特許第6626187号(P6626187)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626187
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20191216BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20191216BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   A61K8/36
   A61K8/34
   A61Q11/00
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-247975(P2018-247975)
(22)【出願日】2018年12月28日
(62)【分割の表示】特願2014-240848(P2014-240848)の分割
【原出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-48897(P2019-48897A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2019年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 典敬
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−062066(JP,A)
【文献】 特開平11−286422(JP,A)
【文献】 特開2002−020251(JP,A)
【文献】 特開2005−330251(JP,A)
【文献】 特開2000−103726(JP,A)
【文献】 特表2002−505261(JP,A)
【文献】 特許第6463097(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 11/00
A61K 6/00− 6/10
A61K 31/19
A61P 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C):
(A)炭素数12以上22以下の飽和脂肪酸とカリウム化合物とから得られる脂肪酸カリウム塩 脂肪酸換算量で0.05質量%以上1.2質量%以下
(B)ソルビトール 5質量%以上40質量%以下
(C)水
を含有し、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸が、パルミチン酸を70質量%以上100質量%以下含有し、
成分(A)を得るために用いられるカリウム化合物中のカリウムと、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸とのモル比(カリウム/飽和脂肪酸)が、1を超え3以下であり、
硝酸カリウム、クエン酸カリウム、及び酢酸カリウムの合計含有量が0.1質量%以下であり、かつ
25℃におけるpHが、7以上9未満である口腔用組成物。
【請求項2】
ナトリウムイオン供給化合物の含有量が、0.03質量%以下である請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
塩基性アミノ酸の含有量が、0.1質量%以下である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
成分(A)を得るために用いられるカリウム化合物が、水酸化カリウムである請求項1〜3のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
次の成分(A)〜(C):
(A)炭素数12以上22以下の飽和脂肪酸とカリウム化合物とから得られる脂肪酸カリウム塩 脂肪酸換算量で0.05質量%以上1.2質量%以下
(B)ソルビトール 5質量%以上40質量%以下
(C)水
を含有し、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸が、パルミチン酸を70質量%以上100質量%以下含有し、
成分(A)を得るために用いられるカリウム化合物中のカリウムと、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸とのモル比(カリウム/飽和脂肪酸)が1を超え3以下であり、
硝酸カリウム、クエン酸カリウム、及び酢酸カリウムの合計含有量が0.1質量%以下であり、かつ
25℃におけるpHが、7以上9未満である耐酸性向上剤。
【請求項6】
パルミチン酸を70質量%以上100質量%以下含有する炭素数12以上22以下の飽和脂肪酸と、カリウム化合物とを、カリウム化合物中のカリウムと飽和脂肪酸とのモル比(カリウム/飽和脂肪酸)が1を超え3以下となる量で配合し、硝酸カリウム、クエン酸カリウム、及び酢酸カリウムの合計含有量を0.1質量%以下とし、かつ5質量%以上40質量%以下の含有量となるソルビトール、及び水を配合する工程
を備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の口腔用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、口腔用組成物において、脂肪酸及びその塩は、所望の作用をもたらし得る成分として多用されている。例えば、特許文献1〜2に記載の歯磨剤組成物では、天然由来の脂肪酸のナトリウム塩やカリウム塩等の脂肪酸石鹸を発泡剤や洗浄剤として用いており、特許文献3に記載の練歯磨剤等では、飽和脂肪酸や分岐脂肪酸等が抗菌作用を有するう蝕用剤として用いている。
【0003】
一方、特許文献4に記載の口腔用組成物では、脂肪酸塩を歯面コート剤として配合しており、特許文献5では、硝酸カリウム等のカリウムイオンによる脱官作剤とともに脂肪酸石鹸を細管遮断剤として併用している。さらに、特許文献6では、脂肪酸と塩基性アミノ酸により形成される塩によって、象牙質細管を封鎖させ、象牙質知覚過敏症の症状を軽減する効果を発揮する口腔用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭49−85249号公報
【特許文献2】特開2009−40756号公報
【特許文献3】特開昭63−88123号公報
【特許文献4】特開2000−103726号公報
【特許文献5】特表2004−506663号公報
【特許文献6】特開2014−62066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした脂肪酸は、析出しやすい性質を有しているとともに、特有の脂肪酸臭をもたらし得るものの、歯の表面への付着性を高めつつ耐酸性を付与できれば、う蝕による脱灰への抵抗力を増大することができ、有用な口腔用組成物を実現することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術では、脂肪酸が常温で析出してしまうおそれが高く、歯表面への付着性や耐酸性を高めることは困難である。また、特許文献4〜5に記載の口腔用組成物では、脂肪酸の析出について全く着目していない上、組成物の形態によっては析出だけでなく固化が生じるおそれもあり、特許文献6に記載の技術であっても、組成物が変色してしまう可能性があり、歯表面への付着性や耐酸性を十分に発揮させるには、依然として改善を要する。
【0007】
したがって、本発明は、脂肪酸塩を用いつつ、良好な安定性と使用感を保持しながら優れた耐酸性を発揮する口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、種々検討したところ、特定の飽和脂肪酸とカリウム化合物とを特定のモル比とすることにより得られる脂肪酸カリウム塩を特定量で用いつつ、さらに特定量のソルビトール及び水を含有し、かつpHを特定の値に制御することにより、優れた耐酸性を発揮することのできる口腔用組成物が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(C):
(A)炭素数12以上22以下の飽和脂肪酸とカリウム化合物とから得られる脂肪酸カリウム塩 脂肪酸換算量で0.05質量%以上1.2質量%以下
(B)ソルビトール 5質量%以上40質量%以下
(C)水
を含有し、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸が、パルミチン酸を70質量%以上100質量%以下含有し、
成分(A)を得るために用いられるカリウム化合物中のカリウムと、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸とのモル比(カリウム/飽和脂肪酸)が、1を超え3以下であり、かつ
25℃におけるpHが、7以上9未満である口腔用組成物に関するものである。
また、本発明は、次の成分(A)〜(C):
(A)炭素数12以上22以下の飽和脂肪酸とカリウム化合物とから得られる脂肪酸カリウム塩 脂肪酸換算量で0.05質量%以上1.2質量%以下
(B)ソルビトール 5質量%以上40質量%以下
(C)水
を含有し、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸が、パルミチン酸を70質量%以上100質量%以下含有し、
成分(A)を得るために用いられるカリウム化合物中のカリウムと、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸とのモル比(カリウム/飽和脂肪酸)が1を超え3以下であり、かつ
25℃におけるpHが、7以上9未満である耐酸性向上剤に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の口腔用組成物によれば、歯の表面への脂肪酸又はその塩の付着性に優れ、高い耐酸性を発現することができるとともに、良好な味を保持しつつ変色をも抑制することができ、良好な安定性を兼ね備えることができる。そのため、耐酸性向上剤としても極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の口腔用組成物は、成分(A)として、炭素数12以上22以下の飽和脂肪酸とカリウム化合物とから得られる脂肪酸カリウム塩を、脂肪酸換算量で0.05質量%以上1.2質量%以下含有する。このような脂肪酸カリウム塩を特定量で用いることにより、pHが必要以上に高まるのを防止しつつ、析出物や固化による外観と使用感の低下を防止し、良好な風味を確保しながら脂肪酸又はその塩の歯の表面への付着性を高め、優れた耐酸性を付与することができる。
【0012】
成分(A)の脂肪酸カリウム塩を得るために用いられる飽和脂肪酸(以下、単に「飽和脂肪酸」ともいう)は、歯表面への良好な付着性を発揮しつつ、耐酸性を効果的に高める観点から、炭素数が12以上であって、好ましくは14以上である。また、上記飽和脂肪酸は、本発明の口腔用組成物中における、成分(A)又は上記飽和脂肪酸を含む脂肪酸や後述する脂肪酸ナトリウム等の脂肪酸塩(以下、「成分(A)又は脂肪酸等」ともいう)の析出や固化を有効に抑制する観点から、炭素数が22以下であって、好ましくは18以下であり、より好ましくは16以下である。
【0013】
そして、成分(A)の脂肪酸カリウム塩を得るために用いられる飽和脂肪酸は、成分(A)又は脂肪酸等の析出を有効に抑制しつつ耐酸性を効果的に高めながら良好な風味(脂肪臭さと苦味が混ざった脂肪酸臭のない風味、又は脂肪臭さと苦味や塩味等の他の風味が混ざった不快さを感じることのない風味)を確保する観点から、パルミチン酸を70質量%以上含有し、好ましくは75質量%以上含有し、より好ましくは80質量%以上含有し、さらに好ましくは85質量%以上含有し、工業的な観点から、パルミチン酸を100質量%以下含有し、好ましくは100質量%未満含有し、より好ましくは98質量%以下含有する。
【0014】
上記飽和脂肪酸としては、少なくともパルミチン酸を70質量%以上含む飽和脂肪酸であればよく、パルミチン酸を1種単独で用いてもよく、具体的には、例えばルナックP95(パルミチン酸96質量%、花王株式会社)を用いることができる。また、上記飽和脂肪酸として、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、及びステアリン酸等から選ばれる1種又は2種以上とパルミチン酸との混合物を用いてもよく、成分(A)又は脂肪酸等の析出を有効に抑制しつつ耐酸性を効果的に高めながら良好な風味(脂肪臭さと苦味が混ざった脂肪酸臭のない風味、又は脂肪臭さと塩味等の他の風味が混ざった不快さを感じることのない風味)を確保する観点から、ミリスチン酸及びステアリン酸から選ばれる1種又は2種とパルミチン酸を含む飽和脂肪酸であるのが好ましく、具体的には、例えばルナックP95と、ルナックL98(ラウリン酸99質量%、花王株式会社)、ルナックMY98(ミリスチン酸99質量%、パルミチン酸0.5質量%、花王株式会社)、及び精製ステアリン酸750V(ステアリン酸75質量%、パルミチン酸25質量%)から選ばれる1種又は2種以上との混合物を用いることができる。
【0015】
成分(A)の脂肪酸カリウム塩を得るために用いられるカリウム化合物(以下、単に「カリウム化合物」ともいう)としては、具体的には、例えば、水酸化カリウム、及び炭酸カリウムから選ばれる1種又は2種が挙げられ、かかるカリウム化合物は、硝酸カリウム、クエン酸カリウム、及び酢酸カリウム以外のカリウム化合物である。なかでも、成分(A)の脂肪酸カリウム塩を得るために用いられるカリウム化合物として、上記飽和脂肪酸とともに効率的に成分(A)の脂肪酸カリウム塩を生成させる観点、及び得られる脂肪酸カリウム塩に優れた耐酸性を付与する観点から、水酸化カリウムが好ましい。
【0016】
本発明の口腔用組成物における硝酸カリウム、クエン酸カリウム、及び酢酸カリウムの合計含有量は、風味を阻害しない観点、さらに本発明の口腔用組成物が後述するテルペンアルコールを含む香料を含有する場合であっても、効果的に苦味を抑制する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.15質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下である。また、成分(A)又は脂肪酸等の析出を防止し、外観や滑らかさを確保する観点から、成分(A)を得るために用いられるカリウム化合物のカリウム量よりも、これら硝酸カリウム、クエン酸カリウム、及び酢酸カリウムのカリウム量が少ないことが好ましく、これら化合物のカリウム量のモル濃度は、成分(A)を得るために用いられるカリウム化合物のカリウムのモル濃度に対し、好ましくは50%未満であり、より好ましくは35%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、よりさらに好ましくは5%以下である。
【0017】
成分(A)を得るために用いられるカリウム化合物中のカリウム、すなわち上記カリウム化合物由来のカリウムと、上記飽和脂肪酸とのモル比(カリウム/飽和脂肪酸)は、本発明の口腔用組成物における成分(A)又は脂肪酸等の析出を有効に抑制する観点、及び耐酸性を向上する観点から、1を超え、好ましくは1.05以上であり、より好ましくは1.1以上であり、さらに好ましくは1.2以上である。また、上記カリウム化合物由来のカリウムと上記飽和脂肪酸とのモル比(カリウム/飽和脂肪酸)は、pHが必要以上に上昇するのを抑制する観点、為害性や異味を抑制して良好な香味を確保する観点、及び黄変色を抑制する観点から、3以下であって、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.0以下であり、さらに好ましくは1.8以下である。そして、上記カリウム化合物由来のカリウムと上記飽和脂肪酸とのモル比(カリウム/飽和脂肪酸)は、1を超え3以下であり、好ましくは1.05〜2.5であり、より好ましくは1.1〜2.0であり、さらに好ましくは1.2〜1.8である。なお、上記異味とは、脂肪酸の油の味と苦味や塩味等が混ざりあった不快な味である。
【0018】
なお、本発明において、モル比とは、モル濃度の比を意味し、かかるモル濃度とは、1kgの組成物中に含有される当該成分の質量から算出する値(mmol/kg)を意味する。例えば、組成物に0.5質量%の脂肪酸が含有される場合、組成物1000質量部中に脂肪酸が5質量部含有されるとして、すなわち、5/(1000×脂肪酸のモル質量)として、脂肪酸のモル濃度の値(mmol/kg)を求める。
【0019】
上記カリウム化合物由来のカリウムと上記飽和脂肪酸とのモル濃度の差(カリウム−飽和脂肪酸)は、成分(A)を効率的に生成させる観点、及び耐酸性を向上する観点から、好ましくは0.02mmol/kg以上であり、より好ましくは0.05mmol/kg以上であり、さらに好ましくは0.5mmol/kg以上である。また、上記カリウム化合物由来のカリウムと上記飽和脂肪酸とのモル濃度の差(カリウム−飽和脂肪酸)は、本発明の口腔内組成物における成分(A)又は脂肪酸等の析出を有効に抑制しつつ、黄変色を抑制し、pH上昇による為害性を抑制する観点から、好ましくは3mmol/kg以下であり、より好ましくは2mmol/kg以下であり、さらに好ましくは1.5mmol/kg以下である。そして、上記カリウム化合物由来のカリウムと上記飽和脂肪酸とのモル濃度の差(カリウム−飽和脂肪酸)は、好ましくは0.02〜3mmol/kgであり、より好ましくは0.05〜2mmol/kgであり、さらに好ましくは0.05〜1.5mmol/kgであり、よりさらに好ましくは0.5〜1.5mmol/kgである。
【0020】
成分(A)の脂肪酸カリウム塩の含有量は、歯の表面への付着性を高めて耐酸性を向上させる観点から、本発明の口腔用組成物中に脂肪酸換算量で、0.05質量%以上であって、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上である。また、成分(A)の脂肪酸カリウム塩の含有量は、成分(A)又は脂肪酸等の析出を抑制する観点、及び風味の低下や苦みの発現を抑制する観点から、本発明の口腔用組成物中に脂肪酸換算量で、1.2質量%以下であって、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.7質量%である。そして、成分(A)の脂肪酸カリウム塩の含有量は、本発明の口腔用組成物中に脂肪酸換算量で、0.05質量%以上1.2質量%以下であって、好ましくは0.1〜1.0質量%であり、より好ましくは0.2〜1.0質量%であり、さらに好ましくは0.3〜0.7質量%である。
なお、成分(A)の脂肪酸カリウム塩は、本発明の口腔用組成物のように、上記モル比(カリウム/飽和脂肪酸)が1を超え3以下であれば、組成物中においては脂肪酸カリウム塩として存在するものとして推定し、成分(A)の脂肪酸カリウム塩の含有量は、脂肪酸換算量で表されるものとする。
【0021】
本発明の口腔用組成物は、成分(B)として、ソルビトールを5質量%以上40質量%以下含有する。これにより、本発明の口腔用組成物において成分(A)又は脂肪酸等が析出するのを有効に抑制しつつ、成分(A)の油っぽい風味を抑制して良好な香味とともに湿潤効果も得ることができる。成分(B)の含有量は、成分(A)又は脂肪酸等の析出を抑制する観点、及び良好な香味を確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、5質量%以上であって、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上である。成分(B)の含有量は、かかる成分(B)に起因して組成物が黄変色するのを有効に防止する観点から、本発明の口腔用組成物中に、40質量%以下であって、好ましくは35質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、5質量%以上40質量%以下であって、好ましくは10〜40質量%であり、より好ましくは12〜35質量%である。
【0022】
本発明の口腔用組成物は、ソルビトール以外の他の糖アルコールやグリセリンを含有することができる。ソルビトール以外の他の糖アルコールとしては、例えば、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノース、及びマンニトールから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコールが挙げられる。これらソルビトール以外の他の糖アルコールの含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、またさらに2質量%以下であってもよく、含有しないものであってもよい。
【0023】
本発明の口腔用組成物がグリセリンを含有する場合には、脂肪酸又は脂肪酸塩とグリセリンの併用による風味又は香味の低下を防止する観点から、グリセリンの含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、或いはグリセリンを実質的に含有しない、又はグリセリンを配合しないことが好ましい。
【0024】
成分(B)と成分(A)の脂肪酸換算量との質量比((B)/(A))は、良好な風味を確保しつつ、分離を防止する観点から、好ましくは10以上であり、より好ましくは15以上であり、さらに好ましくは20以上であり、よりさらに好ましくは25以上である。また、成分(B)と成分(A)の脂肪酸換算量との質量比は、優れた耐酸性を確保しながら良好な風味を保持する観点から、好ましくは200以下であり、より好ましくは150以下であり、さらに好ましくは100以下であり、よりさらに好ましくは80以下である。そして、成分(B)と成分(A)の脂肪酸換算量との質量比は、好ましくは10〜200であり、より好ましくは15〜150であり、さらに好ましくは20〜100であり、よりさらに好ましくは25〜80である。
【0025】
本発明の口腔用組成物は、成分(C)の水を含有する。これにより、成分(A)を組成物中に良好に溶解させ、口腔内の隅々まで充分に行き渡らせながら成分(A)の歯の表面への付着を良好に促進することができる。成分(C)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、好ましくは65質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは20〜65質量%であり、より好ましくは25〜60質量%である。また、本発明の口腔用組成物は、成分(A)又は脂肪酸等の析出を防止する観点から、歯磨組成物であることが好ましく、かかる観点から、成分(C)の含有量は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、よりさらに好ましくは25質量%以上であり、好ましくは60質量%以下である。
【0026】
成分(C)と成分(A)の脂肪酸換算量との質量比((C)/(A))は、良好な使用感と口腔内での分散性を確保しつつ、分離を防止する観点から、好ましくは20以上であり、より好ましくは30以上であり、さらに好ましくは40以上であり、よりさらに好ましくは60以上である。また、成分(C)と成分(A)の脂肪酸換算量との質量比は、優れた耐酸性を確保しながら良好な使用感を保持する観点から、好ましくは250以下であり、より好ましくは220以下であり、さらに好ましくは130以下である。そして、成分(C)と成分(A)の脂肪酸換算量との質量比は、好ましくは20〜250であり、より好ましくは30〜220であり、さらに好ましくは40〜130であり、よりさらに好ましくは60〜120である。
【0027】
本発明の口腔用組成物中にナトリウムイオン供給化合物が存在すると、かかる化合物が放出するナトリウムイオンによって、成分(A)を構成する上記飽和脂肪酸は脂肪酸ナトリウムが生成されて組成物が固化したり、脂肪酸ナトリウムが析出したりするおそれがあることから、かかるナトリウムイオン供給化合物の含有を制限するのが好ましい。かかる脂肪酸ナトリウムを生成し得るナトリウムイオン供給化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸2水素ナトリウムが挙げられ、水酸化ナトリウムがより脂肪酸ナトリウムを生成しやすい。また、塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムは、組成物の増粘や固化を防止する観点、及び風味の観点から、その含有を制限するのが好ましい。
【0028】
本発明の口腔用組成物における、塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウム以外の上記ナトリウムイオン供給化合物の含有量は、脂肪酸ナトリウムの生成を回避して、組成物の固化や析出物の発生を防止し、優れた耐酸性の発現を確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.03質量%以下であり、より好ましくは0.02質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下である。また、塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムは、生成された成分(A)における脂肪酸カリウムと塩交換を生じるおそれがあり、組成物の増粘や固化を防止する観点から、塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムを用いないことが好ましく、かかる塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムの含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、風味の観点から、好ましくは0.1質量%以下である。
【0029】
本発明の口腔用組成物における脂肪酸ナトリウムの含有量は、組成物の固化又は析出物の発生を防止し、なめらかな使用感を確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、脂肪酸ナトリウムを配合しないことがよりさらに好ましい。
【0030】
塩基性アミノ酸は、組成物の黄変色を防止する観点から、その含有を制限するのが好ましく、塩基性アミノ酸の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下である。ここで、塩基性アミノ酸としては、アルギニン、リジン、ヒスチジン、トリプトファン等が挙げられ、リジン、アルギニン、ヒスチジンが組成物の黄変色を防止する観点から、これらの合計含有量が上記範囲であることが好ましい。
【0031】
本発明の口腔用組成物は、成分(A)又は脂肪酸等の析出を抑制する観点、及び黄変色を抑制する観点から、歯磨組成物であることが好ましく、練り歯磨組成物であることがより好ましい。かかる歯磨組成物は、好ましくは粘結剤、研磨剤、後述する糖アルコール、香料を含有することができる。
【0032】
また、本発明の口腔用組成物は、使用前の組成物中において、成分(A)を得るために用いる飽和脂肪酸が不溶性の金属塩を形成してしまうことを防止する観点、及び泡立ちが低下するのを防止する観点から、ICP発光分析法(ICP発光分析装置:Perkin Elmer社 Optima 5300DV)で測定した多価金属は、その含有を制限するのが好ましい。かかる多価金属の含有量は、上記飽和脂肪酸とのモル比(多価金属/脂肪酸)で、好ましくは0.1未満であり(0.1倍モル未満)、より好ましくは0.02以下であり、さらに好ましくは0.01以下であり、実質的に上記多価金属を含有しないことが好ましい。上記多価金属としては、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、鉄、亜鉛、ストロンチウム等が挙げられる。
【0033】
本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合は、研磨剤を含有することができるが、上記多価金属と同様の観点から、これらの多価金属を含む第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酢酸マグネシウム、第2リン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、及び第3リン酸マグネシウム等の研磨剤から選ばれる研磨剤、乳酸アルミニウム、及びヒドロキシアパタイトの含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、実質的に上記研磨剤、乳酸アルミニウム、及びヒドロキシアパタイトを含有しないことが好ましい。
また、上記多価金属を含む上記研磨剤以外の研磨剤を含有する場合の含有量は、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは12質量%以下であり、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上である。かかる研磨剤としては、研磨性シリカが挙げられる。なお、ここで研磨性シリカとは、吸油量が50〜150mL/100gのものをいい、吸油量はシリカが担持できる油量を示したものであり、測定方法はJIS K5101−13−2(2004年制定)により、吸収される煮あまに油の量により特定する。
【0034】
また、ゼオライト、活性炭等の吸着剤の含有は、本発明の効果の低下を防止する観点から制限することが好ましく、かかる含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.001質量%未満であり、より好ましくは0.0001質量%以下であり、実質的にゼオライト、活性炭等の吸着剤を含有しないことが好ましい。
【0035】
本発明の口腔用組成物は、さらに粘結剤を含有することができる。かかる粘結剤としては、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、及びグアーガム等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。かかる粘結剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.4質量%以上であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.8質量%以下である。
【0036】
本発明の口腔用組成物が練り歯磨組成物である場合は、上記粘結剤とともに、さらに増粘性シリカを併用することが好ましい。増粘性シリカとは、吸油量が200〜400mL/100gのシリカである。ここで、吸油量とは、シリカが担持できる油量を示したものであり、測定方法はJIS K5101−13−2(2004年制定)により、吸収される煮あまに油の量により特定する。増粘性シリカの含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1〜15質量%であり、より好ましくは1.5〜10質量%であり、さらに好ましくは2〜8質量%である。
【0037】
本発明の口腔用組成物は、上記成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、アニオン界面活性剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤等の界面活性剤;サッカリンナトリウム、スクラロール等の甘味剤;香料;上記成分以外のpH調整剤(カリウム化合物、塩基性アミノ酸を除く);色素;薬効成分等を適宜含有することができる。またさらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム等のフッ素イオン供給化合物、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物等の他の成分を含有することもできる。
【0038】
例えば、香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、シナモン油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、セージクラリー油、ナツメグ油、ファンネル油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、バジル油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ジンジャ−油、グレープフルーツ油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、レモンバーム油、ピメントベリー油、パルマローザ油、オリバナム油、パインニードル油、ペチグレン油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油等の天然香料成分、及びこれら天然香料成分を加工処理した香料成分;メントール、プレトール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、シトロネリルアセテート、リナロール、リナリルアセテート、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、シトロネロール、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビートアセテート、アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、カンファー、ラクトン、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブチルアセテート、イソアミルアセテート、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料成分;ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料成分が挙げられる。これらの香料のうち、本発明の口腔用組成物は、脂肪酸カリウムを含有しながらも爽やかな使用感を得る観点から、テルペンアルコールを含有する香料を含有することが好ましい。かかるテルペンアルコールとしては、好ましくはリナロール、リナリルアセテート、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、シトロネロール、シトロネリルアセテート等の鎖状テルペンアルコール、並びにメントール、プレトール、メンチルアセテート等の環状テルペンアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、メントールと鎖状テルペンアルコールから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて含有することが好ましく、これらを含む各種精油を用いることもできる。
【0039】
本発明の口腔用組成物において香料を用いる場合、かかる香料の含有量は、良好な風味の観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは0.8質量%以上であり、苦みや刺激を抑制する観点から、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。香料中におけるメントール、プレトール、シトロネリルアセテートから選ばれる環状テルペンアルコールの含有量の合計は、良好な風味の観点から、香料中に、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、苦みや刺激を抑制する観点から、香料中に、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。また、香料中におけるリナロール、リナリルアセテート、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、シトロネロール、シトロネリルアセテートから選ばれる鎖状テルペンアルコールの含有量の合計は、メントール等の香料との組合せにより風味を向上する観点から、香料中に、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、苦みや刺激を抑制する観点から、香料中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0040】
本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、成分(A)又は脂肪酸等の析出を抑制し、優れた耐酸性を発揮しつつ良好な風味を保持して使用感を高める観点から、7以上であって、好ましくは7.2以上であり、より好ましくは7.5以上である。また、本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、為害性を防止し、組成物の黄変色を効果的に抑制する観点から、9未満であって、好ましくは8.8以下であり、より好ましくは8.5以下である。そして、本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、7以上9未満であって、好ましくは7.2〜8.8であり、より好ましくは7.5〜8.5である。
なお、本発明の口腔用組成物のpHは、pH電極を用いて25℃で測定した値であり、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合には、イオン交換水又は蒸留水からなる精製水により10質量%の濃度の水溶液に調整した後に測定した値を意味する。
【0041】
本発明の口腔用組成物の製造方法は、パルミチン酸を70質量%以上100質量%以下含有する炭素数12以上22以下の飽和脂肪酸と、カリウム化合物とを、カリウム化合物中のカリウムと飽和脂肪酸とのモル比(カリウム/飽和脂肪酸)が1を超え3以下となる量で配合し、かつ5質量%以上40質量%以下の含有量となるソルビトール、及び水を配合する工程を備える。かかる工程は、好ましくは、上記飽和脂肪酸とカリウム化合物と、成分(B)のソルビトール、及び成分(C)の水を含有する混合液1を加熱混合する工程(1)を備え、必要に応じてさらに前記混合液1にポリエチレングリコール等の湿潤剤や粘結剤を配合して加熱しながら混合して混合液2を得る工程(2)を備える。また、研磨剤等の紛体を用いる場合、混合液2の温度は、好ましくは30℃以下、より好ましくは10〜28℃において、研磨剤等の紛体を配合する工程(3)を備えるのがより好ましく、さらに香料を用いる場合には、工程(3)を得た後に香料を配合する工程(4)を備えるのが好ましい。工程(1)及び工程(2)における組成物の加熱温度は、40℃以上80℃以下であることが好ましく、50℃以上70℃以下であることが好ましい。また、工程(1)において配合する成分(C)の水は、全量を工程(1)で配合してもよく、成分(C)水の一部を工程(2)において配合してもよい。さらに、ソルビトール以外の他の糖アルコールのうち、エリスリトール、還元パラチノース、及びマンニトールから選ばれる20℃における水への溶解度が40%以下の糖アルコールは、工程(3)又は工程(4)において配合することが好ましい。
【0042】
上述した実施態様に関し、本発明はさらに以下の口腔用組成物及びその耐酸性向上剤を開示する。
[1]次の成分(A)〜(C):
(A)炭素数12以上22以下の飽和脂肪酸とカリウム化合物とから得られる脂肪酸カリウム塩 脂肪酸換算量で0.05質量%以上1.2質量%以下
(B)ソルビトール 5質量%以上40質量%以下
(C)水
を含有し、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸が、パルミチン酸を70質量%以上100質量%以下含有し、
成分(A)を得るために用いられるカリウム化合物中のカリウムと、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸とのモル比(カリウム/飽和脂肪酸)が、1を超え3以下であり、かつ
25℃におけるpHが、7以上9未満である口腔用組成物。
[2]成分(A)の脂肪酸カリウム塩を得るために用いられる飽和脂肪酸の炭素数が、好ましくは14以上であり、好ましくは18以下であり、より好ましくは16以下である上記[1]の口腔用組成物。
[3]成分(A)の脂肪酸カリウム塩を得るために用いられる飽和脂肪酸が、パルミチン酸を好ましくは75質量%以上含有し、より好ましくは80質量%以上含有し、さらに好ましくは85質量%以上含有し、好ましくは100質量%未満含有し、より好ましくは98質量%以下含有する上記[1]又は[2]の口腔用組成物。
[4]成分(A)の脂肪酸カリウム塩を得るために用いられる飽和脂肪酸が、好ましくはパルミチン酸を1種単独であり、或いは好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、及びステアリン酸等から選ばれる1種又は2種以上とパルミチン酸との混合物である上記[1]〜[3]いずれか1の口腔用組成物。
【0043】
[5]成分(A)の脂肪酸カリウム塩を得るために用いられるカリウム化合物が、水酸化カリウム、及び炭酸カリウムから選ばれる1種又は2種以上であり、かつ硝酸カリウム、クエン酸カリウム、及び酢酸カリウム以外のカリウム化合物であり、好ましくは水酸化カリウムである上記[1]〜[4]いずれか1の口腔用組成物。
[6]硝酸カリウム、クエン酸カリウム、及び酢酸カリウムの合計含有量が、好ましくは0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下である上記[1]〜[5]いずれか1の口腔用組成物。
[7]成分(A)を得るために用いられるカリウム化合物中のカリウムと、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸とのモル比(カリウム/飽和脂肪酸)が、好ましくは1.05以上であり、より好ましくは1.1以上であり、さらに好ましくは1.2以上であり、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.0以下であり、さらに好ましくは1.8以下である上記[1]〜[6]いずれか1の口腔用組成物。
[8]成分(A)を得るために用いられるカリウム化合物中のカリウムと、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸とのモル濃度の差(カリウム−飽和脂肪酸)が、好ましくは0.02mmol/kg以上であり、より好ましくは0.05mmol/kg以上であり、さらに好ましくは0.5mmol/kg以上であり、好ましくは3mmol/kg以下であり、より好ましくは2mmol/kg以下であり、さらに好ましくは1.5mmol/kg以下である上記[1]〜[7]いずれか1の口腔用組成物。
[9]成分(A)の脂肪酸カリウム塩の含有量が、脂肪酸換算量で、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.7質量%である上記[1]〜[8]いずれか1の口腔用組成物。
【0044】
[10]成分(B)のソルビトールの含有量が、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上であり、好ましくは35質量%以下である上記[1]〜[9]いずれか1の口腔用組成物。
[11]ソルビトール以外の他の糖アルコールの含有量が、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、またさらに2質量%以下であってもよく、含有しないものであってもよい上記[1]〜[10]いずれか1の口腔用組成物。
[12]グリセリンの含有量が、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、或いはグリセリンを実質的に含有しない、又はグリセリンを配合しないことが好ましい上記[1]〜[11]いずれか1の口腔用組成物。
[13]成分(B)と成分(A)の脂肪酸換算量との質量比((B)/(A))が、好ましくは10以上であり、より好ましくは15以上であり、さらに好ましくは20以上であり、よりさらに好ましくは25以上であり、好ましくは200以下であり、より好ましくは150以下であり、さらに好ましくは100以下であり、よりさらに好ましくは80以下である上記[1]〜[12]いずれか1の口腔用組成物。
【0045】
[14]成分(C)の水の含有量が、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、好ましくは65質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合には、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、よりさらに好ましくは25質量%以上であり、好ましくは60質量%以下である上記[1]〜[13]いずれか1の口腔用組成物。
[15]塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウム以外のナトリウムイオン供給化合物の含有量が、好ましくは0.03質量%以下であり、より好ましくは0.02質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、また塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムの含有量は、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下である上記[1]〜[14]いずれか1の口腔用組成物。
[16]脂肪酸ナトリウムの含有量が、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、脂肪酸ナトリウムを配合しないことがよりさらに好ましい上記[1]〜[15]いずれか1の口腔用組成物。
[17]塩基性アミノ酸の含有量が、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下である上記[1]〜[16]いずれか1の口腔用組成物。
[18]25℃におけるpHが、好ましくは7.2以上であり、より好ましくは7.5以上であり、好ましくは8.8以下であり、より好ましくは8.5以下である上記[1]〜[17]いずれか1の口腔用組成物。
[19]ICP発光分析法で測定した多価金属の含有量が、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸とのモル比(多価金属/飽和脂肪酸)で、好ましくは0.1未満であり(0.1倍モル未満)、より好ましくは0.02以下であり、さらに好ましくは0.01以下であり、実質的にICP発光分析法で測定した多価金属を含有しないことが好ましい上記[1]〜[18]いずれか1の口腔用組成物。
[20]ICP発光分析法で測定した多価金属を含む第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酢酸マグネシウム、第2リン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、及び第3リン酸マグネシウムの研磨剤から選ばれる研磨剤の含有量が、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、実質的にこれら研磨剤を含有しないことが好ましい上記[1]〜[19]いずれか1の口腔用組成物。
【0046】
[21]パルミチン酸を70質量%以上100質量%以下含有する炭素数12以上22以下の飽和脂肪酸と、カリウム化合物とを、カリウム化合物中のカリウムと飽和脂肪酸とのモル比(カリウム/飽和脂肪酸)が1を超え3以下となる量で配合し、かつ5質量%以上40質量%以下の含有量となるソルビトール、及び水を配合する工程
を備える、上記[1]〜[20]いずれか1の口腔用組成物の製造方法。
[22]上記工程が、好ましくは、上記飽和脂肪酸とカリウム化合物と、成分(B)のソルビトール、及び成分(C)の水を含有する混合液1を加熱混合する工程(1)を備え、前記混合液1にポリエチレングリコール等の湿潤剤や粘結剤を配合して加熱しながら混合して混合液2を得る工程(2)を備える上記[21]の製造方法。
[23]好ましくは紛体を配合する工程(3)を備え、また好ましくは工程(3)を得た後に香料を配合する工程(4)を備える上記[21]又は[22]の製造方法。
【0047】
[24]次の成分(A)〜(C):
(A)炭素数12以上22以下の飽和脂肪酸とカリウム化合物とから得られる脂肪酸カリウム塩 脂肪酸換算量で0.05質量%以上1.2質量%以下
(B)ソルビトール 5質量%以上40質量%以下
(C)水
を含有し、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸が、パルミチン酸を70質量%以上100質量%以下含有し、
成分(A)を得るために用いられるカリウム化合物中のカリウムと、成分(A)を得るために用いられる飽和脂肪酸とのモル比(カリウム/飽和脂肪酸)が1を超え3以下であり、かつ
25℃におけるpHが、7以上9未満である耐酸性向上剤。
[25]上記[1]〜[20]いずれか1の口腔用組成物の歯の耐酸性を向上させるための使用。
[26]歯の耐酸性を向上させるための上記[1]〜[20]いずれか1の口腔用組成物。
[27]上記[1]〜[20]いずれか1の口腔用組成物の耐酸性向上剤製造のための使用。
【実施例】
【0048】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0049】
[実施例1〜8、比較例1〜9]
表1に示す処方にしたがって、予め脂肪酸と水酸化カリウム等、ソルビトール水溶液、水、及びサッカリンナトリウムを60℃で加熱混合した後、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びラウリル硫酸ナトリウムを配合し、60℃で加熱混合して混合液を得た後、かかる混合液が25℃以下になってから無水ケイ酸、及び酸化チタン等の紛体を配合し、さらに香料を配合して混合することにより、各歯磨組成物を得た。
得られた組成物を用い、下記方法にしたがって各評価を行った。
結果を表1に示す。
【0050】
《耐酸性の評価》
表1に示す各歯磨組成物について評価を行った。具体的には、ヒドロキシアパタイト(HAp)粉(HAP−200、太平化学産業(株)製)0.01gをマイクロチューブ(容量1.5mL、エッペンドルフ社製)に取り、さらに表1に示す各歯磨組成物を精製水で4倍希釈したスラリー溶液を200μL添加し、10分間撹拌した。撹拌後、回転数10000rpm、5分間の遠心分離処理をして上清を除去した。次に、精製水200μLを添加し、10分撹拌後、同様に遠心分離処理を行い、上清を除去して洗浄した。さらに、残された紛体に0.1M乳酸(水酸化ナトリウムでpH4.5に調整)を1mL添加し、5分間静置した後に、全量を0.45μmフィルターでろ過し、500μLのろ液を取り、500μLの2N塩酸を添加した。
次いで、カルシウムE-テストワコー(和光純薬(株)製)を用いて溶出したカルシウムイオンを測定し、カルシウム溶出量とした。
結果を表1に示す。
【0051】
《pHの測定》
得られた各歯磨組成物を25℃において24時間載置した後、25℃において精製水により10質量%の濃度の水溶液に調整した後、pH電極を用いてかかる水溶液のpHを測定した。
【0052】
《外観評価》
得られた各歯磨組成物を25℃において24時間保存した後に、固化しているか、結晶析出があるか、或いは組成物の色の変化が認められるかの観点から、下記基準にしたがって目視により外観評価を行った。
A:成分(A)の脂肪酸の析出、組成物の分離、及び組成物の固化が認められず、変色も認められなかった
B:成分(A)の脂肪酸の析出、組成物の分離、及び組成物の固化は認められなかったものの、変色が認められた(黄色に変色)
C:成分(A)の脂肪酸の析出(C:析出)、組成物の分離(C:分離)、又は組成物の固化(C:固化)が認められ、また変色も認められた
【0053】
《風味の評価方法》
表1に示す各歯磨組成物について、歯磨組成物1gを歯ブラシ(ディープクリーン超コンパクト 普通・花王(株)製)を用いてブラッシング2分間行ってから吐き出して口を水で漱ぎ、下記基準にしたがってパネラー3名により評価を行った。
なお、風味の評価は、3名のうち2名以上の共通する評価を表1に示す。
A:脂肪臭さや塩味が感じられなかった
B:少し脂肪臭さが感じられた(B−1)、或いは少し塩味と苦味が混じった異味が感じられた(B−2)
C:脂肪臭さが感じられた(C−1)、或いは塩味と苦味が相互に助長された異味が感じられた(C−2)
D:口腔内に適用できない、又は非常に苦く2分間ブラッシングが苦痛だった
【0054】
【表1】
※1:ラウリン酸99質量%、花王株式会社
※2:ミリスチン酸99質量%、パルミチン酸0.5質量%、花王株式会社
※3:パルミチン酸96質量%、花王株式会社
※4:ステアリン酸75質量%、パルミチン酸25質量%、花王株式会社
※5:表2に記載の香料
【0055】
【表2】
【0056】
表1に示すように、比較例1〜9は、外観において固化や分離或いは変色がみられたり、耐酸性が不充分である評価、又は風味が非常に悪い評価であったりしたのに対して、飽和脂肪酸中のパルミチン酸の含有量が十分に多く、水酸化カリウムを飽和脂肪酸に対して十分に含有しており、かつ、ソルビトールを適度に含有する実施例1〜8は、分離や固化、黄変等が観察されない良好な外観であり、酸性下でもカルシウムの溶出が抑制される耐酸性を有し、概ね良好な風味である評価であった。
【0057】
[実施例9〜10]
表3に示す処方にしたがい、実施例1と同様にして各歯磨組成物を得た。
得られた組成物を用い、上記方法にしたがって各評価を行った。
結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
※1〜4:表1と同じ
※6:表4に記載の香料
※7:表5に記載の香料
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
表3に示すように、実施例9〜10のいずれも、実施例1と同等の優れた効果を発揮する歯磨組成物であった。