(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る画像処理装置の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
<概要>
本実施形態に係る画像処理装置は、3次元医用画像から、臓器や病変部など被検体の所定の解剖学的部位の領域の抽出を行う。このとき、入力された画像から時相(例えば、「非造影」、「早期相」、「門脈相」、「晩期相」)を推定し、その推定結果に基づいて後段の処理のパラメータを設定する。これにより、入力画像のヘッダ部分に時相情報が含まれていなくても、もしくは時相情報が誤っていても、適切なパラメータが選ばれ、良好な領域抽出結果を得ることができる。
【0015】
より具体的には、本実施形態に係る画像処理装置は、時相情報を用いずに行う第一の解剖学的部位の領域抽出(第一の領域抽出)と、推定された時相情報を用いて行う第二の解剖学的部位の領域抽出(第二の領域抽出)とを行う。第一の領域抽出の時点では時相情報が使えないため、抽出対象となる部位に関する濃度値の事前分布を高い精度で得ることができない。そこで、本実施形態の画像処理装置は、統計的に患者間で位置変動の少ない解剖学的部位だけを第一の解剖学的部位として選択する。そして、第一の領域抽出として、位置情報に重みをおいた(濃度値の事前分布が曖昧でも実施可能な)領域抽出を実行する。さらに、この第一の領域抽出の結果を用いて、時相の推定に用いる画像特徴量として、第一の領域内の濃度値の分布情報を算出する。そして、この濃度値の分布情報に基づいて、画像の時相を推定する。
【0016】
一方、第二の領域抽出は、推定された時相情報を用いて行われる。すなわち、本実施形態の画像処理装置は、推定された時相に基づいて、第二の領域抽出に用いる画像処理のパラメータを選択する。より具体的には、時相情報に基づいて、第二の解剖学的部位の濃度値の事前分布を高い精度で推定し、当該事前分布を用いた領域抽出を実行する。その結果、時相情報を用いずに領域抽出するよりも良好な結果が得られる。
【0017】
なお、以下の説明において、本実施形態に係る画像処理装置は、被検体の胸腹部の3次元画像を処理対象とする場合を例として説明する。また、解剖学的部位として、肝臓、心臓、左腎臓、右腎臓、および脾臓の各領域を画像から抽出する場合を例として説明する。ここで、肝臓と心臓は、患者間での位置変動が少ない部位であるという性質を有している。すなわち、時相が不明であっても抽出が容易な部位である。また、これらは、濃染のパターンが互いに異なる(心臓は肝臓よりも早くコントラストのピークを迎える)部位であるという性質を有している。すなわち、二つの領域内の濃度値の分布情報を組み合わせることで、時相の推定を安定して行うことができる。以上の性質を考慮して、本実施形態では、肝臓および心臓を第一の解剖学的部位として選択し、他の臓器を第二の解剖学的部位としている。以下、
図1乃至
図3を用いて、本実施形態の画像処理システムの構成及び処理を説明する。
【0018】
<画像処理システムの構成>
図1は、本実施形態に係る画像処理システムの構成例を示す。同図に示すように、本実施形態における画像処理装置100は、データサーバ110、データベース120および表示部130と接続されている。
【0019】
データサーバ110は、画像データとして、ある条件(モダリティ、撮像モード、日時、体位等)で被検体を予め撮像して得られた3次元断層画像(ボリュームデータ)を保持している。3次元断層画像を撮像するモダリティは、MRI(magnetic resonance imaging)装置、X線CT(Computed Tomography)装置、3次元超音波撮影装置、光音響トモグラフィ装置、PET/SPECT装置などであってもよい。ここでPETとはpositron emission tomographyの略であり、SPECTとはSingle photon emission computed tomographyの略である。画像データは、画像データ取得部1010を介して画像処理装置100に入力される。
【0020】
データベース120は、抽出処理に用いる統計データを保持している。ここでの統計データとは、各部位の確率アトラスや、各部位における濃度値の事前分布(平均値や分散値)のことである。統計データは、統計データ取得部1020を介して画像処理装置100に入力される。
【0021】
表示部130は液晶モニタ等であり、画像処理装置100が生成する表示画像等の各種の情報を表示する。また、表示部130には、ユーザからの指示を取得するためのGUI(graphical user interface)も配置されている。
【0022】
<画像処理装置の構成>
画像処理装置100は、以下に説明する構成要素により構成されている。画像データ取得部1010は、画像処理装置100へ入力される画像データ(入力画像)をデータサーバ110から取得する。そして、取得した入力画像を、第一の領域抽出部1040、特徴量算出部1050、第二の領域抽出部1070、および表示制御部1080へと出力する。
【0023】
統計データ取得部1020は、画像処理装置100へ入力される統計データをデータベース120から取得する。そして、取得した統計データを、第一の領域抽出部1040、時相推定部1060、第二の領域抽出部1070へと出力する。部位選択部1030は、第一の解剖学的部位を選択する。そして、選択した部位の情報を、特徴量算出部1050および時相推定部1060へと出力する。第一の領域抽出部1040は、第一の解剖学的部位の領域(第一の領域)を入力画像から抽出する。この処理には、統計データ取得部1020が取得した統計データを用いる。そして、抽出した第一の領域の情報を、特徴量算出部1050、表示制御部1080へと出力する。
【0024】
特徴量算出部1050は、第一の領域抽出部1040が抽出した第一の領域の情報を用いて、第一の解剖学的部位の濃度値に関する特徴量を入力画像から算出する。そして、算出した特徴量を時相推定部1060へと出力する。時相推定部1060は、特徴量算出部1050が算出した濃度値に関する特徴量を用いて、時系列での濃度値変化に関する状態、例えば入力画像の造影時の時相(例えば「非造影」、「早期相」、「門脈相」、「晩期相」)を推定する。この処理には、統計データ取得部1020が取得した統計データを用いる。そして、推定した時相の情報を第二の領域抽出部1070へと出力する。
【0025】
第二の領域抽出部1070は、時相推定部1060が推定した時相の情報を用いて、第二の解剖学的部位の領域(第二の領域)を入力画像から抽出する。この処理には、統計データ取得部1020が取得した統計データを用いる。そして、抽出した第二の領域の情報を表示制御部1080へと出力する。表示制御部1080は、入力画像、および領域抽出結果を、ユーザによる不図示の操作部からの入力に応じて表示部130に表示させる制御を行う。
【0026】
ここで、データベース120が保持する確率アトラスについて説明する。確率アトラスは、標準化された被検体の画像内において、夫々の画素の位置が何れの部位であるかの確率を示すものである。確率アトラスは、以下の手順で作成される。まず、事前に撮像した多数の症例の夫々の画像データに対して、解剖学的部位を表すラベル画像を手動で作成する。本実施形態では、解剖学的部位のラベルとして、心臓、肝臓、右腎臓、左腎臓、脾臓の5つのラベルを用いる。次に、症例間で画像空間の標準化を行い、ラベル画像を重ね合わせる。この処理を行うと、各画素において、重ね合わされたラベルの数から各部位の存在確率が算出できる。算出された存在確率を画像値として持たせた画像が確率アトラスとなる。なお、空間の標準化は、後述するステップS2010およびS2020と同様な処理によって行うことができる。これによって、アトラス作成の際の空間標準化だけでなく、入力画像と確率アトラスの空間標準化も同じアルゴリズムで行うことできる。
【0027】
また、データベース120は、各部位における濃度値の事前分布を、時相ごとに格納している。また、時相が不明な場合に用いる濃度値の事前分布を、各部位ごとに格納している。本実施形態では、濃度値の事前分布としてガウス分布を仮定し、平均値と分散値を保持する場合について説明する。以下の説明では、時相tにおける解剖学的部位lの濃度値の事前分布を、平均値I
l_t_DBと分散値σ
l_t_DB2で表す。また、時相が不明な場合に用いる解剖学的部位lの濃度値の事前分布を、平均値I
l_DBと分散値σ
l_DB2で表す。ここで、濃度値の事前分布は、確率アトラスの作成に用いた複数症例のラベル画像から算出する。すなわち、夫々の部位について、同じ時相の全て症例における当該部位の領域内の濃度値の平均値と分散値を求め、これを当該時相における当該部位の濃度値の事前分布とする。また、夫々の部位について、夫々の時相の事前分布の平均(平均値の平均と分散値の平均)を求め、これを、時相が不明な場合の当該部位の濃度値の事前分布とする。なお、時相が不明な場合の事前分布は、何れかの時相の事前分布で代用してもよい。この場合、何れの時相の事前分布を用いるかは、データベース120に含まれる複数症例の画像データを用いた予備実験で定めることができる。本実施形態では、時相が不明な場合には門脈相の事前分布を適用する。
【0028】
なお、時相が不明な場合の事前分布は、他の方法で求めてもよい。例えば、夫々の部位について、時相を限定しない全ての症例における当該部位の領域内の濃度値の平均値と分散値を求め、これを、時相が不明な場合の当該部位の濃度値の事前分布と定義してもよい。この場合、全ての時相での濃度値の統計を求めることになるので、時相ごとの統計よりも分散が大きくなる。その結果として、時相が不明な場合には、濃度値の事前分布よりも確率アトラスによる位置情報に重みをおいた推定が実施可能となる。
【0029】
<画像処理装置の処理>
図2は、本実施形態に係る画像処理装置100が実施する全体の処理手順を示すフローチャートである。
【0030】
(S2000:データの取得)
ステップS2000において、画像データ取得部1010は、データサーバ110から処理対象である入力画像を取得する。また、統計データ取得部1020は、データベース120から統計データを取得する。
【0031】
(S2010:ランドマークの配置)
ステップS2010において、第一の領域抽出部1040は、ステップS2000で取得した入力画像上にランドマークを配置する。このランドマークは後段の確率アトラスと入力画像を位置合わせする際に用いられる。本実施形態では、入力画像中から肺領域と骨盤領域をそれぞれ閾値処理により抽出し、その領域の重心位置に基づいてランドマークを配置する。
【0032】
具体的には、まず、抽出した肺領域の重心を含むaxial断面と、骨盤領域の重心を含むaxial断面を見つける。次に、そのaxial断面に対して閾値処理により体表を抽出する。最後に、肺と骨盤それぞれの重心から、axial断面上で上下左右に探索点を動かし、体表にぶつかったところをランドマークとする。
【0033】
図3にランドマークを配置した入力画像の模式図を示す。C31はcoronal断面、A31は肺領域の重心を通るaxial断面、A32は骨盤領域の重心を通るaxial断面である。C31上の波線の矢印がA31とA32の位置を表している。A31とA32に配置されている白い点が本実施形態に係るランドマークに該当する。なお、ランドマークは必ずしも自動配置される必要はなく、ユーザがユーザインタフェースを用いて入力してもよい。
【0034】
(S2020:確率アトラスとの位置合わせ)
ステップS2020において、第一の領域抽出部1040は、ステップS2010で配置されたランドマークを用いて、データベース120に格納されている確率アトラスと入力画像との位置合わせを行う。本実施形態では、ステップS2010で配置されたランドマークと、確率アトラス上のランドマークとを対応させる。そして代表的な変形モデルの一つであるRadial Basis Function(RBF)で変形場を作成し、確率アトラスを入力画像に合うように変形させる。これにより、患者による各解剖学的部位の位置のバイアスを取り除くことができる。なお、画像変形に用いる手法は必ずしもRBFである必要はなく、代表的な変形モデルの一つであるFree Form Deformation(FFD)などを用いてもよい。
【0035】
(S2030:第一の解剖学的部位の選択)
ステップS2030において、部位選択部1030は、画像処理装置100が抽出対象としている解剖学的部位の中から第一の解剖学的部位を選択する。本実施形態では、先に述べた理由により、心臓および肝臓を第一の解剖学的部位として選択する。なお、第一の解剖学的部位の選択は、入力画像に応じて適応的に行うようにしてもよい。例えば、ステップS2020で得た確率アトラスとの位置合わせ結果に基づき、候補部位である心臓と肝臓の夫々が入力画像に含まれているか否かを判定し、入力画像に含まれている部位のみを第一の解剖学的部位として選択してもよい。
【0036】
(S2040:第一の領域抽出)
ステップS2040において、第一の領域抽出部1040は、ステップS2030で選択された第一の解剖学的部位の領域を入力画像から抽出する。本実施形態では、領域抽出手法として、非特許文献1に記載されているMAP法を採用する。MAP法は、各画素において観測される特徴量v(ここでは濃度値)に基づいて、事後確率が最大になる部位ラベルを夫々の画素に割り当てる手法である。数式で表すと以下のようになる。
【0038】
ここで、Lは、抽出対象である解剖学的部位に割り当てられたラベルの集合、lはその中の何れか一つのラベルである。また、vは濃度値、p
p(l|v)は位置pにおけるlの事後確率である。第一の領域抽出部1040は、夫々の画素について、夫々のlの事後確率p
p (l|v)を求め、式(1)によって夫々の画素のラベルを決定する。なお、第一の領域抽出部1040が本ステップで行う処理の目的は第一の解剖学的部位の領域抽出であるが、実際の処理としては、第二の解剖学的部位も含む全ての部位の領域抽出が実行される。
【0039】
次に、上述した式(1)の演算に必要な、夫々のlの事後確率p
p (l|v)の導出処理について説明する。周知のように、事後確率p
p (l|v)は、ベイズの定理を用いて以下のように書き換えられる。
【0041】
すなわち、事後確率p
p(l|v)は、位置pにおいて部位ラベルがlであるときの特徴量vの尤度p
p(v|l)と、位置pにおける部位ラベルlの事前確率p
p(l)から算出できる。そこで、第一の領域抽出部1040は、夫々の画素について、夫々のlのp
p(l)とp
p(v|l)を求め、式(2)によってp
p(l|v)を算出する。ここで、夫々の画素におけるlの事前確率p
p(l)は、ステップS2000で統計データの一部として取得した確率アトラスから取得できる。
【0042】
最後に、上述した式(2)の演算に必要な、夫々のlにおける尤度p
p(v|l)の導出処理について説明する。ステップS2020で説明したとおり、入力画像と確率アトラスとは位置合わせされている。これを用いて、第一の領域抽出部1040は、部位ラベルがlであるときの特徴量vの尤度p
p(v|l)、すなわち、各部位の濃度値の分布を推定する。すなわち、次式を用いてp
p(v|l)を算出する。
【0044】
ここで、pは画像中の画素の位置を表し、Ipは位置pにおける入力画像の濃度値を表す。また、Lはラベルの集合を表す。また、パラメータI
lとσ
l2は、部位lの領域内における濃度値の分布情報(平均値と分散値)である。この分布情報は、統計データから得た事前分布を初期値として、期待値最大化(EM:Expectation Maximization)アルゴリズム(以後、EMアルゴリズムとする)によって反復的に推定される。このとき、分布情報の初期値が入力画像における実際の分布情報に近いほど推定精度が改善される。本ステップの時点では時相情報は使えないため、時相が不明な場合の部位lの事前分布(すなわち、平均値I
l_DBと分散値σ
l_DB2)を初期値として用いる。しかし、位置情報である確率アトラスを考慮するMAP法を採用しているため、患者間の位置変動が少ない心臓と肝臓であれば、分布情報が曖昧な条件下であっても良好な抽出を行うことができる。
【0045】
以上の処理により、第一の解剖学的部位の領域が抽出される。なお、領域抽出に用いる手法は必ずしもMAP法である必要はなく、グラフカット法やLevel set法などを用いてもよい。その際はグラフカット法における各ノードの重みや、Level set法におけるzero level set(front)の設定に、確率アトラスなどの位置情報を付与することで、本実施形態と同等の結果が期待できる。
【0046】
(S2050:特徴量算出)
ステップS2050において、特徴量算出部1050は、ステップS2040で抽出された第一の解剖学的部位の領域から、当該領域の濃度値に関する特徴量を算出する。本実施形態では、第一の解剖学的部位の夫々について、領域内の平均濃度値を算出する。なお、算出する特徴量は必ずしも平均濃度値である必要はなく、領域内における濃度値の分散や最大値・最小値などを、当該領域の濃度値に関する特徴量として算出してもよい。また、これらの組み合わせを特徴量としてもよい。
【0047】
(S2060:時相推定)
ステップS2060において、時相推定部1060は、ステップS2050で算出した濃度値に関する特徴量を用いて、入力画像の時相を推定する。ここでは、ステップS2000で統計データとして取得した、第一の解剖学的部位の各時相における平均濃度値を用いる。すなわち、入力画像の特徴量と統計データとを比較することで、時相の推定を行う。
【0048】
具体的には、次式を用いて各時相の評価値D
tを算出する。
【0050】
ここで、tは時相を表す。L'は第一の解剖学的部位の集合であり、lはその何れか一つ(本実施形態では肝臓か心臓)を表す。また、I
l_t_DBは、統計データとして取得した、時相tにおける部位lの濃度値の事前分布における平均値を表す。また、I
l_inは、入力画像における部位lの平均濃度値であり、ステップS2050で得た特徴量を表す。すなわち、評価値D
tは、第一の解剖学的部位の平均濃度値の、時相をtと仮定した際の事前分布との差異であり、これをL1ノルムとして求めている。時相推定部1060は、夫々の時相に対して評価値D
tの値を算出する。そして、最小のD
tを与える時相tを時相の推定結果t*とする。
【0051】
なお、評価値D
tの定義は式(4)に限定されるものではなく、例えば、事前分布と平均濃度値のL2ノルム(二乗和の平方根)を用いてもよい。また、事前分布における分散値を考慮した事前分布と平均濃度値のマハラノビス距離をD
tとして用いてもよい。なお、ステップS2050で平均濃度値以外の特徴量を求めている場合には、統計データとしても対応する値を予め時相ごとに用意し、その差異を評価すればよい。また、複数の特徴量を併用する場合には、それらの評価値の和を用いることができる。
【0052】
なお、時相の推定方法は上のような算出方法である必要はない。様々な時相を含む多数の症例の第一の解剖学的部位の濃度値特性を事前に学習しておいて、ステップS2050で得た特徴量(I
l_in)を入力として時相を推定する任意の識別器を用いるようにしてもよい。例えば、Neural NetworkやSupport Vector Machineのような識別器に特徴量を入力して時相を識別してもよい。
【0053】
なお、本ステップで推定した時相情報は、データサーバ110が保持する入力画像の付帯情報として保存するようにしてもよい。特に、入力画像のヘッダ部分に時相情報を保持する項目がある場合には、当該項目に時相情報を記録するようにしてもよい。
【0054】
(S2070:第二の領域抽出)
ステップS2070において、第二の領域抽出部1070は、ステップS2060で推定した時相情報を用いて、第二の解剖学的部位の領域を入力画像から抽出する。まず、ステップS2060で推定した時相情報t*に基づいて、適切な統計データとして、各部位の濃度値の事前分布(すなわち、平均値I
l_t*_DBと分散値σ
l_t*_DB2)を選択する。そして、選択した事前分布に基づき、ステップS2040と同様の処理により第二の領域を抽出する。なお、本ステップの実際の処理では、ステップS2040と同様に、第一の解剖学的部位と同一の部位も含む全ての部位の領域抽出を行う。なお、第一の解剖学的部位の領域については、本ステップの結果を用いてもよいし、ステップS2040で得た結果に差し替えて用いてもよい。最後に、第二の領域抽出部1070は、全領域の抽出結果を、3次元のラベル画像の形態でデータサーバ110へ出力して保存する。
【0055】
(S2080:領域抽出結果の表示)
ステップS2080において、表示制御部1080は、ステップS2070で領域抽出された各部位の領域を入力画像上に表示する。本実施形態では、不図示のUI(user interface)を介してユーザが指定した入力画像の断面画像に、ステップS2070で得たラベル画像の当該断面を重畳して表示する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、時相情報が欠損、または誤って記載されている画像に対しても、画像から時相を推定することで、高精度な領域抽出ができる。
【0057】
(変形例1−1)
上記の実施形態では、時相が「非造影」、「早期相」、「門脈相」、「晩期相」の何れの状態であるかを推定していた。しかし、事前分布の選択に十分な分類であれば、画像の時系列での濃度値変化に関する他の状態の分類でもよい。例えば、濃度値の分布が類似する複数の時相を統合して用いてもよい。例えば、「早期相」と「晩期相」を一つにまとめて、「非造影」、「門脈相」、「早期相または晩期相」の何れであるかを推定するようにしてもよい。また、推定する状態は医学の分野で分類される「時相」とは必ずしも一致していなくてもよく、事前分布のバリエーションに基づいて適宜定義してもよい。
【0058】
また、推定するのは「時相」のような離散的な状態ではなく、造影剤投与からの経過時間のような連続的な状態であってもよい。この場合、データベース120には、統計データとして、夫々の解剖学的部位における濃度値の事前分布を、造影剤投与からの経過時間の関数(事前分布関数)の形式で保持しておく。また、第一の解剖学的部位における濃度値の特徴量を引数として、造影剤投与からの経過時間を推定する関数(経過時間関数)を保持しておく。
【0059】
ここで、事前分布関数は、事前に撮像された複数症例の画像データの夫々の解剖学的部位に関して、夫々の症例における経過時間と濃度値の分布情報の組を得て、時間を説明変数、濃度値の平均値と分散値の夫々を目的変数とした関数を当てはめることで生成する。また、経過時間関数は、事前に撮像された複数症例の画像データの第一の解剖学的部位に関して、夫々の症例における経過時間と夫々の(肝臓と心臓の)濃度値の特徴量の組を得て、夫々の特徴量を説明変数、時間を目的変数とした関数を当てはめることで生成する。
【0060】
そして、ステップS2060において、時相推定部1060は、時相推定の代わりに以下の処理を行う。すなわち、上記の経過時間関数を用いて、第一の領域抽出結果から算出される濃度値の特徴量から経過時間を推定する。また、ステップS2070において、第二の領域抽出部1070は、ステップS2060得た経過時間に基づき、上記の(夫々の第二の解剖学的部位の)事前分布関数を用いて、第二の解剖学的部位の夫々の濃度値の事前分布を推定する。そして、該事前分布を初期値として用いて、第二の領域の抽出処理を行うようにすることができる。
【0061】
(変形例1−2)
上記の実施形態におけるステップS2070の処理では、時相ごとに定める濃度値の事前分布として、平均値と分散値を得ていた。しかし、平均値と分散値の両方を必ずしも時相に応じて求めなくてもよい。例えば、分散値には共通の固定値を用いることにして、平均値だけを時相に応じて得るようにしてもよい。
【0062】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、第一の領域抽出の結果から推定した時相の情報を利用して、第二の領域抽出を行っていた。一方、本実施形態における画像処理装置は、時相の推定を介さずに同様の効果を得る。以下、本実施形態に係る画像処理装置について、第1の実施形態との相違部分を中心に説明する。
【0063】
<画像処理装置の構成>
図4は、本実施形態に係る画像処理システムの構成例を示す。第1の実施形態と同じ部分は同じ番号で示している。すなわち、本実施形態に係る画像処理装置400は、第1の実施形態における時相推定部1060の代わりに事前分布推定部4060を有する。また、第二の領域抽出部4070の処理が、第1の実施形態における第二の領域抽出部1070の処理と異なっている。その他の構成については第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0064】
事前分布推定部4060は、特徴量算出部1050が算出した第一の解剖学的部位の濃度値に関する特徴量を用いて、第二の解剖学的部位の濃度値の事前分布を推定する。この処理には、統計データ取得部1020が取得した統計データを用いる。そして、推定した事前分布の情報を第二の領域抽出部4070へと出力する。
【0065】
本実施形態における統計データには、第二の解剖学的部位の夫々についての、当該部位の濃度値の事前分布(平均値と分散値)と、第一の解剖学的部位の濃度値に関する特徴量とを対応付けた関数が含まれている。この関数は、第一の解剖学的部位の濃度値に関する特徴量を引数として与えると、第二の解剖学的部位の濃度値の事前分布を返す対応表のような役割を果たす。この関数は、確率アトラスと同様に、事前に撮像された多数の症例の夫々の画像データと手動で作成された解剖学的部位を表すラベル画像とを用いて作成される。
【0066】
本実施形態では、まず、画像データとラベル画像を用いて各解剖学的部位の濃度値の分布情報(平均値と分散値)を算出する。次に、第一の解剖学的部位である肝臓と心臓の濃度値の特徴量をそれぞれ軸に割り当てた特徴量空間を定義する。最後に、第二の解剖学的部位の濃度値の分布情報を目的変数、第一の解剖学的部位の濃度値の特徴量を説明変数とした関数を当てはめることで作成する。
【0067】
第二の領域抽出部4070は、事前分布推定部4060が推定した第二の解剖学的部位の濃度値の事前分布を用いて、第二の解剖学的部位の領域を入力画像から抽出する。そして、抽出した第二の領域の情報を表示制御部1080へと出力する。
【0068】
<画像処理装置の処理>
図5は、本実施形態に係る画像処理装置400が実施する全体の処理手順を示すフローチャートである。なお、ステップS2000〜S2050およびS2080で各部が行う処理は、第1の実施形態と同様である。
【0069】
(S5060:事前分布の推定)
ステップS5060において、事前分布推定部4060は、ステップS2050で算出した第一の解剖学的部位の濃度値に関する特徴量を用いて、第二の解剖学的部位の濃度値の事前分布を推定する。具体的には、第二の解剖学的部位の事前分布を表す濃度値関数の夫々に第一の解剖学的部位の濃度値に関する特徴量を入力して、事前分布の値を得る。
【0070】
(S5070:第二の領域抽出)
ステップS5070において、第二の領域抽出部4070は、ステップS5060で推定した第二の解剖学的部位の濃度値の事前分布を用いて、第二の解剖学的部位の領域を入力画像から抽出する。本ステップの処理は、ステップS2040と同様である。ただし、ステップS5060で推定した事前分布を用いる点だけが、ステップS2040の処理とは異なっている。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、特徴量空間を用いることで、時相よりも細かい状態で分類することが可能となり、より高精度なパラメータ選択を行うことができる。
【0072】
このように、第1の実施形態、第2の実施形態によれば、画像データに時相情報の欠損または誤りがあった場合でも、画像の時相、または、解剖学的部位の濃度値の事前分布を推定できる。そして、その推定結果を用いることで、後段の画像処理の精度を向上させることができる。
【0073】
(第3の実施形態)
背景技術において説明した通り、造影剤を投与してからの経過時間が異なると、同じ解剖学的部位であっても染まり方が異なる。そのため、例えば解剖学的部位の領域を抽出する画像処理において、さまざまな時相の画像を処理対象とすると、一つの画像処理パラメータでは正確な抽出が行えない場合がある。特許文献1では、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格に従って保存された医用画像のヘッダ部から撮影時刻を取得し、取得した撮影時刻に基づいて領域拡張法や動的輪郭法で使用するパラメータを設定する技術が開示されている。
【0074】
しかしながら、実臨床で使用する医用画像では、領域拡張法や動的輪郭法といった簡単な領域抽出手法では領域を高精度に抽出することができない。そこで、第3の実施形態、第4の実施形態では、さまざまな時相の医用画像中に存在する注目領域を抽出する領域抽出処理の精度を向上させる技術を提供する。
【0075】
<概要>
本実施形態に係る画像処理装置は、当該装置へ入力された医用画像(入力画像)から臓器や病変部など被検体の所定の解剖学的部位(抽出対象の解剖学的部位)の領域を抽出する。このとき、入力画像から時相の情報(例えば、「非造影」、「早期相」、「門脈相」、「晩期相」)を推定し、その後、入力画像の各画素について、推定した時相の情報に基づき帰属度を算出することを特徴とする。ここで帰属度とは、抽出対象の解剖学的部位のうちのいずれに属しているかを表す値のことである。後段の領域抽出処理では、時相情報に基づいて算出された帰属度を利用して、入力画像から抽出対象の解剖学的部位に対応する領域を抽出する。このような方法により、入力画像がどのような時相であっても、抽出対象の解剖学的部位を良好に抽出することが可能となる。
【0076】
解剖学的部位に対応する入力画像中の領域は、造影剤投与からの経過時間に応じて特徴的な濃染パターンを有する。本実施形態に係る画像処理装置では、この濃染パターンに基づいて入力画像の時相の情報を推定する。そのために、はじめに解剖学的部位の抽出を行う。しかしながら入力画像から時相情報を取得する段階では、帰属度も(当然のことながら時相情報も)使用できないため、解剖学的部位に対応する領域を高い精度で抽出することができない。そこで、本実施形態の画像処理装置は、統計的に患者間で位置変動の少ない解剖学的部位を、時相推定のための解剖学的部位として選択する。そして、当該部位を、位置情報に重みをおいた(濃度値の事前分布が曖昧でも実施可能な)領域抽出手法により抽出する。このような抽出手法で得られた時相推定のための解剖学的部位の領域から、当該領域内の濃度値の分布情報を時相推定のための画像特徴量として取得する。そして、この濃度値の分布情報に基づいて、画像の時相を推定する。
【0077】
次に推定した時相の情報に基づいて、各画素の帰属度を算出する。本実施形態における帰属度とは、入力画像のそれぞれの画素(もしくは複数の画素からなる領域)が、抽出対象の解剖学的部位のうちのいずれの部位の一部であるかを表す値であり、各画素(もしくは領域)の画素値を基準となる値と比較することで算出される。このような画素値に基づく帰属度の算出方法では、抽出対象の解剖学的部位のそれぞれについて、比較対象の基準値を入力画像の時相に応じて、適切に選択する必要がある。そこで本実施形態では、入力画像の時相の情報に基づいて、帰属度算出のための基準値を選択する。そして選択された基準値に基づいて、各画素の帰属度を算出する。
【0078】
抽出対象の解剖学的部位に対応する領域を入力画像から抽出する処理では、算出された帰属度に基づいて領域抽出を実行する。領域抽出に用いる手法は、帰属度を利用する手法であればどのような方法でもよい。時相に基づいて算出された帰属度を利用することで、抽出対象の解剖学的部位に対応する領域を、入力画像の時相の状態によらず良好に抽出することができる。
【0079】
以下の説明において、本実施形態に係る画像処理装置は、被検体の胸腹部の3次元画像を処理対象とする場合を例として説明する。そして解剖学的部位として、肝臓、心臓、左腎臓、右腎臓、および脾臓の各領域を画像から抽出する場合を例として説明する。また現在注目している解剖学的部位(すなわち肝臓、心臓、左腎臓、右腎臓、脾臓)以外の臓器や軟部組織、空気等の領域を、便宜的に一つの解剖学的部位と見なし、以降、「その他の解剖学的部位」と記述する。本実施形態では、「その他の解剖学的部位」も抽出対象の解剖学的部位の一つに加える。
【0080】
上述の解剖学的部位のうち、肝臓と心臓は患者間での位置変動が少ない部位であるという性質を有している。すなわち、時相が不明であっても抽出が容易な部位である。また、これら2つの部位は、濃染のパターンが互いに異なる(心臓は肝臓よりも早くコントラストのピークを迎える)部位であるという性質を有している。すなわち、二つの領域内の濃度値の分布情報を組み合わせることで、時相の推定を安定して行うことができる。以上の性質を考慮して、本実施形態では、肝臓および心臓を時相推定のための解剖学的部位として選択する。
【0081】
本明細書では、以降、抽出対象の解剖学的部位を集合Lで、時相情報を取得する際に参照する解剖学的部位をL
tで表す。また肝臓、心臓、左腎臓、右腎臓、脾臓、「その他の解剖学的部位」をそれぞれ、liver, heart, lkidney, rkidney, spleen, othersというラベルで表す。すなわち、L = {liver, heart, lkidney, rkidney, spleen, others}であり、L
t = {liver, heart }である。なお本明細書では実人体中の解剖学的部位(肝臓、心臓、左腎臓、右腎臓、脾臓)と画像処理装置内で考慮する解剖学的部位(ラベル値でいうとliver, heart, lkidney, rkidney, spleen)を1対1で対応させている。しかしながら、1つの解剖学的部位が同じ時相であっても複数の異なる画像特徴を持つ場合は、該解剖学的部位を複数の仮想的な該解剖学的部位に対応させることができる。例えば、肝臓中に濃度値の明るい部分と暗い部分が存在する場合や、肝臓内に腫瘍などの異常領域が存在する場合は、肝臓を肝臓1と肝臓2(ラベル値はliver1, liver2)という2つの仮想的な解剖学的部位として表す。このような場合はliver1とliver2の両方をLに加えたうえで、以下に説明する処理を実行する。それにより、肝臓領域の明るい部分と暗い部分の双方を高い精度で抽出することが可能となる。他の解剖学的部位についても同様である。
【0082】
本明細書では、帰属度を利用した領域抽出手法として、特許文献2に記載のグラフカット法による領域抽出手法を説明する。ただし、上述の通り、領域抽出手法はグラフカット法に限定されるものではなく、帰属度を利用する領域抽出手法であれば他の領域抽出手法、例えばLevel set法やSuperpixel法であってもよい。
【0083】
以下、
図6乃至
図10を用いて、本実施形態の画像処理システムの構成及び処理を説明する。
【0084】
<画像処理システムの構成>
本実施形態に係る画像処理システムの構成例を
図6に示す。同図に示すように、本実施形態における画像処理装置600は、データサーバ610および表示部620と接続されている。
【0085】
データサーバ610は、画像データとして、ある条件(モダリティ、撮像モード、日時、体位等)で被検体を予め撮像して得られた3次元断層画像(ボリュームデータ)を保持している。3次元断層画像を撮像するモダリティは、MRI(magnetic resonance imaging)装置、X線CT(Computed Tomography)装置、3次元超音波撮影装置、光音響トモグラフィ装置、PET/SPECT装置などであってもよい。ここでPETとはpositron emission tomographyの略であり、SPECTとはSingle photon emission computed tomographyの略である。これらの3次元断層画像にはスライス枚数が1枚の画像、すなわち2次元画像も含まれる。画像データは、画像データ取得部6010を介して画像処理装置600に入力される。
【0086】
またデータサーバ610は、抽出処理に用いる統計データを保持している。統計データは、統計データ取得部6020を介して画像処理装置600に入力される。統計データの詳細については後述する。
【0087】
表示部620は液晶モニタ等であり、画像処理装置600が生成する表示画像等の各種の情報を表示する。また表示部620には、ユーザからの指示を取得するためのGUI(graphical user interface)も配置されている。
【0088】
<画像処理装置600の構成>
画像処理装置600は、以下に説明する構成要素により構成されている。画像データ取得部6010は、画像処理装置600へ入力される画像データ(入力画像)をデータサーバ610から取得する。そして取得した入力画像を、時相情報取得部6030、第一の帰属度算出部6040、第一の領域抽出部6050、および表示制御部6060へと出力する。
【0089】
統計データ取得部6020は、画像処理装置600へ入力される統計データをデータサーバ610から取得する。そして、取得した統計データを、時相情報取得部6030、第一の帰属度算出部6040、および第一の領域抽出部6050へと出力する。
【0090】
時相情報取得部6030は、入力画像について時相の情報を推定する。本処理部は、画像データ取得部6010から入力画像を受け取る画像取得処理を行う。また統計データ取得部6020から統計データを受け取る。そして取得した統計データに基づいて、入力画像の時相の情報を推定する。この時、入力画像から時相推定のための解剖学的部位の領域を抽出し、その領域の画像情報を参照して、時相の情報を推定する。本処理部で得られた時相の情報は、第一の帰属度算出部6040に出力される。
【0091】
第一の帰属度算出部6040は、統計データ取得部6020から取得した統計データと、時相情報取得部6030で推定した時相の情報を利用して、入力画像中の各画素について帰属度を算出する。ここで帰属度は、抽出対象の部位ごとに計算される。すなわち、入力画像中の1つの画素について、抽出対象の解剖学的部位の数だけ帰属度が計算される。算出した帰属度は、第一の領域抽出部6050に出力される。
【0092】
第一の領域抽出部6050は、統計データ取得部6020が取得した統計データと、第一の帰属度算出部6040で算出した帰属度を参照して、入力画像から抽出対象の解剖学的部位に属する領域を抽出する。すなわち、入力画像中のそれぞれの画素について、その画素が属する部位を決定する。第一の領域抽出部6050は、抽出した領域の情報を表示制御部6060へと出力する。表示制御部6060は、入力画像、および領域抽出結果を、ユーザによる不図示の操作部からの入力に応じて表示部620に表示させる制御を行う。
【0093】
図8は時相情報取得部6030の機能構成を表す図である。時相情報取得部6030は、時相推定のための領域抽出部8010、部位選択部8020、特徴量算出部8030、時相推定部8040を備えている。
【0094】
時相推定のための領域抽出部8010は、時相推定のための解剖学的部位の領域(時相推定のための領域)を入力画像から抽出する。この処理には、統計データ取得部6020が取得した統計データを用いる。部位選択部8020は、時相推定のための解剖学的部位を選択する。そして選択した部位の情報を、特徴量算出部8030および時相推定部8040へと出力する。特徴量算出部8030は、時相推定のための領域抽出部8010が抽出した時相推定のための領域の情報を用いて、時相推定のための解剖学的部位の濃度値に関する特徴量(時相推定のための特徴量)を入力画像から算出する(特徴取得処理)。そして、算出した特徴量を時相推定部8040へと出力する。
【0095】
時相推定部8040は、特徴量算出部8030が算出した濃度値に関する特徴量を用いて、時系列での濃度値変化に関する状態、例えば入力画像の造影時の時相(例えば「非造影」、「早期相」、「門脈相」、「晩期相」)を推定する。この処理には、統計データ取得部6020が取得した統計データを用いる。そして、推定した時相の情報を第一の帰属度算出部6040へと出力する。
【0096】
ここで、データサーバ610が保持する統計データについて説明する。統計データには、存在確率アトラス、形状モデル、抽出対象の解剖学的部位の濃度値の事前分布が含まれる。
【0097】
存在確率アトラスは、標準化された被検体の画像内において、夫々の画素の位置が何れの解剖学的部位であるかの確率(存在確率)を示すものである。存在確率アトラスは、以下の手順で事前に作成される。まず、事前に撮像した多数の症例の夫々の画像データに対して、解剖学的部位の領域を表すマスク画像を手動で作成する。ここでマスク画像とは、画像内の解剖学的部位の領域に含まれる画素とそうでない画素で異なる画素値を取る2値画像のことである。本実施形態では、心臓、肝臓、左腎臓、右腎臓、脾臓、「その他の解剖学的部位」の6つのマスク画像を用いる。ただし「その他の解剖学的部位」については、他の5つのマスク画像より作成可能である。
【0098】
次に、症例間で画像空間の標準化を行い、マスク画像を重ね合わせる。この処理を行うと、各画素において、重ね合わされたマスクの数から各部位の存在確率が算出できる。算出された存在確率を画像値として持たせた画像が存在確率アトラスとなる。なお、空間の標準化は、後述するステップS9010およびS9020と同様の処理によって行うことができる。これによって、アトラス作成の際の空間標準化だけでなく、入力画像と存在確率アトラスの空間標準化も同じアルゴリズムで行うことできる。
【0099】
形状モデルは、抽出対象の解剖学的部位の形状を表すモデルである。本実施形態で用いる形状モデルは、レベルセット分布モデルを用いて表現される。レベルセット分布モデルを用いた形状表現は、画像処理の分野において公知の手法であるため、本詳細については説明を省略する。存在確率アトラスと同様、形状モデルも事前に作成される。作成手順は以下の通りである。なお、形状モデルは抽出対象のそれぞれの解剖学的部位について1つ作成する。
【0100】
以下の説明は、抽出対象の1つの解剖学的部位について、対応する形状モデルを作成する手順である。形状モデルの作成には、複数の被検体のマスク画像を用いる。これには存在確率アトラスの作成時に使用したマスク画像と同じもの(空間標準化されたマスク画像)を使用する。はじめに空間標準化された複数個のマスク画像のそれぞれに対して符号付き距離変換を適用して、距離画像を生成する。ここで符号付き距離変換は、マスク画像中の解剖学的部位の領域に対応する画素に領域の境界からの距離値が正の値で、逆に領域外の画素に境界からの距離値が負の値で格納されている画像である。次に生成された個々の距離画像をそれぞれ1つの多次元ベクトルに変換する。
【0101】
結果として、それぞれのマスク画像に1対1で対応する多次元ベクトルが生成される。こうして得られた多次元ベクトルの集合に対して主成分分析を適用して、1つの平均値ベクトルと複数の固有ベクトルを得る。この平均値ベクトルとそれぞれの固有ベクトルを、レベルセット分布モデルで表現された形状モデルの平均形状(画像)とそれぞれを固有形状(画像)とする。このような手順を抽出対象の解剖学的部位のそれぞれについて実施することで、すべての解剖学的部位の形状モデルを取得できる。
【0102】
抽出対象の解剖学的部位の濃度値の事前分布は、時相情報取得部6030が推定する時相に1対1で対応している。また、時相が不明な場合に用いる濃度値の事前分布を、各部位ごとに格納している。本実施形態では、濃度値の事前分布としてガウス分布を仮定し、平均値と分散値を保持する場合について説明する。
【0103】
以下の説明では、時相tにおける解剖学的部位lの濃度値の事前分布を、平均値I
l_t_DBと分散値σ
l_t_DB2で表す。また、時相が不明な場合に用いる解剖学的部位lの濃度値の事前分布を、平均値I
l_DBと分散値σ
l_DB2で表す。ここで、濃度値の事前分布は、存在確率アトラスの作成に用いた複数症例のラベル画像から事前に算出する。すなわち、夫々の部位について、同じ時相の全ての症例における当該部位の領域内の濃度値の平均値と分散値を求め、これを当該時相における当該部位の濃度値の事前分布とする。
【0104】
また、夫々の部位について、夫々の時相の事前分布の平均(平均値の平均と分散値の平均)を求め、これを、時相が不明な場合の当該部位の濃度値の事前分布とする。なお、時相が不明な場合の事前分布は、何れかの時相の事前分布で代用してもよい。この場合、何れの時相の事前分布を用いるかは、データサーバ610に含まれる複数症例の画像データを用いた予備実験で定めることができる。本実施形態では、時相が不明な場合には門脈相の事前分布を適用する。
【0105】
なお、時相が不明な場合の事前分布は、他の方法で求めてもよい。例えば、夫々の部位について、時相を限定しない全ての症例における当該部位の領域内の濃度値の平均値と分散値を求め、これを、時相が不明な場合の当該部位の濃度値の事前分布と定義してもよい。この場合、全ての時相での濃度値の統計を求めることになるので、時相ごとの統計よりも分散が大きくなる。その結果として、時相が不明な場合には、濃度値の事前分布よりも存在確率アトラスによる位置情報に重みをおいた推定が実施可能となる。
【0106】
<画像処理装置600の処理>
図7は、本実施形態に係る画像処理装置600が実施する全体の処理手順を示すフローチャートである。
【0107】
(S7000:データの取得)
ステップS7000において、画像データ取得部6010は、データサーバ610から処理対象である入力画像を取得する。また、統計データ取得部6020は、データサーバ610から統計データを取得する。
【0108】
(S7010:時相情報の取得)
ステップS7010において、時相情報取得部6030は、入力画像の時相の情報を推定する。ここで
図9のフローチャートを参照して、時相情報取得部6030が行う処理の詳細を説明する。
【0109】
(S9010:ランドマークの配置)
ステップS9010において、時相推定のための領域抽出部8010は、ステップS7000で取得した入力画像上にランドマークを配置する。このランドマークは後段の存在確率アトラスと入力画像を位置合わせする際に用いられる。本実施形態では、入力画像中から肺領域と骨盤領域をそれぞれ閾値処理により抽出し、その領域の重心位置に基づいてランドマークを配置する。
【0110】
具体的には、まず、抽出した肺領域の重心を含むaxial断面と、骨盤領域の重心を含むaxial断面を見つける。次に、そのaxial断面に対して閾値処理により体表を抽出する。最後に、肺と骨盤それぞれの重心から、axial断面上で上下左右に探索点を動かし、体表にぶつかったところをランドマークとする。
【0111】
ランドマークを配置した入力画像の模式図については、第1の実施形態で
図3を参照して説明した通りである。
【0112】
(S9020:存在確率アトラスとの位置合わせ)
ステップS9020において、時相推定のための領域抽出部8010は、ステップS9010で配置されたランドマークを用いて、データサーバ610に格納されている存在確率アトラスと、入力画像との位置合わせを行う。本実施形態では、ステップS9010で配置されたランドマークと、存在確率アトラス上のランドマークとを対応させる。そして代表的な変形モデルの一つであるRadial Basis Function(RBF)で変形場を作成し、存在確率アトラスを入力画像に合うように変形させる。これにより、患者による各解剖学的部位の位置のバイアスを取り除くことができる。なお、画像変形に用いる手法は必ずしもRBFである必要はなく、代表的な変形モデルの一つであるFree Form Deformation(FFD)などを用いてもよい。
【0113】
(S9030:時相推定のための解剖学的部位の選択)
ステップS9030において、部位選択部8020は、画像処理装置600が抽出対象としている解剖学的部位の中から時相推定のための解剖学的部位を選択する。本実施形態では、先に述べた理由により、心臓および肝臓を時相推定のための解剖学的部位として選択する。なお、時相推定のための解剖学的部位の選択は、入力画像に応じて適応的に行うようにしてもよい。例えば、ステップS9020で得た存在確率アトラスとの位置合わせ結果に基づき、候補部位である心臓と肝臓の夫々が入力画像に含まれているか否かを判定し、入力画像に含まれている部位のみを時相推定のための解剖学的部位として選択してもよい。
【0114】
(S9040:時相推定のための領域の抽出)
ステップS9040において、時相推定のための領域抽出部8010は、ステップS9030で選択された時相推定のための解剖学的部位の領域を入力画像から抽出する。本実施形態では、領域抽出手法として、非特許文献1に記載されている最大事後確率法(Maximum a Posterior Probability,MAP法)を採用する。MAP法は、各画素において観測される特徴量v(ここでは濃度値)に基づいて、事後確率が最大になる部位ラベルを夫々の画素に割り当てる手法である。数式で表すと以下のようになる。
【0116】
ここで、Lは抽出対象である解剖学的部位に割り当てられたラベルの集合、lはその中の何れか一つのラベルである。また、vは濃度値、p
p(l|v)は位置pにおけるlの事後確率である。時相推定のための領域抽出部8010は、夫々の画素について、夫々のlの事後確率p
p (l|v)を求め、式(5)によって夫々の画素のラベルを決定する。なお、時相推定のための領域抽出部8010が本ステップで行う処理の目的は時相推定のための解剖学的部位の領域抽出であるが、実際の処理としては、時相推定のための解剖学的部位も含む全ての解剖学的部位の領域抽出が実行される。
【0117】
次に、上述した式(5)の演算に必要な、夫々のlの事後確率p
p (l|v)の導出処理について説明する。周知のように、事後確率p
p (l|v)は、ベイズの定理を用いて以下のように書き換えられる。
【0119】
すなわち、事後確率p
p(l|v)は、位置pにおいて部位ラベルがlであるときの特徴量vの尤度p
p(v|l)と、位置pにおける部位ラベルlの事前確率p
p(l)から算出できる。そこで、第一の領域抽出部6050は、夫々の画素について、夫々のlのp
p(l)とp
p(v|l)を求め、式(6)によってp
p(l|v)を算出する。ここで、夫々の画素におけるlの事前確率p
p(l)は、ステップS7000で統計データの一部として取得した存在確率アトラスから取得できる。
【0120】
最後に、上述した式(6)の演算に必要な、夫々のlにおける尤度p
p(v|l)の導出処理について説明する。ステップS9020で説明したとおり、入力画像と存在確率アトラスとは位置合わせされている。これを用いて、時相推定のための領域抽出部8010は、部位ラベルがlであるときの特徴量vの尤度p
p(v|l)、すなわち、各部位の濃度値の分布を推定する。すなわち、次式を用いてp
p(v|l)を算出する。
【0122】
ここで、pは画像中の画素の位置を表し、I
pは位置pにおける入力画像の濃度値を表す。また、Lはラベルの集合を表す。また、パラメータI
lとσ
l2は、部位lの領域内における濃度値の分布情報(平均値と分散値)である。この分布情報は、統計データから得た事前分布を初期値として、期待値最大化(EM:Expectation Maximization)アルゴリズム(以後、EMアルゴリズムとする)によって反復的に推定される。このとき、分布情報の初期値が入力画像における実際の分布情報に近いほど推定精度が改善される。本ステップの時点では時相情報は使えないため、時相が不明な場合の部位lの事前分布(すなわち、平均値I
l_DBと分散値σ
l_DB2)を初期値として用いる。しかし、位置情報である存在確率アトラスを考慮するMAP法を採用しているため、患者間の位置変動が少ない心臓と肝臓であれば、分布情報が曖昧な条件下であっても良好な抽出を行うことができる。
【0123】
以上の処理により、時相推定のための解剖学的部位の領域が抽出される。なお、領域抽出に用いる手法は必ずしもMAP法である必要はなく、グラフカット法やLevel set法などを用いてもよい。その際はグラフカット法における各ノードの重みや、Level setにおけるzero level set(front)の設定に、存在確率アトラスなどの位置情報を付与することで、本実施形態と同等の結果が期待できる。
【0124】
(S9050:時相推定のための特徴量の算出)
ステップS9050において、特徴量算出部8030は、ステップS9040で抽出された時相推定のための解剖学的部位の領域から、当該領域の濃度値に関する特徴量(時相推定のための特徴量)を算出する。本実施形態では、時相推定のための解剖学的部位の夫々について、領域内の平均濃度値を算出する。なお、算出する特徴量は必ずしも平均濃度値である必要はなく、領域内における濃度値の分散や最大値・最小値などを、当該領域の濃度値に関する特徴量として算出してもよい。また、これらの組み合わせを特徴量としてもよい。
【0125】
(S9060:時相推定)
ステップS9060において、時相推定部8040は、ステップS9050で算出した時相推定のための特徴量を用いて、入力画像の時相を推定する。ここでは、ステップS7000で統計データとして取得した、時相推定のための解剖学的部位の各時相における平均濃度値を用いる。すなわち、入力画像の特徴量と統計データとを比較することで、時相の推定を行う。具体的には、次式を用いて各時相の評価値D
tを算出する。
【0127】
ここで、tは時相を表す。L
tは時相推定のための解剖学的部位の集合であり、l
tはその何れか一つ(本実施形態では肝臓か心臓)を表す。また、I
l1_t_DBは、統計データとして取得した、時相tにおける部位l
tの濃度値の事前分布における平均値を表す。また、I
lt_inは、入力画像における部位l
tの平均濃度値であり、ステップS9050で得た特徴量を表す。すなわち、評価値D
tは、時相推定のための解剖学的部位の平均濃度値の、時相をtと仮定した際の事前分布との差異であり、これをL1ノルムとして求めている。時相推定部8040は、夫々の時相に対して評価値D
tの値を算出する。そして、最小のD
tを与える時相tを時相の推定結果t*とする。
【0128】
なお、評価値D
tの定義は式(8)に限定されるものではなく、例えば、事前分布と平均濃度値のL2ノルム(二乗和の平方根)を用いてもよい。また、事前分布における分散値を考慮した事前分布と平均濃度値のマハラノビス距離をD
tとして用いてもよい。なお、ステップS9050で平均濃度値以外の特徴量を求めている場合には、統計データとしても対応する値を予め時相ごとに用意し、その差異を評価すればよい。また、複数の特徴量を併用する場合には、それらの評価値の和を用いることができる。
【0129】
なお、時相の推定方法は上のような算出方法である必要はない。様々な時相を含む多数の症例の時相推定のための解剖学的部位の濃度値特性を事前に学習しておいて、ステップS9050で得た特徴量(I
l1_in)を入力として時相を推定する任意の識別器を用いるようにしてもよい。例えば、Neural NetworkやSupport Vector Machineのような識別器に特徴量を入力して時相を識別してもよい。
【0130】
なお、本ステップで推定した時相情報は、データサーバ610が保持する入力画像の付帯情報として保存するようにしてもよい。特に、入力画像のヘッダ部分に時相情報を保持する項目がある場合には、当該項目に時相情報を記録するようにしてもよい。
【0131】
以上でステップS7010の説明を終える。
【0132】
(S7020:各臓器への帰属度(第一の帰属度)の算出)
ステップS7020において、第一の帰属度算出部6040は、抽出対象の各々の解剖学的部位について第一の帰属度を算出する。ここで解剖学的部位の集合Lに含まれる一つの部位をlで表す。またLからlを除いた集合をL'
lとし(すなわちL'
l = L − {l})、L'
lに含まれる個々の解剖学的部位をl'
lとする。すると本ステップでは、入力画像のそれぞれの画素pについて、lの事後確率p
p(l|v)と、L'
lに含まれる解剖学的部位l'
lの事後確率p
p(l'
l|v)の最大値p
p(l'
l_max|v)を決定する。そして、それらの事後確率の組(p
p(l|v), p
p(l'
l_max|v))を画素pにおける解剖学的部位lの第一の帰属度として算出する。本ステップでは、入力画像のすべての画素について、この第一の帰属度(事後確率の組)を計算する。
【0133】
まずステップS7010で推定した時相情報t*に基づいて、解剖学的部位lの濃度値の事前分布(すなわち平均値I
l_t*_DBと分散値σ
l_t*_DB2)を統計データ取得部6020より取得する。次にステップS9040で実行したMAP法を再度実行することで、Lに含まれるすべて解剖学的部位について事後確率p
p (l|v)を計算する。ただし本ステップでのMAP法では、式(7)の濃度値の分布情報(平均値l
lと分散値σ
l2)の初期値として時相情報t*に基づいて選択された平均値I
l_t*_DBと分散値σ
l_t*_DB2を使用する。本処理により、抽出対象のそれぞれの解剖学的部位について、事後確率p
p(liver|v), p
p(heart|v), ..., p
p(others|v)を得る。
【0134】
抽出対象のそれぞれの解剖学的部位についての事後確率を計算した後、事後確率の最大値p
p(l'
max|v)を求める。本処理は、注目する部位lに対して一意に決まるL'
lの部位の中で、事後確率が最大のものを選択することで達成される。肝臓を例に挙げて説明すると、p
p(liver'
max|v)を決定する時は、肝臓以外の部位の事後確率p
p(heart|v), p
p(lkidney|v), ..., p
p(others|v)の中で最も値の大きな事後確率を選択する。一般的には、解剖学的部位lについてp
p(l'
max|v)は次式で計算される。
【0136】
式(9)を用いてp
p(l'
max|v)を計算した後、p
p(l|v)と合わせて一組の値(p
p(l|v), p
p(l'
max|v))とし、これを解剖学的部位lの第一の帰属度とする。本ステップで計算された第一の帰属度(p
p(liver|v), p
p(liver'
max|v)), (p
p(heart|v), p
p(heart'
max|v)), ..., (p
p(others|v), p
p(others'
max|v))は、第一の領域抽出部6050に出力される。
【0137】
本実施形態では、注目部位の事後確率と、注目部位以外の部位の事後確率の最大値からなる1組の数値を第一の帰属度としたが、第一の帰属度の表現はこれに限定されるものではない。例えば、注目部位の事後確率のみを第一の帰属度としてもよい。また、第一の注目部位の事後確率、第二の注目部位の事後確率、それら以外の部位の事後確率の最大値というように、複数の事後確率を1組の数値として第一の帰属度としてもよい。さらに本実施形態では事後確率の最大値を第一の帰属度の一方の数値としたが、事後確率の平均値を用いてもよい。
【0138】
(S7030:第一の帰属度を用いて得られる領域に対する形状モデルの当てはめ)
ステップS7030において、第一の領域抽出部6050は、第一の帰属度を用いて領域を抽出した後、抽出した領域に対して形状モデルを当てはめる。本ステップの処理は、抽出対象のそれぞれの解剖学的部位について、それぞれ独立に実行される。以下では、解剖学的部位lについて形状エネルギーを計算する例を説明する。
【0139】
はじめに第一の領域抽出部6050は、データサーバ610に格納されている形状モデルを、統計データ取得部6020を介して取得する。以下、解剖学的部位lの形状モデルのうち、平均形状画像をφ
l0と、N
shape個存在している固有形状画像のうちk番目の固有形状画像をφ
lk(k = 1, ..., N
shape)と記述する。
【0140】
次に前ステップで算出した第一の帰属度に基づいて、抽出対象の解剖学的部位lの領域を抽出する。これは入力画像の各画素で、第一の帰属度((p
p(l|v), p
p(l'
max|v))に対して閾値処理p
p(l|v)−p
p(l'
max|v)>T
lを適用することで得られる。本処理により、抽出対象の解剖学的部位lの領域を表すマスク画像M
ltargetを得る。
【0141】
次にマスク画像M
ltargetに対して、形状モデルを当てはめる。レベルセット分布モデルで表現された形状モデルでは、形状を表すマスク画像は次式で表現される画像φ
lを値0で閾値処理することで得られる。
【0143】
ここで式(10)中の(c
l1, c
l2, ..., c
lNshape)は形状モデルのパラメータである。このパラメータにさまざまな値を設定することで、形状モデルは解剖学的部位lの取りうる様々な形状を表現することができる。マスク画像M
ltargetに対する形状モデルの当てはめでは、次の処理を行う。事前に、パラメータ(c
l1, c
l2, ..., c
lNshape)にさまざまな値を設定することで、複数のパラメータからなるパラメータの集合を定義する。次にパラメータの集合に含まれるそれぞれのパラメータについて式(10)でφ
lを計算し、さらにφ
lを値0で閾値処理をする。この閾値処理で取得したマスク画像M
lshape(cl1, cl2, ..., clNshape)とM
ltargetを比較して、その差を求める。このような処理を事前に定義したすべてのパラメータについて行うことで、差がもっとも小さくなるようなパラメータ(c'
l1, c'
l2, ..., c'
lNshape)を取得する。さらに取得したパラメータを、再度、式(10)に代入することで、対応する形状モデルの当てはめ結果M'
lshape(c'l1, c'l2, ..., c'lNshape)を取得する。
【0144】
なお、形状モデルのパラメータの集合はさまざまな方法で決定することができる。もっとも簡単な方法は、ある一定範囲の値を網羅的に割り当てることである。具体的にはc
li_min < c
li_max (ただしi = 1, 2, ..., N
shape)なる値をあらかじめ決め、その2つの数から設定される値の範囲[c
li_min, c
li_max]を一定数Zで分割して、c
liに割り当てる。すなわちc
li = k * (c
li_max - c
li_min) / Z + c
li_min (ただしk = 0, 1, ..., Z)のように割り当てる。ここでc
li_minとc
li_maxは、形状モデルを構築する際に得られる固有値に基づいて設定することができる。例えば、固有形状画像φ
lkに対応する固有値をλ
lkとする時、c
li_min = −Y *λ
lk、c
li_max = Y *λ
lkとする。ここでYは、事前に決めた定数である。また固有値λ
lkをそのまま使う代わりに、その逆数1/λ
lkを使用してもよいし、平方根を使用してもよい。
【0145】
(S7040:第一の帰属度を用いたグラフの生成)
ステップS7040において、第一の領域抽出部6050は、特許文献2で開示されているグラフカット法で使用するグラフを生成する。
【0146】
ここで
図10を参照して、グラフカット法におけるグラフについて、本実施形態を理解するために必要な事項に限定して説明する。
図10では図面の見やすさを考慮して、一辺が3画素の2次元画像1600(
図10(a))と、それに対応するグラフ1610(
図10(b))を用いて、グラフを説明する。
【0147】
グラフカット法で生成されるグラフ1610は、画像1600の各画素に1対1、もしくは画像中で隣接する複数個の画素に対して1つ対応する画像ノードから構成される。グラフはさらに、領域の前景ラベルと背景ラベルに対応するターミナル・ノード1612、1613から構成される。隣接する複数の画像ノード間は、エッジで互いに連結される。例えば、画像中のある1つの画素1601に対応する画像ノード1614と、その画素の周辺4近傍にある画素1602に対応する画像ノード1615は、エッジ1616で互いに連結されている。グラフの連結近傍数は、領域抽出の精度と計算リソースのバランスを考慮して決定されるが、一般的には2次元画像の場合は4または8、3次元画像の場合は6または26が利用される。画像ノード間を連結するエッジに加えて、グラフ内のすべての画像ノードはそれぞれ、2つのターミナル・ノード1612、1613とエッジで連結される。例えば
図10(b)の画像ノード1615は、ターミナル・ノード1612、1613とエッジ1618、1619で連結されている。以下、画像ノード間に張られるエッジをn−link、画像ノードとターミナル・ノードの間に張られる2本のエッジをt−linkと記述する。
【0148】
すべてのn−linkとt−linkは、エネルギーと呼ばれる正の数を持つ。一般にはn−linkには2つの画像ノードに対応する画素(または領域)間の類似性に基づいて、エネルギーを割り当てる。そしてt−linkには、対応する画素の前景らしさと背景らしさの尤度に基づいて、エネルギーを割り当てる。
【0149】
図7におけるステップS7040の説明に戻る。本ステップでは、ステップS7020で算出した第一の帰属度(p
p(l|v), p
p(l'
max|v))とステップS7030で得られた形状モデルの当てはめ結果に基づいて、グラフカット法で利用するグラフを生成する。グラフは抽出対象のそれぞれの解剖学的部位に対して1つ作成されることに注意されたい。以下では解剖学的部位lに対応するグラフG
lを作成する例を説明する。
【0150】
まず、入力画像の各画素に対応する画像ノードを作成する。そして画像ノードとターミナル・ノード間をt−linkで、画像ノード間をn−linkで連結する。
【0151】
次にステップS7020で算出した第一の帰属度(p
p(l|v), p
p(l'
max|v))に基づいて、グラフG
l中のすべてのt−linkにエネルギー値を設定する。今、画素pに対応する画像ノードをN
pとする。そして画像ノードN
pと2つのターミナル・ノードN
s、N
tを連結するt−linkに割り当てるエネルギーを、それぞれE
sp、E
ptとする。するとE
spとE
ptは、次式のように設定される。
【0153】
式(11)にしたがって、グラフG
l中のすべてのt−linkにエネルギーを割り当てる。
【0154】
最後にグラフ中のすべてのn−linkにエネルギーを設定する。n−linkに割り当てるエネルギーの計算は、公知の方法にしたがって行う。入力画像中の画素Aに対応する画像ノードをN
Aと、また画素Aの近傍画素Bに対応する画像ノードをN
Bとする。そして画素Aの画素値をI
Aと、画素Bの画素値をI
Bとする。さらに画素Aと画素Bの画像上での距離を返す関数をdist(A,B)とする。また、形状モデルの当てはめ結果を参照する関数をS(A,B)とする(詳細は後述)。すると画像ノードN
AとN
Bを連結するn−linkに割り当てるエネルギーE
NANBは、次式で計算される。
【0156】
式(12)においてw
intensityとw
modelは、それぞれ第1項(画像濃度値に関する項)と第2項(形状モデルの当てはめ結果に関する項)の寄与を決定する重み係数である。またσは画素値I
AとI
Bの間の近接性を評価するための定数である。この定数はステップS9040の説明で述べた濃度値の分布情報σ
l2等とは異なる種類の数値であることに注意されたい。
【0157】
式(12)の第2項は、形状モデルの当てはめ結果を参照して値を返すエネルギー項である。本項は、本ステップで得られる領域の境界が、前ステップで取得したマスク画像M'
lshape(c'l1, c'l2, ..., c'lNshape)中の解剖学的部位の領域の境界と似た形状になるようにするために導入される。このような効果を持つ項はさまざまな形式で表現可能であるが、本実施形態では以下の項を用いる。
【0159】
式(13)において、φ
lはM'
lshape(c'l1, c'l2, ..., c'lNshape)に対して符号付き距離変換を適用して得られた距離画像であり、ωは正の定数である。ここで符号付き距離変換は、M'
lshape(c'l1, c'l2, ..., c'lNshape)中の画素のうち、解剖学的部位の領域に属する画素に正の距離値を、そうでない画素に負の距離値を与える。以上で説明した式(12)と式(13)にしたがって、グラフG
l中のすべてのn−linkにエネルギーを割り当てる。
【0160】
以上で述べた方法で、抽出対象のそれぞれの解剖学的部位について、対応するグラフを生成する。
【0161】
(S7050:グラフカット法による領域抽出)
ステップS7050において、第一の領域抽出部6050は抽出対象のすべての解剖学的部位の領域を入力画像から抽出する。本ステップでは、特許文献2で開示されているグラフカット法を用いて領域抽出を行う。具体的には、ステップS7040で作成したグラフG
lをMax−flow/min−cutアルゴリズムを用いて2つの部分グラフに分割し、その分割結果に基づき解剖学的部位lの領域を特定する。この処理を抽出対象のすべての解剖学的部位について行うことで、すべての解剖学的部位の領域を取得する。
【0162】
ステップS7050の処理を終えたのち、第一の領域抽出部6050は、全領域の抽出結果を3次元のラベル画像の形態でデータサーバ610へ出力して保存する。
【0163】
(S7060:領域抽出結果の表示)
ステップS7060において、表示制御部6060は、ステップS7050で領域抽出された各部位の領域を入力画像上に表示する。本実施形態では、不図示のUI(user interface)を介してユーザが指定した入力画像の断面画像に、ステップS7040で得たラベル画像の当該断面を重畳して表示する。
【0164】
ここまでで説明したように、本実施形態によれば、さまざまな時相の医用画像中に存在する注目領域を、領域拡張法や動的輪郭法といった簡便な領域抽出手法よりも高い精度で抽出することが可能となる。
【0165】
(変形例3−1)
上記の実施形態では、時相が「非造影」、「早期相」、「門脈相」、「晩期相」の何れの状態であるかを推定し、その結果に基づいて第一の帰属度を算出する際に必要な事前分布を選択していた。しかし、事前分布の選択に十分な分類であれば、画像の時系列での濃度値変化に関する他の状態の分類でもよい。例えば、濃度値の分布が類似する複数の時相を統合して用いてもよい。例えば、「早期相」と「晩期相」を一つにまとめて、「非造影」、「門脈相」、「早期相または晩期相」の何れであるかを推定するようにしてもよい。また、推定する状態は医学の分野で分類される「時相」とは必ずしも一致していなくてもよく、事前分布のバリエーションに基づいて適宜定義してもよい。
【0166】
また、推定するのは「時相」のような離散的な状態ではなく、造影剤投与からの経過時間のような連続的な状態であってもよい。この場合、データサーバ610には、統計データとして、造影剤投与からの経過時間を引数として受け取り、その時間における抽出対象の解剖学的部位の濃度値分布を返す関数(事前分布関数)を保持しておく。また、時相推定のための特徴量を引数として受け取り、造影剤投与からの経過時間を推定する関数(経過時間関数)を保持しておく。
【0167】
ここで事前分布関数と経過時間関数は、事前に撮像された複数症例の画像から取得する。具体的には、はじめに、それぞれの画像から、造影剤投与からの経過時間、抽出対象のそれぞれの解剖学的部位についての濃度値の分布情報(平均値と分散値)、時相推定のための特徴量を取得する。そして、造影剤投与からの経過時間と各々の濃度値の分布情報の組に対して、経過時間を説明変数、濃度値の分布情報を目的変数とした関数を当てはめることで、事前分布関数を取得する。また、造影剤投与からの経過時間と時相推定のための特徴量の組に対して、時相推定のための特徴量を説明変数、経過時間を目的変数とした関数を当てはめることで、経過時間関数を取得する。
【0168】
本変形例における処理について説明する。ステップS9060において時相情報取得部6030は、時相推定の代わりに以下の処理を行う。すなわち、時相推定のための特徴量を算出したのち、上記の経過時間関数を用いて時相推定のための特徴量から経過時間を推定する。そしてステップS7020において第一の帰属度算出部6040は、推定した経過時間と事前分布関数を利用して、抽出対象のそれぞれの解剖学的部位に対応する領域について、濃度値の事前分布を推定する。
【0169】
ここまでで説明したように、本変形例における画像処理装置では、時相の情報(すなわち「非造影」、「早期相」、「門脈相」、「晩期相」など)の代わりとなる情報を推定する。このような方法により、さまざまな時相の医用画像中に存在する注目領域を、領域拡張法や動的輪郭法といった簡便な領域抽出手法よりも高い精度で抽出することが可能となる。
【0170】
(変形例3−2)
第3の実施形態では、時相が「非造影」、「早期相」、「門脈相」、「晩期相」の何れの状態であるかを推定し、その結果に基づいて第一の帰属度を算出する際に必要な事前分布を選択していた。しかし、第一の帰属度の算出に必要な事前分布を選択することができれば、時相以外の画像の時系列での濃度値変化に関する情報を用いてもよい。
【0171】
本変形例では、画像の時系列での濃度値変化を表す特徴として、ステップS9050で算出した時相推定のための特徴量を用いる。そして統計データ取得部6020が取得した統計データを用いて、この特徴量から直接(すなわち時相(「非造影」、「早期相」、「門脈相」、「晩期相」)の情報を介することなく)、解剖学的部位の濃度値の事前分布を推定する。
【0172】
本変形例における統計データには、抽出対象のそれぞれの解剖学的部位についての濃度値の事前分布(平均値と分散値)と、時相推定のための特徴量とを対応付けた関数が含まれている。この関数は、時相推定のための特徴量を引数として与えると、抽出対象のそれぞれの解剖学的部位についての濃度値の事前分布を返す対応表のような役割を果たす。この関数は、存在確率アトラスと同様に、事前に撮像された多数の症例の夫々の画像データと手動で作成された解剖学的部位を表すラベル画像とを用いて作成される。具体的には、まず、画像データとラベル画像を用いて各解剖学的部位の濃度値の分布情報(平均値と分散値)を算出する。次に、時相推定のための解剖学的部位である肝臓と心臓の濃度値の特徴量をそれぞれ軸に割り当てた特徴量空間を定義する。最後に、抽出対象のそれぞれの解剖学的部位についての濃度値の分布情報を目的変数、時相推定のための特徴量を説明変数とした関数を当てはめることで作成する。
【0173】
本変形例における処理について説明する。ステップS7010で時相情報取得部6030は、ステップS9010からS9050までの処理を行う。ステップS7020において第一の帰属度算出部6040は、ステップS9050で算出した時相推定のための特徴量を用いて、抽出対象のそれぞれの解剖学的部位について濃度値の事前分布を推定する。具体的には、それぞれの解剖学的部位の事前分布を返す濃度値関数に、時相推定のための特徴量を入力して、事前分布の値を得る。そして推定した濃度値の事前分布を用いて、第一の帰属度を算出する。
【0174】
ここまでで説明したように、本変形例における画像処理装置では、特徴量空間を用いることで、時相の情報(すなわち「非造影」、「早期相」、「門脈相」、「晩期相」など)よりも細かい状態を取得することが可能となる。その結果、さまざまな時相の医用画像中に存在する注目領域を、領域拡張法や動的輪郭法といった簡便な領域抽出手法よりも高い精度で抽出することが可能となる。
【0175】
(変形例3−3)
上記の実施形態におけるステップS7020の処理では、時相ごとに定める濃度値の事前分布として、平均値と分散値を得ていた。しかし、平均値と分散値の両方を必ずしも時相に応じて求めなくてもよい。例えば、分散値には共通の固定値を用いることにして、平均値だけを時相に応じて得るようにしてもよい。
【0176】
(変形例3−4)
上記の実施形態におけるステップS7010において時相情報取得部6030は、入力画像から時相推定のための特徴量を算出して、その結果を利用して時相の情報を取得していた。しかしながら入力画像に時相の情報が付帯している場合には、その情報を利用してもよい。例えば、入力画像がDICOM形式で保存されており、そのヘッダ部(DICOMヘッダ)に撮影時刻や時相の情報(「非造影」、「早期相」、「門脈相」、「晩期相」など)が格納されている場合は、それらの情報を取得するようにしてもよい。また入力画像がDICOM形式で保存されていない場合であっても、入力画像に対応する撮影時刻や時相の情報が何らかの形式でデータサーバ610に格納されている場合は、それらの情報を取得するようにしてもよい。
【0177】
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、入力画像の時相の情報を推定し、推定した時相の情報に基づいて、第一の帰属度を算出していた。そして算出した第一の帰属度に基づいて、入力画像から抽出対象の解剖学的部位に対応する領域を抽出していた。本実施形態における画像処理装置も、第3の実施形態と同様の方法で抽出対象の解剖学的部位に対応する領域を抽出する。しかしながら、本実施形態では、第3の実施形態で領域を抽出した後、抽出した領域を参照して、第3の実施形態で使用したものとは異なる帰属度(第二の帰属度)を計算する。そして第二の帰属度に基づいて、再度、抽出対象の解剖学的部位に対応する領域を抽出する。これにより、第3の実施形態における画像処理装置よりも、高い精度で解剖学的部位の領域を抽出する。以下、
図11から
図13までを参照して、本実施形態に係る画像処理装置について、第3の実施形態との相違部分を中心に説明する。
【0178】
図11は、本実施形態に係る画像処理システムの構成例を示している。第3の実施形態と同じ部分は同じ番号で示している。
図11から分かる通り、本実施形態に係る画像処理装置700は、第3の実施形態における画像処理装置600の構成要素に加えて、第二の帰属度算出部7060、第二の領域抽出部7070を有する。ここで、画像データ取得部6010、統計データ取得部6020、時相情報取得部6030、第一の帰属度算出部6040、第一の領域抽出部6050、表示制御部6060、データサーバ610、表示部620については、その処理も第3の実施形態に係る画像処理装置600と同様である。そのため、説明を省略する。
【0179】
第一の領域抽出部6050は、第3の実施形態に係る画像処理装置600における第一の領域抽出部と同様の処理を実行する。しかしながら、抽出対象の解剖学的部位に対応する領域を入力画像から抽出した後、その抽出結果を、表示制御部6060ではなく、第二の帰属度算出部7060に出力する。
【0180】
第二の帰属度算出部7060は、第一の領域抽出部6050が抽出した領域を参照して、第一の帰属度算出部6040で算出する帰属度とは異なる帰属度(第二の帰属度)を算出する。算出した帰属度は、第二の領域抽出部7070に出力される。
【0181】
第二の領域抽出部7070は、第二の帰属度算出部7060で算出した帰属度に基づいて、入力画像から、再度、抽出対象の解剖学的領域に対応する領域を抽出する。本処理部では、第一の領域抽出部6050とは異なり、反復的に領域抽出処理を実行する。抽出した領域の情報は表示制御部6060に出力される。
【0182】
<画像処理装置の処理>
図12は、本実施形態に係る画像処理装置700が実施する全体の処理手順を示すフローチャートである。本図において、ステップS7000〜S7060で各処理部が行う処理は第3の実施形態と同様である。そのため、説明を省略する。
【0183】
(S12060:各臓器への帰属度(第二の帰属度)の算出)
ステップS12060において第二の帰属度算出部7060は、抽出対象のそれぞれの解剖学的部位について、第二の帰属度を算出する。第二の帰属度は、MAP法を適用して得られる尤度に基づいて算出される。第一の帰属度と同様、第二の帰属度も入力画像の各画素について計算される。すなわち、入力画像の各画素pについて、解剖学的部位lの尤度p
p(v|l)と、「その他の解剖学的部位」の尤度p
p(v|others)の組(p
p(v|l), p
p(v|others))を解剖学的部位lの第二の帰属度として算出する。本ステップでは、入力画像のすべての画素について、この第二の帰属度(尤度の組)を計算する。
【0184】
抽出対象のそれぞれの解剖学的部位lの尤度p
p(v|l)は、ステップS9040で実行したMAP法を再度実行することで計算できる。MAP法を実行する際には、式(7)の濃度値の分布情報(平均値l
lと分散値σ
l2)が初期値として必要となる。本ステップでは、この初期値をステップS7050で取得した解剖学的部位の領域から計算する。すなわち、入力画像の中で部位lとして抽出された領域内の画素の画素値を参照して、その平均値と分散値を計算する。このようにして得られる値を初期値としてMAP法を実行することで、Lに含まれるそれぞれの部位について尤度p
p(v|l)を取得する。最後に解剖学的部位lについて尤度の組(p
p(v|l), p
p(v|others))を作成し、これを解剖学的部位lの第二の帰属度とする。
【0185】
本実施形態では、注目部位の尤度と、「その他の解剖学的部位」の尤度からなる1組の数値を第二の帰属度としたが、第二の帰属度の表現はこれに限定されるものではない。例えば、注目部位の尤度のみを第二の帰属度としてもよい。また、第一の注目部位の尤度、第二の注目部位の尤度、「その他の解剖学的部位」の尤度というように、複数の尤度を1組として第二の帰属度としてもよい。さらに第3の実施形態における第一の帰属度と同様、複数の尤度の最大値や平均値を用いてもよい。
【0186】
なお本ステップにおける濃度値の分布情報の初期値(式(7)における平均値と分散値の初期値)は、ステップS7020で取得した濃度値の分布情報、すなわちEMアルゴリズムで推定した平均値と分散値を使用してもよい。
【0187】
(S12070:グラフカット法の繰り返しによる領域抽出)
ステップS12070において、第二の領域抽出部7070は抽出対象の解剖学的部位に対応する領域を抽出する。ここで
図13に示したフローチャートを参照して、本ステップにおける処理の詳細を説明する。
【0188】
(S13010:抽出した領域の補正)
図13から分かる通り、ステップS12070において第二の領域抽出部7070は、ステップS13010、S13020、S13030、S13040、S13050の処理を反復的に繰り返すことで、抽出対象の解剖学的部位に対応する領域を抽出する。以下では、n回目の抽出処理について説明する。また、前回の抽出処理で抽出した解剖学的部位lの領域をマスク画像M
[n]lに格納した場合について説明する。ここでM
[n]lは2値画像であり、その画素値M
[n]l(p)は画素pが部位lの領域に属するかどうかで異なる値をとる。例えば、画素pが部位lの領域に属する場合はM
[n]l(p) = 1(もしくは0以外の何らかの定数)で、そうでなければM
[n]l(p) = 0である。なおM
[0]l、すなわち反復処理の開始時のマスク画像には、
図12のステップS7050で抽出した解剖学的部位lの領域をマスク画像としたものを使用する。
【0189】
ステップS13010、S13020、S13030、S13040、S13050の反復処理は、しばしば計算時間を費やす処理になる。そこで計算時間を削減するために、反復処理を実施する前に、反復処理への入力、具体的には入力画像、前ステップで算出した第二の帰属度等の画像サイズを小さくして実施することが可能である。このような画像サイズの変更(画像の縮小)は、公知の画像処理であるサンプリング法、例えば最近傍補間法、線形補間法、三次補間法などで実行できる。
【0190】
ステップS13010において、第二の領域抽出部7070は、解剖学的部位の領域についての前回の抽出結果を補正する。本ステップでは、抽出する解剖学的部位に応じてさまざまな処理を実施する。本実施形態では、抽出対象の解剖学的部位の一つである肝臓を例に挙げて説明する。
【0191】
肝臓には腫瘍や壊死領域など、解剖学的な異常領域が存在することがある。これらの異常領域はしばしば、入力画像中の肝臓領域内に、明るい(または暗い)球形領域として存在していることが多い。このような異常領域が肝臓の辺縁部に存在している場合、グラフカット法ではこれらの異常領域を抽出できないことがある。そこで本ステップにおいて、これらの異常領域を抽出し、グラフカット法で抽出した領域に加える。
【0192】
本処理は公知の画像処理方法の組み合わせで実施する。最初に肝臓の前回の抽出結果を格納したマスク画像M
[n-1]liverに対して、図形拡大と収縮処理(モルフォロジ演算であるdilationとerosion処理)を適用する。これにより前回の抽出処理で抽出した肝臓領域に、前回の抽出処理で抽出できなかった肝臓辺縁部の明るい(または暗い)球形領域を加えた、新たなマスク画像を取得できる。このマスク画像をM
[n]tmpと記述する。
【0193】
次にM
[n]tmpとM
[n-1]liverとの間で画像間差分を行うことで、領域の辺縁部に存在する、明るい(または暗い)球形領域のみを抽出する。具体的には、明るい球形領域を抽出する場合には、M
[n]tmp(p) = 1かつM
[n-1]liver = 0かつI(p) > T
tmpを満たす画素pの画素値M
[n]tmp(p)を新たにM
[n]tmp(p) = 1にする。逆に、この条件を満たさない画素の画素値をM
[n]tmp(p) = 0にする。もし暗い球形領域を抽出する場合は、I(p) > T
tmp のかわりにI(p) < T
tmpを条件として同様の閾値処理を行う。こうして得たM
[n]tmpに対してラベリング処理を適用することで、M
[n]tmp中の個々の領域を取得する。
【0194】
最後にM
[n]tmp中の個々の領域について、領域の妥当性について判定処理を行う。現在、抽出しようとしている領域は球形領域である。そこでM
[n]tmp中の個々の領域について球形度を計算し、その値が閾値T
sphericityよりも小さい領域をM
[n]tmp中で削除する。球形度の計算方法も、公知の画像処理手法を利用すればよい。また、この処理で領域の画素数を取捨選択の条件の一つに加えてもよい。すなわち、個々の領域について、その領域を構成する連結画素の画素数を数え、その値がある閾値T
volumeよりも小さい領域を削除する。これにより球形度では球形であると判断される領域(特に小領域)をM
[n]tmp中で削除することができる。
【0195】
以上の処理で得たマスク画像M
[n]tmpを、前回の抽出結果M
[n-1]liverに統合する。
【0196】
なお本ステップは選択的に実施することが可能である。すなわち、入力画像中に異常領域が存在しないことが予め分かっている場合は、本ステップの実行を省略することができる。また、本ステップを後述のステップS13030の後に実行しても、同様の効果を得ることができる。
【0197】
本ステップは抽出対象の解剖学的部位に合わせて、適切な処理を実行してよい。さらに本ステップの処理は時相に応じて変更してもよい。例えば、心臓、右腎臓、左腎臓、脾臓を抽出する場合に、特に明るい領域を画像処理手法で選択的に抽出してもよい。
【0198】
(S13020:第二の帰属度を用いたグラフの生成)
ステップS13020において、第二の領域抽出部7070は、ステップS12060で算出した第二の帰属度に基づいて、グラフカット法で使用するグラフを生成する。グラフは抽出対象のそれぞれの解剖学的部位に対して1つ作成されることに注意されたい。以下では、解剖学的部位lに対応するグラフG
[n]lを作成する例を説明する。
【0199】
グラフは、ステップS7040と同様の処理で作成される。本ステップとステップS7040でのグラフ作成の違いは、t−linkとn−linkに割り当てられるリンクのエネルギーの計算方法である。
【0200】
t−linkに割り当てられるエネルギーの計算方法について説明する。今、画素pに対応する画像ノードをN
pとする。そして画像ノードN
pと2つのターミナル・ノードN
s、N
tを連結するt−linkに割り当てるエネルギーを、それぞれE
sp、E
ptとする。するとE
spとE
ptは、前ステップで算出した第二の帰属度(p
p(v|l), p
p(v|others))と、マスク画像M
[n-1]lから生成される距離画像D
[n]lの画素値(距離値)D
[n]l(p)に基づいて計算される。計算の詳細を説明する。
【0201】
はじめに距離値D
[n]l(p)を求める。距離値D
[n]l(p)は公知の画像処理手法である符号付き距離変換をマスク画像M
[n-1]lに適用することで得られる。ここで使用する符号付き距離変換は、M
[n]l中の画素のうち部位lの領域に含まれる画素に対して正の距離値を、また含まれない画素に対して負の距離値を与える。
【0202】
次に第二の帰属度(p
p(v|l), p
p(v|others))と距離値D
[n]l(p)から、E
spとE
ptを算出する際に参照する値B
[n]l(p)を計算する。この値は次式により計算される。
【0204】
ここでD
constは距離値を表す数である。この値を正の値とすることにより、今ステップで抽出される解剖学的部位の領域は、前ステップで得られた領域よりも大きな領域になることが期待できる。また逆に負の値とすることにより、今ステップで得られる領域は前ステップで得られた領域よりも小さな領域になることが期待できる。本実施形態ではD
constを正の数とする。
【0205】
式(14)のw
likelihoodとw
distanceはそれぞれ、第二の帰属度に関係する項と距離値に関係する項にかける重み定数である。これらは実験的に決定する。
【0206】
最後に式(14)で計算されるB
[n]l(p)に基づいて、E
spとE
ptを算出する。E
spとE
ptの値の算出式は、B
[n]l(p)の符号により異なる。B
[n]l(p)が正の数である場合は、次式に基づいてE
spとE
ptの値を算出する。
【0208】
逆に、B
[n]l(p)が負の数である場合は、次式に基づいてE
spとE
ptの値を算出する。
【0210】
式(15)または式(16)にしたがって、グラフG
[n]l中のすべてのt−linkにエネルギーを割り当てる。
【0211】
次にn−linkに割り当てるエネルギーの計算方法について説明する。本ステップでもステップS7040と同様、式(12)と式(13)を用いてn−linkに割り当てるエネルギーを計算する。ステップS7040での計算との違いは、式(13)中のθ
lの計算方法である。本ステップでは、θ
lをt−linkのエネルギーを計算する際に取得した距離画像D
[n]lとする。すなわちθ
l = D
[n]lとする。このような計算方法により、グラフG
[n]l中のすべてのn−linkにエネルギーを割り当てる。
【0212】
以上で述べた方法で、抽出対象のそれぞれの解剖学的部位について、対応するグラフG
[n]lを生成する。
【0213】
(S13030:グラフカット法による領域抽出)
ステップS13030において、第二の領域抽出部7070は、前ステップで算出したそれぞれのグラフG
[n]lに対してグラフカット法を適用し、入力画像から抽出対象の解剖学的部位に対応する領域を抽出する。本ステップの処理は、ステップS7050と同じである。
【0214】
(S13040:抽出した領域の評価)
ステップS13040において、第二の領域抽出部7070は、前ステップで抽出した領域を所定の基準で評価する。この評価結果は、次ステップで反復処理の終了判定に使用される。
【0215】
本ステップでは、3つの基準で抽出した領域を評価する。以下では、n回目の領域抽出処理で取得したすべての部位の領域を格納したラベル画像を使用して、本ステップで評価する基準について説明する。このラベル画像では、画素pが部位lの領域に属する場合は、対応する画素値R
p [n]がlとなる。すなわちR
p [n] = lである。
【0216】
本ステップで評価する1つめの基準は、前回の領域抽出で取得した部位lの領域と、今回の領域抽出で取得した領域の差である。具体的には、部位lに関してR
p[n-1] = lかつR
p[n-1] != l、またはR
p[n-1] != lかつR
p[n-1] = lとなる画素の数である。なお、"a != b"は2つの数値a,bが異なることを表す。
【0217】
2つ目の基準は、前回の領域抽出では部位lの領域として抽出されなかった領域のうち、今回の領域抽出で部位lの領域として抽出された部分である。具体的には、部位lに関してR
p[n-1] != lかつR
p[n-1] = lとなる画素の数である。
【0218】
3つ目の基準は、2つ目の基準とは逆に、前回の領域抽出で部位lの領域として抽出された部分のうち、今回の領域抽出では部位lの領域として抽出されなかった部分である。具体的には、部位lに関してR
p[n-1] = lかつR
p[n-1] != lとなる画素の数である。
【0219】
解剖学的部位の集合Lに含まれるそれぞれの部位の領域を、上述の3つの基準で評価する。n回目の領域抽出処理で取得した部位lの評価結果をV
l_1[n]、V
l_2[n]、V
l_3[n]で表す。
【0220】
(S13050:評価値の判定とフローの制御)
ステップS13050において、第二の領域抽出部7070は前ステップでの評価結果に基づいて、反復的な領域抽出処理の終了を判定する。本ステップでは評価結果を、条件1:V
l_1[n-1] = 0、条件2:V
l_2[n-1] = V
l_2[n] かつV
l_3[n-1] = V
l_3[n]、という2つの条件で判定する。そして2つの条件のうち、少なくとも一方の条件が満たされていることを判定する。もし、少なくとも一方の条件が満たされている場合は、ステップS13060の処理を実行する。もし条件が満たされていない場合は、ステップS13010の処理に戻る。
【0221】
(S13060:グラフカット法の反復で得られた領域に基づくグラフの生成)
本ステップと次ステップで、抽出対象の解剖学的部位に対応する領域を入力画像から再度抽出する。ステップS13060とS13070は、ステップS13010、S13020、S13030、S13040、S13050の反復処理で抽出した領域の精度をさらに高めることを目的として実施する。そのため、この2つのステップは入力画像と同じ画像サイズ、または少なくとも反復処理で利用していた画像サイズよりも大きな画像サイズで実施することが望ましい。もし反復処理において画像サイズを縮小させていた場合は、反復処理の出力、例えば解剖学的部位の抽出結果であるマスク画像の画像サイズを、入力画像と同等の画像サイズに変換する処理を行ったうえで、実施するとよい。このような画像サイズの変換は、公知の画像処理であるサンプリング法、例えば最近傍補間法、線形補間法、三次補間法などで実行できる。
【0222】
ステップS13060において第二の領域抽出部7070は、ステップS13010からS13050までの反復処理で抽出した解剖学的部位の領域に基づいて、グラフカット法で使用するグラフを生成する。以下では、ステップS13010からS13050までの反復計算がm回目で終了した場合について説明する。これまでと同様、グラフは抽出対象のそれぞれの解剖学的部位に対して1つ作成されることに注意されたい。以下では、解剖学的部位lに対応するグラフG
[m]lを作成する例を説明する。また、解剖学的部位lに対応する領域がマスク画像M
[m]lに格納されているとする。
【0223】
グラフG
[m]lは、ステップS13020と同様の処理で生成される。本ステップとステップS13010でのグラフ作成との違いは、t−linkに割り当てられるエネルギーの計算方法である。ステップS13020では式(13)にしたがって、E
spとE
ptを算出する際に参照する値B
[n]l(p)を計算していた。本ステップでは、次式に示すように、マスク画像M
[m]lを符号付き距離変換して得られる距離画像D
[m]lの距離値D
[m]l(p)に基づいて計算される。ここで使用する符号付き距離変換は、M
[m]l中の画素のうち部位lの領域に含まれる画素に対して正の距離値を、また含まれない画素に対して負の距離値を与える。
【0225】
式(17)のw'
distanceは距離値に関係する項にかける重み定数である。この値は実験的に決定する。
【0226】
最後に式(17)で計算されるB
[m]l(p)に基づいて、E
spとE
ptを算出する。算出式は、ステップS13020での式(15)と式(16)と同様の式を用いる。すなわち、B
[m]l(p)が正の数である場合は式(15)を、逆にB
[m]l(p)が負の数である場合は、式(16)を用いる。ただしいずれの式でも、B
[n]l(p)ではなくB
[m]l(p)とする。このような算出を行うことで、グラフG
[m]l中のすべてのt−linkにエネルギーを割り当てる。
【0227】
以上で述べた方法で、抽出対象のそれぞれの解剖学的部位について、対応するグラフG
[m]lを生成する。
【0228】
(S13070:グラフカット法)
ステップS13070において第二の領域抽出部7070は、前ステップで算出したそれぞれのグラフG
[m]lに対してグラフカット法を適用し、入力画像から抽出対象の解剖学的部位に対応する領域を抽出する。本ステップの処理は、ステップS7050と同じである。
【0229】
以上で、ステップS12070において第二の画像処理部7070が実行する処理の詳細についての説明を終える。
【0230】
ステップS12070の処理を終えた後、第二の領域抽出部7070は、抽出した領域の情報を表示制御部6060に出力する。そして表示制御部6060は、ステップS7060の処理を実行する。本処理は第3の実施形態に係る画像処理装置600と同じである。
【0231】
ここまでで説明したように、本実施形態によれば、さまざまな時相の医用画像中に存在する解剖学的部位を、第3の実施形態よりも高い精度で抽出することが可能となる。
【0232】
以上のように、第3の実施形態、第4の実施形態によれば、さまざまな時相の医用画像中に存在する注目領域を高い精度で抽出することが可能となる。また、さまざまな時相の医用画像中に存在する解剖学的部位を、領域拡張法や動的輪郭法といった簡便な領域抽出手法よりも高い精度で抽出することができる。
【0233】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。