特許第6626345号(P6626345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6626345-逆流再生を用いた触媒反応 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626345
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】逆流再生を用いた触媒反応
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/06 20060101AFI20191216BHJP
   B01J 8/02 20060101ALI20191216BHJP
   B01J 19/24 20060101ALI20191216BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20191216BHJP
   C07C 45/00 20060101ALI20191216BHJP
   C07C 47/22 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   B01J8/06
   B01J8/02 Z
   B01J19/24 A
   C07B61/00 300
   C07C45/00
   C07C47/22 H
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-515574(P2015-515574)
(86)(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公表番号】特表2015-523910(P2015-523910A)
(43)【公表日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】FR2013051296
(87)【国際公開番号】WO2013182818
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年5月11日
【審判番号】不服2018-12626(P2018-12626/J1)
【審判請求日】2018年9月21日
(31)【優先権主張番号】1255368
(32)【優先日】2012年6月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュボワ,ジャン−リュック
【合議体】
【審判長】 蔵野 雅昭
【審判官】 牟田 博一
【審判官】 日比野 隆治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−116045(JP,A)
【文献】 米国特許第2923679(US,A)
【文献】 特開平06−262081(JP,A)
【文献】 特開平05−246902(JP,A)
【文献】 特開2002−102706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J
C07B
H01M8/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部(2)、および第1の端部(2)とは反対側の第2の端部(3)を含む反応室(1)内で実施される化学反応工程であって、前記化学反応工程は、
−前記反応室(1)内の、この第1の端部(2)からこの第2の端部(3)までの反応流の流路を含む反応段階、および
−前記反応室(1)内の、この第2の端部(3)からこの第1の端部(2)までの再生流の流路を含む触媒再生段階、を交互に含み、前記再生流は、酸素を含み、前記触媒再生段階は、触媒上に堆積されたコークスの燃焼を含み、前記反応段階と前記触媒再生段階との間の平均の温度差は、100℃未満であり、
前記反応室(1)が、触媒床を含み、および反応区画間で熱交換するためのシステムを含む複数の別々の反応区画からなる
ことを特徴とし、
前記化学反応工程が、
−アクロレインを生成するための、グリセロールの脱水のための工程、または
−アクリル酸を生成するための、乳酸または乳酸アンモニウムの脱水のための工程、または
−アクリル酸を生成するための、3−ヒドロキシプロピオン酸またはこれらのアンモニウム塩の脱水のための工程、または
−メタクリル酸を生成するための、2−ヒドロキシイソ酪酸または3−ヒドロキシイソ酪酸またはこれらの対応するアンモニウム塩の脱水のための工程、または
−塩素化化合物のフッ素化化合物への転換のための工程、また
択的な酸化工程である、
化学反応工程。
【請求項2】
請求項1に記載の工程であって、前記反応段階と前記触媒再生段階との間の平均の温度差は、75℃以下である化学反応工程。
【請求項3】
請求項1または2に記載の工程であって、前記反応段階は、15分以上の時間長を有し、ならびに/または前記再生段階は、15分以上の時間長を有する工程。
【請求項4】
請求項1から3の一項に記載の工程であって、前記反応段階および前記再生段階は、所定の時間長を有し、または、前記反応段階の前記時間長および/もしくは前記再生段階の前記時間長は、反応器内のパラメータの測定値、もしくは反応器を出る流れ中の化合物の含有量に応じて決定される工程。
【請求項5】
化学反応器の使用であって、
−第1の端部(2)、および第1の端部(2)とは反対側の第2の端部(3)を含み、触媒床を含む反応室(1)、
−この第1の端部(2)で前記反応室(1)の入口に接続された反応流供給パイプ(5)、
−この第2の端部(3)で前記反応室(1)の出口に接続された反応流取出パイプ(6)、
−この第2の端部(3)で前記反応室(1)の入口に接続された再生流供給パイプ(8)、
−この第1の端部(2)で前記反応室(1)の出口に接続された再生流取出パイプ(7)、
−前記反応流供給パイプ(5)から前記反応流取出パイプ(6)までの前記反応室(1)内における反応流の流路、および前記再生流供給パイプ(8)から前記再生流取出パイプ(7)までの再生流の流路を交互に可能にするのに適した切替手段を含み、
化学反応工程を交互に実施するために、
−前記反応室(1)内の、この第1の端部(2)からこの第2の端部(3)までの反応流の流路を含む反応段階、および
−前記反応室(1)内の、この第2の端部(3)からこの第1の端部(2)までの再生流の流路を含む触媒再生段階を含み、
前記再生流は、酸素を含み、前記触媒再生段階は、触媒上に堆積されたコークスの燃焼を含み、
前記反応段階と前記触媒再生段階との間の平均の温度差は、100℃未満であり、
前記化学反応工程が、
−アクロレインを生成するための、グリセロールの脱水のための工程、または
−アクリル酸を生成するための、乳酸または乳酸アンモニウムの脱水のための工程、または
−アクリル酸を生成するための、3−ヒドロキシプロピオン酸またはこれらのアンモニウム塩の脱水のための工程、または
−メタクリル酸を生成するための、2−ヒドロキシイソ酪酸または3−ヒドロキシイソ酪酸またはこれらの対応するアンモニウム塩の脱水のための工程、または
−塩素化化合物のフッ素化化合物への転換のための工程、また
択的な酸化工程である、
使用。
【請求項6】
請求項5に記載の使用であって、前記反応段階と前記触媒再生段階との間の平均の温度差は、75℃以下である使用。
【請求項7】
請求項5または6に記載の使用であって、前記反応室(1)は、複数の個別の反応区画を含使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交互の反応段階および再生段階を含む化学反応工程に関する。また本発明は、この工程の実施に適した化学反応器の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
固定床反応器内での化学反応の利用、特に不均一触媒が関わるものが知られている。このタイプの工程においては、吸収または放出される熱の制御には、重要な側面がある。
【0003】
例えば、燃焼反応などの発熱反応においては、反応開始時に反応器内でホットフロントが生成する傾向があり、さらにこのホットフロントは、その後、場合により反応床を離れるリスクが現れるまで、反応器の反応床内を流れ方向に移動する傾向がある。
【0004】
この問題を解決するために、逆流反応器は開発された。これらのシステムの原理は、反応の間、ホットフロントを反応器の反応床内に保つことが可能になる反応流の反転に基づいている。
【0005】
文書WO02/051965およびUS5,710,356には、このような対称なシステムの例が示されており、このシステムの中では、同じ流れが1つの方向および反対の方向に交互に反応器を通過する。
【0006】
文書US7,763,174には、吸着剤床が触媒床の両側に配置された変種が記載されている。
【0007】
さらに、伝熱を最適化する目的で、発熱反応と吸熱反応との熱的結合を可能にするために、非対称の逆流反応工程も提案されてきた。例えば、第1の流れ方向は、メタンの燃焼(メタンおよび空気の注入)を実施するために利用することができる一方で、逆流方向は、メタン改質(メタンおよび水の注入)を実施するために利用することができる。第1の反応は、第2の吸熱性のメタン改質反応を可能にするのに十分なレベルまで触媒床を加熱するためのものである。文書US2004/0170559では、このような非対称の工程の例が挙げられている。
【0008】
上述の逆流反応器システムにおいては、触媒が失活した後の触媒の再生に関して、いかなる具体的な方策も提供されていない。
【0009】
文書DE10239547には、吸熱反応と発熱反応との熱的結合の別の例が示されており、この例は、メタン改質と触媒再生の組み合わせによるものである。この工程によれば、水蒸気メタン改質は、反応器内へと統合されている供給パイプにより導入される補助流を注入するための分配器を含む反応器内で400°Kで実施される。再生中、流れ方向は反転され、さらに1000°Kの再生温度に達するために、内部の分配器には燃料が供給される。
【0010】
文書US4,461,745において実施される工程は、反応および再生をそれぞれ反応室内の半分ずつで同時に実施し、次いでこれらの2段階を反転するものであり、再生段階の結果生じる流れは、反応段階ゾーンを供給するために、反応室内で反応流と常に混合される。
【0011】
固定床内で実施されるアクリル系化合物のフッ素化または生成のための触媒反応という状況の範囲内で、特に、触媒上のコークスを除去することによって触媒は失活する。触媒の再生は、反応器内に酸素または空気に富んだ流れを注入することによってコークスを燃焼させることにより、実施されることがある。
【0012】
しかし、反応器内のコークスの割合は一様ではなく、原則的に、反応器の出口の方よりも入口の方に、より多くの蓄積したコークスが存在する。このことが、燃焼制御の問題を引き起こす。例えば、ホットフロントが現れることがあるが、これは、触媒を劣化させる、非常に大きな温度差につながる。
【0013】
従って、このタイプの工程において、特に触媒の劣化のリスクを避けることによる、再生段階のより良い制御の実現が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2002/051965号
【特許文献2】米国特許第5,710,356号明細書
【特許文献3】米国特許第7,763,174号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0170559号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10239547号明細書
【特許文献6】米国特許第4,461,745号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は第一に、第1の端部、および第1の端部とは反対側の第2の端部を含み、触媒床を含む反応室内で実施される化学反応工程に関し、工程は、
−反応室内の、この第1の端部からこの第2の端部までの反応流の流路を含む反応段階、および
−反応室内の、この第2の端部からこの第1の端部までの再生流の流路を含む触媒再生段階を交互に含む。
【0016】
本発明によれば、反応室は、触媒床を含み、熱交換を効果的に実施するために、反応区画間で熱交換するためのシステムを含む複数の別々の反応区画からなる。
【0017】
反応段階および再生段階は、触媒床の1つの同じ組立体の上に次々に交互にもたらされる2つの別々の段階である。
【0018】
1つの実施形態によれば、再生流は酸素を含み、また、触媒の再生段階は、触媒上に堆積されたコークスの燃焼を含む。
【0019】
1つの実施形態によれば、化学反応工程は、
−グリセロールをアクロレインに脱水するための工程、または
−乳酸または乳酸アンモニウムをアクリル酸に脱水するための工程、または
−3−ヒドロキシプロピオン酸、または、このアンモニウム塩をアクリル酸に脱水するための工程、または
−2−ヒドロキシイソ酪酸もしくは3−ヒドロキシイソ酪酸またはこれらの対応するアンモニウム塩をメタクリル酸に脱水するための工程、または
−塩素化合物をフッ素化合物に変換するための工程、好ましくはハイドロフルオロオレフィンまたはハイドロフルオロカーボンを調製するための工程、特にフルオロプロペンを調製するための工程、および最も特に好ましくは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを調製するための工程、または
−メタノールのホルムアルデヒドまたはジメトキシメタンへの酸化;エタノールのアセトアルデヒドまたはジエトキシエタンへの酸化;オルトキシレンまたはナフタレンのフタル酸無水物への酸化;ベンゼン、ブテン、ブタノールまたはブタンのマレイン酸無水物への酸化;プロピレンのアクロレインへの酸化;イソブテンまたはtert−ブタノールのメタクロレインへの酸化などの選択的な酸化工程である。
【0020】
1つの実施形態によれば、工程は発熱反応工程である。
【0021】
1つの実施形態によれば、反応段階は、15分以上、好ましくは1時間以上もしくは15時間以上の時間長を有し、および/または再生段階は、15分以上、好ましくは5時間以上の時間長を有する。
【0022】
1つの実施形態によれば、反応段階および再生段階は、異なる時間長を有し、特に再生段階の時間長は、反応段階の時間長よりも短い。
【0023】
1つの実施形態によれば、反応段階および再生段階は、所定の時間長を有し、または反応段階の時間長および/もしくは再生段階の時間長は、反応器内の温度などのパラメータの測定値、もしくは反応器を出る流れ中の化合物の含有量に依存する。
【0024】
また本発明は、上で定義した反応段階および再生段階を交互に含む工程の実施に適した反応器の使用に関する。この反応器は、
−第1の端部、および第1の端部とは反対側の第2の端部を含み、触媒床を含む反応室、
−この第1の端部で反応室の入口に接続された反応流供給パイプ、
−この第2の端部で反応室の出口に接続された反応流取出パイプ、
−この第2の端部で反応室の入口に接続された再生流供給パイプ、
−この第1の端部で反応室の出口に接続された再生流取出パイプ、
−反応流供給パイプから反応流取出パイプまでの反応室内における反応流の流路、および再生流供給パイプから再生流取出パイプまでの再生流の流路を交互に可能にするのに適した切替手段を含む化学反応器である。
【0025】
好ましい1つの実施形態によれば、反応室は複数の個別の反応区画を含み、反応器は好ましくは、プレート型反応器または多管式反応器である。
【0026】
本発明によって、先行技術の欠点を克服することが可能になる。とりわけ、本発明によって、固定床の化学反応という状況の範囲内で、特に触媒の劣化のリスクを避けながら、触媒の(in situ)での再生段階のより良い制御を達成することが可能になる。
【0027】
これは、反応器内で、一方の反応段階および他方の再生段階の間で流れ方向を反転させることにより実現する。
【0028】
ある特定の実施形態によれば、本発明は、以下に挙げる1つ、または好ましくは、幾つかの有利な特性も有する。
【0029】
−再生中の流れ方向の反転によって、比較的ごくわずかのコークスを含む反応器のゾーン内のコークスの燃焼を開始することが可能になる。このようにして、触媒の結晶構造を変え、従って触媒を劣化させるリスクを冒す過度に大きな温度勾配が避けられる。
【0030】
−流れ方向を反転せずに再生すると、(入口でホットフロントが出現し、出口で酸素の濃度がより低くなるため)入口でのコークスの燃焼が優先する。従って、本発明によって実現される、再生中の流れ方向の反転によって、この反応器に沿って、より一様に反応器内のコークスの量を減らすことが可能になる。このように、コークスの量をより一様に低減することによってさらに、再生後、再生前と同様に反応器の(反応流の方向に対して)出口よりも入口で保持されるコークスの割合が多くなってもよい。入口と出口との間で、このコークスの差が保持されることによって、副反応につながる恐れのある、入口での過剰に反応性の触媒床体積を避けることが可能になる。言い換えれば、本発明によって、触媒の活性のより良い制御が可能になる。
【0031】
−反応段階の間は、再生段階の間と同様に、触媒床から金属が一部昇華することがあっても、また、これらの金属が下流で堆積することがあってもよい。反応と再生との間の流れ方向の反転によって、これらの金属を触媒床内に保ち、これらの金属が反応器の外側に逃げるのを防ぐことが可能になる。
【0032】
−流れ方向を反転せずに再生すると、(再生中のホットフロントの動きによって)再生段階の最後に、反応器の入口が出口よりも低温になることがある。従って、反応を開始するために、触媒床を再加熱する必要がある。このような対策は、流れ方向が再生中に反転される場合、必要ないか、または必要性が少なくなり、その理由は、この場合、再生段階の最後に出口よりも高温なのは反応器の入口であるためである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明による化学反応器を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ここで本発明について、以下の説明で、より詳細に非限定的に説明する。
【0035】
図1を参照すると、概して、本発明による反応器は、第1の端部2、および第1の端部2とは反対側の第2の端部3を含む反応室1を含む。固定触媒床は、反応室1内に配置される。
【0036】
例えば、反応器は縦型タイプでもよく、この場合、例示した通り、第1の端部2は反応室1の上部に位置していてもよく、また、第2の端部3は反応室1の底部に位置していてもよいが、逆の構造も可能である。また、反応器は横型タイプでもよい。
【0037】
反応器は、反応室1の入口に、この第1の端部2で接続された反応流供給パイプ5を、また、反応室1の出口に、この第2の端部3で接続された反応流取出パイプ6を含む。
【0038】
反応器は、反応室1の入口に、この第2の端部3で接続された再生流供給パイプ8を、また、反応室1の出口に、この第1の端部2で接続された再生流取出パイプ7をさらに含む。
【0039】
場合により、上述のそれぞれのパイプについて、単一のパイプだけでなく、幾つかのパイプを並列に備えることも可能である。引き続き、単一のパイプの例を取る。
【0040】
反応室1は、例えば、円形の断面を持つ円筒タイプの単一の反応区画でもよい(断熱性の反応器)。しかし、本発明によれば、好ましくは反応室1が、複数の別々の反応区画を含み、それぞれが反応区画自体の固定触媒床を含む。この場合、反応区画は並列に配置され、即ち、分配システム(図示せず。)によって、反応流供給パイプ5からの流れをすべての反応区画に分配し、再生流供給パイプ8からの流れをすべての反応区画に分配し、すべての反応区画からの流れを反応流取出パイプ6に回収し、すべての反応区画からの流れを再生流取出パイプ7に回収することが可能になる。
【0041】
反応区画は、多管式反応器の場合、例えば管状(円形の断面を持つ円筒形)の区画でもよい。また、反応区画は、プレート型反応器の場合、平行六面体の区画でもよい。
【0042】
熱交換を可能にするために、(本質的に知られている)熱交換システムが反応区画の間に備えられる。
【0043】
各反応区画は触媒床を含む。触媒は、固形粒子(ビーズ、細粒または粉末)の形態、または多孔質のモノリスもしくは多孔質のモノリスのブロックの形態でもよい。
【0044】
また、触媒床は、それぞれが異なる触媒を含む2つの部分を含んでもよい。この場合、触媒の交換をより容易にするために、使用寿命の短い触媒を使用寿命の長い触媒の上に配置した縦型の反応器を備えるのが有利なことがある。この場合、反応は、流れを底部から上向きに注入することによって実施される。
【0045】
反応器は、2つの段階、即ち反応段階および再生モードに従って交互に動作し、反応段階の間に反応室1内で所望の化学反応が起こり、また、反応段階の間に触媒は徐々に失活する傾向があり、さらに再生モードの間、少なくとも部分的に失活した触媒は再生される。
【0046】
本願の文脈の範囲内において、「反応流」という表現は広い意味で理解され、第1の端部2から第2の端部3へ反応室1を横切る流れを表し、反応が実施されるのを可能にし、反応流の組成は、反応器の入口と出口の間で変化すると理解される。
【0047】
同様に、「再生流」という表現は、第2の端部3から第1の端部2へ反応室1を横切る流れを表し、触媒の再生が実施されるのを可能にし、再生流の組成は、反応器の入口と出口の間で変化すると理解される。
【0048】
反応段階において、反応室1を横切るのは反応流である。入口において、この反応流は、反応を実施するために必要な反応物を含み、そして出口において、この反応流は、少なくとも部分的に、反応の生成物を含む。
【0049】
再生段階において、反応室1を横切るのは再生流である。入口において、この再生流は、触媒を再生することができる1つ以上の化合物を含み、そして出口において、この再生流は、再生の残留物を含む。
【0050】
それぞれの流れは、液体または気体または混合タイプの流れでもよい。
【0051】
反応流供給パイプ5は、反応流貯蔵器に有利に接続され、再生流供給パイプ8は、再生流貯蔵器に有利に接続される。
【0052】
弁9、10、11、12のシステムによって、前述の各パイプを開閉することが可能になり、これによって反応段階および再生段階において、図示していない切替手段により反応器を交互に動作する。
【0053】
反応段階および再生段階は、触媒の既知の失活および再生プロファイルに応じて所定の時間長を有してもよい。これらは異なる時間長であること、即ち再生時間長は、反応段階の時間長よりも短いことが好ましい。または、反応段階から再生段階への移行およびこの逆の移行は、温度プロファイル、または出口流れ中の物質の濃度(例えば、出口における反応流中の反応生成物の濃度、または出口における再生流中の酸素もしくは一酸化炭素もしくは二酸化炭素の濃度)などの測定されたパラメータに応じて実施されてもよい。
【0054】
1つの実施形態によれば、反応段階の時間長は15分以上、好ましくは1時間以上、または3時間以上、または5時間以上、または10時間以上、または15時間以上である。
【0055】
1つの実施形態によれば、再生段階の時間長は15分以上、好ましくは1時間以上、または3時間以上、または5時間以上である。
【0056】
特定の実施形態によれば、反応段階の時間長は200時間以下、または100時間以下、または50時間以下、または25時間以下である。
【0057】
特定の実施形態によれば、再生段階の時間長は200時間以下、または100時間以下または50時間以下、または25時間以下、または15時間以下である。
【0058】
1つの実施形態によれば、触媒の再生は、再生段階の間は部分的であり(即ち、再生段階は、触媒の再生が完了または実質的に完了する前に妨げられる。)、従って、例えばコークスの一部は、反応器内の反応ゾーンの入口に残り、これにより、反応段階において反応器の使用の時間長を最適化し、再生段階における時間長を最小限にし、全体的な生産性を最適化することが可能になる。
【0059】
本発明は、例えば、再生可能な起源のアクロレインおよび/またはアクリル酸の生成、特に、アクロレインを生成するためのグリセロールの脱水の第1の段階、続いて、こうして得られたアクロレインの気相中での酸化の段階を含むグリセロールからのアクリル酸の生成のために実施することができて、または2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)もしくは3−ヒドロキシプロピオン酸、およびこれらのエステル、もしくは対応するアンモニウム塩の脱水によるアクリル酸の生成において実施することができる。
【0060】
本発明によって、特に、アクロレインを生成するためのグリセロールの脱水のための工程が実施可能になる。このタイプの工程において、グリセロールは、重量で20%から95%の濃度の水溶液の形態で供給される。グリセロールがさらに高濃度になると、触媒によってコークスが生成される傾向が強くなり、頻繁に再生する必要が出てくる。国際公開WO2006/087083に記載の工程によれば、反応は、酸素の存在下で有利に実施されるが、グリセロール脱水反応に酸素を加えると、触媒の使用寿命を延ばし、再生の間隔をあけることが可能になる。
【0061】
反応は通常、220℃から350℃、好ましくは280℃から320℃の温度、および大気圧から数バール(例えば、5バール)で変化する圧力で実施される。
【0062】
この反応に用いることができる触媒は、例えば、文書EP1848681、WO2009/12855、WO2009/044081またはWO2010/046227に記載されている、特にハメットの酸度が+2未満の酸触媒である。多くの酸触媒がこの反応に適していると考えられる。タングステートまたはホスホタングステートまたはシリコタングステートを含浸させたリン酸化ジルコニア、タングステン化ジルコニア、シリカジルコニア、チタンまたはスズ酸化物、タングステートまたはホスホタングステートまたはシリコタングステートおよび/またはこれらの化合物のアルカリ金属塩を含浸させたリン酸化アルミナまたはシリカ、ヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸塩、リン酸鉄および助触媒を含むリン酸鉄、酸化チタン触媒が言及される。
【0063】
本発明は、また乳酸または3−ヒドロキシプロピオン酸(および、これらの対応するエステル)またはこれらのアンモニウム塩の脱水のための工程を実施して、アクリル酸を生成することも可能になる。
【0064】
乳酸は、217℃の近くに沸点を有し、3−ヒドロキシプロピオン酸は、279℃の沸点を有する(計算値)。乳酸の空気中における可燃限界は、3.1%(下限)および18%(上限)である。乳酸のメチルエステルは、1.1%および3.6%の可燃限界で、145℃の沸点を有する(これにより、使用時に酸よりも優れた柔軟性がもたらされる)。3−ヒドロキシプロピオン酸のメチルエステルは、179℃(計算値としては180℃)の沸点を有し、乳酸のエチルエステルは、154℃の沸点、ならびに1.6%および10.6%の可燃限界を有する。3−ヒドロキシプロピオン酸のエチルエステルは、187.5℃の沸点を有する。
【0065】
これらの反応については、グリセロールの脱水と実質的に同一の反応器構成が使用される。脱水条件は、220℃から400℃、好ましくは250℃から350℃の温度、および0.5から5バールの圧力である。
【0066】
これらの反応に適し得る触媒は、酸触媒、特にハメットの酸度が+2未満のものである。触媒は、天然または合成のシリカ質材料または酸性ゼオライト;酸化物など、一酸、二酸、三酸または多酸の無機酸で覆われた鉱物質担体;特に、W、MoおよびVを含む群から選択される少なくとも1つの元素を含む、酸化物または混合酸化物またはヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸塩から選択されてもよい。混合酸化物の中でも、鉄およびリンをベースにしたもの、ならびにセシウム、リンおよびタングステンをベースにしたものが特に言及されてもよい。
【0067】
これらの反応に同様に適し得る他の触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属のリン酸塩および/または硫酸塩、ならびにこれらの混合物から得られる。従って、この群には、リン酸ランタンおよびオキシリン酸ランタン、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ならびに対応するリン酸水素、リン酸アルミニウム、リン酸ホウ素が含まれる。上述の活物質はすべて、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたはシリカだけでなく、対応する混合酸化物および炭化ケイ素など、どのようなタイプの担体上にも含浸または被覆することができる。
【0068】
乳酸または3−ヒドロキシプロピオン酸の分圧は概して、1%から10%、好ましくは2%から6%である。
【0069】
また本発明は、2−ヒドロキシイソ酪酸または3−ヒドロキシイソ酪酸、またはこれらの対応するアンモニウム塩の、メタクリル酸への脱水のための工程を実施することも可能になる。
【0070】
このタイプの反応については、グリセロールの脱水と実質的に同一の反応器構成が使用される。脱水条件は、200℃から400℃、好ましくは250℃から350℃の温度、および0.5から5バールの圧力である。この反応に適し得る触媒は、酸触媒、特にハメットの酸度が+2未満のものである。触媒は、天然または合成のシリカ質材料または酸性ゼオライト;酸化物など、一酸、二酸、三酸または多酸の無機酸で覆われた無機担体;特に、W、MoおよびVを含む群から選択される少なくとも1つの元素を含む、酸化物または混合酸化物またはヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸塩から選択されてもよい。混合酸化物の中でも、鉄およびリンをベースにしたもの、ならびにセシウム、リンおよびタングステンをベースにしたものが特に言及されてもよい。
【0071】
この反応に同様に適し得る触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属のリン酸塩および/または硫酸塩、ならびにこれらの混合物から得られる。従って、この群には、リン酸ランタンおよびオキシリン酸ランタン、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ならびに対応するリン酸水素、リン酸アルミニウム、リン酸ホウ素が含まれる。上述の活物質はすべて、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたはシリカだけでなく、対応する混合酸化物および炭化ケイ素など、どのようなタイプの担体上にも含浸または被覆することができる。
【0072】
(2−または3−)ヒドロキシイソ酪酸の分圧は一般に、1%から10%、好ましくは2%から6%である。
【0073】
上述の反応の状況の範囲内で、触媒は、特にコーキングによって失活する。しかし、この失活は、反応流へ酸素を加えることによって遅らせることができる。
【0074】
さらに、再生段階において、触媒は、酸素または空気をベースとした再生流を反応室1内に導入することによって再生される。
【0075】
再生条件は、触媒の失活の性質のタイプに応じて適応させる。例えば、コーキングによる失活の場合、さまざまなタイプのコークス、特に軟質コークスおよび硬質コークスがある。
【0076】
軟質コークスは水素に富んでおり、および/または比較的低温で除去される一方、硬質コークスは、軟質コークスほど水素に富んでおらず、発達(熟成)したコークスであり、燃焼を開始するためにより高い温度が必要である。再生では一般に、着火温度と呼ばれる十分な温度に達する必要がある。再生温度は、好ましくは300℃より高く、とりわけ325℃より高く、さらにより好ましくは350℃より高い。温度は再生中、再生を維持するのに十分な温度を保つために調整されてもよい。
【0077】
圧力は、好ましくは大気圧に近い。燃焼速度を決定するのは実質的に酸素の分圧である。酸素の分圧は、好ましくは0.01から1バール、とりわけ0.05から0.5バールである。酸素の分圧は再生中、例えば水蒸気を加えることによって、そうでなければ窒素を加えることによって、またはさらに単純に、再生の結果生じるCOにより富んだ気体を再循環させることによって調整されてもよい。再生流の組成には、好ましくは、とりわけ、酸素、窒素、水蒸気、CO、一酸化炭素が含まれる。空気が酸素源として有利に用いられてもよいが、富化空気または希薄空気など、他の酸素源の使用も可能である。
【0078】
また本発明は、ホルムアルデヒドもしくはジメトキシメタンを生成するためのメタノールの酸化;アセトアルデヒドもしくはジエトキシエタンを生成するためのエタノールの酸化;フタル酸無水物を生成するためのオルトキシレンもしくはナフタレンの酸化;またはマレイン酸無水物を生成するためのベンゼン、ブテン、ブタノールもしくはブタンの酸化など、選択的な酸化を実施することが可能になる。
【0079】
ホルムアルデヒドまたはジメトキシメタンを生成するためのメタノールの酸化のための反応、およびアセトアルデヒドまたはジエトキシエタンを生成するためのエタノールの酸化のための反応の場合、適し得る触媒は、ビスマス、バナジウム、タングステン、銅、ニッケルまたはコバルトから選ばれる金属を含む鉄モリブデン酸化物またはモリブデン酸化物などの混合酸化物である。運転条件は、200℃と350℃の間、好ましくは250℃と300℃の間の温度、および1と5バールの間の圧力である。アルコールの分圧は、所望の生成物のタイプに従って、3%から50%、好ましくは5%から40%の広い範囲内で変化してもよい。アルデヒドが所望の生成物である場合、アルコールの分圧は、3%と10%の間、好ましくは5%と9%の間である。アセタールが所望の生成物である場合、アルコールの分圧は、10%と50%の間、好ましくは20%と40%の間である。
【0080】
フタル酸無水物を生成するためのオルトキシレンおよびナフタレンの酸化のための反応の場合、選択される触媒は、バナジウム、好ましくは担持酸化バナジウムを含むことが好ましい。運転条件は、1から5バールの圧力、および280℃から450℃の反応温度である。
【0081】
マレイン酸無水物を生成するためのブタン、ブテン、ブタノールおよびベンゼンの酸化のための反応の場合、適した触媒は、担持酸化バナジウムの形態、または担持混合バナジウム/リン酸化物の形態でバナジウムを含む。反応温度は、350℃から500℃、および圧力は、1から5バールである。
【0082】
アクロレインを生成するためのプロピレンの酸化のための反応、またはメタクロレインを生成するためのイソブテンもしくはtert−ブタノールの酸化のための反応の場合、適した触媒は、大部分がモリブデンからなり、次の元素から選ばれる(ただし、これらに限定されない)元素を含む:ニッケル、鉄、コバルト、タングステン、カリウム、ビスマス、アンチモンまたはクロム。反応温度は、320℃と450℃の間である。全圧は、1と5バールの間である。炭化水素化合物の分圧は、5%と15%の間であり、反応器入口におけるO/炭化水素化合物の比は、0.5と4の間、好ましくは0.8と2の間、さらにより好ましくは1と1.8の間、なおいっそうより好ましくは1.2と1.6の間である。
【0083】
アクリル酸を生成するためのアクロレインの酸化のための反応、およびメタクリル酸を生成するためのメタクロレインの酸化のための反応の場合、適した触媒は、大部分がモリブデンからなり、次の元素から選ばれる(ただし、これらに限定されない)元素を含む:バナジウム、タングステン、銅、アンチモン、ニオブ、ストロンチウム、リンまたは鉄。運転温度は、1から5バールの全圧に対して、250℃と350℃の間である。アルデヒドの分圧は、5%と15%の間であり、反応器入口におけるO/アルデヒドの比は、0.3と1.2の間、好ましくは0.5と1の間である。
【0084】
本発明により実施することができるその他の酸化反応は、以下の通りである。
【0085】
−例えば、300℃から400℃の温度、および1から3バールの圧力での、プロピレンおよび酸素からのアクリル酸の生成であって、副生成物が、アクロレイン、酢酸、マレイン酸、プロピオン酸、アセトアルデヒドおよびアセトンである生成。
【0086】
−例えば、230℃から290℃の温度、および10から30バールの圧力での、エチレンおよび酸素からのエチレンオキシドの生成であって、副生成物が、アセトアルデヒドおよびホルムアルデヒドである生成。
【0087】
−例えば、220℃から300℃の温度、および2から6バールの圧力での、エチレン、塩酸および酸素からの1,2−ジクロロエタンの生成であって、副生成物が、一酸化炭素、クロラールおよび各種塩素化化合物である生成。
【0088】
−例えば、175℃から230℃の温度、および15から30バールの圧力での、p−キシレンおよび酸素からのテレフタル酸の生成であって、副生成物が、マレイン酸無水物、o−トルイル酸および安息香酸である生成。
【0089】
本発明による反応器は、アンモニア/酸素/不活性ガス/炭化水素化合物の混合物を伴うアンモ酸化反応にも適していると考えられる。用いることができる炭化水素化合物には、プロピレン、イソブテン、アクロレイン、メタクロレインだけでなく、芳香族化合物も含まれる。アンモ酸化反応は、対応する酸化温度よりも高い50℃から100℃の温度で実施される。
【0090】
例として、プロピレンおよび/またはプロパン、酸素およびアンモニアから、例えば、400℃から500℃の温度、および1から4バールの圧力で、(アセトニトリル、シアン化水素酸および一酸化炭素を副生成しながら)アクリロニトリルを生成することが可能である。
【0091】
上述の酸化反応すべてについて、コークスの生成はわずかであるか、または全くなく、サイクルタイムは概して、数カ月、または数年にさえなる。この場合、本発明の利点は主に、モリブデンなどの触媒種のマイグレーションを補い、さらに、触媒床を再構成することによって圧力損失を低減することである。
【0092】
また本発明は、フッ素化工程、即ち塩素化化合物からフッ素化化合物を調製するための工程を実施することも可能になる。好ましくは、反応は、塩素化化合物をフッ化水素(HF)と反応させることによって実施される。
【0093】
塩素化化合物は、少なくとも1つの塩素原子を有するどのような分子でもよく、フッ素化化合物は、少なくとも1つのフッ素原子を有するどのような分子でもよい。
【0094】
好ましくは、塩素化化合物は、F、Cl、IおよびBrから(好ましくは、FおよびClから)選ばれる1つ以上の置換基を含み、少なくとも1つの置換基がClである、直鎖または分岐鎖(好ましくは直鎖)のCまたはCまたはCまたはCのアルカンまたはアルケンである。
【0095】
好ましくは、フッ素化化合物は、F、Cl、IおよびBrから(好ましくは、FおよびClから)選ばれる1つ以上の置換基を含み、少なくとも1つの置換基がFである、直鎖または分岐鎖(好ましくは直鎖)のCまたはCまたはCまたはCのアルカンまたはアルケンである。
【0096】
とりわけ好ましくは、塩素化化合物は、F、Cl、IおよびBrから(好ましくは、FおよびClから)選ばれる1つ以上の置換基を含み、少なくとも1つの置換基がClであるCのアルカンまたはアルケンであり、フッ素化化合物は、F、Cl、IおよびBrから(好ましくは、FおよびClから)選ばれる1つ以上の置換基を含み、少なくとも1つの置換基がFであるCのアルケンである。
【0097】
または、塩素化化合物は、F、Cl、IおよびBrから(好ましくは、FおよびClから)選ばれる1つ以上の置換基を含み、少なくとも1つの置換基がClであるCのアルカンまたはアルケンでもよく、フッ素化化合物は、F、Cl、IおよびBrから(好ましくは、FおよびClから)選ばれる1つ以上の置換基を含み、少なくとも1つの置換基がFであるCのアルケンである。
【0098】
1つの実施形態によれば、フッ素化化合物はハイドロフルオロオレフィンである(従って、Cl置換基を含まない)。
【0099】
好ましくは、反応の間に、塩素化化合物の少なくとも1つのCl置換基は、F置換基によって置き換えられる。
【0100】
塩素化化合物のフッ素化化合物への転換には、(1段階のみでの、または運転条件の1つの組み合わせによる)直接転換、および(2つ以上の段階での、または運転条件の2つ以上の組み合わせを用いることによる)間接転換が含まれる。
【0101】
とりわけ好ましいフッ素化反応は、
−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf)の、
−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)の、
−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240aa)の、
−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243db)の、
−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xa)の、
−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための2,3,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xf)の、
−2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf)を生成するための1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)の、
−2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf)を生成するための1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240aa)の、
−2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf)を生成するための2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243db)の、
−2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf)を生成するための1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xa)の、
−2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf)を生成するための2,3,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xf)の反応である。
【0102】
フッ素化反応は、通常3:1から150:1のHFモル比で、6から100秒の接触時間および大気圧から20バールの圧力で実施することができる。反応の温度は、200℃から450℃にすることができる。
【0103】
HFCO−1233xfからHFO−1234yfの調製を可能にする工程の具体的な例を、文書WO2010/123154に見ることができる。この工程は、本発明による反応器を用いて実施することができる。
【0104】
さらに、反応は、ハロゲン化(特に塩素化および/またはフッ素化)飽和化合物からの、(好ましくはハロゲン化、とりわけフッ素化)不飽和化合物の生成を含み、HClまたはHFタイプの分子の脱離を伴う脱ハロゲン化水素反応でもよい。
【0105】
脱ハロゲン化水素の例として、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生じる例、特に、
−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)の、
−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)の、
−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)の反応を挙げることができる。
【0106】
フッ素化化合物が関与する上述の反応に用いられる触媒は、担持されていても、担持されていなくてもよい。
【0107】
この触媒は例えば、金属触媒、即ち、元素の金属、金属酸化物、ハロゲン化金属および/または金属塩タイプ、特に、このような金属の遷移金属酸化物またはハロゲン化物またはオキシハライドの金属触媒であってもよい。
【0108】
この触媒は特に、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タリウム、ハロゲン化鉄およびこれらの組み合わせであってもよい。金属塩化物およびフッ化物、例えば、SbCl、SbCl、SbF、SnCl、TiCl、FeClおよびこれらの組み合わせが好ましい。
【0109】
その他の適切な触媒は、オキシフッ化クロム、(場合により、フッ素化処理を施した)Crなどのクロム酸化物、クロムフッ化物およびこれらの組み合わせなどのクロムをベースとした触媒である。
【0110】
その他の可能な触媒は、アルミニウムをベースとした触媒(例えば、AlF、Alおよびオキシフッ化アルミニウム)である。
【0111】
触媒は、フッ素化アルミナ、フッ素化二酸化チタン、フッ素化ステンレス鋼、活性炭およびグラファイトから選ぶことができる。
【0112】
この触媒は、(元素、塩、酸化物またはハロゲン化物の形態の)クロムとマグネシウムの混合物、または(元素、塩、酸化物またはハロゲン化物の形態の)クロムと別の金属の混合物であってもよい。
【0113】
また、この触媒は、担体上に金属を含む触媒であってもよい。
【0114】
金属は、周期表の第3、4、5、6、7、8、9および13族から選ばれてもよく、特に、Al、Cr、Mn、Co、Ni、Zn、Ti、V、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Zr、Mo、Re、Sc、Y、La、Hf、Cu、Ag、Au、Ge、Sn、PbまたはMg、特にAl、Cr、Mn、NiまたはCoであってもよい。この金属は、ランタニド(周期表の58から71の金属)であってもよい。触媒の金属は、この活性化または、この再生の間に、金属誘導体、例えば、酸化物、ハロゲン化物(フッ化物、臭化物、塩化物)、オキシハロゲン化物または擬ハロゲン化物(シアン化物、シアン酸塩、チオシアン酸塩)に転換されてもよい。
【0115】
担体は、アルミニウム、ハロゲン化アルミニウムおよびオキシハロゲン化アルミニウム、アルミナ、活性アルミナ、フッ素化アルミナ、フッ化アルミニウム、活性炭(フッ素化または非フッ素化)および(場合により、フッ素化された)グラファイトから選んでもよい。
【0116】
触媒は、例えば、金属の可溶な化合物(例えば、硝酸塩または塩化物)の溶液中に担体を浸漬することによって調製してもよく、もしくは溶液を担体上に噴霧してもよい。担体は、乾燥させて、担体または金属を部分的または完全にハロゲン化するために、加熱を伴って蒸気状のハロゲン化剤(例えば、フッ化水素、塩酸、クロロフルオロ炭化水素、そうでなければ、SiF、CClF、CClF、CHFまたはCClFCClF)と接触させてもよい。
【0117】
担持触媒の例は、炭素上に担持されたFeCl、炭素上に担持されたアルミナ、炭素上に担持されたフッ化アルミニウム、炭素上に担持されたフッ素化アルミナ、フッ化アルミニウム上に担持されたフッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム上に担持されたより一般的な金属(元素の金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物および/または金属塩)、アルミナ上に担持された金属、炭素上に担持された金属、または金属の混合物である。
【0118】
担持触媒のその他の例は、Cr上に担持されたハロゲン化マグネシウムまたはハロゲン化亜鉛、炭素上に担持されたハロゲン化クロム(III)、グラファイト上に担持された(元素、酸化物、ハロゲン化物または塩の形態の)クロムとマグネシウムの混合物、グラファイトまたはアルミナまたはフッ化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウム上に担持された(元素、塩、酸化物またはハロゲン化物の形態の)クロムと別の金属の混合物である。
【0119】
担持触媒の総金属含有量は、(触媒の全重量に対して)好ましくは重量で0.1%から20%、例えば重量で0.1%から10%である。
【0120】
好ましい実施形態では、クロムおよびニッケルの両方を含む担持混合触媒である特定の触媒を使用する。Cr:Niモル比は、(金属元素に対して)一般に0.5から5、例えば0.7から2であり、特に1に近い。触媒は、重量で0.5%から20%のクロム、および0.5%から20%のニッケルを含むことができて、好ましくはそれぞれの金属が2%から10%である。この点に関して、文書WO2009/118628、特に4ページ30行目から7ページ16行目までの触媒に関する記述を参照することができる。
【0121】
有利な触媒は、結晶質α酸化クロムタイプのクロム化合物を含むクロムベースの触媒であり、この触媒のα酸化クロム格子の原子の約0.05%から6%が、(場合により、フッ素化剤で処理された)3価のコバルト原子で置き換えられている。この件については、文書US2005/0228202を参照することができる。
【0122】
触媒は、フッ素化処理を施してもよい。フッ素化の例として、アルミナを加熱しながらフッ化水素と接触させることによって、または周囲温度でフッ化水素水溶液を噴霧することによって、またはアルミナを溶液中に浸漬することによって、次いで乾燥することによってフッ素化アルミナを調製することが可能である。触媒のフッ素化は、本発明による反応器内で実施されても、されなくてもよい。フッ素化の間の温度は、概して200℃から450℃である。
【0123】
触媒は、場合により、Co、Zn、Mn、Mg、V、Mo、Te、Nb、Sb、Ta、PおよびNiの塩など、低含有量の1つ以上の共触媒を含んでもよい。好ましい共触媒はニッケルである。別の好ましい共触媒はマグネシウムである。
【0124】
例えば、非担持のクロムベースの触媒は、場合により、コバルト、ニッケル、亜鉛またはマンガンから選ばれる1つ以上の低含有量の共触媒を含んでもよく、また、含浸、粉末とその他との混合など、本質的に知られている工程によって調製されてもよい。
【0125】
共触媒の量は、存在するときには重量で1%から10%、好ましくは重量で1%から5%で変化してもよい。共触媒は、水溶液または有機溶液からの吸着、これに続く溶媒の留去など、本質的に知られている工程によって触媒に添加してもよい。好ましい触媒は、共触媒としてニッケルまたは亜鉛を用いた純粋な酸化クロムである。または、微細な混合物を生成するために、共触媒は、粉砕することによって触媒と物理的に混合してもよい。
【0126】
別の好ましい触媒は、フッ素化アルミナ上に担持された混合クロム/ニッケル触媒である。文書US5,731,481には、この別の触媒を調製するための工程が記載されている。
【0127】
活性化の前に、触媒は、好ましくは窒素などの乾燥ガスを用いる乾燥段階が施される。乾燥段階は、大気圧から20バールの範囲の圧力で実施されてもよい。乾燥段階の間の触媒の温度は、20℃から400℃、好ましくは100℃から200℃の範囲であってもよい。
【0128】
触媒の活性化は、好ましくはHFまたはフルオロ−もしくはハイドロフルオロアルカンおよび/または酸化剤(好ましくは、酸素または塩素)を用いて実施されてもよい。触媒の再生は、酸化剤(好ましくは、酸素または塩素)、場合によりHFを1つ以上の段階で用いて実施されてもよい。
【0129】
触媒の作用時間を延ばすために、例えば、酸化剤および塩素化化合物の混合物に対して0.05モル%から15モル%の割合で、生成段階の間に酸化剤(好ましくは、酸素または塩素)を加えることが可能である。
【0130】
再生段階の間の温度は、約250℃から500℃、圧力は大気圧から約20バールであってもよい。酸素と組み合わせてHFが用いられるとき、酸素の割合は、HF/酸素混合物に対して2モル%から98モル%で変化してもよい。
【0131】
概して、想定された反応に関わらず、反応段階と再生段階の間の平均の温度差は、150℃未満、または100℃未満、またはさらに75℃もしくは50℃以下であることが好ましい。このようにして、より急速に平衡状態に到達させ、反応段階の開始時の副反応を制限することによって生産性が改善される。
【0132】
反応段階と再生段階の間および/または再生段階と反応段階の間に、例えば、反応室1に窒素または水蒸気を(反応流の方向または再生流の方向のいずれかに)スパージすることによって、中間のパージ段階を設けることが可能である。しかし、このようなパージ段階は、いずれにせよ反応流中に酸素が存在する場合は無意味なことがある。反応段階前に水蒸気パージを使用すると、発熱を伴う触媒上への水(脱水反応という状況の範囲内で、いずれにせよ生成される水)の吸着により、反応器を予熱することが可能になることになる。無水の触媒上に水蒸気が吸着すると、(特にゼオライトの場合)著しい量の熱が放出され、このことは、固体の温度を大幅に上昇させるのに役立つ。この初期段階の後、固体は通常の温度に戻るが、反応のどのような暴走も避けるために、反応物を注入する前に、この温度の復帰を待つのが望ましい。
【0133】
1つの好ましい実施形態において、反応サイクルの最後に、反応器は、反応流の方向または反対の方向のいずれかに、窒素、CO、燃焼ガスまたは水蒸気などの不活性ガスでパージされる。比較的短い時間のこのパージ段階の間、触媒床の温度は同じ温度、即ち反応サイクルの最後に達する温度の±約10℃の範囲内に維持される。
【0134】
パージ段階の最後に、再生ガス流が反応ガス入口の反対の端部から導入される。再生流は酸素を含んでいるが、これは窒素、COまたは水蒸気を含む不活性ガス中で薄められる。再生段階の間の酸素の分圧は調整されてもよく、また、特に20%未満、好ましくは10%未満の低い酸素濃度で開始してもよく、次いで、触媒床を通して触媒の再生を維持するために、この酸素濃度を徐々に上昇させる。この場合、触媒の再生は、500℃未満、好ましくは450℃未満、さらにより好ましくは400℃未満に維持される反応器内で最も高温の点の温度によって運転されてもよい。また、再生は、反応器を出る残留酸素の濃度に従い、酸素の転換が95%未満、好ましくは90%未満に収まるようにすることによって運転されてもよい。
【0135】
再生段階の最後には、触媒床の温度が、コークスの燃焼の終了後、反応段階の開始に対応できる範囲内に収まるようにしながら、反応の急速なパージが実施される。パージは、例えば、窒素、CO、燃焼ガスまたは水蒸気を含むガスを用いて実施されてもよい。好ましくは、パージは反応ガスの方向に実施される。
【0136】
HFを伴う反応の場合、腐食のリスクを制限するために、パージは、好ましくは水蒸気がない状態で実施される。
【0137】
ここで本発明の利点を、アクロレインを生成するためのグリセロールの脱水のための工程について非限定的に説明する。
【実施例】
【0138】
[実施例1](本発明による。)
316Lステンレス鋼でできた内径22mm、高さ1mの反応管(1)を、抵抗ヒーターを備え、窒素バブリングにより撹拌された塩浴(KNO、NaNO、NaNO共融混合物)内に垂直に沈める。この装置によって、反応器との熱交換を効率的に実施することができる。反応器内の温度は、反応管の中央に配置された外径4mmの熱電対の鞘内に位置する14本の熱電対によって監視する。反応管は、0.337リットルのpatent application WO2013/18915の実施例1に従って調製されたPW/TiO触媒で満たす。
【0139】
反応段階において、容積式ポンプおよび2台の質量流量調節器により、グリセロール/水の混合物、窒素および空気をそれぞれ、ライン(5)経由で、これらの上部に位置している反応器の端部(2)に電気的に接続された、電気的に加熱された気化器内に送ることが可能になる。これらの底部に位置している反応器の端部(3)は、圧力センサーによって制御される自動弁に接続されており、これによって、反応器内を所望の圧力に維持することが可能になる。この弁を出るガス流は、分析目的で脱水カラムに送られてもよい。こうして、およそ10分間にわたってカラムの底部で回収された液体の排出物は、重量を測定して、ガスクロマトグラフィーにより分析してもよい。
【0140】
逆流再生段階を実施するために、2台の窒素および空気質量流量調節器によって供給されるライン(8)が、自動弁と反応器の底部の端部(3)の間に設置されている。ガス流の排出を可能にするライン(7)は、ライン入口(5)にある気化器に接続されている。
【0141】
反応段階において、弁によってライン(8)および(7)を閉じることができる。
【0142】
逆流再生段階において、ライン(5)は弁によって閉じられており、また、端部(3)に接続された自動弁は、閉位置にある。
【0143】
t=0の時点からt=24時間まで、反応段階は、295℃で6/29/62/3の体積比を有するグリセロール/水/N/Oの混合物の675Nl/時間(時間あたりのノルマルリットル)の連続的な流れを反応器の上部入口(2)に送ることによって実施される。溶融した塩浴は295℃に維持され、また、反応器の出口におけるガス流の圧力は、自動弁によって絶対圧2.3バールに維持される。
【0144】
t=24時間からt=24時間05分の間、反応器内の圧力は大気圧まで下げられ、反応器は、ライン(5)経由の416Nl/時間の窒素の流れによってスパージされる。次いで、逆流再生段階は、反応器の端部(3)およびライン(5)に接続された自動弁を閉じ、また、体積で3.3%の酸素を含む空気/窒素混合物の169Nl/時間の流れをライン(8)経由で反応器の底部の端部(3)から大気圧で注入することによって開始される。溶融した塩の温度は315℃に変える。このとき、再生開始時には最高328℃(「ホットスポット」)を経る触媒床の温度が低下するのが観察される。t=34時間からは、体積で7%の酸素を含む、169Nl/時間の空気/窒素混合物が注入される。t=41時間30分に、溶融した塩の温度は295℃に下げられる。
【0145】
t=42時間に、反応の構成は、ライン(7)および(8)を閉じることによって復帰される。295℃で6/29/62/3の体積比を有するグリセロール/水/N/Oの混合物の675Nl/時間(時間あたりのノルマルリットル)の連続的な流れは、反応器の上部入口(2)に送られる。反応器(1)の溶融した塩浴は295℃に維持され、また、反応器を出るガス流の圧力は、自動弁によって絶対圧2.3バールに維持される。反応を開始した後、非常に速やかに、反応器内で測定される温度は、低下する前に最高359℃(ホットスポット)を経る。反応段階は、t=66時間まで継続される。出て行くガス流は、異なる時点で脱水カラムに送られる。
【0146】
上記と同じように、逆流再生段階がt=66時間からt=84時間の間に再現され、また、反応段階がt=84時間からt=108時間の間に再現される。
【0147】
反応器を出るガス流の吸収カラムから得られる液体の排出物を分析することにより、以下の式に従って、グリセロールの転換の程度およびアクロレインの収率を求めることが可能になった。
【0148】
グリセロールの転換率(%)=100−気体の排出物中のグリセロールのモル流量/反応器内に導入したグリセロールのモル流量
アクロレインの収率(%)=気体の排出物中のアクロレインのモル流量/反応器内に導入したグリセロールのモル流量
結果を表1に整理した。
【0149】
【表1】
【0150】
[比較例2]
0から24時間の実施例1の条件が再現される。
【0151】
t=24時間からt=42時間の間、流れを反転させずに再生段階が実施される。
【0152】
t=24時間からt=24時間05分の間、反応器内の圧力は大気圧まで下げられ、反応器は、ライン(5)経由の416Nl/時間の窒素の流れを用いてスパージされる。次いで、再生段階は、体積で3.3%の酸素を含む空気/窒素混合物の169Nl/時間の流れをライン(5)経由で反応器の上部の端部(2)内に大気圧で注入することによって開始される。溶融した塩の温度は315℃に変える。このとき、再生開始時には最高337℃(「ホットスポット」)を経る触媒床内の温度が低下するのが観察される。t=34時間からは、体積で7%の酸素を含む、169Nl/時間の空気/窒素混合物が注入される。t=41時間30分に、溶融した塩の温度は295℃に下げられる。
【0153】
次いで、42時間から66時間の間の実施例1の条件が再現される。反応を開始した後、非常に速やかに、反応器内で測定される温度は、低下する前に最高378℃(ホットスポット)を経る。
【0154】
結果を表2に整理した。
【0155】
【表2】
【0156】
逆流再生によって、反応の開始時(比較例2の337℃に対して実施例1の328℃および327℃。)および再生の開始時(比較例2の378℃に対して実施例1の356℃および359℃。)の両方において最高ホットスポットを低下させることが可能になることが観察された。さらに、反応段階の開始後15分の収率が大幅に改善された(比較例2の61%に対して実施例1の72%)。
図1