(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
時間ごとに前記時間で得られたサンプルサイズを計算し、前記第1の時刻までに得られた時間毎のサンプルサイズを時系列解析することで、前記第2の時刻までに得られるサンプルサイズを予測する
請求項7に記載の空調制御装置。
前記設定温度指示部が、前記設定温度と前記設定温度に対して決定された評価値とを表す情報を出力し、ユーザ入力手段から入力される情報に基づき、前記空調装置に指示する設定温度を決定する
請求項1〜10のいずれか一項に記載の空調制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る空調制御システムの概略構成を示すブロック図である。第1の実施形態に係る空調制御システムは、行動取得装置200と、被制御装置である対象機器300と、空調制御装置100とを有する。空調制御装置100は、計測情報DB101と、パラメータDB102と、計測情報取得部111と、継続時間計算部112と、特徴量計算部113と、快適温度判定部(決定部)114と、設定温度DB103と、設定温度指示部115と、を備える。
【0014】
行動取得装置200は、ユーザの行動または対象空間の状態またはこれらの両方を検知し、ユーザが対象空間に存在するか否かの情報(行動情報)を取得する。
図1では、行動取得装置200は1台であるが、複数台あってもよい。
【0015】
行動情報の取得方法は、カメラや、人感センサ、温度センサ、睡眠センサなどのセンサを利用し、能動的に取得する方法が考えられる。例えば、カメラなどで対象空間を撮影し、ユーザが撮影されている場合は、ユーザが対象空間に存在すると判断する。また、照明器具、電気調理器、携帯電話、スマートフォン、インターホン、電子錠などの電気器具が使用された場合に、当該電気器具から行動取得装置200に情報を送るなどの方法で、行動情報を受動的に取得する方法も考えられる。
【0016】
行動情報は、計測情報DB101に送られ、格納される。行動情報を送るタイミングは、一定時間ごとでも、取得の度でもよく、任意に定めてよい。
【0017】
対象機器300は、空調制御装置100に制御される空調装置である。対象機器300は、種々の空調機器、または冷暖房機器を利用することができる。
図1では、対象機器300は1台であるが、複数台あってもよい。
【0018】
対象機器300は、設置された空間に対し空調を行うことを想定しているが、設置された空間と空調が行われる空間が異なっていてもよい。例えば、対象機器300は機械室に置かれ、ダクトなどを介して温風、冷風を送出し、対象空間の空調を制御してもよい。
【0019】
対象機器300は、空調制御装置100からの指示を受け、設定温度を変更する。また、対象機器300は、設定温度に関する履歴(設定温度履歴)を記録し、計測情報DB101に送る。対象機器300は、外部から設定温度を変更でき、かつ設定温度履歴を計測情報DB101に送ることが可能である。
【0020】
設定温度履歴は、設定温度が変更された時刻に設定温度を記録することで得られる。また、予め定めた時刻、前回の記録から一定時間経過時などに記録してもよい。設定温度履歴を送るタイミングは、任意に定めてよい。
【0021】
空調制御装置100は、行動取得装置200からの行動情報と、対象機器300からの設定温度履歴に基づき、ユーザが快適と感じる設定温度を学習する。そして、対象機器300の設定温度を、その快適な温度のうちから選択した温度、例えば最も省エネな温度に変更する。省エネな温度は、例えば暖房の場合は最も低い温度、冷房の場合は最も高い温度である。
図1では、行動取得装置200と対象機器300はともに1台であるが、空調装置100は、複数台の行動取得装置200と複数台の対象機器300から情報を取得し、複数台の対象機器300の設定温度の快適性を判定し、制御してもよい。
【0022】
次に、空調制御装置100の内部構造について説明する。
【0023】
計測情報DB101は、計測情報を格納するDB(データベース)である。計測情報には、行動取得装置200から送られた行動情報と、対象機器300から送られた設定温度履歴が含まれる。
図2は、計測情報DB101が格納する計測情報の一例を示す図である。
【0024】
図2(A)は行動情報の一例である。
図2(A)の行動情報には、行動取得装置200がデータを取得した時刻、センサの検知対象である空間、センサの反応結果などの情報が含まれる。ここでは、ユーザを検知した場合は反応結果を1と、ユーザを検知しない場合は反応結果を0と表示する。
【0025】
図2(B)は設定温度履歴の一例である。
図2(B)の設定温度履歴には、空調機器が履歴を記録した時刻、空調機器が冷暖房を行う対象の空間、設定した温度が含まれる。
【0026】
パラメータDB102は、各部が計算で使用するパラメータ、および後述する学習期間テーブルなどのデータを格納する。各部は、処理を行うにあたって、パラメータDB102から必要なデータを取得する。各部は、処理のたびにパラメータDB102を参照してもよいし、データに有効期限等を付与し、有効期限内は一度取得したデータに基づいて処理を行ってもよい。
【0027】
図3は、第1の実施形態において、パラメータDB102が格納する情報の一例を示す図である。
図3(A)は、学習期間テーブルの一例、
図3(B)は特徴量計算用閾値の一例、
図3(C)は識別境界テーブルの一例、
図3(D)は強制モードテーブルの一例である。パラメータDB102は、これら以外の他の情報も格納してもよい。
【0028】
図3(A)の学習期間テーブルには、学習開始時刻、学習終了時刻、学習モード変更時刻、データ分析時刻、動作間隔の情報が含まれる。学習開始時刻から学習終了時刻までの期間が学習期間である。
【0029】
学習モード変更時刻は、設定温度履歴を収集する方法(学習モード)を変更する時刻を示す。学習モード変更時刻以前は、ユーザが対象機器300の設定温度を変更する。この状態を、通常モードと称する。学習モード変更時刻以降は、ユーザに加え、空調制御装置100も対象機器300の設定温度を変更する。この状態を、強制モードと称する。第1の実施形態では、学習モード変更時刻以降は、強制モードに変更することを想定しているが、空調制御装置100が対象機器300の設定温度を変更する必要がない場合は、通常モードのままでもよい。
【0030】
データ分析時刻は、空調制御装置100が行う後述する設定温度学習処理の開始時刻を示す。例えば、毎日3時などのように、一定時刻に開始されることを想定する。動作間隔は、空調制御装置100が処理を待機する時間である。詳細は後述のフローチャートにて説明する。
【0031】
図3(B)の特徴量計算用閾値は、特徴量計算部113が設定温度別に特徴量の計算を行うかを決定する際に用いられる閾値を示す。特徴量は、快適温度判定部114が各設定温度の評価値を算出するために用いるパラメータであり、特徴量計算部113によって計算される。設定温度の評価値は、例えば設定温度の快適性を表し、以下ではこの場合を示す。快適性は、例えば、設定温度がユーザにとって快適か不快かを表す。評価値は、快適性以外の指標も可能であり、例えば後述する識別境界までの距離でもよい。
【0032】
図3(C)の識別境界とは、快適な設定温度のグループと、不快な設定温度のグループを分ける境界を意味する。識別境界テーブルには、特徴量種類と、識別境界の利用パラメータが含まれる。特徴量種類は、特徴量計算部113が計算する特徴量の種類である。識別境界の利用パラメータは、識別境界を求めるパラメータである。
【0033】
図3(D)の強制モードテーブルは、強制モードにおいて行われる設定温度の変更に関する情報を示す。強制モードテーブルには、ID、冷暖房の種類、強制モードの内容、利用フラグが含まれる。強制モードテーブルには1または複数の変更方法が含まれていてもよい。利用フラグは0と1があり、利用フラグが1の強制モードの内容が行われる。
【0034】
計測情報取得部111は、
図3(A)で示した学習期間テーブルをパラメータDB102から取得する。そして、学習期間テーブルのデータ分析時刻に、計測情報を計測情報DB101から取得する。取得する計測情報は、学習期間テーブルの学習開始時刻から現在時刻もしくは学習終了時刻までのものである。計測情報取得部111は、取得した計測情報を継続時間計算部112に送る。
【0035】
継続時間計算部112は、計測情報の設定温度履歴に基づき、設定温度別に、当該設定温度が継続した時間(設定温度継続時間)を計算する。対象とする設定温度は予め定めておいてもよいし、設定温度履歴に含まれる全ての設定温度を対象としてもよい。この際、取得した計測情報の行動情報より、対象機器300が冷暖房を行う空間にユーザが存在している時間帯を把握し、当該時間帯だけを対象として、設定温度継続時間を計算してもよい。これによりユーザが対象の空間に存在せず、不快な設定温度が長時間放置された場合、設定温度が快適か不快かを正確に判断することができなくなることを防止できる。なお、対象機器300が複数ある場合は、対象機器300ごとに計算を行う。
【0036】
図4は、設定温度継続時間の計算方法の一例を示す図である。継続時間計算部112は、取得した計測データに基づき、
図4(A)および
図4(B)のデータを生成した上で、
図4(C)のデータを生成する。
【0037】
図4(A)は、対象の空間におけるユーザの存在状況を表す。
図4(A)の例では、時刻t1からt4までの間および時刻t5からt9までの間に、対象の空間にユーザが存在していることを示す。
図4(B)は、当該対象空間における空調機器の設定温度の変化を表した図である。
図4(B)の例では、t1からt2までの設定温度は19℃、t2からt3までの設定温度は21℃、t3からt4までの設定温度は19℃であることを示す。この場合、設定温度が19℃の場合の設定温度継続時間は、t2−t1、t4−t3と表すことができる。設定温度が21℃の場合の設定温度継続時間は、t3−t2となる。
【0038】
図4(C)の例は、
図4(A)、
図4(B)に基づき作成された、設定温度継続時間とイベントの値の関係図である。設定温度継続時間とイベントの値の関係図には、設定温度と、当該設定温度での設定温度継続時間と、イベントの値が含まれる。なお、この例では、ユーザが不在の時刻(t4からt5までの間)は、設定温度継続時間として算出しない。
【0039】
イベントの値は、後述の特徴量算出部113にて行われる生存時間解析に用いられるものである。イベントについては、特徴量の算出の説明とともに説明する。イベントの値は、1もしくは0である。ここでは、空調装置100が暖房をする場合に、ユーザが在室かつ設定温度が上昇した場合はイベントの値を1とする。ユーザが不在となるもしくは設定温度が下降した、または変化なしの場合は、イベントの値を0とする。空調装置100が冷房をする場合は、ユーザが在室かつ設定温度が下降した場合に1とし、ユーザが不在になるもしくは設定温度の上昇が起きた、または変化なしの場合に0とする。
【0040】
図4(B)の例を暖房時とすると、ユーザ在室中の時刻t2に設定温度が19℃から21℃に上昇したため、
図4(C)の設定温度継続時間t2−t1にあたるイベントの値は、1となる。一方で、設定温度が低下した時刻t3からの設定温度継続時間t3−t2、およびユーザが不在となった時刻t4からの設定温度継続時間t4−t3にあたるイベントの値は、ともに0となる。
【0041】
このようにして、継続時間計算部112は、設定温度継続時間を得る。得られた設定温度継続時間は、快適温度を判定するためのサンプルとして用いられる。また、サンプルの個数を、サンプルサイズと称する。サンプルサイズは、後述の特徴量算出部113にて用いられる。
【0042】
図5は、サンプルサイズに関するデータの一例を示す図である。当該データには、設定温度、サンプルサイズ、各サンプルの継続時時間が含まれる。サンプルサイズは、
図4で示したように、設定温度継続時間を集計し、設定温度別に設定温度継続時間の個数を求めることで得ることができる。
図4(C)の例では、設定温度が19℃であった設定温度継続時間は、(t2−t1)、(t4−t3)、(t6−t5)、(t9−t8)の4つであるため、19℃のサンプルサイズは4となる。同様にして、20℃のサンプルサイズは1、21℃のサンプルサイズは2となる。
【0043】
特徴量計算部113は、継続時間計算部112が計算した設定温度別の設定温度継続時間とそのサンプルサイズに基づき、設定温度が継続する時間に関する特徴量を算出する。算出する特徴量の種類は予め定められ、
図3(C)で示したパラメータDB102の識別境界テーブルに設定されているものとする。特徴量計算部113は、処理を行う前に予め識別境界テーブルを読み込んでおき、計算する特徴量の種類を定めておく。
【0044】
特徴量の算出方法の一例として、生存時間解析を用い、ワイブル分布モデルの係数パラメータを特徴量として算出する方法を、以下に説明する。なお、特徴量はワイブル分布モデルの係数パラメータに限定されるものではない。設定温度継続時間のサンプルから得られるものならば、どのようなものでもよい。例えば、設定温度継続時間の平均と分散なども特徴量とすることができる。
【0045】
生存時間解析とは、ある観察対象の生存時間を予測する手法である。例えば、人や機械などを観察対象とし、当該観察対象の死亡や故障までの時間を予測する。当該観察対象の死亡や故障をイベントと称する。生存時間は、観察開始からイベントが発生するまでの時間を意味する。
【0046】
設定温度を観察対象とし、設定温度の変更をイベントとすれば、設定温度継続時間は設定温度の生存時間とみなすことができる。さらに、ここでは、
図4(C)に示した設定温度継続時間とイベントの値の関係図において、イベントの値が1である設定温度変更をイベントとする。暖房時に暖房の温度を上昇させたということは、ユーザがその温度に不満があると推測できるからである。一方、イベントの値が0である設定温度変更は、イベントの打ち切りとみなす。打ち切りとは、イベントが発生せずに、途中で観察が打ち切られることを意味する。
【0047】
時間t(tは0より大きい実数)において、観察対象が生存している確率S(t)を、生存関数と称する。ここでのS(t)は、全ての設定温度継続時間の個数(サンプルサイズ)のうち、時間tよりも長い設定温度継続時間の個数の割合となる。この生存関数S(t)がワイブル分布モデルで分布すると仮定すると、S(t)は形状パラメータλ、スケールパラメータpを用いて、次式で表される。
【数1】
【0048】
特徴量計算部113は、数式1を用いて、複数の設定温度継続時間に基づき、λとpを特徴量として算出する。算出方法としては、最尤法などが考えられる。
【0049】
λやpなどのパラメータを算出するためには、必要最低限のサンプルサイズがなければならない。ゆえに、特徴量計算部113は、サンプルサイズが
図3(B)で示した特徴量計算用閾値以上であるかを確認し、サンプルサイズが特徴量計算用閾値以上の場合に特徴量を計算する。
【0050】
図6は、特徴量の計算法の一例を示す図である。特徴量計算部113は、
図4(C)で示した設定温度継続時間のデータより、
図6(A)の生存関数S(t)を求める。
図6(A)では、19℃、20℃、21℃の3つの温度の設定温度継続時間の生存関数を示している。そして、各設定温度の生存関数から、形状パラメータλ、スケールパラメータpを算出する。
【0051】
快適温度判定部114は、特徴量計算部113が算出した特徴量に基づき、設定温度別に快適であるか不快であるかを判定する。判定は、特徴量計算部113同様、識別境界テーブルの利用パラメータから求まる識別境界に基づき行う。
【0052】
図7は、特徴量のプロット図の一例を示す図である。先ほどの例で示したワイブル分布モデルの形状パラメータλをX軸に、スケールパラメータpをY軸とする。丸で示されたのが今回の計測による各設定温度、斜線が快適と不快な温度を分ける識別境界である。識別境界は、
図3(C)の識別境界の利用パラメータ(a、b)から求める。aは傾き、bは切片であり、識別境界は、一次関数(直線)で表される。(a、b)は事前に与えられている。識別境界より左上に存在する設定温度は快適な温度であり、識別境界より右下に存在する設定温度は不快な温度である。暖房の場合、一般に、快適な温度>不快な温度、の関係が成立する。識別境界で区画された複数の領域のどちらが快適でどちらが不快かは事前に決められている。ただし、ユーザが入力装置を用いてどちらの領域が快適か不快かを指示してもよい。
図7では、設定温度が20℃と21℃のときは快適であり、19℃のときは不快であることを示す。このようにして、快適温度判定部114は、設定温度別に快適か不快かを判定し、後述する設定温度テーブルを生成する。ここでは、快適か不快かを判定したが、前述したように、評価値として識別境界までの距離など、他の値を算出する構成も可能である。
【0053】
なお、識別境界の利用パラメータは、過去の試験結果などのデータにより予め算出されて、識別境界テーブルに設定されているものとする。利用パラメータの算出方法は、線形サポートベクタマシンなどが用いられる。
【0054】
設定温度DB103は、快適温度判定部114が生成した設定温度テーブルを格納する。
図8は、設定温度テーブルの一例を示す図である。設定温度テーブルには、空調装置の空調対象の空間と、冷暖房の種類と、設定温度、快適性の判定結果、利用フラグが含まれる。
【0055】
図8のデータは、冷暖房の種類より、暖房利用時のデータであることが分かる。また、リビングでは、18℃と19℃は不快であり、20℃と21℃が快適であることが分かる。このように暖房利用時では設定温度が高い方が快適になる。なお、冷房利用時では設定温度が低い方が快適になる。ただし、暖房時でも設定温度が高すぎたり、冷房時でも設定温度が低すぎたりする場合は、不快になり得る。一方、寝室1では20℃でも不快である。このように、空間によって快適な温度は異なる。
【0056】
利用フラグは、設定温度指示部115が対象機器300に指示する設定温度であるか否かを示す。利用フラグは0または1の値を用い、暖房利用時は快適と判定された設定温度の最小の設定温度の利用フラグを1とし、冷房利用時は快適と判定された設定温度の最大の設定温度の利用フラグを1とする。また利用フラグが1である設定温度を限界値とする。この限界値が、快適性と省エネを最大限両立した設定温度である。なお、暖房利用時は快適と判定された設定温度の最小の設定温度の利用フラグを1にするのは一例であり、例えば快適と判定された設定温度が複数ある場合に、最小から2番目の温度設定を採用することも可能である。また、評価値として、識別境界までの距離を用いた場合、快適の領域内の設定温度のうち、識別境界までの距離が最も短いもの、または距離が閾値以下のものを採用することも考えられる。
【0057】
設定温度指示部115は、対象機器300に対し、設定温度を指示する。指示する設定温度は、設定温度DB103の設定温度テーブルに基づく。設定温度を指示するタイミングは、パラメータDB102の学習期間テーブルなどに基づき、判断される。
【0058】
第1の実施形態では、学習期間テーブルの学習モード変更時刻より前では、設定温度の変更指示は行われず、ユーザだけが設定温度を変更する。そのため、サンプルサイズが特徴量計算用閾値未満となり、特徴量を算出することができない設定温度が生じる可能性がある。例えば、ユーザが設定温度を、寒いときは21℃に、暑いときは19℃にしていた場合、20℃のサンプルサイズが不足し、20℃が快適なのか不快なのかを判断することができない。
【0059】
学習モード変更時刻以降では、設定温度指示部115は、サンプルサイズを増やすために、対象機器300に対し、設定温度の変更を指示する。設定温度の変更は、パラメータDB102の強制モードテーブルに基づく。例えば、
図3(D)のID1では、毎日9:00から12:00の間に1回、ランダムなタイミングで設定温度を、サンプルサイズが不足している温度T0℃に変更する。また、ID2では、1時間に1回ランダムなタイミングで設定温度をT0℃に変更する。1時間に1回ランダムなタイミングというのは、例えば9:00から10:00、10:00から11:00のように、1時間ごとに区切られた各区間において、任意のタイミングでT0℃に1回設定することを意味する。このタイミングは疑似乱数によって決定される。なお、強制モードの内容は上記に限定されるものではない。
【0060】
基準温度T0は、各設定温度のサンプルサイズと特徴量計算用閾値に基づき、設定温度指示部115が定めればよい。
【0061】
設定温度指示部115は、強制モードの内容に従い、対象機器300に指示を与える。例えば、毎日9:00から12:00の間に1回、ランダムなタイミングで設定温度をT0℃に変更する場合は、設定温度指示部115がランダムなタイミングで指示を与える。指示を受けた対象機器300は、直ちに設定温度を変更する。なお、設定温度指示部115が、強制モードの内容を対象機器300に伝え、対象機器300がランダムなタイミングで設定温度を変更してもよい。
【0062】
次に、空調制御システムの配置について説明する。
図9は、第1の実施形態に係る空調制御システム構成の他の一例を示す図である。ここではユーザが家の居住者である場合を想定している。ユーザの家400ではHEMS(Home Energy Management System)が利用されているとする。ユーザの家400は、行動取得装置200と、対象機器300と、ホームサーバ002を有する。ホームサーバ002は、外部にあるHEMSデータ分析サーバ001と、ネットワーク500を介して、接続されているとする。行動取得装置200と、対象機器300と、ホームサーバ002は、ユーザの生活する建物に配置されることを想定するが、一部の機器(例えば行動取得装置200)が建物の外側に配置されてもよい。
【0063】
家400のホームサーバ002には、空調制御装置100の一部または全部が格納されているものとする。例えば、ホームサーバ002は計測情報DB101のみを備え、その他はHEMSデータ分析サーバ001に含まれるとしてもよい。ホームサーバ002は、行動取得装置200、対象機器300と無線を介して通信してもよいし、有線によって通信してもよい。
【0064】
このように、対象空間である家400には必要最低限の機器だけを配置し、その他のDBや演算処理部はネットワーク上のリソースを利用することで、可用性、保守性、機密性に優れたシステムにすることができる。
【0065】
なお、第1の実施形態のシステム構成は、
図19のシステム構成例のみに限定されるものではない。例えば、上記構成を、家ではなくオフィスビルなどで実現する場合は、ホームサーバ402はビルサーバに置き換えられることになる。
【0066】
次に、第1の実施形態の動作について具体的に説明する。
図10は、第1の実施形態に係る空調制御処理のフローチャートである。当該処理は、予め設定された時刻や、空調制御装置100の電源起動時などのタイミングで開始されるものとする。
【0067】
計測情報取得部111は、パラメータDB102から学習期間テーブルを取得する(S101)。次に、計測情報取得部111は、学習期間テーブルの各時刻と現在時刻とを比較する(S102)。
【0068】
現在時刻が学習終了時刻以降の場合は、学習期間が終了したため、快適温度設定処理が行われる(S103)。快適温度設定処理が終了後、当該空調制御処理も終了する。
【0069】
現在時刻が学習終了時刻より前でありかつ学習モード変更時刻以降の場合は、設定温度学習処理が行われる(S104)。設定温度学習処理の終了後は、次の動作間隔まで待機となる(S105)。
【0070】
S103にもS104にも分岐しない場合、つまり、現在時刻が学習モード変更時刻よりも前の場合は、何も処理は行われずに次の動作間隔まで待機となる(S105)。
【0071】
次の動作間隔まで待機した後は(S105)、再度、計測情報取得部111が現在時刻との比較を行う(S102)。以上が空調制御処理のフローとなる。
【0072】
図11は、第1の実施形態に係る設定温度学習処理のフローチャートである。計測情報取得部111は、学習期間テーブルのデータ分析時刻と現在時刻とを比較する(S201)。現在時刻がデータ分析時刻前である場合は、S202からS205の処理は行われずに、S206に移る。現在時刻がデータ分析時刻以降である場合は、計測情報取得部111は、計測情報DB101から、計測情報を取得する(S202)。
【0073】
なお、計測情報取得部111は、計測情報を取得した際に、データ分析時刻を次回のデータ分析時刻に更新する。データ分析時刻が毎日3時のように設定されている場合は、本日の処理は終了したとするフラグを作成し、翌日のデータ分析時刻までS202からS205の処理が繰り返し行われないようにする。
【0074】
継続時間計算部112は、計測情報取得部111からの計測情報を基に、設定温度別に設定温度継続時間を計算する(S203)。
【0075】
特徴量計算部113は、パラメータDB102の特徴量計算用閾値を参照し、サンプルサイズが当該閾値以上である設定温度に対し、特徴量を算出する(S204)。
【0076】
快適温度判定部114は、算出された特徴量と、パラメータDB102の識別境界テーブルに基づき、快適温度を判定し、設定温度テーブルを算出する(S205)。
【0077】
設定温度DB103は、快適温度判定部114が算出した設定温度テーブルを格納する(S206)。
【0078】
設定温度指示部115は、設定温度DB103の設定温度テーブルから、快適温度判定が行われていない温度があるか確認する(S206)。このとき、設定温度指示部115は、快適温度判定部114から直接、設定温度の情報を受け取ってもよい。ない場合は(S207のNO)、強制的にサンプルを収集する必要はないので、処理を終了する。ある場合は(S207のYES)、パラメータDB102の強制モードテーブルを取得し、利用フラグが1である強制モードの内容に従い、設定温度の変更を対象機器300に指示する(S208)。
【0079】
対象機器300は、指示された設定温度に設定を変更する(S209)。以上が、設定温度学習処理のフローとなる。
【0080】
図12は、第1の実施形態に係る快適温度設定処理のフローチャートである。設定温度指示部115は、設定温度学習処理で既に生成された設定温度テーブルを設定温度DB103から取得し、設定温度テーブルの利用フラグに基づき、快適な設定温度の限界値を対象機器300に指示する(S301)。
【0081】
対象機器300は、指示された設定温度に設定を変更する(S302)。以上が、快適温度設定処理のフローとなる。
【0082】
以上のように、第1の実施形態によれば、ユーザが快適と感じる設定温度を学習し、学習した許容可能な設定温度の限界値によって制御を行うことができ、快適性を確保しつつ、最大限の省エネ効果を得ることができる。
【0083】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、学習モード変更時刻以降から学習終了時刻までにおける設定温度学習処理において、空調対象の空間に存在するユーザの行動を考慮して、設定温度の変更を指示する。そのため、より適したタイミングで対象機器300の設定温度を変更することができる。
【0084】
図13は、第2の実施形態に係る空調制御システムの概略構成を示すブロック図である。第1の実施形態と同一の部分および処理については、説明を省略する。計測情報取得部111は、取得した計測情報を設定温度指示部115に送る。設定温度指示部115は、計測情報に基づき、ユーザの行動に合わせて設定温度の変更を指示することが可能となる。
【0085】
図14は、第2の実施形態で用いる強制モードテーブルと、強制モード用パラメータテーブルの一例を示した図である。
図14(A)が強制モードテーブル、
図14(B)が強制モード用パラメータテーブルである。第2の実施形態で用いる強制モードテーブルには、第1の実施形態での強制モードテーブルと異なり、強制モードの内容にパラメータが含まれる。強制モード用パラメータテーブルは、強制モードテーブルの強制モードの内容に含まれるパラメータの値を示す。
【0086】
第2の実施形態で用いる強制モードテーブルは、ユーザの不在の間に設定温度の変更を行わせるものである。当該強制モードテーブルのID1の内容は、ユーザの不在状況がX秒継続した場合にサンプルサイズが不足している温度T0℃を設定するというものである。温度T0は、第1の実施形態と同様に求める。
【0087】
強制モード用パラメータテーブルでは、X=900と設定されている。ゆえに、計測情報取得部111からユーザが不在である情報が900秒以上続いた場合に、設定温度指示部115は対象機器300にT0℃を設定するよう指示する。
【0088】
なお、T0の決定方法として、設定温度テーブルの利用フラグが立っている温度−1℃のサンプルサイズを確認し、サンプルサイズが不足していれば当該温度をT0にしてもよい。これにより、ユーザが快適な温度に近い温度のサンプルを優先的に充実させることができる。また、サンプルを取得すべき設定温度の範囲も事前に定めておくものとする。このことは、第1の実施形態でも同様である。
【0089】
強制モードテーブルのID2では、ユーザの不在状況がX秒継続した場合だけでなく、温度T0℃に対して在がY秒継続した場合にも、T0℃が設定される。強制モード用パラメータテーブルでは、Y=7200と設定されている。よって、強制モードテーブルのID2が利用される場合は、ユーザが対象空間に存在している状態が7200秒以上続いたときは、設定温度指示部115は対象機器300にT0℃を設定するよう指示する。
【0090】
なお、強制モードでの条件は、どのようなものでもよく、この実施例に限定されるものではない。
【0091】
次に、第2の実施形態における処理のフローを説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態とは、設定温度学習処理のフローだけが異なる。
図15は、第2の実施形態に係る設定温度学習処理のフローチャートである。当該フローは、快適温度判定を行っていない温度がある場合(S207のYES)に、設定温度指示部115が設定温度変更指示する前に(S208)、新たな処理が行われる。
【0092】
快適温度判定を行っていない温度がある場合(S207のYES)、設定温度指示部115は、計測情報111を介して、計測情報を取得する(S401)。計測情報を取得するために、設定温度指示部115は計測情報111に対し、計測情報を送るよう要求してもよい。または、計測情報111は予め計測情報を設定温度指示部115に送ってもよい。
【0093】
設定温度指示部115は、パラメータDB102の強制モードテーブルと強制モード用パラメータテーブルに基づき、強制モードの内容を確認し、取得した計測情報が強制モードの内容に含まれる条件を満たすかを確認する(S402)。条件を満たさない場合は、強制変更は行われないので、処理は終了する。条件を満たす場合は、設定温度の変更を指示し(S208)、第1の実施形態と同様に処理される。以上が、設定温度学習処理のフローとなる。
【0094】
以上のように、第2の実施形態によれば、ユーザの行動に応じて、設定温度の強制変更を行うか否かを決定することができる。ゆえに第1の実施形態よりも、より適したタイミングで設定温度を変更することができ、ユーザの不満を抑えることができる。
【0095】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態では、予め定められた学習モード変更時刻に、快適温度判定ができない温度がある場合、学習モードを強制モードに変更した。この方法は、学習終了時刻までには必要なサンプルサイズを得られるものの、強制的に設定温度を変更するためユーザの不満を高める恐れがある。ゆえに、第3の実施形態では、現在までに得られたサンプルサイズに基づき、学習終了時刻までに得られるサンプルサイズを予測する。そして、この予測結果に基づき、設定温度学習処理を開始するタイミングを決定する。そのため、学習モードをできるだけ強制モードに変更せずに、ユーザの不満を抑えることができる。
【0096】
図16は、第3の実施形態に係る空調制御システムの概略構成を示すブロック図である。第3の実施形態に係る空調制御システム100は、新たにサンプルサイズ予測部116を備える。
図16で示す第3の実施形態は、第2の実施形態に入出力装置600を備えた形態であるが、第1の実施形態にサンプルサイズ予測部116を備えた形態でもよい。第1の実施形態および第2の実施形態と同一の部分および処理については、説明を省略する。
【0097】
サンプルサイズ予測部116は、学習モード変更時刻までの設定温度別の設定温度継続時間に基づき、学習終了時刻までのサンプルサイズを予測する。第1および第2の実施形態では、継続時間計算部112が算出した設定温度ごとの設定温度継続時間は、特徴量計算部113に送られるが、第3の実施形態では、特徴量計算部113とともに、サンプルサイズ予測部116にも送られる。
【0098】
図17は、サンプルサイズの予測方法の一例を示す図である。
図17(A)は各設定温度に対する、学習開始時刻から現在までのサンプルサイズ(現在のサンプルサイズ)と1日当たりのサンプルサイズを示す。サンプルサイズ予測部116は、収集されたサンプルサイズを平均して、1日当たりに収集可能なサンプルサイズを求める。
図17(A)の例では、15日が経過したと想定し、現在のサンプルサイズを日数の15で除算している。
図17(B)は、設定温度別の現在のサンプルサイズと学習終了時刻での予測サンプルサイズを示す。サンプルサイズ予測部116は、1日当たりのサンプルサイズと学習終了時刻までの残りの日数とを積算して、現在のサンプルサイズに加算することで、学習終了時刻のサンプルサイズを予測する。
図17(B)の例では、残り日数が15日と想定し、1日当たりのサンプルサイズを15で積算し、現在のサンプルサイズと和算して算出している。
【0099】
図18は、サンプルサイズの予測方法の他の一例を示す図である。
図18の例では、サンプルサイズ予測部116は、時系列解析手法を利用して、学習終了時刻までに収集可能なサンプルサイズを予測する。
【0100】
図18(A)の予測モデルテーブルには、利用可能な時系列解析の手法と、実際に利用する手法を表す利用フラグが示されている。利用フラグが1の予測モデルが利用される。利用する手法は1つでも複数でもよい。予測モデルテーブルは、パラメータDB102に格納されているものとする。
【0101】
時系列解析の手法としては、AR(Autoregressive)モデル、MA(Moving average)モデル、ARMA(Autoregressive moving average)モデルなど種々の手法が利用可能である。また、特定の手法に限定されるものではない。
【0102】
図18(B)と
図18(C)は、1日当たりのサンプルサイズの変動図である。実線は実測されたサンプルサイズを示す。鎖線は、時系列解析の手法によって算出された今後の予測値である。
【0103】
図18(B)は、「過去の平均利用」モデルを利用した場合の図である。「過去の実績利用」とは、
図17同様、1日あたりのサンプルサイズを日数平均で算出する手法である。この場合、1日当たりのサンプルサイズに変動がないため、予測の鎖線は傾き0の直線で表されている。
図18(C)は、ARモデルなどの手法により、今までの実測値から、今後の予測値を算出したグラフである。予測値は、実測値同様、曲線となる。
【0104】
サンプルサイズ予測部116は、予測サンプルサイズに基づき、パラメータDB102に格納されている強制モードテーブルを更新する。具体的には、学習終了時刻での予測サンプルサイズに従い、使用する強制モードの利用フラグを変更する。
図19は、サンプルサイズと強制モードの対応テーブルの一例を示す図である。当該対応テーブルには、学習終了時刻での予測サンプルサイズと、使用する強制モードIDが含まれる。
【0105】
図19の対応テーブルは、
図3(D)で示した第1の実施形態での強制モードテーブルもしくは、
図14で示した第2の実施形態の強制モードテーブルと対応する。使用する強制モードIDは、強制モードテーブルのIDを示す。サンプルサイズ予測部116は、各設定温度の予測サンプルサイズと、当該対応テーブルに基づき、使用する強制モードを決定する。
【0106】
例えば、
図17で示したように、設定温度19℃の予測サンプルサイズが8の場合、予測サンプルサイズが10未満なため、サンプルサイズ予測部116は、ID2の強制モードを利用することになる。ゆえに、サンプルサイズ予測部116は、強制モードテーブルのID2の利用フラグを1に変更し、ID1の利用フラグを0にする。さらに、サンプルサイズ予測部116は、19℃をT0℃にする。
【0107】
また、この例では、予測サンプルサイズが15以上の場合は、強制モードを使用しない。予測サンプルサイズが10未満の設定温度が複数ある場合、予測サンプルサイズが大きい設定温度から順にT0℃として強制モードを実行する。
【0108】
次に、第3の実施形態における処理のフローを説明する。第3の実施形態では、新たにサンプルサイズ予測部116における学習モード変更処理が追加される。
図20は、第3の実施形態に係る空調制御処理のフローチャートである。当該フローは、第1および第2の実施形態における空調制御処理のフローに対し、現在時刻が学習終了時刻より前、かつ学習モード変更時刻以降の場合に、新たな分岐と処理が追加されている。
【0109】
現在時刻が学習終了時刻より前でかつ学習モード変更時刻以降の場合は、計測情報取得部111は、学習モードが強制モードに変更済みか否かを確認する(S501)。確認は、後述する学習モード変更処理にて、確認用の値を強制モードテーブル等に付与すればよい。学習モードが強制モードに変更済みの場合は、設定温度学習処理(S104)を行う。変更していない場合は、学習モード変更処理を行う(S502)。学習モード変更処理後は、第1の実施形態同様に、次の動作間隔まで待機となる(S104)。
【0110】
図21は、第3の実施形態に係る学習モード変更処理のフローチャートである。計測情報取得部111は、計測情報DB101から計測情報を取得する(S601)。
【0111】
継続時間計算部112は、計測情報取得部111からの計測情報に基づき、設定温度別に設定温度継続時間を計算する(S602)。
【0112】
サンプルサイズ予測部116は、パラメータDB102の予測モデルテーブルを参照し、定められた予測モデルを用い、各設定温度の設定温度継続時間に基づき、学習終了時刻のサンプルサイズを予測する(S603)。
【0113】
サンプルサイズ予測部116は、パラメータDB102に格納されるサンプルサイズと強制モードの対応テーブルを参照し、学習モードを強制モードに変更するかを決定する(S604)。なお、強制モードに変更する場合は、利用する強制モードテーブルの利用フラグを変更する。この際、強制モードに変更したことを確認するためのフラグを強制モードテーブル等に付与してもよい。以上が、学習モード変更処理のフローとなる。
【0114】
以上のように、第3の実施形態によれば、快適温度判定に必要なサンプルサイズを予測することにより、サンプルサイズが不足しないと予想した場合は、強制モードへの変更を行わない。ゆえに、他の実施形態よりも、ユーザの不満を抑えることができる。
【0115】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、設定温度の変更を行う前に、ユーザに制御内容を通知し、ユーザから設定温度変更の許可を得るものである。第1から第3までの実施形態は、ユーザの許可なしに、設定温度変更を行うものである。そのため、ユーザの希望に反する設定温度変更がされた場合、ユーザの不満が大きくなる。そこで、ユーザに制御内容を予め通知し、ユーザの許可された範囲内で制御を行う。
【0116】
図22は、第4の実施形態に係る空調制御システムの概略構成を示すブロック図である。第4の実施形態は、新たに入出力装置600を備える。
図22で示す第4の実施形態は、第3の実施形態に入出力装置600を備えた図であるが、第1または第2の実施形態に入出力装置600を備えた形態でもよい。第1から第3の実施形態と同一の部分および処理については、説明を省略する。
【0117】
入出力装置600は、設定温度指示部115の指示を受けて、設定温度に関する情報をユーザに提示し、ユーザからの入力を受け付ける。設定温度に関する情報は、設定温度DB103の設定温度テーブル、設定温度変更の同意を求める表示、あるいは設定温度の快適性に関する質問や選択肢などが考えられる。ユーザは提示された情報に基づき、好みの設定温度などの情報を入出力装置600に入力する。
【0118】
入出力装置600が受け付けた情報は、設定温度指示部115に送られる。設定温度指示部115は、取得した情報に基づき、設定温度DB103の設定温度テーブルの利用フラグを更新する。なお、入出力装置600が直接、設定温度DB103を更新してもよい。
【0119】
図23は、ユーザに提示する画像の一例を示す図である。この画像のフォーマットは、設定温度DB103が保持していても、入出力装置600が保持していていもよい。快適と判断した温度には「快適」の文字を、不快と判断した温度には「不快」の文字を、顔の表情を表すアイコンと共に、表示している。そして、温度の隣に設けられているチェックボックスにて、ユーザからの入力を受け付ける。ここでは温度を一意に定めるチェックボックスとしたが、アップダウンコントロールやラジオボタンなど、入力を受け付けるものであれば何でもよい。
【0120】
図24は、第4の実施形態に係る空調制御システム構成の他の一例を示す図である。
図14で示した第1の実施形態のシステム構成の一例に、入出力装置600が追加されたものである。入出力装置600は、タブレットデバイスの専用アプリケーションやWebアプリケーションとして実現可能である。また、入力手段を備えた専用ディスプレイで利用されるアプリケーションとしても実現できる。なお、第4の実施形態のシステム構成は、
図19のシステム構成例のみに限定されるものではない。
【0121】
次に、第4の実施形態における処理のフローを説明する。第4の実施形態では、新たに入出力装置600における処理が追加されるが、第1から第3の実施形態とは、快適温度設定処理のフローだけが異なる。
図25は、第4の実施形態に係る快適温度設定処理のフローチャートである。第1の実施形態のステップS301の前に、新たな処理(S701からS704)が追加されている。
【0122】
設定温度指示部115は、設定温度DB103の設定温度テーブルを読み込み、情報提示に必要な情報を送るとともに、ユーザに対する情報提示を行うよう入出力装置600に指示する(S701)。
【0123】
入出力装置600は、設定温度指示部115からの情報に基づき、入力画面を提示する(S702)。
【0124】
入出力装置600は、ユーザからの入力を受け付けた後で、入力情報を設定温度指示部115に送る(S703)。
【0125】
設定温度指示部115は、入力情報に基づき、設定温度DB103の設定温度テーブルを更新する(S704)。更新後の処理は、第1から第3の実施形態と同様である。
【0126】
以上のように、第4の実施形態によれば、ユーザが快適温度または許容範囲を選択することで、ユーザの快適な設定温度を学習しつつ、ユーザが許容しない温度に設定変更することを防ぐことができる。ゆえに、他の実施形態よりも、ユーザの不満を抑えることができる。
【0127】
また、上記に説明した実施形態における各処理は、ソフトウェア(プログラム)によって実現することが可能である。よって、上記に説明した実施形態における空調制御装置は、例えば、汎用のコンピュータ装置を基本ハードウェアとして用い、コンピュータ装置に搭載されたプロセッサにプログラムを実行させることにより実現することが可能である。
【0128】
図26は、本実施形態に係る空調制御装置100を実現したハードウェア構成例を示すブロック図である。空調制御装置100は、プロセッサ701、主記憶装置702、補助記憶装置703、通信装置704、デバイスインタフェース705、入力装置706、出力装置707を備え、これらがバス708を介して接続された、コンピュータ装置として実現できる。
【0129】
プロセッサ701が、補助記憶装置703からプログラムを読み出して、主記憶装置702に展開して、実行することで、計測情報取得部111、継続時間計算部112、特徴量計算部113、快適温度判定部114、設定温度指示部115、サンプルサイズ予測部116の機能を実現することができる。
【0130】
本実施形態の空調制御装置100は、当該空調制御装置100で実行されるプログラムをコンピュータ装置に予めインストールすることで実現してもよいし、プログラムをCD−ROMなどの記憶媒体に記憶して、あるいはネットワークを介して配布して、コンピュータ装置に適宜インストールすることで実現してもよい。
【0131】
ネットワークインタフェース704は、通信ネットワークに接続するためのインタフェースである。行動取得装置200、対象機器300、入出力装置600などとの通信は、このネットワークインタフェース704にて実現してもよい。ここではネットワークインタフェースを1つのみ示しているが、複数のネットワークインタフェースが搭載されていてもよい。
【0132】
デバイスインタフェース705は、外部記憶媒体800などの機器に接続するインタフェースである。外部記憶媒体800は、HDD、CD−R、CD−RW、DVD−RAM、 DVD−R、SAN(Storage area network)等の任意の記録媒体でよい。計測情報DB101、パラメータDB102、設定温度DB103は、外部記憶媒体800としてデバイスインタフェース705に接続されてもよい。
【0133】
主記憶装置702は、プロセッサ701が実行する命令、および各種データ等を一時的に記憶するメモリ装置であり、DRAM等の揮発性メモリでも、MRAM等の不揮発性メモリでもよい。補助記憶装置703は、プログラムやデータ等を永続的に記憶する記憶装置であり、例えば、HDDまたはSSD等がある。計測情報DB101、パラメータDB102、設定温度DB103などが保持するデータは、主記憶装置702、補助記憶装置703または外部記憶媒体に保存される。
【0134】
上記に、本発明の一実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。