【文献】
Paul Kebarle et al.,FROM IONS IN SOLUTION TO IONS IN THE GAS PHASE,Analytical Chemistry,1993年,65 (22),972A-986A
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0004】
生物医学研究及び医療診断は、細胞培養物の増殖を何度も必要とし、その場合、培養物内の細胞及びそれらの状態が監視される。そのような監視を、それらの細胞によって生成された揮発性有機化合物、すなわち該細胞の代謝フィンガープリントを分析することによって実行することができる。残念ながら、揮発性有機化合物を検出装置まで運ぶのが遅いこと、及び該検出装置に関する感度の問題に起因して、該揮発性有機化合物を検出するのは難しいことが多い。
【0005】
図1は、例示的な揮発性有機化合物検出システム20を概略的に示している。後述されているように、揮発性有機化合物検出システム20は、揮発性有機化合物のセンサーへの輸送を加速する(本明細書において「輸送」は、「移送」及び/又は「運搬」と同義であり、揮発性有機化合物の輸送を加速するとは、揮発性有機化合物を送る(ないし運ぶ)速さを速くすることを意味する)ことによって、細胞の識別(ないし同定)及びそれらの状態の監視を容易にする。システム20は、下側のチャンバー(下側チャンバー)22、上側のチャンバー(上側チャンバー)28、センサー32、及び輸送アクセラレータ40を備えている。
【0006】
下側チャンバー22は、揮発性有機化合物44を放出する培養物42を収容することができる体積(容積)を有している。培養物42は、増殖培地内に種々の細胞を含んでいる。増殖培地は細胞の増殖(培養)を容易にし、その場合、それらの細胞は、揮発性有機化合物44を放出する。増殖培地を、ゲルなどの固体または液体から構成することができる(または、増殖培地は、ゲルなどの固体または液体を含むことができる)。培養物42の例は、大腸菌、緑膿菌、肺炎桿菌、黄色ブドウ球菌の培養物が含まれるが、これらには限定されない。
【0007】
上側チャンバー28は、下側チャンバー22の上に垂直に配置された体積(体積部分)を有している。上側チャンバー28は、構造29(構造29は構造体29ともいう)によって下側チャンバー22から分離されており、該構造29は、揮発性有機化合物を下側チャンバー22から上側チャンバー28へ(及びその中に)運ぶことができるようにするために1以上の開口を有しているかまたは穴が開けられている。1実施例では、構造29は、好適なバッフルまたはフレームワーク(フレーム構造)を備えている。別の実施例では、構造29は、透過性の膜(たとえば透析膜)を備えている。上側チャンバー28は、培養物42から放出された揮発性有機化合物44を受け取る。上側チャンバー28は、センサー32を含んでいる。
【0008】
センサー32は、上側チャンバー28へと、そしてセンサー32上もしくはセンサー32に近接した位置に運ばれてきた揮発性有機化合物44の1つの特性または複数の異なる特性を検出するデバイスを備えている。1実施例では、センサー32は、表面増強発光(SEL:surface enhanced luminescence)センサーである(またはセンサー32は、該SELセンサーを含む)。1実施例では、センサー32は、表面増強ラマン分光(SER)センサーである(またはセンサー32は、該SERセンサーを含む)。たとえば、1実施例では、センサー32は、金属面または金属構造をふくむことができ、この場合、検体と該金属面との間の相互作用が、ラマン散乱放射の強度を高める。そのような金属面は、周期的格子(periodic grating)などの表面が粗い金属面を含むことができる。別の実施例では、そのような金属面は、ナノ粒子の集合体を含むことができる。いくつかの実施例では、そのような金属面は、島状金属を含むことができる。1実施例では、そのような島状金属は、柱、針、指、粒子またはワイヤーなどの可撓性の支柱を含むことができる。いくつかの実施例では、該可撓性の柱状構造(もしくは円柱構造)は、検体を配置することができる金属製のキャップもしくは頭部を含むことができる。いくつかの実施例では、そのような柱状構造は、印加される電界に応答して互いに向かって及び互いから離れる方向に曲がるか撓むことができる材料から形成され、及び/又はそのように曲がるか撓むことができる大きさにされる。いくつかの実施例では、SERS構造は、可動でありかつ自己作動型であり、この場合、そのような柱状構造は、自己組織化するために微小毛管力(micro-capillary force)に応答して互いに向かって曲がるか撓み、この場合、そのような曲がりは、散乱放射の強度がより大きい場合にそれらの構造間の間隔を近くするのを容易にする。さらに別の実施例では、センサー32を、ガスクロマトグラフィーセンサー、質量分析センサー、及び、イオン分子反応質量分析センサー及び/又は比色分析センサー(colorimetric sensor)などの他のセンサーの形態とすることができる(または、センサー32はそれらのセンサーの形態を含むことができる)。
【0009】
輸送アクセラレータ40は、培養物42によって放出された揮発性有機化合物44を、下側チャンバー22から上側チャンバー28及びセンサー32へと加速的に運ぶ装置を備えている。上側チャンバー28及びセンサー32への揮発性有機化合物44の輸送が加速されるので、揮発性有機化合物44の特性をより迅速に識別し及び決定することができる。センサー32への揮発性有機化合物の強化された(すなわち速くされた)輸送はさらに、システム20の効率及び生産性を高める。システム20が揮発性有機化合物44中の病原体を識別するために使用される用途では、システム20は、時間的により早期の病原体の検出または識別を容易にし、これによって、対象とされている抗生物質治療{こうせいぶっしつ ちりょう}を強化された治療のためにより早く開始することができる。
【0010】
輸送アクセラレータ40は、種々の構成を有することができる。後述するように、1実施例では、輸送アクセラレータ40は、揮発性有機化合物44の上側チャンバー28及びセンサー32への輸送を加速する(すなわち、揮発性有機化合物44を上側チャンバー28及びセンサー32に送る速さを速くする)電界を生成することができる。1実施例では、該電界は、揮発性有機化合物44を(コロナ放電などによって)直接イオン化し、及び、揮発性有機化合物44を気相電気泳動によって上側チャンバー28及びセンサー32の表面に向かって運ぶ。別の実施例では、該電界は、エレクトロスプレー現象を利用して、細胞代謝産物を含む溶液の液滴を生成し、この場合、該代謝産物は、センサーの表面に向かって運ばれる。
【0011】
別の実施例では、輸送アクセラレータ40は、さらにまたは代替的に、該下側チャンバーと上側チャンバー28の間に温度勾配を形成することによって、上側チャンバー28及びセンサー32への揮発性有機化合物44の輸送を加速する。たとえば、1実施例では、輸送アクセラレータ40は、培養物42とセンサー32及び上側チャンバー28に近接した領域との間に温度勾配を形成することができる。培養物42を加熱し、かつ、センサー32または上側チャンバー28の一部をより冷えた状態、すなわちより低い温度に維持することによって、輸送アクセラレータ40は、培養物42から上側チャンバー28及びセンサー32に向かって培養物42の上を流れる浮揚性の気体流を生成する。該温度勾配はまた、温度と共に拡散係数が変化することに起因して温度勾配中を粒子または分子が移動することによって生じる熱泳動(熱拡散)を引き起こしうる。そのような熱泳動はまた、揮発性有機化合物44及び検体のセンサー32に向かう輸送を加速するように揮発性有機化合物44を運ぶことができ、これによって、システム20の動作を速くして、診断時間を短縮することができる。
【0012】
図1において破線で示されているように、いくつかの実施例では、システム20はさらに、コントローラ50を備えることができる。コントローラ50は、輸送アクセラレータ40の動作を制御するための処理ユニット(処理装置)を備えている。いくつかの実施例では、コントローラ50は、電力を受け取って、輸送アクセラレータ40に電荷を選択的に供給する。本願では、「処理ユニット」という用語は、メモリ(記憶装置)に格納されている一連の命令を実行する現在開発されているかまたは将来開発される処理ユニットを意味するものとする。一連の命令を実行することによって、処理ユニットは、制御信号を生成するなどの手順(ステップ)を実行する。処理ユニットによって実行するために、それらの命令を、読み取り専用メモリ(ROM)、大容量記憶装置、またはその他の何らかの永続記憶装置からランダムアクセスメモリ(RAM)にロードすることができる。他の実施形態では、記述されている機能を実施するために、ハードワイヤード回路を、ソフトウェア命令の代わりにまたはソフトウェア命令と組み合わせて、使用することができる。たとえば、コントローラ50を、1以上の特定用途向け集積回路(ASIC)の一部として具現化することができる。特に断りのない限り、該コントローラは、ハードウェア回路とソフトウェアとの任意の特定の組み合わせにも、該処理ユニットによって実行される命令の任意の特定のソースにも限定されない。
【0013】
システム20にコントローラ50が設けられる実施例では、コントローラ50は、揮発性有機化合物44の1つまたは複数の特性を示す信号をセンサー32から受け取ることができる。コントローラ50は、そのような特性に基づいて、揮発性有機化合物44を上側チャンバー28及びセンサー32に送る速度を調整するために、輸送アクセラレータ40の動作を調節する制御信号を生成することができる。たとえば、コントローラ50は、電界の強さ及び/又は温度勾配の大きさを調節することによって、揮発性有機化合物44を上側チャンバー28に送る速度を調節することができる。そのような1つの実施例では、コントローラ50は、上側チャンバー28及びセンサー32に向かう揮発性有機化合物44の速度を最も効果的に加速させる輸送アクセラレータ40の動作パラメータを特定するために閉ループフィードバックを利用することができる。
【0014】
図2は、細胞培養物42などの細胞培養物の1つの特性または複数の特性を検出するための例示的な方法100のフローチャートである。ブロック104に示されているように、培養物42などの培養物が下側チャンバーに提供される。培養物42は、揮発性有機化合物44などの揮発性有機化合物を放出する。
【0015】
ブロック108に示されているように、下側チャンバー22の上の上側チャンバーに配置されているセンサー32などのセンサーへの揮発性有機化合物44の輸送(速度)が加速される。1実施例では、そのような加速は、上記の輸送アクセラレータ40などの輸送アクセラレータによってもたらされる。上記のように、揮発性有機化合物の輸送すなわち移動(速度)の加速は、揮発性有機化合物44をセンサー32へと運ぶための電界または温度勾配を使用して達成することができる。
【0016】
ブロック112に示されているように、上側チャンバー28内のセンサーが、揮発性有機化合物の特性を検出する。1実施例では、該センサーは、表面増強発光(SEL:surface enhanced luminescence)センサーである(または該SELセンサーを含む)。1実施例では、(上側チャンバー28内の)該センサーは、表面増強ラマン分光(SER)センサーである(または該SERセンサーを含む)。さらに別の実施例では、(上側チャンバー28内の)該センサーを、ガスクロマトグラフィーセンサー、質量分析センサー、及び、イオン分子反応質量分析センサー及び/又は比色分析センサー(colorimetric sensor)などの他のセンサーの形態とすることができる(または、(上側チャンバー28内の)該センサーは、それらのセンサーの形態を含むことができる)。
【0017】
図3は、別の例示的な揮発性有機化合物検出システム20である、揮発性有機化合物検出システム220の略図である。システム220は、センサー32の代わりに複数のセンサー232A、232B、232C、及び232D(これらをまとめてセンサー232という)を備え、輸送アクセラレータ40の代わりに輸送セレクタ240を備えている点を除いて、システム20と同様である。システム20のコンポーネントまたは要素に対応するシステム220の残りのコンポーネントまたは要素には、同じように番号が付されている。
【0018】
センサー232の各々は、上記のセンサー32に類似している。センサー32と同様に、センサー232の各々は、揮発性有機化合物の1つの特性または複数の特性を検出することができる。センサー232は、上側チャンバー28内の隔置された位置に配置されている。1実施例では、センサー232の各々が、揮発性有機化合物の異なるタイプの特性を検出することができるという点で、センサー232は互いに異なる。さらに別の実施例では、センサー232は、互いに類似しているが、検出解像度は異なる。センサー232は、上側チャンバー28内に一次元配列として示されているが、これに代えて、センサー232を、センサー232の二次元配列もしくは格子状配列をなすように配置することができる。
【0019】
輸送セレクタ240は、どのような(ないしどの)揮発性有機化合物44を個々のセンサー232に運ぶかを制御する装置(デバイス)を備えている。1実施例では、輸送セレクタ240は、どのような(ないしどの)揮発性有機化合物44をチャンバー28及びセンサー232に運ぶかを制御し、並びに、どのような(ないしどの)揮発性有機化合物44の輸送を阻止ないし妨害するかを制御して、該阻止ないし妨害された揮発性有機化合物がどのセンサー232にも到達しないようにするか、または、他の対象とされた揮発性有機化合物よりも十分遅らされるようにする。1実施例では、セレクタ240は、揮発性有機化合物44の総量(全物理量)の一部(の輸送)を阻止して、揮発性有機化合物の総量がチャンバー28及びセンサー232へと輸送されるのを阻止しまたは妨害する(ないし遅らせる)。換言すれば、セレクタ240は、異なるセンサー232の各々に送られる揮発性有機化合物の量を制御することによって、センサー232が同じタイプの揮発性有機化合物を受け取ることができる場合でも、センサー232の各々が異なる量の揮発性有機化合物を受け取ることがき、または、同じ揮発性有機化合物を異なる速さ(ないし量)で受け取ることができるようにする。1実施例では、セレクタ240は、選択されたタイプの揮発性有機化合物を阻止する一方で、他の選択されたタイプの揮発性有機化合物の上側チャンバー28及びセンサー232への流れまたは輸送を容易にしまたは可能にする。1実施例では、輸送セレクタ240は、異なるそれぞれの揮発性有機化合物44(体積が異なる揮発性有機化合物または異なるタイプの揮発性有機化合物)を異なる選択されたセンサー232へと導くかまたは運ぶ。図示の例では、輸送セレクタ240は、揮発性有機化合物44の第1の部分をセンサー232Aへと、揮発性有機化合物44の第2の部分をセンサー232Bへと、揮発性有機化合物44の第3の部分をセンサー232Cへと、及び揮発性有機化合物44の第4の部分をセンサー232Dへとそれぞれ送ることができる。1実施例では、それらの異なる部分の各々は、(それぞれに)異なる量または体積の同じ揮発性有機化合物からなる(または該異なる部分の各々は、該異なる量または体積の同じ揮発性有機化合物である)。別の実施例では、それらの異なる部分の各々は、異なるタイプの揮発性有機化合物であるか、又は異なるタイプの揮発性有機化合物からなる。培養物42によって放出された揮発性有機化合物44の異なる部分の各々は、センサー232のうちの選択されたセンサーに向かって付勢される(すなわち、該異なる部分の各々には、該異なる部分の各々を該選択されたセンサーに向けて運ぶ力が加えられる)。その結果、輸送セレクタ240は、それらの揮発性有機化合物を、該揮発性有機化合物の選択されたもしくは予め決められた特定の特性を検出するのに最適なセンサー232のうちの特定のセンサーに向けて送ることができる。
【0020】
たとえば、培養物の熟成または増殖の異なる段階において、異なる揮発性有機化合物44を放出ないし解放することができる。そのような異なる段階の各々において、輸送セレクタ(輸送選別器)240は、現在の揮発性有機化合物を、特定の段階で放出ないし解放される特定のタイプの揮発性有機化合物を検出するのに最適なセンサー232のうちの特定のセンサーに向けて送ることができる。さらに他の実施例では、異なる揮発性有機化合物を同時に放出ないし解放することができる。異なるそれぞれの揮発性有機化合物44が、該異なる揮発性有機化合物44の各々の特性を検出するのに最適な(互いに)異なるセンサー232へと付勢されるように(すなわち、該異なるそれぞれの揮発性有機化合物44に、該異なるそれぞれの揮発性有機化合物44を該最適な(互いに)異なるセンサー232向けて運ぶ力が加えられるように)、輸送セレクタ240は動作する。
【0021】
輸送セレクタ240は、種々の構成を有することができる。後述するように、1実施例では、輸送セレクタ240は、水平方向または横方向への揮発性有機化合物の移動を阻止ないし抑制するために、上側チャンバー28内の個々のセンサー232間を延びてそれらのセンサーを分離する隔壁すなわち仕切りを備えることができる。そのような実施例では、培養物42は、異なる揮発性有機化合物を放出ないし解放する異なる細胞を含むことができ、その場合、それらの異なる細胞は、第1のグループの細胞によって生成された揮発性有機化合物が、仕切られた領域内のセンサー232のうちの対応するセンサーへと自然に上昇するかまたは自然に運ばれるように、異なる(それぞれの)仕切られた領域に位置合わせされている。たとえば、センサー232Bの下の細胞によって放出された揮発性有機化合物を隔壁で囲むことによって、センサー232Bの下の細胞によって放出されて生成された揮発性有機化合物の全てではないとしてもほとんどがセンサー232Bに送られるようにする一方で、センサー232Dの下の細胞によって生成された揮発性有機化合物を隔壁で囲むことによって、センサー232Dの下の細胞によって放出されて生成された揮発性有機化合物の全てではないとしてもほとんどがセンサー232Dに送られるようにすることができる。これと同様の(揮発性有機化合物の)輸送が、センサー232の残りのセンサーについても当てはまる。
【0022】
別の実施例では、輸送セレクタ240は、選択された揮発性有機化合物だけが上側チャンバー28及びセンサー232を通過することができるように、選択された揮発性有機化合物の輸送を垂直方向に阻止することができる。たとえば、1実施例では、輸送セレクタ240は、いくつかの選択された揮発性有機化合物が通過するのを選択的に可能にするが、同時に、他の対象とされていない揮発性有機化合物の流れまたは輸送を阻止または妨害する(ないし遅らせる)透過性の膜(たとえば透析膜)を備えることができる。1実施例では、異なるセンサー232が、異なる揮発性有機化合物を受け取るように、異なる(それぞれの)膜を、異なる(それぞれの)センサー232の下で使用することができる。1実施例では、どのような(もしくはどの)揮発性有機化合物を異なる(それぞれの)センサー232の各々へ運ぶかを区別するために、上記の隔壁と複数の異なる膜の両方を用いることができる。
【0023】
さらに別の実施例では、輸送セレクタ240は、輸送アクセラレータとしても機能することができ、この場合、異なる(それぞれの)揮発性有機化合物は、(もし異なるセンサー232が存在する場合には)異なる(それぞれの)センサー232へと異なる割合で加速される。たとえば、1実施例では、輸送セレクタ240は、異なる電界(時間に関して異なるかまたは場所に関して異なる電界)を生成することができ、その場合、それらの異なる電界は、異なる(それぞれの)センサー232への異なる(それぞれの)揮発性有機化合物44の輸送(の速度)を別様に(たとえば互いに異なるように)加速する。さらに別の実施例では、輸送セレクタ240は、異なる温度勾配(時間に関して異なるかまたは場所に関して異なる温度勾配)を生成し、その場合、それらの異なる温度勾配は、異なる(それぞれの)センサー232への異なる(それぞれの)揮発性有機化合物44の輸送(の速度)を別様に(たとえば互いに異なるように)加速する。
【0024】
図3において破線で示されているように、いくつかの実施例では、システム220はさらにコントローラ250を備えることができる。コントローラ250は、処理ユニット(処理装置)と、該処理ユニットの動作を指示するための命令を含んでいる関連する非一時的なメモリ(記憶装置)を備えている。そのような実施例では、コントローラ250は、揮発性有機化合物44の1つの特性または複数の特性を示す信号をセンサー232の各々から受け取ることができる。コントローラ250は、そのような特性に基づいて、揮発性有機化合物44を上側チャンバー28及びセンサー232へと運ぶ速度及び/又は方向を調節するために、輸送セレクタ240の動作を調節する制御信号を生成することができる。
【0025】
たとえば、コントローラ250は、センサー232の他の1つのセンサーに対してセンサー232の特定の1つのセンサーに加えられる電界の強さ及び/又は温度勾配の大きさを調節することによって、揮発性有機化合物44が該特定の1つのセンサー232に送られる速度を該他の1つのセンサー232に対して調節することができる。たとえば、センサー232の特定の1つのセンサーにおいて受け取った揮発性有機化合物の速度が遅いことを検出したことに応答して、コントローラ250は、受け取りの速度が遅い揮発性有機化合物の該特定のセンサー232での受け取りの速度を速くするために、輸送セレクタ240に、揮発性有機化合物の受け取り速度が遅い該センサー232に対応する領域内の温度勾配を大きくさせるかまたは該領域内の電界(の強さ)を強くさせる制御信号を出力することができる。
【0026】
図4は、システム20の例示的な実施例である揮発性有機化合物検出システム320を示す略図である。システム320は、システム320が、輸送アクセラレータ40の特定の実施例である輸送アクセラレータ340を備えるものとして具体的に示されている点を除いて、システム20と同様である。システム20のコンポーネントまたは要素に対応するシステム320の残りのコンポーネントまたは要素には同じように番号が付されている。
【0027】
輸送アクセラレータ340は、電界を加えることによって、培養物42によって生成された揮発性有機化合物の上側チャンバー28及びセンサー32への輸送(の速度)を加速する。1実施例では、該電界は、揮発性有機化合物44を(コロナ放電などによって)直接イオン化して、該揮発性有機化合物44を気相電気泳動によって上側チャンバー28及びセンサー32の表面に向けて運ぶ。輸送アクセラレータ340は、電極342、344及びコントローラ350を備えている。
【0028】
電極342は、培養物42の上に延在する(すなわち、広がって存在する)ために、下側チャンバー22内に配置された導電性プレート(導電板)、または導電性ロッド(導電棒)、またはその他の導電構造体を備えている。1実施例では、電極342は、下側チャンバー22の側壁に沿って配置される。電極344は、上側チャンバー28内に配置された導電性プレート、または導電性ロッド、またはその他の導電構造体を備えている。1実施例では、電極344は、上側チャンバー28の最上部すなわち天井部に沿った導電性プレートを備えている。他の実施例では、電極344を、上側チャンバー28の側壁に沿って配置することができ、またはセンサー32の近くに配置することができ、または、センサー32の一部として一体化することができる。電極342、344は、輸送手段による、培養物42の上から上側チャンバー28への上方向への揮発性有機化合物44の移動を加速する電界を形成するために協働する。
【0029】
コントローラ350は、処理ユニットと、該処理ユニットの動作を指示するための命令を含んでいる関連する非一時的なメモリ(記憶装置)を備えている。コントローラ350は、電極342と344の間に電界を形成するために、電極342、344の一方または両方に電荷を選択的に加える。1実施例では、電極342と344の間に形成される電界は、10
4V/mと10
6V/mの間の電界であり、公称上ないし名目上は10
5V/mである。
【0030】
破線で示されているように、1実施例では、コントローラ350はまた、上記のコントローラ50と同様に機能する。そのような実施例では、コントローラ350は、検出された揮発性有機化合物の特性もしくはパラメータ、及び/又は、揮発性有機化合物をセンサー32によって検出するかまたは受け取る速度を示す信号をセンサー32から受け取る。コントローラ350は、そのようなフィードバックに基づいて、センサー32へと揮発性有機化合物44を加速する割合(加速度)を増減して調節するために、電極342と344の間の電界のタイミング(たとえば電界を加えるタイミング)及び/又は該電界の強さ(電界強度)を調節することができる。たとえば、コントローラ350は、センサー32への揮発性有機化合物(VOC)の輸送速度が遅いことを検出したことに応答して、該揮発性有機化合物をセンサー32に運ぶ速度を速くするために、電界の強さを強くし、及び/又は電界の持続時間を長くし、及び/又は電界の頻度(たとえば電界を加える頻度ないし周波数)を大きくすることができる。代替的には、所定の時間において、細胞自体によるVOC放出の速度が遅いときには、コントローラ350は、電界の強さを弱くし、及び/又は電界の持続時間を短くし、及び/又は電界の頻度を小さくして、輸送及び検出のための十分な量の揮発性有機化合物が存在するようになるまで、輸送の加速を遅らせることができる。
【0031】
図5は、システム20の別の例である、揮発性有機化合物検出システム420を概略的に示している。システム420は、システム420が、輸送アクセラレータ340の代わりに、輸送セレクタ440を備えている点を除いて上記のシステム320と同様である。システム320と同様に、システム420は、構造29によって分離された下側チャンバー22及び上側チャンバー28と、センサー32及び電極344(これらの各々は
図4に示されている)を備えている。システム420のそれらのコンポーネントまたは要素は
図5に示されており、システム320のコンポーネントまたは要素に対応するコンポーネントまたは要素には番号が付されている。
【0032】
輸送アクセラレータ340と同様に、輸送セレクタ440は、下側チャンバー22から上側チャンバー28及びセンサー32への揮発性有機化合物44の輸送を加速する。輸送セレクタ440は、異なる揮発性有機化合物44を(互いに)異なる速度で上側チャンバー28及びセンサー32へと別様に輸送する。図示の例では、輸送セレクタ440は、一連の電極442A、442B、442C、…、442N(これらをまとめて電極442という)もしくはそれらの電極の一次元配列、一連のスイッチ446A、446B、446C、…、446N(これらをまとめてスイッチ446という)もしくはそれらのスイッチの一次元配列、及びコントローラ450を備えている。
【0033】
電極442は、培養物42に近接した該培養物の上の位置において、下側チャンバー22に沿って垂直方向に隔置された導電性プレート、または導電性ロッド、またはその他の導電構造体を備えている。いくつかの実施例では、いくつかの電極442は、培養物42の表面の下に延在することができ、その場合、それらの電極は使用されないが、培養物42の表面がより低いところにある他の状況でそれらの電極を使用することができる。
【0034】
1実施例では、培養物42の表面に最も近い電極である電極442Aは、培養物42の表面43から、1mm以下(公称上ないし名目上は5cm以下)の距離だけ離れている。電極442は、矢印429で示されている方向に、3cm以下の距離Dだけ、垂直方向に互いに隔置されている。1実施例では、電極442の垂直方向の間隔は一定である。別の実施例では、それらの電極442の間隔は、異なっている、すなわち、一定ではない。たとえば、1実施例では、培養物42の表面43により近い電極442の互いの間隔を、表面43からより離れたところにある電極442に比べて、より小さくすることができる。
【0035】
スイッチ446は、電極442を選択的にオン/オフする、すなわち選択的に作動させることができるデバイスである(または、スイッチ446は該デバイスから構成される)。1実施例では、スイッチ446は、コントローラ450からの制御信号に応答して、電極442の各々を、電源または電荷源に選択的に接続する。1実施例では、スイッチ446の各々はトランジスタである(または、スイッチ446の各々はトランジスタから構成される)。
【0036】
コントローラ450は、処理ユニット(処理装置)と、該処理ユニットの動作を指示するための命令を含んでいる関連する非一時的なメモリ(記憶装置)を備えている。コントローラ450は、個々の電極442または電極442の選択されたサブセットすなわち一部を選択的に充電することによって、上側チャンバー28内のセンサー32へと異なる揮発性有機化合物44を別様に輸送するために、スイッチ446を選択的に作動させるための制御信号を出力する。たとえば、いくつかの実施例では、培養物42によって放出された揮発性有機化合物44の拡散性(たとえば拡散率)は(揮発性有機化合物間で)異なりうるので、それらの揮発性有機化合物は、培養物42の表面43から異なる高さまで異なる速度で培養物42から上昇する。コントローラ450は、培養物42の表面43から特定の高さにある特定のタイプの揮発性有機化合物をセンサー32へと加速して輸送するための対象とするために、個々の電極442を選択的に充電することができる。
【0037】
たとえば、培養物42によって生成されて対象とされた特定のタイプの揮発性有機化合物は、特定の時刻もしくは段階において電極442Cに近い高さまで拡散しえ、一方、培養物42によって同時に生成された対象とされなかった揮発性有機化合物は、電極442Aに近い高さまで拡散しうる。コントローラ450は、電極442Aでも電極442Bでもなく、電極442Cを選択的に用いて該電極442Cを選択的に充電することによって、対象とされた揮発性有機化合物のセンサー32への輸送を加速することができる一方で、センサー442Aのすぐ近くにある揮発性有機化合物の本来の輸送は加速されず、したがって、該揮発性有機化合物は、下側チャンバー22内に留まるか、または検出に間に合うようにセンサー32へは輸送されない。
【0038】
図6A及び
図6Bは、検出システム20の別の例示的な実施例である、揮発性有機化合物検出システム520を概略的に示している。システム520は、システム520が、輸送アクセラレータ40の別の実施例である輸送アクセラレータ540を備えるものとして具体的に示されている点を除いて、システム20と同様である。システム20のコンポーネントまたは要素に対応するシステム520の残りのコンポーネントまたは要素には同じように番号が付されている。
【0039】
輸送アクセラレータ540は、電界を加えることによって、培養物42によって生成された揮発性有機化合物の上側チャンバー28及びセンサー32への輸送(の速度)を加速する。図示の例では、輸送アクセラレータ540は、培養物42の表面に配置された毛管(毛細管)の形態の電極をカウンター電極と組み合わせて利用して、検体または揮発性有機化合物を含む溶液の液滴を生成し、エレクトロスプレー現象によって、それらの揮発性有機化合物を上側チャンバー28及びセンサー32へと運ぶのを容易にする。輸送アクセラレータ540は、電極542、544及びコントローラ550を備えている。
【0040】
電極542、544は、それらの電極間に電界を生成すると、エレクトロスプレー現象にしたがって、培養物42の表面を帯電した液滴に分解(ないし分割)する。
図6Bは、例示的な一対の電極542、544及びエレクトロスプレー現象を示している。
図6Bに示されているように、電極542は、培養物42の表面43を横切る、または該表面の下に、または該表面において、(
図6Aに示されているように)下側チャンバー22内に配置された毛管(毛細管)または管を備えている。電極544は、電極542の垂直上方にあって開口546を有するプレート(たとえば平板)またはその他の構造体を備えている。電極542と544は、上側チャンバー28及びセンサー32に向って加速される帯電した液滴548を形成するために培養物42の溶液を上方に引き上げる電界を形成するために協働する。
【0041】
1実施例では、電極544は上側チャンバー28内に配置される。1実施例では、電極544はセンサー32の上に配置される。他の実施例では、電極544を、電極542の垂直上方の、下側チャンバー22内に配置することができる。
【0042】
コントローラ550は、処理ユニットと、該処理ユニットの動作を指示するための命令を含んでいる関連する非一時的なメモリ(記憶装置)を備えている。コントローラ550は、電極542と544の間に電界を形成するために、電極542、544の一方または両方に電荷を選択的に加える。1実施例では、電極542と544の間に形成される電界は、10
5V/mと10
7V/mの間の電界であり、公称上ないし名目上は10
6V/mである。
【0043】
破線で示されているように、1実施例では、コントローラ550はまた、上記のコントローラ50と同様に機能する。そのような実施例では、コントローラ550は、検出された揮発性有機化合物の特性もしくはパラメータ、及び/又は、揮発性有機化合物をセンサー32によって検出するかまたは受け取る速度を示す信号をセンサー32から受け取る。コントローラ550は、そのようなフィードバックに基づいて、センサー32へと揮発性有機化合物44を加速する割合(加速度)を増減して調節するために、電極542と544の間の電界のタイミング(たとえば電界を加えるタイミング)及び/又は該電界の強さ(電界強度)を調節することができる。システム520が複数の電極542及び/又は複数の電極544を備えている実施例では、コントローラ550は、電界を生成するために充電(ないし帯電)される電極542、544の数を調節することによって、揮発性有機化合物または検体が上側チャンバー28及びセンサー32に運ばれる速度で生成される帯電した液滴548の量を調節することができる。
【0044】
たとえば、コントローラ550は、センサー32への揮発性有機化合物(VOC)の輸送速度が遅いことを検出したことに応答して、該揮発性有機化合物をセンサー32に運ぶ速度を速くするために、電界の強さを強くし、及び/又は電界の持続時間を長くし、及び/又は電界の頻度(たとえば電界を加える頻度ないし周波数)を大きくし、及び/又は電界の数を増やすことができる。代替的には、所定の時間において、細胞自体によるVOC放出の速度が遅いときには、コントローラ550は、電界の強さを弱くし、及び/又は電界の持続時間を短くし、及び/又は電界の頻度を小さくして、輸送及び検出のための十分な量の揮発性有機化合物が存在するようになるまで、輸送の加速を遅らせることができる。
【0045】
図7は、システム20並びにシステム220の例示的な実施例である、揮発性有機化合物検出システム620を概略的に示している。検出システム620は、該システム620が、輸送セレクタ240の特定の実施例である輸送セレクタ640を備えるものとして具体的に示されている点を除いて、検出システム20及び220と同様である。輸送セレクタ640はまた、輸送アクセラレータ40と同様の輸送アクセラレータとして機能する。システム20及び220のコンポーネントまたは要素に対応するシステム620のコンポーネントまたは要素には同じように番号が付されている。
【0046】
図7に示されているように、システム620は、下側チャンバー22及び上側チャンバー28を備えており、ここで、下側チャンバー22は培養物42を含むことができる。システム620はさらに、複数のセンサー632A、632B、及び632C(これらをまとめてセンサー632という)を備えている。センサー632の各々は、上記のセンサー32に類似している。センサー32と同様に、センサー632の各々は、揮発性有機化合物の1つの特性または複数の特性を検出することができる。センサー632は、上側チャンバー28内の隔置された位置に配置されている。1実施例では、センサー632の各々が、揮発性有機化合物の異なるタイプの特性を検出することができるという点で、センサー632は互いに異なる。さらに別の実施例では、センサー632は、互いに類似しているが、検出解像度は異なる。センサー632は、上側チャンバー28内に一次元配列として示されているが、これに代えて、センサー632を、センサー632の二次元配列もしくは格子状配列をなすように配置することができる。
【0047】
輸送セレクタ640は、どのような(ないしどの)揮発性有機化合物44を個々のセンサー632に運ぶかを制御する装置(デバイス)を備えている。輸送セレクタ640は、該下側チャンバーと上側チャンバー28の間に温度勾配を形成することによって上側チャンバー28及びセンサー32への揮発性有機化合物44の輸送(の速度)を加速する。図示の例では、輸送セレクタ640は、培養物42及びセンサー32に近接した温度制御要素を備えている。図示の例では、輸送セレクタ640は、ヒーター642及び冷却装置644A、644B、644C(これらをまとめて冷却装置644という)を備えている。
【0048】
ヒーター642は、熱を生成して培養物42または培養物42の上の下側チャンバー22内の空間に該熱を加えるために、下側チャンバー22内にあるかまたは下側チャンバー22に隣接する加熱装置(加熱デバイス)を備えている。図示の例では、ヒーター642は培養物42の下に配置されている。他の実施例では、ヒーター642を、培養物42の表面43の側部または該表面43の下または上のチャンバー22に沿って(または、該表面43の下または上のチャンバー22の側面に沿って)配置することができる。1実施例では、ヒーター642は電気抵抗ヒーターである(または、ヒーター642は電気抵抗ヒーターを含む)。
【0049】
冷却装置644は、熱を除去するかまたは周囲の領域を冷却する装置(デバイス)を備えている。そのような冷却装置644の1例は、ペルチェクーラー(Peltier cooler)である。別の実施例では、該領域から熱を除去することによって該領域を冷却するために、冷却液を分配器で輸送することができる。図示の例では、センサー632の各々は、関連する冷却装置644を有しており、これによって、個々のセンサー632の周囲の領域の選択的な冷却を容易にしている。1実施例では、それぞれの冷却装置644は、関連するセンサー632を取り巻くかまたは囲むリングまたはその他の構造体を備えている。
【0050】
コントローラ650は、処理ユニット(処理装置)と、該処理ユニットの動作を指示するための命令を含んでいる関連する非一時的なメモリ(記憶装置)を備えている。コントローラ650は、ヒーター642と冷却装置644の間に温度勾配を生成するために、ヒーター642及び冷却装置644を選択的に制御する。1実施例では、ヒーター642と作動させられた冷却装置644の間に形成された温度勾配は、10K/mと1000K/mの間であり、公称上ないし名目上は100K/mである。1実施例では、培養物42は37℃の温度まで加熱され、一方、作動させられたセンサー632の領域または該センサー632の周辺の領域は32℃の温度まで冷却される。該温度勾配は、培養物42から上側チャンバー28及びセンサー632に向かって培養物42の上を流れる浮揚性の気体流を生成する。そのような浮揚性の流れは、センサー632に向かって揮発性有機化合物を伴って移動して、該揮発性有機化合物の輸送を加速する。センサー32自体の表面が存在する実施例では、揮発性有機化合物44は、該センサー表面上で凝縮することができ、これは、揮発性有機化合物の該センサー表面への物理吸着及び化学吸着を促進する。該温度勾配はさらに、熱泳動(熱拡散)、すなわち、温度と共に拡散係数が変化することに起因する該勾配中の粒子または分子の移動を引き起こす。そのような熱泳動はまた、揮発性有機化合物を該センサー表面に運ぶ。かかる加速メカニズムは、センサー632への検体または揮発性有機化合物の輸送を強化して、システム620の動作を速くする。
【0051】
コントローラ650はさらに、異なるそれぞれのセンサー632が揮発性有機化合物または検体を受け取る速度にバイアスをかけるすなわち該速度に影響を与えることができる。1実施例では、コントローラ650は、異なるセンサー632の各々とヒーター642との間に異なる(それぞれの)温度勾配を形成するために、冷却装置644の各々を独立に制御する。1実施例では、コントローラ650は、冷却装置644のうちの1つを作動させる一方で、残りの冷却装置をオフのままにしまたは作動した状態のままとすることができる。そうすることで、コントローラ650は、作動している冷却装置644の近くの特定のセンサー632への揮発性有機化合物の輸送を加速することができ、これによって、作動している冷却装置644の近くのセンサーが検体または揮発性有機化合物を受け取る速度を、他のセンサー632に比べて速くすることができる。他の実施例では、コントローラ650は、(互いに)異なる冷却装置644を2つの異なる冷却状態で作動させ、これによって、異なるセンサー632に対して、異なる揮発性有機化合物(VOC)の輸送速度または加速度が確立されるように、ヒーター642と(互いに)異なる冷却装置644との間に異なる温度勾配が形成されるようにすることができる。
【0052】
1実施例では、コントローラ650は、センサー632が、揮発性有機化合物を時間と共に順次に(または連続的に)検出するようにする制御信号を生成することができる。揮発性有機化合物が、時間とともに順次に(または連続的に)、異なるセンサー632へと加速されるように、冷却装置644を順次に(または連続的に)作動させることができる。たとえば、(互いに)異なるセンサー632が、(互いに)異なる揮発性有機化合物を検出するように特別に構成されるか、または、(互いに)異なる検出解像度または検出感度を提供するように特別に構成される点で、センサー632は互いに異なりうる。かかる実施例では、コントローラ650は、培養増殖の初期の段階中に冷却装置644Aを先ず作動させ、これによって、初期に生成されたVOCの大部分が、(初期に生成されたそれらのVOCを検出するためにより好適に構成もしくは装備された)センサー632Aに運ばれるようにすることができる。コントローラ650は、それより後の培養増殖の段階中に、冷却装置644Aの作動を停止させ及び冷却装置644Bを作動させ、これによって、より後で生成されたVOCの大部分または該VOCの大きな割合が、(より後で生成されたVOCを検出するためにより好適に構成もしくは装備された)センサー632Bに運ばれるようにすることができる。
【0053】
図8は、システム220の例示的な実施例である、揮発性有機化合物検出システム720を概略的に示している。システム720は、下側チャンバー22、上側チャンバー28、センサー32、及びガス(気体)透過性膜729を備えている。ガス透過性膜729は、下側チャンバー22と上側チャンバー28の間に延在している。ガス透過性膜729は、いくつかの対象とされた揮発性有機化合物44を上側チャンバー28及びセンサー32に選択的に移動させることができるようにする一方で、他の対象とされていない揮発性有機化合物44’を阻止する。膜729は、個々の区域(またはセンサー)が、VOCの複合混合物中の対象とされた検体だけを検出して定量化することができるように、該複合混合物の使用を容易にする。透過性膜729はさらに、いくつかの揮発性有機化合物がセンサー32に到達するのを遅らせ、これによって、揮発性有機化合物の放出(ないし解放)の時間履歴の読み取りを容易にする。膜729は、いくつかの揮発性有機化合物44’を妨害または阻止することによって、単一の検体のテキスト(text)をより単純なスペクトルにするのを容易にする。その結果、元の混合物中の揮発性有機化合物44の一部分の定量化が、該混合物の畳み込まれたスペクトル(convolved spectrum)から個々のスペクトルをデコンボリューション(deconvolving)することによって単純化される。透過性膜729の材料の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ナイロン(nylon)、ポリアセテート(polyacetate)、酢酸セルロース(cellulose acetate)、ポリエステル(polyester)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidenefluoride)、ガラス繊維(glass fiber)、及び混合セルロースエステル(mixed cellulose ester)が含まれる(ただし、これらには限定されない)。
【0054】
図9は、上記のシステム220の別の実施例である、揮発性有機化合物検出システム820を概略的に示している。システム820は、システム820が、透過性膜729によって運ばれるかまたは浸透させられる反応要素830をさらに含んでいる点を除いてシステム720と同様である。システム720のコンポーネントまたは要素に対応するシステム820の残りのコンポーネントまたは要素には同じように番号が付されている。
【0055】
反応要素830は、膜729を通過する揮発性有機化合物44を異なる化学状態または異なる化合物(ないし混合物)に変える触媒または反応化学種を含む。1実施例では、反応要素830は、培養物42の細胞によって生成された揮発性有機化合物44を検体または他の揮発性有機化合物に変えるが、これらは、これらの前駆体よりもセンサー32によって良好に検出可能である。いくつかの実施例では、反応要素830は、揮発性有機化合物の混合物から対象とされていない種または干渉種を除去して、該混合物中の関心のあるすなわち対象とする検体の検出をより容易にするために使用される。そのような反応要素830は、システム820の感度及び選択能力を向上させることができる。膜729に浸透することができるかまたは膜729によってサポートすることができる反応要素の例には、(たとえば一般的な水素化用の)パラジウム(palladium)、(たとえばアミン水素化用の)白金(platinum)、(たとえば完全に置換されたオレフィン水素化用の)イリジウム(iridium)が含まれる(ただしこれらには限定されない)。たとえば、それらは、粒子、ナノ粒子、または、それらの化合物のキレート原子(chelated atom)を含むことができる。
【0056】
図10は、上記のシステム220の別の例示的な実施例である、揮発性有機化合物検出システム920を概略的に示している。システム920は、システム920が、輸送セレクタ240の特定の実施例である輸送セレクタ940を備えるものとして具体的に示されている点を除いてシステム220と同様である。輸送セレクタ940は、下側チャンバー22と上側チャンバー28の間にわたる半透過性膜929を備えている。図示の例では、膜929はさらに、上記の反応要素830を備えている。他の実施例では、反応要素830を省くことができる。
【0057】
膜929は、下側チャンバー22の上面上にわたって変化する厚さを有している。図示の例では、膜929の厚さは、センサー232の下において、下側チャンバー22及び培養物42の端から端までにわたって、徐々に変化し、またはランプ状に変化し、またはスロープ状に(たとえば一定の勾配で)変化する。他の実施例では、膜929の厚さは、センサー232の下において、下側チャンバー22及び培養物42の端から端までにわたって階段状に変化するものであってもよい。膜929の厚さが変わることによって、膜929を上向きに通る揮発性有機化合物44の輸送も変わることになる。この結果、(互いに)異なるセンサー232は、ある時間にわたって(互いに)異なる速度(ないし早さ)で揮発性有機化合物44を受け取る。センサー232の配列にわたる厚さの勾配は、膜929のより薄い領域に近接しているセンサー(今の例ではセンサー232A)が、膜929のより厚い領域に隣接しているセンサー(今の例ではセンサー232D)よりもずっと早く揮発性有機化合物を受け取るという結果をもたらすことができる。その結果、システム920のセンサー232からの信号を用いて、揮発性有機化合物の生成または放出の履歴をある期間にわたって追跡することができる。
【0058】
図11は、システム220の別の例示的な実施例である、揮発性有機化合物検出システム1020を概略的に示している。システム1020は、システム1020が、輸送セレクタ240の特定の実施例である輸送セレクタ1040を備えるものとして具体的に示されている点を除いて、システム220と同様である。システム220のコンポーネントまたは要素に対応するシステム1020のコンポーネントまたは要素には同様に番号が付されている。
【0059】
輸送セレクタ1040は、仕切り1028、及び、ガス透過性膜1029A、1029B、1029C、及び1029D(これらをまとめて膜1029という)を備えている。仕切り1028は、上側チャンバー28内において連続的に配置されたセンサー232の間を延びる仕切壁を備えている。仕切り1028は、上側チャンバー28を、サブチャンバー、すなわち、センサー232A、232B、232C、及び232Dをそれぞれ収容する区画1031A、1031B、1031C、及び1031Dにそれぞれ区画化する。1実施例では、仕切り1028は、区画1031のうちの1つの区画内のVOCが区画1031のうちのそれとは異なる区画へと流れるのを阻止ないし抑制するためにガス不透過性である。いくつかの実施例では、仕切り1028は、ガス選択性透過膜であり(または、仕切り1028はガス選択性透過膜を含み)、これによって、所定のガスが仕切り1028を通過できるようにしている。仕切り1028によって区画1031を形成することによって、複数の診断分析が容易になり、1分析当たりの診断コストが安くなる。
【0060】
膜1029の各々は上記の膜729に類似している。膜1029の各々は、関連する区画1031または区画1031の関連するサブセットすなわちグループに位置合わせされている。図示の例では、区画1031の各々は、関連する(互いに)異なる膜1029を有している。他の実施例では、該区画のサブセットは、同じ膜1029を共有することができる。
【0061】
膜1029は、異なるVOC及び/又は複数のVOCをそれらの各々に関連するセンサー232へと(互いに)異なる速度(または早さ)で運びまたは移動させるのを容易にする。図示の例では、膜1029Aと膜1029Bの厚さは異なっている。1実施例では、膜1029Aと1029Bは、(互いに)異なるガス透過特性を有する(互いに)異なる材料から形成される。図示の例では、膜1029A及び1029Bは、反応要素830を浸透も移動もさせず、一方、膜1029C及び1029Dは、反応要素を移動または浸透させる。図示の例では、膜1029Cは、第1の反応要素830Cを浸透または移動させ、膜1029Dは、第1の反応要素830Cとは異なる第2の反応要素830Dを浸透または移動させる。この結果、センサー232の各々は、VOCを異なる速度(または早さ)で受け取り、または、(互いに)異なる反応要素830によって(互いに)別様に変更されたVOCを受け取る。
【0062】
システム220に関して述べたように、1実施例では、センサー232を互いに異なるものとすることができる。そのような実施例では、(互いに異なる)それぞれのセンサー232を、他のセンサー232とは異なって、特定のタイプの検体または揮発性有機化合物を検出するようにカスタマイズすることができる。区画1031の各々は1つのセンサー232を備えるものとして図示されているが、他の実施例では、区画1031の各々は、複数のセンサーまたはセンサーの格子(または格子状配列)もしくは配列を含むことができ、いくつかの実施例では、複数のセンサー232を収容している個々の区画に関連付けられているかまたは該個々の区画の下にある膜は、システム920に関して上記した膜と同様に変化する厚さを有することができる。
【0063】
図12は、システム20及び220の別の例示的な実施例である、揮発性有機化合物検出システム1120を概略的に示している。上記の任意の揮発性有機化合物検出システムのコンポーネント(構成要素)に対応する揮発性有機化合物検出システム1120のコンポーネントには同じように番号が付されている。
図12に示されているように、システム1120は、上記の検出機能の多くを単一の検出システムにおいて組み合わせたシステムである(または、システム1120は、該組み合わせたシステムから構成される)。
【0064】
システム1120は、下側チャンバー22、上側チャンバー24、センサー232A、232B、232C、232D、電極342A、342B、342C、342D(これらをまとめて電極342という)、電極344A、344B、344C、344D(これらをまとめて電極344という)、電極542A、542B、542C、542D(これらをまとめて電極542という)、電極544A、544B、544C、544D(これらをまとめて電極544という)、ヒーター642、冷却装置644A、644B、644C、644D、仕切り1028、膜1029A、1029B、1029C、1029D、ガス源1152、1154、1156、ポンプ1158、培地源1162、1164、1166、ポンプ1168、及びコントローラ1250を備えている。仕切り1028によって形成された区画1031A、1031B、1031C、及び1031Dの各々が、電極342のうちの1つと電極344のうちの1つからなる一対の電極を収容している(含んでいる)点を除いて、電極342の各々はシステム320に関して上記した電極342と、電極344の各々はシステム320に関して上記した電極344とそれぞれ同様である。この結果、コントローラ1250は、それぞれの電極対を選択的かつ独立に作動させて、区画1031のうちの特定の区画内の特定のセンサー232への揮発性有機化合物の輸送を加速するための電界を選択的に形成するために、制御信号を選択的に出力することができる。1実施例では、システム420内の電極442に関して上記したように、電極342の各々は、培養物42の表面43から異なる高さへと延びる一連の個々の電極素子を備えている。そのような実施例では、コントローラ1250は、異なる拡散性(たとえば拡散率)または表面43からの高さに基づいて、(互いに)異なる揮発性有機化合物の輸送を加速させるためにそれらの電極素子のうちの1つを選択的に充電する。
【0065】
電極542及び544は、電極542及び544が、独立して制御可能なまたは独立して作動可能なサブセットもしくは対(ペア)にグループ化されている点を除いて、システム520に関して上記した電極542及び544と同様である。該サブセットまたは対は、他のサブセットまたは対とは独立に作動可能である。その結果、コントローラ1250は、特定の区画1031内に収容されている個々のセンサー232への揮発性有機化合物の輸送を選択的に加速させるために、電極対を選択的かつ独立に作動させることができる。たとえば、コントローラ1250は、センサー232Aへの揮発性有機化合物の輸送を加速させるために電極542A及び544Aを選択的に作動させるが、残りの電極542及び544には充電しないようにすることができる。別の実施例では、コントローラ1250は、電極542、544の異なる対において異なる強さの電界を生成して、エレクトロスプレー液滴が形成される速さを変え、及び、検体または揮発性有機化合物をそれぞれの区画1031内のそれぞれのセンサー232に送る速度を変えるために、別様に電荷を加える(すなわち別様に充電する)ことができる。
【0066】
ヒーター642及び冷却装置644は、システム620に関して上記したのと同様のやり方でコントローラ1250によって制御される。同様に、膜1029は、システム1020に関して上記したように、揮発性有機化合物をそれぞれの区画1031に選択的に送り、及び/又は、反応要素830C及び830Dを使って、送られている揮発性有機化合物の化学的性質を変える。1実施例では、システム1120は、システム1120を動作させることができる複数の利用可能なモードのうちの1つを選択するための選択権(ないし選択肢)をユーザーに提供する。たとえば、ユーザーは、(A)電極342、344、及び/又は(B)電極542、544、及び/又は(C)ヒーター642、冷却装置644などの1つまたは複数の差別化及び加速メカニズムを用いて、揮発性有機化合物または検体の輸送(の速度)を異なるセンサーへと加速させること及び該輸送(の速度)を異ならせることを選択することができる。
【0067】
ガス源1152、1154、1156は、培養物42の上のガス雰囲気用の種々のソース(源)を含む。ガス源1152、1154、1156の各々は、コントローラ1250の制御下にある弁(バルブ)を備えている。ポンプ1158は、選択された1つまたは複数のガスをガス源1152、1154、1156から培養物42の上の体積部すなわち空間(該空間が上側チャンバー28内の空間であっても、下側チャンバー22内の培養物42の上の空間であっても)へとくみ出すための装置である(または、ポンプ1158は該装置を備えている)。コントローラ1250は、選択されたガスの混合物を出力するための制御信号を出力する。コントローラ1250は、それらのガスまたはガスの混合物を培養物42の表面43の上の空間に供給する速度を制御するために、ポンプ1158を制御するための制御信号を出力する。
【0068】
コントローラ1250は、所定の細胞のタイプ(種類)の増殖(ないし成長)を促進または抑制する雰囲気を生成するために、及び/又は、雰囲気圧力(周囲の圧力)を下げて揮発性有機化合物の質量分率を大きくし、及び/又は、培養物42によって放出された揮発性有機化合物と反応してセンサー232によってより良好に検出されることができる検体を生成する(他のVOCなどの)反応物を導入するために、ガスの混合及びガスの供給速度を制御することができる。1実施例では、コントローラ1250は、培養物442の細胞が増殖(ないし成長)する雰囲気中の二酸化炭素及び酸素の割合を制御することによって所定のタイプ(種類)の細胞の増殖(ないし成長)を促進または抑制するために、システム1120に供給されるガスを制御する。コントローラ1250は、所定のセルによる揮発性有機化合物の増殖(ないし成長)及び生成を高めかつその他のセルによる揮発性有機化合物の増殖(ないし成長)及び生成を低下させるために、該雰囲気の内容物を調節することができる。1実施例では、該雰囲気の内容物の関数としての細胞の揮発性有機化合物のシグネチャ(たとえば特徴)の変化を、コントローラ1250によって評価基準として用いて細胞を識別することができる。いくつかの実施例では、コントローラ1250は、雰囲気圧力を下げることによって、揮発性有機化合物の有効濃度をより高くして、揮発性有機化合物のセンサー232のサービスへの結合率を大きし、これによって感度が高くなるようにすることができる。コントローラ1250によるガス混合物への反応性化合物の導入は、センサー232に対してより強い信号を生成して感度を高める他の化合物を生成するために使用される。
【0069】
培地源1162、1164、1166は、(互いに)異なる培地の内容物または溶液用の(互いに)異なるソース(源)を含む。培地源1162、1164、1166の各々は、コントローラ1250の制御下にある弁(バルブ)を備えている。ポンプ1168は、選択された液体培地または固形培地を培地源1162、1164、1166から培養物42へとくみ出すための装置である(または、ポンプ1168は該装置を備えている)。コントローラ1250は、選択された培地の混合物を出力するための制御信号を出力する。コントローラ1250は、それらの培地を培養物42に供給する速度を制御するためにポンプ1168を制御するための制御信号を出力する。
【0070】
コントローラ1250は、培地の混合物、及び該混合物をポンプ1168によって培養物42に供給する速度を制御して、培養物42(該培養物42内で細胞が増殖(ないし成長)し、かつ該培養物42によって揮発性有機化合物が生成される)を正確に制御するための制御信号を出力する。1実施例では、コントローラ1250は、自動的で生産性が高い細胞培養を容易にするために、培養物42を(時間及び/又は濃度の点で)正確に制御する。いくつかの実施例では、コントローラ1250は、培養物42内の細胞による揮発性有機化合物の代謝及び生成を変えるために薬剤を導入する。いくつかの実施例では、培地の内容物の関数としての細胞VOCシグネチャを、コントローラ1250によって別の評価基準として用いることによって、細胞を識別することができる。さらに別の実施例では、コントローラ1250は、細胞によって生成された代謝産物と反応して該代謝産物の揮発性を高め、及び/又はセンサーの応答性を高める反応物を(培地源1162、1164、1166のうちの1つから)導入することができる。
【0071】
1実施例では、コントローラ1250は、センサー232の各々からの信号をフィードバックとして利用して、システム1120による揮発性有機化合物の加速及び差別化の動作パラメータを調節可能に制御する。たとえば、コントローラ1250は、センサー232からの信号すなわちフィードバックに基づいて、異なる電極対である、電極対342、344と電極対542、544によって提供される電界を調節する制御信号を出力する。コントローラ1250は、かかるフィードバックに基づいて、ヒーター642の動作設定及び/又は個々の冷却装置644の動作設定を調節する制御信号を出力することができる。コントローラ1250は、センサー232からのフィードバックに基づいて、ガス源1152、1154、1156の弁を選択的に開閉することによって、培養物42の上のガス雰囲気を調節することができ、及び/又は、ポンプ1158が動作する速さを調節することができる(または、コントローラ1250は、センサー232からのフィードバックに基づいて、ガス源1152、1154、1156の弁を選択的に開閉し及び/又はポンプ1158が動作する速さを調節することによって、培養物42の上のガス雰囲気を調節することができる)。同様に、コントローラ1250は、センサー232からのフィードバックに基づいて、ガス源1162、1164、1166の弁を選択的に開閉することによって、培養物42の培地を調節することができ、及び/又は、ポンプ1168が動作する速さを調節することができる(または、コントローラ1250は、センサー232からのフィードバックに基づいて、ガス源1162、1164、1166の弁を選択的に開閉し及び/又はポンプ1168が動作する速さを調節することによって、培養物42の培地を調節することができる)。
【0072】
本開示を例示的な実施例に関して説明したが、当業者には、本発明の主題の思想及び範囲から逸脱することなく形態及び細部を変更できることが理解されよう。たとえば、それぞれの異なる例示的な実施例は、1以上の利益をもたらす1以上の特徴を含むものとして説明されている場合があるが、説明した例示的な実施例または他の代替の実施例において、説明した特徴を互いと交換することまたは互いに組み合わせることができることも意図されている。本開示の技術は比較的複雑であるため、本技術における変更を全て予測できるというわけではない。例示的な実施例に関して説明され、及び特許請求の範囲に記載されている本開示は、可能な限り広義であることが明白に意図されている。たとえば、特に断りのない限り、1つの特定の要素を記述している請求項は、複数の該特定の要素も含んでいる。請求項における「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、異なる要素を単に区別しており、特に断りのない限り、本開示における要素の特定の順番もしくは特定の番号付けに具体的に関連付けられているわけではない。