(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二の冷風送風口は、前記導風部の上面がなす斜面の一部をなし且つ空気を通過させる空気抵抗体として構成され、前記導風部の上面における前記空気抵抗体の設置された部分は、前記導風部の上面がなす斜面のうち下側の所定の領域を占めることを特徴とする請求項1に記載の局所冷却装置。
前記導風部の上面における前記空気抵抗体の設置された部分の面積は、前記導風部の上面の3分の1以上3分の2以下であることを特徴とする請求項2に記載の局所冷却装置。
前記第一の冷風送風口から吹き出す冷気は、前記底面の幅方向中央に到達する十分に大きい風速を有し、該風速は、前記第二の冷風送風口から吹き出す冷気の風速に対して2分の1以上2倍以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の局所冷却装置。
前記第一の冷風送風口から吹き出す冷気の風速は、前記底面の両側に備えた前記第一の冷風送風口から前記底面の幅方向中央に向かって吹き出した場合に、冷気の前記底面の幅方向中央における冷風到達高さが、前記導風部の上面の上端の前記底面に対する高さの2倍以下になるよう設定されていることを特徴とする請求項5に記載の局所冷却装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1〜
図4は本発明の実施による局所冷却装置の形態の一例を示すものであり、ここではチルドコンベヤに対して適用した場合を例示している。本実施例のチルドコンベヤ1は、
図1、
図2に示す如く、上面に対象物品2を載置して搬送する搬送面を備えたコンベヤ部3と、冷気Aを発生させる冷却ユニット4と、コンベヤ部3に沿って該コンベヤ部3の下方に位置し、冷却ユニット4で発生させた冷気Aをコンベヤ部3の搬送面へ導く冷気ダクト5とを備えており、この搬送面を底面とする空間に冷気Aを送り込み、冷気Aの層を形成するようになっている。
【0025】
コンベヤ部3は、
図2に示す如く、モータ6を動力とし、タイミングベルト7を介してモータ6の出力軸ギヤ回転をプーリ8の軸ギヤへ伝達してプーリ8を回転駆動し、該プーリ8と連動する環状のベルト9により形成される搬送面に物品を載置して搬送する公知の仕組みのものである。
【0026】
冷却ユニット4は、冷気ダクト5の一端に接続されており、その位置はコンベヤ部3の上流側端部(尾部)のさらに上流側である。本実施例における冷却ユニット4は、直膨式と呼ばれるタイプの公知の空調装置であり、内部を冷媒が流通する蛇行した配管の周囲にフィンを嵌合した直接膨張コイルである蒸発器10と、該蒸発器10に空気を送り込む冷風ファン11を筐体12内に備えてなる。図示しない膨張弁を通って絞り膨張され、低圧の湿り蒸気となった冷媒を蒸発器10に通し、該蒸発器10に対して冷風ファン11を用いて空気を送り込み、冷媒の気化熱により冷気Aを作り出す仕組みである。蒸発器10を通過する間に空気により間接的に暖められた冷媒蒸気は、次に図示しない圧縮機へ向かい、該圧縮機は冷媒を圧縮して図示しない凝縮器へ送り込む。該凝縮器で冷却された冷媒は高圧過冷却液となって再び膨張弁を通り、低圧の湿り蒸気となって蒸発器10へ戻される。
【0027】
冷却ユニット4は、こうした直膨式のものに限らず、冷気を送り出す機能を有する装置であればよい。例えば、ブラインチラー等で低温にした不凍液等の相変化しない冷媒を外部から引き込んで空気を冷却し、冷媒を再びチラーへ戻して冷却するチラー式の装置を用いることもできる。
【0028】
また、冷却ユニット4は、必ずしもチルドコンベヤ1自体に備えている必要はなく、例えば、チルドコンベヤ1を設置する設備に冷凍機等が予め備えられている場合には、該既設のパッケージエアコンのような空調機等から冷気を引き込んで利用することも可能である。
【0029】
冷気ダクト5は、
図1〜
図3に示す如く、コンベヤ部3の下方に該コンベヤ部3の搬送方向に沿って備えられ、冷却ユニット4からの冷気Aを内部に取り込む流路を形成するメインダクト部13と、該メインダクト部13の幅方向両側からコンベヤ部3の搬送面より上の高さまで立ち上がってコンベヤ部3の幅方向外側を覆うように延在し、冷気Aをメインダクト部13から分岐させて上方へ導く流路を形成する導風部14とを備えてなる。
【0030】
尚、本発明の局所冷却装置において、「幅方向」とは底面を挟んで対向する導風部同士を繋ぐ向きを指すものとする。すなわち、本実施例のチルドコンベヤ1の場合には、搬送方向と直交する水平方向の向きが「幅方向」である。
【0031】
メインダクト部13には、
図2、
図3に示す如く、搬送方向における適宜位置に、メインダクト部13の横断面に沿って複数の邪魔板13aが配置されている。この邪魔板13aは、例えば金属パネルで構成されており、上流から下流に向かうに従って高さが高くなるように配置されている。この邪魔板13aにより、メインダクト部13内を流通する冷気Aの量を調整するようになっている。すなわち、本実施例のチルドコンベヤ1の如く、メインダクト部13に送り込んだ冷気Aを上方の導風部14へ抜き出す構成の場合、邪魔板13aの如き部品を備えていないと、導風部14へ抜き出される冷気Aの量がメインダクト部13の下流側に偏りがちになってしまう。そこで、上述の如き邪魔板13aをメインダクト部13内に配置することにより、メインダクト部13内における空気抵抗を下流側ほど大きくし、冷気ダクト5全体にわたってなるべく均等な量の冷気Aが導風部14から抜き出されるようにしている。尚、邪魔板13aの構成はここに示した例に限定されない。例えば、邪魔板13aをメインダクト部13に隙間なく嵌まり込んだパンチングメタルとし、その孔の大きさや数を調整することで、開孔率を上流から下流に向かうに従って小さくなるよう構成することもできる。その他、上述の機能を有する限りにおいて、邪魔板13aは種々の構成を取り得る。
【0032】
また、本実施例では、
図3に示す如く、メインダクト部13と導風部14の境界にも邪魔板13bを設置し、導風部14へ抜き出される冷気Aの量をここでも調整するようにしている。この邪魔板13bは、例えば金属パネルであり、メインダクト部13の搬送方向における適宜位置に開口部を備え、該開口部を覆うようにパンチングメタルを備えている。
【0033】
導風部14の上端部分14aには、
図3に示す如く、コンベヤ部3の搬送面に対し冷気Aを送り出す第一の冷風送風口15と、前記搬送面の上方に向かって冷気Aを吹き出す第二の冷風送風口16とを備えてなる。
【0034】
この導風部14、及び第一、第二の冷風送風口15,16の構成について、
図3及び
図4を用いて説明する。導風部14は、上端部分14aがコンベヤ部3の搬送面より上に突出しており、該搬送面を挟んで左右の導風部14が対向するように配置されている。導風部14の上面14bは、冷気ダクト5の幅方向中央に位置するコンベヤ部3の搬送面に向かって下り勾配なす斜面を形成している。そして、導風部14の上端部分14aにおける幅方向内側の面には、上面14bの下端とコンベヤ部3の搬送面の間に位置するようにコンベヤ部3の搬送面の位置に水平に開口したスリット15が設けられ、このスリット15がコンベヤ部3の搬送面に対し水平方向に沿って冷気Aを送り出す第一の冷風送風口として機能するようになっている。
【0035】
上面14bがなす斜面の下端部は、コンベヤ部3の両側から幅方向内側に入り込んでおり、平面視で斜面の下端部の1/5程度の領域がコンベヤ部3の端部と重複している。これにより、スリット15からの冷気Aを上手く水平方向に送り出すことができ、また、コンベヤ部3の幅方向外側に位置する導風部14を上方に流れる冷気Aの気流が、上面14bがなす斜面の下端を廻り込んでそのまま上方に向かって突き抜けてしまうことを防止できる。
【0036】
さらに、本実施例の場合、前記搬送面に向かって下り勾配をなす上面14bのうち、下側にあたる領域が多数の孔を備えたパンチングメタルとして構成され、このパンチングメタルの部分が、コンベヤ部3の搬送面の上方に向かって斜め上方に冷気Aを送り出す第二の冷風送風口16として機能するようになっている。このように、斜面をなす上面14bを下側にパンチング加工を施した金属板として構成すれば、第二の冷風送風口16の構成をシンプルなものとすることができ、清掃等のメンテナンスが容易である。また、パンチング孔の整流作用により、第二の冷風送風口16から吹き出す冷気Aの気流もより均一にすることができる。
【0037】
尚、この第二の冷風送風口16の構成は、ここに示した例に限定されない。例えば、金網等で構成することもできるし、不織布のようなある程度の通気性を有する素材とすることもできる。要するに、上面14bに沿って斜面を構成しつつ、冷気Aを斜め上方に通過させるような構成となっていれば良い(以下、第二の冷風送風口16を構成するこうした部材を「空気抵抗体」と称する)。
【0038】
ここで、空気抵抗体16を備えた部分の面積は、上面14bの面積の3分の1以上3分の2以下であることが好ましく、最も好ましくは上面14bの2分の1である。すなわち、
図4において、上面14bの横断面長さをa、空気抵抗体16を備えた領域の横断面長さをxとすると、
[数1]
1/3≦x/a≦2/3
とすることが好ましく、最も好ましくは
[数2]
x/a=1/2
である。
図4中には、x/a=約1/2の場合を例示している。
【0039】
また、上面14bがなす斜面は、水平面に対し30°以上60°以下の角度をなしていることが好ましく、より好ましくは45°以上55°以下である。すなわち、上面14bがなす角度をθとすると、
[数3]
30°≦θ≦60°
とすることが好ましく、より好ましくは
[数4]
45°≦θ≦55°
である。
図4中には、θ=約45°の場合を例示している。
【0040】
また、第一の冷風送風口15から水平方向に沿って吹き出す冷気Aの風速(面平均風速)と、第二の冷風送風口16から斜め上に吹き出す冷気Aの風速(面平均風速)は、一方が他方の二倍を超えないようにすることが好ましい。最も好ましいのは、互いの風速を略等しくすることである。すなわち、第一の冷風送風口15から吹き出す冷気Aの風速をVh、第二の冷風送風口16から吹き出す冷気Aの風速をVobsとすると、
[数5]
1/2≦Vh/Vobs≦2
とすることが好ましく、最も好ましくは
[数6]
Vh/Vobs=1
である。尚、この風速Vh,Vobsは、冷却ユニット4から送出される風量や、第一の冷風送風口15や第二の冷風送風口16の開口面積等を変更することによって適宜調整することができる。
【0041】
次に、上記した本実施例の作動を説明する。
【0042】
コンベヤ部3の動作中、搬送面上を対象物品2が搬送されていくが、この際、前記搬送面上には、第一の冷風送風口15及び第二の冷風送風口16から供給される冷気Aの層が形成される。
【0043】
図2に示す如く、冷却ユニット4によって作り出された冷気Aは、コンベヤ部3の下方に設置された冷気ダクト5のメインダクト部13へ送られる。冷気Aは、メインダクト部13を通ってコンベヤ部3の下方全体に行き渡り、さらに
図3に示す如く、導風部14を通ってコンベヤ部3の幅方向両側へ上方に向かって抜き出され、導風部14の内側の面に備えた第一の冷風送風口15から、コンベヤ部3の搬送面に向かって吐き出される。同時に、第二の冷風送風口16からは、コンベヤ部3の上方に向かって斜め上に冷気Aが吹き出される。
【0044】
このときの冷気Aの流れを
図5に示す。コンベヤ部3の搬送面の両側に位置する第一の冷風送風口15から水平方向に沿って吹き出した冷気Aの流れ(図中には気流A1として表示)は、ベルト9のなす搬送面に沿って幅方向中央へ流れる。このとき、第二の冷風送風口16から斜め上方に吹き出した冷気Aの流れ(図中では気流A2として表示)の一部が気流A1に誘引され、搬送面上に大きめの渦状の流れ(図中では気流A3として表示)を形成する。さらに、気流A2のうち気流A1に誘引されない残りの部分が、導風部14の上面14bがなす斜面のうち、第二の冷風送風口16の形成されていない上側の部分の上方に気流A3よりやや小さめの渦状の流れ(図中では気流A4として表示)を形成する。
【0045】
搬送面の両側の第一の冷風送風口15から流れ出した気流A1は、搬送面に沿いつつ該搬送面の中央部に向かって流れた後、互いに衝突して上昇に転じる。その後、気流A3や気流A4に誘引されて幅方向外側へと向きを変え、気流A3や気流A4の形成する渦に支えられる形で、気流A3や気流A4を包み込むように流れ、導風部14を越えてコンベヤ部3の外側へと流れていく。この流れは、暖気を遮断すると共に、埃が冷気Aの層に侵入することを抑制するという効果も有する。
【0046】
このように、搬送面を底面とし、この上方にベルト9と導風部14によって構成される凹状の空間において、幅方向中央寄りの位置に大きめの渦状の流れ(気流A3)と、上面14bの上方にやや小さめの渦状の流れ(気流A2)とが各々形成され、さらに、それらの渦状の流れA2,A3を覆うように、第二の冷風送風口16から搬送面の中央を経由して機側へ至る流れが形成される。こうして、気流A1〜A4の相互作用によりドーム状の冷気Aの層が生じ、暖気や埃を良好に遮断して搬送面上の空気を効率良く低温空気に置換することができる。また、搬送面上を高さのある対象物品2が搬送されてきたり、作業員が前記凹状の空間に手を差し込んで作業することで冷気Aの層が一時的に乱されたとしても、すぐにドーム状の層が元通りに回復するので、安定した冷気Aの層を維持しやすい。
【0047】
ここで、本実施例においては、上述の如く、導風部14の上面14bのなす斜面のうち下側にあたる領域に第二の冷風送風口16としての空気抵抗体を備え(
図4参照)、その領域の面積は、上面14bに対し[数1]ないし[数2]に示す関係を満足するように設定している。この構成は、
図5中に気流A4として示す渦状の流れを好適に形成するためのものである。
【0048】
すなわち、上面14bのなす斜面のうち、上側の領域には空気抵抗体16を配しておらず、この部分は空気を通さないため、コンベヤ部3の幅方向外側に位置する導風部14を上方に流れてきた冷気Aがここに衝突することで、気流の向きを変更しつつ動圧を静圧に変換するようになっている。こうすることにより、第二の冷風送風口16から吹き出す気流がそのまま上方に突き抜けることを防止し、また、一旦静圧回復を経ることで気流の吹き出しを均一なものとすることができる。
【0049】
また、この空気抵抗体16を備えた領域の面積が上面14bに対して小さすぎると(x/a<1/3)、上面14bのうち空気抵抗体16を備えていない上側の斜面上に気流A4の渦が形成されにくくなる。そのため、気流A3や気流A4の外側を包み込むように流れてくる気流A1をこの位置で適切に支持することができず、気流A1により冷気Aの層内に暖気が誘引されてしまう。
【0050】
逆に、空気抵抗体16を備えた領域の面積が上面14bに対して大きすぎると(x/a>2/3)、空気抵抗体16から斜め上に吹き出した気流A2が、渦状の気流A3や、該気流A3の外側を包み込むように流れる気流A1の流れを突き抜けてしまい、冷気Aの層に暖気が混合してしまう。また、メインダクト部13(
図3参照)から導風部14内を上方に抜き出されてきた冷気Aが、その勢いのまま空気抵抗体16から吹き出してしまうことにもなり、水平方向に沿った気流A1として分配される冷気Aの量が相対的に少なくなってしまう。
【0051】
また、上面14bがなす斜面の角度θ(
図4参照)を[数3]ないし[数4]に示す如き構成としているのは、気流A1による気流A2の誘引を好適にするためのものである。
【0052】
上面14bが水平面に対してなす角度が小さすぎると(θ<30°)、気流A1に対する気流A2の角度が大きいため、気流A2が気流A1にうまく誘引されず、気流A3による渦が好適に形成されない。
【0053】
逆に、上面14bがなす角度が大きすぎると(θ>60°)、気流A1と気流A2の角度が近いため、気流A2の多くが気流A1に強く誘引されてしまい、気流A3や気流A4による渦状の流れが好適に形成されず、気流A1、A2の合流した流れが暖気を誘引してしまう。
【0054】
このように、本実施例のチルドコンベヤ1においては、
図5に示す如きドーム状の冷気Aの層を形成する上で、各気流A1〜A4間の角度的あるいは空間的なバランスが非常に重要である。さらに、上述の如く、第一の冷風送風口15からの冷気Aの風速Vhと、第二の冷風送風口16からの冷気Aの風速Vobs(
図4参照)との関係を[数5]ないし[数6]に示す如きものとしているのも、各気流A1〜A4間の量的なバランスを適切に維持するための構成である。
【0055】
すなわち、水平方向に沿った冷気A(
図5中では気流A1に相当)の風速Vhが、斜め方向の冷気A(
図5中では気流A2に相当)の風速Vobsに対して大きすぎると(Vh/Vobs>2)、気流A2の多くが気流A1に誘引され、気流A4による渦が好適に形成されず、暖気を気流A1、A2により誘引してしまう。
【0056】
逆に、風速Vhが風速Vobsに対して小さすぎると(Vh/Vobs<1/2)、斜め上に吹き出す気流A2が水平方向に沿った気流A1に上手く誘引されず、気流A3による渦状の流れが好適に形成されない。気流A2は多くが斜め上方に高く吹き出してから降下して搬送面上に到着することになり、その過程で暖気と混合してしまう。
【0057】
尚、上述の如き風速比に関する構成は、風速Vh及び風速Vobsの絶対値が十分に大きいことを前提としていることは勿論である。ここで、「十分に大きい風速」とは、冷気Aが搬送面の両側に備えた第一の冷風送風口15から水平方向に沿って前記搬送面の幅方向中央に向かって吹き出すとした場合、その気流が搬送面の幅方向中央に到達するのに十分な程度の風速を意味する。一方、風速Vhが大きすぎると、搬送面の幅方向中央で衝突した冷気A1が高く吹き上がって暖気を誘引してしまうため、風速Vhの絶対値は適度に小さいことが好ましい。これらの風速に関する条件については、後に詳述する。
【0058】
このような本実施例の構成による作用効果を検証するため、冷風送風口に関して本実施例とは異なる構成を有する参考例との比較実験を行った。
【0059】
図6は本発明の第一参考例による冷風送風口の構成を示すもので、本第一参考例の場合、第一の冷風送風口15(
図3参照)にあたる構成を備えておらず、導風部14の上面14bに、第二の冷風送風口(
図3参照)にあたる空気抵抗体16のみ備えている。すなわち、
図4内の符号に準拠して説明すると、本第一参考例においては
[数7]
Vh=0
である。尚、空気抵抗体16を備えた領域は、上記実施例(
図4参照)同様、上面14bのなす斜面のうち下側の約半分としている。
【0060】
図7は本発明の第二参考例による冷風送風口の構成を示すもので、本第二参考例では、上記第一参考例と逆に、導風部14の上面14bに空気抵抗体16(
図3参照)を備えておらず、水平方向に沿って冷気Aを吹き出す第一の冷風送風口15(
図3参照)にあたるスリット15のみを備えている。すなわち、本第二参考例においては
[数8]
Vobs=0
である。
【0061】
図8、
図9は、第一参考例(
図6参照)、第二参考例(
図7参照)及び実施例(
図3参照)における冷気Aの流れを比較検証した実験もしくはシミュレーションの結果を示している。
【0062】
図8は、各例におけるチルドコンベヤ1の導風部14からスモークを混合した冷気Aを噴出し、横断面に沿って上方からレーザー光を照射することにより、搬送面上における冷気Aの分布を可視化した実験の結果である。(A)が第一参考例、(B)が第二参考例、(C)が実施例を示している。第一参考例では、(A)に示す如く、両側の導風部14に備えた空気抵抗体16から冷気Aが斜め上に吹き出した後、ベルト9の搬送面上に降下する様子が観察された。降下の際、冷気Aが暖気と混じり合ってしまうので、搬送面上を全体的に効率良く冷却できないことが見て取れる。第二参考例では、(B)に示す如く、両側の導風部14に備えたスリット15から冷気Aが水平方向に沿って吹き出した後、搬送面の幅方向中央で互いに衝突してきのこ雲状に上昇する様子が観察された。上昇した冷気Aは、その後、速度を落としながら搬送面上に降下した。水平方向に沿って吹き出す冷気Aが暖気を誘引し、その後の衝突に伴って暖気と混ざり合ってしまうので、やはり搬送面上の空間全体を効率的に冷却するには至っていない。実施例では、(C)に示す如く、搬送面を底面としてベルト9及び左右の導風部14により構成される凹状の空間に、ドーム状の冷気Aの層が形成された。搬送面上の前記空間全体が効率良く冷却できていることが見て取れる。
【0063】
図9は、CFD(熱流体解析、Computational Fluid Dynamics)により、各例において冷気Aの流れと共に搬送面上の冷気Aの分布をシミュレートした結果である。ソフトウェアとしては、株式会社ソフトウェアクレイドル製の三次元熱流体解析ソフトウェア「STREAM(R)」を使用した。冷気Aの温度は5℃、暖気(コンベヤ及びその周辺を除く領域の空気)の温度は20℃とし、メインダクト部13から導風部14へ流入する冷気Aの量は実測値に基づいて決定した。
図8同様、(A)が第一参考例、(B)が第二参考例、(C)が実施例を示している。尚、ここでは「冷気」とは温度が10℃以下の空気を言うものとし、図中には冷気Aの層として空気温度が10℃の境界線を表示している。第一参考例では、(A)に示す如く、搬送面上の空間に冷気Aの層が形成されてはいるものの、その冷気Aの層の形成に寄与しているのは片側(図中右側)の導風部14からの気流のみであり、反対側(図中左側)の導風部14からの気流は、空気抵抗体16から吹き出した直後に搬送面とは反対側に流出してしまっていた。これは、初期条件で与えられた左右の風速が厳密には同一ではないことによる対称性の乱れが増大しやすいためと考えられる。第二参考例では、(B)に示す如く、左右の導風部14から水平方向に沿って吹き出した冷気Aが幅方向中央で互いに衝突して上昇する様子が確認された。上昇後、冷気Aは上記
図8(B)の場合とは異なり、片側(図中左側)に偏りつつ搬送面上に降下しているが、これも搬送面上における気流の対称性の乱れによるものと考えられる。そして、本実施例では、(C)に示す如く、
図5に示したのと同様の気流により、搬送面上にドーム状の冷気Aの層が形成されている。(C)においても、上記(A)、(B)の場合と同様、初期条件で与えられた左右の風速が厳密には同一ではないが、(A)や(B)に示す如き気流の対称性の乱れは生じていない。このことは、本発明のチルドコンベヤ1において搬送面上に上述の如き冷気Aの層を形成するにあたり、チルドコンベヤ1の寸法精度を高くしたり、チルドコンベヤ1の製作後に導風部14の調整を行って左右の風速を厳密に一致させる必要がないことを意味する。
【0064】
さらに、各例における搬送面上の温度を測定する実験を行った。
図10に示す如く、コンベヤ部3の上流から下流にわたる各位置(X0〜X10)において、搬送面の幅方向中央及び両側の3点(Y1〜Y3)、計33点を測定点Pとし、搬送面上の高さ100mmの位置に温度センサを設置して温度を測定した。測定にあたっては、チルドコンベヤ1周辺の空気(暖気)の温度を15℃〜20℃程度とし、5℃前後の冷気A(
図3、
図6、
図7参照)を搬送面1mあたり100m
3/hの風量で供給した。
【0065】
尚、ここで、温度センサを搬送面の直上ではなく、高さ100mmの位置に配置しているのは、搬送面上を搬送される対象物品2(
図1参照)の高さを考慮したものである。すなわち、高さのある対象物品2を搬送する場合、仮に搬送面の直上付近には十分に低い温度の空気が供給されていたとしても、対象物品2の上面付近では空気の温度が高いといった事態が想定され得る。したがって、冷気Aの層(
図5及び
図9(A)〜(C)参照)は搬送面上にある程度の厚さを有して形成される必要があり、ここではその厚さの目安を100mmに設定している。この高さにおいて冷気Aの基準である10℃以下の空気温度を維持している場合に、十分に低温が維持されていると判断することができる。
【0066】
第一参考例(
図6参照)の場合、各測定点P(
図10参照)における測定値は下記表1のようになった。尚、以下の各表1〜3において、温度は10秒間隔で測定し、20分〜1時間分の連続測定値の平均値を表示している。また、単位は℃である。
【表1】
【0067】
搬送面の流れ方向(X0〜X10)に沿って値のばらつきが大きく、また全体的に7〜10℃前後と温度が高めである。一部の測定点では、基準である10℃を超えてしまっている。
図8(A)や
図9(A)に示す如く、斜め上方に吹き出した冷気Aが暖気と混ざり合いながら搬送面に降下すること、両側の導風部14からの冷気Aのうち一方が搬送面の外側に流出してしまうこと等によるものと考えられる。
【0068】
第二参考例(
図7参照)の場合、各測定点P(
図10参照)における測定値は下記表2のようになった。尚、「ND」は「測定値なし」を表す。
【表2】
【0069】
搬送面の幅方向中央(Y2)の各位置(X1〜X9)においては7℃台〜8℃となっており、この位置では良好な冷却効果が得られていると言える。
図8(B)や
図9(B)に示す如く、両側の導風部14から吹き出した冷気Aが搬送面の幅方向中央で衝突して上昇するためであると考えられる。しかしながら、幅方向両側(Y1,Y3)の各位置(X1〜X9)においては、ほとんどの測定点で10℃を超えてしまっている。上昇した冷気Aが暖気と混ざり合いながら搬送面に降下すること、さらに、水平方向に沿った冷気Aの流れによって暖気を誘引してしまいやすいことによるものと考えられる。このように、第二参考例の場合、良好に低温が保たれるのは、搬送面の幅方向中央部以外ではほぼ搬送面直上の狭い範囲に限られてしまう。第二参考例の如き構成は、冷気Aの層を形成して暖気を冷気Aに置換する目的よりは、搬送面上の対象物品2(
図1参照)を直接冷却する目的に適していると言える。
【0070】
そして、実施例(
図3参照)の場合、各測定点P(
図10参照)における測定値は下記表3のようになった。
【表3】
【0071】
全体に6℃〜8℃前後であり、Y1〜Y3、X0〜X10の全位置にわたって良好に低温が保たれている。
図8(C)、
図9(C)に示す如く、搬送面上に十分な高さまで冷気Aの層が形成されているということであり、搬送面上の対象物品2の周囲の空気を効果的に冷気Aで置換できていることがわかる。
【0072】
以下、このように冷気Aの層を効率良く形成する上で、第一の冷風送風口15から吹き出す冷気A(気流A1)の風速に関し、CFDに基づき算出した好適な条件について説明する。すなわち、気流A1が搬送面の幅方向中央に到達する十分な風速の条件(条件1)と、搬送面の幅方向中央で吹き上がった気流A1による暖気の誘引を極力防ぐ風速の条件(条件2)を説明する。尚、以下のシミュレーションには、ソフトウェアとして株式会社ソフトウェアクレイドル製の三次元熱流体解析ソフトウェア「STREAM(R)」を使用した。
【0073】
搬送面両側の導風部14に備えた第一の冷風送風口15から吹き出した気流A1が十分な風速を有している場合、該気流A1同士は搬送面の幅方向中央で衝突して上方へ吹き上がるが(
図5参照)、気流A1の風速が十分でない場合(気流A1が前述の「十分に大きい風速」を有していない場合)には、気流A1は搬送面の幅方向中央に到る前に搬送面から剥離してしまうか、あるいは気流A1の風速が非常に小さくなってしまうので、搬送面から上手く上方へ吹き上がらない。また、風速が大きすぎる場合には、搬送面の幅方向中央で衝突した気流A1が高く吹き上がり過ぎて暖気を誘引してしまう。本段では、この吹き上がりの高さ(冷風到達高さ)Z
cを、シミュレーション条件(冷気Aと暖気の温度差や気流A1の流速)及び装置のパラメータ(搬送面の幅や第一の冷風送風口15の高さ)の関数として与える。そして、求めた冷風到達高さZ
cに関し、上記条件1、2を求めることを目的とする。
【0074】
尚、本段では、各パラメータを表す数値として以下の文字を用いる。
g:重力加速度(9.8m/s
2)
β:体積膨張率(1/(273.15+t
r))
Q:コンベヤの単位長さあたりの風量
H:スリット幅(第一の冷風送風口の高さ。上記実施例においては、上面14bがなす斜面の下端部の底面(搬送面)に対する高さに相当)
L
in:代表長さ(底面の両側に備えた幅Hのスリットから冷気を吹き出すものとして下記Z
cを予測する場合、スリット幅の2倍(2H)として定義。冷気を幅Hのスリットから真上に吹き出す場合(下記Z
maxを予測する場合)に限り、Hと同じ値として定義)
V
in:代表流速(第一の冷風送風口における冷気の流速。風速Vhに相当。Q/H)
t
r:室温(暖気の温度)
t
in:吹出温度(第一の冷風送風口における冷気の温度)
t
m:代表温度(t
rとt
inの平均値。(t
r+t
in)/2)
Δt:代表温度差(t
rとt
inの差。t
r−t
in)
Ar
in:入口アルキメデス数(冷気と暖気の混ざり難さ。L
ingβΔt/V
in2)
W:底面の幅(底面を挟んで対向する第一の冷風送風口同士の距離)
W
c:スリットから底面の幅方向中央までの距離(W/2)
pWH:底面の幅の半分とスリット幅の比(W
c/H)
Z
c:底面の幅方向中央におけるスリット上端からの冷風到達高さ(吹き上がった冷風が代表温度に達するまでの高さ)
Z
max:Z
cの最大値(冷気を幅Hのスリットから真上に吹き出した場合におけるZ
c)
Fz:Z
maxに対するZ
cの割合(Z
c/Z
max)
pZL:L
inに対するZ
maxの割合(Z
max/L
in)
nWH:pWHにかかる指数
a
i:Ar
inにかかる指数(ただし、i=0、1)
A
i:Ar
inをa
i乗した数値(Ar
in^a
i)(ただし、i=0、1)
b
i:A
iの係数(ただし、i=0、1)
X
p:pWHをnWH乗した数値(pWH^nWH)
c:X
pの係数
【0075】
(i)冷風の最大到達高さZ
maxと、入口アルキメデス数Ar
inの関係
【0076】
あるシミュレーション条件(風量Qやスリット幅H、室温t
rや吹出温度t
in)における冷風の最大到達高さZ
maxを、以下の如く定義する。まず、室温t
rの環境下で、搬送面の左右に備えた幅Hのスリットから、吹出温度t
inの冷気を水平方向に沿って風量Qで吹き出した場合、搬送面の幅方向中央で衝突して吹き上がる冷気の到達高さは、冷気を真上に吹き出した場合の冷気の到達高さを超えることはないと考えられる。そこで、この場合の冷風到達高さZ
cを、冷風到達高さの最大値Z
maxとする。尚、冷風到達高さZ
cとは、搬送面の幅方向中央において搬送面から吹き上がった冷風が代表温度となるまでのスリット上端からの高さとする。
【0077】
入口アルキメデス数Ar
inは、温度差がある流体同士(この場合、冷気と暖気)の混ざり難さの指標となる無次元数であり、代表長さL
in、冷気の代表流速V
in、室温t
r及び冷気と暖気の代表温度差Δtの関数である。すなわち、シミュレーション条件によって決定する数値である。
【0078】
図11は、風量Qやスリット幅H、室温t
rや吹出温度t
inを種々変更した各条件においてZ
max(冷風の最大到達高さ)をCFDにより予測し、入口アルキメデス数Ar
inをx、Z
maxを代表長さL
in(この場合、スリット幅H)で割った値であるpZLをyとして、xy平面上にプロットしたものである。x=Ar
in、y=pZLとした場合の両者の関係は、
図11中にm1〜m3の点で示す如きものになり、以下の指数関数によりフィッティングされた。
[数9]
pZL=2.32Ar
in−0.514
尚、このシミュレーションにおいて設定した条件は以下の通りである。
条件1(m1):Q=100[CMH/m]、H=0.03[m]、t
r=20[℃]、t
in=5[℃]
条件2(m2):Q=100[CMH/m]、H=0.02[m]、t
r=25[℃]、t
in=5[℃]
条件3(m3):Q=100[CMH/m]、H=0.04[m]、t
r=28[℃]、t
in=5[℃]
【0079】
上記[数9]の関係式におけるAr
inの指数をa
0とすると、
[数10]
a
0=−0.514≒−0.5
と近似できる。さらに、A
0=Ar
in^a
0=Ar
in−0.5とおき、x軸にA
0、y軸にpZLをプロットすると、両者の関係は一次関数としてフィッティングされ(図示は省略する)、この一次関数におけるA
0の係数をb
0とすると
[数11]
b
0=2.47≒2.5
と近似された。すなわち、
[数12]
pZL=2.5Ar
in−0.5
と表せる。
【0080】
(ii)冷風到達高さZ
cと、搬送面の幅の半分とスリット幅のアスペクト比pWHの関係
【0081】
次に、上記(i)でZ
maxを予測した各シミュレーション条件(条件1〜3)において、冷気の吹き出し方向を搬送面に沿った水平方向とし、幅Wの搬送面の両側に備えた幅Hのスリットから吹き出した冷気が搬送面の幅方向中央で衝突して吹き上がる高さ(冷風到達高さ)Z
cをCFDにより予測した。
図12(A)〜(C)は、搬送面の幅の半分とスリット幅のアスペクト比であるpWHをx、Z
maxに対するZ
cの割合であるFzをyとして、xy平面上にプロットしたものである。
【0082】
図12(A)は、シミュレーション条件のうちL
in、V
in、t
r、t
inを
図11中に点m1として示した条件(条件1)と同じくし、Wの値を種々変更してZ
cを予測した一連のデータセット(データセット1)について、pWHとFzをプロットしたグラフである。同様に、
図12(B)では、L
in、V
in、t
r、t
inを
図11中に点m2として示した条件(条件2)と同じくし、Wの値を種々変更してZ
cを予測したデータセット(データセット2)をプロットしている。また、
図12(C)では、L
in、V
in、t
r、t
inを
図11中に点m3として示した条件(条件3)と同じくし、Wの値を種々変更してZ
cを予測したデータセット(データセット3)をプロットしている。すなわち、
図12(A)のグラフ、
図12(B)のグラフ、
図12(C)のグラフは、それぞれのデータセットでAr
inが共通している。ただし、各データセット間ではAr
inは異なっている。各データセットにおける具体的な数値条件は以下の通りである。
データセット1:Q=50[CMH/m]、H=0.015[m]、t
r=20[℃]、t
in=5[℃]
データセット2:Q=50[CMH/m]、H=0.01[m]、t
r=25[℃]、t
in=5[℃]
データセット3:Q=50[CMH/m]、H=0.02[m]、t
r=28[℃]、t
in=5[℃]
【0083】
図12(A)〜(C)の各グラフにおいて、pWHが小さい領域(四角形の点で示したデータセット)ではFzの値はほぼ1となり、pWHがそれより大きい領域(三角形の点で示したデータセット)では、Fzの値は指数関数的に減少する傾向が見られた。すなわち、pWHが小さい領域では、スリット幅Hに対して搬送面の幅Wが小さく、冷気が搬送面中央に到達した段階でも風速が落ちない。したがって、ほぼZ
maxに等しい冷風到達高さZ
cがCFDにより予測される。そして、pWHが大きい領域では、搬送面の幅Wが大きいほど、冷気の風速は搬送面中央に到達するまでに落ちていくので、Fzは漸減していくものと考えられる。
【0084】
pWHが大きい領域(各図中に三角形の点で示したデータセット)におけるFzとpWHの関係は、それぞれ以下の指数関数によりフィッティングされた。
[数13]
Fz=3.09pWH
−0.459(
図12(A)の条件)
Fz=3.70pWH
−0.458(
図12(B)の条件)
Fz=2.58pWH
−0.502(
図12(C)の条件)
【0085】
これらの関係式において、pWHの指数であるnWHは、(A)及び(B)の条件では
[数14]
nWH=−0.459≒−0.46(
図12(A)の条件)
nWH=−0.458≒−0.46(
図12(B)の条件)
と近似できる。尚、(C)の条件ではこの値からはややずれるが、x軸におけるプロット範囲が狭いので除外して考える。そして、
図12(A)、(B)の条件でnWHの値がほぼ一致していることから、
[数15]
nWH=−0.46(定数)
と仮定できる。
【0086】
次に、
図12(A)〜(C)に三角形の点で示した各データセットについて、FzとpWHの関係式における指数nWHを−0.46と仮定し、X
p(=pWH
nWH=pWH
−0.46)をx、Fzをyとして、xy平面上にプロットし直した。この場合の両者の関係はそれぞれ
図13(A)〜(C)のようになり、以下の一次関数によりフィッティングされた。
[数16]
Fz=3.10X
p(
図13(A)の条件)
Fz=3.73X
p(
図13(B)の条件)
Fz=2.33X
p(
図13(C)の条件)
【0087】
上述の如く、(A)、(B)、(C)にそれぞれプロットした各データセット間では、互いにAr
inが異なっている。そこで、[数16]における各X
pの係数をcとし、このcをAr
inの関数と仮定して、Ar
inをx、cをyとして、xy平面上にプロットした。この場合の両者の関係は
図14のようになり、以下の指数関数によりフィッティングされた。
[数17]
c=1.29Ar
in−0.214
この関係式におけるAr
inの指数をa
1、係数をb
1とすると、
[数18]
a
1=−0.214≒−0.21
b
1=1.29≒1.3
と近似できる。
【0089】
以上より、冷風到達高さZ
cを、各実験条件(Δt、V
in、Ar
in)や装置の各パラメータ(H、W
c、L
in)の関数として下記の如く定式化することができる。
[数19]
Z
max=2.5L
in/Ar
in0.5
Fz=1.3Ar
in−0.21×(H/W
c)
0.46
Z
c=Fz×Z
max=(3.25L
in/Ar
in0.71)×(W
c/H)
−0.46
【0090】
ただし、上記[数19]に示したZ
cの定式は、Ar
in及びW
c/Hの関数として下記[数20]に定義する値kcが特定の範囲にある場合にのみ有効である。
[数20]
kc=Ar
in−0.21×(W
c/H)
−0.46
【0091】
すなわち、スリットから搬送面中央までの距離W
cに対して代表流速V
inが小さすぎたり、スリット幅Hが小さすぎる等の要因により、これらの関数であるkcの値が所定値より小さい場合には、スリットからの冷気は搬送面中央に到達する前に搬送面から剥離してしまうので、Z
cを定義できない。また、代表流速V
inが十分に大きい等の要因により、kcの値が所定値以上に大きい場合には、上述の如く搬送面中央に到るまでに冷気の流速が低下しないため、Z
cはZ
maxと等しくなる。具体的には、上記kcをx、Fzをyとしてxy平面上にプロットした場合、両者の関係は
図15のグラフに示す如きものとなり、
[数21]
Fz=1.3kc (0.4≦kc<0.65)……(1)
Fz=1−2.7(0.89―kc)
2 (0.65≦kc<0.89)……(2)
Fz=1 (kc≧0.89)……(3)
と表せる。尚、上記式(2)は、0.4≦kc<0.65の範囲における関係式(1)と、kc≧0.89の範囲における関係式(3)とを滑らかに繋ぐ二次関数として設定している。
【0092】
(iv)風量に関する好適な条件の決定
【0093】
上述の如く、[数20]に定義される値kcが0.4以上であれば、スリットからの冷気は搬送面から剥離せず、搬送面中央に到達する。すなわち、搬送面両側の第一の冷風送風口15から吹き出した気流A1が搬送面の幅方向中央に到達する条件(条件1)として、下記[数22]を定義できる。
[数22]
kc≧0.4
【0094】
そして、この範囲において、Z
cは上記[数19]〜[数21]によって定式化することができる。ここで、搬送面の幅方向中央で吹き上がった気流A1は、コンベヤ部3の搬送面を底面とし、該搬送面と導風部14の上面14bによって形成される凹状の空間の深さ、すなわちコンベヤ部3の搬送面に対する導風部14の上面14bの上端の高さHfのおよそ1.8倍から2倍程度以下である場合に、暖気を極力誘引することなく、搬送面上に好適に冷気Aの層を形成できることが確認されている。すなわち、搬送面の幅方向中央で吹き上がった気流A1による暖気の誘引を極力防ぐ条件(条件2)として、下記[数23]を定義できる。
[数23]
Z
c≦2Hf
【0095】
以上のように、本実施例は、底面としてのコンベヤ部3の搬送面を両側から挟むように配置された導風部14を備え、該導風部14は、前記底面(搬送面)に対し水平方向に沿って冷気を送り出す第一の冷風送風口15と、前記底面(搬送面)に向かって下り勾配をなす斜面として構成した上面14bに備えられ、前記底面(搬送面)の上方に向かって斜め上方に冷気を送り出す第二の冷風送風口16とを備えているので、第二の冷風送風口16から吹き出す気流A2によって、第一の冷風送風口15から吹き出す気流A1に伴う暖気の誘引を遮断し、底面(搬送面)上の空気を効率良く冷気Aで置換し、冷気Aの層を形成して底面(搬送面)上の空間を低温に維持することができる。
【0096】
また、本実施例において、第二の冷風送風口16は、導風部14の上面14bがなす斜面の一部をなし且つ空気を通過させる空気抵抗体として構成され、導風部14の上面14bにおける空気抵抗体16の設置された部分は、導風部14の上面14bがなす斜面のうち下側の領域を占めているので、第二の冷風送風口から吹き出す気流が上方に突き抜けることを防止し、且つ一旦静圧回復を経ることで気流の吹き出しを均一なものとすることができる。
【0097】
また、本実施例において、導風部14の上面14bにおける空気抵抗体16の設置された部分の面積は、前記導風部の上面の3分の1以上3分の2以下である。このため、第二の冷風送風口から吹き出す気流の一部により、導風部の上面の上方に渦状の気流を形成させるので、冷気の層をドーム状に盛り上がった状態に維持するのに好適であり、暖気の誘引を一層効率良く遮断し得る。
【0098】
また、本実施例において、導風部14の上面14bがなす斜面は、水平方向に対し30度以上60度以下の角度をなしているので、第二の冷風送風口16から吹き出す気流A2を第一の冷風送風口15から吹き出す気流A1により好適に誘引させることができる。
【0099】
また、本実施例において、第一の冷風送風口15から吹き出す冷気Aは、前記底面(搬送面)の幅方向中央に到達する十分に大きい風速Vhを有し、該風速Vhは、第二の冷風送風口16から吹き出す冷気Aの風速Vobsに対して2分の1以上2倍以下であるので、第二の冷風送風口16から吹き出す気流A2を第一の冷風送風口15から吹き出す気流A1により好適に誘引させつつ、底面(搬送面)上に渦状の気流A3を好適に形成させることができる。
【0100】
また、本実施例において、第一の冷風送風口15から吹き出す冷気Aの風速Vhは、前記底面(搬送面)の両側に備えた第一の冷風送風口15から前記底面(搬送面)の幅方向中央に向かって吹き出した場合に、冷気Aの前記底面(搬送面)の幅方向中央における冷風到達高さZ
cが、前記導風部14の上面14bの上端の前記底面(搬送面)に対する高さHfの2倍以下になるよう設定されているので、暖気の誘引を極力防いで底面(搬送面)上に好適に冷気Aの層を形成することができる。
【0101】
したがって、上記本実施例によれば、所定の空間に効率良く冷気の層を形成し得る。
【0102】
尚、本発明の局所冷却装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、ベルトコンベヤに限らずローラコンベヤ等にも適用し得ること、さらにはコンベヤにも限らず、底面上の所定の空間に対して局所的な冷却を行う種々の装置に関し広く適用し得ること等、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。