【実施例】
【0203】
以下に実施例、比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0204】
[実施形態I]
《セルロース繊維シートの物性測定及び評価方法》
〈セルロース微細繊維の数平均繊維径〉
繊維シートにおいて、セルロース微細繊維の表面より、無作為に10箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を微細繊維の繊維径に応じて1,000〜100,000倍相当の倍率で行った。得られたSEM画像に対し、画面に対し水平方向と垂直方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の繊維径を拡大画像から実測し、交差する繊維の個数と各繊維の繊維径を数えた。こうして一つの画像につき縦横2系列の測定結果を用いて数平均繊維径を算出した。さらに抽出した他の2つのSEM画像についても同じように数平均繊維径を算出し、合計10画像分の結果を平均化した。
【0205】
〈セルロース微細繊維の最大繊維径〉
セルロース微細繊維からなる構造体の表面より、無作為に10箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を倍率500倍で行った。得られたSEM画像10枚内で最も太い繊維の繊維径をセルロース微細繊維シートにおける最大繊維径とした。他の不織布などに積層させた積層シートについては、セルロース微細繊維シート側からSEM観察を行った。
【0206】
〈シート目付〉
室温20℃、湿度50%RHの雰囲気下で調湿したサンプルを10.0cm×10.0cmの正方形片に裁断・秤量し、下記式より算出した。
シート目付(g/m
2)=10cm角重量(g)/0.01m
2【0207】
〈シート厚み〉
室温20℃、湿度50%RHの雰囲気下で調湿したサンプルを面接触型のタイプ(Mitutoyo(株)製面接触型膜厚計(Code No.547−401))で10点厚みを測定し、その平均値を該サンプルの厚みとした。
【0208】
〈空隙率〉
セルロース微細繊維の密度を1.5g/cm
3と仮定し、下記式より算出した。
空隙率(%)=100−((目付(g/m
2)/1.5)/シート厚み(μm))×100)
【0209】
〈透気抵抗度〉
室温23℃、湿度50%RHの雰囲気下で調湿したサンプルを王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)で透気抵抗度を10点測定し、その平均値を該サンプルの透気抵抗度とした。
【0210】
《プリプレグ、樹脂複合フィルム、の物性測定及び評価方法》
〈測定用断面サンプルの作製〉
まず、樹脂複合フィルムの両面に白金を真空蒸着した(被膜厚み:10nm)。つづいて、試料フィルムをエポキシ樹脂(2液式エポキシ接着剤)で包埋し、ウルトラミクロトームで断面出しを行った。切削にはダイアモンドナイフを使用し、常温で切削を行った。シリカが含まれるフィルムについては、ミクロトームでシリカを切削できないため、Dual−Beam FIB装置(FEI製、Dual Beam Nova200 Nanolab、加速電圧30kV)を用いてサンプル加工し、フィルムの断面出しを行った。得られた断面サンプルは接着剤−白金−フィルム−白金−接着剤の5層で構成され、白金蒸着を行うことでサンプル中のフィルムの位置を明確にした。
〈顕微赤外イメージング〉
全ての樹脂複合フィルムにセルロース微細繊維および/または微細アラミド繊維が含まれていることを顕微赤外イメージングで確認した。なお、測定は上記樹脂複合フィルムの断面サンプルについて、以下の条件により行った。
・装置 :赤外イメージング顕微鏡NicoletTM iNTM10MX(Thermo ScientificTM)
・分解能 :8cm
−1
・積算回数 :1回
・ステップサイズ:x=2.5μm、y=2.5μm
・測定範囲:4000−600cm
−1【0211】
〈X線構造解析〉
実施例1の複合フィルムに対し、X線構造解析をした結果、X線回折パターンにおいて、2θの範囲を0°〜30°とするX線回折パターンが、10°≦2θ<19°に1つのピークと、19°≦2θ≦30°に2つのピークが確認された。これより、微細繊維が天然セルロースか、再生セルロースであることを特定した。
【0212】
〈原子間力顕微鏡(AFM)測定〉
樹脂複合フィルムの断面サンプルを専用のサンプル固定台に固定し、下記のようなAFM測定条件で断面の弾性率を測定した。
装置 :Bruker社製 Dimension Icon
測定モード :Peak Force Tapping Mode
プローブ :ダイヤモンド単結晶プローブ
ばね定数k=48N/m、先端曲率半径R=12nm
解像度 :512×512ピクセル
測定範囲 :15μm×15μm
サンプリング周波数:0.3−0.7Hz
最大押し込み荷重:50nN
また、解像度512×512ピクセル、測定範囲15μm×15μmでセルロース微細繊維の分布が確認できなかった場合には、上記と同等の解像度で測定範囲を3μm×3μm、さらには測定範囲を1μm×1μmとして測定を行った。
【0213】
〈セルロース微細繊維の充填率〉
セルロース微細繊維の充填率は、樹脂複合フィルム断面のAFM弾性率像においてセルロース微細繊維が樹脂複合フィルム全体で占める面積比として定義した。弾性率は素材ごとに異なり、弾性率のヒストグラムの閾値を設定することで、樹脂複合フィルムに含まれる素材ごとに弾性率マッピングを作製した。たとえば、セルロース微細繊維とエポキシのみからなる樹脂複合フィルムの場合、エポキシ(ソフト相)とセルロース微細繊維(ハード相)からなるコントラスト像が得られる。ヒストグラムは大きく分けて2つのピークからなり、ヒストグラムの2つのピークの中点を2値化における閾値に設定した(セルロース:黒色、エポキシ:白色)。また、樹脂複合フィルムの厚みがAFM測定範囲15μmよりも厚い場合、まず樹脂複合フィルムの断面を複数視野に分けて測定した。つづいて、各視野で弾性率マッピングを作製した後、画像を結合し、樹脂複合フィルム断面が1画像に収まった像を得た。樹脂複合フィルムの断面がすべて写った弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、セルロース微細繊維由来の面積および樹脂複合フィルム全体の面積を算出し、最終的に以下の式よりセルロース微細繊維の充填率を求めた。
セルロース微細繊維の充填率(%)=セルロース微細繊維由来の面積/樹脂複合フィルム全体の面積×100
以上の方法を用いて10か所の樹脂複合フィルム断面のセルロース微細繊維の充填率を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値を樹脂複合フィルム全体のセルロース微細繊維の充填率とした。
【0214】
〈セルロース微細繊維の平均繊維径〉
上記樹脂複合フィルム断面がすべて写った弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、セルロース微細繊維由来の面積(ΣS)およびセルロース微細繊維と他素材(主にエポキシ)との界面の総長さ(ΣL)を求め、その後、下記式に従い、セルロース微細繊維の平均繊維径を算出した。
セルロース微細繊維の平均繊維径(nm)=4×ΣS/ΣL
以上の方法を用いて10か所のフィルム断面のセルロース微細繊維の平均繊維径を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値をフィルム全体のセルロース微細繊維の平均繊維径とした。
【0215】
〈セルロース微細繊維の最大繊維径〉
上記樹脂複合フィルム断面がすべて写った10か所の弾性率マッピングについて、画像編集ソフト「imageJ」の粒子解析を行い、セルロース微細繊維径を真円と見做した時の粒径として算出した。この時、最も大きい粒径をセルロース微細繊維の最大繊維径として採用した。
【0216】
プリプレグにおけるセルロース微細繊維の平均繊維径、及び最大繊維径は、プリプレグを一度、有機溶剤に含浸し、樹脂成分を溶解除去した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、繊維シートの数平均繊維径、最大繊維径を上記と同様にして測定した。
【0217】
〈樹脂複合フィルム内の繊維シートの空隙率〉
上記樹脂複合フィルム断面がすべて写った弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、セルロース微細繊維由来の面積(ΣS)と、同様に算出される繊維シートを構成する繊維間(オーバーコート樹脂層を除く)に含まれる樹脂由来の面積(ΣSp)を算出し、その後、下記式に従い、樹脂複合フィルム内の繊維シートの空隙率を算出した。
樹脂複合フィルム内の繊維シートの空隙率(%)=ΣS/(ΣS+ΣSp)×100
【0218】
〈樹脂複合フィルム全体の無機充填材の充填率〉
樹脂複合フィルム全体の無機充填材の充填率は、上記樹脂複合フィルム断面において無機充填材構成原子が占める面積比として定義した。例えば、シリカ粒子であればSi、水酸化アルミニウム粒子であればAlを測定した。ここではシリカ粒子を例に測定方法を示す。断面サンプルをカーボンペーストおよびオスミウムコーティングにより導通処理を行った後、走査型電子顕微鏡S−4800(日立ハイテクフィールディング社製)を用いて、撮影倍率500倍、加速電圧1.0kV、検出器:二次電子の設定で撮影を行い、断面SEM像を取得した。つづいて、同視野についてエネルギー分散型X線検出器X−Max SILICON DRIFT X−RAY DETECTOR(株式会社堀場製作所製)を用いてCおよびSiの元素マッピングを取得した。面積比は、まずフィルム断面のSEMの二次電子像を画像編集ソフト「imageJ」を用いて、フィルムの外周に相当する部分で切り取り、フィルム断面のみを表示させた。次に2値化を行い、シリカ由来を黒く、その他由来を白く表示した。白黒二値化の閾値は黒く表示される部分がEDXのSiの領域と対応するように選び、黒の面積をカウント数として算出する。また、フィルム断面全体の面積をカウント数として算出する。これらの二つの比により以下の式よりSiがフィルム断面全体に占める割合を算出した。
無機充填材の充填率(%)=無機充填材由来の面積/フィルム全体の面積×100
以上の方法を用いて10か所のフィルム断面の無機充填材の充填率を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値をフィルム全体の無機充填材の平均充填率とした。ここでの二値化は、有機物(樹脂や繊維等)と無機物(無機充填材等)の弾性率差による二値化のことをいう。
【0219】
〈セルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合〉
セルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の充填率は、上記樹脂複合フィルム断面の弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、樹脂複合フィルム中の無機充填材由来の全面積およびセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材由来の面積を算出し、最終的に以下の式よりセルロース微細繊維層の無機充填材の含有率を求めた。なお、セルロース微細繊維層は樹脂複合フィルム最表面から最も近いセルロース微細繊維から順に10点以上を選び、線で結んだ時に囲まれる領域をセルロース微細繊維層と定義する。
セルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の含有率(%)=セルロース微細繊維層中の無機充填材由来の面積/樹脂複合フィルム中の無機充填材由来の全面積×100
以上の方法を用いて10か所の樹脂複合フィルム断面のセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の充填率を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値を、セルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の充填率とした。
【0220】
〈オーバーコート樹脂層の平均厚み〉
樹脂複合フィルム最表面より不織布層表面までの長さをオーバーコート樹脂層と定義する。不織布層とはセルロース微細繊維層を含む有機繊維からなる層と定義する。上記のAFM弾性率マッピングよりエポキシ層(表)/不織布層/エポキシ層(裏)の3層で構成されることが確認できる。フィルム最表面より不織布層表面までの長さを表および裏でそれぞれ10点ずつ測定し、その平均値をオーバーコート樹脂層の厚み(表)、オーバーコート樹脂層の厚み(裏)とした。
【0221】
〈オーバーコート樹脂層の厚み均一性〉
上記(7)で測定した10点のオーバーコート樹脂層の厚みの標準偏差および平均値より、変動係数を求めた。変動係数が20%未満の場合「○」、20%以上50%未満の場合「△」、50%以上の場合「×」とした。
変動係数(%)=オーバーコート樹脂層の厚みの標準偏差/オーバーコート樹脂層の平均厚み×100
【0222】
〈樹脂複合フィルムの厚み〉
樹脂複合フィルム内10点の厚みを測定し、その平均値を厚みとした。膜厚計として面接触型のタイプ(Mitutoyo(株)製面接触型膜厚計(Code No.547−401))を使用した。
【0223】
〈吸湿率〉
樹脂複合フィルムを50mm角に切断し、120℃で2時間乾燥させた後、初期質量(W0)を測定し、その後、湿度:85%/温度:85℃/192時間の条件で吸湿処理した後の質量(W1)を測定した。そして、下記の式より吸湿率を求めた。
吸湿率(%)=(W1−W0)/W0×100
【0224】
〈透過率〉
本実施形態の樹脂複合フィルムは、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。透過率は、ASTM D1003に基づき、ヘイズメーターNDH7000SP CU2II(製品名)(日本電色工業株式会社製)を使用した光透過性試験によって測定できる。
【0225】
〈誘電特性(比誘電率及び誘電正接)〉
厚み0.8mmの厚膜樹脂複合フィルムを、1.5(幅)×80mm(長さ)のサイズに切り出し、測定サンプルとした。測定は、空洞共振法(8722ES型ネットワークアナライザー、アジレントテクノロジー製;空洞共振器、関東電子応用開発製)を用いて、1GHzの値を測定した。
【0226】
〈銅箔の引き剥がし強さ(ピール強度)〉
銅張積層板に幅1cm、長さ10cmの切れ込みを入れ、その一端を剥がして島津製作所製のオートグラフAGS−500で掴み、室温にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
【0227】
〈回路埋め込み性評価〉
絶縁層積層体のライン/スペース比=600/660μmの櫛歯パターンの櫛歯パターン上の絶縁層を表面から光学顕微鏡で観察し、ボイドなくしっかりと埋め込まれているものを「○」とし、ボイド発生や樹脂の浮きがあるものを「×」とした。
【0228】
〈冷熱衝撃耐性試験〉
めっき処理積層体に対し、冷熱衝撃装置(Espec社製、TSA−71S−A/W)を用い、MIL−STD−883Eの条件A(−55℃〜125℃)に基づき、低温(−55℃)および高温(125℃)における暴露時間を各30分とし、これを200サイクル行なった。光学顕微鏡写真(透過光、倍率:×25〜×100)及び断面SEM(倍率:×5000)を用いて、銅配線、銅・樹脂界面などの故障状況を観察し、官能評価を以下の基準で行なった。故障箇所が少ないほど密着性に優れると評価した。
◎:表記条件の観察により確認される故障箇所が1個以下
○:表記条件の観察により確認される故障箇所が2個以上5個以下
△:表記条件の観察により確認される故障箇所が6個以上10個以下
×:表記条件の観察により確認される故障箇所が11個以上
【0229】
《スラリーの製造例》
〈スラリー製造例1〉
双日(株)より入手した再生セルロース繊維であるテンセルカット糸(3mm長)を洗浄用ネットに入れて界面活性剤を加え、洗濯機で何度も水洗することにより、繊維表面の油剤を除去した。
【0230】
得られた精製テンセル繊維(カット糸)を固形分1.5重量%となるように水中に分散させて(400L)、ディスクレファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmで400Lの該水分散体を20分間叩解処理した。それに引き続き、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で叩解処理を続けた。経時的にサンプリングを行い、サンプリングスラリーに対して、JIS P 8121で定義されるパルプのカナダ標準ろ水度試験方法(以下、CSF法)のCSF値を評価したところ、CSF値は経時的に減少していき、一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けると、増大していく傾向が確認された。クリアランスをゼロ近くとしてから10分間、上記条件で叩解処理を続け、CSF値で100ml以上の叩解水分散体を得た。得られた叩解水分散体を、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS015H)を用いて操作圧力100MPa下で5回の微細化処理を実施し、セルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0231】
〈スラリー製造例2〉
原料として天然セルロースであるリンターパルプを用いた。リンターパルプが4重量%となるように水に浸液させてオートクレーブ内で130℃、4時間の熱処理を行い、得られた膨潤パルプを何度も水洗し、水を含浸した状態の膨潤パルプを得た。その後、製造例1と同様の方法でディスクリファイナーおよび高圧ホモジナイザー処理を行い、セルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。CSF値は100ml以上であった。
【0232】
〈スラリー製造例3〉
原料をアバカパルプに変えた以外はスラリー製造例2と同じ方法でセルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。CSF値は630ml以上であった。
【0233】
〈スラリー製造例4〉
原料を帝人(株)のアラミド繊維(1mm長)に変えた以外はスラリー製造例1と同じ方法で微細アラミド繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0234】
〈スラリー製造例5〉
操作圧力100MPa下での微細化処理を30回実施した以外はスラリー製造例2と同じ方法でセルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0235】
〈スラリー製造例6〉
操作圧力100MPa下での微細化処理を30回実施した以外はスラリー製造例4と同じ方法で微細アラミド繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0236】
〈スラリー製造例7〉
CSF値がゼロとなった時点で処理を止めた以外はスラリー製造例1と同じ方法でセルロース微細繊維スラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0237】
〈スラリー比較製造例1〉
特開2006−316253の実施例4を参考にシート製造を行った。2.0%のグルコースを添加した多糖生産培地(Polysaccharide−production−medium,Akihiko Shimada、Vivaorigino,23,1、52−53、1995)を高圧蒸気殺菌処理した後、その1000Lを内容量3000Lの発酵槽に入れ、CF−002株を104CFU/mlになるように接種し、通気下、30℃で2日間、通気下での撹拌培養を行い、バクテリアセルロース(BC)を大量に含む分散体を得た。その後、スクリーンメッシュで濾別水洗、圧搾後、1%NaOH溶液に浸漬し、除菌後、再度中和、水洗、圧搾を行った。さらに水洗と圧搾の工程を3度繰り返し、精製された綿状のBC/水分散体(セルロース含有率:11.6重量%)を得た。得られた分散体をセルロース濃度が1.0重量%となるように水で希釈し、家庭用ミキサーで10分間予備分散した後に、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS3015H)を用いて、操作圧力80MPa下で4回の分散処理を実施した。
【0238】
《シートの製造例》
〈シート製造例1〉
前記スラリー製造例1のスラリーを固形分濃度0.2重量%まで希釈し、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。PET/ナイロン混紡製の平織物(敷島カンバス社製、NT20:大気下25℃での水透過量:0.03ml/(cm
2・s)、セルロース微細繊維を大気圧下25℃における濾過で99%以上濾別する能力あり)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に目付10g/m
2のセルロースシートを目安に、上記調整した抄紙スラリーを投入し、その後大気圧に対する減圧度を4KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
【0239】
得られた濾布上に乗った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm
2の圧力で1分間プレスした後、湿紙面をドラム面に接触させるようにして、湿紙/濾布の2層の状態で表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーに湿紙がドラム面に接触するようにして約120秒間乾燥させた。得られた乾燥した2層体からセルロースのシート状構造物から濾布を剥離させて、白色のセルロース微細繊維シート(25cm×25cm、10g/m
2)を得た。つづいて、セルロース微細繊維シートをカレンダー装置によって平滑化処理を施し(由利ロール(株)製、油圧式2本ロールテストエンボス機、上ロール:金属/下ロール:アラミド、面長300mm、温度:室温、圧力:1.5ton/300mm)、薄層のセルロース微細繊維シートS1を得た。
【0240】
〈シート製造例2〉
前記スラリー製造例2のセルロース微細繊維スラリー50重量部、前記スラリー製造例4の微細アラミド繊維スラリー50重量部を混合し、固形分濃度0.2重量%まで希釈した。つづいて、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。つづく抄紙・乾燥・平滑化工程はシート製造例1と同様の手法を用い、微細アラミド繊維を含む乳白色のセルロース微細繊維シートS2を得た。
【0241】
〈シート製造例3〉
スラリー製造例3のスラリー(312.5g)に、1−ヘキサノール及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「60SH−4000」、信越化学工業製)をそれぞれ1.2重量%(3.9g)、0.012重量%(0.039g)添加し、家庭用ミキサーで4分間乳化、分散化させた。それ以外は、該抄紙スラリー用いて実施例1と同様の方法で抄紙・乾燥・平滑化を行い、セルロース微細繊維シートS3を得た。
【0242】
〈シート製造例4〉
前記スラリー製造例2のセルロース微細繊維スラリー70重量部、前記スラリー製造例4の微細アラミド繊維スラリー30重量部を混合し、固形分濃度0.2重量%まで希釈した。つづいて、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。抄紙スラリー312.5gをスリーワンモーターで撹拌させながら、カチオン性ブロックポリイソシアネート(商品名「メイカネートWEB」、明成化学工業株式会社製、固形分濃度1.0重量%まで希釈)を1.9g滴下した後3分間撹拌を行い、抄紙スラリー(合計314.4g)を得た。添加したカチオン性ブロックポリイソシアネート重量比率はセルロース微細繊維および微細アラミド繊維固形分重量に対して、3重量%であった。シート製造例1と同様の抄紙・乾燥・平滑化手法を用いてシート化した。そして、平滑化工程を経た後、シートを2枚のSUS製金枠(25cm×25cm)で挟み、クリップで固定し、オーブンで160℃、2分間の熱処理を行い、ブロックポリイソシアネートで架橋された微細アラミド繊維を含む乳白色のセルロース微細繊維シートS4を得た。
【0243】
〈シート製造例5〉
シート製造例1の手法を用い、PET/ナイロン混紡製の平織物の上にキュプラ長繊維不織布(旭化成せんい株式会社製、商品名:ベンリーゼ SN140 目付:14g/m
2、膜厚:70μm、密度:0.2g/cm
3、平均単糸繊度:0.2dtex)を重ねた状態で抄紙を行い、キュプラ長繊維不織布上にセルロース微細繊維シートが積層された繊維シートS5を作製した。なお、平滑化工程は行わなかった。
【0244】
〈シート製造例6〉
シート製造例1の抄紙スラリー468.8gをスリーワンモーターで撹拌させながら、カチオン性ブロックポリイソシアネート(商品名「メイカネートWEB」、明成化学工業株式会社製、固形分濃度1.0重量%まで希釈)を2.85g滴下した後3分間撹拌を行い、抄紙スラリー(合計471.65g)を得た。添加したカチオン性ブロックポリイソシアネート重量比率はセルロース微細繊維固形分重量に対して、3.0重量%であった。シート製造例4と同様の抄紙・乾燥・平滑化手法を用いてシート化した。その後、該乾燥シートを2枚のSUS製金枠(25cm×25cm)で挟み、クリップで固定し、オーブンで160℃、2分間の熱処理を行い、ブロックポリイソシアネートで架橋されたセルロース微細繊維を含む白色のセルロース微細繊維シートS6を得た。
【0245】
〈シート製造例7〉
前記スラリー製造例5のセルロース微細繊維スラリー50重量部、前記スラリー製造例6の微細アラミド繊維スラリー50重量部を混合し、固形分濃度0.2重量%まで希釈した。つづいて、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。つづく抄紙・乾燥・平滑化工程はシート製造例1と同様の手法を用い、微細アラミド繊維を含む乳白色のセルロース微細繊維シートS7を得た。
【0246】
〈シート製造例8〉
前記スラリー製造例7のセルロース微細繊維スラリー468.8gをスリーワンモーターで撹拌させながら、カチオン性ブロックポリイソシアネート(商品名「メイカネートWEB」、明成化学工業株式会社製、固形分濃度1.0重量%まで希釈)を2.85g滴下した後3分間撹拌を行い、抄紙スラリー(合計471.65g)を得た。添加したカチオン性ブロックポリイソシアネート重量比率はセルロース微細繊維固形分重量に対して、3.0重量%であった。シート製造例4と同様の抄紙・乾燥・平滑化手法を用いてシート化した。その後、該乾燥シートを2枚のSUS製金枠(25cm×25cm)で挟み、クリップで固定し、オーブンで160℃、2分間の熱処理を行い、ブロックポリイソシアネートで架橋されたセルロース微細繊維を含む白色のセルロース微細繊維シートS8を得た。
【0247】
〈シート比較製造例1〉
スラリー比較製造例1で得られたセルロース濃度1.0重量%の分散液を、さらに水でセルロース濃度0.40重量%となるように希釈し、再度家庭用ミキサーで5分間分散処理を行い、得られた分散液を抄紙用分散液として使用した。得られた湿紙上をさらに同じ濾布で覆い、金属製ローラーにて脱水し、セルロース濃度が12〜13重量%となるように調節した。得られた湿紙はPET織物を剥がさないまま、まずアセトン中に浸漬し時々全体を軽くすすぎながら約10分間置換処理を行った後に、トルエン/アセトン=50/50(g/g)の混合溶液に浸漬し、時々全体を軽くすすぎながら約10分間、置換処理を行った。その直後に濾布で挟んだ湿紙を金属板上に乗せ、その上に錘を乗せて定長で乾燥されるようにして、乾燥オーブン内にセットして、100℃で50分間乾燥させた。乾燥後、不織布を濾布から剥がすことにより、白色のセルロースシートRS1を得た。
【0248】
シート製造例及びシート比較製造例の原料、製造方法及び物性を表1に示す。
【0249】
《ワニスの製造例》
〈ワニス製造例1〉
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V1)を調整した。
・臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂1121N−80M(大日本インキ化学)78.9重量部
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂N680−75M(大日本インキ化学)14.0重量部
・ジシアンジアミド(大日本インキ化学)2.0重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0重量部
・球状シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)32.0重量部
【0250】
〈ワニス製造例2〉
球状シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)98.0重量部を入れる以外はワニス製造例1と同じ方法でワニスV2を製造した。
【0251】
〈ワニス製造例3〉
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混合した固形分70重量%のワニス(V5)を調整した。
・ナフタレン型エポキシ樹脂HP−9500(大日本インキ化学)54.3重量部
・液状脂環式酸無水物MH−700(新日本理化)40.6重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0重量部
【0252】
〈ワニス製造例4〉
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混合した固形分70重量%のワニス(V4)を調整した。
・ビフェニル型エポキシ樹脂NC−3000H(日本化薬)39.2重量部
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂1051(大日本インキ化学)39.2重量部
・アミノトリアジンノボラック樹脂LA−3018(大日本インキ)16.5重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0重量部
・水酸化アルミニウムH−43S(昭和電工、平均粒径0.7μm)61.0重量部
・架橋微粒子ゴムXER−91(JSR)2.5重量部
【0253】
〈ワニス製造例5〉
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混合した固形分70重量%のワニス(V5)を調整した。
・脂環式エポキシ樹脂2021P(ダイセル)20.0重量部
・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂HP−7200H 30.0重量部
・活性エステル型硬化剤HPC8000−65T(大日本インキ化学)50.0重量部
・4−ジメチルアミノピリジン(東京化成工業)0.1重量部
【0254】
〈ワニス製造例6〉
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混合した固形分70重量%のワニス(V6)を調整した。
・ポリスチレン(和光純薬)100.0重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0重量部
・球状シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)32.0重量部
・架橋微粒子ゴムXER−91(JSR)2.5重量部
【0255】
〈ワニス製造例7〉
球状シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)121.0重量部を入れる以外はワニス製造例1と同じ方法でワニスV7を製造した。
【0256】
〈ワニス製造例8〉
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V8)を調整した。
・臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂1121N−80M(大日本インキ化学)83.1重量部
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂N680−75M(大日本インキ化学)14.7重量部
・ジシアンジアミド(大日本インキ化学)2.1重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)60.6重量部
【0257】
〈ワニス比較製造例1〉
特開2006−316253の実施例4を参考にワニス製造を行った。下記化合物を120℃まで加熱し、混練機で混合した固形分100wt%のワニス(RV1)を調整した。
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ、AER−250)85.0重量部
・m−キシリレンジアミン15.0重量部
【0258】
ワニス製造例及びワニス比較製造例の組成、及び固形分率を表2に示す。なお、表2中の各成分の数値は、重量部を表す。
【0259】
《樹脂複合フィルムの製造例》
〈実施例1〉
(1)プリプレグの作製
20cm角ポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離型面にワニスV1をフィルムアプリケーターで0.3g塗布した後、10cm角に裁断した上記セルロース微細繊維シート(S1)を置き、さらに該ワニスV1をセルロース微細繊維シート上にアプリケーターで再度0.3g塗布した。得られたフィルムを100℃、4分加熱して溶媒を除去するとともに半硬化物のプリプレグを得た。
【0260】
(2)樹脂複合フィルムの作製
該プリプレグに別のポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離形面が接するように被せた後、真空熱プレス機で硬化を行った(加熱温度220℃、圧力6.0MPa、時間160分)。得られた硬化フィルムより支持フィルムを外し、樹脂複合フィルムを得た。
【0261】
得られた樹脂複合フィルムのAFM弾性率像を
図1(a)に、弾性率ヒストグラムを
図1(b)に、2値化像を
図1(c)にそれぞれ示す。なお、
図1(c)において斜線部がセルロース部と対応する。
【0262】
さらに、得られた
図1(a)の樹脂複合フィルム断面の弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、無機充填材由来の面積およびセルロース微細繊維層に含まれるシリカフィラーの由来の面積を算出し、フィルム最表面から最も近いセルロース微細繊維を10点以上選び、線で結んだ時に囲まれる領域をセルロース微細繊維層として定義したときの処理画像を
図2に示す。
【0263】
(3)銅張積層板の作製
最終的な硬化物の厚みが0.7〜0.9mmの範囲に入るように上記プリプレグを所定枚数枚重ね、電解銅箔F2−WS(古河サーキットフォイル、厚さ18μm、処理面のRz=2.3μm)を上下に配置し、圧力2.5MPa、温度240℃で60分間プレスを行って、銅張積層板を得た。
【0264】
(4)厚膜樹脂複合フィルムの作製
該銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより、銅箔を取り除いた、厚さ0.8mmの評価用の厚膜樹脂複合フィルムを作製した。
【0265】
(5)内層回路基板の作製
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ35μm、基板の厚さ0.8mm、松下電工(株)製「R5715ES」)に、IPC MULTI−PURPOSE TEST BOARD NO. IPC C−25のパターン(ライン/スペース比=600/660μmの櫛歯パターン(残銅率48%))を形成した。次いで、基板の両面をマイクロエッチング剤(メック(株)製「CZ8100」)で粗化処理し、内層回路基板を作製した。
【0266】
(6)絶縁層積層体の作製
前記内層回路基板の両面に前記プリプレグを(株)名機製作所製真空ラミネーターにより、温度120℃、圧力7kgf/cm
2、気圧5mmHg以下の条件でラミネートし、さらに連続的に温度120℃、圧力5kgf/cm
2、大気圧の条件でSUS鏡板による熱プレスを行った。次いでPETフィルムを剥がした後、180℃、30分熱硬化させ、基板両面に絶縁層を形成した。
【0267】
(7)粗化処理積層体の作製
絶縁層を形成した回路基板の樹脂硬化物層を化学粗化するために、膨潤液として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル:200ml/L、NaOH:5g/Lの水溶液を作製し、80℃に加温して5分間浸漬処理した。次に、粗化液として、KMnO
4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液を作製し、80℃に加温して15分間浸漬処理した。引き続き、中和液(SnCl
2:30g/L、HCl:300ml/L)の水溶液を作製し、40℃に加温して5分間浸漬処理し、KMnO
4を還元した。
【0268】
(8)めっき処理積層体の作製
粗化処理を行った絶縁層表面にセミアディティブ工法で回路を形成するために、内層回路基板を、PdCl2を含む無電解メッキ用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成(L/S=40μm/40μm、長さ5cmのストレートなスリット状配線)の後に、硫酸銅電解メッキおよびアニール処理を200℃にて60分間行い、30μmの厚さで導体層を形成した。
【0269】
〈実施例2〉
セルロース微細繊維シートをS2にした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF2(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0270】
〈実施例3〉
ワニス(V2)の塗布量を0.9gにした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF3(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0271】
〈実施例4〉
セルロース微細繊維シートをS3に、ワニスをV3に、さらにワニスの塗布量を0.1gにした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF4(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。樹脂複合フィルムの全光線透過率を測定したところ、82%であった。
【0272】
〈実施例5〉
セルロース微細繊維シートをS4に、ワニスをV4に、さらにワニスの塗布量を0.1gにした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF5(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0273】
〈実施例6〉
20cm角ポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離型面にワニス(V5)をフィルムアプリケーターで0.8g塗布した後、10cm角に裁断した上記セルロース微細繊維積層シート(S5)をセルロース微細繊維面が接するように置き、さらにワニス(V5)をセルロース微細繊維シート上にアプリケーターで再度8.0g塗布した。それ以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF6(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0274】
〈実施例7〉
ワニスをV6に変更した以外は実施例6と同じ方法で各種樹脂複合フィルムF7(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0275】
〈実施例8〉
ワニスをV7に変更し、ワニスの塗布量を9.0gにし、セルロース微細繊維シートをS6にした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF8(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0276】
〈実施例9〉
セルロース微細繊維シートをS7に、ワニスをV8にした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF9(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0277】
〈実施例10〉
セルロース微細繊維シートをS8に、ワニスをV1にした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF10(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0278】
〈実施例11〉
20cm角ポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離型面にセルロース微細繊維シートS6を置き、その上に60μm厚のポリプロピレンフィルムを乗せ、さらに別のポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離形面が接するように被せた。これを加熱プレス機にて、200℃、10分間の加熱プレスを行い、セルロース微細繊維シートS6をポリプロピレンフィルムに埋め込んだ。
続いて、もう一度、20cm角ポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離型面にセルロース微細繊維シートS6付ポリプロピレンフィルムを置き、セルロース微細繊維シートS6が外側に出ている方へ60μm厚のポリプロピレンフィルムを乗せ、さらに別のポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離形面が接するように被せた。これを加熱プレス機にて、200℃、10分間の加熱プレスを行い、セルロース微細繊維シートS6が両側にポリプロピレンフィルムで挟まれた樹脂複合フィルムF11を作製した。
樹脂複合フィルムF11については、実施例1(5)で作製した内層回路基板に対し、両面に前記樹脂複合フィルムF11を(株)名機製作所製真空ラミネーターにより、温度200℃、圧力7kgf/cm
2、気圧5mmHg以下の条件でラミネートし、さらに連続的に温度200℃、圧力5kgf/cm
2、大気圧の条件でSUS鏡板による熱プレスを行った。次いでPETフィルムを剥がし、回路埋め込み性評価のみを行った。
【0279】
〈比較例1〉
特開2006−316253の実施例4を参考に樹脂複合フィルム等の製造を行った。ワニス比較製造例1にて得られたワニスRV1を、シート比較製造例1にて得られたセルロース不織布RS1に含浸(含浸時間:5分以内)させたもの1枚を、熱プレス機内にて温度100℃、圧力9.81MPa下にて熱硬化(硬化時間:1時間)させることによって、樹脂複合フィルムRF1を作製した。また、実施例1に従い、各種樹脂複合フィルム(プリプレグ、銅張積層板、評価基板、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0280】
実施例及び比較例で得られた樹脂複合フィルムの物性及び評価結果を表3に示す。
【0281】
【表1】
【0282】
【表2】
【0283】
【表3】
【0284】
[実施形態II]
セルロース微細繊維シート
セルロース微細繊維シートの物性は以下の方法で測定した。
【0285】
[セルロース微細繊維の数平均繊維径]
繊維シートにおいて、セルロース微細繊維の表面より、無作為に10箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を微細繊維の繊維径に応じて1,000〜100,000倍相当の倍率で行った。得られたSEM画像に対し、画面に対し水平方向と垂直方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の繊維径を拡大画像から実測し、交差する繊維の個数と各繊維の繊維径を数えた。こうして一つの画像につき縦横2系列の測定結果を用いて数平均繊維径を算出した。さらに抽出した他の2つのSEM画像についても同じように数平均繊維径を算出し、合計10画像分の結果を平均化した。
【0286】
[セルロース微細繊維の最大繊維径]
セルロース微細繊維から成る構造体の表面より、無作為に10箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を倍率500倍で行った。得られたSEM画像10枚内で最も太い繊維の繊維径をセルロース微細繊維シートにおける最大繊維径とした。他の不織布などに積層させた積層シートについては、セルロース微細繊維シート側からSEM観察を行った。
【0287】
[シート目付]
室温20℃、湿度50%RHの雰囲気下で調湿したサンプルを10.0cm×10.0cmの正方形片に裁断・秤量し、下記式より算出した。
シート目付(g/m
2)= 10cm角重量(g)/0.01m
2【0288】
[シート厚み]
室温20℃、湿度50%RHの雰囲気下で調湿したサンプルを面接触型のタイプ(Mitutoyo(株)製面接触型膜厚計(Code No.547−401))で10点厚みを測定し、その平均値を該サンプルの厚みとした。
【0289】
[空隙率]
セルロース微細繊維の密度を1.5g/cm
3と仮定し、下記式より算出した。
空隙率(%)=100−([目付(g/m
2)/{シート厚み(μm)×1.5(g/cm
3)}]×100)
【0290】
[透気抵抗度]
室温23℃、湿度50%RHの雰囲気下で調湿したサンプルを王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)で透気抵抗度を10点測定し、その平均値を該サンプルの透気抵抗度とした。
【0291】
[スラリー製造例1]
双日(株)より入手した再生セルロース繊維であるテンセルカット糸(3mm長)を洗浄用ネットに入れて界面活性剤を加え、洗濯機で何度も水洗することにより、繊維表面の油剤を除去した。
得られた精製テンセル繊維(カット糸)を固形分1.5重量%となるように水中に分散させて(400L)、ディスクレファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmで400Lの該水分散体を20分間叩解処理した。それに引き続き、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で叩解処理を続けた。経時的にサンプリングを行い、サンプリングスラリーに対して、JIS P 8121で定義されるパルプのカナダ標準ろ水度試験方法(以下、CSF法)のCSF値を評価したところ、CSF値は経時的に減少していき、一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けると、増大していく傾向が確認された。クリアランスをゼロ近くとしてから10分間、上記条件で叩解処理を続け、CSF値で100ml以上の叩解水分散体を得た。得られた叩解水分散体を、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS015H)を用いて操作圧力100MPa下で5回の微細化処理を実施し、セルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0292】
[スラリー製造例2]
原料として天然セルロースであるリンターパルプを用いた。リンターパルプが4重量%となるように水に浸液させてオートクレーブ内で130℃、4時間の熱処理を行い、得られた膨潤パルプを何度も水洗し、水を含浸した状態の膨潤パルプを得た。その後、製造例1と同様の方法でディスクリファイナーおよび高圧ホモジナイザー処理を行い、セルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。CSF値は100ml以上であった。
【0293】
[スラリー製造例3]
原料をアバカパルプに変えた以外はスラリー製造例2と同じ方法でセルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。CSF値は630ml以上であった。
【0294】
[スラリー製造例4]
原料を帝人(株)のアラミド繊維(1mm長)に変えた以外はスラリー製造例1と同じ方法でアラミド微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0295】
[スラリー製造例5]
操作圧力100MPa下での微細化処理を30回実施した以外はスラリー製造例2と同じ方法でセルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0296】
[スラリー製造例6]
操作圧力100MPa下での微細化処理を30回実施した以外はスラリー製造例4と同じ方法でアラミド微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0297】
[スラリー製造例7]
CSF値がゼロとなった時点で処理を止めた以外はスラリー製造例1と同じ方法でセルロース微細繊維スラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0298】
[スラリー比較製造例1]
特開2006−316253の実施例4を参考にシート製造を行った。2.0%のグルコースを添加した多糖生産培地(Polysaccharide−production−medium,Akihiko Shimada、Vivaorigino,23,1、52−53、1995)を高圧蒸気殺菌処理した後、その1000Lを内容量3000Lの発酵槽に入れ、CF−002株を104CFU/mlになるように接種し、通気下、30℃で2日間、通気下での撹拌培養を行い、バクテリアセルロース(BC)を大量に含む分散体を得た。その後、スクリーンメッシュで濾別水洗、圧搾後、1%NaOH溶液に浸漬し、除菌後、再度中和、水洗、圧搾を行った。さらに水洗と圧搾の工程を3度繰り返し、精製された綿状のBC/水分散体(セルロース含有率:11.6重量%)を得た。次にセルロース濃度が1.0重量%となるように水で希釈し、家庭用ミキサーで10分間予備分散した後に、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS3015H)を用いて、操作圧力80MPa下で4回の分散処理を実施した。
【0299】
[シート製造例1]
前記スラリー製造例1のスラリーを固形分濃度0.2重量%まで希釈し、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。PET/ナイロン混紡製の平織物(敷島カンバス社製、NT20:大気下25℃での水透過量:0.03ml/(cm
2・s)、セルロース微細繊維を大気圧下25℃における濾過で99%以上濾別する能力あり)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に目付10g/m
2のセルロースシートを目安に、上記調整した抄紙スラリーを投入し、その後大気圧に対する減圧度を4KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に乗った湿潤状態の濃縮組成物から成る湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm
2の圧力で1分間プレスした後、湿紙面をドラム面に接触させるようにして、湿紙/濾布の2層の状態で表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーに湿紙がドラム面に接触するようにして約120秒間乾燥させた。得られた乾燥した2層体からセルロースのシート状構造物から濾布を剥離させて、白色のセルロース微細繊維シート(25cm×25cm、10g/m
2)を得た。つづいて、セルロース微細繊維シートをカレンダー装置によって平滑化処理を施し(由利ロール(株)製、油圧式2本ロールテストエンボス機、上ロール:金属 / 下ロール:アラミド、面長300mm、温度:室温、圧力:1.5ton/300mm)、薄層のセルロース微細繊維シートS1を得た。
【0300】
[シート製造例2]
前記スラリー製造例2のセルロース微細繊維スラリー50重量部、前記スラリー製造例4のアラミド微細繊維スラリー50重量部を混合し、固形分濃度0.2重量%まで希釈した。つづいて、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。つづく抄紙・乾燥・平滑化工程はシート製造例1と同様の手法を用い、アラミド微細繊維を含む乳白色のセルロース微細繊維シートS2を得た。
【0301】
[シート製造例3]
スラリー製造例3のスラリー(312.5g)に、1−ヘキサノール及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「60SH−4000」、信越化学工業製)をそれぞれ1.2重量%(3.9g)、0.012重量%(0.039g)添加し、家庭用ミキサーで4分間乳化、分散化させた。それ以外は実施例1と同様の方法で抄紙・乾燥・平滑化を行い、セルロース微細繊維シートS3を得た。
【0302】
[シート製造例4]
前記スラリー製造例2のセルロース微細繊維スラリー70重量部、前記スラリー製造例4のアラミド微細繊維スラリー30重量部を混合し、固形分濃度0.2重量%まで希釈した。つづいて、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。抄紙スラリー312.5gをスリーワンモーターで撹拌させながら、カチオン性ブロックポリイソシアネート(商品名「メイカネートWEB」、明成化学工業株式会社製、固形分濃度1.0重量%まで希釈)を1.9g滴下した後3分間撹拌を行い、抄紙スラリー(合計314.4g)を得た。添加したカチオン性ブロックポリイソシアネート重量比率はセルロース微細繊維およびアラミド微細繊維固形分重量に対して、3重量%であった。シート製造例1と同様の抄紙・乾燥手法を用いてシート化した。その後、平滑化工程を経た後、シートを2枚のSUS製金枠(25cm×25cm)で挟み、クリップで固定し、オーブンで160℃、2分間の熱処理を行い、ブロックポリイソシアネートで架橋されたアラミド微細繊維を含む乳白色のセルロース微細繊維シートS4を得た。
【0303】
[シート製造例5]
シート製造例1の手法を用い、PET/ナイロン混紡製の平織物の上にキュプラ長繊維不織布(旭化成せんい株式会社製、商品名:ベンリーゼSN140 目付:14g/m
2、膜厚:70μm、密度:0.2g/cm
3、平均単糸繊度:0.2dtex)を重ねた状態で抄紙を行い、キュプラ長繊維不織布上にセルロース微細繊維シートが積層された繊維シートS5を作製した。なお、平滑化工程は行わなかった。
【0304】
[シート製造例6]
前記スラリー製造例5のセルロース微細繊維スラリー50重量部、前記スラリー製造例6のアラミド微細繊維スラリー50重量部を混合し、固形分濃度0.2重量%まで希釈した。つづいて、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。つづく抄紙・乾燥・平滑化工程はシート製造例1と同様の手法を用い、アラミド微細繊維を含む乳白色のセルロース微細繊維シートS6を得た。
【0305】
[シート製造例7]
前記スラリー製造例7のセルロース微細繊維スラリー468.8gをスリーワンモーターで撹拌させながら、カチオン性ブロックポリイソシアネート(商品名「メイカネートWEB」、明成化学工業株式会社製、固形分濃度1.0重量%まで希釈)を2.85g滴下した後3分間撹拌を行い、抄紙スラリー(合計471.65g)を得た。添加したカチオン性ブロックポリイソシアネート重量比率はセルロース微細繊維固形分重量に対して、3.0重量%であった。シート製造例4と同様の抄紙・乾燥・平滑化手法を用いてシート化した。その後、該乾燥シートを2枚のSUS製金枠(25cm×25cm)で挟み、クリップで固定し、オーブンで160℃、2分間の熱処理を行い、ブロックポリイソシアネートで架橋されたセルロース微細繊維を含む白色のセルロース微細繊維シートS7を得た。
【0306】
[シート比較製造例1]
スラリー比較製造例1で得られたセルロース濃度1.0重量%の分散液をさらに水でセルロース濃度0.40重量%となるように希釈し、再度家庭用ミキサーで5分間分散処理を行い、得られた分散液を抄紙用分散液として使用した。得られた湿紙上をさらに同じ濾布で覆い、金属製ローラーにて脱水し、セルロース濃度が12〜13重量%となるように調節した。得られた湿紙をPET織物を剥がさないまま、まずアセトン中に浸漬し時々全体を軽くすすぎながら約10分間置換処理を行った後に、トルエン/アセトン=50/50(g/g)の混合溶液に浸漬し、時々全体を軽くすすぎながら約10分間、置換処理を行った。その直後に濾布で挟んだ湿紙を金属板上に乗せ、その上に錘を乗せて定長で乾燥されるようにして、乾燥オーブン内にセットして、100℃で50分間乾燥させた。乾燥後、不織布を濾布から剥がすことにより、白色のセルロースシートRS1を得た。
【0307】
[シート製造例1〜7及びシート比較製造例1の詳細]
シート製造例1〜7及びシート比較製造例1の原料、製造方法及び物性を下記表4に示す。
【0308】
ワニス
[ワニス製造例1]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V1)を調整した。
・臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂1121N−80M(大日本インキ化学)78.9重量部
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂N680−75M(大日本インキ化学)14.0重量部
・ジシアンジアミド(大日本インキ化学)2.0重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0重量部
・球状シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)32.0重量部
【0309】
[ワニス製造例2]
球状シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)98重量部を入れる以外はワニス製造例1と同じ方法でワニスV2を製造した。
【0310】
[ワニス製造例3]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V3)を調整した。
・ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂NC−3000(大日本インキ化学)31.5重量部
・クレゾールノボラック型エポキシ樹脂N−690(大日本インキ化学)31.5重量部
・ビフェニルアラルキル型フェノールMEH−7851H(明和化成)30.0重量部
・ジシアンジアミド(大日本インキ化学)1.9重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0重量部
【0311】
[ワニス製造例4]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V4)を調整した。
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂828EL(三菱化学)21.1重量部
・ナフタレン型4官能エポキシ樹脂HP−4710(大日本インキ化学)26.4重量部
・トリアジン含有フェノールノボラック樹脂LA−7054(大日本インキ化学)15.8重量部
・ナフトール系硬化剤SN−485(東都化成)15.8重量部
・ナフトール系硬化剤EXB―9500(大日本インキ化学)15.8重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0重量部
・水酸化アルミニウムH−43S(昭和電工、平均粒径0.7μm)61.0重量部
・架橋微粒子ゴムXER−91(JSR)2.5重量部
【0312】
[ワニス製造例5]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混合した固形分70重量%のワニス(V5)を調整した。
・ナフタレン型エポキシ樹脂HP−9500(大日本インキ化学)57.1重量部
・液状脂環式酸無水物MH−700(新日本理化)42.8重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
【0313】
[ワニス製造例6]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V6)を調整した。
・臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂1121N−80M(大日本インキ化学)83.1重量部
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂N680−75M(大日本インキ化学)14.7重量部
・ジシアンジアミド(大日本インキ化学)2.2重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)60.6重量部
【0314】
[ワニス比較製造例1]
下記化合物を120℃まで加熱し、混練機で混合した固形分100wt%のワニス(RV1)を調整した。
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)製AER−250)85重量部
・硬化剤(m−キシリレンジアミン)15重量部
【0315】
[ワニス製造例1〜6及びワニス比較製造例1の詳細]
ワニス製造例1〜6及びワニス比較製造例1の組成及び固形分率を下記表5に示す。なお、表5中の各成分の数値は、重量部を表す。
【0316】
<樹脂複合フィルム>
樹脂複合フィルムの物性は以下の方法で測定した。
【0317】
[測定用断面サンプルの作製]
まず、樹脂複合フィルム両面に白金を真空蒸着した(被膜厚み:10nm)。続いて、試料フィルムをエポキシ樹脂(2液式エポキシ接着剤)で包埋し、ウルトラミクロトームで断面出しを行った。切削にはダイアモンドナイフを使用し、常温で切削を行った。シリカが含まれるフィルムについては、ミクロトームでシリカを切削できないため、Dual−Beam FIB装置(FEI製、Dual Beam Nova200 Nanolab、加速電圧30kV)を用いてサンプル加工し、フィルムの断面出しを行った。得られた断面サンプルは接着剤−白金−フィルム−白金−接着剤の5層で構成され、白金蒸着を行うことでサンプル中のフィルムの位置を明確にした。
【0318】
[顕微赤外イメージング]
全ての樹脂複合フィルムにセルロース微細繊維および/またはアラミド微細繊維が含まれていることを顕微赤外イメージングで確認した。なお、測定は上記樹脂複合フィルムの断面サンプルについて、以下の条件により行った。
・装置 :赤外イメージング顕微鏡Nicolet
TM iN
TM10MX(Thermo Scientific
TM)
・分解能 :8cm
−1
・積算回数 :1回
・ステップサイズ:x=2.5μm、y=2.5μm
・測定範囲 :4000−600cm
−1【0319】
[X線構造解析]
実施例1の複合フィルムに対し、X線構造解析をした結果、X線回折パターンにおいて、2θの範囲を0°〜30°とするX線回折パターンが、10°≦2θ<19°に1つのピークと、19°≦2θ≦30°に2つのピークが確認された。これより、微細繊維が天然セルロースか、再生セルロースであることを特定した。
【0320】
[フィルム断面のAFM弾性率測定及び弾性率マッピング]
上記の樹脂複合フィルムの断面サンプルを専用のサンプル固定台に固定し、下記のようなAFM測定条件で断面の弾性率を測定した。
装置 :Bruker社製 Dimension Icon
測定モード :Peak Force Tapping Mode
プローブ :ダイヤモンド単結晶プローブ
ばね定数k=48N/m、先端曲率半径R=12nm
解像度 :512×512ピクセル
測定範囲 :15μm×15μm
サンプリング周波数: 0.3−0.7Hz
最大押し込み荷重:50nN
また、解像度512×512ピクセル、測定範囲15μm×15μmでセルロース微細繊維の分布が確認できなかった場合には、上記と同等の解像度で測定範囲を3μm×3μm、さらには測定範囲を1μm×1μmとして測定を行った。
なお、後述される実施例1の弾性率マッピングに従って、実施例2〜9及び比較例1についても弾性率マッピングを行なった。
【0321】
[セルロース微細繊維の充填率]
セルロース微細繊維の充填率は、フィルム断面のAFM弾性率像においてセルロース微細繊維がフィルム全体で占める面積比として定義した。弾性率は素材ごとに異なり、弾性率のヒストグラムの閾値を設定することで、フィルムに含まれる素材ごとに弾性率マッピングを作製した。たとえば、セルロース微細繊維とエポキシのみから成る樹脂複合フィルムの場合、エポキシ(ソフト相)とセルロース微細繊維(ハード相)から成るコントラスト像が得られる。ヒストグラムは大きく分けて2つのピークから成り、ヒストグラムの2つのピークの中点を2値化における閾値に設定した(セルロース:黒色、エポキシ:白色)。また、フィルム厚みがAFM測定範囲15μmよりも厚い場合、まずフィルム断面を複数視野に分けて測定した。つづいて、各視野で弾性率マッピングを作製した後、画像を結合し、フィルム断面が1画像に収まった像を得た。樹脂複合フィルム断面がすべて写った弾性率マッピングより、画像編集ソフト「image J」を用いて、セルロース微細繊維由来の面積およびフィルム全体の面積を算出し、最終的に以下の式よりセルロース微細繊維の充填率を求めた。
セルロース微細繊維の充填率(%)=セルロース微細繊維由来の面積/フィルム全体の面積×100
以上の方法を用いて10か所のフィルム断面のセルロース微細繊維の充填率を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値をフィルム全体のセルロース微細繊維の充填率とした。
【0322】
[セルロース微細繊維の平均繊維径]
上記樹脂複合フィルム断面がすべて写った弾性率マッピングより、画像編集ソフト「image J」を用いて、セルロース微細繊維由来の面積(ΣS)およびセルロース微細繊維と他素材(主にエポキシ)との界面の総長さ(ΣL)を求め、その後、下記式に従い、セルロース微細繊維の平均繊維径を算出した。
セルロース微細繊維の平均繊維径(nm)=4×ΣS/ΣL
【0323】
以上の方法を用いて10か所のフィルム断面のセルロース微細繊維の平均繊維径を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値をフィルム全体のセルロース微細繊維の平均繊維径とした。
【0324】
[セルロース微細繊維の最大繊維径]
上記樹脂複合フィルム断面がすべて写った10か所の弾性率マッピングについて、画像編集ソフト「imageJ」の粒子解析を行い、セルロース微細繊維径を真円と見做した時の粒径として算出した。この時、最も大きい粒径をセルロース微細繊維の最大繊維径として採用した。
【0325】
プリプレグにおけるセルロース微細繊維の平均繊維径、及び最大繊維径は、プリプレグを一度、有機溶剤に含浸し、樹脂成分を溶解除去した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、繊維シートの数平均繊維径、最大繊維径を上記と同様にして測定した。
【0326】
[樹脂複合フィルム内のセルロース微細繊維層の空隙率]
上記樹脂複合フィルム断面がすべて写った弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、セルロース微細繊維由来の面積(ΣS)と、同様に算出されるセルロース微細繊維層を構成する繊維間(オーバーコート樹脂層を除く)に含まれる樹脂由来の面積(ΣSp)を算出し、その後、下記式に従い、樹脂複合フィルム内のセルロース微細繊維層の空隙率を算出した。
樹脂複合フィルム内のセルロース微細繊維層の空隙率(%)=ΣS/(ΣS+ΣSp)×100
【0327】
[樹脂複合フィルム中の無機充填材の充填率]
樹脂複合フィルム中の無機充填材の充填率は、上記樹脂複合フィルム断面において無機充填材を構成する原子が占める面積比として定義した。例えば、シリカ粒子であればSi、水酸化アルミニウム粒子であればAlを測定した。ここではシリカ粒子を例に測定方法を示す。断面サンプルをCペーストおよびOsコーティングにより導通処理を行った後、走査型電子顕微鏡「HITACHI S−4800」(日立ハイテクフィールディング社製)を用いて、撮影倍率500倍、加速電圧1.0kV、検出器:二次電子の設定で撮影を行い、断面SEM像を取得した。つづいて、同視野についてエネルギー分散型X線検出器X−Max SILICON DRIFT X−RAY DETECTOR(株式会社堀場製作所製)を用いてCおよびSiの元素マッピングを取得した。面積比は、まずフィルム断面のSEMの二次電子像を画像編集ソフト「imageJ」を用いて、フィルムの外周に相当する部分で切り取り、フィルム断面のみを表示させた。次に2値化を行い、シリカ由来を黒く、その他由来を白く表示した。白黒二値化の閾値は黒く表示される部分がEDXのSiの領域と対応するように選び、黒の面積をカウント数として算出する。また、フィルム断面全体の面積をカウント数として算出する。これらの二つの比により以下の式よりSiがフィルム断面全体に占める割合を算出した。
無機充填材の充填率(%)=無機充填材由来の面積/フィルム全体の面積×100
以上の方法を用いて10か所のフィルム断面について無機充填材の充填率を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値を樹脂複合フィルム中の無機充填材の平均充填率とした。
ここでの二値化とは、有機物(樹脂、繊維等)と無機物(無機充填材等)の元素の違いによる二値化のことをいう。
【0328】
[セルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合]
セルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合は、上記樹脂複合フィルム断面の弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、樹脂複合フィルム中の無機充填材由来の全面積およびセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材由来の面積を算出し、最終的に以下の式よりセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合を求めた。なお、セルロース微細繊維層はフィルム最表面から近いセルロース微細繊維シートの端部を順に10点以上選び、線で結んだ時に囲まれる領域をセルロース微細繊維層と定義する。
セルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合(%)=(セルロース微細繊維に含まれる無機充填材由来の面積/樹脂複合フィルム中の無機充填材由来の全面積)×100
以上の方法を用いて10か所の樹脂複合フィルム断面のセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値をセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合とした。
【0329】
[オーバーコート樹脂層の厚み]
樹脂複合フィルム最表面より不織布層表面までの長さをオーバーコート樹脂層と定義する。不織布層とはセルロース微細繊維層を含む有機繊維から成る層と定義する。上記のAFM弾性率マッピングよりエポキシ層(表)/不織布層/エポキシ層(裏)の3層で構成されることが確認できる。フィルム最表面より不織布層表面までの長さを表および裏でそれぞれ10点ずつ測定し、その平均値をオーバーコート樹脂層の厚み(表)、オーバーコート樹脂層の厚み(裏)とする。
【0330】
[貯蔵弾性率(E’)]
得られた複合樹脂フィルムを4mm幅×30mm長に切断し、測定サンプルとした。これを粘弾性測定装置EXSTAR TMA6100(エスアイアイナノテクノロジー(株)を用いて、引っ張りモードでチャック間20mm、周波数:1Hz、窒素雰囲気下、室温から200℃まで5℃/min.で昇温、200℃から25℃まで5℃/min.で降温、再び25℃から200℃まで5℃/min.で昇温した。この際の2度目の昇温時の150℃および200℃での貯蔵弾性率(E’150,E’200)を求めた。
【0331】
[貯蔵弾性率変化]
150℃から200℃への貯蔵弾性変化率は下式:
貯蔵弾性率変化率=E’150/E’200
により表される。
一般に貯蔵弾性率は高温になるほど小さくなるため(E’150>E’200)、貯蔵弾性率変化率は1以上となる。この値が1に近いほど、高温での貯蔵弾性率変化が小さく、耐熱性が高いといえる。
【0332】
[線熱膨張率(CTE)]
複合樹脂フィルムを3mm幅×25mm長に切断し、測定サンプルとした。SII製TMA6100型装置を用いて、引っ張りモードでチャック間10mm、荷重5g、窒素雰囲気下、室温から200℃まで5℃/min.で昇温、200℃から25℃まで5℃/min.で降温、再び25℃から200℃まで5℃/min.で昇温した。この際、2度目の昇温時の150℃および200℃での線熱膨張率(CTE150, CTE200)を求めた。CTE150, CTE200はそれぞれ149℃〜150℃および199℃〜200℃の1℃での線膨張係数とし、下式のように表される。
CTE150=(L150−L149)/L100×(10
6)
CTE200=(L200−L199)/L200×(10
6)
L149、L150、L199、L200:149℃、150℃、199℃、200℃でのチャック間長
【0333】
[CTE差]
150℃から200℃の間のCTE差の絶対値は下式にように表される
CTE差=|CTE200−CTE150|
【0334】
[ガラス転移温度(Tg)]
粘弾性測定装置EXSTAR TMA6100(エスアイアイナノテクノロジー(株)を用いて、樹脂複合フィルムのTgを測定した。引っ張りモードでチャック間20mm、周波数:1Hz、窒素雰囲気下、室温から200℃まで5℃/min.で昇温、200℃から25℃まで5℃/min.で降温、再び25℃から200℃まで5℃/min.で昇温した。この際の2度目の昇温時のベースラインと変曲点(上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点)での接線の交点をTgとした。
【0335】
[プリプレグの厚み]
プリプレグ内10点の厚みを測定し、その平均値をプリプレグの膜厚とした。膜厚計として面接触型のタイプ(Mitutoyo(株)製面接触型膜厚計(Code No.547−401))を使用した。
【0336】
[樹脂複合フィルムの厚み]
得られた樹脂複合フィルム内10点の厚みを測定し平均値を膜厚とした。膜厚計として面接触型のタイプ(Mitutoyo(株)製面接触型膜厚計(Code No.547−401))を使用した。
【0337】
[吸湿率]
樹脂複合フィルムを50mm角に切断し、120℃で2時間乾燥させた後、初期質量(W0)を測定し、その後、湿度: 85%/温度: 85℃/192 時間の条件で吸湿処理した後の質量(W1)を測定した。そして、下記の式より吸湿率を求めた。
吸湿率(%)=(W1−W0)/W0 × 100
【0338】
[誘電特性(比誘電率及び誘電正接)]
厚み0.8mmの厚膜樹脂複合フィルム1.5mm(幅)×80mm(長さ)のサイズに切り出し、測定サンプルとした。空洞共振法(8722ES型ネットワークアナライザー、アジレントテクノロジー製;空洞共振器、関東電子応用開発製)によって、1GHzの値を測定した。
【0339】
[冷熱衝撃耐試験]
めっき処理積層体に対し、冷熱衝撃装置(Espec社製、TSA−71S−A/W)を用い、MIL−STD−883Eの条件A(−55℃〜125℃)に基づき、低温(−55℃)および高温(125℃)における暴露時間を各30分とし、これを200サイクル行なった。光学顕微鏡写真(透過光、倍率:×25〜×100)及び断面SEM(倍率:×5000)を用いて、銅配線、銅・樹脂界面などの故障状況を観察し、官能評価を以下の基準で行なった。配線の剥がれ若しくは膨れ、又は割れとなっている箇所を故障箇所として定義し、故障箇所が少ないほど密着性に優れると評価する。
◎:表記条件の観察のよる故障箇所は1個以下
○:表記条件の観察のよる故障箇所は2個以上5個以下
△:表記条件の観察のよる故障箇所は6個以上10個以下
×:表記条件の観察のよる故障箇所は11個以上
【0340】
[実施例1]
(プリプレグの作製)
20cm角ポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離型面にワニスV1をフィルムアプリケーターで0.3g塗布した後、10cm角に裁断した上記セルロース微細繊維シート(S1)を置き、さらに該ワニスV1をセルロース微細繊維シート上にアプリケーターで再度0.3g塗布した。得られたフィルムを100℃、4分加熱して溶媒を除去するとともに半硬化物のプリプレグを得た。
【0341】
(樹脂複合フィルムの作製)
該プリプレグに別のポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離形面が接するように被せた後、真空熱プレス機で硬化を行った(加熱温度220℃、圧力6.0MPa、時間160分)。得られた硬化フィルムより支持フィルムを外し、樹脂複合フィルムを得た。得られた樹脂複合フィルム(F1)の各種物性を表6に示す。
【0342】
得られた樹脂複合フィルムのAFM弾性率像を
図1(a)に、弾性率ヒストグラムを
図1(b)に、2値化像を
図1(c)にそれぞれ示す。なお、
図1(c)において斜線部がセルロース微細繊維シートを構成する繊維部と対応する。
【0343】
さらに、得られた
図1(a)の樹脂複合フィルム断面の弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、無機充填材由来の面積およびセルロース微細繊維層に含まれるシリカ充填材の由来の面積を算出し、フィルム最表面から近いセルロース微細繊維シートの端部を10点以上選び、線で結んだ時に囲まれる領域をセルロース微細繊維層として定義したときの処理画像を
図2に示す。
【0344】
(銅張積層板の作製)
最終的な硬化物の厚みが0.7mm〜0.9mmの範囲に入るように上記プリプレグを所定枚数枚重ね、電解銅箔F2−WS(古河サーキットフォイル、厚さ18μm、処理面のRz=2.3μm)を上下に配置し、圧力2.5MPa、温度240℃で60分間プレスを行って、銅張積層板を得た。
【0345】
[厚膜樹脂複合フィルムの作製]
該銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより、銅箔を完全に取り除いた評価用の厚膜樹脂複合フィルムを作製した。
【0346】
(内層回路基板作製)
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ35μm、基板の厚さ0.8mm、松下電工(株)製「R5715ES」)に、IPC MULTI−PURPOSE TEST BOARD NO. IPC C−25のパターン(ライン/スペース比=600/660μmの櫛歯パターン(残銅率48%))を形成した。次いで、基板の両面をマイクロエッチング剤(メック(株)製「CZ8100」)で粗化処理し、内層回路基板を作製した。
【0347】
(絶縁層形成)
前記内層回路基板の両面に前記プリプレグを(株)名機製作所製真空ラミネーターにより、温度120℃、圧力7kgf/cm
2、気圧5mmHg以下の条件でラミネートし、さらに連続的に温度120℃、圧力5kgf/cm
2、大気圧の条件でSUS鏡板による熱プレスを行った。次いでPETフィルムを剥がした後、180℃、30分熱硬化させ、基板両面に絶縁層を形成した。
【0348】
(粗化処理積層体の作製)
絶縁層を形成した回路基板の樹脂硬化物層を化学粗化するために、膨潤液として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル:200ml/L、NaOH:5g/Lの水溶液を作製し、80℃に加温して5分間浸漬処理した。次に、粗化液として、KMnO
4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液を作製し、80℃に加温して15分間浸漬処理した。引き続き、中和液(SnCl
2:30g/L、HCl:300ml/L)の水溶液を作製し、40℃に加温して5分間浸漬処理し、KMnO
4を還元した。
【0349】
(めっき処理積層体の作製)
粗化処理を行った絶縁層表面にセミアディティブ工法で回路を形成するために、内層回路基板を、PdCl
2を含む無電解メッキ用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成(L/S=40μm/40μm、長さ5cmのストレートなスリット状配線)の後に、硫酸銅電解メッキおよびアニール処理を200℃にて60分間行い、30μmの厚さで導体層を形成した。
【0350】
[実施例2]
セルロース微細繊維シートをS2にした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF2(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0351】
[実施例3]
ワニス(V2)の塗布量を0.9gにした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF3(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0352】
[実施例4]
セルロース微細繊維シートをS3に、ワニスをV3に、さらにワニスの塗布量を0.1gにした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF4(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。樹脂複合フィルムの全光線透過率を測定したところ、82%であった。
【0353】
[実施例5]
セルロース微細繊維シートをS4に、ワニスをV4に、さらにワニスの塗布量を0.1gにした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF5(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0354】
[実施例6]
20cm角ポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離型面にワニス(V5)をフィルムアプリケーターで0.8g塗布した後、10cm角に裁断した上記セルロース微細繊維積層シート(S5)をセルロース微細繊維面が接するように置き、さらにワニス(V5)をセルロース微細繊維シート上にアプリケーターで再度8.0g塗布した。それ以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF6(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0355】
[実施例7]
スラリー製造例3を用いてシート製造例1の方法で抄紙し、湿紙を作製した。つづいて、イソプロパノールで5回置換し、セルロース微細繊維イソプロパノール分散体を作製し、最終的に減圧濾過によりイソプロパノールを除去した。得られたセルロース微細繊維シートをワニスV1に加え、真空混練機で混合した。得られた混合物を20cm角ポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離型面にアプリケーターで1g塗布した。得られたフィルムを真空下で100℃、10分加熱して溶媒を除去するとともに半硬化物のプリプレグを得た。それ以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF7(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0356】
[実施例8]
セルロース微細繊維シートをS6に、ワニスをV6にした以外は実施例2と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF8(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム)を作製した。
【0357】
[実施例9]
セルロース微細繊維シートをS7に、ワニスをV1にした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF9(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0358】
[比較例1]
特開2006−316253の実施例4を参考に樹脂複合フィルム等の製造を行った。ワニス比較製造例1にて得られたワニスRV1を、シート比較製造例1にて得られたセルロース不織布RS−1に含浸(含浸時間:5分以内)させたもの1枚を、熱プレス機内にて温度100℃、圧力9.81MPa下にて熱硬化(硬化時間:1時間)させることによって、樹脂複合フィルムRF1を作製した。また、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム作製、絶縁層形成、粗化処理、めっき処理は実施例1と同じ方法で実施した。
【0359】
実施例1〜9及び比較例1の材料及び評価結果を下記表6に示す。
【0360】
【表4】
【0361】
【表5】
【0362】
【表6】
【0363】
[実施形態III]
《測定及び評価方法》
〈セルロース繊維シート及びプリプレグの物性測定及び評価方法〉
(1)セルロース微細繊維の数平均繊維径
繊維シートにおいて、セルロース微細繊維の表面より、無作為に10箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を微細繊維の繊維径に応じて1,000〜100,000倍相当の倍率で行った。得られたSEM画像に対し、画面に対し水平方向と垂直方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の繊維径を拡大画像から実測し、交差する繊維の個数と各繊維の繊維径を数えた。こうして一つの画像につき縦横2系列の測定結果を用いて数平均繊維を算出した。さらに抽出した他の2つのSEM画像についても同じように数平均繊維を算出し、合計10画像分の結果を平均化した。
【0364】
(2)セルロース微細繊維シートを構成する繊維の最大繊維径
繊維シートの表面を、無作為に10箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を倍率500倍で行った。得られたSEM画像10枚内で最も太い繊維の繊維径を繊維シートにおける最大繊維径とした。他の不織布などに積層させた積層構造体については、繊維シート側からSEM観察を行った。
【0365】
(3)シート目付
室温20℃、湿度50%RHの雰囲気下で調湿したサンプルを10.0cm×10.0cmの正方形片に裁断・秤量し、下記式より算出した。
シート目付(g/m
2)=10cm角のサンプルの重量(g)/0.01m
2【0366】
(4)シート厚み
室温20℃、湿度50%RHの雰囲気下で調湿したサンプルを面接触型のタイプ(Mitutoyo(株)製面接触型膜厚計(Code No.547−401))で10点厚みを測定し、その平均値を該サンプルの厚みとした。
【0367】
(5)空隙率
セルロース微細繊維の密度を1.5g/cm
3と仮定し、下記式より算出した。
空隙率(%)=100−([目付(g/m
2)/{シート厚み(μm)×1.5(g/cm
3)}]×100)
【0368】
(6)透気抵抗度
室温23℃、湿度50%RHの雰囲気下で調湿したサンプルを王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)で透気抵抗度を10点測定し、その平均値を該サンプルの透気抵抗度とした。
【0369】
(7)プリプレグの厚み
プリプレグ内10点の厚みを測定し、その平均値をプリプレグの膜厚とした。膜厚計として面接触型のタイプ(Mitutoyo(株)製面接触型膜厚計(Code No.547−401))を使用した。
【0370】
(8)プリプレグにおけるセルロース微細繊維の数平均繊維径及び最大繊維径
プリプレグをメチルエチルケトンに含浸し、樹脂成分を溶解させ、セルロース微細繊維は分散させた。つづいて、分散液の減圧濾過(減圧度−0.09MPa(絶対真空度10kPa))を行った。濾過器としてはアドバンテック社製KG−90を用い、ガラスフィルターの上に同アドバンテック社製の1.0μm孔径のPTFE製メンブランフィルター(有効濾過面積は48cm
2)を用いた。PTFE製メンブランフィルターの上のセルロース繊維の堆積物を120℃のオーブンで乾燥させることでセルロース繊維からなるフィルムが得られた。このフィルムにおける数平均繊維径および最大繊維径の算出は、以下のSEMによる観察方法を用いた。
【0371】
まず、セルロース微細繊維からなる構造体の表面より、無作為に10箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を微細繊維の繊維径に応じて1,000〜100,000倍相当の倍率で行った。得られたSEM画像に対し、画面に対し水平方向と垂直方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の繊維径を拡大画像から実測し、交差する繊維の個数と各繊維の繊維径を数えた。こうして一つの画像につき縦横2系列の測定結果を用いて数平均繊維径を算出した。さらに抽出した他の2つのSEM画像についても同じように数平均繊維径を算出し、合計10画像分の結果を平均化し、対象とする試料の平均繊維径とした。
構造体の表面の10箇所について、倍率500倍でSEM観察を行った。得られたSEM画像10枚内で最も太い繊維径を最大繊維径とした。
不織布などに積層させた積層構造体については、セルロース微細繊維シート側からSEM観察を行った。
【0372】
〈樹脂複合フィルムの物性測定及び評価方法〉
(1)測定用断面サンプルの作成
まず、樹脂複合フィルム両面に白金を真空蒸着した(被膜厚み:10nm)。つづいて、試料フィルムをエポキシ樹脂(2液式エポキシ接着剤)で包埋し、ウルトラミクロトームで断面出しを行った。切削にはダイアモンドナイフを使用し、常温で切削を行った。シリカが含まれるフィルムについては、ミクロトームでシリカを切削できないため、Dual−Beam FIB装置(FEI製、Dual Beam Nova200 Nanolab、加速電圧30kV)を用いてサンプル加工し、フィルムの断面出しを行った。得られた断面サンプルは接着剤−白金−フィルム−白金−接着剤の5層で構成され、白金蒸着を行うことでサンプル中のフィルムの位置を明確にした。
【0373】
(2)顕微赤外イメージング
全ての樹脂複合フィルムにセルロース微細繊維および/または微細アラミド繊維が含まれていることを顕微赤外イメージングで確認した。なお、測定は上記樹脂複合フィルムの断面サンプルについて、以下の条件により行った。
・装置 :赤外イメージング顕微鏡Nicolet
TM iN
TM10MX(Thermo Scientific
TM)
・分解能 :8cm
−1
・積算回数 :1回
・ステップサイズ:x=2.5μm、y=2.5μm
・測定範囲:4000−600cm
−1【0374】
(3)X線構造解析
実施例1の複合フィルムに対し、X線構造解析をした結果、X線回折パターンにおいて、2θの範囲を0°〜30°とするX線回折パターンが、10°≦2θ<19°に1つのピークと、19°≦2θ≦30°に2つのピークが確認された。これより、微細繊維が天然セルロースか、再生セルロースであることを特定した。
【0375】
(4)フィルム断面のAFMによる弾性率測定
上記樹脂複合フィルムの断面サンプルを専用のサンプル固定台に固定し、下記のようなAFM測定条件で断面の弾性率を測定した。
装置 :Bruker社製 Dimension Icon
測定モード :Peak Force Tapping Mode
プローブ :ダイヤモンド単結晶プローブ
ばね定数k=48N/m、先端曲率半径R=12nm
解像度 :512×512ピクセル
測定範囲 :15μm×15μm
サンプリング周波数:0.3−0.7Hz
最大押し込み荷重:50nN
また、解像度512×512ピクセル、測定範囲15μm×15μmでセルロース微細繊維の分布が確認できなかった場合には、上記と同等の解像度で測定範囲を3μm×3μm、さらには測定範囲を1μm×1μmとして測定を行った。
【0376】
(5)セルロース微細繊維シートの充填率
セルロース微細繊維シートの充填率は、樹脂複合フィルム断面のAFM弾性率像においてセルロース微細繊維シートが樹脂複合フィルム全体で占める面積比として定義した。弾性率は素材ごとに異なり、弾性率のヒストグラムの閾値を設定することで、樹脂複合フィルムに含まれる素材ごとに弾性率マッピングを作製した。たとえば、セルロース微細繊維とエポキシのみからなる樹脂複合フィルムの場合、エポキシ(ソフト相)とセルロース微細繊維(ハード相)からなるコントラスト像が得られる。ヒストグラムは大きく分けて2つのピークからなり、ヒストグラムの2つのピークの中点を2値化における閾値に設定した(セルロース:黒色、エポキシ:白色)。
樹脂複合フィルムの厚みがAFM測定範囲15μmよりも厚い場合、まず樹脂複合フィルムの断面を複数視野に分けて測定した。つづいて、各視野で弾性率マッピングを作製した後、画像を結合し、樹脂複合フィルムの断面が1画像に収まった像を得た。樹脂複合フィルムの断面がすべて写った弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、セルロース微細繊維シート由来の面積およびフィルム全体の面積を算出し、最終的に以下の式よりセルロース微細繊維シートの充填率を求めた。
セルロース微細繊維シートの充填率(%)=セルロース微細繊維シート由来の面積/フィルム全体の面積×100
以上の方法を用いて10か所のフィルム断面のセルロース微細繊維シートの充填率を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値をフィルム全体のセルロース微細繊維シートの充填率とした。
【0377】
(6)セルロース微細繊維シートを構成する繊維の平均繊維径
上記樹脂複合フィルム断面がすべて写った弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、セルロース微細繊維シート由来の面積(ΣS
f)およびセルロース微細繊維シートと他素材(エポキシなど)との界面の総長さ(ΣL
f)を求め、その後、下記式に従い、セルロース微細繊維シートを構成する繊維の平均繊維径を算出した。
セルロース微細繊維シートを構成する繊維の平均繊維径(nm)=4×ΣS
f/ΣL
f
以上の方法を用いて10か所の樹脂複合フィルムの断面の、セルロース微細繊維シートを構成する繊維の平均繊維径を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値をフィルム全体のセルロース微細繊維シートを構成する繊維の平均繊維径とした。
【0378】
(7)セルロース微細繊維シートを構成する繊維の最大繊維径
上記の樹脂複合フィルム断面がすべて写った10か所の弾性率マッピングについて、画像編集ソフト「imageJ」の粒子解析を行い、セルロース微細繊維シートを構成する繊維の繊維径を、真円と見做した時の粒径として算出した。この時、最も大きい粒径をセルロース微細繊維シートを構成する繊維の最大繊維径として採用した。
【0379】
(8)樹脂複合フィルム内のセルロース微細繊維層の空隙率
上記樹脂複合フィルム断面がすべて写った弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、セルロース微細繊維由来の面積(ΣS)と、同様に算出されるセルロース微細繊維層を構成する繊維間(オーバーコート樹脂層を除く)に含まれる樹脂由来の面積(ΣSp)を算出し、その後、下記式に従い、樹脂複合フィルム内のセルロース微細繊維層の空隙率を算出した。
樹脂複合フィルム内のセルロース微細繊維層の空隙率(%)=ΣS/(ΣS+ΣSp)×100
【0380】
(9)樹脂複合フィルム中の無機充填材の充填率
樹脂複合フィルム中の無機充填材の充填率は、上記樹脂複合フィルム断面において無機充填材を構成する原子が占める面積比として定義した。例えば、シリカ粒子であればSi、水酸化アルミニウム粒子であればAlを測定した。ここではシリカ粒子を例に測定方法を示す。断面サンプルをCペーストおよびOsコーティングにより導通処理を行った後、走査型電子顕微鏡S−4800(日立ハイテクフィールディング社製)を用いて、撮影倍率500倍、加速電圧1.0kV、検出器:二次電子の設定で撮影を行い、断面SEM像を取得した。つづいて、同視野についてエネルギー分散型X線検出器X−Max SILICON DRIFT X−RAY DETECTOR(株式会社堀場製作所製)を用いてCおよびSiの元素マッピングを取得した。面積比は、まずフィルム断面のSEMの二次電子像を画像編集ソフト「imageJ」を用いて、フィルムの外周に相当する部分で切り取り、フィルム断面のみを表示させた。次に2値化を行い、シリカ由来を黒く、その他由来を白く表示した。白黒二値化の閾値は黒く表示される部分がEDXのSiの領域と対応するように選び、黒の面積をカウント数として算出する。また、フィルム断面全体の面積をカウント数として算出する。これらの二つの比により以下の式よりSiがフィルム断面全体に占める割合を算出した。
無機充填材の充填率(%)=(無機充填材由来の面積/フィルム全体の面積)×100
以上の方法を用いて10か所のフィルム断面について無機充填材の充填率を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値を樹脂複合フィルム中の無機充填材の平均充填率とした。
ここでの二値化は有機物(樹脂や繊維等)と無機物(無機充填材等)の元素の違いによる二値化のことをいう。
【0381】
(10)セルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合
セルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合は、上記の樹脂複合フィルム断面の弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、樹脂複合フィルム中の無機充填材由来の全面積およびセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材由来の面積を算出し、最終的に以下の式よりセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合を求めた。なお、セルロース微細繊維層はフィルム最表面から近いセルロース微細繊維シートの端部を順に10点以上選び、線で結んだ時に囲まれる領域をセルロース微細繊維層と定義する。
セルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合(%)=(セルロース微細繊維に含まれる無機充填材由来の面積/樹脂複合フィルム中の無機充填材由来の全面積)×100
以上の方法を用いて10か所の樹脂複合フィルム断面のセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値をセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合とした。
【0382】
(11)オーバーコート樹脂層の平均厚み
樹脂複合フィルム最表面より不織布層表面までの長さをオーバーコート樹脂層と定義する。不織布層とはセルロース微細繊維層を含む有機繊維からなる層と定義する。上記のAFM弾性率マッピングよりエポキシ層(表)/不織布層/エポキシ層(裏)の3層で構成されることが確認できる。フィルム最表面より不織布層表面までの長さを表および裏でそれぞれ10点ずつ測定し、その平均値をオーバーコート樹脂層の厚み(表)、オーバーコート樹脂層の厚み(裏)とする。
【0383】
(12)樹脂複合フィルムの厚み
樹脂複合フィルム内10点の厚みを測定し、平均値を膜厚とした。膜厚計として面接触型のタイプ(Mitutoyo(株)製面接触型膜厚計(Code No.547−401))を使用した。
【0384】
(13)吸湿率
樹脂複合フィルムを50mm角に切断し、120℃で2時間乾燥させた後、初期質量(W0)を測定し、その後、湿度: 85%/温度: 85℃/192 時間の条件で吸湿処理した後の質量(W1)を測定した。そして、下記の式より吸湿率を求めた。
吸湿率(%)=(W1−W0)/W0×100
【0385】
(14)透過率
透過率は、ASTM D1003に基づき、ヘイズメーターNDH7000SP CU2II(製品名)(日本電色工業株式会社製)を使用した光透過性試験によって測定できる。
【0386】
(15)誘電特性(比誘電率及び誘電正接)
厚み0.8mmの厚膜樹脂複合フィルムを1.5(幅)×80mm(長さ)のサイズに切り出し、測定サンプルとした。空洞共振法(8722ES型ネットワークアナライザー、アジレントテクノロジー製;空洞共振器、関東電子応用開発製)によって、1GHzの値を測定した。
【0387】
(16)フラクタル次元
絶縁層積層体について、内層回路基板の櫛歯パターンの金属表面粗化層と絶縁層との界面のフラクタル次元を測定した。絶縁層積層板の断面構造写真を取るために、Dual−Beam FIB装置(FEI製、Dual Beam Nova200 Nanolab、加速電圧30kV)を用いてサンプル加工し、金属・絶縁層界面の断面出しを行なった。その断面を走査型電子顕微鏡S−4800(日立ハイテクフィールディング社製)にて観察し、1ピクセルの大きさが5〜20μmの画像データとして得た。画像処理によって、金属・絶縁層断面写真の界面部分(線分)を抽出した。そして、フラクタル次元(ボックスカウント次元)はボックスカウント法を用いて算出し、微細領域での構造の複雑さを評価できるよう、領域のサイズを3μm×3μmとした。
【0388】
(17)絶縁層積層体の表面最大断面高さ(Rt)
絶縁層積層体の絶縁層の露出表面について最大断面高さ(Rt)を測定した。絶縁層表面の最大断面高さ(Rt)は、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT9300」)を用いて、VSIコンタクトモード、10倍レンズにより測定範囲を0.82mmx1.1mmとして得られる数値により求めた。なお、測定は、ライン/スペース比=600/660μmの櫛歯パターン(残銅率48%)の回路配線が設けられた領域について、回路配線の有る部分と回路配線の無い部分をまたがるようにして、3箇所の平均値を求めることにより実施した。Rtが2.5μm未満の場合を「○」、2.5μm以上3μm未満の場合を「△」、3μm以上の場合を「×」とした。
【0389】
(18)粗化処理積層体の表面粗度(Ra)
粗化処理積層体の表面粗度ラフネス(Ra)をオリンパス株式会社製レーザー顕微鏡「OLS3000」を用い、以下の条件によって算術平均粗さ(Ra)を測定した。
・半導体レーザー:波長408nm
・測定ピッチ:0.1μm
・測定範囲:0.012mm
2(平面)
【0390】
(19)めっき処理積層体のスリット状配線ピール強度
めっき処理積層体のストレートなスリット状配線(L/S=40μm/40μm、長さ5cm)の一端を剥がして、(株)島津製作所製のオートグラフAGS−500で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
【0391】
(20)めっき処理積層体の煮沸耐熱性
ストレートなスリット状配線(L/S=40μm/40μm、長さ5cm)されためっき処理積層体を、2時間煮沸処理した後260℃の半田浴に30秒浸漬して評価を行った。評価はその試験基板の外観を目視判定により行った。
○;良好、×;ふくれ、はがれ又はミーズリング発生。
【0392】
<スラリーの製造例>
[スラリー製造例1]
双日(株)より入手した再生セルロース繊維であるテンセルカット糸(3mm長)を洗浄用ネットに入れて界面活性剤を加え、洗濯機で何度も水洗することにより、繊維表面の油剤を除去した。得られた精製テンセル繊維を固形分1.5重量%となるように水中に分散させて(400L)、ディスクレファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmで400Lの該水分散体を20分間叩解処理した。それに引き続き、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で叩解処理を続けた。経時的にサンプリングを行い、サンプリングスラリーに対して、JIS P 8121で定義されるパルプのカナダ標準ろ水度試験方法(以下、CSF法)のCSF値を評価したところ、CSF値は経時的に減少していき、一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けると、増大していく傾向が確認された。クリアランスをゼロ近くとしてから10分間、上記条件で叩解処理を続け、CSF値で100ml以上の叩解水分散体を得た。得られた叩解水分散体を、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS015H)を用いて操作圧力100MPa下で5回の微細化処理を実施し、セルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0393】
[スラリー製造例2]
原料として天然セルロースであるリンターパルプを用いた。リンターパルプが4重量%となるように水に浸液させてオートクレーブ内で130℃、4時間の熱処理を行い、得られた膨潤パルプを何度も水洗し、水を含浸した状態の膨潤パルプを得た。その後、製造例1と同様の方法でディスクリファイナーおよび高圧ホモジナイザー処理を行い、セルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。CSF値は100ml以上であった。
【0394】
[スラリー製造例3]
原料をアバカパルプに変えた以外はスラリー製造例2と同じ方法でセルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。CSF値は630ml以上であった。
【0395】
[スラリー製造例4]
原料を帝人(株)のアラミド繊維(1mm長)に変えた以外はスラリー製造例1と同じ方法で微細アラミド繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0396】
[スラリー製造例5]
操作圧力100MPa下での微細化処理を30回実施した以外はスラリー製造例2と同じ方法でセルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0397】
[スラリー製造例6]
操作圧力100MPa下での微細化処理を30回実施した以外はスラリー製造例4と同じ方法で微細アラミド繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0398】
[スラリー製造例7]
CSF値がゼロとなった時点で処理を止めた以外はスラリー製造例1と同じ方法でセルロース微細繊維スラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0399】
[スラリー比較製造例1]
特開2006−316253の実施例4を参考にスラリー製造を行った。2.0%のグルコースを添加した多糖生産培地(Polysaccharide−production−medium,Akihiko Shimada、Vivaorigino,23,1、52−53、1995)を高圧蒸気殺菌処理した後、その1000Lを内容量3000Lの発酵槽に入れ、CF−002株を104CFU/mlになるように接種し、通気下、30℃で2日間、通気下での撹拌培養を行い、バクテリアセルロース(BC)を大量に含む分散体を得た。その後、スクリーンメッシュで濾別水洗、圧搾後、1%NaOH溶液に浸漬し、除菌後、再度中和、水洗、圧搾を行った。さらに水洗と圧搾の工程を3度繰り返し、精製された綿状のBC/水分散体(セルロース含有率:11.6重量%を得た。セルロース濃度が1.0重量%となるように水で希釈し、家庭用ミキサーで10分間予備分散した後に、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS3015H)を用いて、操作圧力80MPa下で4回の分散処理を実施した。
【0400】
<シートの製造例>
[シート製造例1]
前記スラリー製造例1のスラリーを固形分濃度0.2重量%まで希釈し、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。PET/ナイロン混紡製の平織物(敷島カンバス社製、NT20・・・大気下25℃での水透過量:0.03ml/(cm
2・s)、セルロース微細繊維を大気圧下25℃における濾過で99%以上濾別する能力あり)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に目付10g/m
2のセルロースシートを目安に、上記調整した抄紙スラリーを投入し、その後大気圧に対する減圧度を4KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に乗った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm
2の圧力で1分間プレスした後、湿紙面をドラム面に接触させるようにして、湿紙/濾布の2層の状態で表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーに湿紙がドラム面に接触するようにして約120秒間乾燥させた。得られた乾燥した2層体からセルロースのシート状構造物から濾布を剥離させて、白色のセルロース微細繊維シート(25cm×25cm、10g/m
2)を得た。つづいて、セルロース微細繊維シートをカレンダー装置(由利ロール(株)製、油圧式2本ロールテストエンボス機、上ロール:金属 / 下ロール:アラミド、面長300mm、温度:室温、圧力:1.5ton/300mm)によって平滑化処理を施し、薄層のセルロース微細繊維シートS1を得た。
【0401】
[シート製造例2]
前記スラリー製造例2のセルロース微細繊維スラリー50重量部、前記スラリー製造例4の微細アラミド繊維スラリー50重量部を混合し、固形分濃度0.2重量%まで希釈した。つづいて、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。つづく抄紙・乾燥・平滑化工程はシート製造例1と同様の手法を用い、微細アラミド繊維を含む乳白色のセルロース微細繊維シートS2を得た。
【0402】
[シート製造例3]
前記スラリー製造例3のスラリー(312.5g)に、1−ヘキサノール及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「60SH−4000」、信越化学工業製)をそれぞれ1.2重量%(3.9g)、0.012重量%(0.039g)添加し、家庭用ミキサーで4分間乳化、分散化させた。それ以外は、該抄紙スラリー用いて実施例1と同様の方法で抄紙・乾燥・平滑化を行い、セルロース微細繊維シートS3を得た。
【0403】
[シート製造例4]
前記スラリー製造例2のセルロース微細繊維スラリー70重量部、前記スラリー製造例4の微細アラミド繊維スラリー30重量部を混合し、固形分濃度0.2重量%まで希釈した。つづいて、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。抄紙スラリー312.5gをスリーワンモーターで撹拌させながら、カチオン性ブロックポリイソシアネート(商品名「メイカネートWEB」、明成化学工業株式会社製、固形分濃度1.0重量%まで希釈)を1.9g滴下した後3分間撹拌を行い、抄紙スラリー(合計314.4g)を得た。添加したカチオン性ブロックポリイソシアネート重量比率はセルロース微細繊維および微細アラミド繊維固形分重量に対して、3重量%であった。シート製造例1と同様の抄紙・乾燥・平滑化手法を用いてシート化した。その後、平滑化したシートを2枚のSUS製金枠(25cm×25cm)で挟み、クリップで固定し、オーブンで160℃、2分間の熱処理を行い、ブロックポリイソシアネートで架橋された微細アラミド繊維を含む乳白色のセルロース微細繊維シートS4を得た。
【0404】
[シート製造例5]
シート製造例1の手法を用い、PET/ナイロン混紡製の平織物の上にキュプラ長繊維不織布(旭化成せんい株式会社製、商品名:ベンリーゼSN140 目付:14g/m
2、膜厚:70μm、密度:0.2g/cm
3、平均単糸繊度:0.2dtex)を重ねた状態で抄紙を行い、キュプラ長繊維不織布上にセルロース微細繊維シートが積層された繊維シートS5を作製した。なお、平滑化工程は行わなかった。
【0405】
[シート製造例6]
前記スラリー製造例5のセルロース微細繊維スラリー50重量部、前記スラリー製造例6の微細アラミド繊維スラリー50重量部を混合し、固形分濃度0.2重量%まで希釈した。つづいて、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。つづく抄紙・乾燥・平滑化工程はシート製造例1と同様の手法を用い、微細アラミド繊維を含む乳白色のセルロース微細繊維シートS6を得た。
【0406】
[シート製造例7]
前記スラリー製造例7のセルロース微細繊維スラリー468.8gをスリーワンモーターで撹拌させながら、カチオン性ブロックポリイソシアネート(商品名「メイカネートWEB」、明成化学工業株式会社製、固形分濃度1.0重量%まで希釈)を2.85g滴下した後3分間撹拌を行い、抄紙スラリー(合計471.65g)を得た。添加したカチオン性ブロックポリイソシアネート重量比率はセルロース微細繊維固形分重量に対して、3.0重量%であった。シート製造例4と同様の抄紙・乾燥・平滑化手法を用いてシート化した。その後、該乾燥シートを2枚のSUS製金枠(25cm×25cm)で挟み、クリップで固定し、オーブンで160℃、2分間の熱処理を行い、ブロックポリイソシアネートで架橋されたセルロース微細繊維を含む白色のセルロース微細繊維シートS7を得た。
【0407】
[シート比較製造例1]
特開2006−316253の実施例4を参考にシート製造を行った。スラリー比較製造例1で製造したセルロース濃度1.0重量%のスラリーをさらに水でセルロース濃度0.40重量%となるように希釈し、再度家庭用ミキサーで5分間分散処理を行い、得られた分散液を抄紙用分散液として使用した。得られた湿紙上をさらに同じ濾布で覆い、金属製ローラーにて脱水し、セルロース濃度が12〜13重量%となるように調節した。得られた湿紙はPET織物を剥がさないまま、まずアセトン中に浸漬し時々全体を軽くすすぎながら約10分間置換処理を行った後に、トルエン/アセトン=50/50(g/g)の混合溶液に浸漬し、時々全体を軽くすすぎながら約10分間、置換処理を行った。その直後に濾布で挟んだ湿紙を金属板上に乗せ、その上に錘を乗せて定長で乾燥されるようにして、乾燥オーブン内にセットして、100℃で50分間乾燥させた。乾燥後、不織布を濾布から剥がすことにより、白色のセルロースシートRS1を得た。
【0408】
シート製造例1〜7及びシート比較製造例1の原料、製造方法及び物性を下記表7に示す。
【0409】
<ワニスの製造例>
[ワニス製造例1]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V1)を調整した。
・臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂1121N−80M(大日本インキ化学)78.9重量部
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂N680−75M(大日本インキ化学)14.0重量部
・ジシアンジアミド(大日本インキ化学)2.0重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0重量部
・球状シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)32重量部
【0410】
[ワニス製造例2]
球状シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)98重量部を入れる以外はワニス製造例1と同じ方法でワニスV2を製造した。
【0411】
[ワニス製造例3]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V3)を調整した。
・クレゾールノボラック型エポキシN−660(大日本インキ化学)48.7重量部
・トリアジン含有フェノールノボラック型エポキシLA−7054(大日本インキ化学)46.3重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0重量部
【0412】
[ワニス製造例4]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V4)を調整した。
・ビフェニル型エポキシ樹脂NC−3000H(日本化薬)39.2部
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂1051(大日本インキ化学)39.2部
・アミノトリアジンノボラック樹脂LA−3018(大日本インキ)16.5部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0部
・水酸化アルミニウムH−43S(昭和電工、平均粒径0.7μm)61.0重量部
・架橋微粒子ゴムXER−91(JSR)2.5重量部
【0413】
[ワニス製造例5]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V5)を調整した。
・脂環式エポキシ樹脂2021P(ダイセル)20.0部
・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂HP−7200H 30.0部
・活性エステル型硬化剤HPC8000−65T(大日本インキ化学)49.9部
・4−ジメチルアミノピリジン(東京化成工業)0.1重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0部
・架橋微粒子ゴムXER−91(JSR)2.5重量部
【0414】
[ワニス製造例6]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V6)を調整した。
・臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂1121N−80M(大日本インキ化学)83.1重量部
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂N680−75M(大日本インキ化学)14.7重量部
・ジシアンジアミド(大日本インキ化学)2.2重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)60.6重量部
【0415】
[ワニス比較製造例1]
特開2006−316253の実施例4を参考にワニス製造を行った。下記化合物を120℃まで加熱し、混練機で混合した固形分100wt%のワニス(RV1)を調整した。
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ、AER−250)100重量部
・m−キシリレンジアミン18重量部
【0416】
ワニス製造例1〜6及びワニス比較製造例1の組成及び固形分率を下記表8に示す。なお、表8中の各成分の数値は、重量部を表す。
【0417】
<樹脂複合フィルムの作製>
[実施例1]
(プリプレグ作製)
20cm角ポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離型面にワニスV1をフィルムアプリケーターで0.3g塗布した後、10cm角に裁断した上記セルロース微細繊維シート(S1)を置き、さらに該ワニスV1をセルロース微細繊維シート上にアプリケーターで再度0.3g塗布した。得られたフィルムを100℃、4分加熱して溶媒を除去するとともに半硬化物のプリプレグを得た。
【0418】
(樹脂複合フィルム作製)
該プリプレグに別のポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離形面が接するように被せた後、真空熱プレス機で硬化を行った(加熱温度220℃、圧力6.0MPa、時間160分)。得られた硬化フィルムより支持フィルムを外し、樹脂複合フィルムを得た。得られた樹脂複合フィルム(F1)の各種物性を表9に示す。
【0419】
得られた樹脂複合フィルムのAFM弾性率像を
図1(a)に、弾性率ヒストグラムを
図1(b)に、2値化像を
図1(c)にそれぞれ示す。なお、
図1(c)において斜線部がセルロース部と対応する。
【0420】
さらに、得られた
図1(a)の樹脂複合フィルム断面の弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、無機フィラー由来の面積およびセルロース微細繊維層に含まれるシリカフィラーの由来の面積を算出し、フィルム最表面から最も近いセルロース微細繊維を10点以上選び、線で結んだ時に囲まれる領域をセルロース微細繊維層として定義したときの処理画像を
図2に示す。
【0421】
(銅張積層板の作製)
最終的な硬化物の厚みが0.7mm〜0.9mmの範囲に入るように上記プリプレグを所定枚数枚重ね、電解銅箔F2−WS(古河サーキットフォイル、厚さ18μm、処理面のRz=2.3μm)を上下に配置し、圧力2.5MPa、温度240℃で60分間プレスを行って、銅張積層板を得た。
【0422】
(厚膜樹脂複合フィルムの作製)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより、銅箔を完全に取り除いた評価用の厚膜樹脂複合フィルムを作製した。
【0423】
(内層回路基板の作製)
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ35μm、基板の厚さ0.8mm、松下電工(株)製「R5715ES」)に、IPC MULTI−PURPOSE TEST BOARD NO. IPC C−25のパターン(ライン/スペース比=600/660μmの櫛歯パターン(残銅率48%))を形成した。次いで、基板の両面をマイクロエッチング剤(メック(株)製「CZ8100」)で粗化処理し、内層回路基板を作製した。
【0424】
(絶縁層積層体の作製)
前記内層回路基板の両面に前記プリプレグを(株)名機製作所製真空ラミネーターにより、温度120℃、圧力7kgf/cm
2、気圧5mmHg以下の条件でラミネートし、さらに連続的に温度120℃、圧力5kgf/cm
2、大気圧の条件でSUS鏡板による熱プレスを行った。次いでPETフィルムを剥がした後、180℃、30分熱硬化させ、基板両面に絶縁層を形成した。
【0425】
(粗化処理積層体作製)
絶縁層を形成した回路基板(前記絶縁層積層体)の樹脂硬化物層を化学粗化するために、膨潤液として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル:200ml/L、NaOH:5g/Lの水溶液を調製し、80℃に加温して5分間浸漬処理した。次に、粗化液として、KMnO
4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液を調製し、80℃に加温して15分間浸漬処理した。引き続き、中和液(SnCl
2:30g/L、HCl:300ml/L)の水溶液を調製し、40℃に加温して5分間浸漬処理し、KMnO
4を還元した。
【0426】
(めっき処理積層体作製)
粗化処理を行った絶縁層表面にセミアディティブ工法で回路を形成するために、内層回路基板を、PdCl
2を含む無電解メッキ用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成(L/S=40μm/40μm、長さ5cmのストレートなスリット状配線)の後に、硫酸銅電解メッキおよびアニール処理を200℃にて60分間行い、30μmの厚さで導体層を形成した。
【0427】
[実施例2]
セルロース微細繊維シートをS2にした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF2(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0428】
[実施例3]
ワニス(V2)の塗布量を0.9gにした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF3(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0429】
[実施例4]
セルロース微細繊維シートをS3に、ワニスをV3に、さらにワニスの塗布量を0.1gにした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF4(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。樹脂複合フィルムの全光線透過率を測定したところ、82%であった。
【0430】
[実施例5]
セルロース微細繊維シートをS4に、ワニスをV4に、さらにワニスの塗布量を0.1gにした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF5(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0431】
[実施例6]
20cm角ポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離型面にワニス(V5)をフィルムアプリケーターで0.8g塗布した後、10cm角に裁断した上記セルロース微細繊維積層シート(S5)をセルロース微細繊維面が接するように置き、さらにワニス(V5)をセルロース微細繊維シート上にアプリケーターで再度8.0g塗布した。それ以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF6(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0432】
[実施例7]
セルロース微細繊維シートをS6に、ワニスをV6にした以外は実施例2と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF7(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0433】
[実施例8]
セルロース微細繊維シートをS7に、ワニスをV1にした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF8(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム、絶縁層積層体、粗化処理積層体、めっき処理積層体)を作製した。
【0434】
[比較例1]
特開2006−316253の実施例4を参考に樹脂複合フィルム等の製造を行った。ワニス比較製造例1にて得られたワニスRV−1を、シート比較製造例1にて得られたセルロース不織布RS−1に含浸(含浸時間:5分以内)させたもの1枚を、熱プレス機内にて温度100℃、圧力9.81MPa下にて熱硬化(硬化時間:1時間)させることによって、樹脂複合フィルムRF−1を作製した。また、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム作製、絶縁層形成、粗化処理、めっき処理は実施例1と同じ方法で実施した。
【0435】
実施例1〜8及び比較例1で得られた樹脂複合フィルムの物性及び評価結果を下記表9に示す。
【0436】
【表7】
【0437】
【表8】
【0438】
【表9】
【0439】
[実施形態IV]
《測定及び評価方法》
〈セルロース微細繊維シート及びプリプレグの物性測定及び評価方法〉
(1)セルロース微細繊維の数平均繊維径
繊維シートにおいて、セルロース微細繊維の表面より、無作為に10箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を微細繊維の繊維径に応じて1,000〜100,000倍相当の倍率で行った。得られたSEM画像に対し、画面に対し水平方向と垂直方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の繊維径を拡大画像から実測し、交差する繊維の個数と各繊維の繊維径を数えた。こうして一つの画像につき縦横2系列の測定結果を用いて数平均繊維を算出した。さらに抽出した他の2つのSEM画像についても同じように数平均繊維を算出し、合計10画像分の結果を平均化した。
【0440】
(2)セルロース微細繊維シートを構成する繊維の最大繊維径
セルロース微細繊維シートの表面を、無作為に10箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を倍率500倍で行った。得られたSEM画像10枚内で最も太い繊維の繊維径を繊維シートにおける最大繊維径とした。他の不織布などに積層させた積層構造体については、繊維シート側からSEM観察を行った。
【0441】
(3)シート目付
室温20℃、湿度50%RHの雰囲気下で調湿したサンプルを10.0cm×10.0cmの正方形片に裁断・秤量し、下記式より算出した。
シート目付(g/m
2)=10cm角のサンプルの重量(g)/0.01m
2【0442】
(4)シート厚み
室温20℃、湿度50%RHの雰囲気下で調湿したサンプルを面接触型のタイプ(Mitutoyo(株)製面接触型膜厚計(Code No.547−401))で10点厚みを測定し、その平均値を該サンプルの厚みとした。
【0443】
(5)空隙率
セルロース微細繊維の密度を1.5g/cm
3と仮定し、下記式より算出した。
空隙率(%)=100−([目付(g/m
2)/{シート厚み(μm)×1.5(g/cm
3)}]×100)
【0444】
(6)透気抵抗度
室温23℃、湿度50%RHの雰囲気下で調湿したサンプルを王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)で透気抵抗度を10点測定し、その平均値を該サンプルの透気抵抗度とした。
【0445】
(7)プリプレグの厚み
プリプレグ内10点の厚みを測定し、その平均値をプリプレグの膜厚とした。膜厚計として面接触型のタイプ(Mitutoyo(株)製面接触型膜厚計(Code No.547−401))を使用した。
【0446】
(8)プリプレグにおけるセルロース微細繊維の数平均繊維径及び最大繊維径
プリプレグをメチルエチルケトンに含浸し、樹脂成分を溶解させ、セルロース微細繊維は分散させた。つづいて、分散液の減圧濾過(減圧度−0.09MPa(絶対真空度10kPa))を行った。濾過器としてはアドバンテック社製KG−90を用い、ガラスフィルターの上に同アドバンテック社製の1.0μm孔径のPTFE製メンブランフィルター(有効濾過面積は48cm
2)を用いた。PTFE製メンブランフィルターの上のセルロース繊維の堆積物を120℃のオーブンで乾燥させることでセルロース繊維からなるフィルムが得られた。このフィルムにおける数平均繊維径および最大繊維径の算出は、以下のSEMによる観察方法を用いた。
【0447】
まず、セルロース微細繊維からなる構造体の表面より、無作為に10箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を微細繊維の繊維径に応じて1,000〜100,000倍相当の倍率で行った。得られたSEM画像に対し、画面に対し水平方向と垂直方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の繊維径を拡大画像から実測し、交差する繊維の個数と各繊維の繊維径を数えた。こうして一つの画像につき縦横2系列の測定結果を用いて数平均繊維径を算出した。さらに抽出した他の2つのSEM画像についても同じように数平均繊維径を算出し、合計10画像分の結果を平均化し、対象とする試料の平均繊維径とした。
構造体の表面の10箇所について、倍率500倍でSEM観察を行った。得られたSEM画像10枚内で最も太い繊維径を最大繊維径とした。
不織布などに積層させた積層構造体については、セルロース微細繊維シート側からSEM観察を行った。
【0448】
〈樹脂複合フィルムの物性測定及び評価方法〉
(1)測定用断面サンプルの作成
まず、樹脂複合フィルム両面に白金を真空蒸着した(被膜厚み:10nm)。つづいて、試料フィルムをエポキシ樹脂(2液式エポキシ接着剤)で包埋し、ウルトラミクロトームで断面出しを行った。切削にはダイアモンドナイフを使用し、常温で切削を行った。シリカが含まれるフィルムについては、ミクロトームでシリカを切削できないため、Dual−Beam FIB装置(FEI製、Dual Beam Nova200 Nanolab、加速電圧30kV)を用いてサンプル加工し、フィルムの断面出しを行った。得られた断面サンプルは接着剤−白金−フィルム−白金−接着剤の5層で構成され、白金蒸着を行うことでサンプル中のフィルムの位置を明確にした。
【0449】
(2)顕微赤外イメージング
全ての樹脂複合フィルムにセルロース微細繊維および/またはアラミド微細繊維が含まれていることを顕微赤外イメージングで確認した。なお、測定は上記樹脂複合フィルムの断面サンプルについて、以下の条件により行った。
・装置 :赤外イメージング顕微鏡Nicolet
TM iN
TM10MX(Thermo Scientific
TM)
・分解能 :8cm
−1
・積算回数 :1回
・ステップサイズ:x=2.5μm、y=2.5μm
・測定範囲:4000−600cm
−1【0450】
(3)X線構造解析
実施例1の複合フィルムに対し、X線構造解析をした結果、X線回折パターンにおいて、2θの範囲を0°〜30°とするX線回折パターンが、10°≦2θ<19°に1つのピークと、19°≦2θ≦30°に2つのピークが確認された。これより、微細繊維が天然セルロースか、再生セルロースであることを特定した。
【0451】
(4)フィルム断面のAFMによる弾性率測定
上記樹脂複合フィルムの断面サンプルを専用のサンプル固定台に固定し、下記のようなAFM測定条件で断面の弾性率を測定した。
装置 :Bruker社製 Dimension Icon
測定モード :Peak Force Tapping Mode
プローブ :ダイヤモンド単結晶プローブ
ばね定数k=48N/m、先端曲率半径R=12nm
解像度 :512×512ピクセル
測定範囲 :15μm×15μm
サンプリング周波数:0.3−0.7Hz
最大押し込み荷重:50nN
また、解像度512×512ピクセル、測定範囲15μm×15μmでセルロース微細繊維の分布が確認できなかった場合には、上記と同等の解像度で測定範囲を3μm×3μm、さらには測定範囲を1μm×1μmとして測定を行った。
【0452】
(5)セルロース微細繊維シートの充填率
セルロース微細繊維シートの充填率は、樹脂複合フィルム断面のAFM弾性率像においてセルロース微細繊維シートが樹脂複合フィルム全体で占める面積比として定義した。弾性率は素材ごとに異なり、弾性率のヒストグラムの閾値を設定することで、樹脂複合フィルムに含まれる素材ごとに弾性率マッピングを作製した。たとえば、セルロース微細繊維とエポキシのみからなる樹脂複合フィルムの場合、エポキシ(ソフト相)とセルロース微細繊維(ハード相)からなるコントラスト像が得られる。ヒストグラムは大きく分けて2つのピークからなり、ヒストグラムの2つのピークの中点を2値化における閾値に設定した(セルロース:黒色、エポキシ:白色)。
樹脂複合フィルムの厚みがAFM測定範囲15μmよりも厚い場合、まず樹脂複合フィルムの断面を複数視野に分けて測定した。つづいて、各視野で弾性率マッピングを作製した後、画像を結合し、樹脂複合フィルムの断面が1画像に収まった像を得た。樹脂複合フィルムの断面がすべて写った弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、セルロース微細繊維シート由来の面積およびフィルム全体の面積を算出し、最終的に以下の式よりセルロース微細繊維シートの充填率を求めた。
セルロース微細繊維シートの充填率(%)=セルロース微細繊維シート由来の面積/フィルム全体の面積×100
以上の方法を用いて10か所のフィルム断面のセルロース微細繊維シートの充填率を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値をフィルム全体のセルロース微細繊維シートの充填率とした。
【0453】
(6)セルロース微細繊維シートを構成する繊維の平均繊維径
上記樹脂複合フィルム断面がすべて写った弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、セルロース微細繊維シート由来の面積(ΣS
f)およびセルロース微細繊維シートと他素材(エポキシなど)との界面の総長さ(ΣL
f)を求め、その後、下記式に従い、セルロース微細繊維シートを構成する繊維の平均繊維径を算出した。
セルロース微細繊維シートを構成する繊維の平均繊維径(nm)=4×ΣS
f/ΣL
f
以上の方法を用いて10か所の樹脂複合フィルムの断面の、セルロース微細繊維シートを構成する繊維の平均繊維径を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値をフィルム全体のセルロース微細繊維シートを構成する繊維の平均繊維径とした。
【0454】
(7)セルロース微細繊維シートを構成する繊維の最大繊維径
上記の樹脂複合フィルム断面がすべて写った10か所の弾性率マッピングについて、画像編集ソフト「imageJ」の粒子解析を行い、セルロース微細繊維シートを構成する繊維の繊維径を、真円と見做した時の粒径として算出した。この時、最も大きい粒径をセルロース微細繊維シートを構成する繊維の最大繊維径として採用した。
【0455】
(8)樹脂複合フィルム内のセルロース微細繊維層の空隙率
上記樹脂複合フィルム断面がすべて写った弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、セルロース微細繊維由来の面積(ΣS)と、同様に算出されるセルロース微細繊維層を構成する繊維間(オーバーコート樹脂層を除く)に含まれる樹脂由来の面積(ΣSp)を算出し、その後、下記式に従い、樹脂複合フィルム内のセルロース微細繊維層の空隙率を算出した。
樹脂複合フィルム内のセルロース微細繊維層の空隙率(%)=ΣS/(ΣS+ΣSp)
×100
【0456】
(9)樹脂複合フィルム中の無機充填材の充填率
樹脂複合フィルム中の無機充填材の充填率は、上記樹脂複合フィルム断面において無機充填材を構成する原子が占める面積比として定義した。例えば、シリカ粒子であればSi、水酸化アルミニウム粒子であればAlを測定した。ここではシリカ粒子を例に測定方法を示す。断面サンプルをCペーストおよびOsコーティングにより導通処理を行った後、走査型電子顕微鏡S−4800(日立ハイテクフィールディング社製)を用いて、撮影倍率500倍、加速電圧1.0kV、検出器:二次電子の設定で撮影を行い、断面SEM像を取得した。つづいて、同視野についてエネルギー分散型X線検出器X−Max SILICON DRIFT X−RAY DETECTOR(株式会社堀場製作所製)を用いてCおよびSiの元素マッピングを取得した。面積比は、まずフィルム断面のSEMの二次電子像を画像編集ソフト「imageJ」を用いて、フィルムの外周に相当する部分で切り取り、フィルム断面のみを表示させた。次に2値化を行い、シリカ由来を黒く、その他由来を白く表示した。白黒二値化の閾値は黒く表示される部分がEDXのSiの領域と対応するように選び、黒の面積をカウント数として算出する。また、フィルム断面全体の面積をカウント数として算出する。これらの二つの比により以下の式よりSiがフィルム断面全体に占める割合を算出した。
無機充填材の充填率(%)=(無機充填材由来の面積/フィルム全体の面積)×100
以上の方法を用いて10か所のフィルム断面について無機充填材の充填率を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値を樹脂複合フィルム中の無機充填材の平均充填率とした。
ここでの二値化は有機物(樹脂や繊維等)と無機物(無機充填材等)の元素の違いによる二値化のことをいう。
【0457】
(10)セルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合
セルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合は、上記の樹脂複合フィルム断面の弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、樹脂複合フィルム中の無機充填材由来の全面積およびセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材由来の面積を算出し、最終的に以下の式よりセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合を求めた。なお、セルロース微細繊維層はフィルム最表面から近いセルロース微細繊維シートの端部を順に10点以上選び、線で結んだ時に囲まれる領域をセルロース微細繊維層と定義する。
セルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合(%)=(セルロース微細繊維に含まれる無機充填材由来の面積/樹脂複合フィルム中の無機充填材由来の全面積)×100
以上の方法を用いて10か所の樹脂複合フィルム断面のセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合を求め、そのうち最大値および最小値を除いた8点の平均値をセルロース微細繊維層に含まれる無機充填材の割合とした。
【0458】
(11)オーバーコート樹脂層の厚み
樹脂複合フィルム最表面より不織布層表面までの長さをオーバーコート樹脂層と定義する。不織布層とはセルロース微細繊維層を含む有機繊維からなる層と定義する。上記のAFM弾性率マッピングよりエポキシ層(表)/不織布層/エポキシ層(裏)の3層で構成されることが確認できる。フィルム最表面より不織布層表面までの長さを表および裏でそれぞれ10点ずつ測定し、その平均値をオーバーコート樹脂層の厚み(表)、オーバーコート樹脂層の厚み(裏)とする。
【0459】
(12)線熱膨張率(CTE)
複合樹脂フィルムを3mm幅×25mm長に切断し、測定サンプルとした。SII製TMA6100型装置を用いて、引っ張りモードでチャック間10mm、荷重5g、窒素雰囲気下、室温から200℃まで5℃/min.で昇温、200℃から25℃まで5℃/min.で降温、再び25℃から200℃まで5℃/min.で昇温した。この際、2度目の昇温時の150℃および200℃での線熱膨張率(CTE150およびCTE200)を求めた。CTE150およびCTE200はそれぞれ、149℃〜150℃および199℃〜200℃の1℃での線膨張係数とし、下式のように表される。
CTE150=(L150−L149)/L100×(10
6)
CTE200=(L200−L199)/L200×(10
6)
なお、L149、L150、L199、及びL200はそれぞれ、149℃、150℃、199℃、及び200℃でのチャック間長を意味する。
【0460】
(13)CTE差
150℃から200℃の間のCTE差の絶対値は下式にように表される
CTE差の絶対値=|CTE200−CTE150|
【0461】
(14)樹脂複合フィルムの厚み
樹脂複合フィルム内10点の厚みを測定し、平均値を膜厚とした。膜厚計として面接触型のタイプ(Mitutoyo(株)製面接触型膜厚計(Code No.547−401))を使用した。
【0462】
(15)吸湿率
樹脂複合フィルムを50mm角に切断し、120℃で2時間乾燥させた後、初期質量(W0)を測定し、その後、湿度: 85%/温度: 85℃/192 時間の条件で吸湿処理した後の質量(W1)を測定した。そして、下記の式より吸湿率を求めた。
吸湿率(%)=(W1−W0)/W0×100
【0463】
(16)透過率
透過率は、ASTM D1003に基づき、ヘイズメーターNDH7000SP CU2II(製品名)(日本電色工業株式会社製)を使用した光透過性試験によって測定できる。
【0464】
(17)誘電特性(比誘電率及び誘電正接)
厚み0.8mmの厚膜樹脂複合フィルムを1.5(幅)×80mm(長さ)のサイズに切り出し、測定サンプルとした。空洞共振法(8722ES型ネットワークアナライザー、アジレントテクノロジー製;空洞共振器、関東電子応用開発製)によって、1GHzの値を測定した。
【0465】
(18)絶縁信頼性
銅張積層板の両面の銅箔上に、0.2mm間隔のスルーホールを配する配線パターンを作成し、温度120℃湿度85%RHの雰囲気下で隣接するスルーホール間に10Vの電圧をかけ、抵抗値の変化を測定した。試験開始後500時間以内に抵抗が1MΩ未満になった場合を絶縁不良とし、絶縁不良とならなかったサンプルの割合を評価した(サンプル数は10個とした。)。
【0466】
(19)そり
厚み0.8mmの厚膜樹脂複合フィルムを40mm×40mmに裁断した。サンプルを室温から260℃まで加熱し、その後50℃まで冷却した時のそり量を下式に従って測定した。
そり量(%)=たわみh(mm)/長さL(mm)×100
厚膜樹脂複合フィルムのたわみ(h)及び長さ(L)の概念を
図3に示す。そり率が1%未満を○、2%未満を△、2%以上を×とした。
【0467】
<スラリーの製造例>
[スラリー製造例1]
双日(株)より入手した再生セルロース繊維であるテンセルカット糸(3mm長)を洗浄用ネットに入れて界面活性剤を加え、洗濯機で何度も水洗することにより、繊維表面の油剤を除去した。得られた精製テンセル繊維(カット糸)を固形分1.5重量%となるように水中に分散させて(400L)、ディスクレファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmで400Lの該水分散体を20分間叩解処理した。それに引き続き、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で叩解処理を続けた。経時的にサンプリングを行い、サンプリングスラリーに対して、JIS P 8121で定義されるパルプのカナダ標準ろ水度試験方法(以下、CSF法)のCSF値を評価したところ、CSF値は経時的に減少していき、一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けると、増大していく傾向が確認された。クリアランスをゼロ近くとしてから10分間、上記条件で叩解処理を続け、CSF値で100ml以上の叩解水分散体を得た。得られた叩解水分散体を、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS015H)を用いて操作圧力100MPa下で5回の微細化処理を実施し、セルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0468】
[スラリー製造例2]
原料として天然セルロースであるリンターパルプを用いた。リンターパルプが4重量%となるように水に浸液させてオートクレーブ内で130℃、4時間の熱処理を行った。得られた膨潤パルプを何度も水洗し、水を含浸した状態の膨潤パルプを得た。その後、スラリー製造例1と同様の方法でディスクリファイナーおよび高圧ホモジナイザー処理を行い、セルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。CSF値は100ml以上であった。
【0469】
[スラリー製造例3]
原料をアバカパルプに変えた以外はスラリー製造例2と同じ方法でセルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。CSF値は630ml以上であった。
【0470】
[スラリー製造例4]
原料を帝人(株)のアラミド繊維(1mm長)に変えた以外はスラリー製造例1と同じ方法でアラミド微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0471】
[スラリー製造例5]
操作圧力100MPa下での微細化処理を30回実施した以外はスラリー製造例2と同じ方法でセルロース微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0472】
[スラリー製造例6]
操作圧力100MPa下での微細化処理を30回実施した以外はスラリー製造例4と同じ方法でアラミド微細繊維のスラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0473】
[スラリー製造例7]
CSF値がゼロとなった時点で処理を止めた以外はスラリー製造例1と同じ方法でセルロース微細繊維スラリー(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0474】
[スラリー比較製造例1]
特開2006−316253の実施例4を参考にスラリー製造を行った。2.0%のグルコースを添加した多糖生産培地(Polysaccharide−production−medium,Akihiko Shimada、Vivaorigino,23,1、52−53、1995)を高圧蒸気殺菌処理した後、その1000Lを内容量3000Lの発酵槽に入れ、CF−002株を104CFU/mlになるように接種し、通気下、30℃で2日間、通気下での撹拌培養を行い、バクテリアセルロース(BC)を大量に含む分散体を得た。その後、スクリーンメッシュで濾別水洗、圧搾後、1%NaOH溶液に浸漬し、除菌後、再度中和、水洗、圧搾を行った。さらに水洗と圧搾の工程を3度繰り返し、精製された綿状のBC/水分散体(セルロース含有率:11.6重量%)を得た。次にセルロース濃度が1.0重量%となるように水で希釈し、家庭用ミキサーで10分間予備分散した後に、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS3015H)を用いて、操作圧力80MPa下で4回の分散処理を実施した。
【0475】
<シートの製造例>
[シート製造例1]
前記スラリー製造例1のスラリーを固形分濃度0.2重量%まで希釈し、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。PET/ナイロン混紡製の平織物{敷島カンバス社製NT20、大気下25℃での水透過量:0.03ml/(cm
2・s)、セルロース微細繊維を大気圧下25℃における濾過で99%以上濾別する能力あり}をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に目付10g/m
2のセルロースシートを目安に、上記調整した抄紙スラリーを投入し、その後大気圧に対する減圧度を4KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
【0476】
得られた濾布上に乗った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm
2の圧力で1分間プレスした。湿紙面をドラム面に接触させるようにして、湿紙/濾布の2層の状態で表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーに湿紙がドラム面に接触するようにして約120秒間乾燥させた。得られた乾燥した2層体からセルロースのシート状構造物から濾布を剥離させて、白色のセルロース微細繊維シート(25cm×25cm、10g/m
2)を得た。つづいて、セルロース微細繊維シートをカレンダー装置(由利ロール(株)製、油圧式2本ロールテストエンボス機、上ロール:金属/下ロール:アラミド、面長300mm、温度:室温、圧力:1.5ton/300mm)によって平滑化処理を施し、薄層のセルロース微細繊維シートS1を得た。
【0477】
[シート製造例2]
前記スラリー製造例2のセルロース微細繊維スラリー50重量部、前記スラリー製造例4のアラミド微細繊維スラリー50重量部を混合し、固形分濃度0.2重量%まで希釈した。つづいて、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。つづく抄紙・乾燥・平滑化工程はシート製造例1と同様の手法を用い、アラミド微細繊維を含む乳白色のセルロース微細繊維シートS2を得た。
【0478】
[シート製造例3]
前記スラリー製造例3のスラリー(312.5g)に、1−ヘキサノール及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「60SH−4000」、信越化学工業製)をそれぞれ1.2重量%(3.9g)、0.012重量%(0.039g)添加し、家庭用ミキサーで4分間乳化、分散化させた。それ以外は、実施例1と同様の方法で抄紙・乾燥・平滑化を行い、セルロース微細繊維シートS3を得た。
【0479】
[シート製造例4]
前記スラリー製造例2のセルロース微細繊維スラリー70重量部、前記スラリー製造例4のアラミド微細繊維スラリー30重量部を混合し、固形分濃度0.2重量%まで希釈した。つづいて、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。抄紙スラリー312.5gをスリーワンモーターで撹拌させながら、カチオン性ブロックポリイソシアネート(商品名「メイカネートWEB」、明成化学工業株式会社製、固形分濃度1.0重量%まで希釈)を1.9g滴下した後3分間撹拌を行い、抄紙スラリー(合計314.4g)を得た。添加したカチオン性ブロックポリイソシアネート重量比率はセルロース微細繊維およびアラミド微細繊維固形分重量に対して、3重量%であった。シート製造例1と同様の抄紙・乾燥手法を用いてシート化した。その後、平滑化工程を経た後、シートを2枚のSUS製金枠(25cm×25cm)で挟み、クリップで固定し、オーブンで160℃、2分間の熱処理を行い、ブロックポリイソシアネートで架橋されたアラミド微細繊維を含む乳白色のセルロース微細繊維シートS4を得た。
【0480】
[シート製造例5]
シート製造例1の手法を用い、PET/ナイロン混紡製の平織物の上にキュプラ長繊維不織布(旭化成せんい株式会社製、商品名:ベンリーゼSN140 目付:14g/m
2、膜厚:70μm、密度:0.2g/cm
3、平均単糸繊度:0.2dtex)を重ねた状態で抄紙を行い、キュプラ長繊維不織布上にセルロース微細繊維シートが積層された繊維シートS5を作製した。なお、平滑化工程は行わなかった。
【0481】
[シート製造例6]
前記スラリー製造例5のセルロース微細繊維スラリー50重量部、前記スラリー製造例6のアラミド微細繊維スラリー50重量部を混合し、固形分濃度0.2重量%まで希釈した。つづいて、家庭用ミキサーで3分撹拌することで312.5gの抄紙スラリーを作製した。つづく抄紙・乾燥・平滑化工程はシート製造例1と同様の手法を用い、アラミド微細繊維を含む乳白色のセルロース微細繊維シートS6を得た。
【0482】
[シート製造例7]
前記スラリー製造例7のセルロース微細繊維スラリー468.8gをスリーワンモーターで撹拌させながら、カチオン性ブロックポリイソシアネート(商品名「メイカネートWEB」、明成化学工業株式会社製、固形分濃度1.0重量%まで希釈)を2.85g滴下した後3分間撹拌を行い、抄紙スラリー(合計471.65g)を得た。添加したカチオン性ブロックポリイソシアネート重量比率はセルロース微細繊維固形分重量に対して、3.0重量%であった。シート製造例4と同様の抄紙・乾燥・平滑化手法を用いてシート化した。その後、該乾燥シートを2枚のSUS製金枠(25cm×25cm)で挟み、クリップで固定し、オーブンで160℃、2分間の熱処理を行い、ブロックポリイソシアネートで架橋されたセルロース微細繊維を含む白色のセルロース微細繊維シートS7を得た。
【0483】
[シート比較製造例1]
特開2006−316253の実施例4を参考にシート製造を行った。スラリー比較製造例1で製造したセルロース濃度1.0重量%のスラリーをさらに水でセルロース濃度0.40重量%となるように希釈し、再度家庭用ミキサーで5分間分散処理を行い、得られた分散液を抄紙用分散液として使用した。得られた湿紙上をさらに同じ濾布で覆い、金属製ローラーにて脱水し、セルロース濃度が12〜13重量%となるように調節した。得られた湿紙はPET織物を剥がさないまま、まずアセトン中に浸漬し時々全体を軽くすすぎながら約10分間置換処理を行った後に、トルエン/アセトン=50/50(g/g)の混合溶液に浸漬し、時々全体を軽くすすぎながら約10分間、置換処理を行った。その直後に濾布で挟んだ湿紙を金属板上に乗せ、その上に錘を乗せて定長で乾燥されるようにして、乾燥オーブン内にセットして、100℃で50分間乾燥させた。乾燥後、不織布を濾布から剥がすことにより、白色のセルロースシートRS1を得た。
【0484】
シート製造例1〜7及びシート比較製造例1の原料、製造方法及び物性を下記表10に示す。
【0485】
<ワニスの製造例>
[ワニス製造例1]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V1)を調整した。
・臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂1121N−80M(大日本インキ化学)78.9重量部
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂N680−75M(大日本インキ化学)14.0重量部
・ジシアンジアミド(大日本インキ化学)2.0重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0重量部
・球状シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)32重量部
【0486】
[ワニス製造例2]
球状シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)98重量部を入れる以外はワニス製造例1と同じ方法でワニスV2を製造した。
【0487】
[ワニス製造例3]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V3)を調整した。
・クレゾールノボラック型エポキシN−660(大日本インキ化学)48.7重量部
・トリアジン含有フェノールノボラック型エポキシLA−7054(大日本インキ化学)46.3重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0重量部
【0488】
[ワニス製造例4]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V4)を調整した。
・ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂NC−3000(大日本インキ化学)31.5部
・クレゾールノボラック型エポキシ樹脂N−690(大日本インキ化学)31.5部
・ビフェニルアラルキル型フェノールMEH−7851H(明和化成)30.0部
・ジシアンジアミド(大日本インキ化学)1.9部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・フェノキシ樹脂YL7553BH30(三菱化学)5.0部
・水酸化アルミニウムH−43S(昭和電工、平均粒径0.7μm)61.0重量部
・架橋微粒子ゴムXER−91(JSR)2.5重量部
【0489】
[ワニス製造例5]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V5)を調整した。
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂828EL(三菱化学)22.3部
・ナフタレン型4官能エポキシ樹脂HP−4710(大日本インキ化学)27.9部
・トリアジン含有フェノールノボラック樹脂LA−7054(大日本インキ化学)16.6部
・ナフトール系硬化剤SN−485(東都化成)16.6部
・ナフトール系硬化剤EXB―9500(大日本インキ化学)16.6部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
【0490】
[ワニス製造例6]
メチルエチルケトンを溶媒とし、下記化合物を混練機で混合した固形分70重量%のワニス(V6)を調整した。
・臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂1121N−80M(大日本インキ化学)83.1重量部
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂N680−75M(大日本インキ化学)14.7重量部
・ジシアンジアミド(大日本インキ化学)2.2重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成)0.1重量部
・シリカSO25R(アドマテックス、重量平均粒径0.5μm)60.6重量部
【0491】
[ワニス比較製造例1]
特開2006−316253の実施例4を参考にワニス製造を行った。下記化合物を120℃まで加熱し、混練機で混合した固形分100wt%のワニス(RV1)を調整した。
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ、AER−250)100重量部
・m−キシリレンジアミン18重量部
【0492】
ワニス製造例1〜6及びワニス比較製造例1の組成及び固形分率を下記表11に示す。なお、表11中の各成分の数値は、重量部を表す。
【0493】
<樹脂複合フィルムの作製>
[実施例1]
(プリプレグ作製)
20cm角ポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離型面にワニスV1をフィルムアプリケーターで0.3g塗布した後、10cm角に裁断した上記セルロース微細繊維シート(S1)を置き、さらに該ワニスV1をセルロース微細繊維シート上にアプリケーターで再度0.3g塗布した。得られたフィルムを100℃、4分加熱して溶媒を除去するとともに半硬化物のプリプレグを得た。
【0494】
(樹脂複合フィルム作製)
該プリプレグに別のポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離形面が接するように被せた後、真空熱プレス機で硬化を行った(加熱温度220℃、圧力6.0MPa、時間160分)。得られた硬化フィルムより支持フィルムを外し、樹脂複合フィルムを得た。得られた樹脂複合フィルム(F1)の各種物性を表12に示す。
【0495】
得られた樹脂複合フィルムのAFM弾性率像を
図1(a)に、弾性率ヒストグラムを
図1(b)に、2値化像を
図1(c)にそれぞれ示す。なお、
図1(c)において斜線部がセルロース微細繊維シートを構成する繊維部と対応する。
【0496】
さらに、得られた
図1(a)の樹脂複合フィルム断面の弾性率マッピングより、画像編集ソフト「imageJ」を用いて、無機充填材由来の面積およびセルロース微細繊維層に含まれるシリカフィラーの由来の面積を算出し、フィルム最表面から近いセルロース微細繊維シートの端部を10点以上選び、線で結んだ時に囲まれる領域をセルロース微細繊維層として定義したときの処理画像を
図2に示す。
【0497】
(銅張積層板作製)
最終的な硬化物の厚みが0.7mm〜0.9mmの範囲に入るように上記プリプレグを所定枚数枚重ね、電解銅箔F2−WS(古河サーキットフォイル、厚さ18μm、処理面のRz=2.3μm)を上下に配置し、圧力2.5MPa、温度240℃で60分間プレスを行って、銅張積層板を得た。
【0498】
(厚膜樹脂複合フィルム作製)
該銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより、銅箔を取り除いた評価用の厚膜樹脂複合フィルムを作製した。
【0499】
[実施例2]
セルロース微細繊維シートをS2にした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF2(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム)を作製した。
【0500】
[実施例3]
ワニスをV2とし、塗布量を0.9gとした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF3(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム)を作製した。
【0501】
[実施例4]
セルロース微細繊維シートをS3に、ワニスをV3に、さらにワニスの塗布量を0.1gにした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF4(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム)を作製した。樹脂複合フィルムの全光線透過率を測定したところ、82%であった。
【0502】
[実施例5]
セルロース微細繊維シートをS4に、ワニスをV4に、さらにワニスの塗布量を0.1gにした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF5(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム)を作製した。
【0503】
[実施例6]
20cm角ポリエチレンテレフタレートの支持フィルム(厚さ16μm)の離型面にワニス(V5)をフィルムアプリケーターで0.8g塗布した後、10cm角に裁断した上記セルロース微細繊維積層シート(S5)をセルロース微細繊維面が接するように置き、さらにワニス(V5)をセルロース微細繊維シート上にアプリケーターで再度8.0g塗布した。それ以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF6(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム)を作製した。
【0504】
[実施例7]
セルロース微細繊維シートをS6に、ワニスをV6にした以外は実施例2と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF7(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム)を作製した。
【0505】
[実施例8]
セルロース微細繊維シートをS7に、ワニスをV1にした以外は実施例1と同じ方法で、各種樹脂複合フィルムF8(プリプレグ、樹脂複合フィルム、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム)を作製した。
【0506】
[比較例1]
特開2006−316253の実施例4を参考に樹脂複合フィルム等の製造を行った。ワニス比較製造例1にて得られたワニスRV1を、シート比較製造例1にて得られたセルロース不織布RS1に含浸(含浸時間:5分以内)させたもの1枚を、熱プレス機内にて温度100℃、圧力9.81MPa下にて熱硬化(硬化時間:1時間)させることによって、樹脂複合フィルムRF1を作製した。また、銅張積層板、厚膜樹脂複合フィルム作製は実施例1と同じ方法で実施した。
【0507】
実施例1〜8及び比較例1で得られた樹脂複合フィルムの物性及び評価結果を下記表12に示す。
【0508】
【表10】
【0509】
【表11】
【0510】
【表12】