特許第6626236号(P6626236)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 八千代工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6626236-給油口構造 図000002
  • 特許6626236-給油口構造 図000003
  • 特許6626236-給油口構造 図000004
  • 特許6626236-給油口構造 図000005
  • 特許6626236-給油口構造 図000006
  • 特許6626236-給油口構造 図000007
  • 特許6626236-給油口構造 図000008
  • 特許6626236-給油口構造 図000009
  • 特許6626236-給油口構造 図000010
  • 特許6626236-給油口構造 図000011
  • 特許6626236-給油口構造 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626236
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】給油口構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/04 20060101AFI20191216BHJP
   B60K 15/05 20060101ALI20191216BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   B60K15/04
   B60K15/05 Z
   F02M37/00 301Q
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-513553(P2019-513553)
(86)(22)【出願日】2018年4月6日
(86)【国際出願番号】JP2018014805
(87)【国際公開番号】WO2018193883
(87)【国際公開日】20181025
【審査請求日】2019年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-82526(P2017-82526)
(32)【優先日】2017年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 大成
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−162164(JP,A)
【文献】 特開平7−96757(JP,A)
【文献】 特開2009−132242(JP,A)
【文献】 特開2015−89752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04
B60K 15/05
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに接続されるフィラーパイプの給油口に設けられるキャップレス式の給油口構造であって、
給油通路を形成する給油口本体と、
前記給油口本体に設けられ、前記給油通路を開閉する主開閉弁と、
前記給油口本体の前記主開閉弁よりも上流側に穿設されるドレン開口と、
前記給油口本体に挿入される給油ガンに接触する位置に回動自在に設けられるフラップと、
前記フラップの回動に連動して回動し、前記ドレン開口を開閉するドレン開閉弁と、
を備え、
前記給油ガンが接触することで回動される前記フラップの回動量は、前記ドレン開口を閉塞するのに要する前記ドレン開閉弁の回動量よりも大きく設定されていることを特徴とするキャップレス式の給油口構造。
【請求項2】
前記ドレン開口を開放する方向に前記ドレン開閉弁を付勢すると共に、前記ドレン開閉弁と同一方向に前記フラップを付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載のキャップレス式の給油口構造。
【請求項3】
前記ドレン開閉弁と前記フラップとは、共通の前記付勢部材によって付勢されることを特徴とする請求項2に記載のキャップレス式の給油口構造。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記フラップに固定されるフラップ用固定部と、前記ドレン開閉弁に固定される開閉弁用固定部と、前記フラップ用固定部と前記開閉弁用固定部とを互いに連結すると共に前記給油口本体に回動自在に設けられる連結部と、を一体的に備えており、
前記給油ガンの挿通方向に対する前記開閉弁用固定部の角度は、前記給油ガンの挿通方向に対する前記フラップ用固定部の角度よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項3に記載のキャップレス式の給油口構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップレス式の給油口構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フィラーパイプの給油口に設けられるキャップレス式の給油口構造が知られている。例えば、特許文献1には、給油口を開閉する密閉フラップと、給油口の周囲を覆うハウジングと、ハウジングの密閉フラップよりも上流側に穿設されたドレン開口とを備え、給油口付近に溜まるダスト等をドレン開口から外部へと排出すると共に内部の結露を防止する給油口構造が記載されている。
【0003】
特許文献1の給油口構造では、ハウジング内において、給油ガンの挿脱方向に沿って移動自在なガイドパイプと、ガイドパイプを給油口から離間する方向に付勢するバネと、ガイドパイプの外周面に取り付けられるパッキンとをさらに備えている。
【0004】
特許文献1の給油口構造によれば、給油ガンが挿通されていない平常時には、バネの付勢力によりガイドパイプ及びパッキンが給油口から離間する方向に付勢され、ドレン開口が開放される。一方、給油時には、給油ガンによってガイドパイプを押し込むと、バネの付勢力に抗してガイドパイプ及びパッキンが給油口へ向けて移動し、パッキンによってドレン開口が閉塞される。これにより、給油時に燃料の蒸気が外部に排出されるのを防ぐと共に、空気(外気)がドレン開口から内部に流入するのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−96756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当該従来技術では、給油時にガイドパイプ及びパッキンが給油ガンの挿通方向に沿って移動する構造であり、給油後に開位置に戻すために、バネの付勢方向が給油ガンの挿通方向とは逆向きに設定されている。このため、給油時にドレン開口を塞ぐためには、ユーザーが給油ガンをガイドパイプに強く押し付けた状態を維持する必要がある。つまり、給油ガンを押し込む力が不足すると、ドレン開口が閉塞されないまま給油されるという問題がある。
【0007】
換言すると、当該従来技術では、給油ガンの接触によってガイドパイプ及びパッキンが直接的に動作して同じ方向に同じ距離だけ移動する構造であるため、給油ガンの挿入ズレや不完全な挿入によりガイドパイプの移動量が不足するとパッキンの移動量も不足し、ドレン開口が閉塞されないまま給油されるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような観点から創案されたものであり、給油時におけるドレン開口の閉塞性を向上させることができる給油口構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、燃料タンクに接続されるフィラーパイプの給油口に設けられるキャップレス式の給油口構造であって、給油通路を形成する給油口本体と、前記給油口本体に設けられ、前記給油通路を開閉する主開閉弁と、前記給油口本体の前記主開閉弁よりも上流側に穿設されるドレン開口と、前記給油口本体に挿入される給油ガンに接触する位置に回動自在に設けられるフラップと、前記フラップの回動に連動して回動し、前記ドレン開口を開閉するドレン開閉弁と、を備え、前記給油ガンが接触することで回動される前記フラップの回動量は、前記ドレン開口を閉塞するのに要する前記ドレン開閉弁の回動量よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、給油ガンの挿通に応じてフラップ及びドレン開閉弁が連動して回動する構造であるため、ドレン開口を容易に閉塞することができる。より詳しくは、本発明によれば、給油ガンに直接的に接触して回動するフラップと、フラップに連動して回動しドレン開口を開閉するドレン開閉弁とを備える。また、給油ガンが接触することで回動されるフラップの回動量がドレン開口を閉塞するのに要するドレン開閉弁の回動量よりも大きく設定されている。これにより、ドレン開閉弁がフラップよりも少ない回動量でドレン開口を閉塞することが可能になる。このため、給油ガンの挿入ズレや不完全な挿入によりフラップの回動量が不足したとしても、ドレン開閉弁によってドレン開口を好適に閉塞することができる。
【0011】
また、前記ドレン開口を開放する方向に前記ドレン開閉弁を付勢すると共に、前記ドレン開閉弁と同一方向に前記フラップを付勢する付勢部材を備えることが好ましい。
このようにすると、ドレン開口を開放する位置にドレン開閉弁を保持することができるため、平常時にダスト等をドレン開口から外部へ確実に排出することができると共に内部の結露を確実に防ぐことができる。また、給油ガンに接触する位置にフラップを保持することができるため、給油時に給油ガンをフラップに確実に接触させることができる。
【0012】
また、前記ドレン開閉弁と前記フラップとは、共通の前記付勢部材によって付勢されることが好ましい。
このようにすると、部品点数を削減して構造を簡素化できる。
【0013】
また、前記付勢部材は、前記フラップに固定されるフラップ用固定部と、前記ドレン開閉弁に固定される開閉弁用固定部と、前記フラップ用固定部と前記開閉弁用固定部とを互いに連結すると共に前記給油口本体に回動自在に設けられる連結部と、を一体的に備えており、前記給油ガンの挿通方向に対する前記開閉弁用固定部の角度は、前記給油ガンの挿通方向に対する前記フラップ用固定部の角度よりも小さく設定されることが好ましい。
【0014】
このようにすると、給油ガンによってフラップ及びフラップ側固定部が押されると、連結部が回動するため、フラップ側固定部及びフラップが回動する。また、連結部が回動することで、開閉弁用固定部及びドレン開閉弁も回動する。つまり、フラップの回動に連動してドレン開閉弁も同時に回動することが可能になる。また、給油ガンの挿通方向に対する開閉弁用固定部の角度とフラップ用固定部の角度を調節するだけで、ドレン開閉弁とフラップの回動量の差を簡易に設定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の給油口構造によれば、給油時におけるドレン開口の閉塞性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る給油口構造の閉弁状態を示す概略断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る給油口構造の開弁状態を示す概略断面図である。
図3】ダストブラケット、ダスト開閉弁、ダストシャフト及びダスト付勢部材を示す分解斜視図である。
図4】ダストブラケット、ダスト開閉弁、ダストシャフト及びダスト付勢部材を組み付けた状態を示す斜視図である。
図5】ドレンフラップ、ドレン開閉弁、ドレンシャフト及びドレン付勢部材を示す分解斜視図である。
図6】ドレン開口周辺を示す部分拡大斜視図である。
図7図6に示すドレンシャフト及びドレン付勢部材にドレンフラップを組み付けた状態であって、ドレンフラップ及びドレン開閉弁が開位置にある状態を示す部分拡大斜視図である。
図8】給油ガンが挿通されていない平常時において、ドレンフラップ及びドレン開閉弁が開位置にある状態を示す部分拡大断面図である。
図9】給油ガンが挿通された給油時において、ドレンフラップ及びドレン開閉弁が閉位置にある状態を示す部分拡大断面図である。
図10】給油ガンが挿通された給油時において、ドレンフラップが開位置にあって、ドレン開閉弁が閉位置にある状態を示す部分拡大斜視図である。
図11】給油ガンが挿通された給油時において、ドレンフラップ及びドレン開閉弁が閉位置にある状態を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1及び図2に示すように、実施形態に係る給油口構造Fは、燃料タンク(図示略)に接続されるフィラーパイプ(図示略)の給油口に設けられるキャップレス式の給油口構造である。給油口構造Fは、ホルダー5と、ケース6と、主開閉弁7と、ガイドブラケット8と、カバー9と、を備えている。また、給油口構造Fは、ダストブラケット10と、ダスト開閉弁11と、ダストシャフト12(図2参照)と、ダスト付勢部材13(図2参照)と、を備えている。さらに、給油口構造Fは、ドレンフラップ1と、ドレン開閉弁2と、ドレンシャフト3と、ドレン付勢部材4と、を備えている。なお、以下の説明において「上流側」とは「給油ガンの挿通方向の手前側」のことをいい、「下流側」とは「給油ガンの挿通方向の奥側」のことをいう。
【0019】
ホルダー5は、給油通路を形成する円筒状の部材である。ホルダー5は、請求の範囲の「給油口本体」を構成する。ホルダー5の下流端は、フィラーパイプの給油口に接続される。ホルダー5の周壁において主開閉弁7よりも上流側には、半径方向に貫通するホルダー側排出部5aが形成されている。ホルダー5の外周面においてホルダー側排出部5aよりも上流側には、シール材S1が配置される環状の溝部5bが形成されている。シール材S1は、本実施形態ではOリングが用いられており、ホルダー5の外周面とカバー9の内周面との間を液密及び気密に保持している。
【0020】
ケース6は、ホルダー5の内周面の上流側に設置されており、主開閉弁7やガイドブラケット8を収容保持する略円筒状の部材である。ケース6の内周面において挿通方向の中間部には、他の部位よりも小径の給油開口部6bが形成されている。給油開口部6bを境にしてケース6の上流側は、ガイドブラケット8の配置スペースとなる。給油開口部6bを境にしてケース6の下流側は、主開閉弁7の配置スペースとなる。
【0021】
ケース6の周壁において主開閉弁7よりも上流側には、半径方向に貫通するケース側排出部6aが形成されている。ケース側排出部6aは、ホルダー側排出部5aと連通する位置に形成されている。ケース側排出部6aは、ホルダー側排出部5aと協働して、ダストや結露等を排出するためのドレン開口14を構成する。ケース6の外周面においてケース側排出部6aよりも下流側には、シール材S2が配置される環状の溝部6cが形成されている。シール材S2は、本実施形態ではOリングが用いられており、ケース6の外周面とホルダー5の内周面との間を液密及び気密に保持している。
【0022】
主開閉弁7は、給油開口部6bを開閉する弁である。主開閉弁7は、給油ガンGの挿通方向に回動可能である。主開閉弁7は、主開閉シャフト7aを介してケース6に取り付けられている。主開閉弁7は、主開閉付勢部材7bによって閉方向に常時回動付勢されている。
【0023】
ガイドブラケット8は、給油ガンGの挿通をガイドする略円筒状の部材である。ガイドブラケット8の周壁には、半径方向に貫通する切欠部8aが切り欠いて形成されている。切欠部8aは、ドレン開口14と半径方向に対応する位置に形成されている。切欠部8aは、ドレンフラップ1やドレン開閉弁2の回動を許容するための部位である。
【0024】
カバー9は、ケース6の上流端開口の一部を覆う略円筒状の部材である。カバー9は、ホルダー5の外周面に外嵌されている。カバー9は、ホルダー5及びケース6よりも上流側に延びている。カバー9の上流端には、半径方向内側へ向けて円環状に延出するダスト開口部9aが形成されている。ダスト開口部9aは、下流側に向かうほど縮径している。
【0025】
ダストブラケット10は、ダスト開閉弁11を保持する円筒状の部材である。ダストブラケット10は、カバー9の内周面において、ガイドブラケット8よりも上流側に設置されている。図3及び図4に示すように、ダストブラケット10の周壁には、上流側に開口する凹溝状の支持部10a,10aが4つ形成されている。支持部10aは、2個1組で構成されており、ダストシャフト12の軸方向両端を回動不能に支持する。
【0026】
ダスト開閉弁11は、図1及び図2に示すように、ダスト開口部9aを開閉する弁である。ダスト開閉弁11は、図3及び図4に示すように、本実施形態では一対のダストフラップ11a,11aで構成された観音開き式の弁である。なお、図3の符号Oは、ダスト開口部9a(図1及び図2参照)の中心軸を模式的に示す。一対のダストフラップ11a,11aは、中心軸Oを挟んで線対称形状を呈する。ダストフラップ11aは、給油ガンの挿通方向に回動可能である。ダストフラップ11aは、開閉板部11bと、周壁部11cと、複数の取付部11d,11dとを有している。
【0027】
開閉板部11bは、閉位置において中心軸Oと略直交する方向に延在する。開閉板部11bは、平面視で略半円状を呈する。開閉板部11bの直線縁部11eは、中心軸Oの径方向に沿って形成されている。一対のダストフラップ11a,11aの直線縁部11e,11e同士が突き合うことによって、ダスト開口部9aが閉塞される。開閉板部11bのうち直線縁部11eの中央部付近の部位には、中心軸Oと直交する方向に延在する略半円状の直交平面部11fが形成されている。直交平面部11fと周壁部11cとの間の部位には、給油ガンGの挿通方向に対して傾斜する傾斜面11gが形成されている。傾斜面11gは、周壁部11cから直交平面部11fへ向かうにつれて下流側に位置するように緩やかに傾斜している。周壁部11cは、開閉板部11bの円弧周縁部に沿って形成されている。
【0028】
取付部11dは、本実施形態では各ダストフラップ11a,11aに一対ずつ設置されている。一対の取付部11d,11dは、周壁部11cの外周面のうち直線縁部11eと反対側の部位から半径方向外側へ突設されている。取付部11d,11dは、互いに間隔を空けて設けられている。取付部11dは、円板状を呈する。取付部11dは、ダストシャフト12を通す円形状の取付孔11hを有している。取付部11dは、ダストシャフト12に対して回動可能に環装されている。
【0029】
ダストシャフト12は、ダストフラップ11aの回動中心になると共に、ダスト付勢部材13を所定位置に保持する部材である。ダストシャフト12は、本実施形態では円柱状を呈する。ダストシャフト12は、2つの支持部10a,10aに回動不能に挿通されている。
【0030】
ダスト付勢部材13は、ダストフラップ11aを閉方向に常時回動付勢するバネである。ダスト付勢部材13として用いるバネは特段限定されるものではないが、本実施形態では捩りコイルバネが用いられている。ダスト付勢部材13の円筒状のコイル部には、ダストシャフト12が挿通されている。ダスト付勢部材13の一端側は、ダストフラップ11aの裏面に係止されている。ダスト付勢部材13の他端側は、ダストブラケット10の周壁の適所に係止されている。
【0031】
ドレン付勢部材4は、図5乃至図7に示すように、ドレン開口14を開放する方向にドレン開閉弁2を常時回動付勢すると共に、ドレン開閉弁2と同一方向にドレンフラップ1を常時回動付勢する部材である。図5に示すドレン付勢部材4は、一つのバネを所定形状に屈曲して形成されている。つまり、ドレン開閉弁2とドレンフラップ1とは、共通のドレン付勢部材4によって付勢されている。ドレン付勢部材4は、複数の付勢側連結部4aと、複数の固定部4bと、2つのアーム部4cとを一体的に備えている。
【0032】
付勢側連結部4aは、ドレンシャフト3に連結される部位であり、本実施形態では円筒状のコイル部からなる。付勢側連結部4aの個数は、特段限定されるものではないが、本実施形態では互いに間隔を空けて4つ形成されている。付勢側連結部4aは、ドレンシャフト3に対して回動可能に環装されている。
【0033】
固定部4bは、コ字状を呈し、付勢側連結部4aよりも半径方向内側へ突出する部位である。固定部4bは、隣り合う付勢側連結部4a,4a同士の間に介設されている。つまり、固定部4bと付勢側連結部4aとは、ドレンシャフト3の軸方向に沿って交互に配置されている。固定部4bの数は、特段限定されるものではないが、本実施形態では互いに間隔を空けて3つ形成されている。中央に位置する固定部4bは、ドレン開閉弁2に固定される。外側に位置する残り2つの固定部4b,4bは、ドレンフラップ1に固定される。3つの固定部4bを区別する場合には、フラップ用固定部4d,4d、開閉弁用固定部4eのように称する。開閉弁用固定部4eとフラップ用固定部4dは、付勢側連結部4aによって互いに連結されている。開閉弁用固定部4eの突出量は、フラップ用固定部4dの突出量よりも大きく設定されている。なお、開閉弁用固定部4eやフラップ用固定部4dの数は適宜増減してよい。
【0034】
2つのアーム部4c,4cは、ドレン付勢部材4の一端側及び他端側において直線状に延びる部位である。アーム部4c,4cは、ガイドブラケット8(図6参照)の周壁の適所に係止されている。
【0035】
ドレンフラップ1は、給油ガンGに接触する位置に設けられ、給油ガンGの挿通方向に回動自在な部材である。ドレンフラップ1は、図5及び図7に示すように、フラップ基部1aと、フラップ接触部1bとを一体的に備えている。以下の説明では、開位置のドレンフラップ1において、給油ガンGの挿通方向の手前側に臨む面を「表面」と称し、給油ガンGの挿通方向の奥側に臨む面を「裏面」と称する。また、開位置のドレンフラップ1において、半径方向内側に臨む面を「内側端面」と称し、半径方向外側に臨む面を「外側端面」と称する。
【0036】
フラップ基部1aは、フラップ用固定部4dに固定される略直方体状の部位である。フラップ基部1aの外側端面において中央側には、付勢側連結部4aや開閉弁用固定部4eとの接触を回避するための逃げ部1cが切り欠いて形成されている。フラップ基部1aの外側端面において逃げ部1cを挟んだ両側には、一対のフラップ側連結部1d,1dが外向きに突設されている。フラップ側連結部1dは、ドレンシャフト3を通す円筒状の部位である。フラップ側連結部1dは、ドレンシャフト3に対して回動可能に環装されている。
【0037】
フラップ接触部1bは、給油ガンGに直接的に接触する部位である。フラップ接触部1bは、フラップ基部1aの内側端面において中央部から内向きに突設されている。フラップ基部1aの突端は、半径方向内側に凸となる曲面形状に形成されている。フラップ基部1aの表面は、半径方向内側に向かうほど下流側に位置するように傾斜している。当該突端形状と表面形状によって、給油ガンGに対するフラップ接触部1bの摺動性が向上し、給油ガンGでドレンフラップ1を押し込みやすくなる。
【0038】
ドレン開閉弁2は、ドレンフラップ1の回動に連動して回動し、ドレン開口14を開閉する弁である。ドレン開閉弁2は、半径方向に回動可能である。ドレン開閉弁2は、図5及び図6に示すように、ドレン弁体2aと、ドレンシール材2bとを備えている。以下の説明では、開位置のドレン開閉弁2において、半径方向内側に臨む面を「表面」と称し、半径方向外側に臨む面を「裏面」と称する。また、開位置のドレン開閉弁2において、給油ガンGの挿通方向の手前側に臨む面を「上流側端面」と称し、給油ガンGの挿通方向の奥側に臨む面を「下流側端面」と称する。
【0039】
ドレン弁体2aは、ドレンシール材2bを保持する部材であり、ドレンシール材2bよりも硬質な材料で構成されている。ドレン弁体2aは、弁体基部2cと、弁側連結部2dとを一体的に備えている。
【0040】
弁体基部2cは、開閉弁用固定部4eに固定される略矩形板状の部位である。弁体基部2cの表面の中央には、フック状のバネ係止部2eが突設されている。バネ係止部2eには、開閉弁用固定部4eの先端辺が引っ掛けられて係止される。弁体基部2cの表面において弁側連結部2dを挟んだ両側には、フラップ用固定部4dとの接触を回避するための傾斜面2g,2gが形成されている。傾斜面2gは、半径方向内側に向かうほど下流側に位置するように傾斜している。
【0041】
弁側連結部2dは、ドレンシャフト3に連結される部位である。弁側連結部2dは、弁体基部2cの上流側端面の中央部から上流側へ突設されている。弁側連結部2dは、四角柱状を呈する。弁側連結部2dの先端には、ドレンシャフト3を通す円形状の連結孔2fが形成されている。弁側連結部2dは、ドレンシャフト3に対して回動可能に環装されている。
【0042】
ドレンシール材2bは、弁体基部2cの裏面に設置されており、給油時においてドレン開口14を閉塞する部材である。ドレンシール材2bは、例えばゴム等の軟質な材料で構成されている。ドレンシール材2bは、矩形板状を呈する。ドレンシール材2bは、ドレン弁体2aよりも下流側に延びている。ドレンシール材2bの裏面の周縁には、四角環状の圧接部2h(図9参照)が突設されている。圧接部2hは、ドレン開口14の周縁に圧接してシールする部位である。
【0043】
図6及び図7に示すように、ドレンフラップ1とドレン開閉弁2は、ガイドブラケット8の周壁に設けた切欠部8aの内側に配置されている。ガイドブラケット8の周壁において切欠部8aに隣接する部位には、半径方向に互いに離間する外壁部8bと内壁部8cとが形成されている。外壁部8bには、一対の第一ストッパ部8d,8dが内向きに突設されている。内壁部8cには、第二ストッパ部8e,8eが内向きに突設されている。各ストッパ部8d,8eは、四角柱状を呈する。第一ストッパ部8dは、第二ストッパ部8eに対して上流側かつ半径方向外側に離間している。第一ストッパ部8d,8dは、開位置におけるフラップ用固定部4dに当接することによりフラップ用固定部4d及びドレンフラップ1の開方向の回動を規制する。第二ストッパ部8eは、開位置におけるドレン開閉弁2に当接することによりドレン開閉弁2及び開閉弁用固定部4eの開方向の回動を規制する。なお、ドレン付勢部材4の一端側及び他端側のアーム部4c,4cがガイドブラケット8の周壁に係止されることで、固定部4bを所定の角度に保持できるので、第一ストッパ部8d及び第二ストッパ部8eが無くてもよい。
【0044】
ドレンシャフト3は、図7に示すように、ドレンフラップ1及びドレン開閉弁2の回動中心になると共に、ドレン付勢部材4を所定位置に保持する部材である。ドレンシャフト3は、円柱状又は円筒状を呈する。ドレンシャフト3は、フラップ側連結部1d、弁側連結部2d及び付勢側連結部4aに挿通されている。ドレンシャフト3の両端は、ガイドブラケット8の周壁の適所に回動不能に支持されている。
【0045】
次に、図8及び図9を参照して、フラップ用固定部4d、ドレンフラップ1、開閉弁用固定部4e及びドレン開閉弁2について詳述する。なお、図8の破線矢印は、ダスト等の排出方向を示す。図9の二点鎖線は、開位置におけるドレンフラップ1とドレン開閉弁2を示す。
【0046】
図8に示す開位置におけるフラップ用固定部4d及びドレンフラップ1は、給油ガンGの挿通方向Cに対して直交乃至略直交している。フラップ接触部1bは、本実施形態では給油ガンGの中心付近まで突出している。フラップ接触部1bは、給油ガンGに接触する程度の十分な長さに設定すればよい。開位置における開閉弁用固定部4e及びドレン開閉弁2は、半径方向内側に向かうほど下流側に位置するように傾斜しており、給油ガンGの挿通方向Cに対して浅い角度で傾斜している。給油ガンGの挿通方向Cに対する開閉弁用固定部4eの角度θ2は、給油ガンGの挿通方向Cに対するフラップ用固定部4dの角度θ1よりも小さく設定されている。開位置における開閉弁用固定部4eは、フラップ用固定部4dよりもドレン開口14の近くに配置されている。
【0047】
図9に示すドレンフラップ1が給油ガンGの先端に接触してから外周面に接触するまでの回動量、すなわちドレンフラップ1が給油ガンGの挿通を許容するのに要する回動量を第一回動量R1とする。ドレン開閉弁2がドレン開口14を閉塞するのに要する第二回動量R2とする。第一回動量R1は、第二回動量R2よりも大きく設定されている(R1>R2)。逆にいうと、第二回動量R2は、第一回動量R1よりも小さく設定されており、ドレン開閉弁2は、ドレンフラップ1よりも少ない回動量でドレン開口14を閉塞することができる。換言すると、ドレンフラップ1が給油ガンGの外周面に接触するよりも先に、ドレン開閉弁2がドレン開口14を閉塞するように構成されている。
【0048】
次に、図2図7図10及び図11を参照して、本実施形態の給油口構造Fの作用について説明する。
【0049】
<平常時>
図7は、給油ガンGが挿通されていない平常時において、ドレン付勢部材4の付勢力によってドレンフラップ1及びドレン開閉弁2が開位置にある状態を示している。当該状態では、ドレンフラップ1及びフラップ用固定部4dが給油ガンの挿通方向に対して直交乃至略直交しており、ドレン開閉弁2及び開閉弁用固定部4eが給油ガンの挿通方向に対して浅い角度で傾斜している。ドレン開閉弁2がドレン開口14に対して離間しており、ドレン開口14が開放されている。
【0050】
<給油時>
図2に示すように、給油ガンGが挿通されて、給油ガンGの先端によってダスト開閉弁11が押されると、一対のダストフラップ11a,11aがダスト付勢部材13の付勢力に抗して開方向に回動する。これにより、ダスト開口部9aが開放される。
【0051】
続いて、図10に示すように、給油ガンGの先端によってドレン付勢部材4の付勢力に抗してドレンフラップ1及びフラップ用固定部4dが押されると、付勢側連結部4aがドレンシャフト3に対して回動するため、ドレンフラップ1及びフラップ用固定部4dが閉方向(ドレン開口14を閉塞する方向)に回動する。このとき、付勢側連結部4aが回動することで、開閉弁用固定部4e及びドレン開閉弁2も閉方向に回動する。つまり、ドレンフラップ1の回動に連動してドレン開閉弁2も同一方向に同時に回動する。なお、ドレンフラップ1とドレン開閉弁2とは、直接的に接触することなくドレン付勢部材4の反力で回動する。
【0052】
本実施形態では、ドレン開閉弁2がドレン開口14を閉塞するのに要する第二回動量R2がドレンフラップ1が給油ガンGの挿通を許容するのに要する第一回動量R1よりも小さく設定されている。このため、給油ガンGを所定以上押し込むと、ドレンフラップ1が給油ガンGの外周面に接触するよりも先に、ドレン開閉弁2がドレン開口14を閉塞する。このとき、ドレンシール材2bの圧接部2hがドレン開口14の周縁に圧接してシールする(図9参照)。なお、ドレン開閉弁2がドレン開口14を閉塞するまでは、ドレンフラップ1とドレン開閉弁2の回動量は略同等である。
【0053】
図10及び図11に示すように、ドレン開閉弁2がドレン開口14を閉塞すると、給油ガンGの挿通に応じてドレンフラップ1のみが閉方向に回動する。給油ガンGを更に押し込むと、ドレンフラップ1が回動して給油ガンGの外周面に接触し、給油ガンGの更に奥側への挿通が許容される。なお、ドレン開口14が閉塞された後、ドレンフラップ1のみが回動する状態では、ドレン付勢部材4の反力が更に大きくなるためドレン開閉弁2はドレン開口14に対してより密着することになる。
【0054】
以上説明した本実施形態によれば、給油ガンGの挿通に応じてドレンフラップ1及びドレン開閉弁2が連動して回動する構造であるため、ドレン開口14を容易に閉塞することができる。より詳しくは、本実施形態によれば、給油ガンGに直接的に接触して回動するドレンフラップ1と、ドレンフラップ1に連動して回動しドレン開口14を開閉するドレン開閉弁2とを備える。また、給油ガンGが接触することで回動されるドレンフラップ1の第一回動量R1がドレン開口14を閉塞するのに要するドレン開閉弁2の第二回動量R2よりも大きく設定されている。これにより、ドレン開閉弁2がドレンフラップ1よりも少ない回動量でドレン開口14を閉塞することが可能になる。このため、給油ガンGの挿入ズレや不完全な挿入によりドレンフラップ1の回動量が不足したとしても、ドレン開閉弁2によってドレン開口14を好適に閉塞することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、ドレン付勢部材4は、ドレンフラップ1に固定されるフラップ用固定部4dと、ドレン開閉弁2に固定される開閉弁用固定部4eと、フラップ用固定部4dと開閉弁用固定部4eとを互いに連結すると共に回動自在に設けられる付勢側連結部4aとを一体的に備える。このため、ドレンフラップ1の回動に連動してドレン開閉弁2も同時に回動することが可能になる。また、給油ガンGの挿通方向Cに対する開閉弁用固定部4eの角度θ2とフラップ用固定部4dの角度θ1を調節するだけで、ドレン開閉弁2とドレンフラップ1の回動量の差を簡易に設定することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、平常時にはドレン開口14が開放されるため、給油開口部6b付近に溜まるダスト等をドレン開口14を通じて外部へと排出することができると共に結露を防止することができる。また、給油時にはドレン開閉弁2によってドレン開口14が閉塞されるため、燃料の蒸気が外部に流出するのを防ぐと共にドレン開口14から給油通路内への空気の流入を防ぐことができる。燃料の蒸気を回収(吸引)する設備を備えたガソリンスタンドにおいては、空気がドレン開口14から給油通路内に流入すると、空気と燃料の蒸気とが混ざり合う。このため、回収設備が異常を検知して給油を停止する場合がある。これに対し、本実施形態によれば、給油時にはドレン開口14から給油通路内への空気の流入を防ぐことができるため、回収設備の停止を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、ドレン付勢部材4によってドレン開口14を開放する位置にドレン開閉弁2を保持することができるため、平常時にダスト等をドレン開口14から外部へ確実に排出することができると共に内部の結露を確実に防ぐことができる。また、ドレン付勢部材4によって給油ガンGに接触する位置にドレンフラップ1を保持することができるため、給油時に給油ガンGをドレンフラップ1に確実に接触させることができる。また、ドレン付勢部材4によってドレン開閉弁2及びドレンフラップ1を付勢することで、車両の振動等によるドレン開閉弁2及びドレンフラップ1のガタつきを抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、ドレン開閉弁2とドレンフラップ1とは、共通のドレン付勢部材4によって付勢されるため、部品点数を削減して構造を簡素化できる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。本実施形態では、給油ガンGがドレンフラップ1に直接接触してドレンフラップ1が回動すると共に、ドレンフラップ1の回動に連動してドレン開閉弁2が回動する構成にしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、給油ガンGに押されて回動したダスト開閉弁11がドレンフラップ1に直接接触してドレンフラップ1が回動する構成にしてもよい。また、ドレンフラップ1を省略し、ダスト開閉弁11がドレン開閉弁2に直接又は間接的に接触してドレン開閉弁2が回動する構成にしてもよい。上記構成においては、ダスト開閉弁11が請求の範囲の「フラップ」に相当する。上記構成においては、ダスト開閉弁11がドレンフラップ1又はドレン開閉弁2に接触可能なように、ダスト開閉弁11とドレンフラップ1又はドレン開閉弁2との距離を近付けたり、ダスト開閉弁11を一枚の長尺なダストフラップで構成したりしてもよい。また、ドレン付勢部材4は本実施形態では単一の部材としたが、ドレン開閉弁2とドレンフラップ1とに別個に設けてもよい。
【符号の説明】
【0060】
F 給油口構造
G 給油ガン
1 ドレンフラップ(フラップ)
2 ドレン開閉弁
4 ドレン付勢部材(付勢部材)
4a 付勢側連結部(連結部)
4d フラップ用固定部
4e 開閉弁用固定部
5 ホルダー(給油口本体)
7 主開閉弁
11 ダスト開閉弁(フラップ)
14 ドレン開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11