特許第6626282号(P6626282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626282
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】車両用電子キーシステムの降車検知装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/31 20130101AFI20191216BHJP
   E05F 15/70 20150101ALI20191216BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20191216BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20191216BHJP
   B60R 25/104 20130101ALI20191216BHJP
【FI】
   B60R25/31
   E05F15/70
   E05B49/00 J
   B60R25/24
   B60R25/104
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-140694(P2015-140694)
(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-19464(P2017-19464A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】元山 純一
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑斗
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−126993(JP,A)
【文献】 特開2007−153078(JP,A)
【文献】 特開2011−255830(JP,A)
【文献】 特開2008−106579(JP,A)
【文献】 特開2014−148842(JP,A)
【文献】 特開2006−306350(JP,A)
【文献】 特開2006−160204(JP,A)
【文献】 特開平09−073588(JP,A)
【文献】 特開2011−143775(JP,A)
【文献】 特開2008−208525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00−99/00
G08B 13/00−15/02
E05B 1/00−85/28
E05F 15/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の停車を判定する停車判定手段と、
セレクトレバーがパーキングレンジ以外のレンジにセットされているか否かを検出するポジション判定手段と、
電源モードがアクセサリモードか否かを検出する電源モード判定手段と、
電子キーを携帯するユーザが車外へ降車したか否かを認識する降車認識手段と、
ドアの開閉を検出するドアスイッチと、
前記降車認識手段で前記ユーザの車外への降車を認識し、且つ前記ドアスイッチでドア閉を検出した場合は降車と判定する降車判定手段と、
前記ユーザの位置を検出する位置検出手段と、
警告を報知する警報出力部を駆動する警報駆動手段と、
前記停車判定手段で停車と判定され、且つ前記ポジション判定手段で前記セレクトレバーがパーキングレンジ以外のレンジにセットされていると判定され、且つ前記電源モード判定手段で前記電源モードがアクセサリモードであると判定され、且つ前記降車判定手段で前記ユーザが車外へ降車したと判定した場合、前記警報駆動手段を介して前記警報出力部を前記位置検出手段で検出した前記ユーザの方向へ指向させて警告を報知させる警告表示処理手段と
を備え
前記警報出力部は車室外に設けられており、
前記警告表示処理手段は前記警報出力部から警告を報知させる際に、全ての車両ドアのドアガラスを閉塞させる
ことを特徴とする車両用電子キーシステムの降車検知装置。
【請求項2】
前記警告表示処理手段は、前記位置検出手段で検出した降車した前記ユーザの位置と前記警報出力部との離間距離に応じて該警報出力部から出力される警報音の音圧及び音パターンを可変設定する
ことを特徴とする請求項1記載の車両用電子キーシステムの降車検知装置。
【請求項3】
ブレーキを作動させるブレーキ制御手段を更に有し、
前記ブレーキ制御手段は、前記警告表示処理手段が前記警報駆動手段を駆動させた際に前記ブレーキを作動させる
ことを特徴とする請求項1〜2の何れか1項に記載の車両用電子キーシステムの降車検知装置。
【請求項4】
オーディオの音量を制御する音量制御手段を更に有し、
前記音量制御手段は、前記警告表示処理手段が前記警報駆動手段を駆動させる際にオーディオがオン動作されている場合は該オーディオの音量を低下させる
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用電子キーシステムの降車検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーを携帯するユーザが、電源モードをアクセサリモードにした状態で降車した場合に警告を発する車両用電子キーシステムの降車検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子キーシステムを搭載する車両は、電子キーを携帯するユーザ(多くの場合は運転者であるため、以下においては「運転者」と称する)が乗車した後、キー操作を一々行うことなく、プッシュエンジンスイッチ(スタートスイッチ)を押圧するだけで、電源ONやエンジン始動を行うことができる。
【0003】
エンジン始動に際しては、運転者がセレクトレバーをパーキング(P)レンジ或いはニュートラル(N)レンジにセットした状態で、ブレーキペダルを踏込み、プッシュエンジンスイッチを押圧する。すると、スタータモータが所定時間稼動し、エンジンが始動する。
【0004】
又、セレクトレバーがPレンジにセットされており、且つ、ブレーキペダル未踏の状態で、プッシュエンジンスイッチを押圧すると、押圧する毎に車両の電源モードが、OFFモード→アクセサリ(ACC)モード→ON(IGN)モードの順に切換えられる。更に、セレクトレバーをPレンジ以外のレンジにセットした状態でプッシュエンジンスイッチを押圧すると、電源モードがON(E/G RUN)モードからACCモードに切換えられる。
【0005】
ACCモードでは、エンジンは停止するが、特定の電装品(オーディオ、電源ソケット、カーナビゲーション等)にはバッテリ電源が供給される。
【0006】
通常、電源モードがACCモードの場合、コンビネーションメータはバッテリ消耗を抑制するため消灯されており、従って、運転者は、電源モードがOFFモードに切り替わっていると勘違いし易い。特に、電子キーシステムは、電源モードがACCモードであっても、運転者は電子キーを携帯した状態でたやすく降車することができるため、電源モードがOFFモードに切り替わっていると勘違いしている場合、気づかずに車両から離れてしまいやすい。
【0007】
電源モードがACCモードの状態では、ステアリングロックがアンロック状態であるため、無人で動き出したり、盗難に遭いやすくなる。そのため、車両用電子キーシステムでは、電源モードがACCモードの状態であるにも拘わらず、電子キーを携帯する運転者が降車した場合には、当該運転者に対して警報を発して注意を促すようにしている。
【0008】
しかし、運転者が運転席ドアを開けて降車し、その後、運転席ドアを閉めて車両から離間するまでの一連の動作の中で、運転者は、既に電源をOFFにしたとの先入観を有しているため、自己に向けての警報であることに気づかないまま車両から離間してしまう場合がある。
【0009】
この対策として、例えば、特許文献1(特開2008−168762号公報)には、セレクトレバーがPレンジ或いはNレンジ以外のレンジにセットされており、且つプッシュエンジンスイッチがON(従って、電源モードはACCモード)されたことを電源コントロールユニットが検知した場合、計器照明を一時点灯させることで電源OFF忘れを運転者に警告する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−168762号公報
【特許文献2】特開2008−106579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、降車しようとする運転者は、電源をOFFしたと誤認しているため、計器照明が一時点灯されてもそれに気づかない場合が多く、運転席ドアを開けて降車し、車両から離間してしまうことは、車両が一時的に無人状態となるためセキュリティ上も好ましくない。
【0012】
そのため、例えば、特許文献2(特開2008−106579号公報)には、携帯機(電子キー)を携帯する運転者が自車両から離間する距離を、室外アンテナで受信する携帯機から送信される電波の受信電界強度に基づいて判定し、その距離に応じて警報の音量を変更する技術が開示されている。
【0013】
特許文献2に開示されている技術によれば、運転者の自車両からの離間距離に応じて警報音が増量されるが、必要以上の大音量は運転者に不快感を与えるばかりでなく、周囲に対して騒音被害を与えてしまう不都合がある。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑み、運転者に不快感を与えることなく、しかも周囲に対して騒音被害を与えることなく、エンジン停止後、電源モードをアクセサリモードの状態で降車したユーザを検知し、電源OFF忘れを的確に報知することのできる車両用電子キーシステムの降車検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による車両用電子キーシステムの降車検知装置は、車両の停車を判定する停車判定手段と、セレクトレバーがパーキングレンジ以外のレンジにセットされているか否かを検出するポジション判定手段と、電源モードがアクセサリモードか否かを検出する電源モード判定手段と、電子キーを携帯するユーザが車外へ降車したか否かを認識する降車認識手段と、ドアの開閉を検出するドアスイッチと、前記降車認識手段で前記ユーザの車外への降車を認識し、且つ前記ドアスイッチでドア閉を検出した場合は降車と判定する降車判定手段と、前記ユーザの位置を検出する位置検出手段と、警告を報知する警報出力部を駆動する警報駆動手段と、前記停車判定手段で停車と判定され、且つ前記ポジション判定手段で前記セレクトレバーがパーキングレンジ以外のレンジにセットされていると判定され、且つ前記電源モード判定手段で前記電源モードがアクセサリモードであると判定され、且つ前記降車判定手段で前記ユーザが車外へ降車したと判定した場合、前記警報駆動手段を介して前記警報出力部を前記位置検出手段で検出した前記ユーザの方向へ指向させて警告を報知させる警告表示処理手段とを備え、前記警報出力部は車室外に設けられており、前記警告表示処理手段は前記警報出力部から警告を報知させる際に、全ての車両ドアのドアガラスを閉塞させる
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、セレクトレバーがパーキングレンジ以外のレンジにセットされ、且つ電源モードがアクセサリモードに設定されている状態で、ユーザの車外への降車を検出した場合、警報出力部をユーザの方向へ指向させて警告を報知させるようにしたので、車両から離間しようとするユーザに対してのみ電源OFF忘れを的確に報知することができる。
【0017】
その結果、大音量で警告を報知する必要がなくなり、ユーザに不快感を与えず、しかも、周囲に対して騒音被害を及ぼすことも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電子キーシステムを搭載する車両の模式的平面図
図2】車載制御ステムの概略構成図
図3】降車警告処理ルーチンを示すフローチャート
図4】警告表示処理サブルーチンを示すフローチャート
図5】ACC→OFF処理ルーチンを示すフローチャート
図6】降車した運転者の離間距離に応じた警報音の出力特性を示し、(a)は音圧テーブルの概念図、(b)は音パターンテーブルの概念図、(c)は音パターン毎の警報特性を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1に示すように、自動車等の車両31のキャビン31aに、運転席シート32、助手席シート33、後部座席34が所定に配設され、更に、車両ドアを構成する運転席ドア35と助手席ドア36と後部左右ドア37a,37bとリヤゲート38が開閉自在に設けられている。又、キャビン31aの前部に、コンビネーションメータ等を配設するインストルメントパネル25が設けられ、更に、運転席シート32と助手席シート33との間にセンターコンソール39が配設されて、運転席前方にハンドル26が配設されている。
【0020】
又、図2に示すように、この車両31に車載制御システム1が搭載されている。この車載制御システム1は、車両用電子キーシステムを構成する電子キー制御ユニット(電子キー_ECU)2、エンジン制御ユニット(E/G_ECU)3、オーディオ制御ユニット(オーディオ_ECU)4、ブレーキ制御手段としての電動パーキングブレーキ制御ユニット(EPB_ECU)5、降車警告制御ユニット(降車警告_ECU)6等を備えている。
【0021】
この各ECU2〜6は、マイクロコンピュータを主体に構成され、周知のCPU、ROM、RAM、及び不揮発性メモリ等を有しており、ROMにはCPUが実行する各種プログラムや固定データ等が記憶されている。又、各ECU2〜6が、CAN(Controller Area Network)通信等の車内通信回線7を通じて相互通信可能に接続されている。
【0022】
電子キー_ECU2は、運転者が携帯する電子キー(携帯機)8との間で通信を行い、電子キー8のIDが電子キー_ECU2に登録されているIDと一致した場合、車両ドア35,36,37a,37bのロック/アンロック、エンジンの始動/停止、車載機器へのバッテリ電源VBTの給電が可能となる。この電子キー_ECU2の入力側に、電子キー8に対して、識別信号、リクエスト信号を送信すると共に、電子キー8が発信する識別信号等を受信する通信回路部9、ONスイッチであるプッシュエンジンスイッチ10等が接続されている。更に、この電子キー_ECU2に、降車警告_ECU6で検出したブレーキペダルの踏込みを検出するブレーキON信号、及びセレクトレバーのセットポジションを検出するポジション信号がそれぞれ入力される。
【0023】
又、通信回路部9には。電子キー8との間の信号を送受信する複数のアンテナ9a〜9eが設けられている。図1に示すように、室外サイドアンテナ9a,9bは運転席ドア35及び助手席ドア36の車室外側に配置され、又、室外リヤアンテナ9cはリヤゲート38の車室外側に配置され、更に、室内アンテナ9d,9eは、例えばセンターコンソール39の前部と後部座席34の中央とにそれぞれ配置されている。
【0024】
又、電子キー_ECU2の出力側に、電源ユニット13、スタータリレー14のスイッチ部が接続されており、更に、このスタータリレー14の固定接点の一方にスタータモータ15が接続されている。又、電源ユニット13とスタータリレー14の固定接点の他方にバッテリ電源VBTが接続されている。
【0025】
電源ユニット13は、電子キー_ECU2からの電源切換信号により、バッテリ電源VBTを供給する電源モードを、電源OFFモード、ACCモード、電源ON(IGN)モードの何れかに切換える。ここで、電源モードが電源OFFモードの場合はバッテリ電源に直結されている電装品以外の電装品に対するバッテリ電源VBTの供給が遮断され、一方、ACCモードの場合は、オーディオ機器、電源ソケット等、特定の電装品にのみバッテリ電源VBTが供給される。従って、電源OFFモード及びACCモードではエンジンが停止される。又、電源ONモードの場合は、全ての電装品に対してバッテリ電源VBTが供給される。
【0026】
この電源モードは、セレクトレバーがPレンジにセットされている状態で、プッシュエンジンスイッチ10をONする毎に、例えば、図2に実線で示すように、電源OFF→ACC→電源ON(IGN)の順に切り替わり、プッシュエンジンスイッチ10を更にONすると電源OFFに戻る。又、停車時、セレクトレバーをPレンジ以外のレンジにセットした状態でプッシュエンジンスイッチ10をONすると、図2に破線で示すように、電源モードはOFFモードに切り替わらず、ACCモードに切り替わり、エンジンが停止される。
【0027】
尚、セレクトレバーがPレンジ以外のレンジにセットされ、且つエンジンが停止している状態(従って、電源モードはACCモード)からエンジンンを再始動させるには、先ず、セレクトレバーをPレンジ或いは、Nレンジにセットし、次いで、ブレーキペダルを踏込み、その状態で、プッシュエンジンスイッチ10をONする。すると、電子キー_ECU2は、電源ユニット13の電源モードを電源ONモードに切換えると共に、スタータリレー14を所定時間ON動作させ、スタータモータ15にバッテリ電源VBTを供給してエンジンを起動させる。
【0028】
又、E/G_ECU3は、エンジンがスタータモータ15によって起動されると、点火時期制御、燃料噴射制御を開始してエンジンを稼動させる。
【0029】
又、オーディオ_ECU4は、電源ユニット13の電源モードがACC、或いは電源ONに設定されている場合、運転者を含む搭乗者の操作によりONされているオーディオ機器(カーステレオ、カーナビゲーション等)を総合的に制御し、又、搭乗者の設定した音量の音声をスピーカ19から出力させる。
【0030】
又、EPB_ECU5の入力側に、センターコンソール39等に配設されているパーキングブレーキレバーに連設するパーキングブレーキスイッチ17が接続され、出力側に、電動モータ、減速ギヤ、直動機構等を構成要素とするパーキングブレーキアクチュエータ18が接続されている。
【0031】
このパーキングブレーキスイッチ17はON/OFFスイッチであり、EPB_ECU5は、降車警告_ECU6で検出したブレーキペダルの踏込みを検出するブレーキON信号とパーキングブレーキスイッチ17からのON信号とが同時に検出されたとき、パーキングブレーキアクチュエータ18を動作させてパーキングブレーキ(図示せず)を作動させる。一方、EPB_ECU5が、ブレーキペダルの踏込みを検出するブレーキON信号とパーキングブレーキスイッチ17からのOFF信号とを同時に検出したとき、パーキングブレーキアクチュエータ18をOFF動作させて、パーキングブレーキ(図示せず)を解除させる。
【0032】
更に、このEPB_ECU5は、降車警告_ECU6から運転者の降車を検出する信号を受信した場合、パーキングブレーキアクチュエータ18を駆動させてパーキングブレーキ(図示せず)を動作させる。尚、EPB_ECU5に代えて、サービスブレーキ制御ユニットを適用し、降車警告_ECU6で運転者の降車を検出する信号を受信した場合、サービスブレーキ制御ユニットからの指令信号によりサービスブレーキ(常用ブレーキ)を作動させるようにしても良い。
【0033】
又、降車警告_ECU6は、入力側にブレーキペダルの踏込みを検出してON信号を出力するブレーキスイッチ11、セレクトレバーのセット位置を検出するセレクトポジションセンサ12、車速を検出する車速センサ16、降車認識手段20、各車両ドア35、36,37a,37bの開放でON信号を出力する各ドアスイッチ27a〜27d、及び、各車両ドア35、36,37a,37bに配設されている各ドアガラスに連設され、ドアガラスが全閉でOFF動作するドアガラススイッチ28a〜28dが接続されている。
【0034】
降車認識手段20は、降車する運転者を認識するものであり、例えば、運転席シート32に設けられた着座センサ、車内と車外とを同時に撮像することのできるメインカメラとサブカメラとからなる一対のカメラで構成された車内外カメラ、車内と車外とをスキャンする赤外線センサ、電子キー位置検出手段等の何れかで構成されている。
【0035】
降車認識手段20が着座センサの場合、着座センサからON信号が出力されたときは運転者の着座と判定し、OFF信号が出力されているときは降車と判定する。又、車内外カメラや赤外線センサの場合は、運転者の頭部Hの移動を検出して降車か否かを判定する。一方、電子キー位置検出手段は、複数のアンテナ9a〜9dで受信する電子キー8からの電界強度(受信電界強度)から運転者が携帯している電子キー8の位置を検出して降車か否かを判定する。
【0036】
又、この降車警告_ECU6の出力側に、インストルメントパネル25等に配設されて、種々の情報を表示するマルチインフォメーションディスプレイ(MID)21、及び警報駆動手段としての警報駆動部22が接続されている。更に、この警報駆動部22に警報出力部としての警報ブザー23と電動モータ23aとが接続されている。この警報ブザー23は、車室内或いは車室外に配設されており、警報駆動部22からの駆動信号により、音圧、及び吹鳴音のパターンが可変設定される。更に、この警報ブザー23が回転台23bに載置されており、この回転台23bの回転角が、警報駆動部22からの駆動信号で回転する電動モータ23aにて制御される。
【0037】
警報ブザー23は回転台23bの回転により警報音を、常に、降車した運転者に向けて吹鳴するように設定されており、降車した運転者の方向は、降車警告_ECU6が、例えば車内外カメラや赤外線センサで検出した、降車する運転者の頭部Hの動き、或いは各アンテナ9a〜9dで受信した電子キー8からの信号電界強度に基づいて認識する。
【0038】
ところで、停車時のセレクトレバーがPレンジ以外のレンジにセットされている状態で、プッシュエンジンスイッチ10をONさせた場合、電子キー_ECU2は、電源ユニット13の電源モードをACCモードに切換える。
【0039】
電源モードがACCモードに切換えられると、コンビネーションメータが消灯するため、電源モードがOFFモードに切り替わったと勘違いし、運転者はそのまま降車してしまい易い。一般に、このような状態で運転席側のドアを開放すると、警告音が発せられるが、運転者は降車動作中であり、しかも、電源モードがOFFモードであるとの先入観を抱いているため、警告音に気づかずに降車してしまう場合がある。
【0040】
降車警告_ECU6は、電源モードがACCモードの状態での運転者の降車を検出した場合、警告を報知して注意を喚起すると共に、電動パーキングブレーキを作動させて車両の無人移動を防止する。
【0041】
この降車警告_ECU6で実行される降車時の警告報知は、具体的には、図3に示す降車警告処理ルーチンに従って処理される。このルーチンでは、先ず、ステップS1で車両が停車するまで待機する。車両が停車したか否かは、本実施形態では、ブレーキスイッチ11及び車速センサ16からの信号に基づき、ブレーキスイッチ11からブレーキON信号が出力され、且つ、車速センサ16で検出した車速が予め設定した停車判定車速(例えば、15[Km/h])以下のときは停車と判定する。尚、ステップS1での処理が、本発明の停車判定手段に対応している。
【0042】
そして、停車と判定した場合はステップS2へ進み、走行中と判定した場合はルーチンを抜ける。ステップS2へ進むと、セレクトポジションセンサ12で検出したセレクトレバーのセット位置を検出して、セレクトレバーがPレンジ以外のレンジにセットされているか否かを調べる。セレクトレバーがPレンジにセットされている場合はそのままルーチンを抜け、又、Pレンジ以外のレンジにセットされている場合はステップS3へ進む。尚、ステップS2での処理が、本発明のポジション判定手段に対応している。
【0043】
ステップS3では、電子キー_ECU2で設定される電源モードを読込み、電源モードがACCモードか否かを調べ、ACCモードの場合はステップS4へ進み、ONモードの場合、すなわち、停車後、プッシュエンジンスイッチ10が押圧(ON)されておらずエンジン稼働中の場合は、そのままルーチンを抜ける。尚、ステップS3での処理が、本発明の電源モード判定手段に対応している。
【0044】
電子キー_ECU2では、停車時のセレクトレバーがPレンジ以外のレンジにセットされている状態で、プッシュエンジンスイッチ10がONされた場合、電源モードをACCモードに切換える。その結果、エンジンは停止し、又、バッテリ電源VBTは特定の電装品にのみ供給され、コンビネーションメータは消灯される。
【0045】
その後、ステップS4へ進むと、ユーザ降車条件識別処理を実行する。ユーザ降車条件は、降車認識手段20で検出した運転者の動作に基づき、運転者の降車条件が成立したか否かを調べるものであり、降車認識手段20が着座センサの場合、着座センサからON信号が出力されているか、OFF信号が出力されているかを調べる。そして、ON信号が出力されている場合は着座と識別し、一方、OFF信号が出力され、且つドアスイッチ27aがOFFのドア閉の場合は降車と識別する。
【0046】
又、降車認識手段20が車内外カメラ或いは赤外線センサの場合、車内外カメラの画像、或いは赤外線センサの反射光から、運転者の頭部Hが車両31の外側にある場合は降車と識別する。又、降車認識手段20が電子キー位置検出手段の場合、複数のアンテナ9a〜9dで受信する電子キー8からの受信電界強度に基づき、運転者が車両31の外にいるかキャビン31a内かを調べ、車外の場合、降車と認識する。
【0047】
そして、ステップS5で降車と判定された場合は、ステップS6へ進み、一方、乗車中と判定した場合は、そのままルーチンを抜ける。ステップS6では、電子キー8が移動しているか否かを調べる。電子キー8が移動しているか否かは、例えば、電子キー8からの電波を受信し、その電界強度(受信電界強度)の変化に基づいて調べる。運転者が降車するに際し必ずしも電子キー8を携帯しているとは限らず、後部ドア37a,37bやリヤゲート38を開放して荷物の出し入れを行う等、車室内に電子キー8を残置した状態で一時的に降車する場合も考えられる。尚、ステップS4,S5での処理が、本発明の降車判定手段に対応している。
【0048】
このような状態においても警告表示を行うことは運転者に不快感を与えることになる。そのため、運転者が降車しているにも拘わらず受信電界強度が変化していない場合、電子キー8は車室内に残置されており、運転者の降車は一時的なものであると判定し、そのままルーチンを抜ける。
【0049】
一方、受信電界強度が運転者の降車による移動と共に変化している場合、運転者が電子キー8を携帯して降車したと判定し、ステップS7へ進む。尚、上述したステップS4において、ユーザ降車条件を受信電界強度に基づいて認識している場合、ステップS6での処理は省略しても良い。
【0050】
ステップS7へ進むと、警告表示処理を実行する。この警告表示処理は、図4に示す警告表示処理サブルーチンに従って実行される。尚、このサブルーチンでの処理が、本発明の警告表示処理手段に対応している。
【0051】
このサブルーチンでは、先ず、ステップS21で運転者に対し、電源モードがACCモードであることを知らせる旨の警告表示(画像、文字等)をMID21に出力して、ステップS22へ進む。
【0052】
ステップS22では、車内外カメラで撮影した画像、赤外線センサでのスキャン結果、或いは電子キー8からの電波に基づいて検出した位置情報に基づいて、ユーザである運転者の位置情報を検出する。尚、このステップでの処理が、本発明の位置検出手段に対応している。
【0053】
そして、ステップS23へ進み、降車警告_ECU6から警報駆動部22に対し運転者の方向を示す回転角信号を出力する。すると、警報駆動部22は回転角信号に対応する駆動信号を電動モータ23aへ出力し、この電動モータ23aにて回転台23bを回転させて、載置されている警報ブザー23を運転者の位置に向けてセットする。
【0054】
次いで、ステップS24へ進み、各ドアガラススイッチ28a〜28dからの信号を読込み、各車両ドア35,36,37a,37bに設けられているドアガラスが全閉状態にあるか否かを調べて車窓の開閉処理を行う。この車窓の開閉処理は、警報ブザー23が車室内に配設されているか、車室外に配設されているかで制御が異なる。
【0055】
すなわち、警報ブザー23が車室内に配設されている場合、先ず、ドアガラススイッチ28a〜28dの信号を読込み、運転者に最も近い位置のドア(例えば、運転席ドア35)のドアガラスが開放されている化否かを調べる。そして、当該ドアガラスが開放されている場合は、他のドアガラスを全閉させる。一方、警報ブザー23が車室外に配設されている場合、ドアガラススイッチ28a〜28dの信号を読込み、全てのドアガラスを閉塞(全閉)させる。
【0056】
その後、ステップS25へ進み、ユーザである運転者と警報ブザー23との離間距離を、車内外カメラで撮影した画像、赤外線センサでのスキャン結果、或いは電子キー8からの受信電界強度に基づいて演算する。すなわち、車内外カメラでは、メインカメラとサブカメラとで撮影した運転者の画像に基づきその視差から運転者までの離間距離を求める。又、赤外線センサでは、光源から照射された光の運転者からの反射光を受光し、その時間差から運転者までの離間距離を求める。又、電子キー位置検出手段では、通信回路部9に設けた各アンテナ9a〜9dと電子キー8との距離が長くなるに従って受信電界強度が低くなるため、例えば、予め各アンテナ9a〜9dの受信電界強度と距離との対応を求めておき、各アンテナ9a〜9dの受信電界強度を距離に変換することで距離を算出することができる。
【0057】
そして、ステップS26へ進み、警報ブザー23と運転者との離間距離に基づき、警報ブザー23の音圧、及び吹鳴音の音パターンを、図6(a)に示す音圧テーブル、及び同図(b)に示す音パターンテーブルを参照して設定する。音圧テーブルには、離間距離をL0〜L1,L1〜L2,L2以上の三段階に区分し、段階毎に音圧レベルを小(例えば、40[dB])、中(例えば、60[dB])、大(例えば、110[dB])に設定されている。又、音パターンテーブルには、離間距離をL0〜L1,L1〜L2,L2以上の三段階に、音パターン1〜3が各々設定されている。
【0058】
同図(c)に示すように、音パターン1はビッピッ・ピッピ…と間欠的な吹鳴音が設定され、音パターン2はピッピッピッ…と一定間隔の吹鳴音が設定され、又、音パターン3はピーという連続的な吹鳴音に設定されている。
【0059】
そして、ステップS27で運転者までの離間距離に応じた警報信号を警報駆動部22へ出力して、降車警告処理ルーチンのステップS8へ進む。その結果、警報駆動部22から警報ブザー23に対して、警報信号に対応する駆動信号が出力され、この警報ブザー23から発せられる警報音によって、車両31から離間する運転者に対して電源モードのOFF忘れを警告する。
【0060】
その際、運転者の離間距離に追従して警報音の音圧が段階的に大きくなり、且つ、音バターンも段階的に連続音となるため運転者に対し、自己への警告であることを容易に気づかせることができる。又、警報ブザー23が運転者の方向に指向しているため、大音量で警告する必要がなく、従って、運転者に対して不快感を与えることがないばかりでなく、周囲に対して騒音被害を与えることもない。
【0061】
そして、運転者が車両31からの警告音であると気づいて戻り、MID21の表示内容を確認させることで、電源モードのOFF忘れを認識させることができる。
【0062】
又、図3のステップS8へ進むと、EPB_ECU5に対して電動パーキングブレーキを動作させる指令信号を出力する。すると、EPB_ECU5は、パーキングブレーキアクチュエータ18に駆動信号を出力し、このパーキングブレーキアクチュエータ18を駆動させてパーキングブレーキを作動させる。このパーキングブレーキの作動は、運転者が降車したと判定した後、直ちに作動するため、車両の無人移動を確実に防止することができる。
【0063】
この場合、パーキングブレーキの作動により、車両の無人移動が防止され、盗難を抑制することができるので、MID21等に、パーキングブレーキ作動の旨を表示すると共に、音圧テーブルに基づいて設定する音圧に所定ゲインを乗算して、音圧レベルを低くするようにしても良い。
【0064】
その後、ステップS9へ進み、オーディオ_ECU4がオーディオをON動作させているか否かを調べ、ON動作させている場合は、ステップS10へ進み、スピーカ19から出力されている音量を所定レベルまで低下させる指令信号を、オーディオ_ECU4へ送信し、スピーカの音量を低下させて、ステップS11へ進む。又、オーディオがOFFの時は、ステップS11へジャンプする。尚、ステップS9,S10での処理が本発明の音量制御手段に対応している。
【0065】
オーディオがONの場合、スピーカ19からの出力される音量を低くするようにしたので、警報ブザー23から出力される警告音はより鮮明に運転者に伝達させることができる。
【0066】
ステップS11では、警告停止条件を識別する。この警告停止条件は、運転者が運転席シート32に着座したことを検出した場合、条件成立と判定する。運転者が運転席シート32に着座した可否かは、例えば着座センサからのON信号が出力されているか否か、或いは車内外カメラや赤外線センサで運転者がハンドル26に正対しているか否かを識別することで判定する。
【0067】
そして、停止条件成立と判定した場合、ステップS12からステップS13へ進み、又、停止条件が不成立の場合は、ステップS7へ戻り、警告表示処理を継続させる。
【0068】
ステップS13へ進むと、警告表示を停止させてルーチンを抜ける。警告表示が停止されると、MID21の警告表示、及び警報ブザー23からの吹鳴音が停止されると共に、各ドアガラススイッチ28a〜28dからの信号を読込み、開いているドアガラスがあるか否かを調べ、スイッチOFFの開いているドアガラスが検出された場合、当該ドアガラスを全閉させる。
【0069】
又、電子キー_ECU2は、降車警告_ECU6でセレクトレバーがPレンジ以外にセットされていると判定し、且つ、電源モードがACCモードにセットされている場合、図5に示すACC→OFF処理ルーチンが起動される。
【0070】
このルーチンでは、先ず、ステップS31で、パーキングブレーキスイッチ17が動作するまで待機する。そして、運転者がパーキングブレーキレバーを操作してパーキングブレーキスイッチ17をONすると、プログラムはステップS32へ進み、セレクトレバーがPレンジにセットされるまで待機する。
【0071】
そして、セレクトポジションセンサ12の検出信号からセレクトレバーがPレンジにセットされたと判定した場合、ステップS33へ進み、プッシュエンジンスイッチ10がONされるまで待機する。
【0072】
その後、プッシュエンジンスイッチ10からのON信号を検出した場合、ステップS34へ進み、電源モードをOFFモードに切換えて、ルーチンを終了する。尚、電動パーキングブレーキは、運転者がパーキングブレーキスイッチ17を操作することで解除される。又、電動パーキングブレーキに代えてサービスブレーキを採用する場合、このサービスブレーキは電源モードがOFFモードに切り替わった際に解除される。
【0073】
このように、本実施形態では、運転者がセレクトレバーをPレンジ以外のレンジにセットした状態で、プッシュエンジンスイッチ10を押圧(ON)してエンジンを停止させた後、運転者の降車を検出した場合、警告表示するようにしたので、運転者に対して電源モードのOFF忘れを的確に報知させることができる。
【0074】
又、警告音は車両31から離間する運転者に向けて吹鳴されるため、大音量で警告する必要がなく、運転者に対して不快感を与えることがないばかりでなく、周囲に対して騒音被害を与えることもない。
【0075】
更に、電源モードがACCモードの状態で運転者が降車した場合、ブレーキを自動的に動作させるようにしたので、車両31の無人移動を防止することができる。
【0076】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、警報ブザー23から出力される警報音を、運転者が電源モードをOFFモードに切換える操作を行う前に、スイッチ操作により解除できるようにしても良い。
【符号の説明】
【0077】
1…車載制御システム、
2…電子キー制御ユニット、
3…エンジン制御ユニット、
4…オーディオ制御ユニット、
5…電動パーキングブレーキ制御ユニット、
6…降車警告制御ユニット、
7…車内通信回線、
8…電子キー、
9…通信回路部、
9a,9b…室外サイドアンテナ、
9c…室外リヤアンテナ、
9d,9e…室内アンテナ、
10…プッシュエンジンスイッチ、
11…ブレーキスイッチ、
12…セレクトポジションセンサ、
13…電源ユニット、
14…スタータリレー、
15…スタータモータ、
16…車速センサ、
17…パーキングブレーキスイッチ、
18…パーキングブレーキアクチュエータ、
19…スピーカ、
20…降車認識手段、
21…マルチインフォメーションディスプレイ、
22…警報駆動部、
23…警報ブザー、
23a…電動モータ、
23b…回転台、
25…インストルメントパネル、
26…ハンドル、
27a…ドアスイッチ、
28a〜28d…ドアガラススイッチ、
31…車両、
31a…キャビン、
32…運転席シート、
33…助手席シート、
34…後部座席、
35…運転席ドア、
36…助手席ドア、
37a,37b…後部左右ドア、
38…リヤゲート、
39…センターコンソール、
H…頭部、
VBT…バッテリ電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6