【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エピスルフィド化合物と2級チオールとを含有する半導体用接着剤である。以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は絶縁性を向上させるために、チオール基のα位にある炭素原子に一つの置換基を有する、2級のチオールを硬化剤とする方法を検討した。しかしながら、2級のチオールを硬化剤に用いた場合、絶縁性は改善するものの充分ではなく、チオール基周りの立体障害が増加することによって、チオール硬化剤の利点である速硬化性が低下してしまうという問題が生じた。
これに対して、本発明者は鋭意検討した結果、エポキシ化合物に代えてエピスルフィド化合物を用い、2級チオール硬化剤を組み合わせることにより、優れた速硬化性を維持しつつも絶縁性を劇的に向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の半導体用接着剤はエピスルフィド化合物を含有する。エピスルフィド化合物を含有することによって、本発明の半導体用接着剤は優れた絶縁性に加えて充分な速硬化性を発揮することができる。上記エピスルフィド化合物は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エピスルフィド化合物(ビスフェノールA型エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物)、ビスフェノールF型エピスルフィド化合物(ビスフェノールF型エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物)、ビスフェノールS型エピスルフィド化合物(ビスフェノールS型エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物)、水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物、水添ビスフェノールF型エピスルフィド化合物、水添ビスフェノールS型エピスルフィド化合物、ジシクロペンタジエン型エピスルフィド化合物、ビフェニル型エピスルフィド化合物、フェノールノボラック型エピスルフィド化合物、フルオレン型エピスルフィド化合物、ポリエーテル変性エピスルフィド化合物、ブタジエン変性エピスルフィド化合物、トリアジンエピスルフィド化合物、レゾルシノール型エピスルフィド化合物、ナフタレン型エピスルフィド化合物等が挙げられる。なかでも、より高い絶縁性と速硬化性を発揮できることから、ビスフェノールF型エピスルフィド化合物、フルオレン型エピスルフィド化合物、レゾルシノール型エピスルフィド化合物、ナフタレン型エピスルフィド化合物が好ましい。これらのエピスルフィド化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0011】
上記エピスルフィド化合物のうち、市販品として、例えば、YL−7007(水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物、三菱化学社製)等が挙げられる。また、上記エピスルフィド化合物は、例えば、チオシアン酸カリウム、チオ尿素等の硫化剤を使用して、エポキシ化合物から容易に合成される。
【0012】
本願発明の半導体用接着剤は硬化剤として2級チオールを含有する。本願発明は、エピスルフィド化合物に硬化剤として2級チオールを配合することで、速硬化性を維持しつつも優れた絶縁性能を発揮することができる。エピスルフィドと2級チオールの組み合わせが優れた絶縁性能を発揮する理由については不明であるが、エピスルフィドの開環により発生するチオエーテル部位とチオール基に対するα水素引き抜き部位が相互に絶縁性を向上させているものと考えられる。
【0013】
上記2級チオールは特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
上記2級チオールのうち、市販品として、例えば、PE−1、TPMB、TEMB(いずれも昭和電工社製)等が挙げられる。
【0015】
上記エピスルフィド化合物100重量部における上記2級チオールの含有量は特に限定されないが、好ましい下限は、5重量部、好ましい上限は、40重量部である。上記2級チオールのより好ましい下限は7重量部、より好ましい上限は35重量部である。
【0016】
本発明の半導体用接着剤は、硬化促進剤を含有してもよい。
上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
本発明の半導体用接着剤は、無機充填材を含有してもよい。無機充填材を含有することで、半導体用接着剤の硬化物の線膨張率が低下し、接合された半導体装置における応力の発生、及び、はんだ等の導通部分へのクラックの発生が良好に防止される。
上記無機充填材は特に限定されず、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ガラスパウダー、ガラスフリット等が挙げられる。
【0018】
上記無機充填材として粒子状の無機充填材を用いる場合、平均粒子径の好ましい下限は0.01μm、好ましい上限は30μmである。上記無機充填材の平均粒子径が0.01μm未満であると、半導体用接着剤の粘度が高くなりすぎることがある。上記無機充填材の平均粒子径が30μmを超えると、半導体用接着剤を用いて半導体チップを加圧接合する際に、半導体チップ等の電極間で上記無機充填材を噛み込むことがある。
【0019】
上記無機充填材の市販品として、例えば、SE4050、SE2050、SE2050−SPJ、SE2050−SMJ、SE2050−STJ、SE1050−SPT、SE1050−SMT、SE1050−STT、YA050C−SP3(アドマテックス社製)等が挙げられる。
【0020】
上記無機充填材の含有量は特に限定されないが、半導体用接着剤の全体重量100重量部中、50〜75重量部が好ましい。
上記無機充填材の含有量が50重量部未満であると、半導体用接着剤の硬化物の線膨張率が上昇し、接合された半導体装置における応力の発生、はんだ等の導通部分へのクラックの発生等が生じることがある。上記無機充填材の含有量が75重量部を超えると、半導体用接着剤の粘度が高くなりすぎることがある。
【0021】
本発明の半導体用接着剤は、必要に応じて、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、亜リン酸エステル、ホウ酸エステル、有機酸、増粘剤、消泡剤、ゴム粒子等の添加剤を含有してもよい。
【0022】
本発明の半導体用接着剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記エピスルフィド化合物、上記2級チオール及び必要に応じて他の成分を所定量配合して混合する方法等が挙げられる。上記混合する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0023】
本発明の半導体用接着剤の用途は特に限定されないが、電子部品用途に好適に用いられる。具体的には例えば、本発明の半導体接合用接着剤は、半導体チップと基板との接合、半導体チップと半導体チップの接合(チップオンチップ)、半導体チップとウエハとの接合(チップオンウエハ)等に好適に使用することができる。
本願発明の半導体用接着剤を用いてなる半導体装置もまた、本発明の1つである。