(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記録条件は、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の距離、前記記録ヘッドを搭載するキャリッジの速度、のうち少なくともいずれかを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、画像形成装置100の構成を示すブロック図である。
図1の下段は、画像形成装置100のハードウェア構成のブロック図を示し、
図1の上段は、画像形成装置100のソフトウェアの構成のブロック図を示す。本実施形態では、画像形成装置100は、印刷用紙等の記録媒体に画像等を記録(印刷)する記録装置である。しかしながら、画像形成装置100は、印刷機能やスキャン機能、ファクス機能等、複数の機能が一体化されたいわゆる多機能型周辺装置(MultiFunctionalPeripheral)の場合もある。
【0015】
図1に示すように、画像形成装置100は、CPU109、ROM110、RAM111、ハードディスク(HD)112、ネットワークインタフェース部113を含む。また、画像形成装置100は、表示部114、入力部115、画像処理部116、記録部117を含む。
【0016】
CPU109は、画像形成装置100を統括的に制御し、実行可能な各機能を実行する。ROM110は、汎用的なROMであり、例えば、画像形成装置100が動作するために必要な制御プログラムや、各種データ等を記憶する。RAM111は、汎用的なRAMであり、例えば、CPU109のワークメモリとして動作する。以下の各実施形態の動作は、例えば、CPU109がROM110に記憶されているプログラムをRAM111に読み出して実行することにより実現される。ハードディスク(HD)112は、汎用的なハードディスクであり、例えば、画像形成装置100の特性に従って画像データを補正するためのデータやテーブル等を記憶する。
【0017】
ネットワークインタフェース部113は、LAN等のネットワークを介して外部装置との通信を可能にする。ここで、ネットワークは、有線ネットワークの場合もあれば、無線ネットワークの場合もある。また、無線ネットワークの場合には、各無線通信距離に応じたインタフェース構成を含む。例えば、通信距離が5cm程度の近距離無線通信(NearFieldCommunication)に対応する構成の場合もある。
【0018】
表示部114は、例えばディスプレイであり、画像形成装置100の装置状態やジョブの進捗情報、画像形成装置100が実行可能な各機能の設定画面等を表示する。入力部115は、例えばハードキーであり、ユーザ操作を受け付ける。また、表示部114に表示されたタッチパネルがユーザ操作を受け付ける場合もある。
【0019】
画像処理部116は、処理対象の画像データに対して種種の画像処理を実行する。例えば、画像処理部116は、画像データを、インク滴の吐出/不吐出に対応した二値データに変換する。また、画像処理部116は、二値化処理の他にも、例えば、色空間変換、HV変換、ガンマ補正、画像回転/縮小/拡大等の処理を実行する。画像処理部116は、例えばFPGA等のチップで構成され、また、各処理ごとに対応した複数のチップとして構成されても良い。
【0020】
記録部117は、いわゆるプリンタエンジンの機構を含む。例えば画像形成装置100がインクジェット記録方式で記録を行う場合、記録部117は、キャリッジに搭載された記録ヘッド、キャリッジ駆動機構、インク吐出制御を行うコントローラ等を含む。
【0021】
上記の各部は、システムバス118により相互に通信可能に接続されている。また、画像形成装置100が多機能型周辺装置の場合には、機能に対応したブロックがさらに含まれても良い。例えば、システムバス118に、スキャナエンジンの構成を含むスキャナ部が接続されても良い。
【0022】
画像形成装置100において、CPU109は、例えばプログラムの実行により、データi/o部101、パラメータ選択部102、回復処理パラメータ保持部103の各機能ブロックを実現する。また、CPU109は、例えばプログラムの実行により、データメモリ部104、ユーザインタフェース(UI)部105、画像形成部106、特定情報取得部107、画像回復処理部108の各機能ブロックを実現する。また、CPU109は、画像形成装置100の実行可能な機能に応じて、
図1では不図示の他の機能ブロックを実現しても良い。
【0023】
データi/o部101は、ネットワークインタフェース部113を介して外部の装置と送受信されるデータを制御する。ここで、外部の装置とは、例えば、画像形成装置100にジョブやデータ等を送信するホストコンピュータである。パラメータ選択部102は、ROM110やHD112等の記憶領域上で実現される回復処理パラメータ保持部103に保持された出力画像の鮮鋭性の低下を補完するための回復フィルタを取得する。回復処理パラメータ保持部103は、ROM110やHD112等の記憶領域上で実現され、回復フィルタを保持する。回復フィルタについては後述する。
【0024】
データメモリ部104は、ROM110やHD112等の記憶領域上で実現され、画像形成装置100の処理対象の画像データを記憶する。UI部105は、画像形成部106で画像形成を行うための出力条件を、表示部114に表示された設定画面上で設定項目に対応した入力部115のユーザ操作を介して受け付ける。ここで、出力条件とは、記録部117による記録条件であり、例えば、記録パス数、キャリッジ速度、記録方向(双方向記録や単方向記録等)、ハーフトーンパターン、記録ヘッドと記録媒体の間の距離、クリアインク使用の有無、色設定、記録媒体の種類である。
【0025】
画像形成部106は、記録部117において画像形成を行うための画像処理ブロックであり、例えば、FPGA等のチップで構成される画像処理部116上で実現される。画像処理としては、画像処理部116における説明と同様に、例えば、処理対象の画像データを、記録部117の記録ヘッドからのインク吐出/不吐出を制御するための二値化データに変換する処理が含まれる。また、画像形成部106は、二値化処理の他にも、例えば、色空間変換、HV変換、ガンマ補正、縮小/拡大等の処理を実行する。
【0026】
特定情報取得部107は、UI部105から、画像形成部106の出力条件を取得する。画像回復処理部108は、処理対象の画像データに対して、回復フィルタによるフィルタ処理を実行する。
図1のパラメータ選択部102、特定情報取得部107、画像回復処理部108は、画像形成部106と同様に、画像処理部116上で実現されても良い。
【0027】
図1においては、画像形成装置100として単体の装置内に上段及び下段に示す各ブロックを構成する例を示したが、複数の装置として実現しても良い。例えば、画像形成部106や記録部117以外のブロックを、記録部117での記録動作を制御する画像処理装置(例えばホストコンピュータ)内に構成し手も良い。そして、画像形成部106及び記録部117を含む構成を画像形成装置100とし、それらの構成により各実施形態を実現するようにしても良い。
【0028】
図2は、画像形成装置100における画像形成処理を示すフローチャートである。
図2の処理は、例えば、CPU109がROM110に記憶されたプログラムをRAM111に読み出して実行することにより実現される。
【0029】
S201において、画像回復処理部108は、データi/o部101を介して、若しくは、画像形成装置100で実行されるアプリケーションで作成された、処理対象の画像データを取得し、データメモリ部104に格納する。以下、処理対象の画像データを、入力画像データiとする。
【0030】
S202において、入力部115は、印刷設定画面を介してユーザ操作を受け付ける。そして、特定情報取得部107は、UI部105を介して、画像形成部106の出力条件Oiを特定情報として取得する。ここで、出力条件Oiとは、上述したように、例えば、記録パス数、キャリッジ速度、記録方向(双方向記録、単方向記録)、ハーフトーン(HT)パターン、記録ヘッドと記録媒体との間の距離、クリアインク使用の有無、色設定、記録媒体の種類等である。出力条件Oiには、ユーザからの設定を直接反映するものや、ユーザからの設定に基づいて新たに設定したものも含まれる。
【0031】
S203において、パラメータ選択部102は、回復処理パラメータ保持部103にアクセスし、S202で取得された出力条件Oiに対応する回復フィルタRiを取得する。
【0032】
S204において、画像回復処理部108は、入力画像データiに対して、回復フィルタRiによるフィルタ処理を実行する。そして、画像回復処理部108は、回復処理後画像データi’を生成する。画像回復処理部108は、生成した回復処理後画像データi’を、データメモリ部104に格納する。
【0033】
S205において、画像形成部106は、出力条件Oiに基づき、回復処理後画像データi’をデータメモリ部104から読み出し、
図5に示す色補正部502により色補正を行う。その後、
図5で後述する各ブロックの処理が行われ、回復処理後画像データi’に基づいて、記録媒体上に画像を形成する。S205の処理後、
図2の処理を終了する。
【0034】
S204におけるフィルタ処理は、画像の輝度値や明度に対して実行され、その結果、元画像データに基づく出力画像の色味の変化が抑制される。しかしながら、S204におけるフィルタ処理は、他のパラメータ、例えば、RGBやCMYKに対して実行されるようにしても良い。
【0035】
図3は、回復フィルタを説明するための図である。
図3(a)は、入力画像データiの所定領域(例えば5×5画素領域)内の画素値を示す。
図3(b)は、回復フィルタRiを示す。
図3(c)は、
図3(a)に示す中央の画素値に対してS204の回復処理を実行した結果(画素値)を示す。
【0036】
ここで、回復処理の概要について説明する。
【0037】
劣化した画像をg(x,y)、もとの画像をf(x,y)、g(x、y)を取得するために用いた撮像系の点像分布関数(PSF)をh(x,y)としたとき、式(1)が成り立つ。ここで、*はコンボリューション(畳み込み積分、積和)を示し、(x,y)は実空間における画像の座標を示す。
【0038】
g(x,y) = h(x,y)*f(x,y) ・・・(1)
式(1)をフーリエ変換して周波数空間での表示形式に変換すると、式(2)のように表すことができる。
【0039】
G(u,v) = H(u,v)・F(u,v) ・・・(2)
ここで、H(u,v)は、点像分布関数(PSF)h(x,y)をフーリエ変換した光学伝達関数(OTF)である。G(u,v)、F(u,v)はそれぞれ、g(x,y)、f(x,y)をフーリエ変換したものである。(u,v)は、2次元周波数空間での周波数(座標)を表す。
【0040】
劣化画像から元の画像(元画像)を得るためには、式(2)の両辺をH(u,v)で除算すればよい。
【0041】
G(u,v)/H(u,v)=F(u,v) ・・・(3)
このF(u,v)、即ちG(u,v)/H(u,v)を逆フーリエ変換して実空間に戻すことで元画像f(x,y)を回復画像として得ることができる。
【0042】
式(3)の両辺を逆フーリエ変換すると、式(3)は、式(4)で表される。
【0043】
g(x,y)*R(x,y)=f(x,y) ・・・(4)
ここで、R(x,y)は、1/H(u,v)を逆フーリエ変換したものを表す。このR(x,y)が回復フィルタである。この画像回復フィルタは、光学伝達関数(OTF)に基づいているので、振幅成分および位相成分の劣化を補正することができる。
【0044】
一般的に、回復フィルタやOTFのデータ量は、膨大である。例えば、1画素に対して300ピクセル以上の情報が必要であり、単純計算すると、画像の画素数に対して、その数百倍のデータ量が必要になってしまう。そこで、データ量を削減するために、OTFを離散的にしたものや、さらにそれを特定の近似式によって近似した場合の係数データに置き換えても良い。そして、その係数データを静的に保持することで、OTFや回復フィルタを直接保持するよりもデータを削減することができる。
【0045】
回復フィルタは、従来のシャープネスやメディアンフィルタ等の一般的なフィルタ処理と同様、対象画素とその周囲の画素とに適用するフィルタである。そのため、通常のフィルタ適用処理と同様に処理が可能である。
【0046】
本実施形態における回復フィルタRiも、
図3(b)と同様、画像の縦方向と横方向に対して異方性を有している。
【0047】
回復フィルタは、上記の式(1)を用いて求められるが、周波数空間にて式(2)を用いて求められるようにしても良い。その場合には、演算時間をより短縮することができる。
図3(b)では、回復フィルタRiは5×5サイズの正方形フィルタとして示されていて、対応する領域の画像の縦(後述する副走査方向に対応)サイズと横(後述する主走査方向に対応)サイズは同じである。
【0048】
図4は、記録部117の構成を示す図である。記録媒体Pは、給紙モータを駆動源とした不図示の自動給送部によって搬送経路上に配置された搬送ローラ401とこれに従動するピンチローラ402とで構成されるニップ部に給送される。その後、搬送ローラ401の対と、排紙ローラ405とピンチローラ406との対によって、
図4に示す、主走査方向と交差する副走査方向(搬送方向)への間欠的な搬送が行われる。プラテン403は、記録ヘッド404のインク滴吐出面と対向する搬送路に沿って設けられる。プラテン403上の記録部において記録が行われた記録媒体Pは、排紙ローラ405とピンチローラ406との対により副走査方向に搬送され、不図示の排紙トレイに排出される。
【0049】
記録ヘッド404は、キャリッジ408に着脱可能に搭載されている。キャリッジ408は、キャリッジモータの駆動力により2本のガイドレール409及び410に沿って主走査方向に往復移動することができ、その移動の過程で記録ヘッド404から記録データに基づいてインク滴を記録媒体上に吐出して記録を行う。このような記録ヘッド404による記録走査と、記録媒体の搬送動作とが交互に繰り返され、記録媒体Pに段階的に画像が形成されていく。
【0050】
図4では不図示であるが、キャリッジ408の底面に、記録媒体Pに記録された画像を読み取る光学センサが構成されている。光学センサは、例えば、LED光源と、記録媒体からの反射光を検知するフォトダイオードとを含む。記録媒体Pに上記の動作により画像が記録された後、CPU109は、搬送ローラ401と排紙ローラ405とを逆回転することにより、記録媒体Pを記録時と反対向きにプラテン403まで戻す。そして、CPU109は、キャリッジ408の主走査方向に移動することにより、光学センサにより、記録媒体P上の明度(輝度)を取得する。
【0051】
図5は、画像形成部106における記録システムを説明するための図である。ここで、外部のホストコンピュータは、アプリケーション501を有している。
【0052】
画像形成部106において、色補正部502は、アプリケーション501から入力した画像データに対して、出力しようとする画像特性に合わせた色補正を行う。色変換部503は、色補正された画像データのRGB信号を、画像形成部106が使用するインク色に対応する信号(記録データ)に変換する。本実施形態では、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、グレー(Gy)、ライトグレー(LGy)の計8色のインクに対応する信号に変換される。ハーフトーニング部504は、入力されたインク色毎の多値信号に対して、誤差拡散等の擬似中間調処理(ハーフトーニング処理)を行い、その多値信号を、画像形成部106が記録動作を実現するための階調数、即ち1ビットにつき2値の信号に変換する。
【0053】
記録モード制御部505は、アプリケーション501のユーザインタフェース画面を介して受け付けた記録媒体や記録品位の指定内容に応じて、色補正部502、色変換部503、ハーフトーニング部504で用いる各パラメータを設定する。また、記録モード制御部505は、記録モード情報を制御コマンドとして色補正部502、色変換部503、ハーフトーニング部504に転送する。記録モード情報とは、例えば、記録パス数や記録パス数に応じたマスクパターンについての情報である。
【0054】
プリントバッファ506は、記録モード情報、および、ハーフトーニング処理された2値の記録データを入力し、1走査分の記録データが、記録ヘッド404における記録素子のそれぞれに対応するようにマスク制御部507に転送される。
【0055】
マスク制御部507は、アプリケーション501からプリントバッファ506を介して転送される記録モード情報に基づいて、マルチパス記録のために用意された複数のマスク(グラデーションマスク)のパターンの中から適切なマスクパターンを選択する。そして、マスク制御部507は、選択したマスクパターンを用いて、入力された2値の記録データに対してマスク処理を行う。マスク処理により間引かれた2値の記録データは、記録ヘッドドライバ508に転送され、記録ヘッド404の各記録素子(ノズル)内に含まれるヒータ等のインク吐出のためのエネルギー発生素子を駆動するための電気信号に変換される。
【0056】
記録ヘッドドライバ508により生成された電気信号は、記録ヘッド404の各記録素子に対して所定のタイミングで転送され、これにより、各記録素子が電気信号に応じてインク滴を吐出する。本実施形態では、記録ヘッド404は、記録媒体上の単位記録領域を複数回走査するマルチパス記録方式において、マスク処理により走査毎に間引かれた記録データに基づいてインク滴を吐出する。
【0057】
図6は、ノズルから吐出されたサテライトによる鮮鋭性低下を説明するための図である。記録ヘッド404から1つの液滴(インク滴)を吐出する場合、メインとなる主滴601に続いて、少量の副滴が吐出される場合がある。一般的に、このような副滴は、記録媒体への吐出速度が主滴よりも遅いので、主滴よりも遅れて記録媒体表面に到達する。従って、キャリッジ408の走査速度の分だけ主滴と主走査方向にずれた位置に着弾し、サテライトと呼ばれる小径の記録ドット602を形成する。このようなサテライトにより、主走査方向の着弾が揃わず、主走査方向に依存して鮮鋭性低下を引き起こしてしまう。
【0058】
図7は、出力画像における主走査方向と副走査方向との周波数応答値fi1、fi2の一例を示す図である。
図7に示すように、主走査方向の高周波数成分の低下率は、副走査方向の高周波数成分の低下率より大きく、鮮鋭性低下の程度が大きい。本実施形態では、方向性によって異なる周波数応答値fi1、fi2に応じた回復フィルタにより、回復量を異ならせる。つまり、サテライトによる鮮鋭性低下が大きい主走査方向には副走査方向の回復量より回復量が大きくなる回復フィルタにより適切に回復処理を行うことができる。なお、出力条件Oiに対応する周波数応答値fiの取得方法については後述する。
【0059】
次に、記録素子の時分割駆動による鮮鋭性低下について説明する。
【0060】
図8は、シリアル型記録ヘッドにより記録媒体Pに形成される記録ドットの配置を示す図である。
図8で、記録ヘッド404のインク吐出口列は、矢印Bの副走査方向と平行に配列されており、記録媒体P上を矢印Aに示す主走査方向に沿って左から右へと移動して記録を行う。また、記録媒体Pは、矢印Bの方向に搬送され、図中の上側が副走査方向上流側であり、下側が副走査方向下流側である。
【0061】
また、
図8では、記録ヘッド404の128個のインク吐出口801に対応する記録素子を、それぞれ16個の記録素子からなるグループ0からグループ7の8グループにグループ分けしている。そして、各グループ内の各記録素子に異なるブロックを割り当て、同じブロックの記録素子ごとに順次駆動していく。ここでは、副走査方向上流側の記録素子から16個ずつ順に、グループ0からグループ7へとグループ分けしている。また、各グループで副走査方向上流側の記録素子から順に、ブロック0〜15を割り当てている。記録素子は、ブロック0→1→2→3→4→5→6→7→8→9→10→11→12→13→14→15の駆動順序で、1周期(1カラム)の駆動が行われる。
【0062】
ブロック0〜15の記録素子による1周期の駆動によって形成される記録ドットは、同じカラム(1画素の幅)の領域に形成される。
図8は、記録素子がブロック0〜15の順で駆動され、1カラム目から3カラム目までの3カラム分の画像データが記録素子に割り当てられた際、記録媒体上に形成される記録ドットの配置を示している。このように、各グループの記録素子による1周期の駆動によって形成される記録ドットが所定の領域内(同じカラム)に配置される。
【0063】
図8に示すように、記録素子の時分割駆動によって、主走査方向の着弾にはズレが生じ、主走査方向に依存して鮮鋭性低下の原因となってしまう。その場合、主走査方向と副走査方向の出力した周波数応答値fi1、fi2は、
図6のサテライトの場合と同様、
図7に示すような特徴を有する。
【0064】
[出力画像の周波数特性の取得]
次に、本実施形態における出力画像の周波数特性の取得について説明する。なお、回復フィルタの生成方法については後述する。
【0065】
まず、画像形成部106は、出力条件Oiに従って鮮鋭性計測チャート(テスト画像)を出力する(テスト記録)。
図9は、鮮鋭性計測チャートの一例を示す図である。
図9に示すように、鮮鋭性計測チャートは、複数の周波数の異なる正弦波パターンと均一パターンを含む画像チャートを含む。
【0066】
図9の上段は、主走査方向に明度が変化する計測用画像を示す。また、
図9の中段は、副走査方向に明度が変化する計測用画像を示す。また、
図9の下段は、白と黒それぞれが均一である計測用画像を示す。
図9に示す鮮鋭性計測チャートは、例えば、ハードディスク112等のデータメモリ部104に記憶されている。
【0067】
次に、画像形成部106は、出力された鮮鋭性計測チャートに基づき、出力条件Oiに対する周波数応答値fi(u)を取得する。ここで、uは正弦波の周波数である。
図4で説明したように、周波数応答値fi(u)は、例えば、キャリッジ408に構成された光学センサによる読取結果に基づいて取得される。若しくは、
図1では不図示の読取部(スキャナ)により取得されても良い。若しくは、カメラ、顕微鏡、マイクロデンシトメータなどの別装置を用いて取得されても良い。
【0068】
周波数応答値fiには、例えば、式(5)を用いて求められるMTF(u)を用いる。また、式(5)中、Max(u)とMin(u)は、それぞれ、周波数uで変化する正弦波チャートの最大反射率、最小反射率である。さらに、式(5)中、WhiteとBlackは、それぞれ
図9下段の均一パターンの反射率とする。
【0069】
fi(u) = MTF(u) = C(u)/C’ ・・・(5)
ここで、C(u)=(Max(u)−Min(u))/(Max(u)+Min(u))であり、C’=(White−Black)/(White+Black)である。
【0070】
MTF(u)は、式(5)の代わりに他の式で求められても良い。例えば、式(6)により求められても良い。
【0071】
fi(u) = MTF(u) = (Max(u)−Min(u))/(White−Black) ・・・(6)
式(5)は、正弦波の周波数uに応じて、出力画像の平均明度が変化するような場合、明部に対して暗部で応答値が過大となる。そのため、出力画像の平均明度が変化するような場合には、式(5)の代わりに、式(6)を用いるようにしても良い。なお、式(5)、(6)では、Max(u)とMin(u)、WhiteとBlackは反射率として記述したが、例えば、輝度や濃度、デバイスのRGB値が用いられても良い。
【0072】
また、鮮鋭性計測チャートとして、正弦波パターンの代わりに矩形波パターンを用いて周波数応答値fi(u)を取得しても良い。その場合、矩形波パターンに対して式(5)を適用することにより算出されるCTF値を周波数応答値fi(u)として用いても良い。もしくは、CTF値を公知のコルトマン補正式を用いてMTF値に変換し、周波数応答値fi(u)としても良い。あるいは、周波数応答値fi(u)として、周波数パターンに対する鮮鋭性の主観評価値を用いても良い。
【0073】
[回復フィルタの生成]
本実施形態では、異方的な回復フィルタを生成し、方向性に応じて回復量を異ならせる。
【0074】
図10は、回復フィルタ作成処理を示すフローチャートである。
図10の処理は、例えば、CPU109がROM110に記憶されたプログラムをRAM111に読み出して実行することにより実現される。
図10の処理は、
図9の鮮鋭性計測チャートの周波数応答fi(u)の取得の後に、例えばパラメータ選択部102により実行される。
【0075】
S1001において、パラメータ選択部102は、作成された回復フィルタを識別するためのフィルタ番号xを取得する。例えば出力条件Oiで
図9の鮮鋭性計測チャートが出力された場合、フィルタ番号xは、出力条件Oiで出力された鮮鋭性計測チャートに対して対応づけられる。
【0076】
S1002において、パラメータ選択部102は、フィルタ番号xに対応付けられた出力条件Oxにおける周波数応答値fx(u、0)、fx(u、π/2)を取得する。ここで、uは空間周波数である。また、fx(u、0)は主走査方向、fx(u、π/2)は副走査方向の周波数応答値を表す。
【0077】
S1003において、パラメータ選択部102は、周波数応答値fx(u、θ)(θ:角度)を異なる2方向の周波数応答値fx(u、0)、fx(u、π/2)に基づき、その間の角度の周波数応答値を線形補間により求める。ここで、他の補間手法が用いられても良い。また、3方向以上の周波数応答値から求めても良い。
【0078】
S1004において、パラメータ選択部102は、式(7)により、回復フィルタの周波数応答値Rxを取得する。
【0079】
Rx(u、θ) = 1/fx(u、θ) ・・・(7)
S1005において、パラメータ選択部102は、回復フィルタの周波数応答値Rxに対して逆フーリエ変換をおこない、回復フィルタrxを取得する。パラメータ選択部102は、取得した回復フィルタrxを回復処理パラメータ保持部103に格納する。
【0080】
本実施形態では、
図2のS204における回復処理は、周波数空間上で行われても良い。その場合、S1004で取得された回復フィルタの周波数応答値Rxを回復フィルタrxとして保持する。なお、S204における回復処理を行う際は、出力時の主走査方向にあたる画像の向きと、フィルタの向き(θ=0方向)を一致させる。
【0081】
以上のように、S1005で取得された回復フィルタrxと、フィルタ番号xと、出力条件Oiとは、相互に対応付られてROM110等の記憶領域に格納される。その結果、次回に、同じ出力条件を用いて記録が行われる際には、上述のテスト記録の工程を省くことができる。
【0082】
図11は、本実施形態における回復フィルタによる、回復処理前の出力画像データの主走査方向と副走査方向の周波数応答値fi1、fi2と、回復処理後の出力画像データの主走査方向と副走査方向の周波数応答値fi1’、fi2’の一例を示す図である。
【0083】
図11に示すように、回復処理前では、主走査方向および副走査方向の高周波域で、鮮鋭性低下が見られる。これは、
図7と同様の傾向であり、主走査方向の鮮鋭性低下の程度の方が大きいのは、上述したインク滴のサテライトやノズルの時分割駆動によるためである。また、
図11に示すように、回復処理後では、主走査方向および副走査方向の両方で、全周波数領域に渡って、一定の周波数応答値を得ることができる。本実施形態では、このように、回復フィルタrxにより主走査方向・副走査方向ともに鮮鋭性を回復することができる。
【0084】
本実施形態においては、シリアル型記録ヘッドを有するインクジェット記録装置を説明したが、ノズルが記録媒体Pの記録幅方向に渡って配列された、いわゆるライン型記録ヘッドを有するインクジェット記録装置を用いても良い。この場合には、固定されたライン型記録ヘッドによって、記録幅方向と交差する方向に搬送される記録媒体へ記録が行われる。このような形態においても、鮮鋭性低下が大きい方向には、それと交差する方向の回復量より回復量が大きくなる回復フィルタにより適切に画像の回復処理を行うことができる。
【0085】
図12は、ライン型記録ヘッドの構成を示す斜視図である。記録媒体Pは、給紙モータを駆動力源とした不図示の給送部によって搬送路上に給紙される。この搬送路に沿って、搬送ローラ1201とこれに従動するピンチローラ1202、および搬送路においてより下流側の排紙ローラ1205とこれに従動する拍車1206が設けられている。給紙された記録媒体Pは、上記搬送ローラの対と上記排紙ローラの対によって図中の搬送方向に搬送され、これによって記録ヘッドと記録媒体との相対移動が行われる。プラテン1203は、上記2つの対のローラ間で、記録ヘッド1204の吐出口が形成された面(吐出面)と対向する記録位置に設けられる。プラテン1203上の記録部で記録ヘッドからのインクの吐出によって記録が行われた記録媒体Pは、排紙ローラ1205と拍車1206の対によって搬送方向に搬送され、不図示の排紙トレイに排出される。
図12の記録媒体Pの搬送方向は、
図4中の主走査方向に対応する。また、不図示であるが、搬送方向に対する記録幅に渡って、記録ヘッド1204に光学センサが設けられており、CPU109は、記録媒体P上の明度(輝度)を取得することができる。
【0086】
本実施形態では、
図11に示すように、主走査方向および副走査方向において高周波領域での鮮鋭性の回復処理が行われる。しかしながら、高周波領域で回復処理を行うと、ノイズや明るさの低下が起こることが知られている。そこで、例えば、視覚特性上感度の低い4cycles/mmに対応する空間周波数以上の領域については、回復量を小さくしても、若しくは、回復しないようにしても良い。
【0087】
図13は、4cycles/mmに対応する空間周波数F以上の領域に対応する回復量を、
図11の場合より小さくした場合を示す図である。
図13に示すように、空間周波数F以上の領域については、主走査方向および副走査方向についての鮮鋭性低下がみられるが、視覚特性に与える影響は小さい。従って、
図13の場合には、空間周波数F以上の領域について、回復精度は厳密にする必要はなく、処理負荷を低減することができる。
【0088】
上述したように、インクジェット記録装置の出力画像は、サテライトの影響により、方向性によって鮮鋭性が変化する。従って、
図4の構成の場合のキャリッジ速度や
図12の構成の場合の記録媒体Pの搬送速度が変化すると、主滴(濃度を形成する液滴)とサテライト(主滴以外の液滴)との相対位置がずれる。これは主滴とサテライトとの吐出速度が違うからであり、速度が速くなるほどズレ量が大きくなる。つまり、高周波域の鮮鋭性低下の程度が大きくなる。その結果、出力画像データの主走査方向の周波数特性は、例えば
図14のfa1からfb1のように変化する。なお、
図14において、副走査方向の周波数特性は、fa2、fb2により示されている。
【0089】
さらに、記録媒体の厚みや記録ヘッドの高さ、つまり、記録媒体の表面と記録ヘッドとの間の距離によっても鮮鋭性は変化する。記録媒体の表面と記録ヘッドとの間の距離が長いほど、着弾位置ずれは大きくなる。つまり、高周波域の鮮鋭性低下の程度が大きくなる。その結果、出力画像データの主走査方向の周波数特性は、サテライトの場合と同様、
図14のfa1からfb1のように変化する。
【0090】
このように、出力画像データの周波数特性は、画像形成装置100の出力条件Oiにより変化する。そのような場合でも、本実施形態では、出力条件Oiとしてのキャリッジ速度や、記録媒体の表面と記録ヘッドとの間の距離に対応する回復フィルタを用意しておくことができる。その結果、出力条件に適切な鮮鋭性回復処理を行うことができる。
【0091】
[その他の実施例]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。