特許第6626300号(P6626300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626300
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】半導体用接着剤及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 181/04 20060101AFI20191216BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20191216BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20191216BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20191216BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20191216BHJP
   C08G 75/08 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   C09J181/04
   C09J11/06
   H01L21/60 311S
   H01L23/30 R
   C08G75/08
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-189955(P2015-189955)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-66188(P2017-66188A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 幸平
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/208656(WO,A1)
【文献】 特開2010−001465(JP,A)
【文献】 特開2013−079316(JP,A)
【文献】 特開2014−133875(JP,A)
【文献】 特開2016−127011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00−201/10
H01L21/52,21/60
H01B5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピスルフィド化合物と、硬化剤として2級チオールとを含有することを特徴とする半導体用接着剤。
【請求項2】
請求項1記載の半導体用接着剤を用いてなることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速硬化性と絶縁性に優れ、接合体の信頼性を高めることができる半導体用接着剤及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の小型化及び高密度化に伴い、半導体チップを基板上に実装する方法としてフリップチップ実装が注目され急速に広まってきている。フリップチップ実装は、はんだ等からなる多数のバンプ電極を基板上に直接一括で接合するため、従来のワイヤーボンディング方式に比べ、実装面積を小さくできる、電気的特性が良好等の利点を有している。
【0003】
フリップチップ実装において、半導体チップを基盤と接合する方法として、特許文献1には半導体チップの突起電極と基板の電極部とを接合した後に、半導体チップと基板との隙間に液状封止接着剤(アンダーフィル)を注入し、硬化させる方法が開示されている。
また、特許文献2には、半導体ウエハ又は半導体チップ上にフィルム状接着剤を予め供給した後、接着剤付き半導体チップを基板上に搭載する方法が開示されている。
【0004】
このような半導体用接着剤は、生産性の観点から速硬化性が、また、ショートを防止して接続信頼性を向上させるために、高い絶縁性が求められる。そのため、半導体用接着剤としては、接着性、硬化性、電気特性等の観点からエポキシ化合物を含有する硬化性の接着剤が用いられている(例えば特許文献3)。
【0005】
半導体用接着剤は、速硬化性を向上させたり、硬化後の物性をコントロールする目的で硬化剤が配合される。硬化剤としてはアミン類やイミダゾール類、酸無水物等の化合物が目的に応じて用いられるが、硬化剤の中でも特にチオール硬化剤は速硬化性に優れていることが知られている。しかしながら、チオールを硬化剤に用いると、速硬化性には優れるものの、絶縁性が低下してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−278334号公報
【特許文献2】特開2011−29392号公報
【特許文献3】特開2011−231137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、速硬化性と絶縁性に優れ、接合体の信頼性を高めることができる半導体用接着剤及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エピスルフィド化合物と2級チオールとを含有する半導体用接着剤である。以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は絶縁性を向上させるために、チオール基のα位にある炭素原子に一つの置換基を有する、2級のチオールを硬化剤とする方法を検討した。しかしながら、2級のチオールを硬化剤に用いた場合、絶縁性は改善するものの充分ではなく、チオール基周りの立体障害が増加することによって、チオール硬化剤の利点である速硬化性が低下してしまうという問題が生じた。
これに対して、本発明者は鋭意検討した結果、エポキシ化合物に代えてエピスルフィド化合物を用い、2級チオール硬化剤を組み合わせることにより、優れた速硬化性を維持しつつも絶縁性を劇的に向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の半導体用接着剤はエピスルフィド化合物を含有する。エピスルフィド化合物を含有することによって、本発明の半導体用接着剤は優れた絶縁性に加えて充分な速硬化性を発揮することができる。上記エピスルフィド化合物は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エピスルフィド化合物(ビスフェノールA型エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物)、ビスフェノールF型エピスルフィド化合物(ビスフェノールF型エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物)、ビスフェノールS型エピスルフィド化合物(ビスフェノールS型エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物)、水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物、水添ビスフェノールF型エピスルフィド化合物、水添ビスフェノールS型エピスルフィド化合物、ジシクロペンタジエン型エピスルフィド化合物、ビフェニル型エピスルフィド化合物、フェノールノボラック型エピスルフィド化合物、フルオレン型エピスルフィド化合物、ポリエーテル変性エピスルフィド化合物、ブタジエン変性エピスルフィド化合物、トリアジンエピスルフィド化合物、レゾルシノール型エピスルフィド化合物、ナフタレン型エピスルフィド化合物等が挙げられる。なかでも、より高い絶縁性と速硬化性を発揮できることから、ビスフェノールF型エピスルフィド化合物、フルオレン型エピスルフィド化合物、レゾルシノール型エピスルフィド化合物、ナフタレン型エピスルフィド化合物が好ましい。これらのエピスルフィド化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0011】
上記エピスルフィド化合物のうち、市販品として、例えば、YL−7007(水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物、三菱化学社製)等が挙げられる。また、上記エピスルフィド化合物は、例えば、チオシアン酸カリウム、チオ尿素等の硫化剤を使用して、エポキシ化合物から容易に合成される。
【0012】
本願発明の半導体用接着剤は硬化剤として2級チオールを含有する。本願発明は、エピスルフィド化合物に硬化剤として2級チオールを配合することで、速硬化性を維持しつつも優れた絶縁性能を発揮することができる。エピスルフィドと2級チオールの組み合わせが優れた絶縁性能を発揮する理由については不明であるが、エピスルフィドの開環により発生するチオエーテル部位とチオール基に対するα水素引き抜き部位が相互に絶縁性を向上させているものと考えられる。
【0013】
上記2級チオールは特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
上記2級チオールのうち、市販品として、例えば、PE−1、TPMB、TEMB(いずれも昭和電工社製)等が挙げられる。
【0015】
上記エピスルフィド化合物100重量部における上記2級チオールの含有量は特に限定されないが、好ましい下限は、5重量部、好ましい上限は、40重量部である。上記2級チオールのより好ましい下限は7重量部、より好ましい上限は35重量部である。
【0016】
本発明の半導体用接着剤は、硬化促進剤を含有してもよい。
上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
本発明の半導体用接着剤は、無機充填材を含有してもよい。無機充填材を含有することで、半導体用接着剤の硬化物の線膨張率が低下し、接合された半導体装置における応力の発生、及び、はんだ等の導通部分へのクラックの発生が良好に防止される。
上記無機充填材は特に限定されず、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ガラスパウダー、ガラスフリット等が挙げられる。
【0018】
上記無機充填材として粒子状の無機充填材を用いる場合、平均粒子径の好ましい下限は0.01μm、好ましい上限は30μmである。上記無機充填材の平均粒子径が0.01μm未満であると、半導体用接着剤の粘度が高くなりすぎることがある。上記無機充填材の平均粒子径が30μmを超えると、半導体用接着剤を用いて半導体チップを加圧接合する際に、半導体チップ等の電極間で上記無機充填材を噛み込むことがある。
【0019】
上記無機充填材の市販品として、例えば、SE4050、SE2050、SE2050−SPJ、SE2050−SMJ、SE2050−STJ、SE1050−SPT、SE1050−SMT、SE1050−STT、YA050C−SP3(アドマテックス社製)等が挙げられる。
【0020】
上記無機充填材の含有量は特に限定されないが、半導体用接着剤の全体重量100重量部中、50〜75重量部が好ましい。
上記無機充填材の含有量が50重量部未満であると、半導体用接着剤の硬化物の線膨張率が上昇し、接合された半導体装置における応力の発生、はんだ等の導通部分へのクラックの発生等が生じることがある。上記無機充填材の含有量が75重量部を超えると、半導体用接着剤の粘度が高くなりすぎることがある。
【0021】
本発明の半導体用接着剤は、必要に応じて、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、亜リン酸エステル、ホウ酸エステル、有機酸、増粘剤、消泡剤、ゴム粒子等の添加剤を含有してもよい。
【0022】
本発明の半導体用接着剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記エピスルフィド化合物、上記2級チオール及び必要に応じて他の成分を所定量配合して混合する方法等が挙げられる。上記混合する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0023】
本発明の半導体用接着剤の用途は特に限定されないが、電子部品用途に好適に用いられる。具体的には例えば、本発明の半導体接合用接着剤は、半導体チップと基板との接合、半導体チップと半導体チップの接合(チップオンチップ)、半導体チップとウエハとの接合(チップオンウエハ)等に好適に使用することができる。
本願発明の半導体用接着剤を用いてなる半導体装置もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、速硬化性と絶縁性に優れ、接合体の信頼性を高めることができる半導体用接着剤及び半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0026】
(実施例1〜3、比較例1〜7)
(1)半導体用接着剤の製造
表1に記載の組成に従って、下記に示す各材料を、遊離攪拌器を用いて攪拌混合することにより半導体用接着剤を製造した。
【0027】
1.主剤
(エピスルフィド化合物)
ビスフェノールF型エピスルフィド樹脂(DIC社製、「EXA−830CRP」のエピスルフィド)
(エポキシ化合物)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製、「EXA−830CRP」)
2.硬化剤
(2級チオール)
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工社製、「PE−1」)
(1級チオール)
トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製、「TMMP」)
(フェノール化合物)
ジアリールビスフェノールA(明和化成社製、「MEH−8000H」)
(アミン類)
エポキシアダクトアミン(T&K TOKA社製、「FXR−1050」)
(酸無水物)
トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸(三菱化学社製、「YH306」)
3.硬化促進剤
(イミダゾール類)
2,4−ジアミノー6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン (四国化成社製、「2MZ−A」)
【0028】
(2)半導体装置の製造
(1)で得られた半導体用接着剤を10mLのシリンジ(岩下エンジニアリング社製)に充填し、シリンジ先端に精密ノズル(岩下エンジニアリング社製、ノズル先端径0.3mm)を取り付け、ディスペンサ装置(SHOT MASTER300、武蔵エンジニアリング社製)を用いて塗布量が2.0mgとなるように基板(WALTS−KIT MB50−0101JY、ウォルツ社製)上に塗布した。塗布した半導体用接着剤を介して、フリップチップボンダ(FC30000S、東レエンジニアリング社製)を用いて、0.1MPaの押圧下、70℃から280℃まで5秒間で昇温させるにより、はんだからなる突起状電極を有する半導体チップ(WALTS−TEG MB50−0101JY、はんだの溶融温度235℃、ウォルツ社製)を基板上に接合した。次いで、170℃のオーブンで30分間加熱し、半導体用接着剤を完全硬化させ、半導体装置を得た。
【0029】
<評価>
実施例及び比較例で得られた半導体用接着剤又は半導体装置について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0030】
(速硬化性)
JIS C2161Bに準拠して、得られた半導体用接着剤の170℃でのゲル化時間を求めた。ゲル化時間が10秒未満の場合を◎、ゲル化時間が10秒以上20秒未満の場合を○、ゲル化時間が20秒以上の場合を×として評価した。
【0031】
(耐HAST性(絶縁性))
得られた半導体装置をHASTチャンバー(espec社製)中に温度130℃、湿度 85%(飽和)の環境下で100時間保持した。保持後の絶縁抵抗値が初期抵抗値と比較して90%以上の場合を◎、90%未満60以上の場合を○、60%未満の場合を×として評価した。
【0032】
【表1】
【0033】
表1より、エピスルフィド化合物と2級チオールを用いた実施例1〜3は、速硬化性及び絶縁性に優れていることがわかる。一方、エピスルフィド化合物とチオールの組み合わせであっても、チオールが1級である場合や、2級チオールを用いていても主剤がエポキシ化合物である場合は、速硬化性及び絶縁性が両立できていないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、速硬化性と絶縁性に優れ、接合体の信頼性を高めることができる半導体用接着剤及び半導体装置を提供することができる。