特許第6626384号(P6626384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6626384給電装置および給電方法、制御回路、ACアダプタ、電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626384
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】給電装置および給電方法、制御回路、ACアダプタ、電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/26 20060101AFI20191216BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20191216BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   G06F1/26 306
   H02J7/02 B
   H02J1/00 306B
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-59183(P2016-59183)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2017-174138(P2017-174138A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】本木 健一
【審査官】 豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−176442(JP,A)
【文献】 特開2008−134794(JP,A)
【文献】 再公表特許第2010/067400(JP,A1)
【文献】 再公表特許第2004/070593(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
USB−PD規格に対応する給電装置から受電装置への給電方法であって、
前記給電装置は、供給可能電圧および電流を規定するデータを含む第1リストを有し、
前記受電装置は、要求電圧および要求電流を規定するデータを含む第2リストを有し、
前記給電方法は、
前記給電装置が、前記受電装置に対して前記要求電圧の送信をリクエストするステップと、
前記給電装置において、前記要求電圧と前記第1リストを参照し、前記要求電圧が、前記第1リストに含まれておらず、かつ自身が当該要求電圧を供給可能である場合、前記要求電圧が含まれるように、前記第1リストを修正するステップと、
前記給電装置が、前記受電装置に対して、修正後の前記第1リストを送信するステップと、
前記受電装置が、前記修正後の第1リストにもとづいて、ひとつの供給可能電圧を選択し、前記給電装置に通知するステップと、
前記給電装置が、選択された前記供給可能電圧を生成し、前記受電装置に供給するステップと、
を備えることを特徴とする給電方法。
【請求項2】
前記第2リストの送信をリクエストするステップより前に、
前記給電装置が、前記受電装置に対して、修正前の前記第1リストを送信するステップと、
前記受電装置が、前記修正前の第1リストにもとづいて、ひとつの供給可能電圧を選択し、前記給電装置に通知するステップと、
前記給電装置が、選択された前記供給可能電圧を生成し、前記受電装置に供給するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の給電方法。
【請求項3】
受電装置にバス電圧を供給するUSB−PD規格に対応した給電装置であって、
可変のバス電圧を発生可能な電源回路と、
前記電源回路によって供給可能な供給可能電圧および電流を規定するデータを含む第1リストと、
前記受電装置の受電側コントローラとの間で通信可能であり、前記第1リストを利用して供給電圧をネゴシエーションし、決定した供給電圧を前記電源回路に発生させる給電側コントローラと、
前記給電側コントローラの通信機能を利用して、前記受電側コントローラに対して、前記受電装置の要求電圧を含むデータの送信をリクエストし、当該要求電圧が前記第1リストに含まれておらず、かつ前記電源回路が当該要求電圧を供給可能である場合、前記要求電圧が含まれるように前記第1リストを修正するリスト修正部と、
を備えることを特徴とする給電装置。
【請求項4】
前記給電側コントローラは、前記リスト修正部が前記第1リストを修正する前に、前記受電側コントローラとの間で、前記供給電圧の1回目のネゴシエーションを行い、
前記リスト修正部は、前記1回目のネゴシエーションの完了後に、前記受電装置の要求電圧を含むデータの送信をリクエストすることを特徴とする請求項3に記載の給電装置。
【請求項5】
USB−PD規格に対応することを特徴とする請求項3または4に記載の給電装置。
【請求項6】
前記電源回路は、出力電圧が可変のDC/DCコンバータを含み、
前記給電側コントローラは、前記DC/DCコンバータの出力電圧を制御することを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の給電装置。
【請求項7】
前記電源回路は、複数のDC/DCコンバータを含み、
前記給電側コントローラは、前記複数のDC/DCコンバータからひとつを選択することを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の給電装置。
【請求項8】
前記電源回路は、出力電圧が可変のAC/DCコンバータを含み、
前記給電側コントローラは、前記AC/DCコンバータの出力電圧を制御することを特徴とする請求項3から7のいずれかに記載の給電装置。
【請求項9】
請求項3から8のいずれかに記載の給電装置を備えることを特徴とするACアダプタ。
【請求項10】
請求項3から8のいずれかに記載の給電装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
受電装置にバス電圧を供給するUSB−PD規格に対応した給電装置の制御回路であって、
前記給電装置は、前記制御回路に加えて、可変のバス電圧を発生可能な電源回路を備え、
前記制御回路は、
前記電源回路によって供給可能な供給可能電圧および電流を規定するデータを含む第1リストを格納するメモリと、
前記受電装置の受電側コントローラとの間で通信可能であり、前記第1リストを利用して供給電圧をネゴシエーションし、決定した供給電圧を前記電源回路に発生させる給電側コントローラと、
前記給電側コントローラの通信機能を利用して、前記受電側コントローラに対して、前記受電装置の要求電圧を含むデータの送信をリクエストし、当該要求電圧が前記第1リストに含まれておらず、かつ前記電源回路が当該要求電圧を供給可能である場合、前記要求電圧が含まれるように前記第1リストを修正するリスト修正部と、
を備えることを特徴とする制御回路。
【請求項12】
前記給電側コントローラは、前記リスト修正部が前記第1リストを修正する前に、前記受電側コントローラとの間で、前記供給電圧の1回目のネゴシエーションを行い、
前記リスト修正部は、前記1回目のネゴシエーションの完了後に、前記受電装置の要求電圧を含むデータの送信をリクエストすることを特徴とする請求項11に記載の制御回路。
【請求項13】
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする請求項11または12に記載の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器への給電技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末、スマートホン、タブレット端末、ノート型コンピュータ、ポータブルオーディオプレイヤをはじめとする電池駆動デバイスは、再充電可能な二次電池とともに、それを充電するための充電回路を内蔵する。充電回路には、外部からUSBケーブルを介して供給されたDC電圧(バス電圧VBUS)や、外部のACアダプタからのDC電圧にもとづいて二次電池を充電するものが存在する。
【0003】
現在、モバイル機器に搭載される充電回路は、USB Battery Charging Specificationと呼ばれる規格(以下、BC規格という)に対応したものが主流である。USBホストあるいはチャージャ(以下、USB給電装置と総称する)には、いくつかの種類が存在する。BC revision 1.2規格においては、USB給電装置の種類として、SDP(Standard Downstream Port)、DCP(Dedicated Charging Port)、CDP(Charging Downstream Port)が定義されている。そしてUSB給電装置が供給できる電流(電流容量)は、その種類に応じて規定されている。具体的には、DCP、CDPでは1500mA、SDPでは、USBのバージョンに応じて100mA、500mA、900mAのように規定されている。
【0004】
USBを利用した次世代の二次電池充電の方式、システムとして、USB Power Deliveryと呼ばれる規格(以下、PD規格という)が策定されている。PD規格では、供給可能な電力がBC規格の7.5Wから、最大100Wまで大幅に増大する。具体的にはPD規格では、USBバス電圧として、5Vより高い電圧(具体的には、9V,12V,15V,20V等)の供給が許容されており、充電電流も、BC規格よりも大きな量(具体的には、2A,3A、5A等)の供給が許容される。PD規格は、USB type−C規格にも採用されている。
【0005】
図1は、本発明者が検討した給電システム100Rのブロック図である。この給電システム100Rは、USB Type−C規格に対応しており、USBケーブル106を介して接続される給電装置200Rと受電装置300Rを備える。たとえば給電装置200RはACアダプタ102に搭載され、あるいは電子機器に搭載される。受電装置300Rは、スマートホン、タブレット端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、ポータブルオーディオプレイヤなど、電池駆動型の電子機器400に搭載される。
【0006】
給電装置200Rは、電源回路202、給電側のPDコントローラ(以下、給電側コントローラという)204を含む。SOURCE PDO(Power Data Object)のリストあるいはテーブル(以下、単にPDOリストともいう)206には、給電装置200Rが供給可能な電圧および電流の組み合わせ(PDO)を、最大7個まで規定可能である。
【0007】
電子機器400のレセプタクル108にはUSBケーブル106が着脱可能に接続される。なおレセプタクル108が省略され、USBケーブル106がACアダプタ102と一体となっている充電アダプタも存在する。
【0008】
レセプタクル108は、バス電圧VBUSを供給するためのVBUS端子、接地電圧VGNDを供給するためのGND端子ならびにCC(Configuration Channel)端子を含む。CC端子は、レセプタクルタイプにおいては2個設けられるが、本明細書では1個に省略して示している。電源回路202は、バス電圧VBUSを発生する。電源回路202は、図示しない外部電源(たとえば商用交流電源)からのAC100Vを受け、それを直流のバス電圧VBUSに変換するAC/DCコンバータを含んでもよい。電源回路202が発生したバス電圧VBUSは、USBケーブル106のバスラインを介して受電装置300Rに供給される。
【0009】
給電側コントローラ204は、USBケーブル106を介して、受電側のPDコントローラ(以下、受電側コントローラ)306と接続される。給電側コントローラ204と受電側コントローラ310は、給電装置200Rと受電装置300Rの間の通信機能を提供する。
【0010】
電子機器400は、受電装置300Rに加えて負荷(システム)402を備える。負荷402は、CPUやメモリ、液晶ディスプレイ、オーディオ回路などを含む。レセプタクル404にはUSBケーブル106を介してACアダプタ102が着脱可能に接続される。
【0011】
受電装置300Rは、バッテリ302、充電回路304、電源回路306、DC/DCコンバータ308、受電側コントローラ310、SINK PDOのリストあるいはテーブル(以下、単にPDOリストともいう)312を備える。
【0012】
バッテリ302は再充電可能な2次電池である。充電回路304は、USBケーブル106を介して給電装置200Rからのバス電圧VBUS(受電装置300R側において、アダプタ電圧VADPとも表記する)を受け、バッテリ302を充電する。充電回路304は、降圧DC/DCコンバータ、リニアレギュレータあるいはそれらの組み合わせで構成される。
【0013】
充電回路304から負荷402へは、アダプタ電圧VADPおよびバッテリ302の電圧VBATの少なくとも一方に応じたシステム電圧VSYSが供給される。負荷402は、パワーマネージメントIC(Integrated Circuit)、DC/DCコンバータやリニアレギュレータなどを含むマルチチャンネル電源や、マイコン、液晶ディスプレイ、ディスプレイドライバなどを含む。
【0014】
負荷402は、たとえばシステム電圧VSYS=20V、最大電流2.25A(電力45W)で動作する。一方で、電子機器400は、20Vのバス電圧VBUSに加えて、15Vのバス電圧VBUSをサポートする。PDOリスト312には、電子機器400が要求する電圧および電流がPDOとして宣言されている。この例では、20V/2.25Aと、15V/3Aが、PDOとして宣言される。またUSB−PD規格では、給電側、受電側ともに、5V(電流は規定されず)をサポートすることが要求される。
【0015】
このために充電回路304の前段には、電源回路306が設けられる。電源回路306は、DC/DCコンバータ308を含む。DC/DCコンバータ308は、VBUS=15Vである場合に、それを昇圧し、20Vのアダプタ電圧VADPを生成する。
【0016】
受電側コントローラ310は、USB Type−Cに関するポートコントローラであり、CCラインを介して給電側コントローラ204と接続される。ACアダプタ102と電子機器400が接続されると、給電側コントローラ204と受電側コントローラ310とがネゴシエーションを行い、PDOリスト206とPDOリスト312にもとづいて、バス電圧VBUSの電圧レベルが決定される。
【0017】
図2は、図1のUSB PD規格におけるネゴシエーションのシーケンス図である。はじめに、給電側コントローラ204は、受電側コントローラ310に対してPDOリスト206を送信し、供給可能な電圧/電流を宣言する(Source Capabilityと称する)(S100)。
【0018】
受電側コントローラ310はPDOリスト312を参照して、PDOリスト206の中から最適なPDOを1個選択する(S102)。そして受電側コントローラ310は、選択したPDOと、使用する電流量を含むRDO(Request Data Object)を送信する(S104)。もし、給電装置200Rが供給可能な電流量が、受電装置300Rが要求する電流量に対して不足する場合、RDOはミスマッチを示す情報を含む。これにより、受電装置300Rから給電装置200Rに対して、本意でないPDOにネゴシエーションしたことが通知される。
【0019】
RDOを受信した給電側コントローラ204は、電源回路202の出力電圧VBUSを、RDOが指示する値にセットする(S106)。なお、必ずしもPDOリスト312が要求する電流と、PDOリスト206に宣言される電流は一致するとは限らない。
【0020】
たとえば給電装置200Rが、図1のPDOリスト206に宣言された4個のPDO1〜PDO4をサポートしているとする。受電装置300R側に着目すると、DC/DCコンバータ308による電圧変換は電力損失を生ずることから、20Vのバス電圧VBUSの方が、高効率に動作可能である。そこで受電側コントローラ310は、ステップS100で受信したPDOリストの中から、PDO4の20V/2.25Aを選択し、PDO4と電子機器400が消費する電流2.25Aを含むRDOを送信する。このケースでは、給電システム100は、うまく動作している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2013−198262号公報
【特許文献2】特開2006−60977号公報
【特許文献3】特開2006−304500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明者は、図1の給電システム100Rについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
PDOリスト206に記載可能なPDOの個数には制限があり、したがって、PDOリスト206には、必ずしも電源回路202が生成可能な電圧と電流の組み合わせのすべてがリストされているとは限らない。たとえば図1の例では、電源回路202が20V/2.25Aで動作可能であるにも関わらず、PDO4を有していない可能性もある。
【0023】
この場合、受電側コントローラ310は、PDO1〜PDO3の中から、PDO3を選択することなる。そうすると、DC/DCコンバータ308を動作させる必要があるため、効率が低下する。
【0024】
あるいは、受電装置300Rが、20Vではなく19V/2.38A(すなわち45W)を要求する一方で、PDOリスト206がPDO4(20V/2.25A)を有している場合にも、PDO3が選択されることとなり、効率が低下する。
【0025】
またPDOリスト206とPDOリスト312の組み合わせによっては、給電システム100Rが動作不能に陥る状況も想定される。
【0026】
なおこのような問題は、USB−PDに限らず、それと類似するプロトコルを有する給電システムにおいても生じうる。
【0027】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、給電システムの効率を改善し、あるいは動作不能状態を回避可能な給電装置および給電方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明のある態様は、受電装置にバス電圧を供給する給電装置に関する。給電装置は、可変のバス電圧を発生可能な電源回路と、電源回路によって供給可能な供給可能電圧および電流を規定するデータを含む第1リストと、受電装置の受電側コントローラとの間で通信可能であり、第1リストを利用して供給電圧をネゴシエーションし、決定した供給電圧を電源回路に発生させる給電側コントローラと、給電側コントローラの通信機能を利用して、受電側コントローラに対して、受電装置の要求電圧を含むデータの送信をリクエストし、当該要求電圧が第1リストに含まれておらず、かつ電源回路が当該要求電圧を供給可能である場合、要求電圧が含まれるように第1リストを修正するリスト修正部と、を備える。
【0029】
この態様によると、受電装置に適合するように、給電装置の第1リストを修正することにより、給電システムの効率を改善でき、あるいは動作不能状態を回避できる。
【0030】
給電側コントローラは、リスト修正部が第1リストを修正する前に、受電側コントローラとの間で、供給電圧の1回目のネゴシエーションを行い、リスト修正部は、1回目のネゴシエーションの完了後に、受電装置の要求電圧を含むデータの送信をリクエストしてもよい。
【0031】
給電装置は、USB−PD規格に対応してもよい。「対応」とは、コンプライアンス試験をパスした準拠した場合(Compliant)、あるいは、コンプライアンス試験にはパスしていないが動作はサポートする場合(Compatible)を含む。
【0032】
電源回路は、出力電圧が可変のDC/DCコンバータを含んでもよい。給電側コントローラは、DC/DCコンバータの出力電圧を制御してもよい。
【0033】
電源回路は、複数のDC/DCコンバータを含んでもよい。給電側コントローラは、複数のDC/DCコンバータからひとつを選択してもよい。
【0034】
電源回路は、出力電圧が可変のAC/DCコンバータを含んでもよい。給電側コントローラは、AC/DCコンバータの出力電圧を制御してもよい。
【0035】
本発明の別の態様はACアダプタに関する。ACアダプタは上述のいずれかの給電装置を備えてもよい。
【0036】
本発明の別の態様は電子機器に関する。電子機器は上述のいずれかの給電装置を備えてもよい。
【0037】
本発明の別の態様は、受電装置にバス電圧を供給する給電装置の制御回路に関する。給電装置は、制御回路に加えて、可変のバス電圧を発生可能な電源回路を備える。制御回路は、電源回路によって供給可能な供給可能電圧および電流を規定するデータを含む第1リストを格納するメモリと、受電装置の受電側コントローラとの間で通信可能であり、第1リストを利用して供給電圧をネゴシエーションし、決定した供給電圧を前記電源回路に発生させる給電側コントローラと、給電側コントローラの通信機能を利用して、受電側コントローラに対して、受電装置の要求電圧を含むデータの送信をリクエストし、当該要求電圧が第1リストに含まれておらず、かつ電源回路が当該要求電圧を供給可能である場合、要求電圧が含まれるように第1リストを修正するリスト修正部と、を備える。
【0038】
制御回路は一つの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0039】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0040】
本発明のある態様によれば、給電システムの効率を改善でき、あるいは動作不能状態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明者が検討した給電システムのブロック図である。
図2図1のUSB PD規格におけるネゴシエーションのシーケンス図である。
図3】実施の形態に係る給電システムのブロック図である。
図4図3の給電システムのネゴシエーションのシーケンス図である。
図5図5(a)〜(b)は、第1PDOリストの修正を説明する図である。
図6図6(a)〜(d)は、電源回路の構成例を示すブロック図である。
図7図7(a)は、給電装置を備えるACアダプタの斜視図であり、図7(b)および図7(c)は、給電装置を備える電子機器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0043】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0044】
図3は、実施の形態に係る給電システム100のブロック図である。給電システム100は、図1と同様にUSB Type−C規格に対応しており、USBケーブル106を介して接続される給電装置200と受電装置300を備える。たとえば給電装置200はACアダプタ102に搭載され、あるいは電子機器に搭載される。受電装置300は、スマートホン、タブレット端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、ポータブルオーディオプレイヤなど、電池駆動型の電子機器400に搭載される。
【0045】
給電装置200Rは、可変のバス電圧VBUSを発生可能な電源回路202および制御回路201を備える。制御回路201は、給電側のPDコントローラ(以下、給電側コントローラという)204、第1PDOリスト206を格納するメモリおよびリスト修正部208を備える。制御回路201は、ひとつの半導体基板に一体集積化された機能ICであってもよい。電源回路202、給電側コントローラ204、PDOリスト206は図1を参照して説明した通りである。PDOリスト206は、メモリに格納される。
【0046】
第1PDOリスト206は、電源回路202によって供給可能な供給可能電圧および電流を規定するデータ(PDO)を少なくともひとつ含む。給電側コントローラ204は、受電装置300の受電側コントローラ310との間で通信可能であり、第1PDOリスト206を利用して供給電圧をネゴシエーションし、決定した供給電圧を電源回路202に発生させる。
【0047】
リスト修正部208は、給電側コントローラ204の通信機能を利用して、受電側コントローラ310に対して、受電装置300の要求電圧を含むデータ(要求PDO)の送信をリクエストする。USB−PD規格では、"get Sink capability"メッセージによって、要求PDOの送信をリクエストすることができる。
【0048】
受電装置300側のPDOリスト(第2PDOリスト)312には、2つの要求電圧20V,15Vが含まれている。受電側コントローラ310は、2つの要求電圧のうち、より好ましい一方(通常は高い方の電圧であるが、その限りではない)である20Vを要求電圧とし、それに対応するPDOを、要求PDOとして給電側コントローラ204に送信する。
【0049】
リスト修正部208は、要求PDOが示す要求電圧(20V)が第1PDOリスト206に含まれておらず、かつ電源回路202が当該要求電圧(20V)を供給可能である場合、要求電圧(20V)が含まれるように第1PDOリスト206を修正する。
【0050】
好ましくは給電側コントローラ204は、リスト修正部208が第1PDOリスト206を修正する前に、すなわち"get Sink capability"メッセージを送信する前に、受電側コントローラ310との間で、通常の1回目のネゴシエーションを行い、供給電圧を決定し、電源回路202は、決定された電圧レベルのバス電圧VBUSを供給する。この処理は、図2を参照して説明した通りである。その後、リスト修正部208は、1回目のネゴシエーションの完了後に、受電装置300の要求電圧を含む要求PDOの送信をリクエストする。
【0051】
以上が給電装置200の構成である。続いてその動作を説明する。
【0052】
図4は、図3の給電システム100のネゴシエーションのシーケンス図である。通常のネゴシエーションS100〜S106は図2と同様である。続いて、給電装置200は、要求PDOをリクエストし(S108)、受電装置300はそれに応答して要求PDOを送信する(S110)。給電装置200では、要求PDOにもとづいて、可能であれば第1PDOリスト206が修正される(S112)。
【0053】
第1PDOリスト206が修正されると、処理S100〜S106に対応するネゴシエーション(S114〜S120)が行われる。具体的には給電装置200は修正後の第1PDOリスト206を受電装置300に送信する(S114)。受電装置300は、修正後の第1PDOリストにもとづいて、最適なPDOを選択し(S116)、給電装置200にRDOを返す(S118)。給電装置200は、電源回路202が生成するバス電圧VBUSの電圧レベルを、RDOに応じてセットする(S120)。
【0054】
なお、処理S112において、第1PDOリストを修正不可能である場合には、そこで処理が終了する。
【0055】
以上が給電システム100の動作である。さらに以下では、具体的な数値を参照しながら、給電システム100の動作を説明する。
【0056】
図5(a)〜(b)は、第1PDOリストの修正を説明する図である。図5(a)では、要求電圧Vrは20Vであり、20Vは、第1PDOリスト206に記載されているため、第1PDOリストは修正されず、1回目のネゴシエーションによって、20Vが選択される。
【0057】
図5(b)では、第1PDOリスト206は図5(a)と同様であり、要求電圧Vrが19.5Vであり、図5(a)のそれと異なっている。この場合、1日目のネゴシエーションでは、15V/3Aが選択される。そして、第1PDOリスト206は、要求電圧Vr=19.5Vが含まれるように修正され、第1PDOリスト206’が生成される。修正後のPDO4の電流については、電源回路202の許容電力がPMAXであるとき、
I=PMAX/Vr
によって規定してもよい。
【0058】
修正後の第1PDOリスト206’にもとづくネゴシエーションによって、PDO4’(19.5V/2.31A)が選択され、受電装置300は最適な状態(高効率な状態)で動作することができる。
【0059】
このように実施の形態に係る給電装置200によれば、さまざまな受電装置300との組み合わせにおいて、最適なバス電圧VBUSを供給することが可能となる。
【0060】
図6(a)〜(d)は、電源回路202の構成例を示すブロック図である。図6(a)の電源回路202は、可変出力を有するAC/DCコンバータ202aを含む。AC/DCコンバータ202aは、交流電圧を整流、平滑化し、さらに平滑整流された電圧を絶縁コンバータによって降圧し、直流のバス電圧VBUSを生成する。絶縁コンバータは可変出力を有する。給電側コントローラ204は、要求電圧が得られるようにAC/DCコンバータ202aの出力電圧を制御する。
【0061】
図6(b)の電源回路202は、可変出力を有するDC/DCコンバータ202bを含む。DC/DCコンバータ202bには、バッテリ、図示しない別のDC/DCコンバータやAC/DCコンバータにより生成された直流電圧VINが入力される。給電側コントローラ204は、要求電圧が得られるようにDC/DCコンバータ202bの出力電圧を制御する。
【0062】
図6(c)の電源回路202は、図6(a)のAC/DCコンバータ202aと、出力固定のDC/DCコンバータ202cの組み合わせである。セレクタ203は、DC/DCコンバータ202cの出力電圧VDC1と、AC/DCコンバータ202aの出力電圧VDC2の一方を選択する。給電側コントローラ204は、要求電圧が得られるように、AC/DCコンバータ202aおよびセレクタ203を制御する。
【0063】
図6(d)の電源回路202は、図6(c)のAC/DCコンバータ202aを、図6(b)のDC/DCコンバータ202bで置換したものである。給電側コントローラ204は、要求電圧が得られるように、DC/DCコンバータ202bおよびセレクタ203を制御する。
【0064】
(用途)
最後に給電装置200の用途を説明する。図7(a)は、給電装置200を備えるACアダプタ500の斜視図である。ACアダプタ500は、筐体502、レセプタクル504および給電装置200を備える。給電装置200の電源回路202は、AC/DCコンバータで構成される。
【0065】
図7(b)は、給電装置200を備える電子機器600の斜視図である。この電子機器600は、ディスプレイ装置のようにバッテリを内蔵しないデバイスである。電子機器600は、筐体602、レセプタクル604および給電装置200を備える。給電装置200の電源回路202は、AC/DCコンバータで構成される。
【0066】
図7(c)は、給電装置200を備える電子機器700の斜視図である。この電子機器700は、ノート型PCやタブレットPCのようにバッテリを内蔵するデバイスである。電子機器700は、筐体702、レセプタクル704、バッテリ706および給電装置200を備える。給電装置200の電源回路202は、バッテリ706からの直流電圧VBATあるいは外付けのACアダプタ720からの直流電圧VEXTを受け、バス電圧VBUSを発生するDC/DCコンバータで構成される。
【0067】
このように給電装置200は、さまざまな電子機器やACアダプタに搭載することができる。
【0068】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0069】
100…給電システム、102…アダプタ、106…USBケーブル、108…レセプタクル、200…給電装置、201…制御回路、202…電源回路、204…給電側コントローラ、206…第1PDOリスト、208…リスト修正部、400…電子機器、402…負荷、404…レセプタクル、300…受電装置、302…バッテリ、304…充電回路、306…電源回路、308…DC/DCコンバータ、310…受電側コントローラ、312…PDOリスト、ACアダプタ…電子機器、502…筐体、504…レセプタクル、600…電子機器、602…筐体、604…レセプタクル、700…電子機器、702…筐体、704…レセプタクル、706…バッテリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7