特許第6626210号(P6626210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626210
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】セマグルチドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/575 20060101AFI20191216BHJP
   C07K 1/06 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   C07K14/575
   C07K1/06ZNA
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-534077(P2018-534077)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公表番号】特表2019-503369(P2019-503369A)
(43)【公表日】2019年2月7日
(86)【国際出願番号】CN2016110373
(87)【国際公開番号】WO2017114191
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2018年6月28日
(31)【優先権主張番号】201511027176.7
(32)【優先日】2015年12月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516373845
【氏名又は名称】深▲せん▼翰宇薬業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HYBIO PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 新亮
(72)【発明者】
【氏名】▲密▼ 鵬程
(72)【発明者】
【氏名】陶 安進
(72)【発明者】
【氏名】袁 建成
【審査官】 金田 康平
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103848910(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0350219(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104072603(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Glyを固相合成法により樹脂とカップリングし、Gly-樹脂を得るステップ1と、
ステップ1で得られたGly-樹脂を使用し、逐次カップリングの方法によりセマグルチドの配列に従って順にアミノ酸をカップリングし、分解し、精製するステップ2と、を含むセマグルチドの製造方法において、
Lys26は、原料としてFmoc-Lys(Alloc)-OHを使用し、
H-His7は、原料としてBoc-His(Trt)-OH、又はBoc-His(Boc)-OH.DCHAを使用し合成し、 Lys26の側鎖は、断片合成の方法により調製して得られ
前記Lys26の側鎖の断片合成に用いられたFmoc-PEG-PEG-γ-Glu-オクタデカン二酸の完全保護断片の調製方法は、塩素樹脂にFmoc-PEG-OH、Fmoc-PEG-OH、Fmoc-Glu(OH)-OtBu、及びオクタデカン二酸モノ-tert-ブチルを順にカップリングさせ、分解し、再結晶し、PEG-PEG-γ-Glu-オクタデカン二酸モノ-tert-ブチルを得ることを特徴とするセマグルチドの製造方法。
【請求項2】
ステップ1にかかる樹脂は、ワング樹脂、又は2-CTC樹脂から選ばれ、
前記ワング樹脂の置換度は0.1〜0.5mmol/gであり、
前記2-CTC樹脂の置換度は0.2〜0.6mmol/gであり、
前記ワング樹脂のカップリングは、DIC+A+DMAPを使用し、ここで、Aは、HOBt、又はHOAtであり、
前記2-CTC樹脂のカップリングは、DiPEA法を使用することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ステップ2にかかるカップリングは、DIC+A、又はB+A+Cの方法により縮合し、ニンヒドリンで検出された樹脂が透明になるまで反応させ、ここで、Aは、HOBt、又はHOAtから選ばれ、Bは、HBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPから選ばれ、Cは、DIPEA、又はTMPから選ばれ、溶媒は、DMF、CH2Cl2、NMP、又はDMSOの1種、又は2種以上の混合物から選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記Lys26の側鎖の断片合成におけるカップリングは、DIC+A、又はB+A+Cの方法により縮合し、ニンヒドリンで検出された樹脂が透明になるまで反応させ、ここで、Aは、HOBt、又はHOAtから選ばれ、Bは、HBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPから選ばれ、Cは、DIPEA、又はTMPから選ばれ、溶媒は、DMF、CH2Cl2、NMP、又はDMSOの1種、又は2種以上の混合物から選ばれることを特徴とする請求項13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記Lys26の側鎖の断片合成における分解は、1〜2%のTFA/CH2Cl2(V/V)又は20%のTFE/CH2Cl2(V/V)を使用することを特徴とする請求項14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記Lys26の側鎖の断片合成における再結晶は、Et2O、CH2Cl2、CHCl3、MeOH、CH3CN、THF、EtOAc、EtOH、トルエン、ヘキサン、又はアセトンの1種、又は2種以上の混合物から選ばれることを特徴とする請求項15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記Fmoc-Lys(Alloc)-OHにおけるAllocの脱保護は、5〜10当量のモルホリン又は5〜10当量のフェニルシランの1種と、0.1〜0.3当量のPd(PPh3)4とを使用し、毎回10〜30min、2回除去し、脱保護反応に溶媒としてCH2Cl2を使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
Boc-His(Trt)-OHのカップリングは、B+A+C系を使用し、Boc-His(Boc)-OH.DCHAのカップリングは、HOAT+HATU+TMP系を使用し、
ここで、Aは、HOBt、又はHOAtから選ばれ、Bは、HBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPから選ばれ、Cは、DIPEA、又はTMPから選ばれ、溶媒は、DMF、CH2Cl2、NMP、又はDMSOの1種、又は2種以上の混合物から選ばれることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
ステップ2にかかる分解に用いられた試薬は、TFA、PhSMe、PhOMe、EDT、H2O、TIS、又はPhOHの1種又は2種以上の混合物を含み、
TFAとPhSMeとPhOMeとEDTとH2OとTISとPhOHの体積比は80〜90:0〜5:0〜3:0〜5:0〜5:0〜2:0〜5であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2015年12月30日に中国特許庁へ提出された、発明の名称が「セマグルチドの製造方法」である中国特許出願201511027176.7に基づき優先権を主張し、その全内容は、援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリペプチドの分野に属し、特に、セマグルチドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
セマグルチドの化学構造は式Iで示される。
【0004】
【化1】
【0005】
セマグルチド(Semaglutide)は、ノボノルディスク(Nove Nordisk)ファーマ株式会社により研究開発された長時間作用型GLP-1類似体であり、この薬物は1週1回、皮下注射するしか必要としなく、現在では、まだ第III相臨床試験段階にある。構造的には、セマグルチドは、26位のLysにPEG、グルタミン酸、及びオクタデカン酸脂肪鎖を連結し、8位に非天然アミノ酸であるアミノイソ酪酸を採用する。リラグルチド(Liraglutide)に比べて、セマグルチドは、脂肪鎖がより長く、疎水性が向上するが、セマグルチドは短鎖PEG修飾によって親水性が大きく増す。PEG修飾後、アルブミンと密に結合し、DPP-4酵素加水分解部位を隠蔽することができるだけでなく、腎排泄が低減し、生物学的半減期を延長し、循環の長い効果を達成できる。ペプチド配列の構造は以下の通りである。
【0006】
H-His7-Aib8-Glu9-Gly10-Thr11-Phe12-Thr13-Ser14-Asp15-Val16-Ser17-Ser18-Tyr19-Leu20-Glu21-Gly22-Gln23-Ala24-Ala25-Lys26(PEG-PEG-γ-Glu-Octadeca-nedioic Acid)-Glu27-Phe28-Ile29-Ala30-Trp31-Leu32-Val33-Arg34-Gly35-Arg36-Gly37-OH
【0007】
従来技術でFmoc固相合成によるセマグルチドの合成方法を採用して順調にカップリングさせ、目的とするポリペプチド分子を得ることを提供し、特許には、26位のLysは、Dde、ivDde、Mmt、Mttという保護基を用いて直交的に保護された後、側鎖の逐次カップリングを行うことが示されている。特許には、Ser、Thrについて擬似プロリンジペプチド(Pseudoproline dipeptides)の方法を選択して取り替えることが示されている。
【0008】
特許は、Fmoc法により固相で順に一つ一つカップリングさせる合成方法を保護し、中でも、リシンの側鎖にアミノ酸をカップリングする場合には、Mmt、Mtt、Dde、又はivDdeという保護基を選択して一時的な直交保護を行い、その後、一定の方法を選択して保護基を除去し、順に側鎖のカップリングを行い、分解剤により樹脂を切断し、ジエチルエーテルで沈殿させて粗ペプチドを得、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により粗ペプチドを得る。
【0009】
現在報告されている方法では、LysがMmt、Mtt、Dde、又はivDdeで保護される場合、いずれもある欠点がある。Mmt、Mtt保護基で保護されたLysは、脱保護時に弱酸性のTFA溶液を使用し、且つ一定の捕捉剤を加え、複数回の繰り返し処理を行う必要がある。特許には、Mmt、Mttの脱保護実験において6〜12回、毎回5〜10min繰り返す必要があるが、複数回の繰り返し操作は、酸の影響を受けやすい他の保護基、例えば、Trt、tBu、Bocなどの除去、副反応の発生に繋がる可能性がある。Mmt、Mtt保護基は脱保護が難しく、拡大生産の過程に完全な脱保護を確保することが難しい。6〜12回の繰り返し操作は、実験過程を煩瑣にする。反応担体として2-CTC(2-クロロトリチルクロリド樹脂)を使用する場合には、弱酸を用いてリンカ(linker)を極めて容易に脱離させるので、ポリペプチド断片は切断され、最終的な収率は大きく低下し、生産コストの増加、経済的利益の低下につながる。Dde又はivDde保護基で保護されたLysは、脱保護時にヒドラジン溶液を用いて脱保護する必要があるが、ヒドラジンは強い還元性を持ち、酸化性を有する基との副反応が起こりやすく、ヒドラジンの性質は活発であり、保管・輸送上で一定の危険性が存在し、拡大生産の過程においてセキュリティリスクがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑み、セマグルチドの製造方法を提供する。本発明は、Fmoc-Lys(Alloc)-OHで保護されたアミノ酸を原料として使用し、Pd(PPh3)4を選択して脱保護し、一方、操作プロセスは簡単で、単に、簡単な、毎回10〜30min、1〜2回の脱保護反応操作を行えばよく、副反応が発生せず、操作プロセスが安全で、生産を拡大しやすく、一方、プロセスにおいてBoc-His(Boc)-OH.DCHAとBoc-His(Trt)-OHを原料として使用することにより、His残基のラセミ化のリスクを最大限に低減でき、特別な断片でカップリングし、合成効率を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の発明の目的を達成するために、本発明は以下の技術手段を提供する。
【0012】
本発明は、
Glyを固相合成法により樹脂とカップリングし、Gly-樹脂を得るステップ1と、
ステップ1で得られたGly-樹脂は、逐次カップリングの方法によりセマグルチドの配列に従って順にアミノ酸をカップリングさせ、分解し、精製するステップ2と、を含むセマグルチドの製造方法において、
Lys26は、原料としてFmoc-Lys(Alloc)-OHを使用し、
H-His7は、原料としてBoc-His(Trt)-OH、又はBoc-His(Boc)-OH.DCHAを使用し合成し、
Lys26の側鎖は、逐次カップリング、又は断片合成の方法により、調製して得られるセマグルチドの製造方法を提供する。
【0013】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記製造方法は、Lys26の側鎖の断片合成で使用されたFmoc-PEG-PEG-γ-Glu-オクタデカン二酸の完全保護断片の調製方法は、塩素樹脂にFmoc-PEG-OH、Fmoc-PEG-OH、Fmoc-Glu(OH)-OtBu、及びオクタデカン二酸モノ-tert-ブチルを順にカップリングさせ、分解し、再結晶してPEG-PEG-γ-Glu-オクタデカン二酸モノ-tert-ブチルを得る。
【0014】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記製造方法のステップ1にかかる樹脂は、ワング樹脂、又は2-CTC樹脂から選ばれ、
前記ワング樹脂の置換度は、0.1〜0.5mmol/g、好ましくは、0.25〜0.35mmol/gであり、
前記2-CTC樹脂の置換度は、0.2〜0.6mmol/g、好ましくは、0.25〜0.45mmol/gであり、
前記ワング樹脂のカップリングは、DIC+A+DMAPを使用し、ここで、Aは、HOBt、又はHOAtであり
前記2-CTC樹脂のカップリングは、DiPEA法を使用する。
【0015】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記製造方法のステップ2にかかるカップリングは、DIC+A、又はB+A+Cの方法により縮合し、ニンヒドリンで検出された樹脂が透明になるまで反応させ、ここで、AはHOBt、又はHOAtから選ばれ、BはHBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPから選ばれ、CはDIPEA、又はTMPから選ばれ、溶媒はDMF、CH2Cl2、NMP、又はDMSOの1種、又は2種以上の混合物から選ばれる。
【0016】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記製造方法の前記Lys26の側鎖の断片合成におけるカップリングは、DIC+A、又はB+A+Cの方法により縮合し、ニンヒドリンで検出された樹脂が透明になるまで反応させ、ここで、AはHOBt、又はHOAtから選ばれ、BはHBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPから選ばれ、CはDIPEA、又はTMPから選ばれ、溶媒はDMF、CH2Cl2、NMP、又はDMSOの1種、又は2種以上の混合物から選ばれる。
【0017】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記製造方法の前記Lys26の側鎖の断片合成における分解は、1〜2%(V/V)のTFA/CH2Cl2、又は20%(V/V)のTFE/CH2Cl2を用いる。
【0018】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記製造方法の前記Lys26の側鎖の断片合成における再結晶は、Et2O、CH2Cl2、CHCl3、MeOH、CH3CN、THF、EtOAc、EtOH、トルエン、ヘキサン、又はアセトンの1種、又は2種以上の混合物を選択し、好ましくは、MeOHとCH2Cl2の混合溶媒である。
【0019】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記製造方法の前記Fmoc-Lys(Alloc)-OHにおけるAllocの脱保護は、5〜10当量のモルホリン(或いは、モルホリンの代わりに5〜10当量のフェニルシランを使用し)と、0.1〜0.3当量のPd(PPh3)4を使用し、毎回10〜30min、2回除去し、脱保護反応に溶媒としてCH2Cl2を使用する。
【0020】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記製造方法の前記Boc-His(Trt)-OHのカップリングは、B+A+C系を使用し、Boc-His(Boc)-OH.DCHAのカップリングはHOAT+HATU+TMP系を使用し、
ここで、AはHOBt、又はHOAtから選ばれ、BはHBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPから選ばれ、CはDIPEA、又はTMPから選ばれ、溶媒はDMF、CH2Cl2、NMP、又はDMSOの1種、又は2種以上の混合物から選ばれる。
【0021】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記製造方法のステップ2にかかる分解に用いられた試薬はTFA、PhSMe、PhOMe、EDT、H2O、TIS、又はPhOHの1種、又は2種以上の混合物を含み、
TFAとPhSMeとPhOMeとEDTとH2OとTISとPhOHの体積比は、80〜90:0〜5:0〜3:0〜5:0〜5:0〜2:0〜5であり、割合は、TFA:PhSMe:PhOH:EDT:H2O=85:5:3:5:2であることが好ましい。
【0022】
本発明は、Fmoc-Lys(Alloc)-OHで保護されたアミノ酸を原料として使用し、Pd(PPh3)4を選択して脱保護し、一方、操作プロセスは簡単で、単に、簡単な、毎回10〜30min、1〜2回の脱保護反応操作を行えばよく、副反応が発生せず、操作プロセスが安全で、生産を拡大しやすく、一方、プロセスにおいてBoc-His(Boc)-OH.DCHAとBoc-His(Trt)-OHを原料として使用することにより、His残基のラセミ化のリスクを最大限に低減でき、特別な断片でカップリングし、合成効率を向上させる。
【0023】
本発明は、Fmoc-Lys(Alloc)-OH原料を使用し、脱保護のステップを簡略化し、Mmt、Mttの脱保護に伴う副反応、並びに、Dde、又はivDdet保護基の除去の拡大生産過程中のセキュリティリスクを避ける。
本発明は、Boc-His(Trt)-OH原料とBoc-His(Boc)-OH.DCHAとのカップリング系を使用し、His残基がラセミ体である不純物を低減させる。
【0024】
本発明は、Mmt、Mtt保護基の除去に酸性のTFA溶液を使用し、脱保護反応を6〜12回繰り返す必要があり、操作の複雑性を増加している。酸性溶液を使用するのは、機器を腐食させ、生産コストを増加させ、また、酸性溶液を使用するのは、tBu、Bocなどの弱酸性条件下で除去しやすい保護基の脱離に繋がることが可能であり、副反応の可能性を増加する。Mmt、Mtt保護基を用いてセマグルチドを合成しようとするのは、耐酸性のワング樹脂のみを使用でき、耐酸性が弱い塩素樹脂を使用できなく、樹脂の使用範囲が制限される。
【0025】
本発明は、Dde、又はivDde保護基の除去にヒドラジン溶液を使用する必要があり、拡大生産中でヒドラジンを大量使用するのは大きなセキュリティリスクがある。
本発明は、側鎖断片を使用することにより、合成効率を向上させ、カップリング合成ステップを削減し、カップリング回数の増加による不純物の増加というリスクを低減している。
【発明の効果】
【0026】
本発明の有益な効果は、
1.原料としてFmoc-Lys(Alloc)-OH、Boc-His(Trt)-OH、及びBoc-His(Boc)-OH.DCHAを使用して対応するアミノ酸のカップリングを行うこと、
2.特定のカップリング方法として、Boc-His(Boc)-OH.DCHA又はBoc-His(Trt)-OH、HOAt/HATU/TMP、HOBt/HBTU/DiPEA又はHOBt/PYBOP/DiPEAを採用してヒスチジン残基のラセミ化のリスクを低減すること、
3.側鎖断片により、合成効率は向上する。逐次カップリングの場合には、粗ペプチドの合成の収率は83%であり、粗ペプチドの純度は65.3%であり、精製の収率は23.6%であり、精製ペプチドの純度は99.02%であり、断片カップリングの場合には、粗ペプチドの合成の収率は93%であり、粗ペプチドの純度は72.4%であり、精製の収率は34.4%であり、精製ペプチドの純度は99.60%である(実施例17、18を参照)こと、を含む。
【0027】
本発明の実施例または従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例または従来技術の説明において使用する図面を簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、セマグルチドの構造及び製造プロセスを示す。
図2図2は、実施例9でセマグルチドを製造する、及び従来技術(方法1)でセマグルチドを製造する過程においてHisをカップリングさせる時に発生したHis残基のラセミ化の不純物の検出結果を示す。
図3図3は、実施例10でセマグルチドを製造する過程においてHisをカップリングさせる時に発生したHis残基のラセミ化の不純物のHPLCスペクトルを示す。
図4図4は、実施例16で製造されたセマグルチドのMALDI-TOFマススペクトルを示す。
図5図5は、実施例18で製造されたセマグルチドのHPLCスペクトルを示す。
図6図6は、実施例15で製造されたセマグルチドのMALDI-TOFマススペクトルを示す。
図7図7は、実施例17で製造されたセマグルチドのMALDI-TOFマススペクトルを示す。
図8図8は、実施例18で製造されたセマグルチドのMALDI-TOFマススペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明はセマグルチドの製造方法を開示し、当業者は本明細書の内容を参考し、プロセスパラメータを適切に改善することにより実現できる。特に、すべての類似の置換および変更は、当業者にとって明らかであり、それらはすべて本発明に含まれるとみなされることに留意すべきである。本発明にかかる方法及び応用は既に好ましい実施例によって説明され、当業者にとっては、本発明の内容、精神、及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及び応用を適当に変更し、組み合わせることにより、本発明の技術を実現・適用することが明らかである。
【0030】
本発明は以下の2種類のセマグルチドの合成方法を述べる。
方法1:逐次カップリング選択
逐次カップリングの経路図は以下の通りである。

方法2:逐次カップリング+断片合成
逐次カップリング+断片合成分析の概略図
【化2】
【0031】
本発明にかかる合成経路は、
1) 適当な担体を選択し、固相合成法により樹脂にFmoc-Gly-OHを連結するステップと、
2) 逐次カップリングの方法により各アミノ酸を順にカップリングさせるステップと、
3) 塩素樹脂を選択してFmoc-PEG-PEG-γ-Glu-オクタデカン二酸の完全保護断片を調製し、再結晶の方法により精製するステップと、
4) Lys26は、Fmoc-Lys(Alloc)-OHを原料として使用し、Pd(PPh3)4とモルホリンの条件下で脱保護するステップと、
5) H-His7はBoc-His(Trt)-OH、又はBoc-His(Boc)-OH.DCHAを原料として使用し、合成するステップと、
6) オクタデカン二酸のカップリングは、オクタデカン二酸モノ-tert-ブチルを原料として使用するステップと、
7) ペプチド樹脂の分解のステップと、
8) 粗ペプチドの精製のステップと、を含む。
【0032】
上記のステップ1)では、Fmoc-Gly-OHを連結する樹脂が、ワング樹脂、又は2-CTC樹脂から選択できる。
上記のステップ1)は、Fmoc-Gly-ワング樹脂を用いて合成する場合には、置換度の範囲は、0.1〜0.5mmol/g、好ましくは、0.25〜0.35mmol/gであり、Fmoc-Gly-2-CTC樹脂を用いて合成する場合には、置換度の範囲は、0.2〜0.6mmol/g、好ましくは、0.25〜0.45mmol/gであり、ワング樹脂を連結するのには、DIC+A+DMAPを使用し、ここで、Aは、HOBt、又はHOAtであり、2-CTC塩素樹脂を連結するのには、DiPEA法を使用する。
【0033】
上記のステップ2)は、逐次カップリングにおいて使用されたアミノ酸又はアミノ酸類似体はFmoc保護アミノ酸であり、ここで、H-His7は、Boc-His(Trt)-OH、又はBoc-His(Boc)-OH.DCHAを使用し、Lys26は、Fmoc-Lys(Alloc)-OHを使用し、オクタデカン二酸のカップリングは、オクタデカン二酸モノ-tert-ブチルを使用する。
上記のステップ2)は、カップリングにおいて、DIC+A、又はB+A+Cの方法により縮合し、ニンヒドリンで検出された樹脂が透明になるまで反応させ、ここで、Aは、HOBt、又はHOAtであり、Bは、HBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPであり、Cは、DIPEA、又はTMPであり、溶媒は、DMF、CH2Cl2、NMP、DMSO、又はそれらの任意の混合溶媒から選ばれる。
【0034】
上記のステップ3)は、PEG-PEG-γ-Glu-オクタデカン二酸の完全保護断片の調製は、2-CTC塩素樹脂を使用し、分解には、1〜2%のTFA/CH2Cl2、又は20%のTFE/CH2Cl2を使用し、カップリング過程には、DIC+A、又はB+A+Cの方法により縮合し、ニンヒドリンで検出された樹脂が透明になるまで反応させ、ここで、Aは、HOBt、又はHOAtであり、Bは、HBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPであり、Cは、DIPEA、又はTMPであり、溶媒はDMF、CH2Cl2、NMP、DMSO、又はそれらの任意の混合溶媒から選ばれる。
上記のステップ3)は、再結晶は、Et2O、CH2Cl2、CHCl3、MeOH、CH3CN、THF、EtOAc、EtOH、トルエン、ヘキサン、アセトン、又はそれらの任意の混合溶媒を選択し、好ましくは、MeOHとCH2Cl2との混合溶媒である。
【0035】
上記のステップ4)は、Fmoc-Lys(Alloc)-OHにおけるAllocの脱保護は、0.1〜0.3当量のPd(PPh3)4、5〜10当量のモルホリン又はフェニルシランを使用して、毎回10〜30分、2回除去し、脱保護反応には溶媒としてCH2Cl2を使用する。
上記のステップ5)は、Boc-His(Trt)-OHを使用してカップリングする場合には、B+A+C系であることが好ましく、Boc-His(Boc)-OH.DCHAを使用してカップリングする場合には、HOAT+HATU+TMP系であることが好ましい。
上記のステップ7)は、分解剤は、TFA:PhSMe:PhOMe:EDT:H2O:TIS:PhOH=80〜90:0〜5:0〜3:0〜5:0〜5:0〜2:0〜5(V:V)、割合は、TFA:PhSMe:PhOH:EDT:H2O=85:5:3:5:2であることが好ましい。
【0036】
略語及び英語に対応する意味は表1に示す。
【表1】
本発明で提供されたセマグルチドの製造方法に使用する原料及び試薬はいずれも市販で入手可能である。
(実施例)
【0037】
以下、実施例によって本発明をさらに説明する。
【0038】
実施例1:Fmoc-Gly-ワング樹脂の調製
乾燥ワング樹脂210g(置換度:0.845mmol/g)を秤量して固相反応カラムに加え、まず、DMFで樹脂を2回洗浄し、また、樹脂層容積の2〜3倍のDMFで樹脂を30分間膨潤し、DMFで3回洗浄し、DCMで2回洗浄し、仕込みのために用意した。
氷浴で冷却した条件下で、DMFとDCMとの混合溶媒に105.48gのFmoc-Gly-OH、47.92gのHOBtを溶解し、アミノ酸が溶解した後、徐々に55mlのDICを加え、3min活性化した後、反応液を反応カラムに注ぎ、2.17gのDMAPを加え、バブリングしながら撹拌して2時間反応し、反応終了後、DMFで3回洗浄した後、適量の無水酢酸とピリジンとの混合溶液(体積比:Ac2O/Pyridine=7/6)を加えてブロッキングし5時間又は5時間以上反応し、反応を停止した後、DMFで6回洗浄し、メタノールで2回収縮し、減圧乾燥して置換度が0.496mmol/gであるFmoc-Gly-ワング樹脂を得た。
【0039】
実施例2:Fmoc-Gly-ワング樹脂の調製
乾燥ワング樹脂 218g(置換度:0.845mmol/g)を秤量して固相反応カラムに加え、まず、DMFで樹脂を2回洗浄し、また、樹脂層容積の2〜3倍のDMFで樹脂を30分間膨潤し、DMFで3回洗浄し、DCMで2回洗浄し、仕込みのために用意した。
氷浴で冷却した条件下で、DMFとDCMとの混合溶媒に26.88gのFmoc-Gly-OH、12.03gのHOBtを溶解し、アミノ酸を溶解させた後、徐々に11mlのDICを加え、3min活性化した後、反応液を反応カラムに注ぎ、1.12gのDMAPを加え、バブリングしながら撹拌して45min反応し、反応終了後、DMFで3回洗浄した後、適量の無水酢酸とピリジンとの混合溶液(体積比:Ac2O/Pyridine=7/6)を加えてブロッキングし一晩反応し、反応を停止した後、DMFで6回洗浄し、メタノールで2回収縮し、減圧乾燥して置換度が0.108mmol/gであるFmoc-Gly-ワング樹脂を得る。
【0040】
実施例3:Fmoc-Gly-ワング樹脂の調製
乾燥ワング樹脂 220g(置換度:0.845mmol/g)を秤量して固相反応カラム中に加え、まず、DMFで樹脂を2回洗浄し、また、樹脂層容積の2〜3倍のDMFで樹脂を30分間膨潤させ、DMFで3回洗浄し、DCMで2回洗浄し、仕込みのために用意した。
氷浴で冷却した条件下で、55.76gのFmoc-Gly-OH、25.11gのHOBtをDMFとDCMとの混合溶媒に溶解し、アミノ酸を溶解させた後、徐々に29mlのDICを加え、3min活性化した後、反応液を反応カラムに注ぎ、2.17gのDMAPを加え、バブリングしながら撹拌して90min反応し、反応終了後、DMFで3回洗浄した後、適量の無水酢酸とピリジンとの混合溶液(体積比:Ac2O/Pyridine=7/6)を加えてブロッキングし、一晩反応し、反応を停止した後、DMFで6回洗浄し、メタノールで2回収縮し、減圧乾燥して置換度が0.314mmol/gであるFmoc-Gly-ワング樹脂を得る。
【0041】
実施例4:Fmoc-Gly-2-CTC-樹脂の調製
乾燥2-CTC-樹脂 198g(置換度:0.568mmol/g)を秤量して固相反応カラムに加え、まず、DMFで樹脂を2回洗浄し、また、樹脂層容積の2〜3倍のDMFで樹脂を30min膨潤し、DMFで3回洗浄、DCMで2回洗浄し、仕込みのために用意した。
氷浴で冷却した条件下で、DMFとDCMとの混合溶媒に64.58gのFmoc-Gly-OH、75mlのDIPEAを溶解し、アミノ酸を溶解させた後、徐々に活性化されたFmoc-Gly-OHを反応カラムに加えて2時間反応させ、反応終了後、反応カラムに50mLのメタノールと36mlのDIPEAからなるブロッキング溶液を加え、30min反応させた。DMFで3回洗浄した後、メタノールで2回収縮し、減圧乾燥して得られたFmoc-Gly-2-CTC-樹脂の置換度は0.535mmol/gである。
【0042】
実施例5:Fmoc-Gly-2-CTC-樹脂の調製
乾燥2-CTC-樹脂 202g(置換度:0.388mmol/g)を秤量して固相反応カラムに加え、まず、DMFで樹脂を2回洗浄し、また、樹脂層容積の2〜3倍のDMFで樹脂を30min膨潤し、DMFで3回洗浄し、DCMで2回洗浄し、仕込みのために用意した。
氷浴で冷却した条件下で、DMFとDCMとの混合溶媒に46.75gのFmoc-Gly-OH、54mlのDIPEAを溶解し、アミノ酸を溶解させた後、徐々に活性化されたFmoc-Gly-OHを反応カラムに加えて2時間反応させ、反応終了後、反応カラムに48mLのメタノールと26mlのDIPEAからなるブロッキング溶液を加え、続いて30min反応させた。DMFで3回洗浄し、メタノールで2回収縮し、減圧乾燥して得られたFmoc-Gly-2-CTC-樹脂の置換度は0.368mmol/gである。
【0043】
実施例6:Fmoc-Gly-2-CTC-樹脂の調製
乾燥2-CTC-樹脂 216g(置換度:0.388mmol/g)を固相反応カラムに加え、まず、DMFで樹脂を2回洗浄し、また、樹脂層容積の2〜3倍のDMFで樹脂を30min膨潤し、DMFで3回洗浄し、DCMで2回洗浄し、仕込みのために用意した。
氷浴で冷却した条件下で、DMFとDCMとの混合溶媒に25.16gのFmoc-Gly-OH、28mlのDIPEAを溶解し、アミノ酸を溶解させた後、徐々に活性化されたFmoc-Gly-OHを反応カラムに加え、2時間反応させ、反応終了後、反応カラムに45mLのメタノールと15mlのDIPEAからなるブロッキング溶液を加え、続いて30min反応させた。DMFで3回洗浄し、メタノールで2回収縮し、減圧乾燥して得られたFmoc-Gly-2-CTC-樹脂の置換度は0.211mmol/gである。
【0044】
実施例7:ペプチド樹脂断片PEG-PEG-γ-Glu-オクタデカン二酸モノ-tert-ブチルの分解
乾燥2-CTC-樹脂 239g(置換度:0.568mmol/g)を秤量して固相反応カラムに加え、まず、DMFで樹脂を2回洗浄し、また、樹脂層容積の2〜3倍のDMFで樹脂を30min膨潤し、DMFで3回洗浄し、DCMで2回洗浄し、仕込みのために用意した。
氷浴で冷却した条件下で、DMFとDCMとの混合溶媒に104.6gのFmoc-PEG-OH、94mlのDIPEAを溶解し、アミノ酸を溶解させた後、徐々に活性化されたFmoc-PEG-OHを反応カラムに加えて2時間反応させ、反応終了後、反応カラムに65mLのメタノールと47mlのDIPEAからなるブロッキング溶液を加え、続いて30min反応させた。DMFで3回洗浄した。
通常のアミノ酸のカップリング法によりFmoc-PEG-OH、Fmoc-Glu(OH)-OtBu、及びオクタデカン二酸モノ-tert-ブチルを逐次カップリングさせ、カップリング終了後、メタノールで収縮してペプチド樹脂345gが得られ、3.5Lの1%TFA/CH2Cl2溶液により2時間分解し、減圧濃縮して約108gの完全保護ペプチドを得る。メタノールとジクロロメタンとの混合溶媒により再結晶して98gの完全保護ペプチドを得た。MALDI-TOFマススペクトルによる分子量は[M+H+]=846.8である。
【0045】
実施例8:ペプチド樹脂断片PEG-PEG-γ-Glu-オクタデカン二酸モノ-tert-ブチルのカップリング
乾燥2-CTC-樹脂 187g(置換度:0.752mmol/g)を秤量して固相反応カラムに加え、まず、DMFで樹脂を2回洗浄し、また、樹脂層容積の2〜3倍のDMFで樹脂を30min膨潤し、DMFで3回洗浄し、DCMで2回洗浄し、仕込みのために用意した。
氷浴で冷却した条件下で、108.4gのFmoc-PEG-OH、98mlのDIPEAをDMFとDCMとの混合溶媒に溶解し、アミノ酸を溶解させた後、徐々に活性化されたFmoc-PEG-OHを反応カラムに加え、2時間反応させ、反応終了後、反応カラムに60mLのメタノールと50mlのDIPEAからなるブロッキング溶液を加え、続いて30min反応させた。DMFで3回洗浄した。
通常のアミノ酸カップリング法によりFmoc-PEG-OH、Fmoc-Glu(OH)-OtBu、及びオクタデカン二酸モノ-tert-ブチルを逐次カップリングし、カップリング終了後、メタノールで収縮してペプチド樹脂310gが得られ、3.1Lの20%TFE/CH2Cl2溶液で2時間分解し、減圧濃縮して約115gの完全保護ペプチドを得た。酢酸エチルとクロロホルムとの混合溶媒により再結晶して108gの完全保護ペプチドを得た。MALDI-TOFマススペクトルによる分子量は[M+H+]=846.6である。
【0046】
実施例9:セマグルチドのペプチド樹脂の合成
実施例1で合成されたFmoc-Gly-ワング樹脂をセマグルチドのペプチド樹脂の合成に使用した。置換度が0.496mmol/gであるFmoc-Gly-ワング樹脂 202g(100mmol)を秤量し、DMFで30分間膨潤し、セマグルチドのアミノ酸配列に従って順にカップリングし、カップリングにおいて、アミノ酸を2〜5倍の当量で仕込み、DIC+A又はB+A+Cの方法により縮合し、ニンヒドリンで検出された樹脂が透明になるまで反応させ、ここで、AはHOBt、又はHOAtであり、BはHBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPであり、CはDIPEA、又はTMPであり、溶媒はDMF、CH2Cl2、NMP、DMSO、又はそれらの任意の混合溶媒を選択し、Boc-His(Trt)-OHのカップリングはHOBt/HBTU/DiPEA系を使用してカップリングした。
サンプリングして検出し、Boc-His(Trt)-OH/HOBt/HBTU/DiPEAのカップリング系を用いて得られた粗ペプチドにおいて、His残基のラセミ化の不純物のピークは、文献においてBoc-His(Boc)-OHのカップリング系(HOBt/HBTU/DiPEA)を使用したものよりも顕著に小さい。図2のとおりである。
方法1:Boc-His(Boc)-OH/HOBt/HBTU/DiPEA系を使用し、His残基のラセミ化の不純物は約2%〜3%である。
方法2(本発明):Boc-His(Trt)-OH/HOBt/HBTU/DiPEA系を使用し、His残基のラセミ化の不純物は1%以下である。
Lysの側鎖をカップリングする前に、0.2当量のPd(PPh3)4、10当量のモルホリンのジクロロメタン溶液でAlloc保護基を除去し、脱保護反応を2回行い、毎回30min反応し、側鎖上の他のアミノ酸は常法に従って透明になるまでカップリングし、カップリング終了後、ペプチド樹脂826gを得た。
【0047】
実施例10:セマグルチドのペプチド樹脂の合成
実施例2で合成されたFmoc-Gly-ワング樹脂をセマグルチドのペプチド樹脂の合成に使用した。置換度が0.108mmol/gであるFmoc-Gly-ワング樹脂 200g(21.6mmol)を秤量し、DMFで30分間膨潤し、セマグルチドのアミノ酸の配列に従って順にカップリングし、カップリングにおいて、アミノ酸を2〜5倍の当量で仕込み、DIC+A又はB+A+Cの方法により縮合し、ニンヒドリンで検出された樹脂が透明になるまで反応させ、ここで、AはHOBt、又はHOAtであり、BはHBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPであり、CはDIPEA、又はTMPであり、溶媒はDMF、CH2Cl2、NMP、DMSO、又はそれらの任意の混合溶媒を選択し、Boc-His(Boc)-OH.DCHAのカップリングは、HOAt/HATU/TMP系を使用してカップリングした。
Lysの側鎖をカップリングする前に、0.2当量のPd(PPh3)4、10当量のフェニルシランのジクロロメタン溶液でAlloc保護基を除去し、脱保護反応を2回行い、毎回30min反応し、側鎖上の他のアミノ酸は常法に従って透明になるまでカップリングし、カップリング終了後、ペプチド樹脂335gを得た。図3のとおりである。
Boc-His(Boc)-OH.DCHA/HOAt/HATU/TMP系を使用し、His残基のラセミ化の不純物は0.98%である。
【0048】
実施例11:セマグルチドのペプチド樹脂の合成
実施例3で合成されたFmoc-Gly-ワング樹脂をセマグルチドのペプチド樹脂の合成に使用した。置換度が0.314mmol/gであるFmoc-Gly-ワング樹脂 102g(32mmol)を秤量し、DMFで30分間膨潤し、セマグルチドのアミノ酸の配列に従って順にカップリングし、カップリングにおいて、アミノ酸を2〜5倍の当量で仕込み、DIC+A又はB+A+Cの方法により縮合し、ニンヒドリンで検出された樹脂が透明になるまで反応させ、ここで、AはHOBt、又はHOAtであり、BはHBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPであり、CはDIPEA、又はTMPであり、溶媒はDMF、CH2Cl2、NMP、DMSO、又はそれらの任意の混合溶媒を選択し、Boc-His(Trt)-OHのカップリングは、HOBt/HBTU/DiPEA又はHOBt/PYBOP/DiPEA系を使用してカップリングした。
Lysの側鎖をカップリングする前に、0.2当量のPd(PPh3)4、10当量のフェニルシランのジクロロメタン溶液でAlloc保護基を除去し、脱保護反応を2回行い、毎回30min反応し、側鎖上の他のアミノ酸のカップリングは、断片PEG-PEG-γ-Glu-オクタデカン二酸モノ-tert-ブチルを使用して1回のカップリングで完成し、カップリング終了後、ペプチド樹脂306gを得た。
【0049】
実施例12:セマグルチドのペプチド樹脂の合成
実施例4で合成されたFmoc-Gly-2-CTC樹脂をセマグルチドのペプチド樹脂の合成に使用した。置換度が0.535mmol/gであるFmoc-Gly-2-CTC樹脂94g(50mmol)を秤量し、DMFで30分間膨潤し、セマグルチドのアミノ酸の配列に従って順にカップリングし、カップリングにおいて、アミノ酸を2〜5倍の当量で仕込み、DIC+A又はB+A+Cの方法により縮合し、ニンヒドリンで検出された樹脂が透明になるまで反応させ、ここで、AはHOBt、又はHOAtであり、BはHBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPであり、CはDIPEA、又はTMPであり、溶媒はDMF、CH2Cl2、NMP、DMSO、又はそれらの任意の混合溶媒を選択し、Boc-His(Trt)-OHのカップリングはHOBt/HBTU/DiPEA又はHOBt/PYBOP/DiPEA系を使用してカップリングした。
Lysの側鎖をカップリングする前に、0.2当量のPd(PPh3)4、10当量のフェニルシランのジクロロメタン溶液でAlloc保護基を除去し、脱保護反応を2回行い、毎回30min反応し、側鎖上の他のアミノ酸を常法に従って透明になるまでカップリングし、カップリング終了後、ペプチド樹脂396gを得た。
【0050】
実施例13:セマグルチドのペプチド樹脂の合成
実施例5で合成されたFmoc-Gly-2-CTC樹脂をセマグルチドのペプチド樹脂の合成に使用した。置換度が0.368mmol/gであるFmoc-Gly-2-CTC樹脂 114g(42mmol)を秤量し、DMFで30分間膨潤し、セマグルチドのアミノ酸の配列に従って順にカップリングし、カップリングにおいて、アミノ酸を2〜5倍の当量で仕込み、DIC+A又はB+A+Cの方法により縮合し、ニンヒドリンで検出された樹脂が透明になるまで反応させ、ここで、AはHOBt、又はHOAtであり、BはHBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPであり、CはDIPEA、又はTMPであり、溶媒はDMF、CH2Cl2、NMP、DMSO、又はそれらの任意の混合溶媒を選択し、Boc-His(Boc)-OH.DCHAのカップリングは、HOAt/HATU/TMP系を使用してカップリングした。
Lysの側鎖をカップリングする前に、0.2当量のPd(PPh3)4、10当量のモルホリンのジクロロメタン溶液でAlloc保護基を除去し、脱保護反応を2回行い、毎回30min反応し、側鎖上の他のアミノ酸を常法に従って透明になるまでカップリングし、カップリング終了後、ペプチド樹脂362gを得た。
【0051】
実施例14:セマグルチドのペプチド樹脂の合成
実施例6で合成されたFmoc-Gly-2-CTC樹脂をセマグルチドのペプチド樹脂の合成に使用した。置換度が0.211mmol/gであるFmoc-Gly-2-CTC樹脂 95g(20mmol)を秤量し、DMFで30分間膨潤し、セマグルチドのアミノ酸の配列に従って順にカップリングし、カップリングにおいて、アミノ酸を2〜5倍の当量で仕込み、DIC+A又はB+A+Cの方法により縮合し、ニンヒドリンで検出された樹脂が透明になるまで反応させ、ここで、AはHOBt、又はHOAtであり、BはHBTU、HATU、TBTU、PyAOP、又はPyBOPであり、CはDIPEA、又はTMPであり、溶媒はDMF、CH2Cl2、NMP、DMSO、又はそれらの任意の混合溶媒を選択し、Boc-His(Boc)-OH.DCHAのカップリングは、HOAt/HATU/TMP系を使用してカップリングした。
Lysの側鎖をカップリングする前に、0.2当量のPd(PPh3)4、10当量のモルホリンのジクロロメタン溶液でAlloc保護基を除去し、脱保護反応を2回行い、毎回30min反応し、側鎖上の他のアミノ酸は、断片PEG-PEG-γ-Glu-オクタデカン二酸モノ-tert-ブチルを使用して1回のカップリングで完了し、カップリング終了後、ペプチド樹脂223gを得た。
【0052】
実施例15:セマグルチドの分解・精製
実施例9で得られたセマグルチドワング樹脂400gを5Lの反応釜に加え、TFA:チオアニソール:アニソール:EDT=90:5:3:2の体積比で分解剤4Lを調製し、まず、分解剤を2時間予備凍結し、その後、分解剤を5Lの反応釜に注ぎ、室温で2時間反応した。反応終了後、樹脂を濾別し、濾液を収集した。少量のTFAで樹脂を洗浄し、濾液を合わせ、濾液を40Lの冷凍された無水ジエチルエーテルに加えて沈殿させ、遠心分離し、無水ジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥し、セマグルチドの粗ペプチド182gを得、粗ペプチドの純度は66.8%であり、MALDI-TOF:(M+H)+=4113.9。図6のとおりである。
42.6gのセマグルチドの粗ペプチドを秤量し、25%アセトニトリル+75%水の混合溶媒1500mLに溶解し、Waters 2545RP-HPLCシステムを使用し、波長:218nm、カラム:50×250mmの逆相カラムのC18カラム、カラム温度:45℃であり、一般に、0.1%TFA/アセトニトリルの移動相で精製し、目的のピークの画分を収集し、純度が98.5%を超える精製ペプチドを得た。精製ペプチドの溶液は、Waters 2545RP-HPLCシステムを使用し、カラムとして、50×250mm、逆相カラムのC18カラムを使用し、0.1%塩酸/アセトニトリル移動相で塩変換し、目的のピークの画分を収集し、減圧濃縮し、冷凍乾燥してセマグルチド塩酸塩の精製ペプチド10.86gを得、HPLCによる純度は98.98%である。
【0053】
実施例16:セマグルチドの分解・精製
実施例11で得られたセマグルチドワング樹脂180gを3Lの反応フラスコに加え、TFA:チオアニソール:水:フェノール:EDT=82.5:5:5:5:2.5の体積比で分解剤1.8Lを調製し、まず、分解剤を2時間予備凍結し、その後、分解剤を3Lの反応フラスコに注ぎ、室温で2時間反応した。反応終了後、樹脂を濾別し、濾液を収集した。少量のTFAで樹脂を洗浄し、濾液を合わせ、濾液を40Lの冷凍された無水ジエチルエーテルに加えて沈殿させ、遠心分離し、無水ジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥し、セマグルチドの粗ペプチド101gを得、粗ペプチドの純度は62.6%であり、MALDI-TOF:(M+H)+=4113.5。図4のとおりである。
49.5gのセマグルチドの粗ペプチドを秤量し、25%アセトニトリル+75%水の混合溶媒1500mLに溶解し、Waters 2545RP-HPLCシステムを使用し、波長:218nm、カラム:50×250mmの逆相カラムのC18カラム、カラム温度:45℃であり、一般に、0.1%TFA/アセトニトリル移動相で精製し、目的のピークの画分を収集し、純度98.5%超えの精製ペプチドを得た。精製ペプチド溶液は、Waters 2545RP-HPLCシステムを使用し、カラムとして50×250mm、逆相カラムのC18カラムを使用し、0.1%塩酸/アセトニトリル移動相で塩変換し、目的のピークの画分を収集し、減圧濃縮し、冷凍乾燥してセマグルチド塩酸塩の精製ペプチド11.12gを得、HPLCによる純度は98.86%である。
【0054】
実施例17:セマグルチドの分解・精製
実施例13で得られたセマグルチド2-CTC樹脂203gを3Lの反応フラスコに加え、TFA:チオアニソール:PhOMe:TIS:EDT=82.5:5:5:5:2.5の体積比で分解剤1.8Lを調製し、まず、分解剤を2時間予備凍結し、その後、分解剤を3Lの反応フラスコに注ぎ、室温で2時間反応した。反応終了後、樹脂を濾別し、濾液を収集した。少量のTFAで樹脂を洗浄し、濾液を合わせ、濾液を40Lの冷凍された無水ジエチルエーテルに加えて沈殿させ、遠心分離し、無水ジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥し、セマグルチドの粗ペプチド85gを得、粗ペプチドの純度は65.3%であり、MALDI-TOF:(M+H)+=4113.8、図7のとおりである。
40.6gのセマグルチドの粗ペプチドを秤量し、25%アセトニトリル+75%水の混合溶媒1500mLに溶解し、Waters 2545RP-HPLCシステムを使用し、波長:218nm、カラム:50×250mmの逆相カラムのC18カラム、カラム温度:45℃で、NH4Acアセトニトリル移動相系で精製し、目的のピークの画分を収集し、純度98.5%超えの精製ペプチドを得た。精製ペプチド溶液は、Waters 2545RP-HPLCシステムを使用し、カラムとして、50×250mmの逆相カラムのC18カラムを使用し、0.1%酢酸/アセトニトリルの移動相で塩変換し、目的のピークの画分を収集し、減圧濃縮し、冷凍乾燥してセマグルチド酢酸塩の精製ペプチド8.36gを得、HPLCによる純度は99.02%である。
【0055】
実施例18:セマグルチドの分解・精製
実施例14で得られたセマグルチド2-CTC樹脂220gを3Lの反応フラスコに加え、TFA:H2O:EDT=90:5:5の体積比で分解剤2.2Lを調製し、まず、分解剤を2時間予備凍結し、その後、分解剤を3Lの反応フラスコに注ぎ、室温で2時間反応した。反応終了後、樹脂を濾別し、濾液を収集した。少量のTFAで樹脂を洗浄し、濾液を合わせ、濾液を40Lの冷凍された無水ジエチルエーテルに加えて沈殿させ、遠心分離し、無水ジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥し、セマグルチドの粗ペプチド79gを得、粗ペプチドの純度は72.4%であり、MALDI-TOF:(M+H)+=4113.5、図8のとおりである。
34.8gのセマグルチドの粗ペプチドを秤量し、25%アセトニトリル+75%水の混合溶媒1500mLに溶解し、Waters 2545RP-HPLCシステムを使用し、波長:218nm、カラム:50×250mmの逆相カラムのC18カラム、カラム温度:45℃であり、NaClO4塩とアセトニトリルとの移動相系で精製し、目的のピークの画分を収集し、純度98.5%超えの精製ペプチドを得た。精製ペプチド溶液は、Waters 2545RP-HPLCシステムを使用し、カラムとして、50×250mmの逆相カラムのC18カラムを使用し、0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリルの移動相で塩変換し、目的のピークの画分を収集し、減圧濃縮し、冷凍乾燥してセマグルチドのトリフルオロ酢酸塩の精製ペプチド11.98gを得、HPLCによる純度は99.60%であり、図5のとおりである。
【0056】
上記は本発明の好ましい実施形態だけであり、なお、当業者にとっては、本発明の原理から逸脱することなく、本発明に対していくつかの改良及び修飾も可能であり、これらの改良及び修飾も本発明の範囲内に含まれると指摘すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8