(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626278
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】ランドセル
(51)【国際特許分類】
A45F 3/04 20060101AFI20191216BHJP
【FI】
A45F3/04 400Q
A45F3/04 400N
A45F3/04 400P
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-135088(P2015-135088)
(22)【出願日】2015年7月6日
(65)【公開番号】特開2017-12647(P2017-12647A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204778
【氏名又は名称】大峽製鞄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠
【審査官】
新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3158972(JP,U)
【文献】
特開2006−034953(JP,A)
【文献】
米国特許第05509589(US,A)
【文献】
登録実用新案第3053440(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3176246(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/04
A45C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背板と、底板と、左右の大襠と、大仕切板とにより上部が開口した箱状の収納部が形成されてなるランドセル本体を備えたランドセルにおいて、
前記大仕切板の横幅を前記背板の横幅よりも幅狭に形成することにより、前記左右の大襠を前記背板側から前記大仕切板側に向かって内側に傾斜させるようにして配置し、前記ランドセル本体の横断面形状を前記背板側が広く前記大仕切板側が狭い台形状に形成すると共に、
前記底板を前記背板側から前記大仕切板側に向かって上向きに傾斜させることにより、前記ランドセル本体を略四角錐台形状に形成し、
一対の背負いベルトの一端側を前記底板に取り付けるために下方向に突設された一対のダルマカンの全体が前記底板の中心よりも前記大仕切板寄りに位置するように配置して形成され、
前記ランドセルを置いた際に、当該一対のダルマカンと前記背板の底辺により、前記ランドセルを安定して置くことができるようにしたことを特徴とするランドセル。
【請求項2】
請求項1に記載のランドセルにおいて、
前記大仕切板の前面に小襠を介して胴前ポケットが取りつけられると共に、前記背板の上端には前記収納部の開口した上面及び前記胴前ポケットを覆うカブセが縫着され、前記胴前ポケットと前記胴前ポケットを覆う部分の前記カブセの横幅とをそれぞれ前記左右の大襠の傾斜に倣うような幅に形成することにより、前記胴前ポケットを覆う状態におけるランドセル全体の横断面形状を、当該胴前ポケットを覆う部分の前記カブセ側が狭く前記背板側が広い台形状に形成したことを特徴とするランドセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランドセルに関し、さらに詳しくは、A4サイズのフラットファイルの程度の大きさの収納物の収納が可能でありながら全体として小型で軽量なランドセルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では小学校においてA4サイズの用紙が使用されることからA4サイズのクリアファイルが収納できるランドセルが主流となってきているが、現在ではそれよりもさらに大きなA4サイズのフラットファイルが収容可能なランドセルが求められている。しかし、ランドセルの収納空間の全てをA4サイズのフラットファイルが収納できるような大きさにしてしまうとランドセル全体が非常に大きなものになってしまい、特に身体の小さな低学年の児童が背負うには問題があった。そのため、例えば、特許文献1では、ランドセルの主収容部にA4サイズが収まるような横幅方向に拡開した凸条からなる幅広収納部を設けることが提案されている。また、特許文献2も同様な構造を提案している。
【0003】
さらに、特許文献1は、諸理由によってランドセルの大きさには制限があることから、ランドセルの背当て面を基準とし、ランドセルの主収納部の底襠の両側辺を背面から前面に向けて外側に広がった台形状に形成し、この底襠の両側辺からそれぞれ立ち上がるようにして側襠を設け、主収納部の前面の内幅が背面よりも幅広となるようにし、さらに底襠が背面から前面に向けて下向きに傾斜する共に、側襠の下底が背面から前面に向けて下向きに傾斜させたランドセルを提案している。
【0004】
一方、底襠を傾斜させたランドセルとしては特許文献3があるが、特許文献3は特許文献1とは逆に底襠を前面から背面に向かって下向きに傾斜するようにして形成したものである。収納部内に収納した教科書等が背中に対して反対側に倒れると使用者は重量を重く感じるが、底襠をこのように形成することにより収納部内に収納した教科書等が背中側に倒れやすくなるので使用者は重量を軽く感じさせることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−103245号公報
【特許文献2】特開2014−183859号公報
【特許文献3】特開2014−42713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された幅広収容部を設けたランドセルは、側面が凹凸になることから製造が面倒であり、デザイン的にも制約が大きいという問題がある。また、特許文献1に開示されたもう一つのランドセルは、背中に背負う背面側からカブセで覆われる前面側に向かって幅広に拡開した台形状に形成すると共に、さらに底襠も背面側から前面側に向かって下向き方向に傾斜した形状となっていることから、背当て面がいかに小さくても前面側が大きく形成されているのでランドセル全体としては大型化することは避けられないばかりか、見た目にも実際よりもさらに大きく感じさせてしまうという問題がある。
【0007】
一方、特許文献3のランドセルは、底襠を前面から背面に向かって下向きに傾斜するようにして形成することにより収納部内に収納した教科書等が背中側に倒れやすくすることで使用者は重量を軽く感じさせることができるというものであるが、収納物のサイズの問題に起因するランドセル全体の大きさ等の問題点については何ら言及されていない。
【0008】
そこで、本発明は、A4サイズのクリアファイルはもちろんのこと、A4サイズのフラットファイルを収納することができるランドセルでありながら、コンパクトで見た目に小さく、軽量化が可能であり、しかもデザイン性にも優れたランドセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、背板と、底板と、左右の大襠と、大仕切板とにより上部が開口した箱状の収納部が形成されてなるランドセル本体を備えたランドセルにおいて、前記大仕切板の横幅を前記背板の横幅よりも幅狭に形成することにより、前記左右の大襠を前記背板側から前記大仕切板側に向かって内側に傾斜させるようにして配置し、前記ランドセル本体の横断面形状を前記背板側が広く前記大仕切板側が狭い台形状に形成
すると共に、前記底板を前記背板側から前記大仕切板側に向かって上向きに傾斜させることにより、前記ランドセル本体を略四角錐台形状に形成し、一対の背負いベルトの一端側を前記底板に取り付けるために下方向に突設された一対のダルマカンの全体が前記底板の中心よりも前記大仕切板寄りに位置するように配置して形成され、前記ランドセルを置いた際に、当該一対のダルマカンと前記背板の底辺により、前記ランドセルを安定して置くことができるようにしたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のランドセルにおいて、前記大仕切板の前面に小襠を介して
胴前ポケットが取りつけられると共に、前記背板の上端には前記収納部の開口した上面及び前記胴前ポケットを覆うカブセが縫着され、前記胴前ポケット
と前記胴前ポケットを覆
う部分の前記カブセの横幅
とをそれぞれ前記左右の大襠の傾斜に倣うような幅に形成することにより
、前記胴前ポケットを覆う状態におけるランドセル全体の横断面形状を
、当該胴前ポケットを覆う部分の前記カブセ側が狭
く前記背板側が広
い台形状に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るランドセルによれば、収納部の形状を背板側がA4サイズのフラットファイルが収納可能なサイズに幅広とし、大仕切板又はカブセ側に向かって次第に狭くするような断面台形状に形成したので、A4サイズのフラットファイルは背板側に収納し、それよりも小さなサイズのノートや教科書等の収納物は大仕切板側に収納することができると共に、カブセ側が幅狭になっているので見た目にも小さくコンパクトにすることができ、デザイン性にも優れるという効果がある。
【0014】
また、収納部は背板側より大仕切板側が狭くなるように規制されているのでA4サイズのフラットファイルが背板側とは反対側に傾斜したとしても途中で左右の大襠の幅狭部分に阻止されて大きく倒れることが防止されるという効果がある。
【0015】
さらに、収納部の断面形状をA4サイズのフラットファイルが収納可能な横幅を備えた四角形状とした場合に比べて、使用する材料の量も少なくなるので軽量化が可能となるという効果がある。
【0016】
また、本発明に係るランドセルによれば、さらに、底板を背板側から大仕切板側に向かって上向きに傾斜させてランドセル本体の形状を略四角錐台形状に形成することとしたので、さらに大仕切板及びカブセ側をさらに小さくすることができるという効果がある。
【0017】
また、本発明に係るランドセルによれば、一対の背負いベルトを底板に取り付けるための取り付け金具を底板の中心よりも大仕切板側寄りに配置したので、ランドセルを置いたときに安定性が向上するという効果があり、特に、底板を背板側から大仕切板側に向かって上向きに傾斜させた場合には取り付け金具の背負いベルトを可動可能に取り付けるために下側に突出したダルマカンと背板の底辺とのバランスが図られるので底板が傾斜していてもランドセルを安定して置くことが可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るランドセルの一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示すランドセルの収納部を示す平面図である。
【
図4】
図1に示すランドセルのカブセの形状を示す平面図である。
【
図5】
図1に示すランドセルの下部側を示す一部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るランドセルについて図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明に係るランドセルの一実施形態を示す斜視図、
図2はその底面図である。図示されたランドセル1は、概略として、背板11と、左右の大襠12,12と、大仕切板13と、そして底板14により上部が開口した箱状の収納部5が形成されたランドセル本体2を備えている。
【0020】
ランドセル本体2の収納部5の背板11側の横幅は内部にA4サイズのフラットファイルが収納可能なサイズとされている。そして、大仕切板13の横幅は背板11の横幅よりも幅狭に形成されていると共に、左右の大襠12,12が背板11側から大仕切板13側に向かって内側に傾斜するようにして配置されており、これによりランドセル本体2の横断面形状が、背板11側が広く大仕切板13側が狭い台形状に形成されている。尚、左右の大襠12,12は、底板14の左右と連続して一体に形成されており、これら左右の大襠12,12と背板11及び大仕切板13とは左右の両縁部側において約1cm程度の幅をもって逢着されている。
【0021】
また、
図2に示すように、ランドセル本体2を構成する底板14も、背板11側が広く、大仕切板13側が狭くなるようにして形成されると共に、底板14の左右の側縁は大襠12,12の底縁に沿うように背板11側から大仕切板13側に向かって内側に傾斜した台形状に形成されている。そして、底板14はそれぞれ背板11及び大仕切板13の最下端部と略同じ位置に縫着されている。ランドセル本体2を外側に突出した縫い代部を設けることなく縫着部分をこのようにフラットに形成することで背板11側の収納部5の高さ(深さ)を最大限に活用することができるのでA4サイズのフラットファイルが収納可能でありながらランドセル1の高さを低く抑えることが可能となる。また、大襠12,12と底板14との縫着部分はそれぞれ補強部材15,15が取り付けられている。そして、補強部材15の背板14側は、背板14と底板14との縫着部分及び背板14と大襠13との縫着部分の一部をカバーするように延伸して形成されている。
【0022】
大仕切板13の前面には小襠21を介して胴前ポケット20が取り付けられている。また、背板11の上端には収納部5の開口した上面及び
胴前ポケット
20を覆うカブセ25が縫着されている。そして、胴前ポケット20及び胴前ポケット20を覆う部分のカブセ25の横幅は左右の大襠12,12の傾斜に倣うような幅サイズに形成されている。胴前ポケット20及びカブセ25の横幅をこのような幅サイズに形成することにより、ランドセル1全体の横断面形状を背板11側が広く、カブセ25側が狭い台形状とすることができる。これにより、収納部5の背板11側にA4サイズのフラットファイルを収納可能な大きさを確保しつつ、背板11側から胴前ポケット20を覆っているカブセ25側に向かって横幅が次第に幅狭となっているのでランドセル1全体をコンパクトで見た目にも小さい形状とすることができる。尚、収納部5の大仕切板13側が背板11側よりも狭くなるように規制されているので背板11側に収納されたA4サイズのフラットファイルは背板11側とは反対側の大仕切板13側に傾斜したとしても途中で左右の大襠12,12の幅狭部分に阻止されて大きく倒れ込むことが防止される。
【0023】
また、底板14は、背板11及び大仕切板13と直交するように水平に配置することもできるが、
図5に示すように、背板11側から大仕切板13側に向かって上向きに傾斜させて配置することもできる。底板14をこのように傾斜させて配置することでランドセル本体2又はランドセル1全体を、背板14を底面とする略四角錐台形状に形成することができる。すなわち、四角錐台の下底が底板4に相当し、上底が大仕切板13に相当することになる。このように形成することでランドセル本体2及びランドセル1全体をさらにコンパクトで見た目も小さく形成することが可能となる。
【0024】
背板11の上部側の中央には肩ベルトと下ベルトからなる一対の背負いベルト40,40の一端側が取り付けられる背環1
6が配置されている。そして、底板14には一対の背負いベルト40,40の他端側が取り付けられる取り付け金具30が配置されている。取り付け金具30にはカブセ25の先端側に設けられたロック金具26 と係合するロック部31と、一対の背負いベルト40,40を可動可能に取り付けるための略円筒形状のダルマカン32,32が設けられている。そして、この取り付け金具30は、底板14の中心よりも大仕切板13側寄りに位置するようにして配置されている。取り付け金具30をこのような位置に配置することによりランドセルを置いたときに安定性の向上を図ることができる。特に、底板14を背板11側から大仕切板13側に向かって上向きに傾斜させたような場合には下方向に突出したダルマカン32,32と背板11の底辺とのバランスが図られるので底板4が傾斜していてもランドセル1を安定して置くことが可能となる。
【0025】
尚、その他として、ランドセル1は、例えば、収納部5の内側には内張板が配置されていたり、背板11の外側の使用者の背中に当たる部分には背当てが取り付けられているなど、ランドセル1を構成する部品は多数におよぶものであるが、その他の部分については通常のランドセルと同様であるのでそれらについての説明は省略する。
【0026】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は詳述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。ランドセル以外にも、例えば、リュックサックなどの背負い鞄についても同様にして適用することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 ランドセル
2 ランドセル本体
5 収納部
11 背板
12 大襠
13 大仕切板
14 底板
15 補強部材
20 胴前ポケット
21 小襠
25 カブセ
26 ロック金具
30 取り付け金具
31 ロック部
32 ダルマカン
40 背負いベルト