(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラは、前記電力変換器の不感帯のデータベースを有し、当該データベースの不感帯に基づいて、前記電力変換器の合計出力が0に近づく充放電指令値を前記電力変換器に出力すること、
を特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の系統連系設備。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.第1の実施形態]
[1−1.構成]
以下では、
図1〜
図3を参照しつつ、本実施形態の系統連系設備について説明する。
図1は、本実施形態に係る系統連系設備が適用されたシステム全体を示す図である。
【0012】
図1に示すように、系統連系設備1は、電力会社などの電力系統と、複数の蓄電池21を備えた蓄電池システム2とに接続され、電力融通を行う。本実施形態では蓄電池システム2と接続されているため、系統連系設備1は、電力系統との間で充放電又は充電若しくは放電の何れかを行う。系統連系設備1は蓄電池システム2に代えて太陽光発電設備や風力発電設備などの分散型電源と接続されていても良い。この場合は、電力系統に対して主に放電を行う。
【0013】
系統連系設備1は、変圧器11、開閉器12、フィルタ13、電力変換器14(以下、単に「変換器」ともいう。)、負荷15をそれぞれ複数含んで構成されている。系統連系設備1の態様としては、例えば、各機器11〜15が、同一建屋内又は複数の建屋及び複数のコンテナに配置され、通信線や電力線で接続される構成が挙げられる。
【0014】
変圧器11は、系統連系設備1内の各機器の電力を賄うために変圧する。変圧器11は、変圧した電圧を負荷15に出力する変圧器11a、11b及び変換器14用の変圧器11cを有する。変圧器11aは上位すなわち電力系統側に設けられ、変圧器11a下位すなわち蓄電池システム2側に変圧器11bが設けられている。さらに、変圧器11bの下位には、複数の変換器用の変圧器11cと負荷15とが並列に接続されており、変換器14用の変圧器11cにはそれぞれ、開閉器12、フィルタ13、及び変換器14が直列に接続された回路が並列に接続されている。従って、系統連系設備1は、直列接続された開閉器12と変換器14の組を複数組有する。
【0015】
開閉器12は、変換器14の接続と切り離しを切り換えるスイッチである。フィルタ13は、系統連系設備1内に発生した高調波電圧を除去又は低減する設備であり、例えば、L、R、Cで構成される。変換器14は、交流と直流とを変換する機器であり、スイッチング素子を含み構成され、変圧器11及び開閉器12を介して電力系統と蓄電池21とに接続されている。
【0016】
系統連系設備1には、電圧を測定する複数の電圧センサ16a〜16cが設けられている。電圧センサ16a〜16cは、基本波電圧及び奇数次の高調波電圧を測定する。ここでは、電力系統と変圧器11aとの間に電圧センサ16aが設けられ、変圧器11a、11b間に電圧センサ16bが設けられている。また、変圧器11cと開閉器12との間に電圧センサ16cが設けられている。
【0017】
また、系統連系設備1は、コントローラ3を含み構成されている。コントローラ3は、系統連系設備1内の各機器と有線又は無線の通信回線を介して接続されており、当該各機器の情報の収集及び当該各機器の制御を行う。この制御対象機器としては、開閉器12、変換器14、負荷15が含まれる。
【0018】
コントローラ3は、単一のコンピュータ又はネットワーク接続された複数のコンピュータ及び表示装置を含み構成されている。コントローラ3は、プログラム及びデータベースをHDDやSSD等に記憶しており、RAMに適宜展開し、CPUで処理することにより、後述する演算や表示装置への表示を行う。
【0019】
コントローラ3は、中央給電司令所などに設けられる上位コントローラ31と、系統連系設備1内に設けられる設備内コントローラ32とを有している。上位コントローラ31と設備内コントローラ32とは、有線又は無線の通信回線を介して接続されており、情報の伝送を行う。なお、本実施形態ではコントローラ3を上位コントローラ31と設備内コントローラ32とに分けたが、必ずしも分けなくても良い。また、設備内コントローラ32は、必ずしも系統連系設備1内に設けなくても良い。以下、上位コントローラ31、設備内コントローラ32は、単に「コントローラ」31、32とも称する。
【0020】
図2は、本実施形態に係るコントローラ3及び変換器14の機能ブロック図である。
図2に示すように、コントローラ32は、開閉器状態収集部321、故障情報収集部322、閉台数集計部323、制御部324、電圧取得部325、演算部326、運転状態送受信部327、起動信号送信部328、スイッチング信号送信部329、指令値受信部330、充放電指令部331を有する。
【0021】
開閉器状態収集部321は、各開閉器12の開閉状態を収集する。故障情報収集部322は、各機器11〜15の故障状態を収集する。閉台数集計部323は、開閉器状態収集部321による開閉器12の開閉状態情報から開閉器12の閉台数を集計する。また、閉台数集計部323は、閉台数の集計の際、故障情報収集部322からの開閉器12の故障の有無を加味して集計しても良い。
【0022】
制御部324は、開閉器12の開閉を制御する。具体的には、制御部324は、開閉器12の閉台数と系統連系設備1の高調波電圧含有率との関係である高調波電圧含有率特性に基づいて、開閉器12の閉台数が、系統連系設備1の高調波電圧が増大する開閉器閉台数範囲(以下、単に「回避台数範囲」とも称する)の範囲外となるように開閉器12に開閉指令を出力する。
【0023】
高調波電圧含有率とは、基準波電圧に対する高調波電圧の割合を示す。高調波電圧は、3次、5次、7次などの奇数次の高調波電圧をいう。高調波電圧含有率特性の一例として、
図3に、横軸を開閉器12の閉台数、縦軸に7次高調波電圧含有率とした、高調波電圧含有率特性を示す。
【0024】
高調波電圧含有率特性は、コントローラ3に設けた記憶部(不図示)に予め記憶させていても良いし、上位コントローラ31などの外部からの入力により取得しても良い。また、実測から求めても良い。以下では、実測から求める態様で説明する。
【0025】
制御部324による回避台数範囲外とする制御について、具体的に説明する。例えば、開閉器12の閉台数が回避台数範囲外とするために、回避台数範囲を、高調波電圧含有率が所定の閾値(例えば、3%)超となる開閉器12の閉台数範囲に予め設定しておき、制御部324は、当該回避台数範囲外の台数分、すなわち、高調波電圧含有率が所定の閾値以下となる開閉器12の閉台数範囲に含まれる台数分、閉状態となるように開閉器12に開閉指令を出力する。この回避台数範囲外とする制御において、回避台数範囲外であれば、開閉器12の閉台数やどの開閉器12を閉とするかの選択は任意であり、適宜設計変更可能である。例えば、制御部324により決定しても良いし、後述する管理者入力部313を介して管理者による設定を受け付けても良い。
【0026】
また、この回避台数範囲外とする制御は、制御部324が、閉台数集計部323により集計された現在の閉台数が回避台数範囲内であると判定した場合、制御部324が回避台数範囲外となる閉台数及び閉とする開閉器12の選択を決定しても良いし、現在の閉台数が回避台数範囲内である旨を後述する表示部314に警告を表示して、後述の管理者入力部313を介して管理者による回避台数範囲外となる閉台数の入力を受け付けても良い。
【0027】
電圧取得部325は、電圧センサ16a〜16cで測定した基本波電圧及び奇数次高調波電圧を含む電圧を取得する。演算部326は、電圧取得部325により取得した基本波電圧と奇数次高調波電圧とから高調波含有率を演算するとともに、高調波電圧含有率特性を求める。演算部326は、コントローラ32に設けた記憶部(不図示)に系統連系設備1の回路構成を予め記憶しておき、当該回路構成からシミュレーションして高調波電圧含有率特性を求めても良い。
【0028】
運転状態送受信部327は、コントローラ32が受信するデータの全部又は一部を上位コントローラ31に送信し、上位コントローラ31から送信される保護値や起動する変換器14の情報等を送受信する。
【0029】
起動信号送信部328は、変換器14に起動信号を出力する。スイッチング信号送信部329は、変換器14にスイッチング信号を送信する。スイッチング信号は、変換器14のスイッチング素子に与えられる信号であり、これにより変換器14がスイッチングを行う。指令値受信部330は、上位コントローラ31から送信された充放電指令値を受信する。この充放電指令値としては、有効電力の指令値、無効電力の指令値が挙げられる。充放電指令部331は、受信した充放電指令値を変換器14に出力する。充放電指令部331は、上位コントローラ31から充放電指令値が送信されない場合は、充放電指令値を生成し、変換器14に出力しても良い。
【0030】
コントローラ31は、運転状態送受信部311、指令値送信部312、管理者入力部313、表示部314を有している。
【0031】
運転状態送受信部311は、コントローラ32が有するデータの全部又は一部をコントローラ32から受信し、保護値や起動する変換器14の情報等をコントローラ32に送信する。指令値送信部312は、変換器14の充放電指令値を指令値受信部328に送信する。管理者入力部313は、マウス、キーボード、タッチパネルなどのユーザーインターフェースである。例えば、管理者による充放電指令値や、開閉器12の閉台数の入力を受け付ける。表示部314は、開閉器12の開閉状態や各機器の運用状態などを表示する。また、表示部314は、管理者入力部313を介して入力された開閉器12の閉台数が、高調波電圧含有率の大きい範囲内であった場合には、警告を表示する。
【0032】
図2に示すように、変換器14は、起動信号受信部141と、スイッチング信号受信部142と、指令値受信部143と、を有する。起動信号受信部141は、起動信号送信部328から起動信号を受信する。スイッチング信号受信部142は、スイッチング信号送信部329からのスイッチング信号を受信する。指令値受信部143は、充放電指令部331からの充放電指令値を受信する。変換器14は、当該充放電指令値に基づいて交流と直流の変換を行う。
【0033】
[1−2.作用]
本実施形態の系統連系設備1の作用について
図3を用いて説明する。なお、奇数次高調波電圧の一例として7次で説明するが、3次、5次、9次、11次、13次であっても良い。ここでは、開閉器12及び変換器14の台数をそれぞれ100台として説明する。
【0034】
まず、高調波電圧含有率特性について説明する。高調波電圧含有率特性は、系統連系設備1の回路構成によって変化する。例えば、
図1では開閉器12は変圧器11cと変換器14との間に位置するものを想定しているが、その他の位置に設置された開閉器の状態によっても当該特性は変化する。また、系統連系設備1内の変圧器11や配電線路、フィルタ13のフィルタ定数によっても変化する。
【0035】
図3に示すように、高調波電圧含有率は、山型のグラフとなっており、開閉器12の閉台数が60台でピークを有する。すなわち、60台前後の閉台数は高調波電圧含有率が大きいため、避ける必要がある。高調波電圧含有率が大きな高調波が発生すると、系統連系設備1内のコンデンサに高調波電流が流入し、劣化や火災の原因になる虞があり、また、変換器14によっては誤動作や誤検出により正常動作しない虞があるからである。
【0036】
本実施形態では、制御部324により、開閉器12の閉台数が、系統連系設備1の高調波電圧が増大する閉台数範囲外となるように開閉器12に開閉指令を出力する。この閉台数範囲は、高調波電圧含有率が所定の閾値以下となる範囲とする。
【0037】
ここでは、閾値を3%としており、制御部324は、開閉器12の閉台数が40台以下又は75台以上となるように開閉器12の開閉を制御する。これらの範囲であれば良く、どの開閉器12を閉状態とするかは適宜設計変更可能である。どの開閉器12を閉状態とするかの情報は、例えば、管理者入力部313により管理者による閉台数の入力を受け、運転状態送受信部311を介してコントローラ31からコントローラ32に送信する。なお、管理者が41台以上74台以下の開閉器12の閉台数を入力した場合には、表示部314において警告を表示し、閉台数の再設定を促す。その際、開閉器12の閉台数が40台以下となるように、閉としない開閉器12に接続されたその他の変換器14に一斉に停止信号を送信するようにしても良い。
【0038】
なお、起動シーケンスの際に、開閉器12の閉信号は、コントローラ32から通信遅れの少ない接点信号等で一斉に送信し、対象の開閉器12を一斉に起動させることで、起動シーケンスの遅れの発生を例えば10ms以内に抑制する。このようなシーケンスにおける信号の送信等は、停止シーケンスにおいても同様である。
【0039】
[1−3.効果]
(1)本実施形態の系統連系設備1は、電力系統と接続された系統連系設備であって、電力系統と接続された複数の電力変換器14と、電力系統と電力変換器14との間に設けられた複数の変圧器11と、変圧器11と電力変換器14との間に設けられた複数の開閉器12と、開閉器12の開閉を制御するコントローラ3と、を備える。そして、コントローラ3は、開閉器12の閉台数と系統連系設備1の高調波電圧含有率との関係である高調波電圧含有率特性に基づいて、開閉器12の閉台数が、系統連系設備1の高調波電圧が増大する開閉器閉台数範囲の範囲外となるように開閉器12に開閉指令を出力するようにした。
【0040】
これにより、状況に応じて回路構成が異なる場合であっても、高調波電圧を抑制することのできる系統連系設備を得ることができる。
【0041】
(2)コントローラ3は、高調波電圧含有率が所定の閾値以下となる開閉器12の閉台数範囲の閉台数にする開閉指令を開閉器12に出力するようにした。これにより、多大なコストや設備を導入することなく、高調波電圧を抑制することができる。
【0042】
(3)コントローラ3は、各開閉器12の開閉状態情報を収集する開閉器状態収集部321と、開閉状態情報から開閉器の閉台数を集計する閉台数集計部323と、基本波電圧及び奇数次高調波電圧を含む電圧を測定する電圧センサ16a〜16cから、測定された電圧を取得する電圧取得部325と、取得した基本波電圧と奇数次高調波電圧とから高調波電圧含有率を演算するとともに、閉台数及び演算により得られた高調波電圧含有率から、高調波電圧含有率特性を求める演算部326と、を備えるようにした。
【0043】
これにより、実測により高調波含有率特性を得ることができるので、系統連系設備内の設備増設等の変更があった場合でも、高調波電圧の発生を抑制するために柔軟に対応することができる。
【0044】
[2.第2の実施形態]
[2−1.構成]
第2の実施形態は、
図4を用いて説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態の基本構成と同じである。以下では、第1の実施形態と異なる点のみを説明し、第1の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0045】
第2の実施形態の演算部326は、高調波電圧含有率に変動がある場合に高調波電圧含有率特性を求める。この変動は、例えば、所定時間間隔で演算部326により高調波電圧含有率を演算し、差分を求めることで変動の有無を判別できる。本実施形態では、演算部326は、電圧センサ16a〜16cの実測から高調波電圧含有率を演算し、高調波電圧含有率が減少する場合に、高調波電圧含有率特性を求める。すなわち、当該含有率の減少を契機として当該特性を更新する。
【0046】
第2の実施形態では、最も大きな高調波が発生する電圧センサ16cに基づく高調波電圧含有率特性を利用して、開閉器12の閉台数の調整をすることを前提とする。この電圧センサ16cの実測のみに基づいて高調波電圧含有率特性を更新し、閉台数を変更しても良いし、最も電力系統に近い電圧センサ16aに基づく高調波電圧含有率の減少に応じて、電圧センサ16cに基づく高調波電圧含有率特性を求めて更新し、閉台数を変更しても良い。以下では後者を例に説明する。
【0047】
具体的には、演算部326は、最も電力系統に近い電圧センサ16aに基づく高調波電圧含有率を演算し、減少があった場合に、最も大きな高調波が発生する電圧センサ16cに基づく高調波電圧含有率を演算するとともに、当該高調波電圧含有率特性を求める。すなわち、演算部326は、電力系統に近い箇所での高調波電圧含有率特性が変化した場合に、これに伴って、最も大きな高調波が発生する箇所での高調波電圧含有率特性を求める。
【0048】
制御部324は、更新した高調波電圧含有率特性に基づいて開閉器12の回避台数範囲を変更する。すなわち、制御部324は、最も大きな高調波が発生する箇所における、求めた高調波電圧含有率特性に基づいて開閉器12の回避台数範囲を変更する。
【0049】
[2−2.作用・効果]
本実施形態では、演算部326は、高調波電圧含有率が減少する場合に、高調波電圧含有率特性を求め、コントローラ3は、高調波電圧含有率が減少した際に求めた高調波電圧含有率特性に基づいて、回避台数範囲を変更するようにした。
【0050】
これにより、時期や地域、負荷情報、イベント等によって変化する開閉器12の閉台数範囲を適正に対応することができる。すなわち、時期やイベントによって系統連系設備1内の電圧状態に変動が生じ、これに伴い高調波電圧含有率特性も変動する。また、電力系統の近い側で高調波電圧含有率は低く、下位になるほど歪みが重なって高調波電圧含有率が高くなる傾向にある。例えば、最も電力系統に近い電圧センサ16aの電圧に基づく高調波電圧含有率が低くなった場合には、最も測定電圧の高い電圧センサ16cに基づく高調波電圧含有率のグラフも下がる。
【0051】
そのため、
図4に示すように、電力系統に最も近い電圧センサ16aによる高調波電圧含有率が例えば1%から0.5%に下がった場合、最も測定電圧の高い電圧センサ16cに基づく高調波電圧含有率も連動して下がるので、閾値が同じでも高調波電圧が増大する閉台数範囲が狭まる。
図4の例では、電圧センサ16aによる高調波電圧含有率が1%のとき、回避台数範囲が40台以上75台以下であったのに対し、高調波電圧含有率が0.5%に下がると、回避台数範囲が43台以上70台となり、回避台数範囲が狭くなる。このため、不必要に変換器の運転台数を制限する必要がなくなる。従って、運用中の不必要な制限を回避することができる。
【0052】
[3.第3の実施形態]
第3の実施形態は、
図5及び
図6を用いて説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態の基本構成と同じである。以下では、第1の実施形態と異なる点のみを説明し、第1の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
図5は、第3の実施形態に係るコントローラ3及び変換器14の機能ブロック図である。第3の実施形態のコントローラ3には、負荷電力指令部341が設けられている。負荷電力指令部341は、負荷15に対して電力消費させる指令を出力する。
【0054】
図6に示すように、系統連系設備1内において、負荷消費電力が大きい方が、小さい場合と比べて、当該設備1内の高調波電圧が低下する傾向にある。換言すれば、系統連系設備1内に発生する高調波電圧は抵抗性負荷に流れる電流が大きい程、その含有率が低下する特性があることから、負荷電力指令部331によりヒータやインバータなどの負荷15に動作させる指令を出力することで、設備1内の高調波電圧を低下させることができる。
【0055】
この電力消費指令は、開閉器12の閉台数が、所定の閾値超の高調波電圧含有率となる閉台数範囲にある場合に出力すると良い。また、系統連系設備1内の機器の設備のメンテナンス時など、高調波電圧含有率が大きくなる時に当該指令を出力すると効果的である。
【0056】
[4.第4の実施形態]
第4の実施形態は、第1の実施形態の基本構成と同じである。以下では、第1の実施形態と異なる点のみを説明し、第1の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
第4の実施形態は、コントローラ32による開閉器12と変換器14の制御態様に関する。すなわち、系統連系設備1は、直列接続された開閉器12と変換器14を一組として当該組を複数有する。そして、コントローラ32は、開閉器12に閉状態とする指令を出力し、当該指令により閉状態となった開閉器12に直列接続された変換器14をスイッチングする指令を出力する制御を1つの単位として、開閉器12と変換器14の組ごとに順に当該制御をする。例えば、1台目の開閉器12を閉とした後に、当該開閉器12と直列接続された変換器14のスイッチングを行う。そしてその後、2台目の開閉器12と閉とするというように、各組ごとに順に行う。
【0058】
以上のようなコントローラ32の制御により、系統連系設備1に発生する高調波電圧を常に低い状態に抑制しながら開閉器12を投入していくことができる。つまり、例えば開閉器12と変換器14が100台ずつある場合に、100台の開閉器12を一斉に投入した後に、100台の変換器14をスイッチングさせたとしても、結果的に100台の変換器14が動作していることに変わりはないが、開閉器12と変換器14を一組ずつ投入及びスイッチングをさせることで、高調波電圧を常に低い状態に抑制することができる。このような振る舞いをするのは、系統連系設備1内の回路状態が1台ずつスイッチングさせる場合と全台同時にスイッチングさせる場合とで異なることが要因と考えられる。
【0059】
このような一組ずつ行う投入及びスイッチングの制御は、高調波電圧が増大する閉台数範囲になる前に行うことが好ましい。また、開閉器12と変換器14の全組について、当該制御を行っても良いし、少なくとも一組行っても高調波電圧の抑制効果は得られる。本制御は、変換器14のメンテナンス終了後に、当該変換器14を動作させる場合に行うと良い。
【0060】
[5.第5の実施形態]
第5の実施形態は、
図7を用いて説明する。第5の実施形態は、第1の実施形態の基本構成と同じである。以下では、第1の実施形態と異なる点のみを説明し、第1の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
変換器14は、その種類によっては、外部から充放電指令値を受けても当該指令値が低出力である場合に出力を行わない不感帯を有している場合がある。第5の実施形態は、変換器14が不感帯を有する場合のコントローラ32の制御に関する。
【0062】
図7は、第5の実施形態に係るコントローラ3及び変換器14の機能ブロック図である。
図7に示すように、コントローラ32は、変換器14の不感帯のデータベース351を有する。データベース351には、不感帯の上限及び下限が格納されている。コントローラ32は、データベース351に基づいて、充放電指令部331により、変換器14の合計出力が0に近づくように充放電指令値を生成し、当該指令値を変換器14に出力する。コントローラ32は、合計出力が0となる充放電指令値を出力することが好ましい。
【0063】
このコントローラ32による変換器14の制御について具体的に説明する。例えば、変換器14の有する不感帯の上限が蓄電池システム2から電力系統への放電方向を正として+10kW、下限が−10kWとすると、充放電指令部331は、変換器14の合計出力が0となるように、当該上限又は下限を充放電指令値として生成する。例えば変換器14が100台ある場合、50台を+10kWの指令値とし、残りの50台を−10kWの指令値とする。なお、各変換器14への指令値の正負の振り分けは、任意であり、適宜設計変更可能である。
【0064】
以上のようなコントローラ32により、電力系統への悪影響を防止するとともに、高調波電圧抑制効果を得られやすくすることができる。具体的に説明すると、系統連系設備1内に変換器14が100台設置されている場合、例えば全台が10kWの出力を行うと電力系統に1000kWの電力が逆潮流することになり、電力系統に悪影響を与える可能性がある。また、電力系統に悪影響を与えなくても、変換器14の合計出力が0から離れると、高調波電圧抑制効果を妨げる可能性がある。そのため、変換器14の合計出力が0に近づく指令値を出力することで、高調波電圧抑制効果が得られやすくすることができる。開閉器12の閉台数が回避台数範囲である判定される場合に当該制御を行うと良い。
【0065】
また、変換器14が不感帯を有する場合であっても、変換器14に特別な構成を要することなく、高調波電圧を抑制することができる。
【0066】
[6.第6の実施形態]
第6の実施形態は、
図8を用いて説明する。第6の実施形態は、第5の実施形態の基本構成と同じである。以下では、第5の実施形態と異なる点のみを説明し、第5の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0067】
図8は、第6の実施形態に係るコントローラ3及び変換器14の機能ブロック図である。コントローラ32は、高調波低減用指令値送信部361、起動シーケンス完了受信部362を有し、変換器14は、高調波低減用指令値受信部144、起動シーケンス完了送信部145を有する。
【0068】
高調波低減用指令値送信部361は、不感帯の有無に関わらず、出力電力を0とする高調波低減用指令値を、起動信号とともに変換器14に送信する。起動シーケンス完了受信部362は、変換器14から起動シーケンスが完了した旨の信号を受信する。
【0069】
高調波低減用指令値受信部144は、高調波低減用指令値送信部361からの高調波低減用指令値を受信する。起動シーケンス完了送信部145は、変換器14が、起動信号送信部328からの起動信号と高調波低減用指令値送信部361からの高調波低減用指令値とを受け、起動及びスイッチングが完了した旨の信号を起動シーケンス完了受信部362に送信する。
【0070】
以上の構成を有することにより、変換器14に不感帯が備わっている場合であっても、変換器14の合計出力を0とすることができるとともに、変換器14間の通信遅れや、同一変換器14における起動信号と高調波低減用指令値との伝送遅れがあっても、高調波電圧を低減した状態で変換器14の起動シーケンスを完了することできる。
【0071】
また、コントローラ32は、変換器14から起動シーケンス完了信号を受け、出力電力を0とする運転が不要となった場合、不感帯機能を回復させることが望ましい。変換器14の損失を低減させることができるからである。すなわち、コントローラ32は、変換器14から起動シーケンス完了信号を受けた場合、指令値の送信を高調波低減用指令値送信部361から充放電指令部331に切り換える。これにより、少なくとも不感帯の上限又は下限で変換器14に出力させることができるので、出力させない場合より損失を低減させることができる。
【0072】
[7.その他の実施形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0073】
(1)第1乃至第6の実施形態において、管理者入力部312や表示部314を上位コントローラ31に設けたが、設備内コントローラ32に設けても良い。
【0074】
(2)第1乃至第6の実施形態において、高調波電圧含有率は、7次の高調波電圧を例に説明したが、これに限らず、3次、5次、9次、11次、13次の高調波電圧含有率の特性に基づいて、開閉器12の閉台数を回避台数範囲外とする制御を行っても良い。系統連系設備1に含まれる確率は、5次、7次が高く、11次、13次が中程度であることから、第2の実施形態において、高調波電圧含有率の変動を契機に回避台数範囲を変更する場合には、優先的に5次又は7次の高調波電圧含有率の変動を見ると良い。これらの変動がなくても、11次又は13次の高調波電圧含有率の変動があれば、回避台数範囲を変更しても良い。