(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施形態に係る静電容量式センサを表す分解図である。
図2は、本実施形態に係る静電容量式センサの構成を表す平面図である。
図3は、
図2に表した切断面C1−C1における断面図である。
図4は、
図2に表した切断面C2−C2における断面図である。
なお、透明電極は透明なので本来は視認できないが、
図2では理解を容易にするため透明電極の外形を示している。
【0019】
本願明細書において「透明」および「透光性」とは、可視光線透過率が50%以上(好ましくは80%以上)の状態を指す。更に、ヘイズ値が6%以下であることが好適である。本願明細書において「遮光」および「遮光性」とは、可視光線透過率が50%未満(好ましくは20%未満)の状態を指す。
【0020】
図1に表したように、本実施形態に係る静電容量式センサ1は、センサ基板2と、パネル3と、中間層40と、第1の粘着層31と、第2の粘着層32と、を備える。パネル3は、透光性を有し、例えばポリカーボネート(PC)などの樹脂を含む材料により形成されている。
【0021】
センサ基板2は、パネル3から離れた位置に設けられる。具体的には、センサ基板2は、パネル3からみて、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置51に近い位置に設けられ、表示装置51を保持する筐体52などに取り付けられる。センサ基板2は、例えばガラスセンサなどと呼ばれ、ガラス製の基材21(
図3参照)と、透明電極と、を有する。センサ基板2の詳細については、後述する。
【0022】
中間層40は、パネル3と、センサ基板2と、の間に設けられている。中間層40は、透光性を有し、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂を含む材料により形成されている。中間層40の線膨張係数は、センサ基板2の基材21の線膨張係数よりも大きく、パネル3の線膨張係数よりも小さい。また、中間層40のヤング率は、センサ基板2の基材21のヤング率よりも低く、パネル3のヤング率よりも高い。
【0023】
第1の粘着層31は、パネル3と中間層40との間に設けられ、パネル3と中間層40とを互いに接合している。第2の粘着層32は、センサ基板2と中間層40との間に設けられ、センサ基板2と中間層40とを互いに接合している。第1の粘着層31および第2の粘着層32のそれぞれのヤング率は、パネル3のヤング率、センサ基板2の基材21のヤング率および中間層40のヤング率よりも低い。第1の粘着層31および第2の粘着層32のそれぞれは、光学透明粘着層(OCA;Optical Clear Adhesive)であり、例えばアクリル系粘着剤を含有する粘着層や両面粘着テープ等からなる。
【0024】
図2〜
図4に表したように、静電容量式センサ1は、パネル3側の面の法線に沿った方向(Z1−Z2方向)からみて、検出領域11と非検出領域25とからなる。検出領域11は、指Fなどの操作体により操作を行うことができる領域であり、非検出領域25は、検出領域11の外周側に位置する額縁状の領域である。非検出領域25は、後述する加飾層9によって遮光され、静電容量式センサ1におけるパネル3側の面からセンサ基板2側の面への光(外光が例示される。)およびセンサ基板2側の面からパネル3側の面への光(静電容量式センサ1と組み合わせて使用される表示装置51のバックライトからの光が例示される。)は、非検出領域25を透過しにくくなっている。
【0025】
本実施形態のセンサ基板2は、基材21と、第1の電極8と、第2の電極12と、を有する。
【0026】
第1の電極8は、検出領域11に配置され、複数の第1の透明電極4を有する。
図4に示すように、複数の第1の透明電極4は、基材21におけるZ1−Z2方向に沿った方向を法線とする主面のうちZ1側に位置する主面(以下、「おもて面」と略記する場合がある。)21aに設けられている。各第1の透明電極4は、細長い連結部7を介してY1−Y2方向(第1の方向)に連結されている。そして、Y1−Y2方向に連結された複数の第1の透明電極4を有する第1の電極8が、X1−X2方向に間隔を空けて配列されている。
【0027】
第1の透明電極4および連結部7は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電性材料でスパッタや蒸着等により形成される。透明導電性材料としては、ITOの他に、銀ナノワイヤに代表される金属ナノワイヤ、メッシュ状に形成された薄い金属、あるいは導電性ポリマーなどが挙げられる。これは、後述する透明導電性材料においても同じである。
【0028】
第2の電極12は、検出領域11に配置され、複数の第2の透明電極5を有する。
図3に示すように、複数の第2の透明電極5は、基材21のおもて面21aに設けられている。このように、第2の透明電極5は、第1の透明電極4と同じ面(基材21のおもて面21a)に設けられている。
図3および
図4に示すように、各第2の透明電極5は、細長いブリッジ配線10を介してX1−X2方向(第2の方向)に連結されている。そして、X1−X2方向に連結された複数の第2の透明電極5を有する第2の電極12が、Y1−Y2方向に間隔を空けて配列されている。なお、X1−X2方向は、Y1−Y2方向と交差している。例えば、X1−X2方向は、Y1−Y2方向と垂直に交わっている。
【0029】
第2の透明電極5は、ITO等の透明導電性材料でスパッタや蒸着等により形成される。ブリッジ配線10は、ITO等の透明導電性材料で形成される。あるいは、ブリッジ配線10は、ITO等の透明導電性材料を含む第1層と、第1層よりも低抵抗で透明な金属からなる第2層と、を有していてもよい。ブリッジ配線10が第1層と第2層との積層構造を有する場合には、第2層は、Au、Au合金、CuNiおよびNiよりなる群から選択されたいずれかにより形成されることが好適である。この中でも、Auを選択することがより好適である。第2層がAuにより形成された場合には、ブリッジ配線10は、良好な耐環境性(耐湿性、耐熱性)を得ることができる。
【0030】
図3および
図4に示すように、各第1の透明電極4間を連結する連結部7の表面には、絶縁層20が設けられている。
図3に示すように、絶縁層20は、連結部7と第2の透明電極5との間の空間を埋め、第2の透明電極5の表面にも多少乗り上げている。絶縁層20としては、例えばノボラック樹脂(レジスト)が用いられる。
【0031】
図3および
図4に示すように、ブリッジ配線10は、絶縁層20の表面20aから絶縁層20のX1−X2方向の両側に位置する各第2の透明電極5の表面にかけて設けられている。ブリッジ配線10は、各第2の透明電極5間を電気的に接続している。
【0032】
図3および
図4に示すように、各第1の透明電極4間を接続する連結部7の表面には絶縁層20が設けられており、絶縁層20の表面に各第2の透明電極5間を接続するブリッジ配線10が設けられている。このように、連結部7とブリッジ配線10との間には絶縁層20が介在し、第1の透明電極4と第2の透明電極5とは電気的に絶縁された状態となっている。本実施形態では、第1の透明電極4と第2の透明電極5とが同じ面(基材21のおもて面21a)に設けられているため、静電容量式センサ1の薄型化を実現できる。
【0033】
なお、連結部7、絶縁層20およびブリッジ配線10は、いずれも検出領域11内に位置するものであり、第1の透明電極4および第2の透明電極5と同様に透光性を有する。
【0034】
図2に示すように、非検出領域25には、各第1の電極8および各第2の電極12から引き出された複数本の配線部6が形成されている。第1の電極8および第2の電極12のそれぞれは、接続配線16を介して配線部6と電気的に接続されている。
図2に示すように、各配線部6は、フレキシブルプリント基板と電気的に接続される外部接続部27に接続されている。すなわち、各配線部6は、第1の電極8および第2の電極12と、外部接続部27と、を電気的に接続している。外部接続部27は、例えば導電ペーストを介して、フレキシブルプリント基板と電気的に接続されている。
【0035】
各配線部6は、Cu、Cu合金、CuNi合金、Ni、Ag、Au等の金属を有する材料により形成される。接続配線16は、ITO等の透明導電性材料で形成され、検出領域11から非検出領域25に延出している。配線部6は、接続配線16の上に非検出領域25内で積層され、接続配線16と電気的に接続されている。
【0036】
配線部6は、
図3および
図4に示すように、基材21のおもて面21aにおける非検出領域25に位置する部分に設けられている。外部接続部27も、配線部6と同様に、基材21のおもて面21aにおける非検出領域25に位置する部分に設けられている。
【0037】
図2では、理解を容易にするために配線部6や外部接続部27が視認されるように表示しているが、実際には、
図3および
図4に示すように、基材21のおもて面21aに対向するようにパネル3が設けられている。パネル3におけるZ1−Z2方向に沿った方向を法線とする主面のうちZ1側に位置する主面(基材21のおもて面21aに対向する主面3bとは反対側の主面)3aは、静電容量式センサ1を操作する側の面となるため、本明細書において「操作面」ともいう。
【0038】
パネル3は、積層構造を有していてもよい。積層構造の具体例として、有機系材料からなるフィルム上に無機系材料からなるハードコート層が形成されている積層構造体が挙げられる。パネル3の形状は平板状であってもよいし、他の形状であってもよい。例えば、パネル3の操作面3aは曲面であってもよく、パネル3の操作面3aの面形状と、パネル3におけるZ1−Z2方向に沿った方向を法線とする主面のうちZ2側に位置する主面(換言すれば、操作面3aとは反対側の主面であって、以下、「裏面」と略記する場合がある。)3bの面形状と、が異なっていてもよい。
【0039】
パネル3の裏面3bにおける非検出領域25に位置する部分には、遮光性を有する加飾層9が設けられている。本実施形態に係る静電容量式センサ1では、パネル3の裏面3bにおける非検出領域25に位置する部分全体に加飾層9が設けられている。このため、静電容量式センサ1をパネル3の操作面3a側からみると、配線部6および外部接続部27は加飾層9によって隠蔽され、視認されない。加飾層9を構成する材料は、遮光性を有する限り任意である。加飾層9は絶縁性を有していてもよい。
【0040】
図1に示す静電容量式センサ1では、
図3に示すようにパネル3の操作面3a上に操作体の一例として指Fを接触させると、指Fと指Fに近い第1の透明電極4との間、および指Fと指Fに近い第2の透明電極5との間で静電容量が生じる。静電容量式センサ1は、このときの静電容量変化に基づいて、指Fの接触位置を算出することが可能である。静電容量式センサ1は、指Fと第1の電極8との間の静電容量変化に基づいて指Fの位置のX座標を検知し、指Fと第2の電極12との間の静電容量変化に基づいて指Fの位置のY座標を検知する(自己容量検出型)。
【0041】
あるいは、静電容量式センサ1は、相互容量検出型であってもよい。すなわち、静電容量式センサ1は、第1の電極8および第2の電極12のいずれか一方の電極の一列に駆動電圧を印加し、第1の電極8および第2の電極12のいずれか他方の電極と指Fとの間の静電容量の変化を検知してもよい。これにより、静電容量式センサ1は、他方の電極により指Fの位置のY座標を検知し、一方の電極により指Fの位置のX座標を検知する。
【0042】
なお、
図2〜
図4に表した第1の透明電極4および第2の透明電極5の配置は、一例であり、これだけには限定されない。静電容量式センサ1は、指Fなどの操作体と透明電極との間の静電容量の変化を検知し、操作体の操作面3aへの接触位置を算出できればよい。例えば、第1の透明電極4と第2の透明電極5とは基材21の異なる主面に設けられていてもよい。
【0043】
静電容量式センサ1は、例えばカーナビゲーションに搭載されたセンサなどのように車載用のセンサとして用いられることがある。このとき、パネル3からみて、表示装置51の近い位置に配置されるセンサ基板2の基材21の形状は、矩形であることが多い。一方で、主面が操作面3aとなるパネル3の形状は、矩形だけには限定されず、多様な形状になることがある。例えば、パネル3の形状は、車両のインストルメントパネルの形状に応じて様々な形状を呈する。そのため、パネル3の固定形態も様々である。
【0044】
そのため、静電容量式センサ1の周囲の環境温度が変化すると、基材21およびパネル3が互いに異なる方向へ膨張あるいは収縮することがある。ここで、基材とパネルとの間に1層の粘着層が設けられた場合には、1層の粘着層に対してせん断力が付与された状態になる。このとき、基材やパネルに対する粘着層の付着力が低い場合には、基材21およびパネル3の膨張および収縮の少なくともいずれかに追従できず、基材21およびパネル3の少なくともいずれかから粘着層が剥がれるおそれがある。
【0045】
これに対して、本実施形態に係る静電容量式センサ1では、中間層40がパネル3とセンサ基板2との間、具体的にはパネル3と基材21との間に設けられている。そして、パネル3と中間層40とを接合する第1の粘着層31が、パネル3と中間層40との間に設けられている。また、センサ基板2と中間層40とを接合する第2の粘着層32が、センサ基板2と中間層40との間、具体的には基材21と中間層40との間に設けられている。すなわち、2層の粘着層(第1の粘着層31および第2の粘着層32)が中間層40の両側に設けられている。
【0046】
これにより、中間層40は、中間層40の両側において第1の粘着層31および第2の粘着層32を独立に機能させることができる。言い換えれば、中間層40は、中間層40を境界にして粘着層の機能を第1の粘着層31および第2の粘着層32として分断させることができる。静電容量式センサ1の周囲の環境温度が変化して樹脂製のパネル3およびガラス製の基材21が異なる方向へ膨張あるいは収縮することなどに起因して、パネル3とセンサ基板2との間に位置する部材に対してせん断力が付与された場合であっても、第1の粘着層31および第2の粘着層32は、中間層40を挟んで配置されているため、互いに独立に変形することができる。すなわち、パネル3の変位に起因して生じるせん断力はパネル3と中間層40との間に位置する第1の粘着層31に主として付与される。このとき、第1の粘着層31は、パネル3の中間層40に対する相対位置の変化に追従するように変形して、第1の粘着層31に付与されたせん断力を吸収・緩和することができる。また、センサ基板2の基材21の変位に起因して生じるせん断力はセンサ基板2の基材21と中間層40との間に位置する第2の粘着層32に主として付与される。このとき、第2の粘着層32は、センサ基板2の基材21の中間層40に対する相対位置の変化に追従するように変形して、第2の粘着層32に付与されたせん断力を吸収・緩和することができる。これにより、環境温度の変化などに起因するせん断力が第1の粘着層31および第2の粘着層32に付与されても、第1の粘着層31および第2の粘着層32が、パネル3および基材21から剥がれることを抑えることができる。
【0047】
また、中間層40は、樹脂を含む材料により形成されているため、環境温度の変化に対して比較的柔軟に変形可能である。前述したように、中間層40の線膨張係数は、基材21の線膨張係数よりも大きく、パネル3の線膨張係数よりも小さい。そのため、中間層40の伸縮量は、基材21の伸縮量とパネル3の伸縮量との間になる。それゆえ、環境温度の変化に基づいてパネル3、中間層40および基材21が伸縮したときに、パネル3の中間層40に対する相対位置の変化および基材21の中間層40に対する相対位置の変化は、パネル3と基材21との間の相対位置の変化よりも小さい。したがって、中間層40が設けられておらずパネル3と基材21との間に粘着層(対比粘着層)だけが設けられている場合と比較すると、環境温度が変化したときに、上記の対比粘着層に付与されるせん断力よりも、第1の粘着層31および第2の粘着層32のそれぞれに付与されるせん断力の方が低くなる。これにより、第1の粘着層31および第2の粘着層が、パネル3および基材21から剥がれる可能性をより安定的に抑えることができる。
【0048】
また、前述したように、中間層40のヤング率は、基材21のヤング率よりも低く、パネル3のヤング率よりも高い。そのため、静電容量式センサ1全体に外力が付与されたときのひずみ量は、パネル3、中間層40、基材21の順に低くなる。それゆえ、静電容量式センサ1全体に外力が付与されて、静電容量式センサ1を構成する部材に主面内方向のひずみが生じた場合に、パネル3と中間層40との間に生じる相対位置の変化および基材21と中間層40との間に生じる相対位置の変化は、パネル3と基材21との間に生じる相対位置の変化よりも小さくなる。したがって、中間層40が設けられておらずパネル3と基材21との間に粘着層(対比粘着層)だけが設けられている場合と比較すると、静電容量式センサ1全体に外力が付与されて静電容量式センサ1を構成する部材にひずみが生じたときに、上記の対比粘着層に付与されるせん断力よりも、第1の粘着層31および第2の粘着層32のそれぞれに付与されるせん断力の方が低くなる。これにより、第1の粘着層31および第2の粘着層32が、パネル3および基材21から剥がれる可能性をより安定的に抑えることができる。
【0049】
また、前述したように、第1の粘着層31および第2の粘着層32のそれぞれのヤング率は、パネル3のヤング率、基材21のヤング率および中間層40のヤング率よりも低い。そのため、第1の粘着層31および第2の粘着層32は、パネル3、基材21および中間層40の変形により生じたパネル3と中間層40との相対位置の変化や基材21と中間層40との相対位置の変化に柔軟に追従することができる。そのため、パネル3、基材21および中間層40の変形に起因するせん断力が第1の粘着層31および第2の粘着層32に付与されても、これらのせん断力を第1の粘着層31および第2の粘着層32の内部で適切に吸収・緩和することができる。
【0050】
さらに、第1の粘着層31および第2の粘着層32がアクリル系粘着剤を含有する場合には、光学性能(透過性、屈折率の適正化など)を確保しつつ、パネル3、基材21および中間層40の変形より生じたパネル3と中間層40との相対位置の変化や基材21と中間層40との相対位置の変化に柔軟に追従することができる。
【0051】
次に、本発明者が実施したシミュレーションについて、図面を参照しつつ説明する。
図5は、本発明者が実施したシミュレーションのモデルを表す分解図である。
図6は、本シミュレーションのモデルの各部材をまとめた表である。
図7は、本シミュレーションの拘束条件を説明する図である。
図8は、本シミュレーションの結果の一例をまとめた表である。
図9は、比較例に係るモデルを表す分解図である。
図7(a)は、シミュレーションに用いた領域を表す平面図である。
図7(b)は、シミュレーションに用いた4分の1のモデルを表す斜視図である。
【0052】
本発明者は、本実施形態に係る静電容量式センサ1に関するシミュレーションを実施した。すなわち、静電容量式センサ1の周囲の環境温度を20℃から95℃に上昇させたときに、第1の粘着層31および第2の粘着層32にかかる応力をシミュレーションにより確認した。
【0053】
図5に表したように、本シミュレーションに用いた静電容量式センサ1のモデル1Aは、センサ基板2と、パネル3と、中間層40と、第1の粘着層31と、第2の粘着層32と、を備える。モデル1Aの各部材の材料、厚さ(ミリメートル:mm)、ヤング率(パスカル:Pa)、ポアソン比および線膨張係数(/℃)は、
図6に表した表の通りである。
【0054】
すなわち、パネル3の材料は、ポリカーボネート(PC)である。第1の粘着層31および第2の粘着層32の材料は、アクリル系粘着剤である。中間層40の材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。センサ基板2の基材21の材料は、SiO
2である。
【0055】
パネル3の厚さは、1mmである。第1の粘着層31および第2の粘着層32のそれぞれの厚さは、0.1mmである。中間層40の厚さは、0.05mmである。基材21の厚さは、0.7mmである。
【0056】
中間層40の線膨張係数(2×10
−5)は、基材21の線膨張係数(8×10
−6)よりも大きく、パネル3の線膨張係数(7×10
−5)よりも小さい。中間層40のヤング率(6.2×10
9)は、基材21のヤング率(8.01×10
10)よりも低く、パネル3のヤング率(2.45×10
9)よりも高い。第1の粘着層31および第2の粘着層32のそれぞれのヤング率(9.9×10
5)は、パネル3のヤング率(2.45×10
9)、基材21のヤング率(8.01×10
10)および中間層40のヤング率(6.2×10
9)よりも低い。
【0057】
なお、本シミュレーションにおいて、パネル3あるいは基材21の主面の法線に沿った方向をZ方向とする。また、パネル3あるいは基材21の主面に沿った方向の1つをX方向とし、Z方向およびX方向に垂直な方向をY方向とする。
【0058】
図7(a)に表した領域A11のように、静電容量式センサ1の4分の1のモデル1Aを用いてシミュレーションを実施した。
図7(b)に表したように、本シミュレーションでは、センサ基板2の基材21をZ方向に対して拘束した。また、領域A11のY方向に沿った切断面13AをX方向に対して対称拘束した。また、領域A11のX方向に沿った切断面13BをY方向に対して対称拘束した。
【0059】
以上のような各部材および拘束の条件の下で、各部材の熱膨張によるそりを抑制しつつ、環境温度を20℃から95℃に上昇させ温度負荷をモデル1Aに与えた。なお、熱膨張は発生するものとした。本シミュレーションの結果の一例は、
図8に表した表の通りである。
【0060】
すなわち、第1の粘着層31にかかる最大応力は、0.785MPaであった。第2の粘着層32にかかる最大応力は、0.670MPaであった。一方で、比較例に係る静電容量式センサのモデル1B(
図9参照)では、粘着層31Aにかかる最大応力は、0.892MPaであった。
図9に表したように、比較例に係る静電容量式センサのモデル1Bは、センサ基板2と、パネル3と、粘着層31Aと、を備える。すなわち、比較例に係る静電容量式センサのモデル1Bは、中間層を備えていない。そのため、センサ基板2と、パネル3と、の間には、1層の粘着層31Aが設けられている。つまり、粘着層31Aの機能は、分断されていない。比較例のモデル1Bにおけるセンサ基板2の基材、パネル3および粘着層31Aのそれぞれの条件は、
図6に関して前述したセンサ基板2の基材21、パネル3および第1の粘着層31のそれぞれの条件と同じである。
【0061】
本シミュレーションの結果によれば、第1の粘着層31にかかる最大応力(0.785MPa)は、比較例のモデル1Bの粘着層31Aにかかる最大応力(0.892MPa)と比較して12%減少する。また、第2の粘着層32にかかる最大応力(0.670MPa)は、比較例のモデル1Bの粘着層31Aにかかる最大応力(0.892MPa)と比較して24.9%減少する。このように、静電容量式センサ1が中間層40を備え、中間層40が中間層40の両側において第1の粘着層31および第2の粘着層32を独立に機能させることで、第1の粘着層31および第2の粘着層32にかかる最大応力を低減できることが分かった。
【0062】
次に、本発明者が実施した他のシミュレーションについて、図面を参照しつつ説明する。
図10は、本発明者が実施した他のシミュレーションのモデルの各部材をまとめた表である。
図11は、本シミュレーションの結果の一例をまとめた表である。
【0063】
図10に表したように、本シミュレーションでは、第1の粘着層31および第2の粘着層32のそれぞれの厚さは、0.4mmである。その他の各部材の厚さは、
図5〜
図9に関して前述したシミュレーションにおける各部材の厚さと同じである。また、各部材の材料、ヤング率、ポアソン比および線膨張係数は、
図5〜
図9に関して前述したシミュレーションにおける各部材の材料、ヤング率、ポアソン比および線膨張係数と同じである。さらに、拘束条件は、
図5〜
図9に関して前述したシミュレーションにおける拘束条件と同じである。つまり、本シミュレーションは、第1の粘着層31および第2の粘着層32のそれぞれの厚さの点において、
図5〜
図9に関して前述したシミュレーションとは異なる。
【0064】
本シミュレーションの結果の一例は、
図11に表した通りである。すなわち、第1の粘着層31にかかる最大応力は、0.320MPaであった。第2の粘着層32にかかる最大応力は、0.257MPaであった。第1の粘着層31および第2の粘着層32のそれぞれの厚さがより厚くなったことにより、第1の粘着層31および第2の粘着層32は、パネル3と、中間層40と、センサ基板2の基材21と、の変形をより吸収することができる。そのため、環境温度が変化したときに第1の粘着層31および第2の粘着層32にかかる応力を抑えることができる。
【0065】
本シミュレーションの結果によれば、第1の粘着層31にかかる最大応力(0.320MPa)は、比較例のモデル1Bの粘着層31Aにかかる最大応力(0.892MPa)と比較して64.1%減少する。また、第2の粘着層32にかかる最大応力(0.257MPa)は、比較例のモデル1Bの粘着層31Aにかかる最大応力(0.892MPa)と比較して71.2%減少する。このように、静電容量式センサ1が中間層40を備え、第1の粘着層31および第2の粘着層32のそれぞれの厚さがより厚くなると、第1の粘着層31および第2の粘着層32にかかる最大応力をより低減できることが分かった。
【0066】
以上、本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【0067】
例えば、上記の実施形態では、加飾層9は、パネル3の裏面3bにおける非検出領域25に位置する部分全体に設けられ、非検出領域25全体が遮光された状態となっているが、これに限定されない。パネル3の裏面3bの非検出領域25に位置する部分には、加飾層9が設けられていない部分があってもよい。また、加飾層9は、パネル3の裏面3bに設けられているが、これに限定されず、パネル3と基材21との間に位置していればよい。例えば、第1の粘着層31内に埋設されていてもよい。