【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に従う方法によって達成される。有利な実施形態、および本発明に従う方法の開発は、下位請求項に記載される特徴により達成され得る。
【0008】
本発明により、核酸を含む混合物のデコンボリューション法が、上記目的を達成するために提案される。その場合、第1の工程において、互いに異なる、N
0〜N
n配列位置を有する、複数の標的ヌクレオチド配列(TNS)(A
1〜A
n、B
1〜B
n、…、Z
n)が、所定アルゴリズムに従って、複数のヌクレオチド(A、C、G、T/U)から生成される。更なる工程において、生成されたTNS(A
1〜A
n、B
1〜B
n、…、Z
n)の少なくとも1つが、それぞれ少なくとも1つの物質または1つの物質の組合せに割り当てられると共に、後者と化学的に結合する。さらに、本発明の方法によれば、分析される少なくとも1つの混合物が、その中に含有された少なくとも2つの異なる物質TNSおよび/またはTNS結合物質と共に調製され、当該少なくとも1つの混合物は、配列決定法に従って配列決定され、当該混合物中に含有される全TNS(A
1〜A
n、B
1〜B
n、…、Z
n)または更なる核酸もしくはヌクレオチド配列は、共通の配列スペクトルにおいて同時に検出される。デコンボリューションを促進し、よって濃縮TNSを同定するために、混合物の配列スペクトルは、選択実験の前後に互いから回収される/減じられるべきである。
【0009】
同時に、または続いて、配列スペクトルにおいて重ね合わされた(superimposed)配列は、所定アルゴリズムに従って配列位置N
0〜N
nをスキャンすることによってデコンボリュートされ、かつそれらの割当てに従って、物質または物質組合せとして同定される。例えば、当該処理は、配列スペクトルにおいて個々のヌクレオチド(A、C、G、T/U)のシグナル強度が有意に増大した配列位置N
0〜N
nが、所定アルゴリズムに従ってスキャンされるように、実行される。
【0010】
配列位置N
0〜N
nでのヌクレオチド(A、C、G、T/U)のシグナル強度は、観察配列位置N
0〜N
nでのヌクレオチド(A、C、G、T/U)の頻度に相当する。シグナルは、好ましくは、例えば外部から励起される蛍光または化学ルミネセンスといった光シグナルに関するものであるとよい。したがって、ヌクレオチド(A、C、G、T/U)を検出するための検出限界は、バックグラウンドノイズや、利用される方法および/もしくは検出器の感度に依存する。
【0011】
ヌクレオチド(A、C、G、T/U)のシグナル強度は、配列位置N
0〜N
nにて、少なくとも1つのヌクレオチドに対して、好ましくは2つのヌクレオチドに対して、特に好ましくは3つのヌクレオチドに対して、少なくとも5%、好ましくは少なくとも30%増大した場合に、有意であると判断することができる。また、配列位置N
0〜N
nにて、2つまたは3つのヌクレオチド(A、C、G、T/U)が存在する場合に、有意に増大したシグナル強度が存在し得る。
【0012】
配列決定中に吸収される配列スペクトルは、同定されるTNSの少なくともN
0〜N
n配列位置を示すはずである。このことは、個々のヌクレオチド(A、C、G、T/U)の相対頻度が、配列スペクトルにおける各配列位置にて実証され得るならば、特に有利である。そのような頻度分布は、各配列位置における個々のヌクレオチドのシグナル強度を比較することで判定できる。頻度の判定はまた、配列決定工程がもたらされる前に、既知の濃度において分析される混合物に供給される少なくとも1つの標準TNSによってもたらされてもよい。
【0013】
ゆえに、配列スペクトルのデコンボリューヂョンを追加的にまたは代替的に実行し、それによって、配列スペクトルにおける個々のヌクレオチド(A、C、G、T/U)の有意に増大したシグナル強度を、多くとも1つのヌクレオチド(A、C、G、T/U)の全配列位置N
0〜N
nにおいて最も小さな(読取り可能な)シグナル強度に到達するまで、段階的に減少させる。これにより、それぞれ少なくとも1つの配列または少なくとも配列部分を有する減算スペクトルを取得することができ、所定アルゴリズムに従って配列位置N
0〜N
nにおいてスキャンされる。
【0014】
本発明の方法による本質的な利点は、所定アルゴリズムの使用することにより、高度に分化した多数のTNSが生成され得ることにある。高度な分化は、特に、感度の増大により結果的にもたらされ得る、個々のTNSの同定に有益な効果を及ぼす。ゆえに、TNSの、または可能性のあるTNS候補の同一性は、実際、規定可能なアルゴリズムに従ってスキャンされるヌクレオチド配列のうちの少数の配列位置によって判定することができる。このように、個々の配列または配列フラグメントが複数回重ね合わされる配列スペクトルですら、デコンボリュートされ得、そこでは、好ましくは配列位置N
0〜N
nが、所定アルゴリズムに従って、公知の配列差異によりスキャンされ得る。したがって、核酸を含む混合物のデコンボリューションは、増幅工程も単離工程も要することなく、同定される一TNSに対して効果をもたらす。
【0015】
通常、デコード化は、DNAアレイおよび高スループットシークエンシング/ディープシークエンシング/次世代シークエンシングによって実施される選択実験を実行した後にもたらされる。これは高価であり、かつ複雑である。しかし、選択実験を実行した後に本発明の方法を用いれば、核酸、例えばDNA混合物を含む混合物を、迅速、経済的、かつ簡単に、例えばサンガー配列決定によって、デコンボリュートすることができる。
【0016】
濃縮(類似の)TNSの同定は、実際のところ、個々のヌクレオチド(A、C、G、T/U)についてシグナル強度が有意に増大している配列スペクトルの配列位置を単にスキャンするだけで十分である。確定されたTNSはその後、それらにそれぞれ割り当てられた物質の存在証明に役立つ。なお、物質、好ましくは分子、分子構成成分、そして特にその機能的および/または構造的グループといった文言によって、これらは理解されるはずである。物質という文言の場合、用途のタイプに応じて、カーボンブラック、タバコの煙、スモッグ、油フューム、排気管ダスト、セメントダスト、金属、金属酸化物、プラスチック材料、花粉、細菌、またはウィルス粒子といった物質を意味する。
【0017】
形成されるTNS(A
1〜A
n、B
1〜B
n、…、Z
n)の配列位置N
0〜N
nにおけるヌクレオチド(A、C、G、T/U)についてのヌクレオチド占有は、所定アルゴリズムによって確立することができる。この目的のために、少なくとも1つの更なる配列位置のヌクレオチド占有に関連がある各配列位置N
0〜N
nについて、条件を定めてもよい。ゆえに、該アルゴリズムに従うTNSの形成において、そのプロセスは、例えば、形成されるTNSの各配列位置N
0+1〜N
nについて、先行する配列位置のヌクレオチド(A、C、G、T/U)に関する制限が、それぞれ少なくとも1つのヌクレオチド(A、C、G、T/U)に対して規定されるように実行されてもよい。
【0018】
TNSの好適かつ単純な同定においては、形成されたTNSが、少なくとも2つの配列位置において、および/または少なくとも5つの配列位置からなる少なくとも1つのヌクレオチド配列によって、互いに異なる場合に有利である。適切には、配列差異が少なくとも75%、好ましくは80%を超える、特に好ましくは90%を超えるTNSが、互いに最も大きな構造的および/または機能的差異を有する物質にそれぞれ割り当てられる。
【0019】
好ましくは、個々の物質をそれぞれ表すTNSは、それぞれ同じ長さである。すなわち、それぞれ配列位置N
0〜N
nの数が同じである。ゆえに、同定は、デコンボリューションを、所定の配列長に制限することによって、容易に単純化できる。また、これにより、重ね合わされたTNSの各配列位置N
0〜N
nを直接対比することが可能になる。本記載において、全TNSが共通の配列部分を有するならば、さらに有利であり、それに基づいて、それらはそのようなものとして同定することができる。この配列部分は、好ましくは、TNSの開始領域または端部領域において生じるはずである。
【0020】
さらに、形成されたTNSは、物質グループ、物質サイズ、曝露位置または日付のジオ座標(geocoordinate)をコードする少なくとも1つの配列部分を有してよい。また、物質の性質は、TNSの全長を介して、すなわち配列位置の数を介して、コード化されてもよい。また、物質の性質は、様々なプライマー結合部位の形態でコード化されてもよい。例えば、TNSは、ジオ座標をコードしてよい。物質グループは、配列決定中にプライマー結合部位として作用する更なる配列部分でコード化されてもよい。それゆえに、配列決定反応中に様々なプライマーを用いることで、各TNSの配列、そしてジオ座標を判定することができる。配列決定中に用いられる各プライマーによって、その際にどの基質グループが観察/考慮されているのかが分かる。プライマー結合部位の配列の生成中は、前記したアルゴリズムは用いられない。その代わり、この配列は、首尾良いプライマー結合/配列決定を可能にするパラメータを参照しながら設計される。例えば、G/C含量、プライマー長、およびプライマー融解温度であり得る。
【0021】
組み合わされた物質、特に選択実験または親和性実験の結果として互いに組み合わされた物質は、それに応じて組み合わされたTNS(A
1〜A
n、B
1〜B
n、…、Z
n)と化学的に結合し得る。適切には、TNS(A
1〜A
n、B
1〜B
n、…、Z
n)および/またはTNS(A
1〜A
n、B
1〜B
n、…、Z
n)の配列部分を互いに組み合わすことができる。
【0022】
起こり得る配列組合せは多岐にわたるため、TNSの形成は、所定アルゴリズムに従ってコンピュータによって(in silico)シミュレートされてもよい。形成されたTNSは、それによって、既知のヌクレオチド配列との起こり得る不一致(collision)に関しても調査されてよい。TNSの化学的合成はその後、好ましくは亜リン酸トリエステル法に従ってもたらされてよい。
【0023】
起こり得る配列組合せの数は、利用可能な配列位置の数に依存するので、長さが十分であるTNS、すなわち十分な数の配列位置N
0〜N
nが形成されるべきである。したがって、全長が5つの配列位置を超えるTNSが、形成または合成される。
【0024】
TNSは、一本鎖または二本鎖のRNA分子またはDNA分子であってよく、二本鎖DNA分子が好ましい。TNSの、それを表す物質への化学的結合は、好ましくは、共有結合によってもたらされてよい。
【0025】
本発明の方法では、少なくとも1つのTNS(A
1〜A
n、B
1〜B
n、…、Z
n)または少なくとも1つのTNS結合物質を選択する少なくとも1つの方法工程が提供されてよい。ゆえに、第1の選択工程は、例えば、不正確なTNSを除去するために、TNSの形成/合成後に実施されてよい。TNSを、その割り当てられた物質に結合させた後にさらなる選択工程を設けることで、不正確な結合物質を特定することができ、これによりライブラリの品質が評価され得る。したがって、そのプロセスは、液体移動相に配置された選択される成分(物質またはTNS)が、当該成分に対応する結合パートナーまたは当該成分の結合体が固定されている静止相に結合するように実行される。ゆえに、それぞれ、分析される混合物は、液体移動相、および/または静止相の液体溶出によって提供される。
【0026】
代わりに、または付加的に、不要または不正確にTNSと結合した物質の割合が、更なる選択工程において判定されてもよい。不要な物質は、先行する反応工程の物質構築ブロック(substance building block)と同じ反応基を備えるターミネーション試薬を用いた離脱反応(break−off reaction)によって標識化(mark)される。したがって、ターミネーション試薬は、依然として未反応の前駆体分子と反応して、これらを標識化し得るので、ターミネーション試薬はマーカー物質と呼ばれてもよい。マーカー物質は、例えば、静止相との結合を可能にするために、RNA配列もしくはDNA配列、ビオチン分子もしくはストレプトアビジン/アビジン分子、および/またはアジド/アルキンを有し得る。
【0027】
このように調製された混合物はその後、マーカー物質を結合させるための対応するコレクタードメイン、結合体、RNA配列および/またはDNA配列が固定されている静止相に対し、移動相の形態で接触する。不要な物質は、静止相に結合されて、判定かつ/または定量化される。マーカーコレクタ系として、例えばビオチン−ストレプトアビジン/アビジン、DNA/DNA、RNA/RNA、またはアジド−アルキン−ヒュスゲンクリック反応が可能である。
【0028】
上記した選択工程は、特に、分析される混合物の第1の配列決定後にもたらされてよい。そのために、第1の配列決定工程において既に同定されたTNSまたはTNS結合物質は、分析される混合物から取り出されてよい。さらに、結果的に、TNSまたはTNS結合物質の単離もまた達成される。それゆえに、より少量で存在する更なるTNSが、残存する混合物の新たな(renewed)配列決定によって同定され得る。したがって、分析される混合物を調製するために、少なくとも1つのTNSまたはTNS結合物質の選択のための1つまたは複数の選択工程を提供してもよい。
【0029】
(分析される混合物を配列決定するために)用いられる配列決定法に関して、制限は設けられない。好ましくは、蛍光標識化ジデオキシヌクレオチド、少なくとも1つのポリメラーゼ、および少なくとも1つのTNSの配列部分と相補的である少なくとも1つのプライマーを用いるサンガー法に従う配列決定が、実施されてよい。
【0030】
続いて、本発明の方法を、図面を参照しながら、実施形態および適用例として、より詳細に説明する。