あるいはそれに準じる塗装をいう。即ち、水道用コンクリート水槽内面エポキシ樹脂塗料塗装方法(JWWA K 143)のエポキシ樹脂による塗装、水道用コンクリート水槽内面FRP(Fiberglass Reinforced Plasticsの略、繊維強化プラスチック)ライニング材料による塗装、水道用コンクリート水槽内面水性ポリエチレン樹脂塗料による塗装やこれに準じる塗装である。塗料は主に上記の塗料をいう。なお、エポキシ樹脂塗料による塗装が最も多く用いられている。
【0036】
内面がモルタル防水されている場合(モルタル防水の場合)の水道池状構造物101は、
図3(c)に図示されるように、内面106にはモルタル109bによる防水加工がされている。「モルタル防水」とはモルタルによる防水である。「モルタル」とは、砂(細骨材)とセメントと水とを練り混ぜて作られた建築材料である。モルタル109bはコンクリート103と違い、砂利(粗骨材)を殆ど含有しない。
モルタル防水(面)を、塗装あり、塗装なし、とは別にカテゴライズしたのは、打ち放し(面)とはモルタルの劣化の進行が異なり、また塗装あり(面)とも異なるからである。
上記のようなカテゴライズが、その後の判定や判断の基本となる。
また、既にカテゴライズがされている場合には、カテゴライズ手段20によるカテゴライズは不要である。
【0037】
「一次判定・判断」
維持管理装置1は、更に、各種の判定手段(21,22,23、
図1参照)を有し、カテゴライズに沿って判定が行われる。既設の場合、内面状態が、塗装あり/モルタル防水/塗装なしのいずれであっても、気相部と液相部とで異なる判定が行われる(一次判定)。
気相部108の判定は、気相部耐荷性判定手段21で行われる。(「耐荷性」とは「安全性」とも言い換えられる。)
液相部107の判定は、液相部耐荷性判定手段22と(液相部)使用性判定手段23とで行われる。(「使用性」とは、想定される作用に対して、水道池状構造物101の機能が適切に確保される状態をいう。端的に言うと要求性能である。)
判定結果を受け、第1の塗装必要性判断手段30が塗装の必要性あり、なしを判断する。ここで、「塗装の必要性あり」/「塗装の必要性なし」は、「塗装の必要性が高い」/「塗装の必要性が低い」、「塗装の必要性あり」/「塗装の必要性低い」、「塗装の必要性が高い」/「塗装の必要性なし」と言い換えることができる。
なお、新設の場合は判断対象外とされる。
【0038】
「二次判定・判断」
一次判断で塗装の必要性ありとの判断結果が出ても、資金、人員等で塗装を直ちに行うことが困難な場合がある。その場合、二次判定・判断を行うことも可能である。
まず、グレード判定手段40で劣化のグレード(程度)を判定する。
そして、グレードの判定結果に基づき、第2の塗装必要性判断手段41が、塗装する/塗装しない、の判断をする。
【0039】
「カテゴライズの処理フロー」
図4を用い、カテゴライズ手段20によるカテゴライズの処理フローを例示する。
まず、対象箇所が既設か、新設かでカテゴライズする(ステップS11)。既設だけ判定・判断対象とする場合は、既設であることを前提としているため、このカテゴライズは不要である。
対象箇所が既設の場合、カテゴライズ手段20は、対象箇所を内面状態でカテゴライズする(S12)。
【0040】
内面が塗装されていない場合(塗装なしの場合)、カテゴライズ手段20は、対象箇所が気相部108であるか、それとも液相部107であるかでカテゴライズする(S13)。
内面がモルタル防水されている場合(モルタル防水)、カテゴライズ手段20は、対象箇所が気相部108であるか、それとも液相部107であるかでカテゴライズする(S14)。
内面が塗装されている場合(塗装あり)、カテゴライズ手段20は、対象箇所が気相部108であるか、それとも液相部107であるかでカテゴライズする(S15)。
【0041】
以上のステップを経て、カテゴライズ手段20は、既設の対象箇所を、内面状態、気相部/液相部の観点からカテゴライズする(S16)。
なお、場合によっては、前述したように、更に、新設/既設でカテゴライズしてもよい。
【0042】
「ハードウエア構成」
図5は水道池状構造物101の維持管理装置1のハードウエア構成図(機能構成を例示するブロック図)である。上述した
図1の各手段や、
図4の処理等についてハードウエアを動作・処理により説明する。
【0043】
維持管理装置1は、各種処理、判断、演算等を行うCPU(Central Prosessing Unit、演算処理装置)1001を有する。CPU1001は、CPU1001に対する命令(処理)を記述したコンピュータプログラム(以後、単に「プログラム」と称することもある)を読み込んで実行する。CPU1001は、バス1010を介して、RAM1002、ROM1003、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ及びUSBメモリー等の外部記憶装置1004、プリンター1005及びモニター1006等の出力装置、キーボード1007及びマウス1008等の入力装置、及びインターフェースコネクター、ネットワークインターフェースカード等のインターフェース1009を備える。インターフェース1009は、維持管理装置1を、LAN、インターネット等のネットワーク1020に接続する。なお、維持管理装置1は、ネットワーク1020を介して、水道池状構造物101を監視する監視カメラや、水分若しくは湿度等を検知するセンサー1030等の監視装置(監視部材)と接続されてもよい。
【0044】
維持管理装置1は、CPU1001、記憶装置(RAM1002、ROM1003、外部記憶装置1004)、入力装置(キーボード1007、マウス1008)、出力装置(プリンター1005、モニター1006)等を備えた一種のコンピュータである。
維持管理装置1は、水道池状構造物の専用の維持管理機器(コンピュータ)でもよいが、汎用のコンピュータでもよい。つまり、汎用のコンピュータに特定のプログラムをインストールして、これを実行させるようにしてもよい。
【0045】
また、スマートフォン、iPad(アップル社の登録商標)、タブレット等のモバイル端末を使用することもできる。この場合、これらのモバイル端末には、CPU1000、RAM1002、ROM1003、モニター1006、マウス1008(又はキーボード1007)、インターフェース1009が備わっており、必要に応じてプリンター1005、外部記憶装置1004(更にはキーボード1007あるいはマウス1008)を増設する。これらのモバイル端末でも上記コンピュータと同様の働きをすることが可能である。
モバイル端末を使用することにより、維持管理装置1を建物の中に設置する代わりに、水道池状構造物のある現場に持って行き、その場で劣化状況を判定・判断して、その場にいるオーナー等の関係者に報告、打合せ、対応協議等をするというような使い方もできる。
【0046】
次に、
図5の維持管理装置1による処理について、より具体的に説明する。
水道池状構造物101の維持管理用プログラム(ソフトウエア)は、予めROM1003や外部記憶装置1004に格納されている。あるいは、キーボード1007あるいはマウス1008でソフトウエアのインストールを指令することにより、ネットワーク1020を介してソフトウエアがROM1003にインストールされる。あるいは外部記憶装置1004を介してソフトウエアを格納しているCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)等から、当該ソフトウエアがROM1003にインストールされる。
【0047】
オペレーターがキーボード1007あるいはマウス1008を通じて、水道池状構造物101の維持管理処理の開始を命令すると、CPU1001は、ROM1003に格納されたプログラムに従って処理を開始する。
【0048】
「対象箇所の特定」
まず、オペレーターがキーボード1007あるいはマウス1008で判定等の対象とする箇所を指令すると、CPU1001は対象箇所を特定する手段10として対象箇所を認識し特定する(対象箇所を特定する手段10)。特定された対象箇所の情報はRAM1002に格納される。あるいはCPU1001内のレジスタ(図示せず)等に格納される。
【0049】
図1の「対象箇所を特定する手段」10とは、キーボード1007等から入力された指令等のデータに基づき、プログラムを読み込み、水道池状構造物101の維持管理装置1の対象箇所を特定する機能を実行するCPU1001をいう。
【0050】
対象箇所を特定する手段10で対象箇所が特定されると、カテゴライズ手段20で対象箇所のカテゴライズが行われる。
【0051】
既設の対象箇所について、内面106の状態が、塗装なしか(
図3(a)参照)、内面106が塗料109aの塗装面か(
図3(b)参照)、内面106がモルタル109bで防水処理されているか(
図3(c)参照)の情報は、キーボード1007あるいはマウス1008等の入力装置を介して入力する、あるいはそれらの入力装置から入力してRAM1002、ROM1003等に格納する。あるいはそのような情報をUSB等の外部記憶装置1004に記憶させ、バス1010に接続し、CPU1001がアクセスできるようにしても良い。
【0052】
対象箇所を更に新設/既設でカテゴライズする場合、基準とするコンクリート打設後の経過期間(あるいはコンクリート打設時期)の情報はプログラム内に記載されているか、ROM1003や外部記憶装置1004に記憶されている、あるいはキーボード1007等で入力する、あるいはキーボード1007から入力してRAM1002に格納する。前述したように対象箇所が既設を前提とする場合、新設/既設のカテゴライズは不要である。
【0053】
対象箇所が気相部108か、あるいは液相部107かという情報も同様にキーボード1007あるいはマウス1008等の入力装置を介して入力する、あるいはそれらの入力装置から入力してRAM1002、ROM1003等に格納する。あるいはそのような情報をUSB等の外部記憶装置1004に記憶させ、バス1010に接続し、CPU1001がアクセスできるようにしても良い。
【0054】
インストールされたプログラムの実行によりカテゴライズの処理が開始されると、CPU1001はキーボード1007で入力された(あるいはRAM1002等に格納されている)対象箇所のコンクリート打設時期(コンクリート打設後の経過期間)と、プログラムに記載されている(あるいはROM1003等に格納されている)基準となるコンクリート打設時期(コンクリート打設後の経過期間)を比較し新設/既設にカテゴライズする(S11)。
【0055】
既設の場合、プログラムに従ってCPU1001は内面状態に関するカテゴライズを行う(S12)。キーボード1007で入力された内面状態の情報(あるいは対象箇所についてROM1003等に格納されている内面状態の情報)に基づいて、CPU1001は、対象箇所を、内面状態が塗装あり、塗装なし、モルタル防水ありにカテゴライズし、更に液相部107または気相部108にカテゴライズする。
【0056】
以上の説明から明らかなように「カテゴライズ手段」20とは、キーボード1007等から入力等された(新設/既設)内面状態、気相部/液相部のデータ、あるいは監視装置1030からの映像等のデータ等に基づき、プログラムを読み込み、水道池状構造物101の維持管理装置1を対象箇所についてカテゴライズする機能を実行するCPU1001をいう。
【0057】
以下の処理フローで、
図5のハードウエアとの関係は上述したと同様であり、
図5のハードウエアを絡めた説明は極力省略する。
【0058】
「カテゴライズ/判定の着目内容/判定項目の関係」
図6は、維持管理装置1で行う対象箇所のカテゴライズ、判定の着目内容及び判定項目の関係を示す図である。
【0059】
維持管理装置1は、対象箇所を、次のようにカテゴライズする。
まず、新設か既設かにカテゴライズする。なお、上述したように、例えば、既設だけ判定等の対象とする場合は敢えてカテゴライズする必要はない。
既設の場合、内面状態が塗装なしか、モルタル防水か、塗装ありか、にカテゴライズする。更に、水との関係で気相部/液相部にカテゴライズする。
【0060】
内面状態が塗装なしか、モルタル防水か、塗装ありのいずれの場合も、水との関係が気相部と液相部かで判定の着目内容を異ならせる。
気相部108については、気相部耐荷性判定手段で気相部耐荷性判定が行われる。
液相部107については、液相部耐荷性判定手段による液相部耐荷性判定と、使用性判定手段による使用性判定が行われる。
【0061】
気相部の判定の着目内容は気相部耐荷性である。気相部耐荷性の判定項目は、中性化判定手段による中性化判定と、アルカリシリカ反応判定手段によるアルカリシリカ反応判定である。
「アルカリシリカ反応」とは、コンクリート内部において、骨材から流出したシリカと、セメント成分に由来するアルカリ金属との化学反応をいう。アルカリシリカ反応により生じたアルカリシリカゲルは、コンクリート内部に浸入してきた水を吸収して膨張し、コンクリートにヒビを生じさせる。
塗装をすることにより、アルカリシリカ反応による躯体(構造物本体)のひび割れ(以後、単に「アルカリシリカ反応によるひび割れ」あるいは「ひび割れ」と称することもある。)からの鉄筋への水の供給を阻止し、鉄筋腐食による耐荷性の低下を抑制できる。
「中性化」とは、「炭酸化」とも称し、コンクリート中の水酸化カルシウムが大気中の二酸化炭素と反応して、または水中にコンクリート中の水酸化カルシウムが溶出して、コンクリートのpHが低下する現象をいう。これにより、鉄筋コンクリート中の鉄筋が腐食して耐荷性が低下する。
耐荷性では主として部材厚(コンクリート壁厚q)の減少や鉄筋腐食を念頭に入れた。
塗装をすることにより、水中への水酸化カルシウム溶出を阻止し、pHの低下を抑制することで鉄筋腐食による耐荷性の低下を抑制できる。
【0062】
液相部の判定の着目内容は、液相部耐荷性判定手段による液相部耐荷性と、使用性判定手段による使用性である。
液相部耐荷性の判定項目は、上述したアルカリシリカ反応判定手段によるアルカリシリカ反応と、カルシウム溶出判定手段によるカルシウム溶出である。
「カルシウム溶出」とは、コンクリートから水の作用によって水酸化カルシウムが溶出する現象をいう。カルシウムの溶出により、コンクリートが脆弱化し、かぶりコンクリートの強度低下により鉄筋との付着力が低下する。
塗装をすることにより、カルシウムの溶出を阻止し、コンクリートの脆弱化を防ぎ、部材断面積減少(コンクリート壁の断面積減少)による耐荷性の低下を抑制できる。
使用性の判定項目は、初期欠陥判定手段による初期欠陥(漏水)と、すり減り判定手段によるすり減りである。
初期欠陥の判定項目は漏水である。
初期欠陥としては温度応力や乾燥収縮のひび割れ、漏水等があるが、これまでの経験から、初期欠陥におけるひび割れからの中性化の著しい進行は確認されず、鉄筋腐食についても局部的なものにとどまっている場合が多い。また、初期欠陥に起因するひび割れについては補修が前提である。そこで、ひび割れについては耐荷性にはあまり影響しないものとし、判定項目を漏水として、使用性の観点から塗装の必要性を判断する。
従って、判定項目の「初期欠陥」とは「漏水」である。
「すり減り」とは、コンクリート表面が少しずつなくなりコンクリートの厚さが減少することをいう。すり減りは、すり減り、擦り減り、又は磨り減りとも記載される。水道池状構造物におけるコンクリート表面のすり減り現象の主な原因はコンクリート中のカルシウムイオンの水中への溶出である。
【0063】
2.カテゴリー別の一次判定・判断
以下、既設について、内面状態(塗装なし/モルタル防水/塗装あり)、水との関係(気相部/液相部)でカテゴライズされた対象箇所のそれぞれについて詳しく説明する。
即ち、既設で、塗装なし・気相部、塗装なし・液相部、モルタル防水・気相部、モルタル防水・液相部、塗装あり・気相部、塗装あり・液相部の対象箇所のそれぞれについて説明する。
【0064】
(1)既設・塗装なし・気相部
A.気相部耐荷性
対象箇所が塗装なし・気相部の場合、判定の着目内容は気相部耐荷性で、判定項目は中性化とアルカリシリカ反応である。
【0065】
気相部耐荷性判定を行う気相部耐荷性判定手段21は、中性化判定手段と、アルカリシリカ反応判定手段とを有する。
【0066】
ここで、「気相部耐荷性判定手段」21とは、プログラムを読み込み、気相部耐荷性耐荷性を判定する機能を実行するCPU1001をいう。
「中性化判定手段」とは、キーボード1007等から入力される対象箇所の中性化に関する情報に基づき、プログラムを読み込み、中性化を判定する機能を実行するCPU1001をいう。
「アルカリシリカ反応判定手段」とは、キーボード1007等から入力される等した対象箇所のアルカリシリカ反応に関する情報に基づき、プログラムを読み込み、アルカリシリカ反応を判定する機能を実行するCPU1001をいう。
【0067】
図6に示されるように、気相部108と液相部107とでは判定の着目内容や判定項目が異なっている。これは気相部108と液相部107とで劣化機構が異なるためである。
気相部108ではひび割れからの漏水やカルシウム溶出に伴うすり減りは生じない、または殆ど生じないことから判定の着目内容や判定項目から除外した。
一方、液相部107においては中性化(炭酸化)の進行が緩慢なことから、内在塩分の量に関係なく判定項目の対象外とした。また、外来塩分の影響も殆どないため、判定対象外とした。しかし、特に、ひび割れからの漏水やカルシウム溶出によるすり減りが生じやすいことから判定の対象とした。
(a)中性化
図7は、対象箇所が、既設・塗装なし・気相部の場合の、中性化に関する判定処理フローを例示する図である。
図7を用い、中性化判定手段が行う中性化判定について説明する。
【0068】
インストールされたプログラムにより、中性化(高塩分)に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたコンクリート打設時期(1987年)と、ROM1003等に格納されている基準とするコンクリート打設時期とを比較する(S21)。
【0069】
コンクリート打設時期が1987年以降であれば、CPU1001は、中性化の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S22)。
打設時期が1986年以前であれば、CPU1001は、コンクリートの内在塩分量に関する処理(S23)に進む。
コンクリート打設時期を1987年以降か、それより前かで分けたのは、コンクリート中の塩分(塩化物)総量規制が行われた前後で分けたためである。コンクリート打設時期については他の処理フローでも同様であり、他の処理フローでの同様の説明を省略する。
なお、打設時期を1986年以前/1987年以降で区分けせず、別の時期で区分けしてもよい。
【0070】
内在塩分量に関する処理(S23)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたコンクリート中の内在塩分量と、ROM1003等に格納されている基準とする内在塩分量(1.15kg/m
3)とを比較する。この内在塩分量は鉄筋からの基準距離におけるコンクリートの内在塩分量である。
塩分を問題とするのは、外来塩分や内在塩分(中性化フロントに伴う塩分濃縮を含む)により鉄筋の不動態被膜が破壊され、鉄筋が腐食し耐荷性を低下させるからである。
塗装をすることにより、内在塩分のコンクリートへの侵入を阻止し、鉄筋腐食による耐荷性の低下を抑制できる。
【0071】
内在塩分量が1.15kg/m
3未満であれば、CPU1001は、中性化の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S22)。
内在塩分量が1.15kg/m
3以上、または不明な場合には、CPU1001は、コンクリートの中性化残り寸法に関する処理(S24)に進む。
なお、内在塩分量を1.15kg/m
3以外の数値としてもよいが、コンクリート中の水(W)とセメント(C)の重量比を百分率で表した数値:W/Cが55%の場合には内在塩分量の基準を1.15kg/m
3とするとよい。それ以外の場合には、例えば、コンクリート標準示方書に準拠し設定するとよい。
また、浄水中では塩素イオン濃度はコンクリート内部の塩素イオン濃度を向上させるような濃度ではないが、何等かの原因でコンクリート中の塩化物イオン濃度が濃い場合には比較的早期に鉄筋腐食を生じさせる危険性がある。
【0072】
中性化残り(現状)に関する処理(S24)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された現状のコンクリートの中性化残り寸法と、ROM1003等に格納されている基準とする中性化残り寸法(15mm)とを比較する。
「中性化残り」とは、中性化せずに残っているコンクリートを意味する。中性化残り寸法とは、鉄筋から中性化されたコンクリート箇所までの距離(鉄筋から測った中性化されていないコンクリート箇所までの距離・深さ)である。
中性化残り寸法が15mm以上であれば、CPU1001は、供用期間における中性化残りの処理(S25)に進む。
中性化残り寸法が15mm未満であれば、CPU1001は、中性化の観点で塗装の必要性が有ると判定する(S26)。
【0073】
中性化残り(供用期間)に関する処理(S25)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された供用期間におけるコンクリートの中性化残り寸法と、ROM1003等に格納されている基準とする供用期間における中性化残り寸法(15mm)とを比較する。
中性化残り寸法(供用期間)が15mm以上であれば、CPU1001は、中性化の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S22)。
「中性化残り寸法(供用期間)」とは、現状のまま使用した場合、例えば、少なくとも後5年間の供用期間(使用期間)を想定している場合、5年後の中性化残り寸法がどの位の寸法となるか予測した寸法をいう。
中性化残り寸法(供用期間)が15mm未満、または不明であれば、CPU1001は、中性化の観点で塗装の必要性が有ると判定する(S26)。
なお、上記のステップS24やS25で、基準とする中性化残り寸法は15mm以外の数値としてもよい。
【0074】
上記のステップS24、S25の代わりに、内在塩分量が基準より多く(塩化物イオンが基準より高く)、かつ中性化深さが鉄筋の腐食限界を超過している場合に中性化の観点で塗装の必要性が有ると判定するようにすることも可能である。
特に有蓋構造の水道池状構造物101の内部において、液相部は水に接しており、気相部は一般に湿度が高いことから中性化速度は小さい。また、例え中性化(深さ)が鉄筋に到達したとしても水や酸素の供給により鉄筋が腐食し、水道池状構造物101の性能低下に至るまでには長期間を要するためである。
【0075】
ステップS22の「塗装の必要性・低」/ステップS26の「塗装の必要性・有」は、「塗装の必要性・なし」/「塗装の必要性・有」、「塗装の必要性・低」/「塗装の必要性・高」、「塗装の必要性・なし」/「塗装の必要性・高」と言い換えることができる。
図8、
図9等のフローチャート(処理フロー)でも同様である。例えば、「塗装必要性・有」は「塗装必要性・高」と読み替えることができる。以下、同様であり同じ説明は省略する。
(b)アルカリシリカ反応
図8は、対象箇所が、既設・塗装なし・気相部の場合の、アルカリシリカ反応に関する判定処理フローを例示する図である。
図8を用い、アルカリシリカ反応判定手段が行う処理について説明する。
【0076】
インストールされたプログラムにより、アルカリシリカ反応に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたコンクリート打設時期(1987年)と、ROM1003等に格納されている基準とするコンクリート打設時期とを比較する(S31)。
【0077】
コンクリート打設時期が1987年以降であれば、CPU1001は、アルカリシリカ反応の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S32)。
打設時期が1986年以前であれば、CPU1001は、アルカリシリカ反応性のある骨材の使用に関する処理(S33)に進む。
なお、打設時期を1986年以前/1987年以降で区分けせず、別の時期で区分けしてもよい。
【0078】
アルカリシリカ反応性のある骨材の使用に関する処理(S33)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された骨材の情報と、ROM1003等に格納されている各種骨材についてのアルカリシリカ反応性の有無に関する情報とを比較する。
【0079】
アルカリシリカ反応性のある骨材が使用されていなければ、CPU1001は、アルカリシリカ反応性の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S32)。
アルカリシリカ反応性のある骨材が有る(使用されている)、または有るか否か(使用されているか否か)が不明な場合には、CPU1001は、アルカリシリカ反応によるひび割れに関する処理(S34)に進む。
【0080】
アルカリシリカ反応(Alkali−Silica−Reaction、ASR)によるひび割れに関する処理(S34)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたアルカリシリカ反応によるひび割れ情報と、ROM1003等に格納されているアルカリシリカ反応性によるひび割れ判定表とから、アルカリシリカ反応によるひび割れの有無を判定する。
アルカリシリカ反応によるひび割れがない場合、CPU1001は、アルカリシリカ反応の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S32)。
アルカリシリカ反応によるひび割れがある、または不明な場合、CPU1001は、残存膨張量に関する処理(S35)に進む。
【0081】
残存膨張量に関する処理(S35)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたアルカリシリカ反応性のある骨材の種類、ひび割れの寸法等のデータと、ROM1003等に格納されている骨材の種類と、ひび割れの程度と、残存膨張量とのテーブルとを比較して残存膨張量が小さく基準以下であれば無害であると判定すると、ステップ32の処理に進み、塗装の必要性が低いと判定する(S32)。
残存膨張量が基準を超える、または不明な場合、ステップ36の処理に進み、CPU1001は、塗装の必要性が有ると判定する(S36)。
【0082】
(2)既設・塗装なし・液相部
対象箇所が塗装なし・液相部の場合、判定の着目内容は液相部耐荷性(判定項目:アルカリシリカ反応、カルシウム溶出)と、使用性(判定項目:初期欠陥、すり減り)である。
【0083】
A.液相部耐荷性
液相部耐荷性判定を行う液相部耐荷性判定手段22は、アルカリシリカ反応判定手段とカルシウム溶出判定手段とを有する。
使用性判定を行う(液相部)使用性判定手段23は、初期欠陥判定手段とすり減り判定手段とを有する。
【0084】
ここで、「液相部耐荷性判定手段」22とは、プログラムを読み込み、液相部耐荷性耐荷性を判定する機能を実行するCPU1001をいう。
「使用性判定手段」23とは、キーボード1007等から入力される等した対象箇所の使用性に関する情報に基づき、プログラムを読み込み、使用性を判定する機能を実行するCPU1001をいう。実施形態では液相部について使用性の判定を行う。そのため、液相部使用性判定手段23とも言い換えることができる(本明細書の他の箇所において同様)。
「初期欠陥判定手段」とは、キーボード1007等から入力される等した対象箇所の初期欠陥(漏水)に関する情報に基づき、プログラムを読み込み、初期欠陥(漏水)を判定する機能を実行するCPU1001をいう。
「すり減り判定手段」とは、キーボード1007等から入力される等した対象箇所のすり減りに関する情報に基づき、プログラムを読み込み、すり減りを判定する機能を実行するCPU1001をいう。
(a)アルカリシリカ反応
図9は、対象箇所が、既設・塗装なし・液相部の場合の、アルカリシリカ反応に関する判定処理フローを例示する図である。
図8と同様であるが、
図9を用い、アルカリシリカ反応判定手段が行う処理について説明する。
【0085】
インストールされたプログラムにより、アルカリシリカ反応に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたコンクリート打設時期(1987年)と、ROM1003等に格納されている基準とするコンクリート打設時期とを比較する(S41)。
【0086】
コンクリート打設時期が1987年以降であれば、CPU1001は、アルカリシリカ反応の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S42)。
打設時期が1986年以前であれば、CPU1001は、アルカリシリカ反応性のある骨材の使用に関する処理(S43)に進む。
なお、打設時期が1986年以前/1987年以降とせず、打設時期の基準となる時期を別の時期にしてもよい。
【0087】
アルカリシリカ反応性のある骨材の使用に関する処理(S43)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された骨材の情報と、ROM1003等に格納されている各種骨材についてのアルカリシリカ反応性の有無に関する情報とを比較する。
【0088】
アルカリシリカ反応性のある骨材が使用されていなければ、CPU1001は、アルカリシリカ反応性の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S42)。
アルカリシリカ反応性のある骨材が有る(使用されている)、または有るか否か(使用されているか否か)が不明な場合には、CPU1001は、アルカリシリカ反応によるひび割れに関する処理(S44)に進む。
【0089】
アルカリシリカ反応(ASR)によるひび割れに関する処理(S44)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたアルカリシリカ反応によるひび割れ情報と、ROM1003等に格納されているアルカリシリカ反応性によるひび割れ判定表とから、アルカリシリカ反応によるひび割れの有無を判定する。
アルカリシリカ反応によるひび割れがない場合、CPU1001は、アルカリシリカ反応の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S42)。
アルカリシリカ反応によるひび割れがある、または不明な場合、CPU1001は、残存膨張量に関する処理(S45)に進む。
【0090】
残存膨張量に関する処理(S45)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたアルカリシリカ反応性のある骨材の種類、ひび割れの寸法等のデータと、ROM1003等に格納されている骨材の種類と、ひび割れの程度と、残存膨張量とのテーブルとを比較して残存膨張量が小さく基準以下であれば無害であると判定し、ステップS42の処理に進んで塗装の必要性が低いと判定する(S42)。
残存膨張量が基準を超える、または不明な場合、ステップS36の処理に進み、CPU1001は、塗装の必要性が有ると判定する(S46)。
【0091】
(b)カルシウム溶出
図10は、対象箇所が、既設・塗装なし・液相部の場合の、カルシウム溶出に関する判定処理フローを例示する図である。
図10を用い、カルシウム溶出判定手段が行うカルシウム溶出判定処理について説明する。
【0092】
インストールされたプログラムにより、カルシウム溶出に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力された対象箇所の設計基準強度または圧縮強度と、ROM1003等に格納されている設計基準強度または圧縮強度40N/mm
2とを比較する(S51)。
【0093】
設計基準強度または圧縮強度が40N/mm
2以上であれば、CPU1001は、カルシウム溶出の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S52)。
設計基準強度または圧縮強度が40N/mm
2未満または不明であれば、CPU1001は、硬度差判定に関する処理(S53)に進む。
なお、設計基準強度または圧縮強度の基準を40N/mm
2以外の数値としてもよい。
【0094】
硬度差に関する処理(S53)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたコンクリートの表面の硬度と深さ3mmの硬度との差(硬度差)に関する情報(数値、記号等)を判定する。
【0095】
両者の硬度差が無ければ、CPU1001は、カルシウム溶出の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S52)。
両者の硬度差がある、または不明な場合には、CPU1001は、脆弱化深さに関する処理(S54)に進む。
なお、コンクリートの表面の硬度と深さ3mmの硬度との差ではなく、表面の硬度と深さ5mmの硬度との差を比較する等、別の箇所の硬度差を比較してもよい。また、硬度差について有り/無しのかわりに、一定の硬度以上/未満としてもよい。
【0096】
脆弱化深さに関する処理(S54)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された脆弱化深さの情報(現状の脆弱化深さに関する情報)から、脆弱化の進行はコンクリートの表面から鉄筋の直径未満まで進んでいる、即ち、脆弱化がコンクリートの表面から鉄筋表面より深い所まで進んでいる場合、または不明な場合には、塗装による修復は困難で、塗装より本格的な補強やコンクリート等の更新が必要と判定する(S55)。
キーボード1007等から入力された脆弱化深さの情報から、脆弱化がコンクリートの表面から鉄筋の直径以上の所まででとどまっている場合、即ち脆弱化はコンクリートの表面から最大でも鉄筋の表面の深さまででとどまっている場合には、CPC1001は、次回の点検時(あるいは現状のままで使用した場合の供用期間、以下同様)で予測される脆弱化深さ(予測値)に関する処理(S56)に進む。
【0097】
なお、脆弱化深さに関する処理(現状、S54)では、ROM1003等にコンクリートの表面から基準となる脆弱化深さに関する情報を格納しておき、キーボード1007等から入力されたコンクリートの表面からの脆弱化深さの情報(寸法)とを比較し、現状の脆弱化深さが基準未満または不明であれば補強・更新が必要と判定し(S55)、現状の脆弱化深さが基準以上であれば脆弱化深さに関する処理(予測値、S56)に進むようにしてもよい。
また、脆弱化深さの基準を、コンクリートの表面から鉄筋までではなく、コンクリートの表面から鉄筋の数mmコンクリート表面寄り、のように別の基準としてもよい。
【0098】
脆弱化深さ(予測値)に関する処理(S56)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された脆弱化深さ予測値の情報(次回の点検時での脆弱化深さに関する予測値情報)で、次回点検時に予測される脆弱化の進行はコンクリートの表面から鉄筋の直径以上までしか進んでいない、即ち、脆弱化がコンクリートの表面から鉄筋表面まで進んでいないと予測される場合、または不明な場合には、塗装の必要性が低いと判定する(S57)。
【0099】
キーボード1007等から入力された脆弱化深さ予測値の情報(次回の点検時での脆弱化深さに関する予測値情報)で、次回点検時で予測される脆弱化の進行はコンクリートの表面から鉄筋の直径未満まで進んでいる、即ち、脆弱化がコンクリートの表面から鉄筋表面内部にまで進んでいると予測される場合、または不明な場合には、炭酸化深さとCa濃度深さに関する処理(S58)に進む。
【0100】
なお、脆弱化深さ(予測値)に関する処理(S56)では、ROM1003等に現状での脆弱化深さ、コンクリート材料、経過年数や、それらの条件で予測されるコンクリートの表面から基準となる脆弱化深さ(予測値)に関する情報を格納しておき、キーボード1007等から入力されたコンクリートの表面からの現在の脆弱化深さの情報(寸法)等とを比較し、次回点検時に予測される脆弱化深さ(予測値)の処理をしてもよい。
また、脆弱化深さ(現状)あるいは脆弱化深さ(予測値)の基準を、コンクリートの表面から鉄筋までではなく、コンクリートの表面から鉄筋の数mmコンクリート表面寄り、のように別の基準としてもよい。
【0101】
炭酸化(中性化)深さとCa濃度深さに関する処理(S58)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された、炭酸化深さ(中性化深さ)とカルシウム(Ca)濃度低下との大小関係を比較する。
炭酸化(中性化)深さ>Ca濃度低下の深さの場合、CPU1001は、カルシウム溶出の観点からは塗装の必要性が低いと判定する(S57)。なぜならば、炭酸化により、コンクリートの内部にバリアが形成されることにより、コンクリートの耐荷性を低下させにくくする面もある為である。
一方、Ca濃度低下の深さ≧炭酸化(中性化)深さの場合、又は不明な場合、CPU1001は、カルシウム溶出の観点からは塗装の必要性が高いと判定する(S59)。
【0102】
B.使用性
図11は、対象箇所が、既設・塗装なし・液相部の場合の、使用性に関する判定処理フローを例示する図で、
(a)は洗浄時のすり減り障害(すり減り)に関する判定処理フロー、
(b)は通常時のすり減り障害(すり減り)に関する判定処理フロー、
(c)は初期欠陥による漏水(初期欠陥)に関する判定処理フロー、を例示する図である。
【0103】
「洗浄時のすり減り障害(すり減り)」
図11(a)を用いて、洗浄時のすり減り障害(すり減り)に関する判定処理フローを説明する。
【0104】
インストールされたプログラムにより、洗浄時のすり減り障害に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力された対象箇所の洗浄時の排水pH上昇値と、ROM1003等に格納されている基準とするpH上昇値とを比較する(S61)。
【0105】
洗浄時の排水pH上昇値が基準値以上で許容できない、または不明な場合、CPU1001は、洗浄時のすり減りの観点で塗装の必要性が有ると判定する(S62)。
洗浄時の排水pH上昇値が基準値未満で許容できる場合、CPU1001は、洗浄時のすり減り障害の処理(S63)に進む。
【0106】
洗浄時のすり減り障害の処理(S63)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された対象箇所のすり減りに関する情報(寸法等)と、ROM1003等に格納されている基準とするすり減りに関する情報(寸法等)とを比較する(S64)。
すり減りの程度が基準以上で許容できない場合、または不明な場合、CPU1001は、洗浄時のすり減りの観点で塗装の必要性が有ると判定する(S62)。
すり減りの程度が基準未満で許容できる場合、CPU1001は、洗浄時のすり減りの観点で塗装の必要性が低いと判定する(S64)。
【0107】
「通常時のすり減り障害(すり減り)」
図11(b)を用いて、通常時のすり減り障害(すり減り)に関する判定処理フローを説明する。
【0108】
インストールされたプログラムにより、通常時のすり減り障害に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力された対象箇所の運用時の水質変化(値)と、ROM1003等に格納されている基準とする水質変化(値)とを比較する(S71)。
【0109】
水質変化が基準未満で許容できる場合、CPU1001は、通常時のすり減りの観点で塗装の必要性が低いと判定する(S72)。
通常時の水質変化が基準以上で許容できない場合、または不明な場合、CPU1001は、通常時のすり減りの観点で塗装の必要性が有ると判定する(S73)。
【0110】
「初期欠陥による漏水(初期欠陥)」
図11(c)を用いて、初期欠陥による漏水(初期欠陥)に関する判定処理フローを説明する。
【0111】
インストールされたプログラムにより、初期欠陥による漏水に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力された対象箇所の外部への漏水(量)と、ROM1003等に格納されている基準とする外部への漏水(量)とを比較する(S81)。
【0112】
外部への漏水が基準未満で許容できる場合、CPU1001は、初期欠陥(漏水)の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S82)。
外部への漏水が基準以上で許容できない場合、または不明な場合、CPU1001は、初期欠陥(漏水)の観点で塗装の必要性が有ると判定する(S83)。
なお、
図11(c)では、「初期欠陥」による漏水の判定処理フローを例示した。
【0113】
(3)既設・モルタル塗装・気相部
対象箇所がモルタル塗装・気相部の場合、判定の着目内容は気相部耐荷性で、判定項目は中性化とアルカリシリカ反応である。
【0114】
A.気相部耐荷性
気相部耐荷性判定を行う気相部耐荷性判定手段21は、中性化判定手段と、アルカリシリカ反応判定手段とを有する。
(a)中性化
図12は、対象箇所が、既設・モルタル防水・気相部の場合の、中性化に関する判定処理フローを例示する図である。
図12を用い、中性化判定手段が行う中性化判定について説明する。
【0115】
インストールされたプログラムにより、中性化(高塩分)に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたコンクリート打設時期(1987年)と、ROM1003等に格納されている基準とするコンクリート打設時期とを比較する(S91)。
【0116】
コンクリート打設時期が1987年以降であれば、CPU1001は、中性化の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S92)。
打設時期が1986年以前であれば、CPU1001は、コンクリートの内在塩分量に関する処理(S93)に進む。
なお、打設時期が1986年以前/1987年以降とせず、打設時期の基準となる時期を別の時期にしてもよい。
【0117】
内在塩分量に関する処理(S93)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたコンクリート中の内在塩分量と、ROM1003等に格納されている基準とする内在塩分量(1.15kg/m
3)とを比較する。この内在塩分量は鉄筋からの基準距離におけるコンクリートの内在塩分量である。
【0118】
内在塩分量が1.15kg/m
3未満であれば、CPU1001は、中性化の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S92)。
内在塩分量が1.15kg/m
3以上、または不明な場合には、CPU1001は、コンクリートの中性化残り寸法に関する処理(S94)に進む。
なお、内在塩分量を1.15kg/m
3以外の数値としてもよいが、W/Cが55%の場合には内在塩分量の基準を1.15kg/m
3とするとよい。それ以外の場合には、例えば、コンクリート標準示方書に準拠し設定するとよい。
【0119】
中性化残り(現状)に関する処理(S94)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された現状のコンクリートの中性化残り寸法と、ROM1003等に格納されている基準とする中性化残り寸法(15mm)とを比較する。
中性化残り寸法が15mm以上であれば、CPU1001は、供用期間における中性化残りの処理(S95)に進む。
中性化残り寸法が15mm未満であれば、CPU1001は、中性化の観点で塗装の必要性が有ると判定する(S96)。
【0120】
中性化残り(供用期間)に関する処理(S95)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された供用期間におけるコンクリートの中性化残り寸法と、ROM1003等に格納されている基準とする供用期間における中性化残り寸法(15mm)とを比較する。
中性化残り寸法(供用期間)が15mm以上であれば、CPU1001は、中性化の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S92)。
中性化残り寸法(供用期間)が15mm未満、または不明であれば、CPU1001は、中性化の観点で塗装の必要性が有ると判定する(S96)。
なお、上記のステップS94やS95で、基準とする中性化残り寸法は15mm以外の数値としてもよい。
【0121】
上記のステップS94、S95の代わりに、内在塩分量が基準より多く(塩化物イオン濃度が基準より高く)、かつ中性化深さが鉄筋の腐食限界を超過している場合に中性化の観点で塗装の必要性が有ると判定するようにすることも可能である。
特に有蓋構造の水道池状構造物101の内部において、液相部は水に接しており、気相部は一般に湿度が高いことから中性化速度は小さい。また、例え中性化(深さ)が鉄筋に到達したとしても水や酸素の供給により鉄筋が腐食し、水道池状構造物101の性能低下に至るまでには長期間を要するためである。
【0122】
(b)アルカリシリカ反応
図13は、対象箇所が、既設・モルタル防水・気相部の場合の、アルカリシリカ反応に関する判定処理フローを例示する図である。
図13を用い、アルカリシリカ反応判定手段が行うアルカリシリカ反応判定について説明する。
【0123】
インストールされたプログラムにより、アルカリシリカ反応に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたコンクリート打設時期(1987年)と、ROM1003等に格納されている基準とするコンクリート打設時期とを比較する(S101)。
【0124】
コンクリート打設時期が1987年以降であれば、CPU1001は、アルカリシリカ反応の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S102)。
打設時期が1986年以前であれば、CPU1001は、アルカリシリカ反応性のある骨材の使用に関する処理(S103)に進む。
なお、打設時期が1986年以前/1987年以降とせず、打設時期の基準となる時期を別の時期にしてもよい。
【0125】
アルカリシリカ反応性のある骨材の使用に関する処理(S103)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された骨材の情報と、ROM1003等に格納されている各種骨材についてのアルカリシリカ反応性の有無に関する情報とを比較する。
【0126】
アルカリシリカ反応性のある骨材が使用されていなければ、CPU1001は、アルカリシリカ反応性の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S102)。
アルカリシリカ反応性のある骨材が有る(使用されている)、または有るか否か(使用されているか否か)が不明な場合には、CPU1001は、アルカリシリカ反応によるひび割れに関する処理(S104)に進む。
【0127】
アルカリシリカ反応(ASR)によるひび割れに関する処理(S104)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたアルカリシリカ反応によるひび割れ情報と、ROM1003等に格納されているアルカリシリカ反応性によるひび割れ判定表とから、アルカリシリカ反応によるひび割れの有無を判定する。
アルカリシリカ反応によるひび割れがない場合、CPU1001は、アルカリシリカ反応の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S102)。
アルカリシリカ反応によるひび割れがある、または不明な場合、CPU1001は、残存膨張量に関する処理(S105)に進む。
【0128】
残存膨張量に関する処理(S105)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたアルカリシリカ反応性のある骨材の種類、ひび割れの寸法等のデータと、ROM1003等に格納されている骨材の種類と、ひび割れの程度と、残存膨張量とのテーブルとを比較して残存膨張量が小さく基準以下であれば無害であるとし判定し、ステップS102の処理に進んで塗装の必要性が低いと判定する(S102)。
残存膨張量が基準を超える、または不明な場合、ステップS106の処理に進み、CPU1001は、塗装の必要性が有ると判定する(S106)。
【0129】
(4)既設・モルタル防水・液相部
対象箇所が塗装なし・液相部の場合、判定の着目内容は液相部耐荷性(判定項目:アルカリシリカ反応、カルシウム溶出)と、使用性(判定項目:初期欠陥、すり減り)である。
【0130】
A.液相部耐荷性
液相部耐荷性判定を行う液相部耐荷性判定手段22は、アルカリシリカ反応判定手段とカルシウム溶出判定手段とを有する。
使用性判定を行う使用性判定手段23は、初期欠陥判定手段とすり減り判定手段とを有する。
【0131】
「カルシウム溶出判定手段」とは、キーボード1007等から入力される対象箇所のカルシウム溶出に関する情報に基づき、プログラムを読み込み、カルシウム溶出を判定する機能を実行するCPU1001をいう。
(a)アルカリシリカ反応
図14は、対象箇所が、既設・モルタル防水・液相部の場合の、アルカリシリカ反応に関する判定処理フローを例示する図である。
図9、
図13等と同様であるが、
図14を用い、アルカリシリカ反応判定手段が行うアルカリシリカ反応判定について説明する。
【0132】
インストールされたプログラムにより、アルカリシリカ反応に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたコンクリート打設時期(1987年)と、ROM1003等に格納されている基準とするコンクリート打設時期とを比較する(S111)。
【0133】
コンクリート打設時期が1987年以降であれば、CPU1001は、アルカリシリカ反応の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S112)。
打設時期が1986年以前であれば、CPU1001は、アルカリシリカ反応性のある骨材の使用に関する処理(S113)に進む。
なお、打設時期が1986年以前/1987年以降とせず、打設時期の基準となる時期を別の時期にしてもよい。
【0134】
アルカリシリカ反応性のある骨材の使用に関する処理(S113)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された骨材の情報と、ROM1003等に格納されているアルカリシリカ反応性の有無に関する情報とを比較する。
【0135】
アルカリシリカ反応性のある骨材が使用されていなければ、CPU1001は、アルカリシリカ反応性の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S112)。
アルカリシリカ反応性のある骨材が有る(使用されている)、または有るか否か(使用されているか否か)が不明な場合には、CPU1001は、アルカリシリカ反応によるひび割れに関する処理(S114)に進む。
【0136】
アルカリシリカ反応(ASR)によるひび割れに関する処理(S114)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたアルカリシリカ反応によるひび割れ情報と、ROM1003等に格納されているアルカリシリカ反応性によるひび割れ判定表とから、アルカリシリカ反応によるひび割れの有無を判定する。
当該ひび割れがない場合、CPU1001は、アルカリシリカ反応の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S112)。
当該ひび割れがある、または不明な場合、CPU1001は、残存膨張量に関する処理(S115)に進む。
【0137】
残存膨張量に関する処理(S115)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたアルカリシリカ反応性のある骨材の種類、ひび割れの寸法等のデータと、ROM1003等に格納されている骨材の種類と、ひび割れの程度と、残存膨張量とのテーブルとを比較して残存膨張量が小さく基準以下であれば無害であると判定し、ステップS112の処理に進んで塗装の必要性が低いと判定する(S112)。
残存膨張量が基準を超える、または不明な場合、ステップS116の処理に進み、CPU1001は、塗装の必要性が有ると判定する(S116)。
【0138】
(b)カルシウム溶出
図15は、対象箇所が、既設・モルタル防水・液相部の場合の、カルシウム溶出に関する判定処理フローを例示する図である。
図15を用い、カルシウム溶出判定手段が行うカルシウム溶出について説明する。
【0139】
インストールされたプログラムにより、カルシウム溶出に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力された対象箇所の設計基準強度または圧縮強度と、ROM1003等に格納されている設計基準強度または圧縮強度40N/mm
2とを比較する(S121)。
【0140】
設計基準強度または圧縮強度が40N/mm
2以上であれば、CPU1001は、カルシウム溶出の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S122)。
設計基準強度または圧縮強度が40N/mm
2未満または不明であれば、CPU1001は、硬度差判定に関する処理(S123)に進む。
なお、設計基準強度または圧縮強度の基準を40N/mm
2以外の数値としてもよい。
【0141】
モルタルの硬度差に関する処理(S123)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたモルタルの表面の硬度と深さ3mmの硬度との差(硬度差)に関する情報(数値、記号等)を判定する。
【0142】
両者の硬度差が無ければ、CPU1001は、カルシウム溶出の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S122)。
両者の硬度差がある、または不明な場合には、CPU1001は、躯体表面と深さ3mmでの硬度差に関する処理(S124)に進む。
なお、モルタルの表面の硬度と深さ3mmの硬度との差ではなく、表面の硬度と深さ5mmの硬度との差を比較する等、別の箇所の硬度差を比較してもよい。また、硬度差について有り/無しのかわりに、一定の硬度以上/未満としてもよい。
【0143】
躯体の硬度差に関する処理(S124)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された躯体の表面の硬度と深さ3mmの硬度との差(硬度差)に関する情報(数値、記号等)を判定する。
【0144】
両者の硬度差が無ければ、CPU1001は、カルシウム溶出の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S122)。
両者の硬度差がある、または不明な場合には、CPU1001は、脆弱化深さ(現状)に関する処理(S125)に進む。
なお、躯体の表面の硬度と深さ3mmの硬度との差ではなく、躯体表面の硬度と深さ5mmの硬度との差を比較する等、別の箇所の硬度差を比較してもよい。また、硬度差について有り/無しのかわりに、一定の硬度以上/未満としてもよい。
【0145】
脆弱化深さ(現状)に関する処理(S125)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された脆弱化深さの情報(現状の脆弱化深さに関する情報)から、脆弱化の進行はコンクリートの表面から鉄筋の直径未満まで進んでいる、即ち、脆弱化がコンクリートの表面から鉄筋表面より深い所まで進んでいる場合、または不明な場合には、塗装による修復は困難で、塗装より本格的な補強やコンクリート等の更新が必要と判定する(S126)。
【0146】
キーボード1007等から入力された脆弱化深さの情報から、脆弱化がコンクリートの表面から鉄筋の直径以上の所まででとどまっている場合、即ち脆弱化はコンクリートの表面から最大でも鉄筋の表面の深さまででとどまっている場合には、CPC1001は、次回の点検時で予測される脆弱化深さ(予測値)に関する処理(S127)に進む。
【0147】
なお、脆弱化深さに関する処理(現状、S125)では、ROM1003等にコンクリートの表面から基準となる脆弱化深さに関する情報を格納しておき、キーボード1007等から入力されたコンクリートの表面からの脆弱化深さの情報(寸法)とを比較し、現状の脆弱化深さが基準未満または不明であれば補強・更新が必要と判定し(S126)、現状の脆弱化深さが基準以上であれば脆弱化深さに関する処理(予測値、S127)に進むようにしてもよい。
また、脆弱化深さ(現状)あるいは脆弱化深さ(予測値)の基準を、コンクリートの表面から鉄筋までではなく、コンクリートの表面から鉄筋の数mmコンクリート表面寄り、のように別の基準としてもよい。
【0148】
脆弱化深さ(予測値)に関する処理(S127)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された脆弱化深さ予測値の情報(次回の点検時での脆弱化深さに関する予測値情報)で、次回点検時で予測される脆弱化の進行はコンクリートの表面から鉄筋の直径以上までしか進んでいない、即ち、脆弱化がコンクリートの表面から鉄筋表面まで進んでいないと予測される場合、または不明な場合には、塗装の必要性が低いと判定する(S128)。
【0149】
キーボード1007等から入力された脆弱化深さ予測値の情報(次回の点検時での脆弱化深さに関する予測値情報)で、次回点検時で予測される脆弱化の進行はコンクリートの表面から鉄筋の直径未満まで進んでいる、即ち、脆弱化がコンクリートの表面から鉄筋内部まで進んでいると予測される場合、または不明な場合には、炭酸化深さとCa濃度深さに関する処理(S129)に進む。
【0150】
なお、脆弱化深さ(予測値)に関する処理(S127)では、ROM1003等に現状での脆弱化深さ、コンクリート材料、経過年数や、それらの条件で予測されるコンクリートの表面から基準となる脆弱化深さ(予測値)に関する情報を格納しておき、キーボード1007等から入力されたコンクリートの表面からの現在の脆弱化深さの情報(寸法)等とを比較し、次回点検時で予測される脆弱化深さで判定してもよい。
また、脆弱化深さの基準を、コンクリートの表面から鉄筋までではなく、コンクリートの表面から鉄筋の数mmコンクリート表面寄り、のように別の基準としてもよい。
【0151】
炭酸化(中性化)深さとCa濃度深さに関する処理(S129)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された、炭酸化深さ(中性化深さ)とカルシウム(Ca)濃度低下との大小関係を比較する。
炭酸化(中性化)深さ>Ca濃度低下の深さの場合、CPU1001は、カルシウム溶出の観点からは塗装の必要性が低いと判定する(S128)。なぜならば、炭酸化により、コンクリートの内部にバリアが形成されることにより、コンクリートの耐荷性を低下させにくくする面もある為である。
一方、Ca濃度低下の深さ≧炭酸化(中性化)深さの場合、又は不明な場合、CPU1001は、カルシウム溶出の観点からは塗装の必要性が高いと判定する(S130)。
【0152】
B.使用性
図16は、対象箇所が、既設・モルタル防水・液相部の場合の、使用性に関する判定処理フローを例示する図で、
(a)は洗浄時のすり減り障害(すり減り)に関する判定処理フロー、
(b)は通常時のすり減り障害(すり減り)に関する判定処理フロー、
(c)は初期欠陥による漏水(初期欠陥)に関する判定処理フロー、を例示する図である。
【0153】
「洗浄時のすり減り障害(すり減り)」
図16(a)を用いて、洗浄時のすり減り障害(すり減り)に関する判定処理フローを説明する。
【0154】
インストールされたプログラムにより、洗浄時のすり減り障害に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力された対象箇所の洗浄時の排水pH上昇値と、ROM1003等に格納されている基準とするpH上昇値とを比較する(S141)。
【0155】
洗浄時の排水pH上昇値が基準値以上で許容できない、または不明な場合、CPU1001は、洗浄時のすり減りの観点で塗装の必要性が有ると判定する(S142)。
洗浄時の排水pH上昇値が基準値未満で許容できる場合、CPU1001は、洗浄時のすり減り障害の処理(S143)に進む。
【0156】
洗浄時のすり減り障害の処理(S143)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された対象箇所のすり減りに関する情報(寸法等)と、ROM1003等に格納されている基準とするすり減りに関する情報(寸法等)とを比較する。
すり減りの程度が基準以上で許容できない場合、または不明な場合、CPU1001は、洗浄時のすり減りの観点で塗装の必要性が有ると判定する(S142)。
すり減りの程度が基準未満で許容できる場合、CPU1001は、洗浄時のすり減りの観点で塗装の必要性が低いと判定する(S144)。
【0157】
「通常時のすり減り障害(すり減り)」
図16(b)を用いて、通常時のすり減り障害(すり減り)に関する判定処理フローを説明する。
【0158】
インストールされたプログラムにより、通常時のすり減り障害に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力された対象箇所の運用時の水質変化(値)と、ROM1003等に格納されている基準とする水質変化(値)とを比較する(S145)。
【0159】
水質変化が基準未満で許容できる場合、CPU1001は、通常時のすり減りの観点で塗装の必要性が低いと判定する(S146)。
通常時の水質変化が基準以上で許容できない場合、または不明な場合、CPU1001は、通常時のすり減りの観点で塗装の必要性が有ると判定する(S147)。
【0160】
「初期欠陥による漏水(初期欠陥)」
図16(c)を用いて、初期欠陥による漏水(初期欠陥)に関する判定処理フローを説明する。
【0161】
インストールされたプログラムにより、初期欠陥による漏水に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力された対象箇所の外部への漏水(量)と、ROM1003等に格納されている基準とする外部への漏水(量)とを比較する(S148)。
【0162】
外部への漏水が基準未満で許容できる場合、CPU1001は、初期欠陥(漏水)の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S149)。
外部への漏水が基準以上で許容できない場合、または不明な場合、CPU1001は、初期欠陥(漏水)の観点で塗装の必要性が有ると判定する(S150)。
なお、
図16(c)では、初期欠陥による漏水の判定処理フローを例示した。
【0163】
(5)既設・塗装あり・気相部
対象箇所が塗装あり・気相部の場合、判定の着目内容は気相部耐荷性で、判定項目は中性化とアルカリシリカ反応である。
【0164】
A.気相部耐荷性
気相部耐荷性判定を行う気相部耐荷性判定手段21は、中性化判定手段と、アルカリシリカ反応判定手段とを有する。
(a)中性化
図17(a)は、対象箇所が、既設・塗装あり・気相部の場合の、中性化に関する判定処理フローを例示する図である。
図17(a)を用い、中性化判定手段が行う中性化判定について説明する。
【0165】
インストールされたプログラムにより、中性化(高塩分)に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたコンクリート打設時期(1987年)と、ROM1003等に格納されている基準とするコンクリート打設時期とを比較する(S160)。
【0166】
コンクリート打設時期が1987年以降であれば、CPU1001は、中性化の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S161)。
打設時期が1986年以前であれば、CPU1001は、5年後に塗装消失に関する判定を実施するか(実施する予定があるか)否かの処理(S162)に進む。
なお、打設時期が1986年以前/1987年以降とせず、打設時期の基準となる時期を別の時期にしてもよい。
【0167】
5年後に塗装消失に関する判定を実施するか(実施する予定があるか)否かの処理(S162)では、5年後に塗装消失に関する判定(判定1)を実施する(実施する予定でいる)場合は塗装の必要性が低いと判定する(S163)。対象箇所が塗装されているため、CPU1001は、コンクリート打設時期が1986年以前であっても5年間は中性化については問題ないと判定するのである。
5年後に塗装消失に関する判定(判定1)を実施しない(実施する予定がない場合は塗装の必要性が有ると判定する(S164)。5年後に判定を実施しない場合、中性化について5年以降も問題ないとは言い切れないため、CPU1001は、安全性を勘案して塗装必要性があると判定するのである。
なお、塗装消失に関する基準を5年でなく、4年、6年のように他の数値を使用してもよい。
【0168】
(b)アルカリシリカ反応
図17(b)は、対象箇所が、既設・塗装あり・気相部の場合の、アルカリシリカ反応に関する判定処理フローを例示する図である。
図17(b)を用い、アルカリシリカ反応判定手段が行うアルカリシリカ反応判定について説明する。
【0169】
インストールされたプログラムにより、アルカリシリカ反応に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたコンクリート打設時期(1987年)と、ROM1003等に格納されている基準とするコンクリート打設時期とを比較する(S165)。
【0170】
コンクリート打設時期が1987年以降であれば、CPU1001は、中性化の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S166)。
打設時期が1986年以前であれば、CPU1001は、5年後に塗装消失に関する判定を実施するか(実施する予定があるか)否かの処理(S167)に進む。
なお、打設時期が1986年以前/1987年以降とせず、打設時期の基準となる時期を別の時期にしてもよい。
【0171】
5年後に塗装消失に関する判定(判定1)を実施するか(実施する予定があるか)否かの処理(S167)では、5年後に塗装消失に関する判定を実施する(実施する予定がある)場合は塗装の必要性が低いと判定する(S168)。対象箇所が塗装されているため、CPU1001は、コンクリート打設時期が1986年以前であっても5年間はアルカリシリカ反応については問題ないと判定するのである。
5年後に塗装消失に関する判定(判定1)を実施しない(実施する予定がない場合は塗装の必要性が有ると判定する(S169)。5年後に判定を実施しない場合、アルカリシリカ反応について5年以降も問題ないとは言い切れないため、CPU1001は、安全性を勘案して塗装必要性があると判定するのである。
なお、塗装消失に関する基準を5年でなく、4年、6年のように他の数値を使用してもよい。
【0172】
(6)既設・塗装あり・液相部
対象箇所が塗装あり・液相部の場合、判定の着目内容は液相部耐荷性(判定項目:アルカリシリカ反応、カルシウム溶出)と、使用性(判定項目:初期欠陥、すり減り)である。
【0173】
液相部耐荷性判定を行う液相部耐荷性判定手段22は、アルカリシリカ反応判定手段とカルシウム溶出判定手段とを有する。
使用性判定を行う使用性判定手段23は、初期欠陥判定手段とすり減り判定手段とを有する。
【0174】
A.液相部耐荷性
図18(a)(b)は、対象箇所が、既設・塗装あり・液相部の場合の、液相耐荷性(アルカリシリカ反応、カルシウム溶出)に関する判定処理フローを例示する図である。
(a)アルカリシリカ反応
図18(a)を用い、アルカリシリカ反応判定手段が行うアルカリシリカ反応判定について説明する。
【0175】
インストールされたプログラムにより、アルカリシリカ反応に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力されたコンクリート打設時期(1987年)と、ROM1003等に格納されている基準とするコンクリート打設時期とを比較する(S171)。
【0176】
コンクリート打設時期が1987年以降であれば、CPU1001は、アルカリシリカ反応の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S172)。
打設時期が1986年以前であれば、CPU1001は、5年後に塗装消失に関する判定を実施するか(実施する予定があるか)否かの処理(S173)に進む。
なお、打設時期が1986年以前/1987年以降とせず、打設時期の基準となる時期を別の時期にしてもよい。
【0177】
5年後に塗装消失に関する判定(判定2)を実施するか(実施する予定があるか)否かの処理(S167)では、5年後に塗装消失に関する判定(判定2)を実施する(実施する予定がある)場合は塗装の必要性が低いと判定する(S174)。対象箇所が塗装されているため、CPU1001は、コンクリート打設時期が1986年以前であっても5年間はアルカリシリカ反応については問題ないと判定するのである。
5年後に塗装消失に関する判定(判定2)を実施しない(実施する予定がない場合は塗装の必要性が有ると判定する(S175)。5年後に判定を実施しない場合、アルカリシリカ反応について5年以降も問題ないとは言い切れないため、CPU1001は、安全性を勘案して塗装必要性があると判定するのである。
なお、塗装消失に関する基準を5年でなく、4年、6年のように他の数値を使用してもよい。
【0178】
(b)カルシウム溶出
図18(b)は、対象箇所が、既設・塗装あり・液相部の場合の、カルシウム溶出に関する判定処理フローを例示する図である。
図18(b)を用い、カルシウム溶出判定手段が行うカルシウム溶出について説明する。
【0179】
インストールされたプログラムにより、カルシウム溶出に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力された対象箇所の設計基準強度または圧縮強度と、ROM1003等に格納されている設計基準強度または圧縮強度40N/mm
2とを比較する(S176)。
【0180】
設計基準強度または圧縮強度が40N/mm
2以上であれば、CPU1001は、カルシウム溶出の観点で塗装の必要性が低いと判定する(S177)。
設計基準強度または圧縮強度が40N/mm
2未満または不明であれば、CPU1001は、異なる基準の設計基準強度または圧縮強度判定に関する処理(S178)に進む。
なお、設計基準強度または圧縮強度の基準を40N/mm
2以外の数値としてもよい。
【0181】
異なる基準の設計基準強度または圧縮強度判定に関する処理(S178)では、CPU1001は、キーボード1007等から入力された対象箇所の設計基準強度または圧縮強度と、ROM1003等に格納されている設計基準強度または圧縮強度18N/mm
2とを比較する。ステップS176より小さな数値でより厳格に判定する。
設計基準強度または圧縮強度が18N/mm
2未満または不明であれば、CPU1001は、塗装の必要性があると判定する(S179)。
設計基準強度または圧縮強度が18N/mm
2以上であれば、CPU1001は、5年後に塗装消失について判定(判定2)を実施する予定があるか判定する(S180)。
実施する予定がない場合は、塗装の必要性があると判定する(S179)。5年後に判定を実施しない場合、カルシウム溶出について5年以降も問題ないとは言い切れないため、CPU1001は、安全性を勘案して塗装必要性があると判定するのである。
実施する予定がある場合は、現時点での塗装の必要性は低いと判定する(S181)。設計基準強度または圧縮強度が18N/mm
2以上であるため、CPU1001は、5年間はカルシウム溶出については問題ないと判定するのである。
【0182】
B.使用性
図19は、対象箇所が、既設・塗装あり・液相部の場合の、使用性に関する判定処理フローを例示する図である。
図19を用いて、使用性に関する判定処理フローを説明する。
【0183】
インストールされたプログラムにより、使用性に関する判定処理がスタートすると、CPU1001は、キーボード1007等から入力された命令、あるいはROM1003、RAM1002、外部記憶装置1004等の記憶手段等に格納された判定実施有無フラグ等の情報に基づき、5年後に使用性(洗浄時のすり減り障害、通常時のすり減り障害、初期欠陥による漏水)について判定(判定2)を実施する(実施する予定がある)か判定する(S191)。
5年後に使用性に関する判定(判定2)を実施しない(実施する予定がない)場合は、塗装の必要性があると判定する(S192)。5年後に判定を実施しない場合、使用性について5年以降も問題ないとは言い切れないため、CPU1001は、安全性を勘案して塗装必要性があると判定するのである。
5年後に使用性に関する判定(判定2)を実施する(実施する予定がある)場合は、現時点での塗装の必要性は低いと判定する(S193)。液相部で塗装があるため、CPU1001は、5年間は使用性については問題ないと判定するのである。
この場合、「5年後」でなく、「4年後」、「6年後」のように他の期間を使用してもよい。
【0184】
なお、対象箇所が既設・塗装あり・液相部の場合、使用性に関する判定項目は原則として初期欠陥(漏水)とすり減りである。
「すり減り」については、
図19の処理フローでは、洗浄時のすり減り障害と、通常時のすり減り障害を判定項目とした。洗浄をあまりしない場合では洗浄時のすり減り障害を判定項目から外し、通常時のすり減り障害を判定項目とすればよい。また、どちらか一方のすり減り障害の影響が少ない場合等では、洗浄時のすり減り障害、通常時のすり減り障害の一方について判定してもよい。
【0185】
「塗装消失5年後に判定2」(S191)とは、現在は対象箇所の塗装が消失していないが、5年後に塗装が消失しているか否かを判定(判定2)するか否か、の意味である。
「塗装消失5年後」とした理由は、判定をする時点(S191)で塗装が消失していない場合(塗装がある場合)、塗装が消失するのには通常5年程度を要すると考えられるからである。なお、塗装の種類、対象箇所の環境(塗装が消失しやすい温度、貯水中の成分等)等により「5年」(次回の判定時期)を「4年」「6年」のように変えてもよい。
5年後に使用性に関する判定(判定2)を実施しない(実施する予定がない)場合、5年後に塗装が消失していることもあり、塗装消失をチェックしないまま塗装があるとしたまま水道池状構造物を維持管理するリスクがあるため、安全性を考慮し塗装の必要性があると判定する(S192)のである。
5年後に使用性に関する判定(判定2)を実施する(実施する予定がある)場合は、塗装が消失するのは早くても5年後であり、その間は塗装の効果が持続するため、現時点での塗装の必要性は低いと判定する(S193)のである。
【0186】
3.第1の塗装必要性判断手段
第1の塗装必要性判断手段30は上記判定手段の判定結果から塗装の必要性あり、なし(必要性の程度が低い)を判断する。
ここで、「第1の塗装必要性判断手段」30とは、(一次)判定結果から塗装の必要性について判断する機能を実行するCPU1001をいう。
なお、判定手段が塗装の必要性あり、なし(塗装の必要性の程度が低い)との判定をし、それをそのまま塗装の必要性あり、なし(必要性の程度が低い)と判断する場合は、判定手段が判断手段も兼ねることとなる。
【0187】
4.二次判定・判断
(1)概要
図20に示されるように、一次判定・判断で塗装の必要性があるとされた箇所について二次判定・判断をするかをキーボード1007等からの指示等で決定する(S201)。
二次判定・判断をしない場合は一次判定・判断のままである(S202)。つまり、塗装の必要性があるとの判定・判断は変わらない。CPU1001は、一次判定・判断で「塗装の必要性・有」とした場合、その判定・判断をそのまま維持する。
二次判定・判断をする場合、グレード判定手段で劣化のグレードを判定する(S203)。
【0188】
ここで「グレード判定手段」40とは、キーボード1007等から入力等されたデータに基づき対象箇所について劣化のグレードを判断する機能を実行するCPU1001をいう。
(劣化)グレードとしては、CPU1001は、(1)CPU1001は、性能低下には至らないものの耐久性の低下が見られるグレード、(2)性能低下が見られるものの限界レベルには達していないグレード、(3)限界レベルを超過したグレード、に分けることを基本とする。(2)のグレードを更に分ける、(1)(2)を一緒にする等、適宜グレード数を変更してよい。
例えば、CPU1001は、中性化(高塩分)について、性能低下の初期段階から性能限界超過段階までの2〜5段階のグレードに分ける。アルカリシリカ反応やカルシウム溶出について、性能低下の初期段階から性能限界超過段階までの2〜3段階のグレードに分ける。初期欠陥(漏水)や、すり減りについて、性能低下の初期段階から性能限界超過段階までの2〜3段階のグレードに分ける。
グレード判定を受け、CPU1001は、ROM1003等に格納された劣化グレードと点検・補修に必要な人員数等のテーブル等から対象箇所について、現状下で、点検・補修が可能であるかを判定する(S204)。
【0189】
点検・補修での対応が可能な場合、CPU1001(第2の塗装必要性判断手段41)は塗装しない(点検・補修で対応する)との判断をする(S205)。
点検・補修での対応が不可又は困難な場合、CPU1001は塗装するとの判断をする(S206)。
なお、「第2の塗装必要性判断手段」41とは二次判定の結果に基づき、対象箇所について塗装の必要性を判断する機能を実行するCPU1001をいう。
【0190】
(2)投資効果分析
図21は
図20の二次判定・判断処理の変形例である。
図21のステップS301〜S304は、
図20のステップS201〜S204と同様である。
図20に示されるように、一次判定・判断で塗装の必要性があるとされた箇所について二次判定・判断をするかをキーボード1007等からの指示等で決定する(S301)。
二次判定・判断をしない場合は一次判定・判断のままである(S302)。つまり、塗装の必要性があるとの判定・判断は変わらない。CPU1001は、一次判定・判断で「塗装の必要性・有」とした場合、その判定・判断をそのまま維持する。
【0191】
二次判定・判断をする場合、グレード判定手段で劣化のグレードを判定する(S303)。
グレード判定を受け、CPU1001は、ROM1003等に格納された劣化グレードと点検・補修に必要な人員数等のテーブル等から対象箇所について、現状下で、点検・補修が可能であるかを判定する(S304)。
点検・補修での対応が不可又は困難な場合、CPU1001(第2の塗装必要性判断手段41)は塗装するとの判断をする(S305)。
【0192】
点検・補修での対応が可能な場合、CPU1001は投資効果分析をする(S306)。
投資効果分析は投資効果分析手段42が、B/Cが1.0以上であるか否かを分析する。
ここで、
B:現在から耐用年数までの維持管理費増加額(点検強化費用・対策費用)
C:防水塗装費用(現在から想定耐用年数までの塗り替え費用を含む)
である。
「投資効果分析手段」42とは、キーボード1007等から入力等された諸費用データ等に基づき、投資効果を分析する機能を実行するCPU1001をいう。
B/C≧1.0の場合、CPU1001は塗装すると判断する(S305)。
B/C<1.0の場合、塗装しない(点検・補修で対応)と判断する(S307)。
【0193】
(3)グレードに応じた変状
図22は
図20の二次判定・判断処理の変形例である。
図22のステップS401〜S404は、
図20のステップS201〜S204と同様である。
図22に示されるように、一次判定・判断で塗装の必要性があるとされた箇所について二次判定・判断をするかをキーボード1007等からの指示等で決定する(S401)。
二次判定・判断をしない場合は一次判定・判断のままである(S402)。つまり、塗装の必要性があるとの判定・判断は変わらない。CPU1001は、一次判定・判断で「塗装の必要性・有」とした場合、その判定・判断をそのまま維持する。
【0194】
二次判定・判断をする場合、グレード判定手段で劣化のグレードを判定する(S403)。
グレード判定を受け、CPU1001は、ROM1003等に格納された劣化グレードと点検・補修に必要な人員数等のテーブル等から対象箇所について、現状下で、点検・補修が可能であるかを判定する(S404)。
点検・補修での対応が困難な場合、CPU1001(第2の塗装必要性判断手段41)は塗装するとの判断をする(S405)。
点検・補修での対応が可能な場合、グレードに応じた変状(劣化進展)データを入力する(S406)。
CPU1001は変状(劣化進展)の有無を判断する(S407)。
変状(劣化進展)が無ければ一定期間後に再びグレードに応じた変状(劣化進展)データを入力する(S406)。
変状(劣化進展)がある場合、CPU1001はステップS403に戻り、変状(劣化進展)に対応するグレードの判定をする(S403)。
【0195】
[実施形態2]
実施形態2の水道池状構造物101の維持管理方法について説明する。
実施形態2は、コンピュータを使って維持管理を行う水道池状構造物101の維持管理方法であって、判定対象とする前記水道池状構造物101の対象箇所を特定する工程、前記対象箇所が気相部108である場合、耐荷性を判定する気相部耐荷性判定工程、前記対象箇所が液相部107である場合、耐荷性を判定する液相部耐荷性判定工程、及び使用性を判定する使用性判定工程、を有するとともに、前記判定工程により判定された結果により、前記水道池状構造物101の内面塗装の必要性を判断する工程、を有する。
これらの工程については、実施形態1で説明しており、その説明を援用する。
このような方法により、水道池状構造物101を適切に維持管理できる。
【0196】
前記水道池状構造物の維持管理方法は、更に、前記対象箇所を、少なくとも、内面状態及び液相部であるか気相部であるかでカテゴライズするカテゴライズ工程を有することが好ましい。
【0197】
前記カテゴライズ工程は、前記内面状態を、少なくとも、塗装あり、塗装なし及びモルタル防水にカテゴライズすることが好ましい。
【0198】
前記カテゴライズ工程は、前記対象箇所が液相部と気相部の境界箇所である場合に前記対象箇所を液相部にカテゴライズすることが好ましい。
【0199】
前記気相部耐荷性判定
工程は、前記対象箇所の中性化を判定する中性化判定工程と、前記対象箇所のアルカリシリカ反応を判定するアルカリシリカ反応判定工程と、を有することが好ましい。
【0200】
前記液相部耐荷性判定工程は、前記対象箇所のアルカリシリカ反応を判定する前記アルカリシリカ反応判定工程と、前記対象箇所のカルシウム溶出を判定するカルシウム溶出判定工程と、を有することが好ましい。
【0201】
前記使用性判定工程は、前記対象箇所の初期欠陥を判定する初期欠陥判定工程と、前記対象箇所のすり減りを判定するすり減り判定工程と、を有することが好ましい。
【0202】
[実施形態3]
水道池状構造物101の維持管理装置1は、水道池状構造物の維持管理用の専用装置でもよいが、汎用のコンピュータに、特定のプログラム(コンピュータプログラム)をインストールして、これを実行することによっても実現可能である。
【0203】
その場合のプログラムとしては、例えば、コンピュータにインストールして実行することにより、当該コンピュータを水道池状構造物の維持管理装置として機能させることができるプログラムであって、上記コンピュータを、判定対象とする前記水道池状構造物の対象箇所を特定する手段;前記対象箇所が気相部である場合に耐荷性を判定する気相部耐荷性判定手段;前記対象箇所が液相部である場合に耐荷性を判定する液相部耐荷性判定手段;及び前記対象箇所が液相部である場合に使用性を判定する使用性判定手段;それぞれの判定手段により判定された結果により、前記水道池状構造物の内面塗装の必要性の程度を判断する第1の塗装必要性判断手段;として機能させるためのプログラムとすることができる。
なお、前記プログラムは、コンピュータに対し、前記対象箇所を、少なくとも、内面状態及び液相部であるか気相部であるかでカテゴライズするカテゴライズ手段として機能させることが好ましい。
【0204】
また、前記プログラムは、コンピュータに対し、前記カテゴライズ手段に、前記内面状態を、少なくとも、塗装あり、塗装なし及びモルタル防水にカテゴライズする機能をさせることが好ましい。
【0205】
また、前記プログラムは、コンピュータに対し、前記カテゴライズ手段を、前記対象箇所が液相部と気相部の境界箇所である場合に前記対象箇所を液相部にカテゴライズする機能をさせることが好ましい。
【0206】
また、前記プログラムは、コンピュータに対し、前記気相部耐荷性判定手段が、前記対象箇所の中性化を判定する中性化判定手段、及び前記対象箇所のアルカリシリカ反応を判定するアルカリシリカ反応判定手段として機能
させることが好ましい。
【0207】
また、前記プログラムは、コンピュータに対し、前記液相部耐荷性判定手段は、前記対象箇所のアルカリシリカ反応を判定する前記アルカリシリカ反応判定手段、及び前記対象箇所のカルシウム溶出を判定するカルシウム溶出判定手段として機能をさせることが好ましい。
【0208】
また、前記プログラムは、コンピュータに対し、前記使用性判定手段を、前記対象箇所の初期欠陥を判定する初期欠陥判定手段、及び前記対象箇所のすり減りを判定するすり減り判定手段として機能をさせることが好ましい。
【0209】
また、前記プログラムは、コンピュータに対し、前記中性化判定手段を、前記対象箇所のコンクリート打設時期(打設年)、内在塩分量及び中性化残り寸法を判定し、前記第1の塗装必要性判断手段を、前記中性化判定手段により、前記対象箇所のコンクリート打設時期(打設年)が基準時期(基準年)以前で、前記内在塩分量が基準以上及び前記中性化残り寸法が基準以下である、と判定された場合には塗装必要性が高いと判断する機能をさせることが好ましい。
【0210】
また、前記プログラムは、コンピュータに対し、前記アルカリシリカ反応判定手段を、前記対象箇所のコンクリート打設時期(打設年、打設時)、アルカリシリカ反応性のある骨材の使用有無、ひび割れ、残存膨張量を判定し、前記第1の塗装必要性判断手段を、前記アルカリシリカ反応判定手段により、前記対象箇所のコンクリート打設時期(打設年)が基準時期(基準年)以前で、前記アルカリシリカ反応性のある骨材の使用有り、前記ひび割れ有り及び前記残存膨張量が基準以上と判定された場合には塗装必要性が高いと判断する機能をさせることが好ましい。
【0211】
また、前記プログラムは、コンピュータに対し、前記カルシウム溶出判定手段を、前記対象箇所の設計強度または圧縮強度、表面と基準深さとの硬度差、脆弱性深さ及び炭酸化深さとカルシウム濃度低下深さとの関係を判定し、前記第1の塗装必要性判断手段を、前記カルシウム溶出判定手段により、前記対象箇所の前記設計強度または圧縮強度が基準以下、表面と基準深さとの前記硬度差が基準以上、前記脆弱性深さが基準以上及び炭酸化深さとカルシウム濃度低下深さとの前記関係が基準外又は不明と判定された場合には、塗装必要性が高いと判断する機能をさせることが好ましい。
【0212】
また、前記プログラムは、コンピュータに対し、更に、前記第1の塗装必要性判断手段により塗装必要性が高いと判断した箇所の劣化のグレードを判定するグレード判定手段、及び前記グレード判定手段が判定したグレードに基づき、再度、塗装必要性を判断する第2の塗装必要性判断手段として機能をさせることが好ましい。前記プログラムは、CD−ROM、DVD等に代表される情報記録媒体、すなわち非一時的な有形の媒体に格納された状態で、製造、流通あるいは販売可能である。
【0213】
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、こられによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、種々な形で実現することができる。