特許第6626274号(P6626274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626274
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】ブレース切断装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20191216BHJP
【FI】
   E04G23/08 D
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-123757(P2015-123757)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2017-8542(P2017-8542A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100152261
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】和田 政臣
(72)【発明者】
【氏名】横川 穣
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐助
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 卓行
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−004238(JP,A)
【文献】 特開2012−012885(JP,A)
【文献】 特許第6425226(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレースを把持する把持手段と、前記把持手段に取り付けられ前記ブレースを切断する切断手段と、前記把持手段が前記ブレースを把持したことを検知する検知手段と、前記検知手段からの検知信号により前記切断手段を駆動させる制御手段と、を有するブレース切断装置であって、
前記把持手段は、
前記切断手段を支持する本体と、
前記本体に取り付けられ、前記本体に対して上方に移動して前記ブレースの下端に対する押し付け動作を行う第1アームと、
前記本体に取り付けられ、前記本体に対して下方に移動して前記ブレースの上端に対する押し付け動作を行い、前記第1アームとともに前記ブレースを挟み込む第2アームと、
前記第1アーム、及び/もしくは、前記第2アームに取り付けられ、前記ブレースの前記本体に対する押し付け動作を行うクランプと、を有し、
前記検知手段は、
前記本体に前記ブレースが当接したことを検知する第1リミットスイッチと、
前記第1アームに前記ブレースが当接したことを検知する第2リミットスイッチと、
前記第1アームが前記ブレースに印加する圧力が一定値に到達したことを検知する第1圧力スイッチと、
前記第2アームが前記ブレースに印加する圧力が一定値に到達したことを検知する第2圧力スイッチと、
前記クランプの圧力が一定値に到達したことを検知する第3圧力スイッチと、を有し、
前記制御手段は、
前記第1リミットスイッチからの検知信号により前記第1アームを駆動させ、前記第2リミットスイッチからの検知信号により前記第2アームを駆動させ、前記第2圧力スイッチからの検知信号により前記クランプを駆動させ、前記第1圧力スイッチ、前記第2圧力スイッチ、前記第3圧力スイッチからの検知信号により前記切断手段を駆動させる制御を行うことを特徴とするブレース切断装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1アームを駆動させるアクチュエータの圧力、及び前記第2アームを駆動させるアクチュエータの圧力が、それぞれ一定値となるように各アクチュエータをそれぞれオンオフ制御することを特徴とする請求項1に記載のブレース切断装置。
【請求項3】
前記切断手段は、
セーバーソーと、
前記セーバーソーを前記ブレースに向けて振り下ろす動作を行う回転駆動手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記セーバーソーの負荷電流、または、前記回転駆動手段の負荷電流が一定値以下になるように前記回転駆動手段の回転速度を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のブレース切断装置。
【請求項4】
前記把持手段、及び/若しくは、前記セーバーソーを回転させる回転軸には、加速度計が取り付けられ、
前記制御手段は、前記加速度計が検知する加速度が一定値以下となるように前記回転駆動手段の回転速度を制御することを特徴とする請求項3に記載のブレース切断装置。
【請求項5】
前記セーバーソーが前記ブレースを切断後の位置まで振り下ろされたことを検知する第3リミットスイッチを有し、
前記制御手段は、前記第3リミットスイッチからの検知信号により前記セーバーソー及び前記回転駆動手段の駆動を停止させることを特徴とする請求項3または4に記載のブレース切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレース切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高所や人が近づき難い場所等において、切断対象部材を把持し、その状態で当該切断対象部材を切断する切断装置が知られている。特許文献1は、旋回・傾倒・伸縮可能な駆動アームの先端に取り付けられ鉄骨梁のフランジの一方を挟み込む把持手段と、把持手段に取り付けられ当該鉄骨梁を切断するワイヤーソーと、を有する把持切断装置を開示している。特許文献2は、テーブルリフトに搭載され配管を把持する自動クランプ機構と、セーバーソーを摺動駆動させて配管を切断する切断ユニットと、を有する高所既設管切断装置を開示している。特許文献3は、切断対象の管の切断位置よりも一方側となる部分と他方側となる部分をそれぞれ把持し、当該切断位置においてセーバーソーで切断し、切断後も当該2つの部分を把持した状態を維持する管切断装置を開示している。
【0003】
ところで、ブレースで補強された鉄骨の建屋において、機器を搬入するために、または建屋を解体するためにブレースを切断する場合がある。しかし、例えば、当該建屋が原子力発電所等の建屋であり、高放射線量環境下にある場合は作業者が長時間現場で作業することは健康上の問題から困難である。そこで、上記特許文献に係る切断装置によりブレースを切断すれば、切断中に作業者が立ち会う必要がないので、作業者への負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−4238号公報
【特許文献2】特開平9−141521号公報
【特許文献3】特開平9−174327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献では、切断装置が切断対象部材を把持したか否かを作業者が目視で確認する必要があったので、作業負担になっていた。
そこで、本発明は、上記問題点に着目し、ブレースを自動的に切断可能なブレース切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るブレース切断装置は、第1には、ブレースを切断するブレース切断装置であって、前記ブレースを把持する把持手段と、前記把持手段に取り付けられ前記ブレースを切断する切断手段と、前記把持手段が前記ブレースを把持したことを検知する検知手段と、前記検知手段からの検知信号により前記切断手段を駆動させる制御手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記構成により、把持手段がブレースを把持したことを検知手段が検知したのちに切断手段がブレースを切断するので、これらの切断装置の動作を確認する作業者負担を軽減するブレース切断装置となる。
【0008】
第2は、前記把持手段は、前記切断手段を支持する本体と、前記本体に取り付けられ、前記本体に対して上方に移動して前記ブレースの下端に対する押し付け動作を行う第1アームと、前記本体に取り付けられ、前記本体に対して下方に移動して前記ブレースの上端に対する押し付け動作を行い、前記第1アームとともに前記ブレースを挟み込む第2アームと、前記第1アーム、及び/もしくは、前記第2アームに取り付けられ、前記ブレースの前記本体に対する押し付け動作を行うクランプと、を有し、前記検知手段は、前記本体に前記ブレースが当接したことを検知する第1リミットスイッチと、前記第1アームに前記ブレースが当接したことを検知する第2リミットスイッチと、前記第1アームが前記ブレースに印加する圧力が一定値に到達したことを検知する第1圧力スイッチと、前記第2アームが前記ブレースに印加する圧力が一定値に到達したことを検知する第2圧力スイッチと、前記クランプの圧力が一定値に到達したことを検知する第3圧力スイッチと、を有し、前記制御手段は、前記第1リミットスイッチからの検知信号により前記第1アームを駆動させ、前記第2リミットスイッチからの検知信号により前記第2アームを駆動させ、前記第2圧力スイッチからの検知信号により前記クランプを駆動させ、前記第1圧力スイッチ、前記第2圧力スイッチ、前記第3圧力スイッチからの検知信号により前記切断手段を駆動させる制御を行うことを特徴とする。
【0009】
上記構成により、ブレースを互いに直交する2方向から独立して面接触により挟み込むことができるとともに、把持から切断開始の動作を自動で行うことができる。したがって、作業者負担を軽減するとともに、ブレースを確実に把持して切断可能なブレース切断装置となる。
【0010】
第3には、前記制御手段は、前記第1アームを駆動させるアクチュエータの圧力、及び前記第2アームを駆動させるアクチュエータの圧力が、それぞれ一定値となるように各アクチュエータをそれぞれオンオフ制御することを特徴とする。
上記構成により、何らかの原因でブレースの挟み込み状態が変化しても、ブレースを一定の圧力で確実に把持して、把持の安定性を高めることができる。
【0011】
第4には、前記切断手段は、セーバーソーと、前記セーバーソーを前記ブレースに向けて振り下ろす動作を行う回転駆動手段と、を有し、前記制御手段は、前記セーバーソーの負荷電流、または、前記回転駆動手段の負荷電流が一定値以下になるように前記回転駆動手段の回転速度を制御することを特徴とする。
上記構成により、セーバーソーへの負荷を軽減してセーバーソーの破損を回避し、作業の中断を回避することができる。
【0012】
第5には、前記把持手段、及び/若しくは、前記セーバーソーを回転させる回転軸には、加速度計が取り付けられ、前記制御手段は、前記加速度計が検知する加速度が一定値以下となるように前記回転駆動手段の回転速度を制御することを特徴とする。
【0013】
上記構成により、切断作業中に装置全体の振動(加速度)が大きい場合は、セーバーソーに対する負荷も大きくなっている。よって、加速度のモニタリングを通じてセーバーソーへの負荷を軽減してセーバーソーの破損を回避し、作業の中断を回避することができる。特に、セーバーソーを回転させる回転軸に加速度計を取り付けることにより、加速度計の検出軸をセーバーソーの往復運動の方向と常時平行にすることができるので、その方向の加速度を常時検出することができ、セーバーソーに対する負荷をより正確に把握することができる。
【0014】
第6には、前記セーバーソーが前記ブレースを切断後の位置まで振り下ろされたことを検知する第3リミットスイッチを有し、前記制御手段は、前記第3リミットスイッチからの検知信号により前記セーバーソー及び前記回転駆動手段の駆動を停止させることを特徴とする。
上記特徴により、ブレースの切断後に自動的にセーバーソー及び回転駆動手段を停止させることができ、作業者負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るブレース切断装置によれば、把持手段がブレースを把持したことを検知手段が検知したのちに切断手段がブレースを切断するので、作業者負担を軽減するブレース切断装置となる。また、ブレースを互いに直交する2方向から独立して面接触により挟み込むことができるとともに、把持から切断開始の動作を自動で行うことができる。したがって、作業者負担を軽減するとともに、ブレースを確実に把持して切断可能なブレース切断装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のブレース切断装置の模式図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3】第1実施形態のブレース切断装置を構成する第1リミットスイッチの模式図(ブレース当接前)である。
図4】第1実施形態のブレース切断装置を構成する第1リミットスイッチの模式図(ブレース当接後)である。
図5】第1実施形態のブレース切断装置を構成するセーバーソーの模式図である。
図6】第1実施形態のブレース切断装置の制御ブロック図である。
図7】第1実施形態のブレース切断装置の動作フロー図である。
図8】第1実施形態のブレース切断装置の動作を示す模式図(アーム導入後)である。
図9】第1実施形態のブレース切断装置の動作を示す模式図(下アーム動作後)である。
図10】第1実施形態のブレース切断装置の動作を示す模式図(上アーム動作後)である。
図11】第1実施形態のブレース切断装置の動作を示す模式図(クランプ動作後)である。
図12】第1実施形態のブレース切断装置の動作を示す模式図(ブレースによる切断)である。
図13】第2実施形態のブレース切断装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0018】
図1に、第1実施形態のブレース切断装置の模式図を示し、図2に、図1のA−A線断面図を示す。本実施形態のブレース切断装置10は、ブレース200を把持する把持手段(本体12、アーム等)と、ブレース200を切断するセーバーソー78(切断手段)と、セーバーソー78をブレース200に向かう方向に回転させる回転駆動部90(駆動手段)と、が一体となったものである。また、本体12には把持手段の油圧動作を行うための油圧ポンプユニット42と、装置全体の各部について電力の供給や制御を行う制御部100(制御手段)が本体12(本体12に取り付けられた取り付け部材14)に取り付けられている。
【0019】
制御部100は、作業者が携帯するリモコン102との間で信号の送受信を行うことができ、これにより油圧ポンプユニット42、セーバーソー78、回転駆動部90のオンオフ制御を行うことができる(図6参照)。なお、制御部100とリモコン102との間においては、常時所定の信号を送受信しており、これが途絶えた場合、制御部100は、セーバーソー78及び回転駆動部90を停止する制御を行う。
【0020】
一方、本体12の背面には、フランジ型の接続部18が設けられており、この接続部18に作業車輌(不図示)の作業用アーム(不図示)の(フランジ型の)先端部208が接続する。前述の先端部208は、円筒形の形状を有するとともに、その円筒形の軸方向を回転軸として回転可能なものである。これによりブレース切断装置10を回転させることができる。また作業用アームは、先端部208を所定の高さに移動させ、またその回転軸を傾斜させることもできる。これにより切断対象のブレース200の傾斜及び高さに合わせてブレース切断装置10を移動・回転させることができる。
【0021】
一方、建屋を補強するブレース200は、H型鋼により形成され、一対のフランジ202,204と、フランジ202,204を連結するウェブ206により構成される。また、ブレース200は、建屋に対して傾斜して取り付けられる場合がある。この場合、ウェブ206が、ブレース200の長手方向に傾斜することはあるが、フランジ202,204から挟まれる方向においてほぼ水平を維持している。本実施形態では、このような配置のブレース200を適用対象としている。
【0022】
把持手段は、上下方向に伸びる本体12と、本体12の正面(把持対象物であるブレース200に対向する面)に取り付けられたアーム(第1アーム24、第2アーム30)を有する。第1アーム24及び第2アーム30は、水平方向に長手方向を有する部材であり、ブレース200を上下方向から(フランジ202,204の幅方向から)挟みこむものである。第1アーム24は、本体12下部に取り付けられている。第1アーム24は、本体12に対して相対的に上昇する方向にスライドすることによりブレース200(フランジ202,204)の下端に当接する。第2アーム30は本体12上部に取り付けられている。第2アーム30は本体12に対して相対的に下降する方向にスライドすることによりブレース200(フランジ202,204)の上端に当接する。なお上下方向とは、鉛直方向のみならずブレース200の傾斜角度に直交する方向をも含むものとする。
【0023】
本体12の正面には、上下方向に延びるガイドレール22が取り付けられ、第1アーム24及び第2アーム30の長手方向の一端がガイドレール22に取り付けられ、ガイドレール22に沿って上下方向にスライドすることができる。また、第1アーム24の先端の上面、第2アーム30の先端の下面は、それぞれ傾斜面24a,30aとなっており、これにより、第1アーム24と第2アーム30の鉛直方向の間隔は、傾斜面24a,30aにおいてアームの先端に向かうにつれて広くなっている。
【0024】
第1アーム24は、本体12下部に取り付けられた第1アクチュエータ26により下方から支持され、第2アーム30は、本体12上部に取り付けられた第2アクチュエータ32により上方から支持されている。第1アクチュエータ26及び第2アクチュエータ32は、それぞれ付属する第1ピストン28、第2ピストン34をガイドレール22の長手方向に沿った方向において油圧により繰り出し、または、引き戻すものである。第1アクチュータ26はシリンダ構造を有し、第1ピストン28に接続されるとともにシリンダ内部に入り込む第1ロッド28aと、シリンダ内部の第1ロッド28a先端に配置されシリンダ内部を仕切る第1ヘッド28bと、により構成されている。第1アクチュエータ26では、第1ヘッド28bが油圧によりシリンダ内部を移動することにより第1ロッド28a及び第1ピストン28がシリンダから繰り出され、または引き戻される。なお、第2アクチュエータ32(第2ピストン34、第2ロッド34a、第2ヘッド34b)、第3アクチュエータ(第3ピストン38、第3ロッド38a、第3ヘッド38b)は、第1アクチュエータ26と同様の構成であり、同様の動作を行う。
【0025】
第1アーム24の上面、及び/若しくは、第2アーム30の下面には、クランプとなる第3アクチュータ36が取り付けられている。第3アクチュエータ36は、付属する第3ピストン38を本体12(当て板16)に向かう方向に繰り出し、または引き戻すものである。また、第3アクチュエータ36は、その長手方向(繰り出し方向)の長さがブレース200のフランジ202,204を接続するウェブ206の幅よりも短くなるように設計される。また、第1アーム24と第2アーム30の間にブレース200を挿入する場合において、第3アクチュエータ36とブレース200との接触を回避するため、第3アクチュエータ36には、ブレース200の挿入側に保護板40が設けられている。
【0026】
本実施形態のブレース切断装置10では、第1アーム24及び第2アーム30がフランジ202,204の端面に当接し、第3アクチュエータ36の第3ピストン38が本体12側に配置されるフランジ202の内壁に当接し、そのフランジ202の外壁が本体12の正面に取り付けられた当て板16に当接する。第3アクチュエータ36を第1アーム24及び第2アーム30に取り付ける場合、2つの第3アクチュエータ36は同一規格であって、ブレース200の挟み込み時にウェブ206を中心として対称となるように配置することが望ましい。これにより、フランジ202に対して均一な力を印加することができる。
【0027】
油圧ポンプユニット42は、第1アクチュータ26、第2アクチュエータ32、第3アクチュエータ36に対して油圧を供給して、第1ピストン28、第2ピストン34、第3ピストン38の繰り出し動作を行う油圧回路を集合させたものである。第1アクチュエータ26に接続する油圧回路は、第1ポンプ44、第1電磁弁46、第1圧力スイッチ48からなり、第2アクチュエータ32に接続する油圧回路は、第2ポンプ50、第2電磁弁52、第2圧力スイッチ54からなり、第3アクチュエータ36に接続する油圧回路は、第3ポンプ56、第3電磁弁58、第3圧力スイッチ60からなる。また、使用後の作動油はタンク62に蓄えられる。第1ポンプ44乃至第3ポンプ56は、制御部100からの駆動信号により油圧の出力がオンオフ制御される。
【0028】
第1圧力スイッチ48は、第1アクチュエータ26(シリンダ)内の第1ヘッド28b側の内部空間(第1ピストン28を繰り出す油圧が供給される内部空間)の圧力(第1アクチュエータ26内の第1ヘッド28b側の内部空間に通じる油圧回路内の圧力)が一定値(例えば10Mpa)となると制御部100に検知信号を出力し、一定値以下になった場合に検知信号の出力を停止するものである。第2圧力スイッチ54及び第3圧力スイッチ60も第1圧力スイッチ48と同様の動作を行う。
【0029】
第1電磁弁46は、通常第1ポンプ44の油圧を第1アクチュエータ26(シリンダ)内の第1ヘッド28b側の内部空間に油圧を供給する配置になっているが、制御部100からの制御信号により回路を切替え、第1ポンプ44の油圧を第1アクチュエータ26(シリンダ)内の第1ロッド28a側の内部空間(第1ピストン28を引き戻す油圧が供給される内部空間)に油圧を供給する配置となる。このため、通常は第1ポンプ44を駆動させるとその油圧が第1ヘッド28b側の内部空間に供給され、第1ピストン28が繰り出されるが、制御部100からの制御信号が第1電磁弁46に入力されると、第1ポンプ44の油圧が第1ロッド28a側の内部空間に供給されて第1ピストン28が引き戻され、第1ヘッド28b側の内部空間にある作動油がタンク62に戻されることになる。第2電磁弁52、第3電磁弁58も第1電磁弁46と同様の動作を行う。よって、第1アクチュエータ26乃至第3アクチュエータ36は、制御部100のオンオフ制御により第1ピストン28、第2ピストン34、第3ピストン38を繰り出す動作、及び引き戻す動作を行うことができる。
【0030】
図3図4に、第1実施形態のブレース切断装置を構成する第1リミットスイッチの模式図(ブレース当接前、ブレース当接後)を示す。第1リミットスイッチ64は、当て板16にブレース200(フランジ202)が当接したことを検知するものであり、本体12の両側面(片側の側面のみでもよい)に配置され、ブレース200に当接する棒状の当接部66と、当接部66の両端をピン結合によりそれぞれ支持するとともに回転軸68aを介して本体12の側面に支持される一対の付勢アーム68と、本体12の側面に取り付けられ付勢アーム68の回転を一定の角度位置で停止させるストッパ70と、当接部66に当接する検知アーム72aを備え本体12の側面に取り付けられた検知部72と、を有する(図3図4)。付勢アーム68の回転軸68a及び検知アーム72aの回転軸には、ねじりスプリング(不図示)がそれぞれ取り付けられ、図3図4に示すように、付勢アーム68及び検知アーム72aには、当て板16から第1アーム24及び第2アーム30の先端方向にはみ出る方向に回転する付勢力が印加されている。
【0031】
図3に示すように、当て板16にブレース200を当接させる前は、付勢アーム68は付勢力に従い回転するが、付勢アーム68の長手方向が当て板16の法線に対して一定の角度をなす角度位置となったころでストッパ70に当接して停止する。このとき、当接部66は当て板16の同一平面から第1アーム24及び第2アーム30の先端方向にはみ出た形となり、検知アーム72aも当接部66に当接する位置まで回転して停止する。
【0032】
一方、図4に示すように、当て板16にブレース200が当接すると、当接部66は、ブレース200に当接する面が当て板16と同一平面となる位置まで押し戻され、付勢アーム68及び検知アーム72aは付勢方向とは反対方向に回転する。そして、検知部72は、検知アーム72aが図4に示す角度になったときに検知信号を制御部100に出力する。第2リミットスイッチ74は、第1リミットスイッチ64と同様の構成を有し同様の動作をする。すなわち、第1アーム24の両側面(片側の側面でもよい)に取り付けられ、第1アーム24がブレース200に当接する前は第2リミットスイッチ74の当接部74aが第1アーム24の上面よりも高い位置に配置されるが、ブレース200の当接後は当接部74aのブレース200の当接面が第1アーム24の上面と同一平面を形成する。
【0033】
図1に示すように、第2アーム30(第1アーム24や本体12でもよい)には、カメラ76が取り付けられている。カメラ76は、撮影した画像データを作業者が視認するモニター(不図示)に出力できる。これにより作業者は作業車輌の作業用アームとブレース200の位置関係のみならず、第1アーム24、第2アーム30、セーバーソー78とブレース200の位置関係を遠方から確認することができる。
【0034】
図5に、第1実施形態のブレース切断装置を構成するセーバーソーの模式図を示す。セーバーソー78は、ブレース200の断面方向の寸法よりも長い鋸刃部80と、鋸刃部80を支持する支持部82と、鋸刃部80及び支持部82からなる一体物を鋸刃部80の長手方向に沿って一定の周期で往復運動させる往復駆動部84と、往復駆動部84内の負荷電流を測定する第1電流計86(図6)を有する。また往復駆動部84は、本体12の側面に取り付けた回転軸94を介して本体12及び回転駆動部90に支持され、回転軸94の軸方向と鋸刃部80の長手方向はほぼ直交する配置となっている。また、回転軸94の軸方向は第1アーム24及び第2アーム30が挟んだブレース200の長手方向と平行となる。よって回転軸94の回転により、鋸刃部80をブレース200に向けて振り下ろす動作が可能となる。第1電流計86は制御部100に負荷電流の情報を出力することができる。
【0035】
図1に示すように、回転駆動部90は、回転軸94及び回転軸94に支持されたセーバーソー78を回転軸94の軸方向に一定の回転速度で回転させるものである(図12参照)。また回転駆動部90には、回転駆動部90内の負荷電流を測定する第2電流計92(図6)が取り付けられており、第2電流計92は制御部100に負荷電流の情報を出力することができる。回転駆動部90は、一定の回転速度、すなわち一定の圧力で鋸刃部80をブレース200に押し付けることができ、この状態で往復駆動部84が駆動することにより、鋸刃部80はブレース200を切断することができる。このとき、第1電流計86が測定する負荷電流の大きさ、及び/もしくは、第2電流計92が測定する負荷電流の大きさによりセーバーソー78(鋸刃部80、往復駆動部84)に対する負荷を評価することができる。なお、図では、回転駆動部90は取り付け部材14に接続されているが、セーバーソー78の回転によるセーバーソー78の通過領域(軌跡)に干渉しない限り、本体12等他の場所に接続させてもよい。
【0036】
本体12(把持手段の他の部分でもよい)には、加速度計96(図5)が取り付けられている。加速度計96は、例えば検出軸を上下方向(ガイドレール22の長手方向に平行な方向)にし、セーバーソー78の動作により伝達する加速度(振動)の大きさを検知して加速度の情報を制御部100に出力するものである。この加速度(振動)の大きさにより鋸刃部80(セーバーソー78)に対する負荷の大きさを評価することができる。
【0037】
また、加速度計96は、前述の回転軸94に取り付けその検出軸を鋸刃部80の長手方向(往復駆動部84の駆動方向)に向けるようにしてもよい。これにより、加速度計96の検出軸をセーバーソー78の往復運動の方向と常時平行にすることができるので、その方向の加速度を常時検出することができ、セーバーソー78に対する負荷をより正確に把握することができる。
【0038】
図1等に示すように、第3リミットスイッチ98は、ブレース200の切断が終了したときの回転位置にセーバーソー78が到達したときに、当該セーバーソー78に当接する位置に配置されている(図12)。第3リミットスイッチ98は、例えば先端がプッシュボタンになった構造を有し、このプッシュボタンが押されることにより検知信号を制御部100に出力することができる。第3リミットスイッチ98は、セーバーソー78の回転による軌跡から離間した位置に配置され、セーバーソー78の回転により、例えば往復駆動部84に設けられた凸部88に当接する。また、図では、第3リミットスイッチ98は、回転駆動部90に支持されているが、セーバーソー78の回転による軌跡に干渉しない限り、本体12等他の場所に支持されるようにしてもよい。
【0039】
図6に、第1実施形態のブレース切断装置の制御ブロック図を示す。制御部100は、ブレース切断装置10全体の制御を行うものであり、前述のように、リモコン102との間で信号の送受信を行うことができる。制御部100には、第1リミットスイッチ64、第2リミットスイッチ74、第3リミットスイッチ98、第1圧力スイッチ48、第2圧力スイッチ54、第3圧力スイッチ60から検知信号がそれぞれ入力され、第1電流計86、第2電流計92からそれぞれ負荷電流の情報が入力され、加速度計96から加速度の情報が入力される。また、制御部100は、第1ポンプ44、第2ポンプ50、第3ポンプ56に駆動信号を出力し、第1電磁弁46、第2電磁弁52、第3電磁弁58に制御信号を出力し、セーバーソー78(往復駆動部84)に駆動信号を出力する。さらに、制御部100は、回転駆動部90に駆動信号及び回転速度の情報(高速、低速)を出力する。
【0040】
制御部100は、付属の記憶領域に第1電流計86用の閾値の情報、第2電流計92用の閾値の情報、加速度計96用の閾値の情報、回転駆動部90に出力する回転速度の情報(高速、低速)を格納している。各閾値の情報は、例えば、その値を超えるとセーバーソー78(鋸刃部80、若しくは往復駆動部84)が破損する虞がある臨界値となっている。また、回転速度の情報(高速)は、後述の角度位置(B)、(F)(図12)のように切断箇所が少なくセーバーソー78に対する負荷が小さいに場合に常時設定できる回転速度であり、回転速度の情報(低速)は、後述の角度位置(D)、(E)(図12)のように切断箇所が多くセーバーソー78に対する負荷が大きい場合でも常時設定できる回転速度である。
【0041】
図7(動作フロー図)、図2図8図12(動作配置図)を用いて、第1実施形態のブレース切断装置10の動作について説明する。まず、図2に示すように、ブレース200が第1アーム24と第2アーム30の間に来るように作業者が作業用アーム(先端部208)を操作する。その際、モニターに映し出されるカメラ76からの画像を確認しつつ行う。ここで、第1ピストン28、第2ピストン34、第3ピストン38は引き戻されている。また、セーバーソー78は、第1アーム24及び第2アーム30によりブレース200を把持する段階では、ブレース200に干渉しない角度位置にあるものとする(図12の角度位置(A))。本実施形態では、第1アーム24及び第2アーム30に傾斜面24a,30aが設けられているため、第1アーム24及第2アーム30の間にブレース200を導入する作業を容易に行なうことができる。
【0042】
図8に示すように、ブレース200を第1アーム24と第2アーム30との間に導入し、ブレース200のフランジ202を当て板16に当接させる。これにより第1リミットスイッチ64の当接部66(図2)が押し戻され、第1リミットスイッチ64(図2)がオンとなる(図7、ステップ1)。第1リミットスイッチ64からの検知信号により制御部100は第1ポンプ44(図1図6)に駆動信号を出力する(ステップ2)。これにより、第1アーム24は上昇して、図9に示すように、フランジ202,204の下端に当接する。このとき、第1アーム24の上面に取り付けられた第3アクチュエータ36は、フランジ202の内側の下部、フランジ204の内側の下部、ウェブ206の下面により囲まれた空間内に配置される。
【0043】
その後、第1ポンプ44が油圧を供給しつづけることにより、第1アクチュエータ26が第1アーム24をフランジ202,204の下端に押し付けることになるので、その反力により第1アクチュエータ26内の圧力が上昇する。そして、その圧力が一定値(10Mpa)を超えると、第1圧力スイッチ48(図1図6)が検知信号を出力し、これを受けて制御部100は第1ポンプ44への駆動信号を停止する(ステップ2)。これにより、第1アクチュエータ26は、一定の圧力(10Mpa)で第1アーム24をフランジ202,204の下端に押し付けることになる。
【0044】
また、第1アーム24をフランジ202,204の下端に押し付けることにより、その反力を利用して接続部18を中心としてブレース切断装置10全体を回転させて、ブレース切断装置10の傾斜角度をブレース200の傾斜角度に一致させることができる。これにより、第1アーム24とフランジ202,204の下端を面接触させ、第2アーム30とフランジ202,204の上端を面接触させることができる。
【0045】
図9に示すように、第1アーム24が上昇してフランジ202,204の下端に当接した段階で、当接部74aが押し戻されて第2リミットスイッチ74(図8)がオンとなり(ステップ3)、制御部100は第2ポンプ50(図1図6)に駆動信号を出力する(ステップ4)。これにより、第2アーム30は下降してフランジ202,204の上端に当接する(図10)。このとき、第2アーム30の下面に取り付けられた第3アクチュエータ36は、フランジ202の内側の上部、フランジ204の内側の上部、ウェブ206の上面により囲まれた空間内に配置される。
【0046】
その後、第2ポンプ50が油圧を供給しつづけることにより、第2アクチュエータ32が第2アーム30をフランジ202,204の上端に押し付けることになるので、その反力により第2アクチュエータ32内の圧力が上昇する。そして、その圧力が一定値(10Mpa)を超えると、第2圧力スイッチ54(図1図6)が検知信号を出力し、これを受けて制御部100は第2ポンプ50への駆動信号を停止する(ステップ4)。これにより、第2アクチュエータ32は、一定の圧力(10Mpa)で第2アーム30をフランジ202,204の上端に押し付けることになる。
【0047】
第2圧力スイッチ54が検知信号を出力すると、制御部100は、第3ポンプ56に駆動信号を出力する(ステップ5)。これにより、第3アクチュエータ36の第3ピストン38が繰り出されて、図11に示すようにフランジ202の内側の主面に当接する。その後、第3ポンプ56が油圧を供給しつづけることにより、第3アクチュエータ36が第3ピストン38をフランジ202の内側の主面に押し付けることになるので、その反力により第3アクチュエータ36内の圧力が上昇する。そして、その圧力が一定値(10Mpa)を超えると、第3圧力スイッチ60が検知信号を出力し、これを受けて制御部100は第3ポンプ56への駆動信号を停止する(ステップ5)。これにより、第3アクチュエータ36は、一定の圧力(10Mpa)で第3ピストン38をフランジ202の内側の主面に押し付けることになる。
【0048】
第3圧力スイッチ60が検知信号を出力した段階で、制御部100には、第1リミットスイッチ64、第2リミットスイッチ74、第1圧力スイッチ48、第2圧力スイッチ54、第3圧力スイッチ60からそれぞれ検知信号が入力された状態であり、制御部100は把持作業が完了したと判断することができる。そこで、制御部100は、セーバーソー78(往復駆動部84)に対して駆動信号を出力し、回転駆動部90に対して駆動信号及び回転速度の情報(高速)を出力する(ステップ6)。これにより、図12に示すように、セーバーソー78は往復運動を繰り返しながら、ブレース200に向けて所定の回転速度で振り下ろされることになる。そして、制御部100は、第1圧力スイッチ48の検知信号、第2圧力スイッチ54の検知信号、セーバーソー78(往復駆動部84)の負荷電流、回転駆動部90の負荷電流、加速度計96が測定する加速度を監視しながらブレース200の切断作業を進行させる(ステップ7)。
【0049】
この段階で、ブレース200は、セーバーソー78から切断に伴う力を受けている。このため、ブレース200が、第1アーム24及び第2アーム30に対して位置ズレをおこし、両者の間に隙間が形成される場合には、第1アクチュエータ26及び第2アクチュエータ32内部の圧力が低下する場合がある。また作動油の漏えい等により、第1アクチュエータ26内、第2アクチュエータ32内の圧力が低下する場合がある。そして、このような圧力の低下により第1圧力スイッチ48、第2圧力スイッチ54の検知信号が途絶えることになる。この状態を放置すると、切断動作中に装置全体がグラつき、セーバーソー78に負荷がかかり破損する虞があるので、圧力を回復させる必要がある。
【0050】
そこで、制御部100は、例えば第1アクチュエータ26の圧力が10Mpa以下になり、第1圧力スイッチ48からの検知信号が途絶えた場合(ステップ8)、第1ポンプ44に駆動信号を出力し(ステップ9)、その後圧力が回復して第1圧力スイッチ48からの検知信号が復活したときに第1ポンプ44への駆動信号を停止する(ステップ10)。同様に、制御部100は、例えば第2アクチュエータ32の圧力が10Mpa以下になり、第2圧力スイッチ54からの検知信号が途絶えた場合(ステップ11)、第2ポンプ50に駆動信号を出力し(ステップ12)、その後圧力が回復して第2圧力スイッチ54からの検知信号が復活したときに第2ポンプ50への駆動信号を停止する(ステップ13)。なお、この圧力を回復させる制御は、セーバーソー78による切断作業の前にも行うことができる(ステップ2、ステップ4)。
【0051】
ところで、回転駆動部90の回転速度に比例してセーバーソー78に対する負荷が増加するので、回転速度をセーバーソー78(鋸刃部80、往復駆動部84)が破損しないように調整する必要がある。しかし、図12に示すように、角度位置(A)では、セーバーソー78はまだブレース200を切断しておらず、角度位置(B)では、切断箇所はフランジ204の1箇所である。また、角度位置(C)では、フランジ204と当て板16側のフランジ202の2箇所であり、角度位置(D)、(E)では、フランジ202、フランジ204、ウェブ206の3箇所である。さらに、角度位置(F)では、フランジ202の1箇所であり、角度位置(G)では、ブレース200の切断が終了している。
【0052】
よって、ブレース200の切断の有無及びブレース200の切断箇所の数に応じてセーバーソー78に対する負荷は変化する。しかし、例えば、セーバーソー78に対する負荷が最も大きくなる角度位置(D)、(E)においてセーバーソー78が破損しない程度の回転速度に固定してしまうと、それ以外の角度位置においては、効率的に切断を進行させることができない。また、前述のように、セーバーソー78に対する負荷は往復駆動部84における負荷電流の大きさ、または回転駆動部90における負荷電流の大きさにより評価することができる。
【0053】
そこで、制御部100は、第1電流計86から入力された負荷電流の情報を予め記憶された第1電流計86用の閾値の情報と比較し(ステップ14)、その値が閾値よりも低い場合はその回転速度を維持する。一方、その値が閾値よりも高い場合には、制御部100は、回転速度の情報(低速)を回転駆動部90に出力し、その値が閾値よりも低くなったところで回転速度の情報(高速)を回転駆動部90に出力する工程を繰り返す制御を行う(ステップ17、ステップ7)。本実施形態では、例えば、角度位置(A)、(B)、(F)、(G)では、セーバーソー78に対する負荷が小さく、負荷電流の大きさが常時閾値よりも小さい状態であるので、ステップ17は実行しないが、角度位置(C)、(D)、(E)ではステップ14、ステップ17を繰り返すことになる。
【0054】
セーバーソー78がブレース200を切断する際に、往復駆動部84はブレース200から切断に伴う反力を受けることになるが、その反力の大きさに従って往復駆動部84において負荷電流が増加することになる。そこで、その負荷電流の大きさが閾値を超えた場合に回転速度を低速に切り替える制御を行っている。これにより、切断が進行するとともに往復駆動部84に対する抵抗が小さくなり、これにより負荷電流を減少させることができる。そして、負荷電流が閾値よりも小さくなったところで再び回転速度を高速に切り替える制御を行っている。
【0055】
一方、横軸を時間とし、縦軸を負荷電流の値としたグラフを考えると、負荷電流を表す曲線は、角度位置(A)、(G)では、セーバーソー78はブレース200からの反力を受けないので、極めて小さな値で推移し、角度位置(B)、(F)では、セーバーソー78がブレース200から受ける反力の大きさに対応した曲線を描くが、角度位置(C)、(D)、(E)では、閾値を中心として極めて狭い幅で振動する曲線を描くことになる。
【0056】
このような回転速度を切り替える制御は、第2電流計92から入力された負荷電流の情報を予め記憶された第2電流計92用の閾値の情報と比較する工程(ステップ15)、加速度計96から入力された加速度の情報を予め記憶された加速度計96用の閾値の情報と比較する工程(ステップ16)においても同様に行われる。本実施形態では、ステップ14、ステップ15、ステップ16のうち少なくともいずれか1つを行えばよく、その組合せは任意である。
【0057】
図12に示すように、セーバーソー78が角度位置(G)に到達すると、ブレース200の切断が終了するとともに凸部88が第3リミットスイッチ98に当接し、第3リミットスイッチ98が検知信号を出力する。そして、制御部100は第3リミットスイッチ98から検知信号を受信するとセーバーソー78及び回転駆動部90に対する駆動信号を停止する。このとき、第3リミットスイッチ98の検知信号を制御部100を介してリモコン102に送信し、作業者に切断作業の終了を知らせるようにしてもよい。
【0058】
そして、カメラ76を通じてブレース200が切断されていることを作業者が確認し、リモコン102の操作により制御部100を介して回転駆動部90(セーバーソー78)を元の角度位置(A)に戻す。さらに、リモコン102の操作により制御部100を介して第1電磁弁46、第2電磁弁52、第3電磁弁58に制御信号を出力させ、ブレース200の把持を解除させる。これによりブレース切断装置10を支持する作業車輌を移動させることができる。
【0059】
本実施形態のブレース切断装置10によれば、把持手段(本体12、第1アーム24、第2アーム30)がブレース200を把持したことを検知手段(第1リミットスイッチ64、第2リミットスイッチ74、第1圧力スイッチ48、第2圧力スイッチ54、第3圧力スイッチ60)が検知したのちに切断手段(セーバーソー78)がブレース200を切断するので、動作を確認する作業者負担を軽減することができる。また、ブレース200を互いに直交する2方向から独立して面接触により挟み込むことができるとともに、把持から切断開始の動作を自動で行うことができる。したがって、作業者負担を軽減するとともに、ブレース200を確実に把持して切断可能なブレース切断装置10となる。
【0060】
図13に、第2実施形態のブレース切断装置の模式図を示す。なお、第2実施形態において、第1実施形態と共通する構成要素は同一の番号を付し、必要な場合を除いてその説明を省略する。
【0061】
第2実施形態のブレース切断装置10Aは、ブレース200を把持する構成及びブレース200を切断する構成は第1実施形態と共通であるが、本体12を支持する構成が相違している。すなわち、本体12の背面には凸部20が取り付けられている。一方、作業用アームの先端部208は、第1実施形態同様に軸方向に回転可能となっているが、さらに掴み部210が設けられた形となっている。この掴み部210が凸部20を挟み込むことにより作業用アームがブレース切断装置10Aを支持することができる。
【0062】
第2実施形態では、ブレース200の把持作業が終了した時点で掴み部210は凸部20を離すことができ、作業車輌が作業現場から退避することができる。またブレース200の切断作業後は、再び作業車輌が作業現場に赴き、掴み部210により凸部20を掴み、リモコン102(図1)の操作によりブレース切断装置10Aの把持を解除することにより、ブレース切断装置10Aを他の場所に移動させることができる。
【0063】
本実施形態のブレース切断装置10Aによれば、ブレース切断装置10Aから離れてブレース切断装置10Aをブレース200に取り付けることができるとともに、ブレース切断装置10Aを作業車輌から分離することができるので、作業者の負担を軽減することができる。
【0064】
いずれの実施形態においてもブレース切断装置10,10Aと作業車輌を組み合わせることによりブレース200の切断を専門的に行うブレース切断車輌とすることができる。また、いずれの実施形態でも切断手段としてセーバーソー78を用いたが、チェンソーのように他の切断手段を適用してもよい。また、第3アクチュエータ36は、第1アーム24及び第2アーム30がブレース200を挟み込んだときにフランジ202とフランジ204の間に配置されるものとして説明した。しかし、その挟み込み時において、その間には配置せず、本体12から遠い側のフランジ204よりも第1アーム24及び第2アーム30の先端側に配置し、当該フランジ204を本体12に押し付けるようにしてもよい。
【0065】
また、本実施形態は、フランジ202,204が左右ではなく上下となるように配置されたブレース200に対しても適用できる。この場合、第1アーム24及び第2アーム30において、第3アクチュエータ36のピストン38と当て板16との距離が、フランジ202,204の幅よりも長くなるようにする。そして、第1アーム24が下側に配置されたフランジ202(またはフランジ204)に当接し、第2アーム30が上側に配置されたフランジ204(またはフランジ202)に当接し、第3ピストン38がウェブ206に当接して本体12側に押し付けるように構成すればよい。さらに、本実施形態では、適用対象をH型鋼で形成されたブレースとしていたが、それ以外にも例えば角柱形状の部材にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
ブレースを自動的に切断可能なブレース切断装置として利用できる。
【符号の説明】
【0067】
10………ブレース切断装置、12………本体、14………取り付け部材、16………当て板、18………接続部、20………凸部、22………ガイドレール、24………第1アーム、24a………傾斜面、26………第1アクチュエータ、28………第1ピストン、28a………第1ロッド、28b………第1ヘッド、30………第2アーム、30a………傾斜面、32………第2アクチュエータ、34………第2ピストン、34a………第2ロッド、34b………第2ヘッド、36………第3アクチュエータ、38………第3ピストン、38a………第3ロッド、38b………第3ヘッド、40………保護板、42………油圧ポンプユニット、44………第1ポンプ、46………第1電磁弁、48………第1圧力スイッチ、50………第2ポンプ、52………第2電磁弁、54………第2圧力スイッチ、56………第3ポンプ、58………第3電磁弁、60………第3圧力スイッチ、62………タンク、64………第1リミットスイッチ、66………当接部、68………付勢アーム、68a………回転軸、70………ストッパ、72………検知部、72a………検知アーム、74………第2リミットスイッチ、74a………当接部、76………カメラ、78………セーバーソー、80………鋸刃部、82………支持部、84………往復駆動部、86………第1電流計、88………凸部、90………回転駆動部、92………第2電流計、94………回転軸、96………加速度計、98………第3リミットスイッチ、100………制御部、102………リモコン、200………ブレース、202………フランジ、204………フランジ、206………ウェブ、208………先端部、210………掴み部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13